説明

オゾン発生装置

【課題】放電空間となるギャップの間隔調整が容易で放電空間の距離を高精度に設定できると共に水中放電長を長く取れ、均一な安定放電を得ることができ、連結が容易で大容量化を容易に図れるようにすること。
【解決手段】このオゾン発生装置は、円筒状をなす接地電極1と、接地電極1の内側に配置された高圧電極2と、接地電極1と高圧電極2との間に生成空間3となるギャップを形成するギャップ支持体4と、接地電極1及び高圧電極2の電極表面に形成された絶縁層5a,5bとを備える。生成区間3に酸素を含むガスを気泡分散した水を供給すると共に、接地電極1と高圧電極2との間に電圧を印加して生成空間3に存在する水中気泡内で放電させてオゾンガス及びオゾン水を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中気泡内あるいは、放電空間の流れ移動する部分的な空気層で放電させてオゾン化ガス及びオゾン水を生成するオゾン発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上下水処理施設、化学工場、薬品工場、食品工場等において、ウイルス、細菌類、カビ類および酵母などの殺菌、アルデヒド、イオウ化合物、窒素化合物等の臭気物質の脱臭、し尿や染料廃液の脱色、有機溶剤などの有害物質の無害化をするために、オゾン発生装置が用いられている。
【0003】
図5は、無声放電型オゾン発生装置の概念図である。
同図に示す無声放電型オゾン発生装置は、対向する平板の金属電極31a,31bの一方の面に誘電体からなる絶縁層32を配置した構成となっている。この金属電極31a,31bは、交流の高電圧電源33と接続されており、対向する金属電極31a,31bと誘電体の絶縁層32で構成される放電空間34において無声放電35の放電柱が形成される。
【0004】
放電空間34に酸素を含んだ原料ガス36を供給することにより、無声放電35の放電柱により生じた電子と酸素分子が衝突し、酸素原子に解離後、解離をしていない酸素分子と結合しオゾン化ガスが生成される。
【0005】
図6は無声放電型オゾン発生装置の一つとして円筒電極を用いた円筒電極型オゾン発生装置の概略図である。円筒電極型オゾン発生装置の電極構造は、基本的に平板を円筒に置き換えた形式となっている。図6では図5中の平板の金属電極31a,31bに相当する電極として、円筒の接地電極37と、絶縁層38が形成された高圧電極39とを備えている。図中には明記されていないが、図6のオゾン発生装置には、電極を冷却する装置を接地電極37の外周面と高圧電極39の内周面のどちらか一方の電極あるいは両電極に付加している。
【0006】
これらのオゾン発生装置は、平行に配置された電極(31a,31b)、(37,39)間に交流高電圧を印加し、その放電空間34に酸素を含むガスを供給し、無声放電を生じさせてオゾンを生成する。発生したオゾン化ガスを上水原水、下水処理水等に直接注入し、殺菌、脱色、脱臭等の処理、有害物質の無害化に用いている。また、このオゾン化ガスを水に溶解して医療機器や食品などの洗浄殺菌にも用いることができる。
【0007】
一方、水中内に酸素を含む原料ガスを気泡化し、その気泡内で放電させオゾン化ガスおよびオゾン水を生成する水中気泡発生型オゾン発生装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0008】
図7は平面電極を用いた水中気泡発生型オゾン発生装置の概念図である。この装置は、容器41の中に平行な対向する金属電極42a,42bを配置し、該容器41内を原水43で満たし、金属電極42a,42b間の下方部より酸素を含む原料ガス44を導入する。この原料ガス44は、金属電極42a,42bの下方部に設置した気泡発生機45から供給される微小の気泡46であり、金属電極42a,42b間を上昇する。
【0009】
上記水中気泡発生型オゾン発生装置において、金属電極42a,42bの間に高電圧電源47より交流高電圧を印加する。この電圧は、正弦波やパルス波で容器41内の水を介して、酸素を含む原料ガス気泡46の気泡径の耐電極方向に印加される。これにより、気泡内で放電が生じ、気泡内で電子と酸素分子が衝突し、酸素原子に解離し、他の酸素分子と結合してオゾン化ガスが生成される。また、このオゾン化ガスが水に溶解し、オゾン水が生成される。生成したオゾン化ガスおよびオゾン水は、出口48より取り出される。
【0010】
上記水中気泡発生型オゾン発生装置では、金属電極42a,42bの間隔を狭くすることにより、電極間の水中にある気泡に高い電圧を印加することができ、オゾン発生効率を高めることが出来る。またはオゾン発生効率を維持したままで、印加電圧を低くすることが出来る。
【0011】
また、絶縁係数が異なる2種以上の媒質を用いることで低い印加電圧で放電可能なオゾン発生装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0012】
図8は特許文献3に記載されたオゾン発生装置の構成図である。このオゾン発生装置は、水中放電部50に一対の平面電極51a,51bを配置し、平面電極51a,51bの対向面を絶縁体52a,52bで絶縁する。そして、平面電極51a,51b間にイオン除去水53(水層)と空気54(ガス層)の二界面を形成している。
【0013】
上記オゾン発生装置において、平面電極51a,51bによってイオン除去水53と空気54の混合媒質に電圧を印加した場合、空気54に形成される電界EAは媒質が空気だけの時より大きくなることから、低い電位を加えても容易に放電することになる。
【特許文献1】特開2001−9463号公報
【特許文献2】特開2001−10808号公報
【特許文献3】特表2005−502456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1,2に記載の水中気泡発生型のオゾン発生装置は、タンク壁面の内部または外部に電極を設けているため、電極間の距離が長く、処理水中のその気泡内の酸素等を含むガス中で放電させるには、高い印加電圧を必要としていた。
【0015】
また、図7に記載の水中気泡発生型のオゾン発生装置は、容器内でオゾン化ガスおよびオゾン水を発生させる構造であるので、水道水や工業利用水を原水とした大量の水を処理することが出来なかった。また、これらの原水の抵抗値は不安定で低いため、電極の電解腐食を高め、電極の消耗や発生オゾンおよびオゾン水の純度を低下させる。さらに水中の耐電圧および絶縁抵抗が低下し、水中内の漏れ電流が増大して損失が大きくなると共に放電が低下し、オゾン発生の低下、電極間での短絡、急激な温度上昇による突沸が生じる恐れがある。
【0016】
また、図7及び特許文献3に記載のオゾン発生装置は、平面電極の対向平面電極構造であるため、均一な安定放電を得ることが難しかった。特許文献3の水中放電部50は、平行電極で形成される放電空間構造で、絶縁された電極間に酸素の微細気泡を含む水層とガス層の2層があるが、水層とガス層の層厚さ(空隙)を均一な距離に維持しなければ、放電は安定しない。オゾン発生の放電空間において、効率よく、かつ安定に放電させるには、放電空間の距離が1mm以下の狭い空間を必要とする。ところが、特許文献3のような平面電極の対向平面電極構造であると、高い精度で水平を維持しないと、これらの放電空間を維持することが出来ない。また、水中放電部50に注入する水量が多くなると、水面が変動し、液面の高さ(波打つ)一定に保つことが出来ない。空気(酸素を含む)も同様である。従って、装置の振動、傾き、風量の増加に対して、大型化できる構成を要していなかった。
【0017】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、放電空間となるギャップの間隔調整が容易で放電空間の距離を高精度に設定できると共に水中放電長を長く取れ、均一な安定放電を得ることができ、連結が容易で大容量化にも優れたオゾン発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のオゾン発生装置は、円筒状をなす接地電極と、前記接地電極の内側に配置された高圧電極と、前記接地電極と前記高圧電極との間に放電空間となるギャップを形成するスペーサと、前記放電空間を形成している前記接地電極及び前記高圧電極の両方又は一方の電極表面に形成された絶縁層とを備え、前記放電空間に酸素を含むガスを気泡分散した水を供給すると共に、前記接地電極と前記高圧電極との間に電圧を印加して前記放電空間に存在する気泡をオゾン化ガスに変え、オゾン水を生成することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、接地電極と前記高圧電極との間に電圧を印加することで、放電空間に存在する水中気泡内あるいは、多量の気泡の集中や大きな気泡による放電空間の流れ移動する部分的に空気層となっている箇所で放電させて、オゾン化ガスに変えてオゾン化ガスやオゾン水を生成することができる。そして、円筒状の接地電極内部に高圧電極を配置してスペーサを介して放電空間を形成するので、構造的なギャップにより放電・電圧印加空間を構成でき、放電空間を固定できる。しかも、オゾン発生装置の設置位置・向き等に制約が無く、オゾン発生装置の連結も可能であることから、大容量化および大型化を容易に実現できる。また、気泡を含む水を円筒状のギャップで形成される放電空間で、その水を介して、気泡内に高電圧を印加し、気泡内で放電とオゾンの生成を可能としているため、特許文献3のような水層とガス層の2層の放電空間を持たず、気泡内のみでの放電とオゾン発生を実現することができる。
【0020】
また、円筒状の接地電極内部に高圧電極を配置して放電空間を形成するので、スペーサを用いて容易に電極間距離を短い距離に設定することができる。したがって、水中気泡に印加される電圧(電界強度)が高くなるので、電子のエネルギー分布が高くなり、発生オゾン濃度を高くすることができる。また、放電空間を流れる酸素ガスを含む気泡分散した水に比較的低い電圧を印加し、効率良くオゾン化ガスおよびオゾン水を得ることができる。
【0021】
また、接地電極及び高圧電極の双方又は片側の表面を絶縁層で被覆したことにより、安定したオゾン発生を実現できる。例えば、図4(a)に示すように、放電空間(生成空間3)における気泡分散水の気泡が電極にまたがる気泡径の場合には電極間に空隙13が生じるが、接地電極及び又は高圧電極の表面を絶縁層で被覆することで、気泡が電極にまたがる気泡径であっても絶縁層により火花放電14(図4(b))の様な過電流の発生を防止できる。
【0022】
上記オゾン発生装置において、前記絶縁層は、セラミックス材料又は金属酸化物の無機物で構成することが望ましい。水中にある接地電極及び又は高圧電極に絶縁層を形成したことにより、電極表面(金属)と水との接触が無くなり、水接触や金属表面での部分放電による表面侵食を防止でき、溶出する金属イオンや微粒子によるオゾン化ガスおよびオゾン水の純度低下、不純物混入といった不具合を排除でき、電極の寿命も長期に維持できる。また、接地電極及び又は高圧電極を表面保護層となる絶縁層で被覆することにより、その被覆面で絶縁層が水中の抵抗より高くなり、供給される水の絶縁抵抗が低い場合でも高電圧を印加できる。
【0023】
上記オゾン発生装置において、接地電極と前記高圧電極との間の印加電圧として高周波電圧を印加するように構成でき、電圧波形は、正弦波、パルス波又はノコギリ波とすることができる。
【0024】
さらに、電圧を印加してオゾン発生装置から発生したオゾン化ガスとオゾン水を、エゼクタポンプに通して、オゾン化ガスの溶解を高め、その後に、オゾン化ガスとオゾン水とを分離するガス分離機を設けて、ガス分離機で分離したオゾン化ガスを循環経路によりエゼクタポンプに戻し、再度オゾン化ガスを溶解するようにすると、オゾン水の生成率を高めることができる。
また本発明は、上記オゾン発生装置において、前記放電空間へ供給する水を冷却して、オゾン化ガス及びオゾン水の生成で生じる熱を冷却することを特徴とする。
【0025】
この構成により、オゾン発生装置へ供給する水を冷却することから、オゾン発生効率を上げることができると共に、接地電極と高圧電極に付属する外周部、内周部の冷却部が不要となり、構造を簡略化および軽量化することができる。
【0026】
また本発明は、上記オゾン発生装置において、有機物質又は臭い物質を含む未処理水を原水に混入して前記放電空間へ供給することを特徴とする。
【0027】
この構成により、原水中に有機物質や臭い物質を含む未処理水を混入することで、原水中に発生するオゾンおよびオゾン水によって当該原水中の有機物質や臭い物質を連続的に無害化処理することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、放電空間となるギャップの間隔調整が容易で放電空間の距離を高精度に設定できると共に水中放電長を長く取れ、均一な安定放電を得ることができ、連結が容易で大容量化にも優れたオゾン発生装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は一実施の形態に係るオゾン発生装置の概念図であり、図2は図1に示すオゾン発生装置を用いて処理するシステムの構成図である。
【0030】
図1に示すように、本実施の形態に係るオゾン発生装置は、円筒状をなす接地電極1の内部空間に高圧電極2を配置し、接地電極1の内壁面と高圧電極2の外周面との間に適切な生成空間3をスペーサとしてのギャップ支持体4で形成している。接地電極1及び高圧電極2の対向面には絶縁層5a,5bがそれぞれ形成されている。接地電極1と高圧電極2との間に印加する高周波又はパルスの高電圧を高電圧電源6が発生する。高電圧電源6の一方の電極は接地電極1に接続し、他方の電極は接地電極1に設けた絶縁端子7を介して高圧電極2に接続している。円筒状をなす接地電極1の下面には生成空間3へ酸素を含むガスを気泡分散した水を供給する供給口8を設け、接地電極1の上面にはオゾン化ガスおよびオゾン水を排出する出口9を設けている。
【0031】
絶縁層5a、5bは、高電圧を印加するために高い絶縁特性を備え、耐電圧性に優れた均一な絶縁体で構成されることが望ましい。また、絶縁層5a、5bを、接地電極1と高圧電極2の表面保護層として機能させるには、電極材料から水にイオン等溶出や劣化が無く、且つ絶縁性から高抵抗を有し、ピンホールが無い均一な層を構成する必要がある。また、金属表面との密着性が高く、熱膨張係数の整合が取れ、耐熱、耐温度変化に対して割れや剥離しないことが求められる。このような要求に応えるため、絶縁層5a、5bを複数層で構成するようにしても良い。尚、この絶縁層5a、5bは、接地電極1と高圧電極2のいずれか一方に形成することでも本発明の効果が得られる。
【0032】
接地電極1及び高圧電極2の素管金属材料として、不錆鋼であるステンレス材または鉄、鉄−ニッケル材、アルミニユウム材を用いることができ、これら接地電極1の内周面および高圧電極2の外周面に絶縁層5a,5bを形成する。たとえば、アルミナ、シリカ、カルシユウム、マグネシウム、チタン、バリウム、ジルコニアを主剤とする酸化物にナトリウム、カリウム、リチウム、ホウ素を溶剤とする酸化化合物を誘電絶縁体として接地電極1の内周面および高圧電極2の外周面に被覆して緻密化し、耐電圧の優れた均一な絶縁層5a、5bを形成する。
【0033】
絶縁層5a、5bの具体的な材料としては、アルミナ、ムライト、ステアタイトなどのセラミックス材料、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラスなどのガラス材料、シリカ、ナトリウム、カリユウムを含むホウロウ材料などがあり、これらは塗布される金属材料の耐熱性、熱膨張係数、形成する膜の厚さにより、選択される。
【0034】
絶縁層5a、5bの形成方法として、電極表面に、酸化物単身または酸化化合物の無機系化合物を高温のバーナーや放電を用いて溶射する方法、また有機溶剤に分散しスラリー化したものをスプレー、スピナーコート、刷毛、デッピング、スクリーン印刷等により厚さ100〜1000μm程度に塗布し、高温焼結炉により500℃以上で焼結する方法がある。
【0035】
金属表面と無機系化合物との密着性を高めるため、必要に応じて素管金属表面をブラスト等により粗面化し、又は絶縁層5a、5bを形成する前に金属表面に下地材として、強固な酸化膜層や金属メッキなどを形成しておくことができる。
【0036】
この絶縁層5a、5bの形成において、絶縁層5a、5bとして所要の膜厚と必要な耐電圧を得るために、絶縁層5a、5bの形成を数回繰り返し行う。
【0037】
図2は本オゾン発生装置を用いて処理するシステム構成図である。
同図に示す処理システムでは、原水21を冷却機22で冷却後、ガス供給装置23から酸素並びに酸素を含むガスあるいは空気ガスが供給される気泡発生機24に原水21を供給する。気泡発生機24は、散気管、超音波振動子又は回転式はね分散機等の水中に気泡を発生させる機構を備える。気泡発生機24にて原水中に散気させ、水中に100μm以下の気泡を発生させる。気泡が大きいと、浮力が生じ、装置内で集合し、大きな気泡となり、水に分散せず、かつ水の流れに沿って、オゾン装置内を均一に流れなくなる。
【0038】
以上のように気泡分散した原水を、オゾン発生装置25に供給する。オゾン発生装置25は、図1に示す構成を有する。オゾン発生装置25には、高電圧電源装置26が提供する高電圧電源6から接地電極1および高圧電極2の間に、例えば400〜10kHzの正弦波の交流高電圧4kV〜20kVが印加される。なお、この電極間に印加する電圧は、正弦波の他にパルス波、ノコギリ波等でも良い。
【0039】
接地電極1および高圧電極2の絶縁層5a、5bを介して生成空間3にある水中に電圧が加えられる。水中には気泡があり、水中の気泡の両端に電圧が加わり、気泡内の酸素および酸素を含むガス内で放電が生じる。気泡内の放電により、酸素分子の一部がイオン化し、更に酸素分子と結合し、オゾンが発生する。また、原水中の気泡内のオゾンが水中に溶解してオゾン水となる。このようにして、オゾン化ガスとオゾン水が生成される。オゾン化ガス及びオゾン水は水中に含まれる色や臭い成分及び有害物質を酸化・分解して無害化処理する。オゾン化ガス及びオゾン水により無害化処理された水はオゾン発生装置25より排出される。
【0040】
オゾン発生装置25より排出された水は、エゼクタポンプ30でオゾン化ガスと水との気液混合が更に行なわれる。その後、ガス分離機27へ導入され、そこでオゾンを含むガスと水とに分離される。ガス分離機27で分離された水は処理水として排出口28より排出され、再利用または放流される。一方、ガス分離機27で分離されたオゾン化ガスは、廃オゾン処理装置29で無害化処理された後、酸素または空気として再利用または大気中に放出される。また、ガス分離機27で分離されたオゾン化ガスを回収して、循環経路でエゼクタポンプ30に戻し、再び気液混合すると、オゾン水の生成率を高めることができる。
【0041】
以上のように構成された本実施の形態では、水中にある接地電極1と高圧電極2に各種セラミックス材料や金属酸化物の無機物を塗布・焼付け、又は溶射により絶縁層5a,5bを形成したことにより、電極表面(金属)と水との接触が無くなり、水接触や金属表面での部分放電による表面侵食が無く、溶出する金属イオンや微粒子によるオゾン化ガスおよびオゾン水の純度低下や不純物混入といった不具合を排除でき、電極の寿命も長期に維持できる。また、接地電極1と高圧電極2を表面保護層となる絶縁層5a、5bで被覆することにより、その被覆面で絶縁層が水中の抵抗より高く維持できることから、供給される水の絶縁抵抗が低い場合でも高電圧を印加できる。
【0042】
オゾンの生成を向上させるためは、気泡に加わる電圧を高くすることが必要である。この方法として、電極に加える電圧を高くする方法と、電極を近付けることにより気泡内での放電電力を増加する方法とがある。しかし、単純に印加電圧を高くする方法や、電極間を近付ける方法を採ると、水の破壊電圧以上の電圧となり、絶縁層を被覆しない金属電極間では、水中の電極間で放電が起こり、短絡が生じる。
【0043】
本実施の形態のように、接地電極1および高圧電極2の表面に絶縁層5a、5bを形成した電極を用いることにより、接地電極1および高圧電極2の絶縁層5a、5bの破壊電圧を水の破壊電圧よりも高くすることがきできる。従来装置では5〜10mmが限界であった生成空間3の電極間距離を、本実施の形態では生成空間3の電極間距離を0.3〜1mmまで近づけたところ、図4(b)に示すような生成空間3を跨る様な空隙13が生じても、火花放電14や放電による過電流が発生しないで、安定した高電圧を印加できることを確認できた。また、電極に印加する電圧が同じ印加電圧であれば、従来装置よりも電極を近づける事が出来るため、気泡に加わる電圧を高電圧にでき、オゾンの発生効率を改善することができる。
【0044】
更に、一般的にオゾン発生装置に使われる原水21は高抵抗の水が用いられるが、水の抵抗が安定しないため、印加電圧を安定に維持することが出来なかった。本実施の形態のオゾン発生装置では、接地電極1の内周面および高圧電極2の外周面にセラミックス材等の緻密化した耐電圧の優れた均一な絶縁層5a、5bで被覆することにより、絶縁性で維持されるため、2MΩ・cm以上の抵抗値を示す原水であればオゾン発生と原水中の有害物質などのオゾン処理を同時に、少ないオゾン発生でも効率良く、より効果的に行うことができた。ここでの原水は、高い抵抗値を示す水に限定されるものでは無く、例えば2MΩ・cm以下の抵抗値を示す水や、NaやK、Clイオンが含むイオン導電性を示す水、塩類を含む抵抗値の低い水であっても、オゾンの発生と水中の有害物質のオゾン処理を行うことは可能である。
【0045】
従って、有害物質などを含む原料水の無害化処理として、直接その水中でオゾン化ガスおよびオゾン水を生成し、殺菌、脱色、脱臭等の有害物質の無害化処理が可能であった。
【0046】
また本実施の形態によれば、円筒状の接地電極1の内部に高圧電極2を配置してギャップ支持体4で生成空間3を形成するので、構造的なギャップにより放電・電圧印加空間を構成でき、放電空間を固定できる。本実施の形態では、放電ギャップは接地電極1と高圧電極2の内外形寸法によって決まり、その放電ギャップ距離は、高圧電極2の表面に設けられたスペ−サであるギャップ支持体4によって維持される。従って、ギャップ支持体4と管寸法が決定されれば、高圧電極2にギャップ支持体4を設置したものを接地電極1内に挿入することにより、一定の生成空間が得られる。
【0047】
また、接地電極1と高圧電極2との間は、接地電極1内の絶縁層5aまたは高圧電極2の表面層に設けられた絶縁層5bの距離を長くすることにより、容易に絶縁を確保することができ、複雑な絶縁構造を設けることなく絶縁を確保することができる。
【0048】
また、上記円筒状の電極構造(接地電極1及び高圧電極2)では、電極に汚れおよび電極管の不具合が発生した場合、高圧電極2を取り出し、洗浄や交換を容易に行うことが出来る。接地電極1を、フランジ構造を利用して取り付け固定する構成とすれば、接地電極1の交換も容易に行うことができる。
【0049】
また本実施の形態によれば、接地電極1及び高圧電極2からなる各電極対を並列に増設し、又は直列に連結することにより、オゾン化ガス及びオゾン水の生成能力および水内の有害物を無害化する能力を増加させることができる。さらに、これらのオゾン発生装置を並列運転することにより、より多くのオゾンおよびオゾン水の生成、処理水中内の有害物の無害化が可能となる。
【0050】
また本実施の形態によれば、オゾン発生装置の向きを任意に変えることが出来、図1で示される縦位置では、多量の気泡が集合し、発生機内に大きな気泡や気体空間が生じても、それらの気泡が液体の流れおよび浮力により上昇し、発生機外に容易に排出できるため、オゾン生成のための放電を安定に保つことができる。
【0051】
また、本実施の形態では、オゾン発生装置25へ供給する原水21を冷却機22で冷却するので、オゾン発生効率を上げることができる。また、接地電極1と高圧電極2に付属する外周部、内周部の冷却部が不要となり、構造を簡略化および軽量化を図ることができる。従来の無声放電型オゾン発生装置では、オゾン発生効率を高くするため、電極の周辺、円筒型では、接地電極の外周部や高圧電極の内部を冷却するための冷却部を付加する必要があった。
【0052】
また、上記一実施の形態に係るオゾン発生装置において、オゾン発生装置25へ供給する水道水又は純粋水等の原水中に有機物質や臭い物質等の有害物質を含む未処理水を供給することとしても良い。
【0053】
このように、原水中に有機物質や臭い物質等の有害物質を含む未処理水を混入することで、原水中に発生するオゾンおよびオゾン水によって当該原水中の有害物質を連続的に無害化処理することができる。これまでのオゾン化ガスおよびオゾンイオン水による水処理では、オゾン化ガスおよびオゾン水をオゾン発生装置で生成し、この生成されたオゾン化ガスおよびオゾン水を処理すべき原水に注入し、分解・酸化処理し無害化していたため、処理工程で複雑であると共に長時間を要していた。
【0054】
図3は接地電極及び高圧電極からなる電極対を並列に増設した変形例の構造図である。
同図に示すように、円筒状をなす容器11の内壁に沿って該容器11の内径と同じ外径を有する円筒状の外側接地電極1aを設置している。円筒状の外側接地電極1aの内側には外側接地電極1aとの間に形成されたギャップを介して円筒状の外側高圧電極2aが配置されている。さらに、外側高圧電極2aの内側には外側高圧電極2aとの間に形成されたギャップを介して円筒状の内側接地電極1bが配置され、内側接地電極1bの内側には内側接地電極1bとの間に形成されたギャップを介して円筒状の内側高圧電極2bが配置されている。
【0055】
なお、外側接地電極1aと外側高圧電極2aとの間、並びに外側高圧電極2aと内側接地電極1bとの間には図示されていないギャップ支持体が設けられている。同様に、内側接地電極1bと内側高圧電極2bとの間には図示されていないギャップ支持体が設けられている。また、互いに対向する外側接地電極1a及び外側高圧電極2aの双方又は片方に図示していない絶縁層が形成され、外側高圧電極2a及び内側接地電極1bの対向する双方又は片方の面にも図示していない絶縁層が形成されている。さらに、内側接地電極1bと内側高圧電極2bの対向する双方又は片方の面にも図示していない絶縁層が形成されている。
【0056】
上記外側高圧電極2a及び内側高圧電極2bは高電圧端子12を介して高電圧電源6に接続されている。また、容器11の底面には気泡分散された原水を容器11内に供給するための供給口8が設けられており、容器11の上面にはガス及び原水を取り出す出口9が設けられている。
【0057】
以上のように構成されたオゾン発生装置においても、上記一実施の形態と同様の作用効果を奏することができ、さらに処理能力を増強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】一実施の形態に係るオゾン発生装置の概念図
【図2】図1に示すオゾン発生装置を用いた処理システムの構成図
【図3】接地電極及び高圧電極からなる電極対を並列に増設した変形例の構成図
【図4】(a)絶縁層を設けた電極にまたがる気泡径の場合の模式図、(b)絶縁層を設けていない電極にまたがる気泡径の場合の模式図
【図5】従来の無声放電型オゾン発生装置の概念図
【図6】従来の円筒電極を用いた円筒電極型オゾン発生装置の概略図
【図7】従来の平面電極を用いた水中気泡発生型オゾン発生装置の概念図
【図8】水中放電部に二界面を有する従来のオゾン発生装置の構成図
【符号の説明】
【0059】
1…接地電極、2…高圧電極、3…生成空間、4…ギャップ支持体、5a,5b…絶縁層、6…高電圧電源、7…絶縁端子、8…供給口、9…出口、13…空隙、31a,31b…平板金属電極、32…絶縁層、33…交流高電圧電源、34…放電空間、35…無声放電、36…原料ガス、37…接地電極、38…絶縁層、39…高圧電極、41…容器、42a,42b…金属電極、43…原水、44…原料ガス、45…気泡発生機、46…気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をなす接地電極と、前記接地電極の内側に配置された高圧電極と、前記接地電極と前記高圧電極との間に放電空間となるギャップを形成するスペーサと、前記放電空間を形成している前記接地電極及び前記高圧電極の両方又は一方の電極表面に形成された絶縁層とを備え、前記放電空間に酸素を含むガスを気泡分散した水を供給すると共に、前記接地電極と前記高圧電極との間に電圧を印加してオゾン化ガス及びオゾン水を生成することを特徴とするオゾン発生装置。
【請求項2】
前記放電空間に存在する水中気泡内で放電させてオゾン化ガス及びオゾン水を生成することを特徴とする請求項1記載のオゾン発生装置。
【請求項3】
前記絶縁層は、セラミックス材料又は金属酸化物の無機物で構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のオゾン発生装置。
【請求項4】
前記接地電極と前記高圧電極の間の印加電圧として高周波電圧を印加することを特徴とする請求項1〜請求項3記載のオゾン発生装置。
【請求項5】
電圧を印加して発生したオゾン化ガスとオゾン水を通過させるエゼクタポンプと、オゾン化ガスとオゾン水とを分離するガス分離機と、前記ガス分離機で分離したオゾン化ガスを前記エゼクタポンプに戻す循環経路とを有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のオゾン発生装置。
【請求項6】
前記放電空間へ供給する水を冷却して、オゾン化ガス及びオゾン水の生成で生じる熱を冷却することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のオゾン発生装置。
【請求項7】
有機物質又は臭い物質を含む未処理水を原水に混入して前記放電空間へ供給することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のオゾン発生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−114001(P2009−114001A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285794(P2007−285794)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】