説明

オイルクーラ

【課題】オイルに対する冷却・加熱作用をより広範囲に変化させることができるオイルクーラ1を提供する。
【解決手段】自動変速機の作動油を冷却するオイルクーラ1として、多数のプレート2を積層してなる熱交換器コア3と、その頂部に取り付けられた流路制御弁4と、を有する。流路制御弁4は、頂部のプレート2にロー付けされたバルブハウジング11とロータリバルブ31とからなり、低温冷却水が供給される低温冷却水導入口14と高温冷却水が供給される高温冷却水導入口15と冷却水を戻す冷却水導出口18とが設けられている。熱交換器コア3のコア冷却水入口7およびコア冷却水出口8は、バルブハウジング11内部に連通している。ロータリバルブ31の切換位置に応じてこれらの流路が適宜に連通し、作動油に対する加熱・冷却作用が調節される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車の自動変速機の作動油の冷却あるいは内燃機関の潤滑油の冷却などに用いられるオイルクーラの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の自動変速機に用いられる作動油は、一般に、運転中に内燃機関の冷却水よりも高温となるので、この冷却水を利用したオイルクーラによって冷却することで、適宜な温度に維持するようになっている。オイルクーラは、例えば自動変速機のハウジングに取り付けられ、かつ内燃機関側から外部配管を介して冷却水を導く構成が一般的である。
【0003】
ここで、例えば冬季の冷間始動時などでは、始動直後は、冷却水温度の早期昇温を図るために、オイルクーラでの作動油の冷却を行わないようにすることが望ましい。そのため特許文献1には、サーモスタットバルブを用いたバイパス機構をオイルクーラの入口側と出口側との間に設け、冷却水温度が所定温度に達するまで、冷却水をオイルクーラに通流させずにバイパスさせるようにした構成が開示されている。また特許文献2には、機関潤滑油の温度に感応するサーモスタットバルブをオイルクーラのオイル系統に設け、潤滑油が所定の高温となるまではオイルクーラに通流させないようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−286846号公報
【特許文献2】特公平3−79637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動変速機の作動油や内燃機関の潤滑油を冷却するオイルクーラにあっては、文字通りの冷却作用のみならず、状況によっては、逆に冷却水の熱によってオイルを加温する、という作用が望まれる場合がある。例えば、自動変速機の作動油は、始動後の温度上昇が一般に冷却水温度よりも緩慢であるので、この期間では、冷却水を用いた加熱作用により作動油の温度上昇を促進することで、早期にフリクション低減が図れる。
【0006】
しかしながら、上述したような従来のオイルクーラにあっては、冷却水あるいはオイルのオイルクーラへの通流をオン・オフ的に制御することで両者の熱交換を制御するに過ぎず、オイルに対する冷却・加熱作用をより広範囲に変化させることができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るオイルクーラは、多数のプレートを積層することでオイルが通流するオイル通路と冷却水が通流する冷却水通路とをプレート間に画成した熱交換器コアと、この熱交換器コアの頂部のプレートに開口し、かつ上記冷却水通路に連通したコア冷却水入口およびコア冷却水出口と、上記熱交換器コアの頂部に取り付けられ、温度が相対的に高い冷却水および相対的に低い冷却水が各々供給される第1の冷却水導入口および第2の冷却水導入口を有するとともに、これらの2つの冷却水導入口を切り換えて上記コア冷却水入口と連通させる流路制御弁と、を備えている。
【0008】
例えば内燃機関の冷却水系統においては、温度の異なる2種類の冷却水を容易に得ることができる。例えばラジエータ通過直後の冷却水は比較的低温であり、内燃機関のウォータジャケット通過後の冷却水は比較的高温である。本発明のオイルクーラでは、例えばオイルの温度が低く冷却水でもって加温したいときに、相対的に高温の冷却水を利用して積極的に加温することができ、あるいは冷却の程度を弱めたいときも高温の冷却水を利用でき、逆にオイルを強く冷却したいときには、相対的に低温の冷却水を熱交換器コアに導入してオイルをより積極的に冷却することができる。
【0009】
望ましい一つの態様では、上記流路制御弁は、さらに、上記コア冷却水出口に連通した冷却水導出口を有しており、上記第1,第2の冷却水導入口の少なくとも一方を上記冷却水導出口にバイパスさせることができるように構成されている。上記冷却水導出口は、熱交換器コアを通流してコア冷却水出口から出た冷却水の排出経路となるとともに、熱交換器コアをバイパスした冷却水の排出経路ともなる。
【0010】
例えば、上記流路制御弁は、上記第1の冷却水導入口と上記第2の冷却水導入口と上記コア冷却水入口と上記冷却水導出口とにそれぞれ連通した4個のポートと、回転位置によってこれらのボートの連通状態を切り換える弁体と、を備えてなるロータリバルブからなる。なお、4個のポートの配置は、弁体の構成、ならびに、どのような態様で流路を切り換えたいかに応じて異なるものとなる。
【0011】
ここで、上記流路制御弁は、流路を完全に切り換えるものでなくてもよく、開度が段階的あるいは連続的に変化する中間位置を備えることができ、例えば、上記第1,第2の冷却水導入口から供給されるいずれかの冷却水を上記コア冷却水入口と上記冷却水導出口とに分流させる中間位置を備えるものとすることができる。
【0012】
具体的な一つの態様では、上記流路制御弁は、上記熱交換器コアの頂部に上記コア冷却水出口を覆うように取り付けられるバルブハウジングを備え、このバルブハウジングが、上記第1,第2の冷却水導入口から上記冷却水導出口へ至るバイパス通路を形成しているとともに、上記コア冷却水出口が該バイパス通路に連通している。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、温度が異なる冷却水がそれぞれ供給される第1,第2の冷却水導入口を熱交換器コア頂部に設けた流路制御弁が切り換えることで、オイルに対する冷却・加熱作用をより広範囲に変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明に係るオイルクーラの斜視図。
【図2】このオイルクーラが組み込まれる冷却水系統の説明図。
【図3】流路制御弁の分解斜視図。
【図4】流路制御弁の半断面図。
【図5】ロータリバルブの各切換位置を示す説明図。
【図6】一実施例の温度制御を冷却水温度および作動油温度とともに示す特性図。
【図7】ロータリバルブの変形例を示す説明図。
【図8】ロータリバルブの他の変形例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は、この発明を、自動車用自動変速機の作動油の冷却を行うオイルクーラ1に適用した一実施例を示している。
【0017】
このオイルクーラ1は、図2に概略を示す自動車用内燃機関の冷却水系統に組み込まれて用いられるもので、初めに図2を説明すると、内燃機関の基本的な冷却水循環系は、周知のように、シリンダブロック51およびシリンダヘッド52の内部に形成されたウォータジャケットと、ラジエータ53と、サーモスタット54と、ウォータポンプ55と、から大略構成されており、内燃機関各部の熱を受けて高温となった冷却水がシリンダヘッド52の後端部から取り出されて、ラジエータ入口通路56を介してラジエータ53へ導入され、ラジエータ53を通過して低温となった冷却水がウォータポンプ55によりシリンダブロック51前端部に戻されるようになっている。なお、上記サーモスタット54は、冷却水温度に感応して切換動作し、ウォータポンプ55の上流側(吸入側)を低温時にはバイパス通路57側に、高温時にはラジエータ53側にそれぞれ連通させる。ラジエータ入口通路56からはウォータポンプ55の上流側に至るヒータ通路58が分岐しており、このヒータ通路58に、車室暖房用のヒータコア59が介装されている。
【0018】
また、オイルクーラ1用の冷却水通路として、ラジエータ入口通路56から高温冷却水通路60が分岐しているとともに、ウォータポンプ55下流側から低温冷却水通路61が分岐しており、それぞれオイルクーラ1に接続されている。また、オイルクーラ1から冷却水を戻すための冷却水戻り通路62が、オイルクーラ1からウォータポンプ55吸入側へと接続されている。オイルクーラ1は、例えば自動変速機63のハウジング(図示せず)の外壁面に取り付けられているものであり、オイル通路64として示すように自動変速機63内部の作動油がオイルクーラ1へと循環している。
【0019】
上記オイルクーラ1は、図1に示すように、作動油と冷却水との熱交換を行う熱交換器コア3と、この熱交換器コア3へ導入する冷却水の切換ないし制御を行う流路制御弁4と、を備えている。上記熱交換器コア3は、矩形の浅い皿形をなすプレート2を積層することで、各々のプレート2間に、作動油が通流するオイル通路と冷却水が通流する冷却水通路とを交互に画成した公知の構成のものであり、厳密には、細部が異なる2種類のプレート2が交互に配置され、各プレート2にボス状に形成された開口部を介して、プレート2間の個々のオイル通路が互いに連通し、かつ同様に、プレート間の個々の冷却水通路が互いに連通している。そして、上記熱交換器コア3の底部には、相対的に厚肉の底部プレート5が積層されており、この底部プレート5の底面に図示せぬオイル入口およびオイル出口が開口形成されている。この底部プレート5は、周囲の取付孔6および図示せぬボルトを介して自動変速機63の図示せぬハウジング外壁面に固定され、自動変速機63側のオイル通路と上記のオイル入口およびオイル出口がそれぞれ接続される。つまり上記オイル入口から熱交換器コア3内部に流入した作動油は、プレート2間のオイル通路を通り、隣接するプレート2間の冷却水通路の冷却水と熱交換した後、オイル出口から自動変速機63側へと戻る。
【0020】
上記熱交換器コア3の頂部に位置するプレート2には、熱交換器コア3における冷却水の入口および出口となるコア冷却水入口7およびコア冷却水出口8が開口形成されている。これらのコア冷却水入口7およびコア冷却水出口8は、矩形のプレート2の対角線上にそれぞれ位置しているが、図1に示すように、同じく矩形のプレート2の対角線に沿って細長く延びた上記流路制御弁4のバルブハウジング11によって覆われており、従って、これらのコア冷却水入口7およびコア冷却水出口8は外部からは見えない。上記コア冷却水入口7から熱交換器コア3内部に流入した冷却水は、プレート2間の冷却水通路を通り、隣接するプレート2間のオイル通路の作動油と熱交換した後、コア冷却水出口8から流出する。
【0021】
上記の複数のプレート2および底部プレート5は、例えば、アルミニウム合金からなる母材の表面にロー材層をコーティングしたいわゆるクラッド材からなり、図1のように互いに積層した状態で炉内で加熱することにより、各部を一体にロー付けしてある。
【0022】
図3は、上記流路制御弁4の分解斜視図、図4は、同流路制御弁4の半断面図、をそれぞれ示している。これらの図に示すように、上記バルブハウジング11は、平坦な頂部壁11aと周壁11bとを有する下面が開口した細長い長円形状をなし、かつ中央に円筒形のバルブ嵌合壁12を備えている。このバルブ嵌合壁12の下端は、バルブハウジング11下面の空間内に延び、周壁11b下端と同一平面上に位置している。またバルブ嵌合壁12の上部は、上記頂部壁11aから上方へ突出し、かつ両側の一対のボルトボス部13と一体に連続している。また、上記バルブ嵌合壁12の側方(詳しくは、上記ボルトボス部13の位置に対し90°異なる方向)には、それぞれ円筒形をなす低温冷却水導入口14と高温冷却水導入口15とが設けられており、それぞれに、金属製のコネクタパイプ16,17が取り付けられている。また、上記頂部壁11aの一方の端部には、冷却水導出口18が開口形成されており、ここにも同様のコネクタパイプ19が取り付けられている。
【0023】
図4に示すように、バルブハウジング11の下面側においては、細長い長円形状をなす周壁11bの中央にバルブ嵌合壁12が位置することから、バルブ嵌合壁12の両側に一対の細長い空間つまり入口通路部20とバイパス通路部21とが画成されている。上記冷却水導出口18は、バイパス通路部21側に設けられており、かつ上述したコア冷却水出口8の直上に位置している。つまり、冷却水導出口18とコア冷却水出口8の双方がバイパス通路部21に連通している。バルブ嵌合壁12を中心として逆方向に延びた上記入口通路部20は、上述したコア冷却水入口7を覆っており、該コア冷却水入口7に連通している。なお、上記コア冷却水入口7は、上記冷却水導出口18と対称となる位置に開口している。
【0024】
また上記バルブ嵌合壁12の周面には、90°毎に4個のポート23〜26が開口形成されている。具体的には、上記入口通路部20へ向かって開口したコア入口ポート23と、上記バイパス通路部21へ向かって開口したバイパスポート24と、上記低温冷却水導入口14と連通した低温冷却水導入ポート25と、上記高温冷却水導入口15と連通した高温冷却水導入ポート26と、を備えている。これらのポート23〜26は、各々略矩形状をなし、各ポート間の仕切りとなる部分を残して可及的に広い角度範囲で開口している。
【0025】
上記のように構成されたバルブハウジング11には、上記バルブ嵌合壁12とともにロータリバルブ31を構成する円筒形のアクチュエータ部32が、一対のボルト33を介して取り付けられている。上記アクチュエータ部32の中心には、該アクチュエータ部32によって回転位置が位置決めされる弁体34が同心状に配置されている。この弁体34は、回転軸35と、大径部および小径部が階段状に連続した円形のベース部36と、このベース部36の周縁に沿って軸方向に延びた半円筒壁37と、を有し、上記半円筒壁37は、図5にも示すように、180°の角度範囲に亘って設けられている。上記ベース部36および上記半円筒壁37は、上記バルブハウジング11のバルブ嵌合壁12内周に回転可能にかつ比較的密に嵌合している。また、上記ベース部36の段差部により生じる空間内に、環状のシール部材39が装着されている。従って、上記弁体34は、基本的に、その回転位置に応じて、4つのポート23〜26の中の2つを開放すると同時に残りの2つを閉塞する。なお、後述するように中間開度とすることも可能である。
【0026】
上記ロータリバルブ31(つまりアクチュエータ部32や弁体34等)は、矩形をなすプレート2の中心に配置されており、このロータリバルブ31を中心として対角線に沿った四方へ向かって、細長いバルブハウジング11および一対のコネクタパイプ16,17がそれぞれ延びている。
【0027】
一つの例では、上記バルブハウジング11は、アルミニウム合金のダイキャストからなり、上述したように熱交換器コア3を炉内で加熱してロー付けする際に、同時に熱交換器コア3頂部のプレート2の上にロー付けされる。そして、コネクタパイプ16,17,19も同時にロー付けすることが可能である。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、炉内でのロー付けにより一体化した熱交換器コア3に事後的にバルブハウジング11を取り付けるようにしてもよく、例えばボルト等で固定することも可能である。
【0028】
上記のように構成されるオイルクーラ1の低温冷却水導入口14および高温冷却水導入口15には、図2で説明した低温冷却水通路61および高温冷却水通路60がそれぞれ外部配管として接続される。また、冷却水導出口18には、図2の冷却水戻り通路62が同じく外部配管として接続されている。
【0029】
図5は、上記のように構成された流路制御弁4における流路の切換の例を示している。上記流路制御弁4は、基本的に90°毎に同図の(a)〜(d)に示す4つの切換位置を有する。
【0030】
例えば(a)の位置では、半円筒形の弁体34は、コア入口ポート23と低温冷却水導入ポート25とを閉塞し、高温冷却水導入ポート26とバイパスポート24とを互いに連通させる。従って、熱交換器コア3内部にはいずれの冷却水も導入されず、高温冷却水通路60から供給された高温冷却水がバルブハウジング11のバイパス通路部21を介して冷却水導出口18から冷却水戻り通路62へと流出する。
【0031】
(b)の位置では、弁体34がバイパスポート24と低温冷却水導入ポート25とを閉塞し、高温冷却水導入ポート26とコア入口ポート23とを互いに連通させる。従って、シリンダブロック51やシリンダヘッド52で暖められた比較的高温の冷却水が熱交換器コア3内部に導入される。この冷却水は、熱交換器コア3内部を通過した後、コア冷却水出口8からバルブハウジング11のバイパス通路部21を横切って冷却水導出口18へ向かい、冷却水戻り通路62へと流出する。
【0032】
(c)の位置では、弁体34がコア入口ポート23と高温冷却水導入ポート26とを閉塞し、低温冷却水導入ポート25とバイパスポート24とを互いに連通させる。従って、(a)の位置と同様に、熱交換器コア3内部にはいずれの冷却水も導入されないが、この位置(c)では、低温冷却水がバイパス通路部21を介して下流の冷却水戻り通路62へ流れる。
【0033】
(d)の位置では、弁体34がバイパスポート24と高温冷却水導入ポート26とを閉塞し、低温冷却水導入ポート25とコア入口ポート23とを互いに連通させる。従って、ラジエータ53通過後の比較的低温の冷却水が熱交換器コア3内部に導入される。この冷却水は、熱交換器コア3内部を通過した後、コア冷却水出口8からバイパス通路部21を経て冷却水導出口18さらには冷却水戻り通路62へと流出する。
【0034】
このように、上記流路制御弁4は、基本的に4つの切換位置を有するが、さらに、図5(e)に例示するような中間開度位置に位置決めすることも可能である。このような中間開度位置は、連続的あるいは段階的に得ることができる。図示した(e)の位置では、半円筒形の弁体34が高温冷却水導入ポート26を閉塞すると同時に、コア入口ポート23およびバイパスポート24を半開とし、かつ低温冷却水導入ポート25を全開としている。従って、比較的低温の冷却水が比較的少ない流量でもって熱交換器コア3内部へ導入され、かつ低温の冷却水の一部はバイパスポート24へと分流される。これにより、作動油に対する冷却作用が抑制される。なお、図示の(e)の位置に限らず、上記の(a)〜(d)の各位置の中間的な位置に制御することが可能であり、例えば位置(b)と位置(d)との中間の位置とすることで、低温冷却水と高温冷却水とを混合して熱交換器コア3内部に導入する、なども可能である。
【0035】
上記のような構成によれば、例えば、内燃機関の冷間始動後に、自動変速機63の作動油の温度をより最適に制御することができる。図6は、冷間始動後の冷却水温度(例えばウォータポンプ55入口の温度)および作動油の温度変化(単純に放置した場合の特性ではなく後述する温度制御により得られる特性である)を示しており、以下、この図6に基づいて上記オイルクーラ1を用いた作動油の温度制御を説明する。なお、基本的に、冷間始動直後は、作動油の温度上昇は冷却水温度の上昇に比べて緩慢である。
【0036】
始動後、冷却水温度が所定温度に達する時刻T1までの期間は、前述した図5の(a)の位置に流路制御弁4が制御される。これにより冷却水から作動油への熱の移動が回避され、冷却水の早期昇温が促進される。これは、内燃機関側での摩擦損失の抑制やヒータ性能の確保に寄与する。冷却水温度が所定温度に達した後、冷却水温度と作動油温度が合致する時刻T2までの期間は、前述した図5の(b)の位置に流路制御弁4が制御される。これにより比較的高温の冷却水が熱交換器コア3内部に導入され、相対的に低温である作動油が冷却水によって加温される。これは例えば自動変速機63の早期のフリクション低減に寄与する。T2の時点では冷却水温度は略一定となるが、作動油温度はさらに上昇する。時刻T2から作動油温度が所定温度に達する時刻T3までは、図5の(e)に示す中間開度位置に流路制御弁4が制御され、低温冷却水の一部が熱交換器コア3内部に導入される。この期間T2〜T3は、作動油温度があまり下がらないように適度な冷却を与える期間に相当する。そして、仮に時刻T3において車両の運転条件などにより作動油温度が所定温度を超えた場合は、図5の(d)の位置に流路制御弁4が制御される。これにより低温冷却水の全量が熱交換器コア3内部に導入され、より積極的な冷却がなされる。
【0037】
なお、図6に示した流路制御弁4の制御は一例に過ぎず、適宜な中間開度位置などを用いて他の態様で制御することも勿論可能である。
【0038】
このように、上記実施例のオイルクーラ1においては、単に一つの冷却水の通流・バイパスを切り換えるだけではなく、比較的低温の冷却水と比較的高温の冷却水とを適宜に使い分けることにより、作動油に対する冷却水の加熱作用をも含めて、より広範囲かつ緻密な油温制御が可能となる。また、流路制御弁4としてロータリバルブ31を熱交換器コア3頂部中央に一体化してあり、かつ熱交換器コア3からロータリバルブ31に至る2つの流路がバルブハウジング11自体によって構成されているので、流路制御弁4を含めたオイルクーラ1全体を小型化できる。
【0039】
以上、この発明の一実施例を詳細に説明したが、上記流路制御弁4としては、上記の半円筒形の弁体34を用いたロータリバルブ31に限定されず、公知の他の形式のロータリバルブあるいはロータリバルブ以外のスプール弁などの流路制御弁を用いることもできる。例えば、図7は、直径方向に沿った板状の弁体34を用いたロータリバルブ31を示し、図8は、円柱状の弁体34に径方向の連通路41を貫通形成した形式のロータリバルブ31を示している。なお、上記の各ポート23〜26の配列順序も上記の例に限定されず、例えば、図7,図8に示すようなロータリバルブ31を用いる場合には、これに応じたポート23〜26の配列となる。
【0040】
また、上記の実施例では、自動変速機の作動油のオイルクーラとして構成した例を説明したが、本発明はこれに限らず、内燃機関の潤滑油のオイルクーラあるいは種々の機器のオイルクーラとして広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…オイルクーラ
3…熱交換器コア
4…流路制御弁
7…コア冷却水入口
8…コア冷却水出口
14…低温冷却水導入口
15…高温冷却水導入口
18…冷却水導出口
23…コア入口ポート
24…バイパスポート
25…低温冷却水導入ポート
26…高温冷却水導入ポート
31…ロータリバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のプレートを積層することでオイルが通流するオイル通路と冷却水が通流する冷却水通路とをプレート間に画成した熱交換器コアと、
この熱交換器コアの頂部のプレートに開口し、かつ上記冷却水通路に連通したコア冷却水入口およびコア冷却水出口と、
上記熱交換器コアの頂部に取り付けられ、温度が相対的に高い冷却水および相対的に低い冷却水が各々供給される第1の冷却水導入口および第2の冷却水導入口を有するとともに、これらの2つの冷却水導入口を切り換えて上記コア冷却水入口と連通させる流路制御弁と、
を備えてなるオイルクーラ。
【請求項2】
上記流路制御弁は、さらに、上記コア冷却水出口に連通した冷却水導出口を有し、上記第1,第2の冷却水導入口の少なくとも一方を上記冷却水導出口にバイパスさせることが可能な請求項1に記載のオイルクーラ。
【請求項3】
上記流路制御弁は、上記第1の冷却水導入口と上記第2の冷却水導入口と上記コア冷却水入口と上記冷却水導出口とにそれぞれ連通した4個のポートと、回転位置によってこれらのボートの連通状態を切り換える弁体と、を備えてなるロータリバルブからなることを特徴とする請求項2に記載のオイルクーラ。
【請求項4】
上記流路制御弁は、上記第1,第2の冷却水導入口から供給されるいずれかの冷却水を上記コア冷却水入口と上記冷却水導出口とに分流させる中間位置を備えることを特徴とする請求項2または3に記載のオイルクーラ。
【請求項5】
上記流路制御弁は、上記熱交換器コアの頂部に上記コア冷却水出口を覆うように取り付けられるバルブハウジングを備え、このバルブハウジングが、上記第1,第2の冷却水導入口から上記冷却水導出口へ至るバイパス通路を形成しているとともに、上記コア冷却水出口が該バイパス通路に連通していることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のオイルクーラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−57889(P2012−57889A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202652(P2010−202652)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000151209)株式会社マーレ フィルターシステムズ (159)
【Fターム(参考)】