説明

オキシデーションディッチの改修方法

【課題】円弧流路に整流壁を有するODであっても、槽内に効率良く循環撹拌流を形成できる縦軸型曝気撹拌装置を簡易に設置でき低コストでの改修を可能とする。
【解決手段】水槽内を仕切る仕切壁により無端状循環流路が形成され該循環流路を主要流路及び主要流路の端部同士を接続する平面視略半円状の円弧流路6により構成し該円弧流路6に平面視円弧状の整流壁7を備えたODにあって、既設の曝気撹拌装置を撤去し、仕切壁の一部を撤去しその撤去部の両側に残部仕切壁22を残し、撤去部に間仕切壁16を設けることで残部仕切壁22を有する各槽1a,1bに分け、これにより間仕切壁16とこれに対面する残部仕切壁22の端部との間にインペラ9が位置するように縦軸型曝気撹拌装置3を新設すると共に、間仕切壁16の連通部16a,16aにより槽1a,1b同士の処理水を流通させ、縦軸型曝気撹拌装置3により各槽1a,1bを通る循環撹拌流を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシデーションディッチの改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水の処理方法として、汚水と活性汚泥の混合液を収容する水槽と、水槽内に無端状の循環流路を形成するように当該水槽内を仕切る仕切壁と、混合液を曝気すると共に循環流路に沿って混合液の循環撹拌流を形成する撹拌羽根を備えた曝気撹拌装置と、を具備し、循環流路は、直線流路と、直線流路の端部同士を接続する平面視略半円状の円弧流路と、を有するオキシデーションディッチが知られている(特許文献1、2参照)。このオシキデーションディッチに用いられる曝気撹拌装置としては、縦軸型、横軸型及び斜軸型等がある。これらのうち、横軸型、斜軸型の曝気撹拌装置が用いられるオキシデーションディッチにあっては、曝気撹拌装置は、その撹拌羽根が直線流路に位置するように設置されると共に、円弧流路には、混合液が円滑に旋回するように平面視円弧状を成す整流壁が設けられるのが一般的である。一方、縦軸型の曝気撹拌装置が用いられるオキシデーションディッチにあっては、曝気撹拌装置は、撹拌羽根であるインペラが円弧流路の混合液に浸漬するように設置される。このようにインペラが円弧流路に設置され、特に仕切壁の端部に近付けて設置されるのは、インペラの回転により発生し上流側に向かう噴出流を仕切壁の端部で遮り上流側へ向かうのを抑制して良好な循環撹拌流を形成するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−252681号公報
【特許文献2】特開2002−320994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、横軸型の曝気撹拌装置にあっては撹拌羽根に夾雑物が絡まりやすく、また、斜軸型の曝気撹拌装置にあっては撹拌力が弱く槽当たりの設置台数を増やす必要があるため、既設の横軸型、斜軸型の曝気撹拌装置を例えば老朽化等により新設の曝気撹拌装置に交換する場合には、縦軸型の曝気撹拌装置への交換が望まれるが、上述のように、横軸型、斜軸型の曝気撹拌装置が用いられるオキシデーションディッチにあっては、円弧流路に整流壁が設けられているため、当該整流壁が縦軸型曝気撹拌装置の設置の邪魔になってしまい設置できない。
【0005】
そこで、縦軸型曝気撹拌装置のインペラが直線流路に位置するように設置することになるが、インペラの回転により発生する噴出流は、インペラの下流側だけでなく上流側にも噴出するため、上流側への噴出流が良好な循環撹拌流の形成を妨げ、下水処理性能を低下させるおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、円弧流路に整流壁を有するオシキデーションディッチであっても、槽内に効率良く循環撹拌流を形成できる縦軸型曝気撹拌装置を簡易に設置でき、低コストでの改修を可能とするオキシデーションディッチの改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるオキシデーションディッチの改修方法は、汚水と活性汚泥の混合液を収容する水槽と、水槽内に無端状の循環流路を形成するように当該水槽内を仕切る仕切壁と、混合液を曝気すると共に循環流路に沿って混合液の循環撹拌流を形成する曝気撹拌装置と、を具備し、循環流路は、主要流路と、主要流路の端部同士を接続する平面視略半円状の円弧流路と、を備え、円弧流路には、混合液が円滑に旋回するように平面視円弧状を成す整流壁が設けられたオキシデーションディッチの改修方法であって、既設の曝気撹拌装置を撤去し、仕切壁の一部を撤去しその撤去部の両側に分断された仕切壁を残部仕切壁として残し、撤去部において残部仕切壁同士の間に、分断された残部仕切壁を有する槽ごとに区画すると共に、区画した槽同士を連通し循環撹拌流の流出入を可能とする連通部を備えた間仕切壁を設け、新設の曝気撹拌装置を、縦軸に設けられたインペラが混合液に浸漬し縦軸の軸線回りに回転することで曝気及び循環撹拌流の形成を行う縦軸型曝気撹拌装置とし、縦軸型曝気撹拌装置を、そのインペラが、間仕切壁とこれに対面する残部仕切壁の端部との間に位置するように設置したことを特徴としている。
【0008】
このようなオキシデーションディッチの改修方法によれば、水槽内を仕切る仕切壁により無端状の循環流路が形成されこの循環流路を主要流路及びこの主要流路の端部同士を接続する平面視略半円状の円弧流路により構成しこの円弧流路に平面視円弧状の整流壁を備えたオシキデーションディッチにあって、既設の曝気撹拌装置を撤去し、仕切壁の一部を撤去してその撤去部の両側に残部仕切壁を残し、撤去部に間仕切壁を設けることで、残部仕切壁を有する各槽に分けているため、間仕切壁とこれに対面する残部仕切壁の端部との間にインペラが位置するように縦軸型曝気撹拌装置を新設できると共に、間仕切壁の連通部により槽同士の処理水の流通が可能であるため、縦軸型曝気撹拌装置により各槽を通る循環撹拌流を形成できる。従って、円弧流路に整流壁を有するオシキデーションディッチであっても、槽内に効率良く循環撹拌流を形成できる縦軸型曝気撹拌装置を簡易に設置でき、低コストでの改修が可能となる。
【0009】
ここで、具体的には、水槽の外周壁を形成する周囲壁は、平面視長円形を成し、仕切壁は、長円形内の中央において、当該長円形が延びる横長方向に直線状に延び、撤去部は、仕切壁の直線状部分の中央部であり、間仕切壁は、周囲壁の直線状部分同士の間に設けられてこれらを連結し、水槽は、間仕切壁により2槽に区画されるオキシデーションディッチを提供できる。
【0010】
また、具体的には、間仕切壁は、平面視において横長方向に対して斜めに設置され、インペラは、斜めの間仕切壁とこれに対面する残部仕切壁の端部との間の領域の広い側に配置され、残部仕切壁の間仕切壁側の端部には、横長方向に対して平面視斜めを成し直線状を成してインペラに向かう追加仕切壁が追設されたオキシデーションディッチを提供できる。
【0011】
また、具体的には、上流側の槽は、縦軸型曝気撹拌装置が無酸素撹拌可能とされ無酸素撹拌を行うことにより無酸素状態の無酸素処理槽とされ、下流側の槽は、縦軸型曝気撹拌装置が曝気撹拌を行うことにより好気状態の好気処理槽とされ、連通部により、循環撹拌流が無酸素処理槽と好気処理槽との間で流出入されるオキシデーションディッチを提供できる。そして、このようなオキシデーションディッチによれば、無酸素処理槽では通性嫌気性菌による無酸素処理によって脱窒が可能となり、好気処理槽では好気性菌による好気処理によって有機物を分解できる。
【0012】
また、具体的には、水槽の外周壁を形成する周囲壁は、平面視馬蹄形を成し、仕切壁は、馬蹄形内において内側の周囲壁を外側から囲むようにU字状を成し、撤去部は、仕切壁の直線状部分の中央部であり、間仕切壁は、外側の周囲壁と内側の周囲壁の直線状部分同士の間に各々設けられてこれらを連結し、水槽は、間仕切壁により3槽に区画されるオキシデーションディッチを提供できる。
【0013】
また、具体的には、上流側の槽は、縦軸型曝気撹拌装置が無酸素撹拌可能とされ無酸素撹拌を行うことにより嫌気状態の嫌気処理槽とされ、これより下流側の槽は、縦軸型曝気撹拌装置が無酸素撹拌可能とされ無酸素撹拌を行うことにより無酸素状態の無酸素処理槽とされ、これよりさらに下流側の槽は、縦軸型曝気撹拌装置が曝気撹拌を行うことにより好気状態の好気処理槽とされ、連通部により、循環撹拌流が、嫌気処理槽と無酸素処理槽との間で流出入されると共に無酸素処理槽と好気処理槽との間で流出入されるオキシデーションディッチを提供できる。そして、このようなオキシデーションディッチによれば、嫌気処理槽では偏性嫌気性菌による嫌気処理によって脱リンが可能となり、無酸素処理槽では通性嫌気性菌による無酸素処理によって脱窒ができ、好気処理槽では好気性菌による好気処理によって有機物を分解できる。
【発明の効果】
【0014】
このように本発明によるオキシデーションディッチの改修方法によれば、円弧流路に整流壁を有するオシキデーションディッチであっても、槽内に効率良く循環撹拌流を形成できる縦軸型曝気撹拌装置を簡易に設置でき、低コストでの改修が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るオキシデーションディッチの改修方法により改修されたオキシデーションディッチを示す平面図である。
【図2】図1のII-II矢視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るオキシデーションディッチの改修方法を説明するための平面図であり、既設の曝気撹拌装置が横軸型曝気撹拌装置である場合の図である。
【図4】既設の曝気撹拌装置が斜軸型曝気撹拌装置である場合の図である。
【図5】図3、図4に続く改修方法を説明するための平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るオキシデーションディッチの改修方法により改修されたオキシデーションディッチを示す平面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るオキシデーションディッチの改修方法により改修されたオキシデーションディッチを示す平面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るオキシデーションディッチの改修方法を説明するための平面図であり、既設の曝気撹拌装置が横軸型曝気撹拌装置である場合の図である。
【図9】既設の曝気撹拌装置が斜軸型曝気撹拌装置である場合の図である。
【図10】図8、図9に続く改修方法を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明によるオキシデーションディッチの改修方法の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態に係るオキシデーションディッチの改修方法により改修されたオキシデーションディッチを示す平面図、図2は、図1のII-II矢視図、図3は、第1実施形態に係るオキシデーションディッチの改修方法を説明するための平面図であり、既設の曝気撹拌装置が横軸型曝気撹拌装置である場合の図、図4は、既設の曝気撹拌装置が斜軸型曝気撹拌装置である場合の図、図5は、図3、図4に続く改修方法を説明するための平面図である。
【0018】
ここでの既設のオキシデーションディッチは、図3に示すように、汚水と活性汚泥の混合液を収容する水槽1と、この水槽1内に無端状の循環流路を形成するように当該水槽内を仕切る仕切壁2と、混合液を曝気すると共に循環流路に沿って混合液の循環撹拌流を形成する横軸型曝気撹拌装置90と、を具備している。
【0019】
水槽1は、その外周壁を形成する周囲壁4が平面視長円形を成し、仕切壁2は、長円形内の中央において、当該長円形が延びる横長方向に直線状に延びている。循環流路は、主要流路となる直線状の直線流路5と、この直線流路5,5の端部同士を接続する平面視略半円状の円弧流路6と、を備えている。この円弧流路6には、混合液が円滑に旋回するように平面視円弧状を成す整流壁7が設けられ、円弧流路6の整流壁7より内周側に、曲率が大きい内周側流路8aが形成されると共に、外周側に、これより曲率が小さい外周側流路8bが形成されている。そして、横軸型曝気撹拌装置90は、各直線流路5の円弧流路6寄りの位置に各々配設されている。なお、水槽1の横軸型曝気撹拌装置90を除く部分は、水槽1の天井壁を成すスラブ14により上から覆われている。
【0020】
このようなオキシデーションディッチの改修方法にあっては、先ず、既設の横軸型曝気撹拌装置90を撤去すると共に、図5に示すように、新設の縦軸型曝気撹拌装置3を設置すべくスラブ14の対応部分を撤去し槽1の中央から左右両側に延びる横長の開口15を設ける。なお、図4に示すように、各直線流路5の略中央位置に斜軸型曝気撹拌装置91が各々用いられている場合も同様に、当該既設の斜軸型曝気撹拌装置91を撤去すると共に、図5に示すように、新設の縦軸型曝気撹拌装置3を設置すべくスラブ14の対応部分を撤去し槽1の中央から左右両側に延びる横長の開口15を設ける。因みに、横軸型曝気撹拌装置90を撤去した部分に対してはスラブ14により覆う。
【0021】
次いで、仕切壁2の一部である直線状部分の中央部を撤去しその撤去部の両側に分断された仕切壁を残部仕切壁22,22として残す。
【0022】
次いで、撤去部において残部仕切壁22,22同士の間に、図1に示すように、分断された残部仕切壁22を有する槽1a,1bごとに区画すると共に、区画した槽1a,1b同士を連通し循環撹拌流の流出入を可能とする連通部16aを備えた間仕切壁16を設ける。この間仕切壁16は、周囲壁4の横長方向に直線状に延びる直線状部分同士の間に設けられてこれらを連結し、図示左右2槽に区画する。連通部16aは、図2に示すように、ここでは、間仕切壁16の下部の両端部に設けられた開口であり、この開口16aを通して槽1a,1b間において循環撹拌流の流出入が可能とされている。
【0023】
新設の縦軸型曝気撹拌装置3は、図1及び図2に示すように、曝気撹拌を行うための撹拌羽根であるインペラ9と、このインペラ9を下端に有し鉛直方向に延びる縦軸である回転軸10と、この回転軸10を回転駆動しインペラ9を当該回転軸10の軸線回りに回転するための電動機及び減速機等の駆動部11と、を備え、駆動部11は、平板状の架台12の略中央に載置され、回転軸10は、架台12に設けられた開口を通して下方に延びている。このように縦軸型曝気撹拌装置3は、その駆動部11が架台12に載置されて一体のユニットとされている。なお、図面理解の容易性を考慮して架台12にはドットを付している。
【0024】
そして、この縦軸型曝気撹拌装置3を、そのインペラ9が、間仕切壁16とこれに対面する残部仕切壁22の端部との間に位置するように設置する。具体的には、図5に示す開口15に対し、架台12を各槽1a,1bの周囲壁4の直線状部分同士に亘って各々載置し、インペラ9を水面付近に浸漬するように設置する。これにより、図1に示すオキシデーションディッチが得られる。
【0025】
この第1実施形態では、インペラ9の平面視反時計回りの回転により、槽1a,1b内には、矢印で示すように、インペラ9、残部仕切壁22の横に形成された一方の直線流路25、円弧流路6、残部仕切壁22の横に形成された他方の直線流路25、インペラ9に戻る循環撹拌流が形成され、上流側の槽1aが無酸素処理槽とされ、下流側の槽1bが好気処理槽とされる。
【0026】
具体的には、インペラ9は、例えば特開平11−290885号公報や特開2010−203351号公報等に開示されているように昇降可能とされ、下流側の槽1bでは、インペラ9を図2に示す高さ位置で所定に回転させ曝気撹拌を行うことで好気状態の好気処理槽とされ、上流側の槽1aでは、インペラ9を曝気位置と同位置でゆっくり低速で回転させ酸素を巻き込まない無酸素撹拌を行うことで無酸素状態の無酸素処理槽とされ、若しくは、インペラ9を下降させ完全に水没させて回転させ酸素を巻き込まない無酸素撹拌を行うことで無酸素状態の無酸素処理槽とされ、開口16aを通して、循環撹拌流が無酸素処理槽1aと好気処理槽1bとの間で流出入される。そして、このような無酸素処理槽1aでは通性嫌気性菌による無酸素処理によって脱窒が行われ、好気処理槽1bでは好気性菌による好気処理によって有機物が分解される。
【0027】
このような作用を奏する第1実施形態のオキシデーションディッチの改修方法によれば、既設の曝気撹拌装置90(91)を撤去し、仕切壁2の一部を撤去してその撤去部の両側に残部仕切壁22,22を残し、撤去部に間仕切壁16を設けることで、残部仕切壁22を有する各槽1a,1bに分けているため、間仕切壁16とこれに対面する残部仕切壁22の端部との間にインペラ9が位置するように縦軸型曝気撹拌装置3を新設できると共に、間仕切壁16の連通部である開口16aにより槽1a,1b同士の処理水の流通が可能であるため、縦軸型曝気撹拌装置3により各槽1a,1bを通る循環撹拌流を形成できる。従って、円弧流路6に整流壁7を有するオシキデーションディッチであっても、槽内に効率良く循環撹拌流を形成できる縦軸型曝気撹拌装置3を簡易に設置でき、低コストでの改修が可能である。
【0028】
図6は、本発明の第2実施形態に係るオキシデーションディッチの改修方法により改修されたオキシデーションディッチを示す平面図である。
【0029】
この第2実施形態のオキシデーションディッチの改修方法が第1実施形態のオキシデーションディッチの改修方法と違う点は、間仕切壁16に代えて、平面視において横長方向に対して斜めな間仕切壁36を設置し、縦軸型曝気撹拌装置3のインペラ9を、斜めの間仕切壁36とこれに対面する残部仕切壁22の端部との間の領域の広い側に配置し、残部仕切壁22の間仕切壁36側の端部に、横長方向に対して平面視斜めを成し直線状を成してインペラ9に向かう追加仕切壁22aを追設した点である。この間仕切壁36にも、第1実施形態と同様に、下部の両端部に開口36aが設けられている。
【0030】
このような第2実施形態のオキシデーションディッチの改修方法にあっても、第1実施形態と同様な効果、すなわち、円弧流路6に整流壁7を有するオシキデーションディッチであっても、槽内に効率良く循環撹拌流を形成できる縦軸型曝気撹拌装置3を簡易に設置でき、低コストでの改修が可能となるという効果を得ることができる。
【0031】
図7は、本発明の第3実施形態に係るオキシデーションディッチの改修方法により改修されたオキシデーションディッチを示す平面図、図8は、第3実施形態に係るオキシデーションディッチの改修方法を説明するための平面図であり、既設の曝気撹拌装置が横軸型曝気撹拌装置である場合の図、図9は、既設の曝気撹拌装置が斜軸型曝気撹拌装置である場合の図、図10は、図8、図9に続く改修方法を説明するための平面図である。
【0032】
この第3実施形態のオキシデーションディッチの改修方法が第1、第2実施形態のオキシデーションディッチの改修方法と違う点は、平面視馬蹄形の水槽41に対して適用した点である。
【0033】
図8に示すように、ここでの既設のオキシデーションディッチを構成する水槽41は、その外周壁を形成する周囲壁44が平面視馬蹄形を成し、仕切壁42は、馬蹄形内において内側の周囲壁(中央で横方向に延びる周囲壁)44aを外側から囲むようにU字状を成し、循環流路は、主要流路となる直線状の直線流路45と、この直線流路45,45の端部同士を接続する平面視略半円状の円弧流路46と、を備えている。この円弧流路46には、混合液が円滑に旋回するように平面視円弧状を成す整流壁47が設けられ(図示左端の円弧流路は除く)、円弧流路46の整流壁47より内周側に、曲率が大きい内周側流路48aが形成されると共に、外周側に、これより曲率が小さい外周側流路48bが形成されている。そして、各直線流路45の円弧流路46寄りの位置に横軸型曝気撹拌装置90が各々配設されている。なお、水槽41の横軸型曝気撹拌装置90を除く部分は、水槽41の天井壁を成すスラブ14により上から覆われている。
【0034】
このようなオキシデーションディッチの改修方法にあっては、先ず、既設の横軸型曝気撹拌装置90を撤去すると共に、図10に示すように、新設の縦軸型曝気撹拌装置3を設置すべくスラブ14の対応部分を撤去し槽41の中央から左右両側に延びる横長の開口15を設ける。なお、図9に示すように、各直線流路45の略中央位置に斜軸型曝気撹拌装置91が各々用いられている場合も同様に、当該既設の斜軸型曝気撹拌装置91を撤去すると共に、図10に示すように、新設の縦軸型曝気撹拌装置3を設置すべくスラブ14の対応部分を撤去し槽41の中央から左右両側に延びる横長の開口15を設ける。
【0035】
次いで、仕切壁42の一部である直線状部分の中央部を撤去しその撤去部の両側に分断された仕切壁を残部仕切壁52,52として残す。
【0036】
次いで、撤去部において残部仕切壁52,52同士の間に、図7に示すように、分断された残部仕切壁52を有する図示右上の槽41a、図示左の槽41b、図示右下の槽41cに区画すると共に、区画した槽41a,41b同士、槽41b,41c同士を連通し循環撹拌流の流出入を可能とする連通部16aを備えた間仕切壁16を設ける。この間仕切壁16は、周囲壁44の横長方向に直線状に延びる直線状部分同士の間に設けられてこれらを連結し、3槽に区画する。連通部16aは、図2に示すように、間仕切壁16の下部の両端部に設けられた開口であり、この開口16aを通して槽41a,41b間において循環撹拌流の流出入が可能とされていると共に、槽41b,41c間において循環撹拌流の流出入が可能とされている。
【0037】
次いで、図10に示す開口15に対し、第1実施形態と同様に、架台12を水槽の周囲壁44,44aに亘って載置すると、縦軸型曝気撹拌装置3は、そのインペラ9が、間仕切壁16とこれに対面する残部仕切壁52の端部との間に位置するように設置され、図7に示すオキシデーションディッチが得られる。
【0038】
この第3実施形態では、インペラ9の平面視反時計回りの回転により,槽41a,41c内には、矢印で示すように、インペラ9、残部仕切壁52の横に形成された一方の直線流路55、円弧流路46、残部仕切壁52の横に形成された他方の直線流路55、インペラ9に戻る循環撹拌流が形成され、槽41b内には、矢印で示すように、一のインペラ9、残部仕切壁52の横に形成された外側の一方の直線流路65、外側の円弧流路46、残部仕切壁52の横に形成された外側の他方の直線流路65、他のインペラ9、残部仕切壁52の横に形成された内側の一方の直線流路65、内側の円弧流路46、残部仕切壁52の横に形成された内側の他方の直線流路65、一のインペラ9に戻る循環撹拌流が形成され、上流側の槽41aが嫌気処理槽とされ、これより下流側の槽41bが無酸素処理槽とされ、これよりさらに下流側の槽41cが好気処理槽とされている。
【0039】
具体的には、嫌気処理槽41aでは、インペラ9を完全に水没させて回転させ酸素を巻き込まない無酸素撹拌を行うことで嫌気状態とされ、無酸素処理槽41bでは、インペラ9の高さ方向の位置を曝気位置と同位置としインペラをゆっくり低速で回転させ酸素を巻き込まない無酸素撹拌を行うことで無酸素状態とされ、若しくは、インペラ9を完全に水没させて回転させ酸素を巻き込まない無酸素撹拌を行うことで無酸素状態とされ、好気処理槽41cでは、インペラ9により曝気撹拌を行うことで好気状態とされる。なお、このような3槽41a,41b,41cにあっては、槽ごとに大量の処理水が流出入しないように、開口16aが最適な大きさに設定されている。
【0040】
そして、このようなオキシデーションディッチにあっては、開口16aを通して、循環撹拌流が嫌気処理槽41aと無酸素処理槽41bとの間で流出入されると共に無酸素処理槽41bと好気処理槽41cとの間で流出入され、嫌気処理槽41aの処理水が無酸素処理槽41bに流入し、無酸素処理槽41bの処理水が好気処理槽41cに流入し、好気処理槽41cの処理水が無酸素処理槽41bに流入し、無酸素処理槽41bの処理水が嫌気処理槽41aに流入し、これを繰り返すため、嫌気処理槽41aでは偏性嫌気性菌による嫌気処理によって脱リンが行われ、無酸素処理槽41bでは通性嫌気性菌による無酸素処理によって脱窒が行われ、好気処理槽41cでは好気性菌による好気処理によって有機物が分解される。
【0041】
このような作用を奏する第3実施形態のオキシデーションディッチの改修方法によれば、第1実施形態と同様な効果、すなわち、円弧流路46に整流壁47を有するオシキデーションディッチであっても、槽内に効率良く循環撹拌流を形成できる縦軸型曝気撹拌装置3を簡易に設置でき、低コストでの改修が可能となるという効果を得ることができるのに加えて、3槽41a,341b,41cにより、脱リン、脱窒、有機物分解が可能となる。
【0042】
なお、何れか一方の間仕切壁16を無くして2槽に区画し(間仕切壁16を1個として2槽に区画し)、例えば符号41aを嫌気処理槽とし、残りの槽を間欠曝気処理槽とすることで、脱リン、脱窒、有機物分解を行うこともできる。この場合には、残りの槽にあっては、上記縦軸型曝気撹拌装置を用いても、既設の曝気撹拌装置(横軸型、斜軸型の曝気撹拌装置)を用いても良い。何れにしても、脱リン、脱窒等の高度処理ができる。因みに、嫌気処理槽では、前述した昇降可能なインペラを用いると、より効率良く、嫌気運転ができる。
【0043】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好ましいとして、2槽1a,1bの場合でも、3槽41a,41,41cの場合でも、各槽ごとに異なる処理を施すようにしているが、槽全体を、全部のインペラ9が上記のように曝気撹拌を行うことで好気処理槽としても良い。また、タイマー制御により、インペラ9が上記のように無酸素撹拌を行うことで槽全体を無酸素処理槽とし、所定時間が経過したら、インペラが上記のような曝気撹拌を行うことで槽全体を好気処理槽として、脱窒もできるようにしても良い。
【0044】
また、上記実施形態においては、槽をスラブ14により覆うようにしているが、何らかで覆蓋しても良い。
【0045】
また、上記実施形態においては、オキシデーションディッチを代表する平面視長円形や馬蹄形の水槽を有するオキシデーションディッチに対する適用を述べているが、直線状の主要流路及び直線状の仕切壁を有せずに曲線状(平面視円弧状;約2/3円)の主要流路及び曲線状(円弧状)の仕切壁を具備し円弧流路に平面視円弧状の整流壁を備えた所謂U字形の水槽を有するオキシデーションディッチに対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1,41…水槽、1a,1b,41a,41b,41c…区画槽、2,42…仕切壁、3…縦軸型曝気撹拌装置(新設の曝気撹拌装置)、4,44,44a…周囲壁、5,25,45,55,65…主要流路(直線流路)、6,46…円弧流路、7,47…整流壁、9…インペラ、16…間仕切壁、16a…開口(連通部)、22,52…残部仕切壁、22a…追加仕切壁、36…斜めの間仕切壁、36a…斜めの間仕切壁の開口(連通部)、90,91…既設の曝気撹拌装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水と活性汚泥の混合液を収容する水槽と、前記水槽内に無端状の循環流路を形成するように当該水槽内を仕切る仕切壁と、前記混合液を曝気すると共に前記循環流路に沿って前記混合液の循環撹拌流を形成する曝気撹拌装置と、を具備し、前記循環流路は、主要流路と、前記主要流路の端部同士を接続する平面視略半円状の円弧流路と、を備え、前記円弧流路には、前記混合液が円滑に旋回するように平面視円弧状を成す整流壁が設けられたオキシデーションディッチの改修方法であって、
既設の前記曝気撹拌装置を撤去し、
前記仕切壁の一部を撤去しその撤去部の両側に分断された仕切壁を残部仕切壁として残し、
前記撤去部において前記残部仕切壁同士の間に、分断された残部仕切壁を有する槽ごとに区画すると共に、区画した槽同士を連通し前記循環撹拌流の流出入を可能とする連通部を備えた間仕切壁を設け、
新設の曝気撹拌装置を、縦軸に設けられたインペラが前記混合液に浸漬し前記縦軸の軸線回りに回転することで曝気及び循環撹拌流の形成を行う縦軸型曝気撹拌装置とし、
前記縦軸型曝気撹拌装置を、そのインペラが、前記間仕切壁とこれに対面する前記残部仕切壁の端部との間に位置するように設置したことを特徴とするオキシデーションディッチの改修方法。
【請求項2】
前記水槽の外周壁を形成する周囲壁は、平面視長円形を成し、
前記仕切壁は、長円形内の中央において、当該長円形が延びる横長方向に直線状に延び、
前記撤去部は、前記仕切壁の直線状部分の中央部であり、
前記間仕切壁は、前記周囲壁の直線状部分同士の間に設けられてこれらを連結し、
前記水槽は、前記間仕切壁により2槽に区画されることを特徴とする請求項1記載のオキシデーションディッチの改修方法。
【請求項3】
前記間仕切壁は、平面視において前記横長方向に対して斜めに設置され、
前記インペラは、斜めの前記間仕切壁とこれに対面する前記残部仕切壁の端部との間の領域の広い側に配置され、
前記残部仕切壁の前記間仕切壁側の端部には、前記横長方向に対して平面視斜めを成し直線状を成して前記インペラに向かう追加仕切壁が追設されたことを特徴とする請求項2記載のオキシデーションディッチの改修方法。
【請求項4】
上流側の槽は、前記縦軸型曝気撹拌装置が無酸素撹拌可能とされ無酸素撹拌を行うことにより無酸素状態の無酸素処理槽とされ、
下流側の槽は、前記縦軸型曝気撹拌装置が曝気撹拌を行うことにより好気状態の好気処理槽とされ、
前記連通部により、前記循環撹拌流が前記無酸素処理槽と前記好気処理槽との間で流出入されることを特徴とする請求項2又は3記載のオキシデーションディッチの改修方法。
【請求項5】
前記水槽の外周壁を形成する周囲壁は、平面視馬蹄形を成し、
前記仕切壁は、馬蹄形内において内側の周囲壁を外側から囲むようにU字状を成し、
前記撤去部は、前記仕切壁の直線状部分の中央部であり、
前記間仕切壁は、外側の周囲壁と内側の周囲壁の直線状部分同士の間に各々設けられてこれらを連結し、
前記水槽は、前記間仕切壁により3槽に区画されることを特徴とする請求項1記載のオキシデーションディッチの改修方法。
【請求項6】
上流側の槽は、前記縦軸型曝気撹拌装置が無酸素撹拌可能とされ無酸素撹拌を行うことにより嫌気状態の嫌気処理槽とされ、
これより下流側の槽は、前記縦軸型曝気撹拌装置が無酸素撹拌可能とされ無酸素撹拌を行うことにより無酸素状態の無酸素処理槽とされ、
これよりさらに下流側の槽は、前記縦軸型曝気撹拌装置が曝気撹拌を行うことにより好気状態の好気処理槽とされ、
前記連通部により、前記循環撹拌流が、前記嫌気処理槽と前記無酸素処理槽との間で流出入されると共に前記無酸素処理槽と前記好気処理槽との間で流出入されることを特徴とする請求項5記載のオキシデーションディッチの改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−210602(P2012−210602A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78275(P2011−78275)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(507036050)住友重機械エンバイロメント株式会社 (88)
【Fターム(参考)】