説明

エンボス表面を有する複数層ポリマー中間層

本発明は、許容できない光学的歪無しで積層することができおよび各種の複数層ガラスパネル型の用途に使用できる、比較的柔軟な内側層および比較的剛性の外側層を有する複数層中間層を提供する。本発明の複数層中間層は、中間層または個々の層を形成した後、中間層または複数層中間層の個々の層の露出表面にエンボスすることによって形成される表面形状を有する。このエンボス法は、エンボス加工が中間層の内側層に転移するのを防止する温度条件下で実施する。中間層のエンボス加工を正確に制御することによって、中間層と剛性基板を積層したとき、表面の形状が、中間層の外側のより剛性の層を通じてより柔軟な内側層に転移することから起こる許容できない光学的歪を生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー中間層およびポリマー中間層を含む複数層ガラスパネルの分野の発明であり、より具体的には、本発明は、熱可塑性ポリマーの複数層を含むポリマー中間層の分野の発明である。
【背景技術】
【0002】
安全ガラスまたはポリマー積層板などの光透過性積層板の中間層として使用できるポリマー層を製造するのに、通常、ポリ(ビニルブチラール)(PVB)が使用されている。安全ガラスは、二枚のガラスシートの間に配置されたポリ(ビニルブチラール)の層を含む透明積層体を意味することが多い。安全ガラスは、建築物および自動車の開口部に透明バリヤーを設けるために使用されることが多い。この主な機能は、例えば物体からの打撃で起こるエネルギーを吸収して、ガラスの破片が開口から侵入または散乱すること無しに、閉じ込められた領域内の物体またはヒトが損傷または破損することを最小限に留めることである。また安全ガラスは、その他の有利な作用、例えば音響雑音を弱める、紫外線および/または赤外線の透過を少なくするおよび/または窓の開口の外観と美的魅力を高める作用を提供するために使用できる。
【0003】
安全ガラスに見られる熱可塑性ポリマーは、ポリ(ビニルブチラール)などの熱可塑性ポリマーの単層または複数層からなっていることがある。複数層は、例えば防音の用途に有用である。このような吸音を実施する従来の試みでは、ガラス転移温度の低い熱可塑性ポリマーの使用を含んでいる。その他の試みでは、特性の異なる、二つの隣接する熱可塑性ポリマー層の使用を含んでいる(例えばU.S.Patent 5,340,654およびU.S.Patent 5,190,826、およびU.S.Patent Application 2003/0139520 A1参照)。
【0004】
複数層中間層には、工程の積層段階で特有の問題が起こる。単層中間層は、従来、ローラでエンボスされて、脱気をしやすくするテクスチャを付与されているが、二つの比較的剛性の層の間に比較的柔軟な内側層を有する三層中間層は、この中間層の外側層のエンボスが内側のより柔軟な層に転移すると、光学的歪を発生することがある。ヨーロッパ出願EP 0 710 545 A1には、この問題が詳述されおよび三層中間層の外側層には深くエンボス加工しすぎないように注意されている。
【0005】
複数層ガラスパネル、具体的に述べると複数層中間層を含む複数層ガラスパネルの生産量および光学的特性を高める、一層改善された組成物および方法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,340,654号明細書
【特許文献2】米国特許第5,190,826号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0139520号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0 710 545号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、許容できない光学的歪無しで積層することができ、および各種の複数層ガラスパネル型の用途に使用できる、比較的柔軟な内側層および比較的剛性の外側層を有する複数層中間層を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の複数層中間層は、中間層または層を形成した後、中間層または複数中間層の個々の層の露出表面をエンボスすることによって形成される表面形状を有している。上記エンボス加工は、エンボスが中間層の内側層に転移するのを防止する温度条件下で実施する。
【0009】
中間層を剛性基板と積層するとき、表面の形状が、中間層の外側のより剛性の層を通じてより柔軟な内側層に転移することによって起こる許容できない光学的歪は、中間層のエンボス加工を正確に制御することによって生じない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の複数のマニホールドを有する同時押出し装置の概略断面図を示す。
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明は、より柔軟な内側ポリマー層がより剛性の外側層の間に接触して配置されている積層ガラスの用途、例えば特に音響の抑制が望まれる用途に有用な複数層中間層に関する。
【0012】
より柔軟な内側層を利用する一種類の複数層中間層は、複数層の防音中間層である。本明細書に開示されているように、本発明の防音中間層は、複数の層を含み、この好ましい実施形態は二つの比較的硬い層の間に挟まれた比較的柔軟な層を有している。得られる三層中間層は、一般に、従来の単層中間層の代わりに、積層工程で、この工程をほとんどまたは全く改変することなく、直接使用できる。
【0013】
本発明は、このような防音中間層に利用できると、本明細書全体に記述されているが、本発明は、非防音型複数層中間層を含む複数層中間層、例えば外側層とこの間に配置されている外側層より柔軟なポリマー内側層とを有する三層中間層を含むことは、当業者には理解される。
【0014】
本発明によれば、驚くべきことに、複数層中間層の脱気および積層が、複数層中間層の外側表面をエンボスすることによって、この中間層を使用するグレージングパネルに光学的歪を発生させることなく、容易に実施できるようになることが発見された。この成果は、複数層中間層を最初に押し出した後、例えば三ポリマー層の中間層を同時に押し出した後、冷却し次いでエンボスすることによって達成される。各種実施形態における中間層は、90℃、80℃、70℃または60℃より低い温度で冷却される。好ましい実施形態では、中間層は60℃より低い温度で冷却される。
【0015】
本発明の各種実施形態では、冷却後、巻き取られた形態のポリマーが連続して送り出される、またはポリマーがダイから直接押し出されて、単一層として、直径が10から60cm(4”から24”)のゴム張りバックロールに押し付けられるエンボスロールを有するエンボスステーションに、任意の適切な速度、例えば305から915cm/min(10から30feet/min)で供給される。エンボスロールの成形表面は、任意の望ましい表面パターンを彫刻できる。一実施形態では、例えばエンボスロールの全成形表面は、のこ歯型に彫刻されている。のこ歯型は、垂直断面がV字型で、両側が互いに90度で直接接触している形状である。こののこ歯は、ロール表面に連続したらせんリッジを形成し、ロールの縦軸に対して45度の角度で配向させることができる。このリッジの度数はらせんの方向に直角に測定して、例えば127から508/cmまたは203から508/cm(50から200/インチまたは80から200/インチ)であり得る。
【0016】
連動するバックアップロールの面は、破面現象無しで延伸できる、伸長性が高く耐熱性のゴムで被覆することができる。エンボスロールの表面は、エンボス表面の下に存在する適切な加熱媒体によって、所望の温度、例えば121℃から232℃(250°Fから450°F)、138℃から216℃(280°Fから420°F)または149℃から204℃(300°Fから400°F)に調節される。エンボスロールおよびバックアップロールで形成されるニップの下流に位置する真空ロールを使用して、エンボスされた層をエンボスロールの表面から引きはがすことができる。層は、ニップを通過した後、このニップの上の真空ロールによって取り出され次にチルド冷却ロール(4.44℃(40°F)以下)に大きく(>135度)巻きつけ次いでロールに巻き取ることができる。または、中間層の両面のエンボス加工は、中間層に、同じエンボス装置を二回通過させる、または類似の第二装置を下流で通過させることによって達成できる。
【0017】
上記中間層は、エンボスパターンを、柔軟層/剛性層の界面に転移させない任意の適切な温度および任意の適切な速度で、中間層の外側表面を加熱することによって、エンボスすることができる。温度は、例えば121℃から232℃(250°Fから450°F)、138℃から216℃(280°Fから420°F)または149℃から204℃(300°Fから400°F)であり得、これらの温度は、例えば中間層に、所望の温度に加熱された所望のエンボスパターンを有するエンボスロールを通過させて加工することによって達成できる。
【0018】
理論的ではないが、中間層の温度を正確に制御して低い内側温度を保持し、一方、外側表面は、エンボス加工を行いおよびエンボスされた表面の耐久性を制御できるように十分加熱され、このエンボスされたパターンは、エンボス加工の時点およびその後の積層の時点に、外側のより剛性の層を通じて、外側層と内側層の間の界面に、効果的に押し付けられることはないと考えられる。ある先行技術(例えばEP 0 710 545 A1参照)に報告されているように、積層体中に光学的歪を起こすと考えられるのは、エンボス加工および/または積層によるこの界面の歪である。たしかに、先行技術は、エンボス加工が深すぎないように警告しているが、本発明の複数層中間層はそれほど制限されるわけではなく、以下に詳細に述べるように、先行技術に提案されている限界を超えて良好にエンボスすることができる。
【0019】
エンボス加工は、ポリマー中間層またはポリマー層に脱気粗面を付与する方法である(例えばU.S.Patent 5,425,977およびU.S.Patent 6,077,374参照)。ポリマー層にエンボスする従来の技術は、層に、二つの回転しているロールの間のニップを通過させるステップを含み、このロールの一方または両方は、この表面に、所望のエンボスパターンに対して相補的に作製された逆型のくぼみを形成されたエンボスロールである(例えばU.S.Patent 4,671,913、U.S.Patent 2,904,844、U.S.Patent 2,909,810、U.S.Patent 3,994,645、U.S.Patent 4,575,540、U.S.Patent 5,151,234およびEuropean Application No.0185,863参照)。エンボスのパターンは、この用途によって、規則的または不規則なものでもよい。
【0020】
中間層の外側ポリマー層の片面または両面は、エンボス加工を使用して、所望の「荒さ」即ち「R」、「ピッチ」即ち「RSM」および耐久性を有する層を製造することによって製造される。Rはポリマー層の表面形状の尺度であり、および表面の平面との相違の指標である。RSMはポリマー層の表面形状のピーク間の距離の尺度である。「耐久性」は、エンボス加工する前に存在していた表面の形状に戻ろうとする、層に特有の復元性に、エンボスされた中間層の表面が抵抗する傾向の尺度である。上記三種の測定については以下に詳細に述べる。
【0021】
本発明の各種実施形態では、本明細書で教示するエンボス技術を使用して、より柔軟な内側ポリマー層を有し、この中間層の外側層の片方または両方が、50から90、60から90または60から80というR値を有する複数層中間層が製造される。上記二つの外側表面は、R値が同じでも異なっていてもよい。他の実施形態では、上記二つの外側表面の一つだけが指定のR値を有している。さらに別の実施形態では、中間層の外側層の片方または両方は、内側の比較的柔軟な層に接触して配置されている内側表面に指定されたR値を有しており、このことは、例えば複数の個々の層が積層されて複数層中間層を共に形成する同時押出しでない実施形態に見られる。
【0022】
本発明の各種実施形態では、本発明の中間層の外側表面はRSM値が700未満、650未満または600未満である。さらなる実施形態では、片方の外側層のみ指定のRSM値を有している。さらに別の実施形態では、中間層の外側層の片方または両方の内側表面が指定のRSM値を有している。所与のRSM値を所与のR値と任意の適切な組合せで組み合わせて所望の表面特性を製造することができる。
【0023】
各種実施形態で、本発明の複数層中間層は、以下に詳細に述べる「耐久性値」が95%未満、90%未満、80%未満、70%未満または60%未満であり、およびこれらの耐久性値もやはり、所与のRSM値およびR値のいずれかと適切な組合せで組み合わせて、所望の表面特性を製造できる。他の実施形態では、片方または両方の外側表面の耐久性の価は、40%から95または50%から90%である。
【0024】
本発明の複数層中間層の片方または両方の表面の上記三つの表面特性の好ましい組合せの例としては、限定されないが、以下の組合せがあり、R値///RSM値///耐久性の順序で配置されてセミコロンで区切り、R値とRSM値はミクロンの単位でおよび耐久性は百分率の単位で示す。即ち、50から90///任意の価///95未満;50から90///任意の価///90未満;50から90///任意の価///40から95;50から90///700未満///95未満;50から90///700未満///90未満;50から90///700未満///40から95;60から80///任意の価///95未満;60から80///任意の価///90未満;60から80///任意の価///40から95;60から80///700未満///95未満;60から80///700未満///90未満;および60から80///700未満///40から95である。
【0025】
指定のR値および/またはRSM値および/または耐久性値を有し生成する中間層は、二つのガラスなどのグレージング層の間に容易に積層できる。上記R値およびRSM値は、エンボス加工で付与され、複数層中間層の外側層の少なくとも片方および好ましくは両方の外側表面に存在し、その結果、外側表面は、例えば真空バッグ脱気法を使用して、容易に脱気させた後、ガラス層と接触させて配置し積層することできる。
【0026】
用語「エンボスされたX値(「X」はRまたはRSMを意味する。)」は、本明細書で使用する場合、RおよびRSMで測定された表面の性質が、押し出して冷却した後エンボスすることによって生成したことを意味し、測定されているのはエンボスされた表面である。
【0027】
ガラスパネルを音響透過を減少させる機能を有する本発明の複数層中間層の幾つかの実施形態は、当分野で知られているものを含んでおり、例えば限定されないが、炭素連鎖の長さの異なるアセタールの使用を教示するU.S.Patent 5,190,826;異なる重合度の使用を教示するJapanese Patent Application 3124441AとU.S.Patent Application 2003/0139520 A1;および組成の差として二つの隣接する層の一方に、少なくとも5モル%の残留アセテート基のレベルの利用を教示するJapanese Patent 3,377,848およびU.S.Patent 5,340,654に開示されているものがある。
【0028】
好ましい実施形態において、可塑剤の濃度が異なる二つのポリマー層を含む複数層中間層を、複数層ガラスパネル中に組み込むことによって、このガラスパネルに、優れた音響抑制特性を付与できる。
【0029】
上記のように、ポリマー層を処方することによって、複数層ガラスパネルの音響透過は、例えば対象の周波数または周波数領域において2デシベルを超えて低下させることができる。さらに、三ポリマー層を有する実施形態は、容易に扱われるように処方され、従来の工程において従来の中間層の直接の代替物として使用できるので、本発明の中間層は、多くの用途に使用されている製造法を全く改変する必要無しに、この多くの用途に使用可能である。例えば自動車のウインドシールドの用途では、完成されたウインドシールドを製造するため使用される積層工程を変更することなく、従来のポリマー中間層の代わりに、本発明の中間層を使用できることが必要である。
【0030】
用語「中間層」は、本明細書で使用する場合、複数層ガラスの用途、例えばウインドシールドおよび建築物の窓に利用できる任意の熱可塑性構造体を意味し、および用語「複数層」中間層は、通常、積層法または同時押出しによって、二つ以上の個々の層を組み合わせて単一の中間層にすることによって形成される中間層を意味する。
【0031】
本発明の各種実施形態において、複数層中間層は、互いに接触して配置された少なくとも二つのポリマー層を含み、このポリマー層は各々、本明細書の別の部分で詳細に述べるように、熱可塑性ポリマーを含んでいる。各層におけるこの熱可塑性ポリマーは同じでも異なっていてもよい。
【0032】
下記の好ましい実施形態において、可塑剤含有量の高いポリマー層を、二つの可塑剤含有量の低い層の間にサンドイッチさせて三層中間層を製造する。これらポリマー層の組成は、一方のポリマー層からもう一つのポリマー層への可塑剤の移行が無視できる、またはゼロなので、可塑剤の差が維持される組成である。
【0033】
「可塑剤含有量」は、本明細書で使用する場合、重量に対する重量の基準で、樹脂100量部当たりの量部(phr)として測定される。例えば可塑剤30gをポリマー樹脂100gに添加すると、生成する可塑化ポリマーの可塑剤含有量は30phrである。ポリマー層の可塑剤含有量が与えられたとき、本明細書を通じて使用されるこの特定の層の可塑剤含有量は、この特定の層を製造するために使用した溶融物中の可塑剤のphrを参照して決定される。
【0034】
可塑剤含有量が未知の層の場合、この可塑剤含有量は、適切な溶媒または溶媒混合物を使って可塑剤を層から抽出する湿式化学的方法によって測定できる。試料層の重量と抽出された層の重量を測定することによって、可塑剤含有量(phr)を計算できる。二つのポリマー層の中間層の場合、一方のポリマー層をもう一つのポリマー層から物理的に分離した後、各ポリマー層の可塑剤含有量を測定することができる。
【0035】
本発明の各種実施形態において、二つのポリマー層の可塑剤含有量は、少なくとも8phr、10phr、12phr、15phr、18phr、20phrまたは25phrの差がある。各層は、例えば30から100phr、40から90phr、または50から80phrでもよい。
【0036】
本発明の各種実施形態において、ポリマー層の熱可塑性ポリマー成分の残留ヒドロキシルの含有量は異なっているので、安定した可塑剤の差を有する層を製造できる。「残留ヒドロキシルの含有量(ビニルヒドロキシルの含有量またはポリ(ビニルアルコール)(PVOH)基含有量として)」は、本明細書で使用する場合、加工が完了した後、ポリマー連鎖の側基として残留しているヒドロキシル基の量を意味する。例えばポリ(ビニルブチラール)は、ポリ(酢酸ビニル)を加水分解してポリ(ビニルアルコール)とし、このポリ(ビニルアルコール)をブチルアルデヒドと反応させてポリ(ビニルブチラール)を形成することによって製造できる。ポリ(酢酸ビニル)を加水分解する工程では、一般に、すべてのアセテートの側基がヒドロキシル基で変換されるわけではない。さらに、ブチルアルデヒドとの反応で、一般に、すべてのヒドロキシル基がアセタール基に変換されるわけではない。その結果、任意の最終のポリ(ビニルブチラール)内には、一般に、ポリマー連鎖の側基として残留アセテート基(酢酸ビニル基として)および残留ヒドロキシル基(ビニルヒドロキシル基として)が存在している。「残留ヒドロキシルの含有量」は本明細書で使用する場合、ASTM 1396に基づいて、重量%ベースで測定される。
【0037】
本発明の各種実施形態において、二つの隣接するポリマー層の残留ヒドロキシル含有量は、少なくとも1.8%、2.0%、2.2%、2.5%、3.0%、4.0%、5.0%、7.5%または少なくとも10%異なっていてもよい。この差は、残留ヒドロキシル含有量の高い層の残留ヒドロキシル含有量から、残留ヒドロキシル含有量の低い層の残留ヒドロキシル含有量を引き算することによって計算される。例えば第一ポリマー層が20重量%の残留ヒドロロキシル含有量を有し、第二ポリマー層が17重量%の残留ヒドロロキシル含有量を有していれば、これら二つの層の残留ヒドロキル含有量の差は3重量%である。
【0038】
所定の種類の可塑剤について、ポリ(ビニルブチラール)中での相溶性は、このヒドロキシル含有量でほとんど決定してしまう。一般に、残留ヒドロキシル含有量の高いポリ(ビニルブチラール)は可塑剤の相溶性またはキャパシティを低下させる。また、残留ヒドロキシル含有量の低いポリ(ビニルブチラール)は可塑剤の相溶性またはキャパシティを高くする。これらの特性を使用して、各ポリ(ビニルブチラール)ポリマーのヒドロキシル含有量を選択し、各ポリマー層の配合を行い、適切な可塑剤を加えてポリマー層間の可塑剤含有量の差を安定に維持することができる。
【0039】
当分野で公知のように、残留ヒドロキシル含有量は、製造工程における反応時間、反応物の濃度および他の変数を制御することによって制御できる。各種実施形態において、二つの層の残留ヒドロキシル含有量は下記の通りである。即ち、25%未満の第一層および23%未満の第二層、23%未満の第一層および21%未満の第二層、21%未満の第一層および19%未満の第二層、20%未満の第一層および17%未満の第二層、18%未満の第一層および15%未満の第二層、15%未満の第一層および12%未満の第二層である。これらのどの実施形態にも、二層の間のヒドロキシル基含有量の差に関する上記パラグラフに示した値のどれでも利用できる。
【0040】
比較用語「柔軟な/より柔軟な」および「剛性の/より剛性の」は、本明細書全体を通じて使用する場合、ポリマー層の引張り破断応力を意味する。ポリマー層の引張破断応力または引張強さは、本明細書で使用する場合、JIS K6771に定義されており、それに記載の方法で測定され、比較的「柔軟な」ポリマー層は、引張破断応力値が、比較的「硬い」ポリマー層より低い。本発明の各種実施形態において、上記二つのポリマー層の引張破断応力は下記の通りであり(下記リストの第一ポリマー層は可塑剤含有量の低いポリマー層である。)、即ち、135kg/cmより大きい第一ポリマー層および120kg/cm未満の第二ポリマー層、150kg/cmより大きい第一ポリマー層および135kg/cm未満の第二ポリマー層、165kg/cmより大きい第一ポリマー層および150kg/cm未満の第二ポリマー層、または180kg/cmより大きい第一ポリマー層および165kg/cm未満の第二ポリマー層である。第二ポリマー層を、第一ポリマー層と第三ポリマー層の間に挟むため、第二ポリマー層を第一ポリマー層に対して反対側に接触させて配置した第三ポリマー層を任意の上記実施形態に加えることができ、なお、この第三層は、組成が第一ポリマー層と同じ、または異なっており、および好ましくは組成は第一ポリマー層と同じである。
【0041】
上記パラグラフに示した引張破断応力値は、防音タイプの複数層中間層に使用できる価を示しているが、当業者には、本発明の方法および中間層が、比較的柔軟な内側層および一つ以上の比較的硬い外側層を有するいずれの複数層中間層にも有用であることが分かる。従って、本発明の各種実施形態において、一方のまたは両方の外側層は、引張破断応力が、内側層のそれより少なくとも15kg/cm、20kg/cmまたは25kg/cm大きい。
【0042】
本明細書で使用する場合、従来の積層ガラスは、市販の積層ガラスに現在一般に使用されている従来の中間層を積層することによって形成され、この従来の中間層は、200kg/cm以上の引張破断応力を有する。本発明を説明する場合、従来の積層ガラスは「基準積層パネル」または「基準パネル」と呼称する。
【0043】
本発明の中間層からなるガラス積層体を特徴付けるために使用される防音性改善の度合は、上記パラグラフに記載されている基準積層パネルを参照して測定される。ガラスの二つの外側層を有する典型的な積層体では、「組み合わせたガラスの厚さ」は、ガラスの二つの層の厚さの合計であり、三つ以上のガラス層を有するより複雑な積層体では、組み合わせたガラスの厚さは、この3以上のガラス層の合計である。
【0044】
本発明を説明する場合、「一致周波数(coincident frequency)」は、「一致効果」のために、パネルが音響透過ロス(sound transmission loss)のディップを示す周波数を意味する。基準パネルの一致周波数は、一般に、2000から6000ヘルツの範囲内であり、および基準パネルのガラスの組み合わせたガラスの厚さに等しい厚さを有する一体ガラスシートから、下記アルゴリズム、
【0045】
【数1】

(式中、「d」はガラスの厚さの合計(mm)であり、および「f」は周波数(ヘルツ)である。)によって、実験的に測定できる。
【0046】
本発明を説明する場合、防音性能の改善の程度は、基準パネルの一致周波数(基準周波数)における音響透過ロスの増大によって測定できる。
【0047】
「音響透過ロス」は、ASTM E90(95)で規定された寸法の本発明の積層体または従来の基準パネルについて、規定の温度20℃にて測定される。
【0048】
本発明の各種実施形態では、本発明の複数層中間層は、2枚のガラス板の間に積層されると、この積層ガラスパネルの音響の透過が、本発明の複数層中間層の厚さと同等の厚さを有する従来の単一中間層を有する比較基準のパネルと比べて、少なくとも2デシベル(dB)低下する。
【0049】
本発明の各種実施形態では、本発明の中間層は、2枚のガラス板の間に積層されると、この音響の透過損は、比較基準パネルに比べて、基準周波数にて、少なくとも2dB、より好ましくは4dB、より好ましくは6dB以上、およびより一層好ましくは8dB以上改善される。
【0050】
複数層ガラスパネルの音響透過を低下させる、隣接ポリマー層を含む中間層を製造する先行技術の試みは、これらの層の間の各種組成の置換に依存している。この例としては、炭素の長さの異なるアセタールの使用を教示するU.S.Patent 5,190,826および異なる重合度の使用を教示するJapanese Patent Application 3124441 AおよびU.S.Patent Application 2003/0139520 A1が挙げられる。二つの別の出願、Japanese Patent 3,377,848およびU.S.Patent 5,340,654は、二つの隣接層の一方に、組成の差として少なくとも5モル%の残留アセテートのレベルの使用を教示している。
【0051】
これらの用途で使用されている方法とは明確に異なる本発明の各種実施形態では、本発明の二つの隣接ポリマー層は、上記のように可塑剤含有量が異なり、さらに各々、残留アセテート基含有量が、5モル%未満、4モル%未満、3モル%未満、2モル%未満または1モル%未満であり得る。これらの残留アセテート濃度は、上記残留ヒドロキシル含有量と、いずれの組合せでも組み合わせて、残留アセテート含有量をほとんどまたは全く有さないが、可塑剤含有量および残留ヒドロキシル含有量の差が上記の通りである本発明の二つのポリマー層を製造できる。本発明の複数層中間層のさらなる実施形態としては、2を超えるポリマー層を有する中間層が挙げられ、この追加のポリマー層の一つ以上は、5モル%未満、4モル%未満、3モル%未満、2モル%未満または1モル%未満の残留アセテート基含有量を有する。
【0052】
好ましい実施形態である本発明のさらなる実施形態としては、より柔軟なポリマー層、例えば可塑剤含有量が高いポリマー層と接触して配置されている第三ポリマー層を追加して含む任意の上記実施形態がある。この第三ポリマー層が追加されると、以下の構造、即ち比較的剛性の第一ポリマー層//比較的柔軟な第二ポリマー層//第三ポリマー層を有する三層構造体が得られる。この第三ポリマー層は、好ましい実施形態では、第一ポリマー層と同じ組成を有していてもよくまたは異なっていてもよい。本発明の好ましい実施形態では、柔軟な内側層が、二つのより剛性の外側層の間に接触して配置されているが、本発明の方法は、二層中間層および四層以上を有する中間層にも適用できることは、当業者には理解される。例えば本発明の範囲内にある変形は、二つのより剛性の外側層および三つのより柔軟な内側層を有する五層中間層である。
【0053】
各種実施形態では、第三ポリマー層は、第一ポリマー層と同じ組成であり、二つの比較的扱いやすい層の間に配置された比較的扱いにくいポリマー層を有する三層中間層を提供して、比較的扱いやすく、および本発明の中間層の二つの外側ポリマー層の組成、または類似の加工特性(例えば粘着性)をもたらす組成を有する単一ポリマー層を従来使用していた既存の方法に直接組み入れることができる複数層中間層が得られる。
【0054】
単一中間層に三つのポリマー層を利用する他の実施形態において、この第三ポリマー層は、第一ポリマー層と異なる組成を有し、および第三ポリマー層と第二ポリマー層の間の組成の差は、第一ポリマー層と第二ポリマー層の間の差について先に述べたいずれの差であってもよい。例えば典型的な一実施形態は、残留ヒドロキシル含有量が20%の第一ポリマー層//残留ヒドロキシル含有量が16%の第二ポリマー層//残留ヒドロキシル含有量が18%の第三ポリマー層である。この実施例では、第三ポリマー層は、残留ヒドロキシル含有量が第二ポリマー層のヒドロキシル含有量より2%大きいという点で少なくとも第二ポリマー層と異なることは分かる。勿論、本明細書を通じて述べられている他の任意の差によって、別々にまたは組み合わせて、第三ポリマー層と第二ポリマー層を区別できる。
【0055】
当分野で公知の他の従来の層は、本発明の中間層に組み入れることができる。例えば金属化層、赤外線反射スタックまたは蒸着された他の機能層を有するポリ(エチレンテレフタレート)のようなポリエステルなどのポリマーフィルム(本明細書の別の部分で詳細に述べる。)を、適切な場合、本発明のどの二つのポリマー層の間に含んでもよい。例えば二層の実施形態において、中間層は、下記配置即ち可塑剤含有量が比較的高いポリマー層//一性能層を有するポリエステルフィルム//可塑剤含有量が比較的低いポリマー層で製造できる。一般に、ポリ(ビニルブチラール)のような熱可塑性樹脂の追加層、ポリエステルフィルム、プライマー層および硬質コート層を、所望の結果および特定の用途に従って本発明の複数層中間層に付加できる。
【0056】
本発明の中間層の好ましい製造方法は、複数の、例えば三つのポリマー層を同時に押し出す方法である。本発明の場合、複数の溶融体を同時に押出して複数のポリマー層とし、一つの中間層を形成する。
【0057】
本発明の複数層中間層は、図1に示すような複数マニホールド同時押出装置を使用して同時に押出することが好ましい。10で概略断面図に示しているように、押出装置は、第一ダイマニホールド12、第二ダイマニホールド14および第三ダイマニホールド16を有する。図1に示す装置は、各マニホールド(12、14、16)から押出開口20の方にポリマー溶融体を同時に押出することによって作動し、この開口において複数層中間層が、三つの個々のポリマー層の積層体として押出される。層の厚さは、押出開口20におけるダイリップ間の距離を調節することによって変えることができる。
【0058】
用語「ポリマー層」には、本明細書で使用する場合、個々に製造される層および同時に押し出される層が含まれる。例えば三つの溶融体を同時に押出することによって製造される中間層は、三つの個々に製造されたポリマー層を積層して単一の中間層にして製造される中間層と同様に、三つの個々の「ポリマー層」を有している。
【0059】
本明細書で提供される中間層に加えて、本発明は、本発明のいずれかの中間層を含む複数層ガラスパネルを、開口部に配置するステップを含む、開口部を通過する音響のレベルを低下させる方法も提供する。
【0060】
本発明にはまた、本発明の中間層のいずれかを、ガラスまたはアクリル樹脂の層のような二つの硬質透明パネルの間に、当分野で公知のようにして積層するステップを含む複数層グレージングの製造法が含まれている。
【0061】
本発明にはまた、本発明の複数層中間層を含む、ウインドシールドおよび建築物の窓のような複数層ガラスパネルが含まれている。
【0062】
本発明にはまた、ガラスパネルの代わりに、アクリル樹脂のようなプラスティックまたは他の適切な材料を有する複数層グレージングパネルが含まれている。
【0063】
また、本発明には、第一ポリマー溶融物、第二ポリマー溶融物および第三ポリマー溶融物ならびに場合により第四もしくはそれ以上のポリマー溶融物を形成し、前記一ポリマー溶融物、前記第二ポリマー溶融物および前記第三ポリマー溶融物ならびに場合により前記第四もしくはそれ以上のポリマー溶融物を同時に押出して中間層を形成し、この中間層を、本明細書の別の部分で述べているように、適切な温度まで冷却し、この中間層の表面を、本明細書の外の部分で述べているように、適切な温度に加熱し、次いで前記中間層の前記表面をR値20から90または20から70までエンボスすることによって、外側層に比べて引張り破断応力が比較的低い内側層を有するポリマー中間層を製造する方法が含まれている。
【0064】
これらの実施形態では、RSM値および耐久性値は、本明細書の外の部分で述べているどの価でもよい。本発明の複数層中間層の片方または両方の表面の前記三つの表面特性の好ましい組合せの例としては、限定されないが、下記の組合せがあり、R///RSM///耐久性の順に配列してセミコロンで区切り、ならびにRおよびRSMはミクロンの単位でならびに耐久性は百分率で示してある。即ち、20から90///任意の価///95未満;20から90///任意の価///90未満;20から90///任意の価///40から95;20から90///700未満///95未満;20から90///700未満///90未満;20から90///700未満///40から95;20から70///任意の価///95未満;20から70///任意の価///90未満;20から70///任意の価///40から95;20から70///700未満///95未満;20から70///700未満///90未満;および20から70///700未満///40から95である。
【0065】
ポリマーフィルム
「ポリマーフィルム」は、本明細書で使用する場合、性能を高める層として機能する比較的薄くおよび硬質のポリマー層を意味する。「ポリマーフィルム」は、本明細書で使用する場合、ポリマー層とは異なり、ポリマーフィルムはそれ自体、複数層グレージング構造体に必要な貫入抵抗(penetration resistance)およびガラス保持特性を提供せず、むしろ赤外線吸収特性のような性能を改善する。ポリ(エチレンテレフタレート)が、ポリマーフィルムとして最も一般的に使用される。
【0066】
各種実施形態において、ポリマーフィルム層は、0.013mmから0.20mmであり、好ましくは0.025mmから0.1mmまたは0.04mmから0.06mmの厚さを有する。ポリマーフィルム層は、場合により表面を処理したりまたはコートして、一種以上の性質、例えば接着性または赤外線反射性を改善できる。これらの機能特性層としては、例えば太陽光に暴露されたとき、赤外線を反射して可視光線を透過する複数層スタックが挙げられる。この複数層スタックは、当分野では公知であり(例えばWO 88/01230およびU.S.Patent 4,799,745参照)、および例えば一つ以上のオングストローム厚さの金属層および一つ以上(例えば二つ)の続けて堆積させた光学的に協働作用を行なう誘電層を備えてよい。金属層は、公知のことであるが(例えばU.S.Patent 4,017,661およびU.S.Patent 4,786,783参照)、場合により電気的に抵抗加熱して、任意の付随するガラス層の曇り止めまたは曇り取りを行なうことができる。
【0067】
U.S.Patent 6,797,396に記載されている、本発明で使用できる追加の種類のポリマーフィルムは、金属層が起こすことがある干渉を起こすことなく赤外線を反射する多数の非金属の層を備えている。
【0068】
幾つかの実施形態のポリマーフィルム層は、光学的に透明であり(即ち、この層の一方の面に隣接する物体は、もう一つの面からこの層を通じて見ている特定の観察者の眼によって容易に見ることができる。)、および引張り弾性率が、組成の如何にかかわらず、隣接するポリマー層より通常大きく、幾つかの実施形態では有意に大きい。各種実施形態において、ポリマーフィルム層は熱可塑性材料を含んでいる。適切な特性を有する熱可塑性材料としては、ナイロン類、ポリウレタン類、アクリル樹脂類、ポリカーボネート類、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、酢酸セルロースおよびセルロース三酢酸、塩化ビニルのポリマーおよびコポリマーなどがある。各種実施形態において、ポリマーフィルム層は、ポリエステル類、例えばポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(エチレンテレフタレート)グリコール(PETG)を含む、注目すべき特性を有する再延伸された(re−stretched)熱可塑性フィルムのような材料を含んでいる。各種実施形態において、ポリ(エチレンフタレート)が使用され、および各種実施形態において、このポリ(エチレンフタレート)は、二軸延伸されて強さが改善され次いで熱安定化されて高温に曝されたときの収縮性が低くなる(例えば150℃にて30分後、両方向の収縮率は2%未満)。
【0069】
本発明で使用できるポリ(エチレンテレフタレート)フィルムに対する各種のコーティングや表面処理の技術は、European Application No.0157030に開示されている。本発明のポリマーフィルムはまた、当分野で公知のハードコートおよび/または防曇層を含んでいてもよい。
【0070】
ポリマー層
「ポリマー層」は、本明細書で使用する場合、積層されたグレージングパネルに適切な貫入抵抗およびガラス保持特性を提供する中間層として使用するため、単独で適切な薄い層または一つを超える層のスタック中に、任意の適切な方法で形成される熱可塑性ポリマー構造体を意味する。可塑化されたポリ(ビニルブチラール)は、ポリマー層を形成するのに最も一般的に使用される。
【0071】
ポリマー層は適切などのポリマーを含んでいてもよく、および好ましい実施形態では、ポリマー層はポリ(ビニルブチラール)を含んでいる。ポリ(ビニルブチラール)をポリマー層のポリマー成分として含む、本明細書で与えられる本発明のどの実施形態にも、ポリマー成分がポリ(ビニルブチラール)からなる、または本質的にポリ(ビニルブチラール)からなるもう一つの実施形態が含まれている。これらの実施形態において、本明細書で開示されている任意の各種添加物はポリ(ビニルブチラール)からなる、または本質的にポリ(ビニルブチラール)からなるポリマーを有するポリマー層で使用できる。
【0072】
一実施形態において、ポリマー層は、部分的にアセタール化されたポリ(ビニルアルコール)類に基づいたポリマーを含んでいる。もう一つの実施形態では、ポリマー層は、ポリ(ビニルブチラール)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、この組合せなどからなる群から選択されるポリマーを含んでいる。その他の実施形態では、ポリマー層は可塑化されたポリ(ビニルブチラール)を含んでいる。さらに別の実施形態では、ポリマー層はポリ(ビニルブチラール)および一種以上の他のポリマーを含んでいる。適正な可塑化能力を有する他のポリマーも使用できる。好ましい範囲、価および/または方法が特にポリ(ビニルブチラール)に(例えば限定されないが、可塑剤、成分の百分率、厚さおよび特性を増強する添加剤について)与えられる本明細書のどの章においても、この範囲は、適用可能な場合、ポリマー層の要素として有用な、本明細書に開示されている他のポリマーおよびポリマーブレンドにも当てはまる。
【0073】
ポリ(ビニルブチラール)を含む実施形態では、ポリ(ビニルブチラール)は、公知のアセタール化法で製造することができ、この方法は、各種実施形態で残留ヒドロキシル含有量を本明細書のほかの部分に記載したようにして制御するという条件下で、ポリ(ビニルアルコール)とブチルアルデヒドを酸触媒の存在下で反応させ、次いでこの触媒を中和し、樹脂を分離し安定化し次いで乾燥するステップを含んでいる。
【0074】
各種実施形態で、ポリマー層は分子量が、30,000、40,000、50,000、55,000、60,000、65,000、70,000、120,000、250,000または350,00グラム/モル(g/moleまたはダルトン)より大きいポリ(ビニルブチラール)を含んでいる。また、分子量を、350,000ダルトンより大きく増大させるため、アセタール化のステップ中に、少量のジアルデヒドまたはトリアルデヒドを添加してもよい(例えばU.S.Patent 4,874,814、U.S.Patent 4,814,529およびU.S.Patent 4,654,179参照)。用語「分子量」は、本明細書で使用する場合、重量平均分子量を意味する。
【0075】
追加の従来のポリマ−層を、可塑剤含有量が異なると先に述べた任意の実施形態に追加して使用する場合、この追加の従来のポリマー層は、可塑剤を、樹脂100量部(phr)当たり20から60量部、25から60量部、20から80量部または10から70量部含んでもよい。特別な用途に適切である場合は、勿論、他の量を使用できる。幾つかの実施形態では、この可塑剤は、炭素原子の数が20未満、15未満、12未満または10未満の炭化水素セグメントを有している。
【0076】
適切な可塑剤はどれも、ポリマー層を形成するため本発明のポリマー樹脂に添加できる。本発明のポリマー層に使用される可塑剤としては、特に多塩基性酸または多価アルコールのエステルが挙げられる。適切な可塑剤としては、例えばトリエチレングリコールジ−(2−酪酸エチル)、トリエチレングリコールジ−(2−ヘキサン酸エチル)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、シクロヘキシルアジピン酸ヘキシル、アジピン酸ヘプチルおよびアジピン酸ノニルの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド類などのポリマー可塑剤、およびU.S.Pat.No.3,841,890に開示されているような硫酸エステルとアジピン酸エステルの混合物とU.S.Pat.No.4,144,217に開示されているようなアジピン酸エステルおよび上記化合物の混合物と組合せがある。使用できるその他の可塑剤は、U.S.Pat.No.5,013,779に開示されているようなC−CアルキルアルコールおよびシクロC−C10アルコールから製造される混合アジピン酸エステル、およびアジピン酸ヘキシルのようなC−Cアジピン酸エステルである。好ましい実施形態における可塑剤はトリエチレングリコールジ−(2−ヘキサン酸エチル)である。
【0077】
接着性制御剤(ACA)を、所望の接着性を付与するため、本発明のポリマー層に含ませてもよい。このような物質は、例えば三ポリマー層の実施形態の外側層に組み入れることができる。U.S.Patent 5,728,472に開示されているACAはいずれも使用できる。さらに、残留する酢酸ナトリウムおよび/または酢酸カリウムは、酸で中和する際に使用される会合ヒドロキシドの量を変えることによって調節できる。各種実施形態において、本発明のポリマー層は、酢酸ナトリウムに加えて、マグネシウムビス(2−酪酸エチル)(chemical abstract No.79992−76−0)を含んでいる。このマグシウム塩は、ポリマー層のガラスに対する接着性を制御するのに有効な量で含ませることができる。
【0078】
添加物は、ポリマー層に組み込んで、最終製品の性能を増強することができる。このような添加物としては、限定されないが、可塑剤、染料、顔料、安定剤(例えば紫外線安定剤)、酸化防止剤、難燃剤、他のIR吸収剤、粘着防止剤、これら添加物の組合せなどが挙げられ、当分野で公知である。
【0079】
可視スペクトルまたは近赤外スペクトルの光を選択的に吸収する物質は、適切などのポリマー層にも添加できる。使用できる物質としては、染料および顔料、例えば酸化スズインジウム、酸化スズアンチモンまたは六ホウ化ランタン(LaB)が挙げられる。
【0080】
任意の適切な方法を使用して、ポリ(ビニルブチラール)を製造できる。ポリ(ビニルブチラール)の適切な製造法の詳細は、当業者には公知である(例えばU.S.Patent 2,282,057およびU.S.Patent 2,282,026参照)。一実施形態では、B.E.Wade著(2003年)「Encyclopedia of Polymer Science & Technology」第三版 第八巻 381から399ページ Vinyl Acetal Polymersの章に記載の溶媒法を使用できる。もう一つの実施形態では、上記文献に記載の水性法を使用できる。ポリ(ビニルブチラール)は、各種の形態で、例えば米国ミズーリ州セントルイス所在のSolutia Inc.から、Butvar(商標)樹脂として市販されている。
【0081】
「樹脂」は、本明細書で使用する場合、酸触媒反応およびその後のポリマー前駆体の中和反応から得られる混合物から取り出されるポリマー(例えばポリ(ビニルブチラール))成分を意味する。樹脂は、一般に、ポリマー例えばポリ(ビニルブチラール)に加えて、アセテート、塩およびアルコールなどの他の成分を有している。「溶融物」は、本明細書で使用する場合、樹脂と可塑剤および場合により他の添加物の混合物を意味する。
【0082】
ポリ(ビニルブチラール)層の代表的な一形成法は、樹脂、可塑剤および添加物を含む溶融ポリ(ビニルブチラール)を押出し、次いでこの溶融物を、シート押出しダイ(例えば縦の寸法より横の寸法が有意に大きい開口を有するダイ)を通じて吐出させるステップを含んでいる。ポリ(ビニルブチラール)層のもう一つの代表的な形成法は、溶融物を、ダイからローラ上に流延し、この樹脂を凝固させ、次いでこの凝固させた樹脂をシートとして取り出すステップを含んでいる。
【0083】
各種実施形態において、個々の中間層を、層のスタック中に集め次いでそれらの層に十分な熱と圧力を加えてそれらの層をタックしてプレラミネートを形成することによって、「プレラミネート」中間層が製造される。次にこのプレラミネートは、圧延する、さもなければ、ラミネートされるグレージング中に使用されるまで必要に応じて貯蔵され、次いでこのように使用されるとき、プレラミネートは二層のガラスの間に配置され積層されて最終の複数層グレージングが製造される。
【0084】
各種実施形態において、本発明の中間層は、0.1から2.5mm、0.2から2.0mm、0.25から1.75mmおよび0.3から1.5mmの全厚を有していてもよい。複数層中間層の個々のポリマー層は、例えば厚さがほぼ等しく、合わせると全厚が上記範囲内になり得る。勿論、他の実施形態では、これらの層の厚さは異なっていてもよく、合わせてやはり上記全厚にすることができる。例えば厚さは、外側層が0.18から0.36mmおよび内側層が0.12から0.16mmで、全体の厚さは0.51から0.89mmであり得る。
【0085】
本発明の各種実施形態では、これらのいずれの層も、特に外側層は、厚さが0.05から0.71mm(2から28mil)、0.05から0.64mm(2から25mil)または0.05から0.51mm(2から20mil)であり得る。これらの厚さの範囲は、R、RSMおよび耐久性について本明細書の外の部分で述べたどの価とも組合すことができる。好ましい実施形態では、複数層中間層の外側層の片方または両方は、厚さが0.05から0.71mm、0.05から0.64mmまたは0.05から0.51mmであり、R値は50から90、60から90または60から80である。
【0086】
上記ポリマー層に対するパラメータは、ポリ(ビニルブチラール)型の層である本発明の複数層構造体のいずれの層にも当てはまる。
【0087】
以下のパラグラフには、ポリマー層の特性を改善および/または測定するために使用できる各種技術が記載されている。
【0088】
およびRSMを測定する場合は、15cmX15cmの可塑化ポリマー層の試験試料を、室温の循環流体で調節されている真空プレート上に配置する。3.44kPa(5psi)の真空度をかけて試料をプレートの表面に押し付ける。PRK駆動ユニットおよびRFHTB−250トレーシングスタイラスを備えたmodel S8P Perthometer(米国ニューヨーク所在のMahr Gage Co.から入手可能)を使って、試験試料の各面のポリマー層表面の荒さを直接測定する。プロファイルセレクション(profile selection)を上記装置の「R」に設定する。トレーシングスタイラスは、自動的に試料の表面を横切って移動する。各トレースの長さ(L)は17.5mmであり、これは2.5mmの試料の長さ(L)が七つ連続した長さで構成されている。測定長さ(L)は12.5mmであり、各トレースの最初および最後の部分を除いて得られる五つ連続した試料の長さ(L)で構成されている。これら五つ連続した試料の長さLの荒さの深さの平均値を測定し、およびRはこのような測定値10個の平均値であり、五つの測定値を、機械の押出する方向(MD)で取り、五つの測定値を機械の方向に直角の方向(CMD)に取った。各方向の二つの連続トレースの間の距離は3mmである。RSM即ち平均ピーク距離は、Rと同じ測定法で測定される。各測定長(L)内のすべてのプロファイルピークの平均距離が測定され、および各機械方向について報告されるRSMは、この方向のこのような五つの測定値の平均値である。RおよびRSMを試験中のPerthometerのセットアップスイッチの位置は以下の通りである。フィルター:GS、プロファイル:R、LC:N 2.5mm、LT:17.5mm、VB:625マイクロメーターである。RおよびRSMの価は、本明細書を通じて、マイクロメーターで示す。
【0089】
また、本発明のポリマー層は、下記技術に従って測定されるこれらの「耐久性」によって特徴付けられる。エンボスされるポリマー層の場合、このポリマー層はエンボスされる前のR(Rベース)が測定される。エンボスした後、第二のR(Rファイナル)を測定する。エンボスされないポリマー層については、荒さの測定値Rを測定し、指定されたRファイナルおよびRベースはゼロ値が与えられる。次いでエンボスされた層およびエンボスされていない層の両方について、12.7cmの試料をこのポリマー層から切り出す。ポリ(エチレンテレフタレート)フィルムを、水平面上に載せた木製フレームの一方の1/2の端縁の上に配置する。なお、このフレームの外周はポリマー層の試料より僅かに小さい。次いで、このポリマー層の試料は、ポリ(エチレンテレフタレート)フィルムが木製フレームとポリマー層の端縁との間に位置するように木製フレーム上に配置され、この状態で、ポリマーフィルムが木製フレームに接着して解体が困難にならないようにする。次に、第二のポリ(エチレンテレフテレート)フィルムを、ポリマー層の上に配置して、木製フレームの第二の1/2をポリ(エチレンテレフタレート)フィルムの上部に配置する。次いでフレームのこれら二つの1/2部分をバインダークリップで締着して、これによってポリマー層を、これら二つのポリ(エチレンテレフテレート)フィルムとフレームの二つの1/2部分の間にサンドイッチする。次に、上記フレームおよびポリマーの集合体を、100℃にて5分間、予熱されたオーブン内に入れる。次いで集合体を取り出して冷却する。次いで、ポリマー層試料の別のR値を測定する(R100℃)。
【0090】
次に耐久性の価を下記式で計算する。
【0091】
【数2】

【0092】
下記手順を使用して斑状吸収を測定する。(米国オハイオ州トレド所在のKneisley Electric Companyから市販されている、kni−tron整流器(モデル番号R−2120−2)によって作動されるキセノンライト)シャドウグラフライトを、暗室中にて白色表面から1m離して配置する。試料を、白色表面と前記光源の間の、最低の許容できる光学的性質を示す「最大標準レベル」の標準ラミネートの次に保持する。白色表面に投影された画像を、目視で検査する。試料の画像が最大標準レベルの標準より劣っている場合、この試料は著しく大きな歪を有しているので棄却される。試料が、少なくとも最大標準レベルの標準と同様に良好である場合、試料のグレードが測定されるまで、順次、光学的に優れた標準と比較する。試料は、機械の方向と直角の方向および機械の方向について評価し、この二つの最悪のグレードを試料のグレードに指定する。グレード0は、光学的歪が全く目視できないことを示す。グレード1または2は軽度の歪が見られることを示す。グレード3から4は歪が明らかに軽度を超えていることを示す。5以上のグレードは、有意な歪が観察され、この積層体が、例えば自動車のウインドシールドのような目視清澄性を必要とする用途には恐らく使用できないことを示す。
【0093】
ポリマー層および特にポリ(ビニルブチラール)層の清澄性は、層を通過する入射ビームの方向から分散される光の量を定量化した価のヘーズ値を測定することによって決定できる。ヘーズ百分率は下記技術で測定できる。ヘーズの量を測定する装置:Hazemeter,Model D25(Hunter Associates(米国、バージニア州レストン)から入手できる。)を、オブザーバーアングル2°でIlluminant Cを使ってASTM D1003−61(Re−approved1977)−Procedure Aに従って使用できる。本発明の各種実施形態においてヘーズ百分率は5%未満であり、3%未満であり、および1%未満である。
【0094】
可視光透過率は、国際標準ISO 9050:1990に記載の方法によって、Perkin Elmer Corp.製Lambda 900のようなUV−Vis−NIR分光光度計を使用して定量できる。各種の実施形態において、本発明のポリマー層の透過率は少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%である。
【0095】
連打接着性(pummel adhesion)は下記技術で測定することができ、この「連打接着性」は、本明細書ではポリマー層のガラスに対する接着性を意味し、下記技術を使用して測定できる。2プライガラス積層試料を、標準オートクレーブ積層条件で調製する。この積層体を約−18℃(0°F)まで冷却し、次いで手作業にてハンマーで連打してガラスを破壊する。ポリ(ビニルブチラール)層に接着していない破壊されたすべてのガラスを除いて、ポリ(ビニルブチラール)層に接着して残っているガラスの量を、一組の標準と目視で比較する。これら標準は、ポリ(ビニルブチラール)層に接着して残っているガラスの各種程度の尺度である。特に連打標準ゼロの場合、ガラスはポリ(ビニルブチラール)層に接着して残っていない。連打標準10の場合、ガラスの100%がポリ(ビニルブチラール)層に接着して残っている。本発明のポリ(ビニルブチラール)層の連打標準値は、例えば3から10であり得る。
【0096】
ポリマー層の引張り破断応力は、JIS K6771に記載の方法で測定できる。
【0097】
実施例
【実施例1】
【0098】
二つの三層中間層の試料を、後に三つの別個の中間層に切り分けることができる長さで、別個に、同時押出しをおこなう。各中間層は、二つの0.3302mm(13mil)の層の間にサンドイッチされた0.1524mm(6mil)の層を含み、全厚さが0.8128mm(32mil)である。この内側層は、75phrの可塑剤(トリエチレングリコールジ−(2−ヘキサン酸エチル))および11.0%の残留ポリビニルアルコールを含み、一方外側層は、38phrの可塑剤(トリエチレングリコールジ−(2−ヘキサン酸エチル))および18.5%の残留ポリビニルアルコールを含む。
【0099】
上記二つの中間層の試料の表面特性を、メルトフラクチャー付きで同時に押し出す間に制御して、異なるレベルのRを付与する。第一中間層(試料A)はR値が約20である。第二中間層(試料B)はR値が約40である。正確なR値は表1に示してあり、表1中の「CMD」は機械の方向に直角の方向を意味しおよび「MD」は機械の方向を意味し、各中間層の両面の測定値を示してある。
【0100】
【表1】

【0101】
次いで、試料Aを切断して四つの別個の中間層にし、試料Bも四つの別個の中間層に分割する。
【0102】
次に、各試料の別個の中間層のうち三つにエンボスする。このエンボス加工は、49.2ライン/cm(125ライン/インチ)のエンボスパターンで、本明細書の別の部分で述べているようにして実施する。各試料のうち一つの中間層はエンボスせずに残す。
【0103】
以下の諸表は、エンボス条件および得られるRSM値およびR値を示す。
【0104】
表2は、174℃(345°F)にて7.6m(2.5フィート)/minの速度でエンボスして、試料Aおよび試料Bから形成した中間層の試験結果である。
【0105】
【表2】

【0106】
表3は、193℃(380°F)にて7.6m(2.5フィート)/minの速度でエンボスした試料Aおよび試料Bから形成した中間層の試験結果を示す。
【0107】
【表3】

【0108】
表4は、204℃(400°F)にて4.6m(1.5フィート)/minの速度でエンボスして、試料Aおよび試料Bから形成した中間層の試験結果を示す。
【0109】
【表4】

【0110】
次に、表2、3および4に示す六つのエンボスされた試料を、先に詳しく述べた耐久性試験法に従って、フレームおよびポリマー集合体内に配置し、次いで、このフレームおよびポリマー集合体を,予め加熱したオーブン中に、100℃にて5分間入れる。これら六つのエンボスされた試料を、冷却した後、再度、RSMおよびRを試験して、その結果を表5、6および7に示す。
【0111】
表5は、174℃(345°F)にて7.6m(25フィート)/minの速度でエンボスした試料Aおよび試料Bから形成した中間層の試験結果を示す。
【0112】
【表5】

【0113】
表6は、193℃(380°F)にて7.6m(25フィート)/minの速度でエンボスした試料Aおよび試料Bから形成した中間層の試験結果を示す。
【0114】
【表6】

【0115】
表7は、204℃(400°F)にて4.6m(15フィート)/minの速度でエンボスした試料Aおよび試料Bから形成した中間層の試験結果を示す。
【0116】
【表7】

【0117】
表1から7のデータから、六つのエンボスされた各中間層の耐久性の値を、本明細書の外の部分で述べた方法に従って測定する。試験結果を表8に示す。
【0118】
【表8】

【0119】
六つのエンボスされた試料および二つのエンボスされていない試料を、2枚のガラス板の間に配置して積層した。積層は、ポリ(ビニルブチラール)シートおよびガラスを、望ましい性能および光学的清澄性を有する、組み合わせた最終形態の安全ガラスに変換するマルチステップの方法である。
【0120】
真空バッグ脱気法は、剛性基板/中間層/剛性基板の構造体から、最終ステップのオートクレーブ処理を行なう前に、空気を排除するのに使用する技術である。この技術を頻繁に利用して、商業的操業におけるオートクレーブ処理の歩留まりを改善することができる。試料を弾性ゴムバッグ内に入れ、次いでこのバッグに連結した真空ホースによってバッグの排気を行なう。一実施形態では、このバッグを、真空のままで、温度を約50℃まで上げて60分間保持し、次いで120℃で20分間保持する。次にこのバッグを冷却し、生成したパネルを取り出して、オートクレーブ中に入れて最終の仕上げ処理を行なう。
【0121】
真空バッグによる脱気を行なった後オートクレーブ処理を実施する前に、百分率として光透過率の測定を行なう。大きい数値は曇り度が低いことを示し、このことは、剛性基板/中間層/剛性基板構造体中に空気がほとんど残っていない、または全く残っていないことを意味する。
【0122】
斑状吸収の測定は、オートクレーブ処理の後に実施する。
【0123】
光透過率は、接着光度計(adhesion photometer)(Tokyo Denshoku#S−904356)を使用して試験する。各積層体は、この全体にわたって分散した位置について8回試験し、次いでこの八つの試験結果を平均して光透過率を得て表9に示した。なお表9中のLTは光透過率を意味する。
【0124】
【表9】

【0125】
斑状吸収を、本明細書の他の部分で記載したようにして測定し、5名の観察者の観察結果を平均して、最終斑状吸収のグレードを得る。試験結果を表10に示す。表10中の「Smp」は試料を意味し、「MD」は機械の方向を意味し、「CMD」は機械の方向に直角の方向を意味し、ならびに「ファイナル」は斑状吸収のグレードを意味し、このグレードは、機械方向および、機械と直角の方向がより大きい。
【0126】
【表10】

【0127】
本発明によって、音響の透過を減少させた、扱いやすくおよびウインドシールドおよび建造物の窓用の積層ガラスパネルなどの複数層構造体に容易に組み入れることができる複数層中間層を提供できる。
【0128】
本発明を代表的な実施形態で参照して説明してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、各種の変更を行いおよびこの要素を等価物で置換できることは、当業者には理解される。さらに、本発明の本質的な範囲を逸脱することなく、多くの変更を行い、特定の状態もしくは材料に本発明の教示を適合させることができる。それ故、本発明は、本発明を実施するための最良の方式として開示された特定の実施形態に限定することなく、後記特許請求の範囲の範囲内に入るすべての実施形態を含むものである。
【0129】
さらに、本発明の任意の単一の要素に与えられる範囲、価または特性は、互換できる場合、本発明の任意の他の要素に与えられる任意の範囲、価または特性と入れ替えて、本明細書全体にわたって、各要素について定義された値を有する実施形態を作製できると理解される。例えば適正な場合、可塑剤の任意の所与の範囲に加えて任意の所与の範囲の残留アセテート基含有量を含み、ならびに所与のR値、RSM値および耐久性値を有するポリマー層を形成して、本発明の範囲内にあるが挙げることが面倒な多くの変形を形成できる。
【0130】
要約または任意の特許請求の範囲に記載の図面の参照番号は、例示することだけを目的とし、特許を請求される発明を、任意の図面に示す任意の一つの特定の実施形態に限定するとみなすべきでない。
【0131】
図面は、特に断らない限り、一定の尺度では描かれていない。
【0132】
本明細書に引用されている雑誌の論文、特許、出願および書籍を含む各引用文献は、この全体を、参照により本明細書に組み入れられるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑化された熱可塑性ポリマーを含む第一ポリマー層、
可塑化された熱可塑性ポリマーを含む第二ポリマー層、および
可塑化された熱可塑性ポリマーを含む第三ポリマー層
を含み、
前記第二ポリマー層が、前記第一ポリマー層および前記第三ポリマー層の間に配置され、
前記第一ポリマー層の引張り破断応力が、前記第二ポリマー層の引張り破断応力より少なくとも15kg/cm大きく、
前記第三ポリマー層の引張り破断応力が、前記第二ポリマー層の引張り破断力より少なくとも15kg/cm大きく、
前記第二ポリマー層の反対側の前記第一ポリマー層の表面はエンボスされたR値が50から90ミクロンであり、および
前記第一ポリマー層は厚さが0.05から0.71mmである
ポリマー中間層。
【請求項2】
前記第二ポリマー層の反対側の前記第一ポリマー層の前記表面はエンボスされたRSM値が700ミクロン未満である、請求項1に記載の中間層。
【請求項3】
前記第二ポリマー層の反対側の前記第一ポリマー層の前記表面は耐久性値が95%未満である、請求項1に記載の中間層。
【請求項4】
前記第二ポリマー層の反対側の前記第三ポリマー層の表面はエンボスされたR値が50から90ミクロンであり、エンボスされたRSM値が700ミクロン未満でありおよび耐久性値が95%未満である、請求項1に記載の中間層。
【請求項5】
前記第一ポリマー層、前記第二ポリマー層および前記第三ポリマー層が各々ポリ(ビニルブチラール)を含む、請求項1に記載の中間層。
【請求項6】
前記第二ポリマー層の反対側の前記第一ポリマー層の表面はエンボスされたR値が50から70ミクロンである、請求項1に記載の中間層。
【請求項7】
可塑化された熱可塑性ポリマーを含む第一ポリマー層、
可塑化された熱可塑性ポリマーを含む第二ポリマー層、および
可塑化された熱可塑性ポリマーを含む第三ポリマー層
を含み、
前記第二ポリマー層が前記第一ポリマー層と前記第三ポリマー層の間に配置され、
前記第一ポリマー層が、前記第二ポリマー層の引張り破断応力より少なくとも15kg/cm大きい引張り破断応力を有し、
前記第三ポリマー層が、前記第二ポリマー層の引張り破断応力より少なくとも15kg/cm大きい引張り破断応力を有し、および
前記第二ポリマー層の反対側の前記第一ポリマー層の表面は、耐久性値が95%未満である
ポリマー中間層。
【請求項8】
前記第二ポリマー層の反対側の前記第一ポリマー層の前記表面はエンボスされたRSM値が700ミクロン未満である、請求項7に記載の中間層。
【請求項9】
前記第二ポリマー層の反対側の前記第一ポリマー層の前記表面は、R値が50から90ミクロンであり厚さが0.05から0.71mmである、請求項7に記載の中間層。
【請求項10】
前記第二ポリマー層の反対側の前記第三ポリマー層の表面はエンボスされたR値が50から90ミクロンであり、エンボスされたRSM値が700ミクロン未満でありおよび耐久性値が95%未満である、請求項7に記載の中間層。
【請求項11】
前記第一ポリマー層、前記第二ポリマー層および前記第三ポリマー層が各々ポリ(ビニルブチラール)を含む、請求項7に記載の中間層。
【請求項12】
前記第二ポリマー層の反対側の前記第一ポリマー層の表面は、耐久性値が90%未満である、請求項7に記載の中間層。
【請求項13】
可塑化された熱可塑性ポリマーを含む第一ポリマー層、
可塑化された熱可塑性ポリマーを含む第二ポリマー層、および
可塑化された熱可塑性ポリマーを含む第三ポリマー層
を含み、
前記第二ポリマー層が、前記第一ポリマー層と第三ポリマー層の間に配置され、
前記第一ポリマー層の引張り破断応力が、前記第二ポリマー層の引張り破断応力より少なくとも15kg/cm大きく、
前記第三ポリマー層が、前記第二ポリマー層の引張り破断応力より少なくとも15kg/cm大きい引張り破断応力を有し、
前記第二ポリマー層の反対側の前記第一ポリマー層の表面はエンボスされたRSM値が700ミクロン未満である
ポリマー中間層。
【請求項14】
前記第二ポリマー層の反対側の前記第一ポリマー層の前記表面は、耐久性値が95%未満である、請求項13に記載の中間層。
【請求項15】
前記第二ポリマー層の反対側の前記第一ポリマー層の表面はR値が50から90ミクロンであり、および厚さが0.05から0.71mmである、請求項13に記載の中間層。
【請求項16】
前記第二ポリマー層の反対側の前記第三ポリマー層の表面はエンボスされたR値が50から90ミクロンであり、エンボスされたRSM値が700ミクロン未満でありおよび耐久性値が95%未満である、請求項13に記載の中間層。
【請求項17】
前記第一ポリマー層、前記第二ポリマー層、および前記第三ポリマー層が各々ポリ(ビニルブチラール)を含む、請求項13に記載の中間層。
【請求項18】
前記第二ポリマー層の反対側の前記第一ポリマー層の表面はエンボスされたRSM値が600ミクロン未満である、請求項13に記載の中間層。
【請求項19】
第一ポリマー溶融物、第二ポリマー溶融物および第三ポリマー溶融物を形成し、
前記第一ポリマー溶融物、前記第二ポリマー溶融物および前記第三ポリマー溶融物を同時に押出して前記中間層を形成し、
前記中間層を90℃未満まで冷却し、
前記中間層の表面を、138℃から204℃まで加熱し、ならびに
前記中間層の前記表面を、前記エンボス加工によって、R値20から90ミクロンまでエンボスする
ステップを含み、
前記第一ポリマー層は、引張り破断応力が前記第二ポリマー層の引張り破断応力より少なくとも15kg/cm大きく、および
前記第三ポリマー層は、引張り破断応力が前記第二ポリマー層の引張り破断応力より少なくとも15kg/cm大きい
ポリマー中間層の製造方法。
【請求項20】
前記冷却を60℃未満まで実施する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第一ポリマー溶融物、第二ポリマー溶融物および第三ポリマー溶融物を形成し、
前記第一ポリマー溶融物、前記第二ポリマー溶融物および前記第三ポリマー溶融物を同時に押出して前記中間層を形成し、
前記中間層を90℃未満まで冷却し、
前記中間層の表面を、138℃から204℃まで加熱し、ならびに
前記中間層の前記表面を、前記エンボス加工によって、R値20から90ミクロンまでエンボスし、
前記第一ポリマー層は、引張り破断応力が前記第二ポリマー層の引張り破断応力より少なくとも15kg/cm大きく、
前記第三ポリマー層は、引張り破断応力が前記第二ポリマー層の引張り破断応力より少なくとも15kg/cm大きく、ならびに
前記中間層を、二つの剛性基板の間に積層して前記複数層グレージングパネルを形成する
ステップを含む方法で製造される複数層グレージングパネル。

【図1】
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【公表番号】特表2010−524843(P2010−524843A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506547(P2010−506547)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/061688
【国際公開番号】WO2008/134594
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(500276390)ソリユテイア・インコーポレイテツド (43)
【Fターム(参考)】