説明

オキサゾリジノン誘導体含有水性液剤

【課題】(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を有効濃度含有する、安定な水性液剤を提供する。
【解決手段】(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンもしくはその薬理学的に許容できる塩およびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含有する水性液剤。(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩に、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを配合することを特徴とする、(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンおよびその薬理学的に許容できる塩を可溶化および安定化する方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を含有する水性液剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンもしくはその薬理学的に許容できる塩およびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含有する水性液剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
次の式(I):
【0003】
【化1】

【0004】
で表され、化学名が(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン(一般名:メソプラム)である化合物を包含するオキサゾリジノン誘導体が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンは、フォスフォジエステラーゼIV(PDE−IV)阻害作用を有する抗アレルギー剤として知られ、アトピー性皮膚炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患などのアレルギー疾患に対して有効である。
【0005】
しかし、(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンは水に難溶性であり、かつ水中で不安定な化合物である。
【0006】
従来、水に難溶性の薬物を点眼液や点鼻液などの水性液剤として製造する場合、界面活性剤などを添加することが行われている。また、非ステロイド系抗リウマチ剤、ステロイド、強心配糖体、ベンゾジアゼピン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、イミダゾール誘導体およびトリアゾール誘導体などの難溶性化合物について、シクロデキストリン、例えばヒドロキシエチル−β−シクロデキストリンやヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを用いた可溶化方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。しかし、難溶性薬物の可溶化は、難溶性薬物の形状や大きさ、物性および化学的性質、並びに使用される可溶化剤の物性や化学的性質などにより、難溶性薬物と可溶化剤の組合せや配合比率などが個々に相違するので、難溶性薬物の安定な水溶液の製造は容易ではないのが現状である。本願の(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンについては、その安定な水溶液についての記載も、その可溶化方法についての記載もそれを示唆する記載もなされていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−61978号公報
【特許文献2】
特公平7−42229号公報
【特許文献3】
特表平11−513693号公報
【特許文献4】
特公平5−70612号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を有効濃度含有する、安定な水性液剤を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、難溶性の(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を可溶化し、かつ安定化する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は種々検討を重ねた結果、(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンおよびその薬理学的に許容できる塩がヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを配合することにより、有効濃度の(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を含有する安定な水性液剤を得ることができることを見出し、さらに研究を進めて本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンもしくはその薬理学的に許容できる塩およびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含有する水性液剤、
(2)ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの濃度は下限濃度が0.5w/v%で、上限濃度が25w/v%の範囲から選択される上記(1)記載の水性液剤、
(3)(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンおよびその薬理学的に許容できる塩の濃度は下限濃度が0.001w/v%で、上限濃度が2.0w/v%の範囲から選択される上記(1)または(2)のいずれかに記載の水性液剤、
(4)水性液剤のpHが3〜9の範囲内である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の水性液剤、
(5)点眼液である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の水性液剤、
(6)点鼻液である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の水性液剤、
(7)点耳液である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の水性液剤、
(8)(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンもしくはその薬理学的に許容できる塩0.01w/v%〜0.1w/v%およびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン3.0w/v%〜12.5w/v%を含有する水性点眼液、並びに
(9)(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩にヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを配合することを特徴とする、水性液剤中の(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンおよびその薬理学的に許容できる塩を可溶化および安定化する方法に関する。
【0012】
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンの薬理学的に許容できる塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられるが、これら以外の塩であっても薬理学的に許容できる塩であればいずれのものであっても本発明の目的のため適宜に用いることができる。
【0013】
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンは、たとえば特表平11−513693号公報記載の方法により製造することができる。
【0014】
本発明の水性液剤において、(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩の含有量は、通常、下限0.001w/v%程度、好ましくは0.005w/v%程度、更に好ましくは0.01w/v%程度、上限2.0w/v%程度、好ましくは0.5w/v%程度、更に好ましくは0.1w/v%程度とし、使用目的、適応症状の程度に応じて適宜増減する。
【0015】
本発明の水性液剤において、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの含有量は、下限0.5w/v%程度、好ましくは3.0w/v%程度、更に好ましくは5.0w/v%程度、上限25w/v%程度、好ましくは12.5w/v%程度、更に好ましくは8.0w/v%程度であり、特に好ましい含有量は6.5w/v%程度である。
【0016】
本発明の水性液剤は、点眼液、点鼻液、点耳液、注射液などとして、アレルギー性結膜炎、春季カタルなどのアレルギー性眼疾患、ブドウ膜炎、眼瞼縁炎、涙小管炎、全眼球炎、術後眼内炎などの眼炎症、花粉症、アレルギー性鼻炎、滲出性中耳炎などの治療に有利に用いることができる。
【0017】
本発明の水性液剤には、本発明の目的に反しない限り、通常用いられる等張化剤、緩衝剤、粘稠化剤、キレート剤、防腐剤、pH調整剤、芳香剤等の各種添加剤を適宜添加してもよい。
【0018】
等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ブドウ糖、プロピレングリコールなどが挙げられる。緩衝剤としては、例えば、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、アミノ酸などが挙げられる。粘稠化剤としては、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。キレート剤としては、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、縮合燐酸ナトリウムなどが挙げられる。防腐剤としては、塩化ベンザルコニウムや塩化ベンゼトニウムなどの第4級アンモニウム塩類、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピルなどのパラオキシ安息香酸エステル類、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸およびその塩、チメロサールなどが挙げられる。pH調整剤としては、塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸などが挙げられる。芳香剤としては、1−メントール、ボルネオール、カンフル、ユーカリ油などが挙げられる。
【0019】
本発明の水性液剤に配合される上記各添加剤の濃度は、例えば等張化剤は浸透圧比が0.8〜1.2程度になる濃度に配合し、緩衝剤は0.01〜2w/v%程度、粘稠化剤は0.1〜10w/v%程度である。
【0020】
本発明の水性液剤のpHは、約3〜9程度、好ましくは約6〜8程度に調整される。
【0021】
本発明の水性液剤においては、本発明の目的に反しない限り、その他の同種または別種の薬効成分を適宜含有させてもよい。
【0022】
本発明の水性液剤は、自体公知の調製法、例えば、第14改正日本薬局方、製剤総則の液剤あるいは点眼剤に記載された方法で製造することができる。
【0023】
本発明の水性液剤は、温血動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)に使用することができる。
【0024】
本発明の水性液剤を、例えば、点眼剤として使用する場合は、アレルギー性結膜炎、春季カタルなどのアレルギー性眼疾患、ブドウ膜炎、眼瞼縁炎、涙小管炎、全眼球炎、術後眼内炎などの眼炎症に用いることができる。その投与量は、例えば(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン0.1w/v%含有する本発明の点眼剤を成人に点眼する場合は、1回1〜2滴を1日3〜6回点眼すればよい。なお、適応症状の程度などにより、適宜投与回数を増減する。
【0025】
【実施例】
以下に、実験例、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0026】
実験例1 (R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンの可溶化試験
(1)各種pH水溶液中における(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンの溶解度
(実験方法)
0.1%クエン酸塩緩衝液(pH3.0)、0.1%酢酸塩緩衝液(pH4.0および5.0)および0.1%リン酸塩緩衝液(pH6.0、7.0および8.0)それぞれ10mLに(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン40mgを加え、超音波処理し3時間強く攪拌した。pHを確認した後、遠心分離し(3500rpm、15分)、上澄液中の(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン含量をHPLC法で測定した。
【0027】
(実験結果)
その結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1から明らかなように、pH3.0〜8.0における(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンの溶解度は、いずれのpHにおいてもほぼ同等で0.067〜0.071%を示した。
【0030】
(2)各種添加剤を用いたpH7.0における(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンの溶解度(実験方法)
0.1%リン酸塩緩衝液(pH7.0)において、表2に示した添加剤を用いて(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンの溶解度を測定した。添加剤0.5%を含む水溶液10mLに、(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン0.05〜0.1gを加え、超音波処理し3時間強く攪拌した。pHを確認した後遠心分離し(3500rpm、15分)、上澄液中の(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン含量をHPLC法で測定した。
【0031】
(実験結果)
その結果を表2に示した。
【0032】
【表2】

【0033】
表2から明らかなように、最も可溶化力が高かったものは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンで、(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンの溶解度は添加剤無添加時の1.6倍に上昇した。
【0034】
(3)ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの添加量の検討
0.1%リン酸塩緩衝液(pH7.0)において、種々濃度のヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを添加し、(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンの溶解度を測定した。
その結果、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの添加量に比例して(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンの溶解度が上昇した。ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン6.06%の添加で(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンの溶解度(pH7.0)は0.56%に上昇した。
【0035】
実験例2 (R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン水溶液の安定性
(実験方法)
表3に示した(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン水溶液を調製し、5mL無色ガラスアンプルに充填した。アンプルを40℃、75%RHの恒温恒湿器〔(株)ナガノ科学機械製作所製 型式 LH-20-03 〕および60℃の恒温器〔株)ナガノ科学機械製作所製 型式 CH20-01M〕に静置保存した。4週後に肉眼で性状を観察し、pHおよび(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン含量を測定した。含量はHPLC法により測定した。
【0036】
【表3】

【0037】
(実験結果)
その結果を表4に示す。
【0038】
【表4】

【0039】
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン無添加の0.05%(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン水溶液(処方No.15〜18)の場合、60℃、4週保存においていずれのpHにおいても残存率は7.1〜7.9%であった。性状に変化は認められなかった。また40℃、4週保存において残存率は74.3〜75.6%であり、性状に変化は認められなかった。
【0040】
6.5%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン含有の0.5%(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン水溶液(処方No.19〜22)の場合、60℃、4週保存においていずれのpHにおいても残存率は58.6〜63.3%であり、性状に変化は認められなかった。40℃、4週保存において残存率は96.1〜98.1%であり、性状に変化は認められなかった。
【0041】
以上のことから、(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンは水に難溶性の化合物で、pH5〜8の水溶液中で不安定であったが、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを添加することにより可溶化と安定化が同時に達成することができることが判明した。
【0042】
実験例3 0.05%および0.25%(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン水溶液の安定性
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの濃度を変化させて、pH7.0における0.05%および0.25%(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン水溶液の安定性について試験した。
【0043】
(実験方法)
表5に示したNo.23〜No.30の0.05および0.25%(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン水溶液を調製し、5mL無色ガラスアンプルに充填した。アンプルを40℃、75%RHの恒温恒湿器〔(株)ナガノ科学機械製作所製 型式 LH-20-03 〕および60℃の恒温器〔株)ナガノ科学機械製作所製 型式 CH20-01M〕に静置保存した。4週後に肉眼で性状を観察し、pHおよび(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン含量を測定した。含量はHPLC法により測定した。
【0044】
【表5】

【0045】
(実験結果)
その結果を表6に示した。
【0046】
【表6】

【0047】
表6から明らかなように、(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンは、40℃、4週で、(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンの濃度にほとんど関係なく、ヒドキシプロピル−β−シクロデキストリンの添加量1.5%以上の濃度で90%以上の残存量を示した。また、表4の処方No.19〜22および表6の処方No.26,27,29,30に示されるように、ヒドキシプロピル−β−シクロデキストリン添加量5%以上で96%以上の残存量を示した。
【0048】
実施例1 点眼液

以上の成分を用いて、常法により点眼液とする。
【0049】
実施例2 点鼻液

以上の成分を用いて、常法により点鼻液とする。
【0050】
実施例3 点耳液

以上の成分を用いて、常法により点耳液とする。
【0051】
実施例4 点眼液

以上の成分を用いて、常法により点眼液とする。
【0052】
実施例5 点鼻液

以上の成分を用いて、常法により点鼻液とする。
【0053】
実施例6 点耳液

以上の成分を用いて、常法により点耳液とする。
【0054】
実施例7 注射液

以上の成分を用いて、常法により注射液とする。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩に、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを配合することにより、有効濃度の(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を含有する安定な水性液剤を調製できる。
したがって、本発明の水性液剤は、例えば点眼液、点鼻液、点耳液として、アレルギー性結膜炎、春季カタルなどのアレルギー性眼疾患、ブドウ膜炎、眼瞼縁炎、涙小管炎、全眼球炎、術後眼内炎などの眼炎症、花粉症、アレルギー性鼻炎、滲出性中耳炎などの治療に有利に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンもしくはその薬理学的に許容できる塩およびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含有する水性液剤。
【請求項2】
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの濃度は下限濃度が0.5w/v%で、上限濃度が25w/v%の範囲から選択される請求項1記載の水性液剤。
【請求項3】
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンおよびその薬理学的に許容できる塩の濃度は下限濃度が0.001w/v%で、上限濃度が2.0w/v%の範囲から選択される請求項1または2のいずれかに記載の水性液剤。
【請求項4】
水性液剤のpHが3〜9の範囲内である請求項1〜3のいずれかに記載の水性液剤。
【請求項5】
点眼液である請求項1〜4のいずれかに記載の水性液剤。
【請求項6】
点鼻液である請求項1〜4のいずれかに記載の水性液剤。
【請求項7】
点耳液である請求項1〜4のいずれかに記載の水性液剤。
【請求項8】
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンもしくはその薬理学的に許容できる塩0.01w/v%〜0.1w/v%およびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン3.0w/v%〜12.5w/v%を含有する水性点眼液。
【請求項9】
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩にヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを配合することを特徴とする、水性液剤中の(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンおよびその薬理学的に許容できる塩を可溶化および安定化する方法。

【公開番号】特開2006−199588(P2006−199588A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−128355(P2003−128355)
【出願日】平成15年5月6日(2003.5.6)
【出願人】(000199175)千寿製薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】