説明

オイルセパレータ

【課題】衝突板に付着したオイルがガス排出部に持ち去られてしまうことを従来に比べて抑制できるオイルセパレータの提供。
【解決手段】ガス出口通路60の、衝突板61が設けられる部位S1よりガス流れ方向下流側に、部位S1におけるガス流路断面積よりもガス流路断面積が大の流路拡大部62が設けられている。そのため、ガス出口通路60の衝突板61が設けられる部位S1から流路拡大部62を通ってガス排出部70に流れるガスの流速を、流路拡大部62で低減させることができる。そのため、流路拡大部が設けられていない場合(従来)に比べて、衝突板に付着したオイルがガス排出部に持ち去られてしまうことを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクロン式(遠心分離式)のオイルセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、例えば自動車のエンジン等においては、その稼動時において、ピストンリングとシリンダ壁との隙間から漏出するブローバイガスを大気中に排出することは大気汚染の原因になるとして、いわゆるPCV(ポジティブクランクケースベンチレーション)システムにより吸気系に戻し再燃焼させることが行なわれている。
ところで、ブローバイガス中にはエンジンオイル等の潤滑油が微粒化されたオイルミストが含まれている。そのため、ブローバイガス中のオイルミストを分離回収する手段として、シリンダヘッドカバーの内側やクランクケースと吸気管路とを連結する連結流路の途中等にオイルミスト捕集装置(オイルセパレータ)が設けられている。そのようなオイルセパレータとしては、いわゆるサイクロン式と呼ばれる方式の装置が普及している。
【0003】
従来のサイクロン式のオイルセパレータは、たとえば、特開2009−221858号公報に開示されている。
該公報開示の装置は、サイクロン部でオイルが分離されたガスがサイクロン部から流入するガス出口通路を有し、このガス出口通路に、サイクロン部からガス出口通路に流入してくるガスの流れ方向に面して配設され該流入してくるガスが衝突する衝突板が設けられている、オイルセパレータを開示している。
ガス出口通路の、衝突板が設けられている部位の流路断面積は、ガス流速を高めて衝突板によるオイル捕集効果を高めるために比較的狭くされていることが望ましい。
【0004】
しかし、上記公報開示の装置には、つぎの問題点がある。
ガス出口通路の、衝突板が設けられている部位における流路断面積と、衝突板が設けられる部位よりガス流れ方向下流側部位における流路断面積とが、同じかまたは略同じである。そのため、ガス出口通路全域にわたってガス流速が高いままであり、衝突板に付着したオイルがガス出口通路からガス排出部(ガス排出口)に持ち去られてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−221858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、衝突板に付着したオイルがガス排出部に持ち去られてしまうことを従来に比べて抑制できるオイルセパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) オイル混合ガスをセパレータ内部に導入するガス導入部と、
前記ガス導入部から導入された前記オイル混合ガスからオイルを分離するサイクロン部と、
前記サイクロン部でオイルが分離されたガスが前記サイクロン部から流入するガス出口通路と、
前記ガス出口通路内のガスをセパレータ外部に排出するガス排出部と、
を有し、前記ガス出口通路に、前記サイクロン部から前記ガス出口通路に流入してくるガスの流れ方向に面して配設され該流入してくるガスが衝突する衝突板が設けられている、オイルセパレータであって、
前記ガス出口通路の、前記衝突板が設けられる部位よりガス流れ方向下流側に、前記ガス出口通路の前記衝突板が設けられる部位におけるガス流路断面積よりもガス流路断面積が大の流路拡大部が設けられている、オイルセパレータ。
【発明の効果】
【0008】
上記(1)のオイルセパレータによれば、ガス出口通路の、衝突板が設けられる部位よりガス流れ方向下流側に、ガス出口通路の衝突板が設けられる部位におけるガス流路断面積よりもガス流路断面積が大の流路拡大部が設けられているため、つぎの効果を得ることができる。
流路拡大部が設けられていない場合(従来)と異なり、ガス出口通路の衝突板が設けられる部位から流路拡大部を通ってガス排出部に流れるガスの流速を、流路拡大部で低減させることができる。そのため、流路拡大部が設けられていない場合(従来)に比べて、衝突板に付着したオイルがガス排出部に持ち去られてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明実施例のオイルセパレータの平面図である。
【図2】本発明実施例のオイルセパレータの正面図である。
【図3】本発明実施例のオイルセパレータの断面図である。
【図4】本発明実施例のオイルセパレータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図1〜図4を参照して、本発明実施例のオイルセパレータを説明する。
本発明実施例のオイルセパレータ10は、いわゆるサイクロン式のオイルセパレータであり、たとえば、図示略の自動車エンジンのクランクケース内に発生するオイル混合ガス(オイルミスト混合ガス、ブローバイガス)からオイル(オイルミスト)を分離させて、分離させたオイルをクランクケースに戻すものである。ただし、オイルセパレータ10は、自動車エンジン以外の内燃機関の内部で発生するオイル混合ガス中のオイルを分離するものであってもよい。
【0011】
オイルセパレータ10は、図3に示す、ガス導入部20と、サイクロン部30と、オイル出口通路40と、図2に示すドレイン部50と、図4に示す、ガス出口通路60と、ガス排出部70と、を有する。
【0012】
ガス導入部20は、図示略のクランクケース内に発生するオイル混合ガスをセパレータ10内部に導入する部分である。
【0013】
サイクロン部30は、図3に示すように、例えば4個並列に設けられる。ただし、サイクロン部30は少なくとも1個設けられていればよい。サイクロン部30は、軸方向が上下方向に延びる姿勢で配置されている。サイクロン部30は、ガス導入部20から導入されたオイル混合ガスからオイルを分離するために設けられる。サイクロン部30は、ガス導入部20を流れてきたオイル混合ガスをサイクロン部30内に導入しサイクロン部30内で旋回運動させ該旋回運動による遠心力によりオイル混合ガスからオイルを分離させる。
【0014】
サイクロン部30は、オイル出口部31と、ガス出口部32と、を備える。
オイル出口部31は、サイクロン部30の下端部に設けられており、サイクロン部30でオイル混合ガスから分離したオイルをサイクロン部30の外に(オイル出口通路40に)流出する部分である。
ガス出口部32は、上下方向に延びる管状であり、サイクロン部30の上壁部の中央部またはその近傍に該上壁部を上下方向に貫通して設けられる。ガス出口部32は、サイクロン部30でオイル混合ガスからオイルが分離されたガスをサイクロン部30の外に(ガス出口通路60に)流出する部分である。
【0015】
オイル出口通路40は、サイクロン部30の下側に設けられる。オイル出口通路40は1つのみ設けられており、単一のオイル出口通路40には、複数のサイクロン部30の各サイクロン部30のオイル出口部31からのオイルが流入する。
【0016】
ドレイン部50は、図2に示すように、オイルセパレータ10の下端部(最下部)に1つのみ設けられている。ドレイン部50は、下方に突出する管状部分である。ドレイン部50は、オイル出口通路40内のオイルをオイルセパレータ10の外部に排出するために設けられる。
【0017】
ガス出口通路60は、図4に示すように、サイクロン部30の上側に設けられる。ガス出口通路60は、1つのみ設けられており、単一のガス出口通路60には、複数のサイクロン部30の各サイクロン部30のガス出口部32からのガスが流入する。
【0018】
ガス出口通路60には、サイクロン部30のガス出口部32の直上に隙間を隔てて衝突板61が設けられている。衝突板61は、サイクロン部30のガス出口部32からガス出口通路60に流入してくるガスの流れ方向に面して配設されている。衝突板61は、サイクロン部30のガス出口部32のガス流れ方向下流側の開口(上側の開口)に対向して配設されている。衝突板61には、サイクロン部30のガス出口部32からガス出口通路60に流入してくるガスが衝突する。このため、サイクロン部30で分離しきれずに(捕集しきれずに)サイクロン部30のガス出口部32からガス出口通路60に流入してきたオイルは、衝突板61に衝突して付着しガス中から分離される。
【0019】
ガス出口通路60の、衝突板61が設けられている部位S1の流路断面積は、ガス流速を高めて衝突板61によるオイル捕集効果を高めるために比較的狭くされていることが望ましい。なお、衝突板61に付着しガス中から分離されたオイルは、液状化した後、サイクロン部30のガス出口部32を流れるガスの流量が少なくなるかゼロになったときに、サイクロン部30のガス出口部32からサイクロン部30内に流入し、サイクロン部30のオイル出口部31からオイル出口通路40に流入して、ドレイン部50からオイルセパレータ10外に排出される。
【0020】
ガス出口通路60の、衝突板61が設けられる部位S1よりガス流れ方向下流側で、ガス排出部70よりガス流れ方向上流側に、衝突板61が設けられる部位S1におけるガス流路断面積よりもガス流路断面積が大の流路拡大部62が設けられている。流路拡大部62は、ガス出口通路60のうち、衝突板61が設けられる部位S1から急激に流路断面積が拡大する部分である。流路拡大部62は、ガス出口通路60の衝突板61が設けられる部位S1からガス排出部70に流れるガスの流速を低下させるために設けられている。流路拡大部62におけるガス流路断面積は、ガス排出部70でのガス流路断面積より大とされている。
【0021】
ガス排出部70は、ガス出口通路60内のガスをセパレータ10の外部に排出するために設けられる。ガス排出部70は、オイルセパレータ10の上端部(最上部)に1つのみ設けられている。ガス排出部70は、管状である。
ガス排出部70には、ガス排出部70の内周面に形成される雌ネジ部71に図示略のPCVバルブの外周面に形成される雄ネジ部を螺合させることで、図示略のPCVバルブが装着される。なお、オイルセパレータ10が互いにバイブレーション溶着(振動溶着)される複数部品で構成される場合であってバイブレーション溶着部がガス排出部70の外周面に設けられている場合には、ガス排出部70の外周面に設けられる溶着部72とPCVバルブ装着用の雌ネジ部71とは、ガス排出部70の管軸方向で異なる部位に設けられていることが望ましい。溶着部72と雌ネジ部71とがガス排出部70の管軸方向で同位置に設けられる場合に比べて、ガス排出部70の厚みを薄くすることができ、スペース上有利であるとともに成形上も有利になるからである。
【0022】
つぎに、本発明実施例の作用を説明する。
本発明実施例では、ガス出口通路60の、衝突板61が設けられる部位S1よりガス流れ方向下流側に、ガス出口通路60の衝突板61が設けられる部位S1におけるガス流路断面積よりもガス流路断面積が大の流路拡大部62が設けられているため、つぎの作用を得ることができる。
流路拡大部62が設けられていない場合(従来)と異なり、ガス出口通路60の衝突板61が設けられる部位S1から流路拡大部62を通ってガス排出部70に流れるガスの流速を、流路拡大部62で低減させることができる。そのため、流路拡大部62が設けられていない場合(従来)に比べて、衝突板61に付着したオイルがガス排出部70に持ち去られてしまうことを抑制できる。
【符号の説明】
【0023】
10 オイルセパレータ
20 ガス導入部
30 サイクロン部
31 オイル出口部
32 ガス出口部
40 オイル出口通路
50 ドレイン部
60 ガス出口通路
61 衝突板
62 流路拡大部
70 ガス排出部
S1 ガス出口通路の衝突板が設けられる部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイル混合ガスをセパレータ内部に導入するガス導入部と、
前記ガス導入部から導入された前記オイル混合ガスからオイルを分離するサイクロン部と、
前記サイクロン部でオイルが分離されたガスが前記サイクロン部から流入するガス出口通路と、
前記ガス出口通路内のガスをセパレータ外部に排出するガス排出部と、
を有し、前記ガス出口通路に、前記サイクロン部から前記ガス出口通路に流入してくるガスの流れ方向に面して配設され該流入してくるガスが衝突する衝突板が設けられている、オイルセパレータであって、
前記ガス出口通路の、前記衝突板が設けられる部位よりガス流れ方向下流側に、前記ガス出口通路の前記衝突板が設けられる部位におけるガス流路断面積よりもガス流路断面積が大の流路拡大部が設けられている、オイルセパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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