説明

オイルミストセパレータ

【課題】ガス流路のオイルミスト含有ガスの圧力損失を低減することができるオイルミストセパレータを提供する。
【解決手段】オイルミストセパレータ11を構成するハウジング13の底壁13aの一側にガス流入口14を形成し、ハウジング13の上壁13bの片側にガス流出口15を形成する。ガス流路16の内部に第1〜第3分離板17,19,21を配設し、第3分離板21の下流側に可動フィルタユニット25を装着する。前記ガス流路16内を流れるブローバイガスの流速が速くなって、前記可動フィルタユニット25のフィルタ28に作用する圧力が上昇すると、該フィルタ28が回転軸26を中心に時計回り方向に回動され、プローバイガスの流動抵抗が適正に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンのブローバイガス等のオイルミスト含有ガスからオイルミストを分離するようにしたオイルミストセパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンには、燃焼室からクランクケース内へ流出するブローバイガスを大気中に放出せずに回収するためのPCV(ポジティブ・クランクケース・ベンチレーション)が設けられている。このPCVによってブローバイガスをクランクケースから吸気系統に戻し、ブローバイガスの燃焼が行われる。通常、ブローバイガス中にはオイルが微小粒子(オイルミスト)となって存在するので、ブローバイガスをそのまま燃焼しないで、オイルミストをブローバイガスから分離してクランクケース内に戻すために、従来、オイルミストの分離手段が用いられている。例えば特許文献1に開示される従来構成においては、図10に示すように、エンジンのロッカカバー51の内壁にケース部材52が装着されて、その内部に分離室53が画成され、分離室53の底壁の一側に入口孔54が形成されるとともに、他側にドレンパイプ体55が垂設されている。前記分離室53の上壁にガスの流出口56が形成されている。前記分離室53内にフィルタ部材57が二箇所に立設されている。又、前記各フィルタ部材57の上流側には、複数本の軸部58を介して複数枚の可変開口体59がそれぞれ回動可能に支持されている。前記可変開口体59は弾性体60よりガス流路の遮蔽位置に保持されている。そして、前記入口孔54から分離室53にオイルミスト含有ガスが供給されると、その流動圧力によって、前記可変開口体59が実線で示す遮蔽位置から二点鎖線で示す開放位置に変位されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−243318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来のオイルミストセパレータにおいては、次のような問題があった。即ち、分離室53内を流れるオイルミスト含有ガスの流動圧力によって、可変開口体59が軸部58を中心に開放される。このため、フィルタ部材57に吹き付けられたオイルミスト含有ガスが該フィルタ部材57の限定された箇所、つまり軸部58の下部と対応する位置に集中し、フィルタ部材57が早期に目詰まりを起こし、オイルミスト含有ガスの流路抵抗が増大して、圧力損失が上昇する虞れがあった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、オイルミスト含有ガスの圧力損失を低減することができるオイルミストセパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、分離室の底壁にオイルミスト含有ガスの入口孔を形成するとともに、前記分離室内にオイルミストを分離するためのフィルタを配設し、前記分離室の底壁に分離されたオイルの排出孔を設けたオイルミストセパレータにおいて、前記フィルタを、その細隙を透過する際のオイルミスト含有ガスの流動抵抗が大きくなると、前記分離室内のガス流路を遮蔽する遮蔽位置からガス流路を開放する開放位置へ移動されるように構成したことを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記フィルタは、その上端部を中心としてガス流路方向に往復傾動可能に支持され、かつ常にはバネ又は自重によって垂下された遮蔽位置に保持され、該フィルタの細隙を通過するオイルミスト含有ガスの流動抵抗が大きくなると、該フィルタが前記遮蔽位置から開放位置に傾動され、該フィルタの下端縁と分離室の底壁との間にガス流路となる間隙が形成されるようにしたことを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記分離室には前記フィルタの上流側に位置するようにオイルミストの分離板が複数箇所に設けられ、各分離板によってオイルミスト含有ガスが分離室内を蛇行するように構成されていることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記分離室の底壁には、前記フィルタの下流側に位置するように、分離板が立設されていることを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記分離室の上壁には、板バネの上端縁が取り付けられ、該板バネにはフィルタが取り付けられ、該フィルタの細隙を通過するオイルミスト含有ガスの流動抵抗が大きくなると、前記板バネが弾性変形されて、フィルタが遮蔽位置から開放位置に移動されるように構成されていることを要旨とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項において、前記分離室の内周壁には、開口を有する固定フィルタが配設され、該固定フィルタの下流側には、前記開口を開閉可能な可動フィルタが配設され、該可動フィルタは付勢部材によって常には固定フィルタの開口を閉鎖する遮蔽位置に保持されていることを要旨とする。
【0012】
(作用)
この発明は、フィルタの細隙を通過するオイルミスト含有ガスの流動抵抗が大きくなると、フィルタがガス流路を遮蔽する遮蔽位置からガス流路を開放する開放位置に移動される。このため、オイルミスト含有ガスの圧力損失が低減される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、この発明によれば、ガス流路におけるオイルミスト含有ガスの圧力損失を低減することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明を、エンジンのブローバイガスのオイルミストセパレータとして具体化した第1の実施形態を示す縦断面図。
【図2】図1の1−1線における断面図。
【図3】可動フィルタユニットの斜視図。
【図4】オイルミストセパレータのフィルタが変位した状態を示す縦断面図。
【図5】(a)及び(b)は、この発明のオイルミストセパレータの第2の実施形態を示す縦断面図。
【図6】(a)及び(b)は、この発明のオイルミストセパレータの第3の実施形態を示す縦断面図。
【図7】(a)及び(b)は、この発明のオイルミストセパレータの第4の実施形態を示す縦断面図。
【図8】(a)は、この発明のオイルミストセパレータの第5の実施形態を示す平断面図、(b)は縦断面図。
【図9】第5の実施形態の要部の斜視図。
【図10】従来のオイルミストセパレータを示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、この発明を具体化したオイルミストセパレータの第1の実施形態を図1〜図4に従って説明する。
図1及び図2に示すように、この実施形態のオイルミストセパレータ11は、エンジンの合成樹脂製のシリンダヘッドカバー12上に配設されている。オイルミストセパレータ11のハウジング13は、前記シリンダヘッドカバー12と一体に形成され、ほぼ四角箱形状をなしている。ハウジング13の一側における底壁13aには、エンジンのクランク室に連通するガス流入口14が形成されている。ハウジング13の他側における上壁13bには、エンジンの吸気通路に連通するガス流出口15が形成されている。そして、ガス流入口14とガス流出口15との間において、ハウジング13内には、オイルミスト含有ガスであるブローバイガスのガス流路16が形成されている。このガス流路16は、ブローバイガスからオイルミストを分離する分離室Rとして機能する。
【0016】
図1に示すように、前記ハウジング13の底壁13aには、前記ガス流入口14の近傍に位置するように第1分離板17が一体に立設され、該第1分離板17の上端縁と前記ハウジング13の上壁13bとの間にはガス流路を確保するための第1間隙18が形成されている。前記ハウジング13の上壁13bには、前記第1分離板17の下流側に位置するように第2分離板19が一体に垂下され、該第2分離板19の下端縁とハウジング13の底壁13aとの間には、ガス流路を確保するための第2間隙20が形成されている。前記ハウジング13の底壁13aには、前記第2分離板19の下流側に位置するように第3分離板21が一体に立設され、該第3分離板21の上端縁と前記ハウジング13の上壁13bとの間にガス流路を確保するための第3間隙22が形成されている。前記第1〜第3分離板17,19,21及び第1〜第3間隙18,20,22によって、分離室R内に蛇行するガス流路16が形成されている。前記第1〜第3分離板17,19,21のガス流路16に関して上流側の各側面は、ブローバイガスに含まれる粒径の大きいオイルミストを付着して分離するための第1〜第3分離面17a,19a,21aとなっている。前記第1,第3分離板17,21の下端部には、第1,第3分離面17a,21aにより捕捉され、流下されたオイルをガス流路16の下流側に導く小孔17b,21bがそれぞれ形成されている。
【0017】
前記ハウジング13内のガス流路16中には、前記第3分離板21の下流側に位置するように、かつブローバイガスからオイルミストを分離して捕捉するための可動フィルタユニット25が配置されている。可動フィルタユニット25は、図2に示すように前記ハウジング13の左右両(図示上下)の側壁13c,13dに支持された回転軸26と、該回転軸26に固定されたスリーブ27と、該スリーブ27の外周面に図1に示すように上端部を嵌装したフィルタ28とにより形成されている。前記フィルタ28は繊維の集合体よりなる不織布により成形されている。フィルタ28の繊維としては、例えばセラミック等の無機繊維のように、ストレート形状でかつ表面平滑で摩擦抵抗が小さな微細繊維や、撥水性及び撥油性が高い例えばフッ素樹脂等の繊維が用いられている。前記フィルタ28の繊維に対し、油滴の滑落性を付与する処理を行うのが好ましい。前記フィルタ28の繊維の平均繊維径は、例えば5〜10μm、目付けは10〜1000g/mに設定されている。この構成により、フィルタ28のオイルミスト捕捉性能が高められるとともに、捕捉されて凝集されたオイル(油滴)が容易に流れ落ちるようになっている。
【0018】
図3に示すように、前記回転軸26の一端部に形成された係止孔26aには、コイルスプリング29の一端が係止され、該コイルスプリング29の他端は、図2に示すようにハウジング13の一方の側壁13cに形成された係止孔13eに係止されている。そして、前記コイルスプリング29によって、ハウジング13が停止状態にあるとき、及びガス流路16内のブローバイガスの流速が低いときには、前記フィルタ28を図1に示す垂下位置、つまりガス流路16全体を遮蔽する遮蔽位置に保持するようにしている。従って、この状態ではブローバイガスがフィルタ28の繊維間の細隙を通過する。又、ガス流路16内のブローバイガスの流速が高くなると、フィルタ28の細隙を透過するガスの流動抵抗が大きくなって、該フィルタ28が回転軸26を中心にコイルスプリング29の弾性力に抗して図4に示すように、時計回り方向に回動されて傾斜される。そして、フィルタ28の下端縁とハウジング13の底壁13aとの間にガス流路16と連続してガス流路となる間隙31が形成されるようにしている。
【0019】
前記フィルタ28の下流側に位置するように、ハウジング13の底壁13aにはオイル排出口30が形成されている。そして、フィルタ28で分離されて底壁13aの上面に流れ落ちるオイルが、そのオイル排出口30からシリンダヘッドカバー12の内部に回収される。回収されたオイルは、カム軸(図示しない)等の可動部の潤滑に供される。
【0020】
次に、前記のように構成されたオイルミストセパレータ11の作用を説明する。
さて、エンジンが低速で運転されると、その運転にともなって発生する低速のブローバイガスが図1に示すガス流入口14からハウジング13内に導入され、ガス流路16に沿ってガス流出口15側に流れる。そして、ガス流入口14からガス流路16に流入したブローバイガスが第1〜第3分離板17,19,21の作用により第1〜第3間隙18,20,22を通して蛇行状に流れる。この過程において、ブローバイガスに残留する粒径の大きいオイルミストが前記ハウジング13の上壁13bの内面、第1〜第3分離板17,19,21の第1〜第3分離面17a,19a,21a等に付着されて分離される。
【0021】
第1〜第3分離板17,19,21の各分離面17a,19a,21aによって分離されたオイルは、第1,第3分離板17,21の下端に形成された小孔17b,21bからガス流路16の下流側に流れてオイル排出口30に導かれる。
【0022】
前記第3間隙22を出たブローバイガスは、低速であるため、フィルタ28が受ける流動抵抗が小さく、該フィルタ28は遮蔽位置に保持されたままとなる。そして、フィルタ28が遮蔽位置に保持されたままの状態で、ブローバイガスに含まれる粒径の小さいオイルミストがフィルタ28によって捕捉される。この場合、フィルタ28が繊維の集合体より構成されているため、ブローバイガスに含まれる粒径の小さいオイルミストの大部分がフィルタ28の細隙により効率よく捕捉されて凝集され、油滴となって細隙に沿って流れ落ちる。その後、前記フィルタ28の細隙を流れ落ちたオイルは、ハウジング13の底壁13aの上面に流動した後、オイル排出口30から排出される。オイルミストを分離されたブローバイガスは、ガス流出口15からエンジンの吸気系に戻される。
【0023】
エンジンが高速で運転されて、ガス流路16内を流れるブローバイガスの流速が高くなると、フィルタ28の細隙を流れるガスの流動抵抗が増大する。そして、図1において、フィルタ28が前記コイルスプリング29の弾性力に抗して、回転軸26を中心に時計回り方向に回動され、図4に示すように、フィルタ28の下端縁と、ハウジング13の底壁13aとの間に間隙31が形成される。このため、ガス流路16内を流れるガスに対する抵抗が低下され、クランク室内の圧力の高騰を防止できる。この場合、ブローバイガスの流速が高いため、第1〜第3分離板17,19,21の第1〜第3分離面17a,19a,21aにおけるオイルの分離効率が向上する。従って、間隙31が形成されたとしても、オイルミスト分離装置全体として高いオイルの分離能力を維持できる。
【0024】
又、オイルミストセパレータ11が長時間使用されて、フィルタ28の細隙に例えばカーボン等の異物が侵入して保持されると、フィルタとしてのオイルミスト捕捉機能が低下する。この場合には、ガス流路16内を流れるブローバイガスの流速が低速であっても、フィルタ28の細隙を通過するブローバイガスの流動抵抗が増大し、フィルタ28に対するガスの押圧が増大する。このため、フィルタ28が図4に示すように傾動され、結果的にガス流路16を流れるブローバイガスの圧力損失が低減される。
【0025】
従って、第1の実施形態のオイルミストセパレータ11においては、以下の効果がある。
(1)第1の実施形態では、図1及び図2に示すように、ハウジング13の分離室Rに第1〜第3分離板17,19,21を配設し、蛇行するガス流路16が形成されるようにした。このため、ブローバイガスに含まれる大きい粒径のオイルミストを第1〜第3分離板17,19,21の第1〜第3分離面17a,19a,21aによって効率的に捕捉することができ、オイルミストの分離効率を向上することができる。
【0026】
(2)図1及び図2に示すように、前記ハウジング13の側壁13c,13dにフィルタ28の回転軸26を回転可能に支持し、フィルタ28をコイルスプリング29によって常にはガス流路16を遮断する遮蔽位置に保持する。そして、フィルタ28の細隙を流れるブローバイガスの流動抵抗が大きくなった場合、図4に示すようにフィルタ28が回転軸26を中心に時計回り方向に回転され、フィルタ28の下端縁とハウジング13の底壁13aとの間にガス流路となる間隙31が形成されるようにした。このとき、わずかな幅の間隙31が形成されれば、ガス流路16のブローバイカズの圧力が低下するため、オイルミストの分離効率は余り低下しない。しかも、このときフィルタ28が第1〜第3分離板17,19,21とともに蛇行流路を形成するとともに、フィルタ28が第1〜第3分離板17,19,21と同様にオイルミスト衝突面としての分離作用を果たす。この結果、オイルミストセパレータは高いオイルの分離能力を維持する。そして、ガス流路16内におけるブローバイガスの過度の圧力上昇を阻止できるため、エンジンのクランク室内の圧力高騰を防止でき、クランク室のパッキン損傷等を未然に防止できる。
【0027】
(第2の実施形態)
次に、この発明を具体化したオイルミストセパレータの第2の実施形態を、前記第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0028】
第2の実施形態は、図5(a)に示すように、前記回転軸26に嵌合されたスリーブ27に充実体よりなる分離板32を連結し、該分離板32のガス流路16に関して上流側の表面に不織布よりなるフィルタ28を接着する。前記コイルスプリング29は使用しないで、分離板32及びフィルタ28は、その自重により垂下されている。そして、ガス流路16内にブローバイガスが供給されると、図5(b)に示すように、分離板32がガスの流動圧力により傾斜して、フィルタ28の下端縁とハウジング13の底壁13aとの間に間隙33が形成され、ブローバイガスに対する抵抗が適正に保たれる。
【0029】
従って、第2の実施形態における効果は、前記第1の実施形態に記載の効果とほぼ同様である。
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、図6(a)に示すように、前記ハウジング13の上壁13bの下面に板ばねよりなる可変取付板34を取り付けるとともに、該可変取付板34のガス流路16に関して上流側の表面に不織布よりなるフィルタ28を接着する。前記ハウジング13の底壁13aに前記フィルタ28の下流側に位置するように第4分離板35を立設し、該第4分離板35の下端にオイルを通過させる小孔35bを形成する。
【0030】
第3の実施形態においては、ガス流路16内を流れるブローバイガスの流速に応じて、可変取付板34及びフィルタ28が図6(b)に示すように円弧状に弾性変形されて、前記フィルタ28の下端縁とハウジング13の底壁13aとの間に間隙31が形成される。この間隙31から下流側に流れたブローバイガスは、前記第4分離板35の第4分離面35aに衝突して、該第4分離面35aにオイルミストが付着して分離される。この分離されたオイルは第4分離板35の下端に形成された小孔35bからオイル排出口30に排出される。
【0031】
従って、第3の実施形態においては、前記第4分離板35の第4分離面35aによってブローバイガスに含まれるオイルミストを効果的に分離することができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、図7(a)に示すように、前記ハウジング13の底壁13a及び上壁13bにオイルミストの分離板36をそれぞれ設け、両分離板36の間にガス流路となる通路36aを形成する。下側に位置する前記分離板36の下端に、該分離板36によって分離されたオイルを通過させるための小孔36bを形成する。前記ハウジング13の底壁13a及び上壁13bと、前記分離板36のガス流路16に関して下流側の表面とに、側面がL字状の上下一対の不織布よりなる固定フィルタ37を接着する。
【0032】
一方、前記固定フィルタ37の下流側に位置するように、前記ハウジング13の両側壁13c,13d間に支持部材38を固定し、該支持部材38のガス流路16に関して上流側の面に、コイルばね39により前記固定フィルタ37に向かって付勢された不織布よりなる可動フィルタ40を支持する。
【0033】
第4の実施形態においては、ブローバイガス流が低速であったり、固定フィルタ37及び可動フィルタ40が目詰まりしていない場合には、図7(a)に示すように、コイルばね39のばね力によって可動フィルタ40が固定フィルタ37に接触されている。従って、ガス流路16内を流れるブローバイガスが固定フィルタ37と可動フィルタ40の各細隙を通過し、その間にオイルミストが固定フィルタ37及び可動フィルタ40によって捕捉される。逆に、ブローバイガス流が高速であったり、固定フィルタ37及び可動フィルタ40が目詰まりしていたりした場合には、ブローバイガスの流動圧力によって、前記可動フィルタ40がコイルばね39の弾性力に抗して、図7(b)に示すように、下流側に移動され、固定フィルタ37と可動フィルタ40との間に隙間41が形成される。このとき、わずかな幅の隙間41が形成されれば、ガス流路16のブローバイカズの圧力が低下するため、オイルミストの分離効率は余り低下しない。又、固定フィルタ37及び可動フィルタ40は、フィルタとしての捕捉機能に加えて、衝突面としての分離機能を果たし、効果的なオイルミスト分離が行われる。
【0034】
(第5の実施形態)
第5の実施形態においては、図8(a)、(b)に示すように、第4の実施形態の前記分離板36に取り付けられた固定フィルタ37に対し、図9に示すようにガスの流路37aを上下方向に指向するように、かつ互に平行に形成する。前記流路37aを開閉する可動フィルタ42を、四角リング状のゴム又は板バネよりなる前後一対の付勢部材としての可撓フレーム43と、両フレーム43の間に挟着された不織布44とにより構成する。該可動フィルタ42の上端部の可撓フレーム43を、図8(b)に示すように接着剤45により前記固定フィルタ37の上部の表面に接着する。
【0035】
第5の実施形態においては、ブローバイガス流が低速であったり、固定フィルタ37及び可動フィルタ42が目詰まりしていない場合には、図8(a)、(b)に実線で示すように、可撓フレーム43の弾性力よって可動フィルタ42が固定フィルタ37に接触されている。従って、ガス流路16内を流れるブローバイガスが固定フィルタ37と可動フィルタ42(不織布44)の各細隙を通過し、その間にオイルミストが固定フィルタ37及び不織布44によって捕捉される。逆に、ブローバイガス流が高速であったり、固定フィルタ37及び可動フィルタ42が目詰まりしていたりした場合には、ブローバイガスの流動圧力によって、前記可動フィルタ42がその上端縁を中心に図8(a)、(b)に二点鎖線で示すように、ガス流路の下流側に弾性変形され、固定フィルタ37の流路37aが開放される。このとき、前記流路37aがわずかに開放されれば、ガス流路16のブローバイカズの圧力が低下するため、オイルミストの分離効率は余り低下しない。又、固定フィルタ37及び可動フィルタ42は、フィルタとしての捕捉機能に加えて、衝突面としての分離機能を果たし、効果的なオイルミスト分離が行われる。
【0036】
ガス流路16のブローバイカズ流が低速になると、可撓フレーム43の弾性復元力により可動フィルタ42が開放位置から固定フィルタ37の流路37aの遮蔽位置に移動される。
【0037】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・図1〜図4に示す実施形態において、前記第1〜第3分離板17,19,21の少なくともいずれか一つを省略してもよい。
【0038】
・図3に示す可動フィルタユニット25のフィルタ28を肉厚が大きい充実体よりなる板状としてもよい。
・前記フィルタ28の材料として、例えば多孔質セラミック、パンチングメタル等の材料を用いてもよい。
【0039】
・前記実施形態では、エンジンのシリンダヘッドカバー12に設けられたオイルミストセパレートとして具体化したが、これ以外に例えば圧縮機の吐出ガスに含まれるオイルミストを分離するオイルミストセパレータとして具体化してもよい。
【符号の説明】
【0040】
R…分離室、11…オイルミストセパレータ、13…ハウジング、13a…底壁、13b…上壁、16…ガス流路、28…フィルタ、31,33…間隙、32…分離板、37…固定フィルタ、40,42…可動フィルタ、43…可撓フレーム、44…不織布。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離室の底壁にオイルミスト含有ガスの入口孔を形成するとともに、前記分離室内にオイルミストを分離するためのフィルタを配設し、前記分離室の底壁に分離されたオイルの排出孔を設けたオイルミストセパレータにおいて、
前記フィルタを、その細隙を透過する際のオイルミスト含有ガスの流動抵抗が大きくなると、前記分離室内のガス流路を遮蔽する遮蔽位置からガス流路を開放する開放位置へ移動されるように構成したことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項2】
請求項1において、前記フィルタは、その上端部を中心としてガス流路方向に往復傾動可能に支持され、かつ常にはバネ又は自重によって垂下された遮蔽位置に保持され、該フィルタの細隙を通過するオイルミスト含有ガスの流動抵抗が大きくなると、該フィルタが前記遮蔽位置から開放位置に傾動され、該フィルタの下端縁と分離室の底壁との間にガス流路となる間隙が形成されるようにしたことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記分離室には前記フィルタの上流側に位置するようにオイルミストの分離板が複数箇所に設けられ、各分離板によってオイルミスト含有ガスが分離室内を蛇行するように構成されていることを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、前記分離室の底壁には、前記フィルタの下流側に位置するように、分離板が立設されていることを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、前記分離室の上壁には、板バネの上端縁が取り付けられ、該板バネにはフィルタが取り付けられ、該フィルタの細隙を通過するオイルミスト含有ガスの流動抵抗が大きくなると、前記板バネが弾性変形されて、フィルタが遮蔽位置から開放位置に移動されるように構成されていることを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、前記分離室の内周壁には、開口を有する固定フィルタが配設され、該固定フィルタの下流側には、前記開口を開閉可能な可動フィルタが配設され、該可動フィルタは付勢部材によって常には固定フィルタの開口を閉鎖する遮蔽位置に保持されていることを特徴とするオイルミストセパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−47354(P2011−47354A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198099(P2009−198099)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】