説明

オリゴヌクレオチドで置換されたピロール

本発明は電気的重合によりオリゴヌクレオチドを固定し、標的化することを可能にする式(I)の新規なピロール誘導体に関する。本発明は、更に、かく製造された電気的活性重合体及び試料中の検体を検出し、同定しかつ定量するために上記重合体を使用する方法に関する。式(I)において、R1はオリゴヌクレオチドを表し、YはYはS又はOであり、Xは
-(CH2)n-O-、-(CH2)<SB>P</SB>O-[(CH2)2-O]q-、-(CH2)r;-CO-NR’-(CH2)r-O-、
-(CH2)r-NCH3-(CH2)r-O-、-(CH2)r-CO-NR’-[(CH2)2-O]s-、
-(CH2)r-NCH3-[(CH2)2-O]<SB>S</SB>から選ばれたスペーサーアームであり、R’はH又は
-CH3であり、nは1〜5の整数であり、pは1〜2の整数であり、qは1〜4の整数であり、rは1〜3の整数であり、r’は1〜3の整数であり、sは1〜3の整数であり、n、p、q、r、r’及びsは同一であるか異なるものであり、ピロール環は2-、3-、4-又は5-位で置換されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレクトロポリメリゼーション(electropolymerization)によりオリゴヌクレオチドの固定(immobilization)及びターゲッティング(targeting)を行うための新規なピロール誘導体に関する。本発明は、更に、かく得られる電気的活性(electroactive)重合体及び試料中の検体を検出し、同定し、分析するためにこれらの重合体を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリピロール及びその誘導体のごとき共役重合体(conjugated polymer)は、その導電性及び電気的活性(electroactive nature)のためによく知られている。ポリピロールは、あるピロール環が、3-位又は4-位で官能基によって置換されたときにその導電性と電気的活性を保持していることも知られている。このタイプの官能基を保持している重合体は、
WO-A1-95/29199、Garnier等(Synthetic Metals、100:89-94、1999)、Ho-Hoang等
(Synthetic Metals、62:277-280、1994)、Ho-Hoang等(J. Mater,Chem.,6(7),1107-
1112,1996)及びKorri-Youssoufi等(Materials Science and Engineering,C15,265-
268,2001)に記載されている。更に、種々のアンチリガンド(antiligand)をポリピロールによって担持されている官能基上にグラフトし得る。
【0003】
例えば、WO-A1-95/29199号には、ピロール環の3-位が官能基で置換されているピロールの電気化学的重合によりプレカーサーポリピロールを合成することが記載されている。このプレカーサー重合体を電気化学的重合により導電性支持体上に又は自己支持性フィルムの形で沈着させる。第2工程においては、ポリヌクレオチド又はポリペプチドのごときアンチリガンドをプレカーサー重合体の官能基上に化学的にグラフトさせる。かく得られる重合体はその導電性と電気的活性を保持している。従って、これらの重合体は、電位差の変化又は電流の変化を測定することにより、重合体上にグラフトされたアンチリガンドと特異的に相互作用をする検体を検出するのに使用し得る。WO-A1-00/77523号には、オリゴヌクレオチドのごときアンチリガンドを、官能基を担持しているプレカーサー重合体上に化学的にグラフトすることも記載されている。
【0004】
かく得られる重合体は検体を捕獲し、検出するための生物学的センサー、即ち、“バイオセンサー”として使用し得る。試料中の生物学的に興味のある分子のごとき検体を、簡単な電気的測定により検出することの可能性はこれらの重合体の主要な利点を構成する。しかしながら、これらの重合体を製造する方法は種々のアンチリガンドを担持している多数の重合体を並行的に合成することを許容しない化学的グラフトを包含している。ところで、アンチリガンドマトリックスの調製は、多数の異なるアンチリガンドの固定とターゲッティングとを必要とする。かくして、“バイオチップス”(“biochips”)又はDNAチップスの製造には固体支持体上でのオリゴヌクレオチドの固定とターゲッティングが包含される。プレカーサー重合体上にオリゴヌクレオチドを化学的にグラフトする方法によってはオリゴヌクレオチドの規則的マトリックス(ordered matrix)を得ることはできない。
【0005】
更に、非置換ピロールと、オリゴヌクレオチドを担持している基によって窒素原子が置換されているピロールとの混合物の直接的な電気化学的共重合によりオリゴヌクレオチドのターゲッティングと固定とを同時に達成することは既知の方法である。即ち、Livache等(Analytical Biochemistry,255:188-194,1998)により、オリゴヌクレオチドを担持している基によりピロール環の窒素原子が置換されている置換ピロールについて記載されている。オリゴヌクレオチドを担持しているこれらの置換ピロールをピロールと電気化学的に共重合させる。その後の電気化学的共重合反応により、異なる電極上での異なるオリゴヌクレオチドのターゲッティングと固定が可能になる。電気化学的共重合により、特定のDNA又はRANを検出するためのハイブリダイゼーション反応に使用し得る、オリゴヌクレオチドを担持している共重合体が得られる。しかしながら、これらの共重合体は低い導電性と電気的活性しか有していない。従って、これらの共重合体の欠点は、ハイブリダイゼーションの検出が、直接的な電気的測定ではなしに、追加の標識付け(ラベリング)によって行われることである。
【0006】
EP-B1-0691978号及びEP-B1-0692593号にはオリゴヌクレオチドのごとき種々のリガンドがピロール環の窒素原子上にグラフトしている置換ピロールが記載されている。モノマーとして使用されるこれらの置換ピロールを非置換ピロールと電気化学的に共重合させる。しかしながら、得られる共重合体も導電性及び電気的活性が低いという欠点を有する。
【0007】
従来技術の欠点を除去するために、本発明によれば、窒素原子以外の位置がオリゴヌクレオチドを担持している基によって置換されている新規なピロールが提供される。これらの新規な置換ピロールは、モノマーとして、単独で又は他のモノマーとの混合物として使用された場合、電気化学的重合による共重合体の合成を可能にする。得られる重合体又は共重合体は導電性でありかつ電気的に活性である。本発明に従ってオリゴヌクレオチドにより置換されたピロールは、一工程での、電気化学的重合によるオリゴヌクレオチドのターゲッティングと固定の可能性を提供する。従って、本発明に従ってオリゴヌクレオチドで置換されたピロール及び共重合体は、オリゴヌクレオチドの規則的マトリックスを調製することを可能にする。これらのマトリックスは診断及び一連の分子のスクリーニングのための特に有利な用具を構成する。更に、本発明による共重合体は、共重合体によって担持されているオリゴヌクレオチドと特異的に相互作用をすることのできる検体を電気的測定により検出するための電気的活性を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はオリゴヌクレオチドを担持している基によって置換されたピロールに関する。本発明によるこれらの置換ピロールは、以下においては、“オリゴヌクレオチド置換ピロール”又は“本発明に従った置換ピロール”と称する。
【0009】
本発明の第1の主題は、一般式(I):

(式中、
R1はオリゴヌクレオチドを表し、
YはS又はOを表し、
Xはスペーサーアームを表す)
で表されるオリゴヌクレオチド置換ピロールである。
【0010】
“スペーサーアーム”(“spacer arm)という用語は、ピロール環に関して、オリゴヌクレオチドを離隔することを可能にする化学的基を意味する。スペーサーアームは当業者に周知であり、重合体の導電性と電気的活性を保持することを可能にする任意のスペーサーを本発明の置換ピロールで使用し得る。スペーサーアームは、置換ピロールの重合を阻害することがないように、低い障害性(hindrance)を示すことが有利である。
【0011】
本発明の好ましい態様においては、
Xは-(CH2)n-O-、-(CH2)p-O-[(CH2)2-O]q-、-(CH2)r-CO-NR’-(CH2)r’-O-、
-(CH2)r-NCH3-(CH2)r’-O-、-(CH2)r-CO-NR’-[(CH2)2-O]s-、-(CH2)r-NCH3-[(CH2)2-O]s-
から選ばれたスペーサーアームを表し、
R’は-H又は-CH3を表し、
nは1〜5の整数であり、
pは1〜2の整数であり、
qは1〜4の整数であり、
rは1〜3の整数であり、
r’は1〜3の整数であり、
sは1〜3の整数であり、
n、p、q、r、r’及びsは同一であるか異なるものであり、ピロール環は2-、3-、4-又は5-位で置換されている。
【0012】
“オリゴヌクレオチド”という用語は、適当なハイブリッド形成条件下で、少なくとも部分的に相補的なオリゴヌクレオチドとハイブリッド形成することのできる、一連の、少なくとも2個の天然又は修飾ヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド又はこの両者)を意味する。“ヌクレオシド”という用語は、単糖(リボース又はデオキシリボース)に連結したプリン又はピリミジン塩基からなる有機化合物を意味する。“ヌクレオチド”という用語は、、単糖(リボース又はデオキシリボース)及びホスフェート基に連結したプリン又はピリミジン塩基からなる有機化合物を意味する。“修飾ヌクレオチド”(“modified nucleotide)という用語は、例えば、修飾塩基を含有するヌクレオチド及び/又はヌクレオチド内結合及び/又は主鎖に対する修飾を有するヌクレオチドを意味する。“修飾ヌクレオチド”(“modified nucleotide)という用語は、例えば、修飾塩基からなるヌクレオチド及び/又はヌクレオチド間結合(internucleotide linkage)及び/又は主鎖に対する修飾を有するヌクレオチドを意味する。修飾塩基の例としては、イノシン、メチル-5-デオキシシチジン、ジメチルアミノ-5-デオキシウリジン、ジアミノ-2,6-プリン及びブロモ-5-デオキシウリジンが挙げられる。修飾ヌクレオチド間結合の例としては、ホスホロチオエート、N-アルキルホスホルアミデート、アルキルホスホネート及びアルキルホスホトリエステル結合が挙げられる。FR-A-2607507号に記載されるごときアルファ-オリゴヌクレオチド及びM.Egholm等の報文(J.Am.Chem.Soc.,114,1895-1897,1992)の主題であるPNAsは、主鎖が修飾されているヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドの例である。
【0013】
オリゴヌクレオチドはホスホジエステル結合を介してスペーサーアームに連結されている。特に、オリゴヌクレオチドの3’-OH又は5’-OHは、ホスホリル化された基
(phosphorylated group)によりスペーサーアームの酸素原子に連結されている。オリゴヌクレオチドは2−70個の、好ましくは、20個のヌクレオチドからなることが有利である。
【0014】
本発明の有利な態様においては、オリゴヌクレオチドは、スペーサーアームに連結された端部に、5〜10T、好ましくは10Tからなるポリヌクレオチドの配列TTTTTを含有している。このポリTは、検出されるべき検体に特異的なオリゴヌクレオチドの部分をピロール環から隔離することを可能にする。
【0015】
本発明は、更に、一般式(II)

(式中、R1、Y及びXは前記の意義を有する)で表される、オリゴヌクレオチド置換ピロールに関する。
【0016】
Xは-(CH2)n-O-であり、nが2に等しいことが好ましい。
【0017】
本発明は、更に、一般式(III)

(式中、R1、Y及びXは前記の意義を有する)で表される、オリゴヌクレオチド置換ピロールに関する。
【0018】
Xは-(CH2)n-O-であり、nが2に等しいことが好ましい。
【0019】
本発明の別の主題は、下記の工程:
a) 一般式(II)で表される、本発明に従ったオリゴヌクレオチド置換ピロールから選ばれた少なくとも1種のモノマーを準備する工程、
b) 他のピロールと共重合し得る置換ピロールから選ばれた少なくとも1種のモノマーを準備する工程、
c) 工程a)のモノマーを工程b)のモノマーと電気化学的に共重合させる工程、
からなるオリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体の製造方法である。
【0020】
一般式(II)で表される、オリゴヌクレオチド置換ピロールにおいては、Xが-(CH2)n-O-であり、nが2に等しいことが有利である。
【0021】
他の有利な態様においては、一般式(II)で表される、本発明に従ったオリゴヌクレオチド置換ピロールと工程b)の置換ピロールとのモル比は1/1000〜1/100000である。このモル比は1/5000〜1/20000であることが好ましい。更に好ましくは、このモル比は1/20000である。
【0022】
“モノマー”という用語は、他のモノマーと化学的に又は電気化学的に共重合してポリマーを形成することのできる化学的単位を意味する。
【0023】
“重合”という用語は、同一の化学的性質の単位が化学的に又は電気化学的に反応して、ある数のモノマーの集成物が巨大分子を形成することを意味する(n x M → (M)n)。重合には、典型的には、ピロール単位が縮合して、ポリピロールを形成することが包含される。“共重合”という用語は、異なる単位の同時的重合、例えば、オリゴヌクレオチドを含有していない基で置換されたピロールと、本発明による置換ピロールとの同時的重合を意味する。
【0024】
“電気的重合”(“electropolymerization”)、“電気的共重合”(“electrocopolymeri-
zation”)、“電気化学的共重合”(“electrochemical copolymerization”)及び“電気化学的重合”(“electrochemical polymerization”)という用語は、電気化学的プロセスによる重合を意味する。電気的重合法は当業者に周知である。例えば、サイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry)、クロノポテンショメトリー(chronopotentiometry)
(負荷電流)及びクロノアンペロメトリー(chronoamperometry)(負荷電位)の技術が挙げられる。本発明の特定に態様においては、沈着(deposite)はクロノアンペロメトリー又は制御された電位沈着(potential deposition)により行われる。この方法は電位におけるサージ(surge)を平衡電位(ゼロ電流)から、電極で反応の生起する一定の値まで負荷し(impose)、時間の関数としての電流を測定することからなる。
【0025】
ディアズ(Diaz)メカニズム(Sadki等,Chem.Soc.Rev.29:283-293,2000)によるピロールの電気的重合により、ポリピロールが形成される。この重合はピロールモノマーの2-及び5-位で行われる。
【0026】
“他のピロールと重合し得る置換ピロール”という表現は、ピロール環の3-又は4-位で置換されているピロールであって、他のピロールと2-及び5-位で重合又は共重合することのできる、特に、本発明のオリゴヌクレオチド置換ピロールと共重合することのできるピロールを意味する。他のピロールと重合し得るこれらの置換ピロールは、重合又は共重合を阻害しないように十分に小さい分子立体障害(molecular hindrance)を示す基を担持している。典型的には、これらの置換ピロールはオリゴヌクレオチを含有する置換基を担持していない。更に、ピロール環の3-又は4-位が低立体障害性基で置換されているこれらのピロールは、他のピロールとの重合又は共重合後、導電性、電気的活性重合体を得ることを可能にする。他のピロールの重合して導電性重合体を形成することのできる置換ピロールは当業者に周知であり、文献に広く記載されている。特に、WO-A1-95/29199、
Garnier等(Synthetic Metals、100:89-94、1999)、Ho-Hoang等(Synthetic Metals、62:277-280、1994)、Ho-Hoang等(J. Mater,Chem.,6(7),1107-1112,1996)及びKorri-
Youssoufi等(Materials Science and Engineering,C15,265-268,2001)が挙げられる。本発明のオリゴヌクレオチド置換ピロールと、オリゴヌクレオチドを担持していない基で置換されているピロールとの共重合により、共重合反応中に立体障害を減少させることができる。
【0027】
かくして、本発明のオリゴヌクレオチド置換ピロールがピロール環の3-及び4-位で置換されている場合には、本発明のこれらのピロールと、置換ピロールとの混合物は直接共重合させ得る。
【0028】
本発明の有利な態様においては、本発明のオリゴヌクレオチド(ODN)で置換されたピロールを3-(ヒドロキシエチル)ピロールと共重合させる。従って、この態様においては、他のピロールと重合することのできる置換ピロールは3-(ヒドロキシエチル)ピロールである。この共重合から得られるオリゴヌクレオチドで官能化された導電性、電気的活性共重合体は以下に示されている。
【0029】

【0030】
本発明の特定の態様においては、オリゴヌクレオチドで官能化された共重合体は、第1の導電性、電気的活性重合体上に沈着又は形成させる。これらの方法においては、第1の置換ピロールを重合又は共重合させて導電性、電気的活性重合体のプレフィルム又は薄い下層を形成させる。ついで、オリゴヌクレオチドで官能化された共重合体を使用して第2の層を製造する。
【0031】
従って、本発明は、更に、下記の工程:
a) 他のピロールと重合し得る置換ピロールから選ばれた少なくとも1種のモノマーを準備する工程、
b) 工程a)のモノマーを電気化学的に重合させて第1の導電性、電気的活性重合体を製造する工程、
c) 一般式(II)のオリゴヌクレオチド置換ピロールから選ばれたモノマーを準備する工程、
d) 他のピロールと重合し得る置換ピロールから選ばれた少なくとも1種のモノマーを準備する工程、
e) 工程c)のモノマーと工程d)のモノマーとを、工程b)で形成された第1の導電性、電気的活性共重合体上で電気化学的に共重合させて、オリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体を製造する工程、
からなるオリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体の製造方法に関する。
【0032】
工程 a)及び工程 d)で使用される置換ピロールは同一であるか又は異なるものである。
【0033】
工程 c)の置換ピロールと工程d)の置換ピロールとのモル比は1/20000であることが好ましい。
【0034】
工程 a)及び工程 d)の置換ピロールは3-(ヒドロキシルエチル)ピロールであることが好ましい。
【0035】
本発明は、更に、下記の工程:
a) 他のピロールと重合し得る置換ピロールから選ばれた少なくとも1種のモノマーを準備する工程、
b) 工程a)のモノマーを電気化学的に重合させて第1の導電性、電気的活性重合体を製造する工程、
c) 一般式(II)のオリゴヌクレオチド置換ピロールから選ばれたモノマーを準備する工程、
d) 工程c)のモノマーを、工程b)で形成された第1の導電性、電気的活性重合体上で電気化学的に重合させて、オリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性重合体を製造する工程、
からなるオリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体の製造方法に関する。
【0036】
工程a)の置換ピロールは3-(ヒドロキシエチル)ピロールであることが有利である。
【0037】
本発明は、更に、下記の工程:
a) 他のピロールと重合し得る置換ピロールから選ばれた少なくとも1種のモノマーを準備する工程、
b) 工程a)のモノマーを電気化学的に重合させて第1の導電性、電気的活性重合体を製造する工程、
c) 一般式(III)のオリゴヌクレオチド置換ピロールを準備する工程、
d) 工程c)の置換ピロールを、工程b)で形成された第1の導電性、電気的活性重合体上で電気化学的にカップルさせて、オリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体を製造する工程、
からなるオリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体の製造方法に関する。
【0038】
工程a)の置換ピロールは3-(ヒドロキシエチル)ピロールであることが有利である。
【0039】
本発明のオリゴヌクレオチド置換ピロールがピロール環の2-位又は5-位で置換されている場合には、他のピロールと重合又は共重合することができない。従って、一般式(III)のオリゴヌクレオチド置換ピロールから、オリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体を製造するためには、本発明に従って、2-位又は5-位においてオリゴヌクレオチドで置換されているピロールが電気化学的にカップルされている第1の導電性、電気的活性重合体を製造することが必要である。
【0040】
従って、本発明の有利な態様においては、一般式(III)のオリゴヌクレオチド(ODN)置換ピロールは、ポリ[3-(ヒドロキシエチル)ピロール]の第1の導電性、電気的活性重合体上にカップルされる。従って、この態様においては、本発明のオリゴヌクレオチド置換ピロールは重合体の端部に存在する。この共重合により得られる、オリゴヌクレオチドで官能化された導電性、電気的活性共重合体を以下に示す。
【0041】

【0042】
本発明の他の主題は、本発明の方法で得ることのできる、オリゴヌクレオチドで官能化された導電性、電気的活性共重合体である。
【0043】
本発明の共重合体はオリゴヌクレオチドで官能化されている。これらのオリゴヌクレオチドは重合体を形成するあるモノマー単位(ピロール環)に共有結合的にグラフトし、かくして、追加の官能性を有する導電性、電気的活性重合体が提供される。オリゴヌクレオチドで官能化された共重合体は、例えば、検体を捕捉し、検出するのに適当である。
【0044】
“導電性重合体”という用語は、その電子が、最も一般的には一重結合及び二重結合の鎖(共役結合)に沿って高度に移動し(delocalize)、それによって、重合体を超小型電子工学的半導体のように挙動させる重合体を意味する。
【0045】
“電気的活性共重合体”という用語は、検体が重合体によって担持されているオリゴヌクレオチドと特異的に相互作用を行ったとき、その電気化学的応答が変性される重合体を意味する。即ち、検体との特異的相互作用の後に、電気化学的信号の変性が観察される。従って、導電性、電気的活性共重合体は検体との相互作用を、変性された電気化学的信号に変換する。
【0046】
本発明の共重合体はオリゴヌクレオチドが固体支持体上で標的にされ(target)、固定される任意の用途に使用し得る。
【0047】
特に、本発明の共重合体は、自己指示性皮膜の形で、又は、電極上の皮膜の形で得られる。実際に、電極は、反応中に配送される(deliver)電流を測定することにより、重合反応の発生を制御することを可能にする。電極は、また、共重合体のその後の電気化学的応答を測定することを可能にする。従って、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドで官能化された導電性、電気的活性共重合体の少なくとも1種で表面被覆された導電性支持体からなる電極に関する。
【0048】
電極用の導電性支持体はこの技術分野で既知である;例えば、金属又は炭素誘導体からなる支持体が挙げられる。本発明の電極を製造するためには、通常、共重合体を導電性支持体上に沈着させる。電極の表面で電気化学的重合を行って、本発明の共重合体で表面被覆された導電性支持体からなる電極を得ることが有利である。本発明の有利な態様においては、電極は、共重合体の層を金又は白金からなる支持体の表面に沈着させることにより得られる。
【0049】
電極での電気化学的反応を制限し、制御することが可能である場合、本発明のオリゴヌクレオチド置換ピロールは、小さい表面でオリゴヌクレオチドを固定し、標的にすることを可能にする。この標的化された(targeted)電気的重合(エレクトロポリメリゼーション)は、各々のポイントが所定のオリゴヌクレオチドを担持している、小型化されたかつ規則的な(ordered)ポイントのマトリックスを製造することを可能にする。従って、有利な態様においては、本発明は電極のマトリックスに関する。
【0050】
従って、本発明は、更に、本発明の電極の少なくとも1個からなる電極のマトリックスに関する。有利な態様においては、マトリックスの種々の電極は種々のオリゴヌクレオチドを担持している。特定の態様によれば、本発明は固体支持体に結合された多数の電極又はマイクロ電極(microelectrode)に関する;これらの電極は本発明の共重合体で被覆されており、かつ、種々のオリゴヌクレオチドを担持していることが有利である。かかる電極マトリックスは本発明のオリゴヌクレオチド置換ピロールの標的化されたエレクトロポリメリゼーションにより得られることが有利である。
【0051】
本発明の共重合体、電極及び電極マトリックスは、特に、試料中に存在し得るかつ共重合体によって担持されているオリゴヌクレオチドと特異的に反応することのできる検体を検出するのに使用し得る。従って、本発明は、更に、本発明の共重合体の少なくとも1つ及び/又は本発明の電極の少なくとも1つからなる、試料中の検体を検出するための装置に関する。本発明は、更に、本発明の電極のマトリックスの少なくとも1つからなる、試料中の検体を検出するための装置に関する。
【0052】
本発明の主題は、更に、下記の工程:
a) 本発明のオリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体又は本発明のオリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体で被覆された導電性支持体からなる電極を準備する工程、
b) 工程a)の電気的活性共重合体又は電極と試料とを、検体と上記オリゴヌクレオチドとの特異的な相互作用に適当な条件下で接触させる工程、
c) 上記オリゴヌクレオチドと結合した検体を電気的測定により検出する工程、
からなる、試料中の検体の検出方法である。
【0053】
従って、本発明は、更に、試料中に存在し得るかつ本発明のオリゴヌクレオチドと特異的に相互作用を行うことができる検体を検出するための、本発明の共重合体、電極及び電極マトリックスの使用に関する。
【0054】
“検体”という用語は、オリゴヌクレオチドと特異的に相互作用を行うことができる、従って、本発明の共重合体を使用して検出することができる任意の分子を意味する。この検体は例えば、生体分子、例えば、タンパク質、ペプチド、脂質、ステロイド、糖又は核酸であり得る。共重合体によって担持されているオリゴヌクレオチドは検出すべき検体に対して特異的である。オリゴヌクレオチド及び検出すべき検体はアンチリガンド/リガンドカップル(例えば、DNA/DNA、RNA/DNA、RNA/RNA又はDNA/タンパク質)を形成していることが有利である。
【0055】
本発明は任意のタイプの試料中の検体を検出することを可能にする。本発明の特定の態様においては、試料は生物学的試料である。この試料は診断の目的で患者から採取されたものであることが有利である。この試料は、例えば、尿、血液、血清、血漿、細胞抽出物又は体液であり得る。
【0056】
本発明の好ましい態様においては、本発明の導電性、電気的活性共重合体のオリゴヌクレオチドと特異的にハイブリッド形成をするDNA及び/又はRNAが検出される。
【0057】
本発明の共重合体は、検体が該重合体によって担持されているオリゴヌクレオチドと特異的に相互作用を行ったとき、電気化学的応答が変性される電気的活性共重合体である。従って、本発明の導電性、電気的活性共重合体は、検体との相互作用を電気化学的信号に変換する。検体と共重合体によって担持されているオリゴヌクレオチドとの特異的相互作用により、参照共重合体と比較して、検討している共重合体の電気化学的応答に変性が生じる。従って、検体の検出は電気的測定によって行われることが有利である。
【0058】
“電気的測定”という用語は、重合体の酸化電位の変化のごとき電位差型の変化の測定、又は、所与の電位で観察される酸化電流の変化による電流型の変化の測定を意味する。これらの変化は当業者に周知の方法に従って、迅速に、鋭敏にかつ定量的に測定される。
【0059】
本発明の有利な態様においては、電気的測定は電位の変化又は電流の変化の測定からなる。本発明の特定の>態様においては、サイクリックボルタンメトリーが使用される。この方法は、電位範囲を、一定の速度で、一つの方向に、ついで、他の方向に掃引する
(sweep)ことからなる方法である。得られたボルトアンペログラム(voltamperogram)は、検討している電気化学的系の、電流としての応答を与え、その特徴付けを可能にする。
【0060】
本発明の特に有利な態様においては、検体と共重合体によって担持されているオリゴヌクレオチドとの間の特異的な相互作用の検出は、重合体の電気的重合に使用された電極を使用して行い得る。例えば、共重合体のオリゴヌクレオチドに相補的な核酸のハイブリッド形成は、本発明の共重合体を担持している電極上での電気的測定によって検出し得る。
【0061】
電気的測定による検出方法は本発明の共重合体について好ましい。しかしながら、当業者に周知の他の検出方法も使用し得る。
【0062】
本発明の他の主題は、一般式(IV):

(式中、R2はアミン保護基である)で表される置換ピロールである。種々のアミン保護基を本発明の置換ピロールで使用し得る。これらのアミン保護基は当業者には周知である
(Kocienski P.J.,Thieme Publishing Group,1994;Hanson J.R.,Protecting Groups
in Organic Synthesis,Continuum International Publishing Group)。アミン保護基はモノメトキシトリチル、ジメトキシトリチル、トシル、トリイソプロピルシリル、tert-ブトキシカルボニル、9-フルオレニルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル及びアセチルから選ばれることが好ましい。
【0063】
R3は遊離の水酸基と反応し得るリン含有基である。R3はホスホトリエステル、H-ホスホネート又はホスホルアミダイト基から選ばれることが好ましい。
【0064】
Xは-(CH2)n-O-、-(CH2)p-O-[(CH2)2-O]q-、-(CH2)r-CO-NR’-(CH2)r’-O-、
-(CH2)r-NCH3-(CH2)r’-O-、-(CH2)r-CO-NR’-[(CH2)2-O]s-、-(CH2)r-NCH3-[(CH2)2-O]s-
から選ばれたスペーサーアームを表す;
R’は-H又は-CH3を表す;
nは1〜5の整数である;
pは1〜2の整数である;
qは1〜4の整数である;
rは1〜3の整数である;
r’は1〜3の整数である;
sは1〜3の整数である;
n、p、q、r、r’及びsは同一であるか異なるものである;ピロール環は2-、3-、4-又は5-位で置換されている。
【0065】
本発明の好ましい態様においては、本発明は一般式(V):

(式中、R2はアミン保護基である)の置換ピロールに関する。R2はモノメトキシトリチル、ジメトキシトリチル、トシル、トリイソプロピルシリル、tert-ブトキシカルボニル、9-フルオレニルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル及びアセチルから選ばれることが好ましい。
【0066】
R3は遊離の水酸基と反応し得るリン含有基である。R3はホスホトリエステル、H-ホスホネート又はホスホルアミダイト基から選ばれることが好ましい。
【0067】
Xは-(CH2)n-O-、-(CH2)p-O-[(CH2)2-O]q-、-(CH2)r-CO-NR’-(CH2)r’-O-、
-(CH2)r-NCH3-(CH2)r’-O-、-(CH2)r-CO-NR’-[(CH2)2-O]s-、-(CH2)r-NCH3-[(CH2)2-O]s-
から選ばれたスペーサーアームを表す;
R’は-H又は-CH3を表す;
nは1〜5の整数である;
pは1〜2の整数である;
qは1〜4の整数である;
rは1〜3の整数である;
r’は1〜3の整数である;
sは1〜3の整数である;
n、p、q、r、r’及びsは同一であるか異なるものである。
【0068】
R2はモノメトキシトリチルを表すことが好ましい。R3はホスホルアミダイト基を表すことが好ましい。本発明の好ましい態様においては、Xは-(CH2)n-O-を表し、nは2に等しい。
【0069】
本発明の他の態様においては、置換ピロールは、一般式(VI):

(式中、R2は、好ましくは、モノメトキシトリチル、ジメトキシトリチル、トシル、トリイソプロピルシリル、tert-ブトキシカルボニル、9-フルオレニルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル及びアセチルから選ばれたアミン保護基である;
R3は遊離の水酸基と反応し得るリン含有基である。R3はホスホトリエステル、H-ホスホネート又はホスホルアミダイト基から選ばれることが好ましい;
Xは-(CH2)n-O-、-(CH2)p-O-[(CH2)2-O]q-、-(CH2)r-CO-NR’-(CH2)r’-O-、
-(CH2)r-NCH3-(CH2)r’-O-、-(CH2)r-CO-NR’-[(CH2)2-O]s-、-(CH2)r-NCH3-[(CH2)2-O]s-
から選ばれたスペーサーアームを表す;
R’は-H又は-CH3を表す;
nは1〜5の整数である;
pは1〜2の整数である;
qは1〜4の整数である;
rは1〜3の整数である;
r’は1〜3の整数である;
sは1〜3の整数である;
n、p、q、r、r’及びsは同一であるか異なるものである)で表される。。
【0070】
R2はモノメトキシトリチルを表すことが好ましい。R3はホスホルアミダイト基を表すことが好ましい。本発明の好ましい態様においては、Xは-(CH2)n-O-を表し、nは2に等しい。
【0071】
本発明の他の主題は、下記の工程:
a) オリゴヌクレオチドを合成するためのサイクルを行う工程、
b) 上記オリゴヌクレオチドを合成するための最終サイクルにおいて、一般式(IV)

(式中、R2、R3及びXは前記の意義を有する)で表される置換ピロールを、上記オリゴヌクレオチドの最終ヌクレオチドにおいて、5’位又は3’位で置換する工程、
c)前記保護基Rを開裂させる工程;
からなる、一般式(I)

(式中、R1、X及びYは、前記の意義を有する)のオリゴヌクレオチド置換ピロールの製造方法からなる。
【0072】
本発明の有利な態様においては、保護基R2はモノメトキシトリチル基であり、工程c)においては、この保護基を酸性媒体中での処理により開裂させる。
【0073】
好ましい態様においては、保護基R2はモノメトキシトリチル基であり、オリゴヌクレオチドは、工程c)で保護基を開裂させる前に、逆相クロマトグラフィーより精製する。
【0074】
一般式(IV)の置換ピロールの置換は、オリゴヌクレオチドを合成するサイクルの後に行われる。合成の最終サイクルにおいては、ヌクレオチドを一般式(IV)の置換ピロールで置換する。
【0075】
第1の例によれば、以下の図に示す“H-ホスホネート”連続サイクルにおいては、このサイクルの最終ヌクレオチドを、リン含有基がH-ホスホネートである、本発明の一般式
(IV)の置換ピロールで置換する。
【0076】

【0077】
他の例によれば、以下の図に示すホスホルアミダイト縮合サイクルにおいては、このサイクルの最終ヌクレオチドを、リン含有基がホスホルアミダイトである、本発明の一般式(IV)の置換ピロールで置換する。
【0078】

【0079】
同様に、他の例によれば、以下の図に示す“ホスホトリエステル”縮合サイクルにおいては、このサイクルの最終ヌクレオチドを、リン含有基がホスホジエステルである、本発明の一般式(IV)の置換ピロールで置換する。
【0080】

【0081】
オリゴヌクレオチドを合成するサイクルの終了時に、そして、脱保護の後に、オリゴヌクレオチドの5’又は3’末端の遊離の水酸基を、一般式(IV)の置換ピロールの反応性リン
(ホスホジエステル、ホスホルアミダイト、H-ホスホネート)と反応させる。
【0082】

図面の説明
図1:1-[N-(トシル)]-3-[7-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホルアミジチ ル)ヒドロキシエチル]の結合の前及び後の、5’ OHオリゴヌクレオチドのクロマトグラム
オリゴヌクレオチドの図1 A 配列:
5’ ttt ttt ttt ttg cct tga cga tac agc ta、滞留時間(Rt):14.87分
オリゴヌクレオチドの図1B 配列:
5’ ピロール トシル-ttt ttt ttt ttg cct tga cga tac agc ta、Rt:16.35分
2個のオリゴヌクレオチドの図1C コインジェクション(coinjection)
(Rt:15.07分及び17.40分)
【0083】
図2:トシル基の開裂のUPLC監視
オリゴヌクレオチドの図2 A 配列:
5’ ピロール トシル-ttt ttt ttt ttg cct tga cga tac agc ta、Rt:14.9分
オリゴヌクレオチドの図2 B 配列:
5’ ピロール トシル-ttt ttt ttt ttg cct tga cga tac agc ta (20%)、Rt:15.25分
5’ ピロール-ttt ttt ttt ttg cct tga cga tac agc ta (80%)、Rt:13.48分:
55℃の0.5M NaOH溶液中で24時間後
【0084】
図3:3位で置換されたピロールを担持しているかつMMTを担持しているピロールモノマーから合成された精製オリゴヌクレオチドのクロマトグラム
オリゴヌクレオチドの配列:5’ ピロール-ctc ggg aat ctc aat gtt ag、Rt:17.6分。
【0085】
図4:白金電極上での、3-(ヒドロキシエチル)ピロールの溶液についてのサイクリックボルタンメトリーの最初のサイクル
図5:モノマーを含まない電解質中に移行させた3-(ヒドロキシエチル)ピロールの重合体フィルムで変性された電極についてのサイクリックボルタンメトリー曲線
図6:白金電極上での、ピロール−3位のODNの5μM溶液におけるサイクリックボルタンメトリーの最初のサイクル
図7:モノマーを含まない電解質溶液中に移行させた、3-(ヒドロキシエチル)ピロールのプレフィルム上での、ピロール−3位のODNのフィルムで変性された電極についてのサイクリックボルタンメトリー曲線
図8:種々の媒体に曝露された変性電極の電気化学的信号の変性
図9:モノマーを含まない電解質溶液中に移行させたプレフィルム上での、共重合体で変性された電極についてのサイクリックボルタンメトリー曲線
図10:種々の媒体に曝露された変性電極の電気化学的信号の変性
図11:種々の媒体に曝露された共重合体で変性された電極の電気化学的信号の変性
【0086】
実施例
実施例1:1-(N-トシル)-3-(ヒドロキシエチル)ピロールの合成
1-(N-トシル)-3-(ヒドロキシエチル)ピロールは下記の合成法に従って調製し得る:

【0087】
1-(N-トシル)-3-(ヒドロキシエチル)ピロールの合成は、Korri-Youssoufi等によって
Materials Science and Engineering C15 (2001) 265-268に記載されるごとく行った。第1工程においては、1-(N-トシル)ピロールを、強塩基、カリウム tert-ブトキシドの存在下、塩化トシルを使用してピロールから合成した。ついで、1-(N-トシル)ピロールを無水酢酸でアシル化して1-トシル-3-アセチルピロールを製造し、これをモンモリロナイトの存在下、硝酸タリウムを使用して、酸化転位(oxidative transposition)によりメチル 2-[3-(1-N-トシルピロール)]アセテートに転化した。ボラン ジメチル スルフィドを使用して、温和な条件下で還元して、所望の生成物、1-(N-トシル)-3-(ヒドロキシエチル)ピロールを得た。反応の全体的収率は21.8%であった。
【0088】
実施例2:1-[N-(p-モノメトキシトリチル)]-3-(ヒドロキシエチル)ピロールの合成
1-[N-(p-モノメトキシトリチル)]-3-(ヒドロキシエチル)ピロールは下記の合成法によって得られた。
【0089】

【0090】
1-(N-トシル)-3-(ヒドロキシエチル)ピロールの窒素を、慣用の方法で水酸化ナトリウム溶液(2.5M NaOH/メタノール)を使用して、還流下、2時間、脱保護した。エチルエーテルを使用して3-(ヒドロキシエチル)ピロールを抽出し、生成物を乾固するまで濃縮した後、無水ジクロrメタン中で、1等量のTEAの存在下、モノメトキシトリチルクロライド(1.2等量)を使用して、アミン官能基のモノメトキシトリチル化を行った。シリカカラム上での精製した後、所望の生成物、1-[N-(p-モノメトキシトリチル)]-3-(ヒドロキシエチル)ピロールが25%の収率で得られた。
1-[N-(p-モノメトキシトリチル)]-3-(ヒドロキシエチル)ピロールの1H NMR:

【0091】
実施例3:1-[N-(トシル)]-3-[7-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホルアミジチル)ヒドロキシエチル]ピロールの合成
1-[N-(トシル)]-3-[7-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホルアミジチル)ヒドロキシエチル]ピロールは下記の合成法によって得られる。
【0092】

【0093】
1-(N-トシル)-3-(ヒドロキシルエチル)ピロール(50mg,187.5μmol,1当量)を無水アセトニトリルと共に3回、同時蒸発させ(coevaporate)ついで1mlのアセトニトリルに溶解させた。丸底フラスコを不活性雰囲気下に置き、68μl(48mg,375μmol,2当量)の
DIPEA(ジイソプロピルエチルアミン)を添加した。クロロホスフィン(48μl,72mg,
275μmol,1.1当量)を滴下し、全混合物を撹拌しながら、5分間、放置した。反応混合物を回転蒸発器でその容量の1/2まで濃縮しついでシクロヘキサン/トリエチルアミン(99:1)混合物中に注入されたシリカゲルカラム上に通送し、シクロヘキサンで洗浄した。ついで、生成物をシクロヘキサン/酢酸エチル(80:20)混合物で溶離した。適切なフラクションを一緒にし、濃縮した。得られた黄色油状物をアセトニトリルに溶解させ、ミレックス
(Millex) PVDF 0.22μmフィルターを通過させてろ過しついで再度、濃縮して67mg(144
μmol、77%)の生成物を得た。
【0094】
TLC:Rf=0.5シクロヘキサン/酢酸エチル(50:50)

【0095】
実施例4:1-[N-(p-モノメトキシトリチル)]-3-[7-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホルアミジチル)ヒドロキシエチル]ピロールの合成
1-[N-(p-モノメトキシトリチル)]-3-[7-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホルアミジチル)ヒドロキシエチル]ピロールの合成は下記の反応図に従って行った。
【0096】

【0097】
1-[N-(p-モノメトキシトリチル)]-3-(ヒドロキシルエチル)ピロール(120mg,300μmol,1当量)を無水アセトニトリルと共に3回、同時蒸発させついで2mlのアセトニトリルに溶解させた。丸底フラスコを不活性雰囲気下に置き、160μl(114mg,600μmol, 2当量)のDIPEA(ジイソプロピルエチルアミン)を添加した。クロロホスフィン(82μl,87mg,
330μmol,1.1当量)を滴下し、全混合物を撹拌しながら、5分間、放置した。反応混合物を回転蒸発器でその容量の1/2まで濃縮しついでシクロヘキサン/トリエチルアミン(99:1)混合物中に注入されたシリカゲルカラム上に通送し、シクロヘキサンで洗浄した。ついで、生成物をシクロヘキサン/酢酸エチル(90:10)混合物で溶離した。適切なフラクションを一緒にし、濃縮した。得られた黄色油状物をアセトニトリルに溶解させ、ミレックス
PVDF 0.22μmフィルターを通過させてろ過し、ついで再度、濃縮して120mg(205μmol、68%)の生成物を得た。
【0098】
TLC:Rf=0.3シクロヘキサン/酢酸エチル(50:50)

【0099】
実施例5:1-(N-トシル)-3-[2-(トリエチルオキシ)ヒドロキシルエチル]ピロールの合成
1-(N-トシル)-3-[2-(トリエチルオキシ)ヒドロキシルエチル]ピロールは下記の反応図に従って合成した。
【0100】

【0101】
1-(N-トシル)-3-[2-(ヒドロキシルエチル)ピロールのアルコール官能基を、無水アセトニトリル中で、CBr4及びトリフェニルホシフィンの存在下、0℃で、臭素で置換した。ついで、塩基性媒体中での親核性置換によりトリエチレンアームをカップルさせた。反応の全体的収率は24.6%であった。
【0102】
1-(N-トシル)-3-[2-(トリエチルオキシ)ヒドロキシルエチル]ピロールの1H NMR:

【0103】
実施例6:1-(N-トシル)-2-(ヒドロキシエチル)ピロールの合成
1-(N-トシル)-2-(ヒドロキシエチル)ピロールは下記の反応図に従って合成した。
【0104】

【0105】
ジクロロメタン中で、n-ブチルアンモニウムサルフェート及び水酸化ナトリウムの存在下、0℃で、塩化トシルと反応させることにより2-アセチルピロールの1位にトシル基を導入した。ついで、モンモリロナイトの存在下、硝酸タリウムを使用して酸化転移を行うことによりメチル 2-[2-(1-N-トシルピロール)]アセテートを得た。LiBH4を使用して還元を行うことにより、所望の生成物、1-(N-トシル)-2-(ヒドロキシエチル)ピロールを得た。合成の全体的収率は3%であった。
【0106】
1-(N-トシル)-2-(ヒドロキシエチル)ピロールの1H NMR:

【0107】
実施例7:固体支持体上でのオリゴヌクレオチドの合成
Beaucage及びLyerにより記載されたホスホルアミダイト法(Tetrahedron 48,223-2311,1992)により固体支持体(調節気孔ガラス、CPG)上でオリゴヌクレオチドを合成した。
【0108】
合成すべき配列の第1のヌクレオシドを固体支持体(CPG)に3’位で結合させた;ヌクレオシドの5’ OHは、ジメトキシトリチル(DMT)酸-不安定基(labile group)で保護した。
【0109】
−脱トリチル化(detritylation)からなる第1工程においては、酸処理(トリ−又はジクロロ酢酸)は、DMT基を除去して、反応性5’ OH末端を生じさせることを可能にする。
【0110】
−“カップリング”からなる第2工程においては、付加されるべき塩基のホスホルアミダイトを、この第1のヌクレオシドと縮合させて、ホスファイトトリエステル結合を生じさせる。縮合は触媒(テトラゾール又はS-チオエチルテトラゾール又はDCI等)の存在下で行われる。
【0111】
−“キャッピング”からなる第3工程においては、先行の縮合工程中に反応しなかった5’ OH末端をアシル化剤(無水酢酸)でブロックして、配列の削除を防止する。
【0112】
−酸化からなる第4工程においては、ホスファイトトリエステル結合を、酸化処理により(沃素水溶液)酸化して、ホスフェートトリエステル結合とする。ホスファイトトリエステル結合を、アセトニトリルに溶解させたビューケージ(Beaucage)試薬を使用して、ホスホロチオエートトリエステル結合を得ることもできる。
【0113】
工程1〜4は合成されるべき配列の長さに従って、必要に応じて何回も反復される。これらの4工程は合成の1つのサイクルを構成する。
【0114】
所望の配列が完成したとき、オリゴヌクレオチドを結合させた固体支持体を濃アンモニア水溶液中でインキュベートして、オリゴヌクレオチドを固体支持体から開裂させ、塩基とホスフェート基を脱保護する。
【0115】
実施例8:3位で置換された、トシル基により窒素が保護されたピロールの、オリゴヌクレオチドの5’末端での結合
合成の最終サイクルは、実施例3にその合成が記載されているピロールモノマー、
1-[N-(トシル)]-3-[7-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホルアミジチル)ヒドロキシエチル]ピロールを使用して行った。このモノマーを慣用のヌクオレチド合成
(synthon)と全く同一の条件下で使用した;唯一の相違はカップリング時間であり、この時間は結合(組み込み)(incorporation)において生じ得る問題を考慮して、1.3分の代わりに15分にした。反応工程図は以下に示す。30%アンモニア水溶液中で脱保護した後(55℃、16時間)、粗オリゴヌクレオチドをイオン交換HPLCにより分析した(図1)。図1は、結合を示すために、ピロールを伴なったオリゴと伴なわないオリゴのコインジェクション
(coinjection)を表す[20分で400〜640mM NaClの勾配、Gen Pack Fax(登録商標)カラム
(Waters;登録商標)、0.75ml/分]。
【0116】

【0117】
実施例9:トシル基の開裂(除去)及びオリゴヌクレオチドの精製
トシル基は2.5M 水酸化ナトリウム溶液中では、75℃で、4時間で除去されるが、これらの条件下では、オリゴヌクレオチドが完全に分解される。従って、本発明者は、オリゴヌクレオチドの分解を防止し、同時に、ピロールによって担持されているトシル基の80%が開裂するようにするために、より温和な加水分解条件(0.5M NaOH溶液、55℃、24時間)を使用した。かくして、HPLCにより、2個のオリゴヌクレオチドを分離し、完全に脱保護されたオリゴヌクレオチドを単離することができた(図2)。図2は0.5M NaOH溶液、55℃でのトシル基の開裂を示している[20分での、440〜680mM NaClの勾配、Gen Pack Fax(登録商標)カラム(Waters;登録商標)、0.75ml/分]。
【0118】
オリゴヌクレオチドがHPLCによって精製されない場合には、水酸化ナトリウムはアセトンを使用する簡単な沈殿によって除去することができ、上記オリゴヌクレオチドは、そのまま、共重合試験に使用し得る。
【0119】
実施例10:3位で置換された、モノメトキシトリチル基により窒素が保護されたピロールの、オリゴヌクレオチドの5’末端での結合
合成の最終サイクルは、実施例4にその合成が記載されているピロールモノマーを使用して行った。このモノマーを慣用の塩基と全く同一の条件下で使用した;唯一の相違はカップリング時間であり、この時間は結合において生じ得る問題を考慮して、1.3分の代わりに15分にした。
【0120】
更に、その後の精製の目的のために、MMT基はオリゴヌクレオチド上で保護される。オリゴヌクレオチドは最終的に濃アンモニア水溶液中で脱保護される(55℃、16時間)。
【0121】
反応工程図を以下に示す。
【0122】

【0123】
実施例11:モノメトキシトリチル基の開裂及びオリゴヌクレオチドの精製
モノメトキシトリチル化モノマーを使用することの大きな利点は、これをオリゴヌクレオチドの精製に使用し得ること及びこれを酸性媒体中で容易に除去し得ることである。従って、これはトシル基と比較して好ましいであろう。
【0124】
オリゴヌクレオチドはMMT基の疎水性を利用して手動精製装置により精製される
[CTGen MDP−WS 1000(登録商標)カラム]。この装置系はOPC(登録商標)カートリッジ
[Applied Biosystems(登録商標)]に類似しており、この系においてはMMT基を担持しているオリゴヌクレオチドを逆相上に特異的に滞留し、これに対し、MMTを担持していない不純物を液相中に溶離する。
【0125】
不純物(abortive species)を溶離させた後、MMT基を担持しているオリゴヌクレオチドをアセトニトリルの溶液で溶離した。蒸発後、オリゴヌクレオチドを80%酢酸溶液で1時間処理酢した。酸を低温条件下で蒸発させ、オリゴヌクレオチドをエタノールで沈殿させた。この化合物の純度をNacl勾配で、ゲン パック ファックス (Gen Pack Fax)カラム
(Waters)上でのイオン交換クロマトグラフィーにより調節した(図3)。図3は3位で置換されているピロールを担持しているかつMMTを担持しているモノマーから合成された精製オリゴヌクレオチドを表す(20分において、340〜580mMのNaClの勾配、ゲン パック ファックスカラム(Waters)、0.75ml/分)。
その純度はトシル化モノマーを使用して得られるものより明らかに大きい。
【0126】
実施例12:電気化学的集成体
操作は、全て、水性媒体中で、オートラブ(Autolab) PGSTAT 100(登録商標)ポテンシオスタットに連結された三電極電気化学的集成体を使用して行った。この装置は、参照電極と作動電極の間に一定の電位差を生じさせ、対向電極は、セルの電気的特性に関係なく、作動電極と参照電極の間で所望の安定な電位差が得られるように、電流を調節する働きをする。操作は水性媒体中で行われるので、使用される電極は下記通りである:参照電極=飽和カロメル電極(SCE)、対向電極=白金ワイアー及び作動電極=直径1mmの白金ディスク。
【0127】
実施例13:使用される溶液
(1) H2O中のLiClO4電解質
過塩素酸リチウムは検討している溶液中で使用されている電解質である。生成物は、蒸留水に容易に溶解する粉末の形である(モル質量 106.39 g/モル)
LiClO4電解液=H2O中、0.5M
【0128】
(2) 3-(ヒドロキシエチル)ピロール電解液=0.1M中での3-(ヒドロキシエチル)ピロールの重合用溶液
LiClO4電解液=H2O中、0.5M
【0129】
(3) 3-(ヒドロキシエチル)ピロールとピロール−3位−ODN(オリゴヌクレオチド)との共重合用溶液
ODN(オリゴヌクレオチド)は下記の配列を有する:
5’ GCCTTGACGATACAGCTA 3’
【0130】
本発明のオリゴヌクレオチド置換ピロール(即ち、ピロール-ODN)は下記のごとく表される:

【0131】
この溶液は20000ピロール単位当り、1ピロール-ODNの比を用いて調製される。
3-(ヒドロキシエチル)ピロール=0.1M
[ピロール-ODN]=5μM
LiClO4=H20中、0.5M
【0132】
(4) ピロール-3位−ODNの重合用溶液
[ピロール-ODN]=5μM
LiClO4=H20中、0.5M
【0133】
(5) 1X ハイブリダイゼーション バッファー HB
1X HBはハイブリダイゼーション溶液として使用される電解液媒体である。この溶液は下記の組成を有する:
−9.5mMホスフェートバッファー
−0.515 M NaCl
−2.6 mM KCl
−0.048% トゥイーン(Twenn)
−1Xデンハルト(1X Denhardt’s)
−10μg/mlサルモン(salmon) DNA
【0134】
(6) 非相補的標的のハイブリダイゼーション用の溶液
例えば下記の配列: 5’ CGCCAGCAGCTCCAA 3’の非相補的標的オリゴヌクレオチドを1X HB中、0.1μMの濃度で使用した。
【0135】
(7) 相補的標的(CP)のハイブリダイゼーション用の溶液
ポリピロールフィルム中で固定されたODNに対して相補的なオリゴヌクレオチドを1X HB中、0.1μMの濃度で使用した。
5’ TAGCTGTATCGTCAAGGC 3’
【0136】
実施例14:検出の原理
本発明の重合体は、特に、試料中に存在し得るかつ重合体鎖上に存在するODNと反応することのできる生物学的に活性な種を検出するのに使用し得る。特に、後記するごとく、その複素環の3位で官能化された共役重合体は、1種又はそれ以上のリガンドとの反応の後には、生物学的媒体のリガンドと反応させていない参照重合体と比較して、酸化電位の変化によって目視される電気化学的応答の変化を示す。重合体の電気化学的信号におけるこの変化によりセンサー機能が付与され、かくして、一定の電流での電位の変化により、又は、一定の電位での電流の変化により、生物学的に活性な種を定量的に測定するのに使用し得る。
【0137】
操作の最初の部分においては、モノマーが重合性であることを確認し、最適重合パラメーターを設定しそして使用する溶液中の沈着物の安定性及び電気的活性を定める。
【0138】
重要な点は、“ODN/NA”(オリゴヌクレオチド/核酸)の認識(recognition)中に変性されるべき重合体の物理化学的性質に関するものである。実際に、NAの存在を迅速に、鋭敏にかつ定量的に測定する方法を開発するために、本発明の目的は単一の工程で電気的に活性な物質及びこの物質の、“ODN/NA”ハイブリダイゼーションの後に変性される電気化学的応答を開発することに関する。変性は重合体の酸化電位についての電流の変化による、電位型の変化に関するものであるか、又は、所与の電位において観察される酸化(又は還元)の変化による電流型の変化に関するものである。これらの電気化学的応答における変化は定量的に測定することができ、官能化された重合体の皮膜を電流型又は電位型の電気化学的センサーとして使用し得る。
【0139】
実施例15:ハイブリダイゼーションの後の電気化学的応答の変化
A− 3-(ヒドロキシエチル)ピロールの重合体プレフィルム上での、ピロール-3位ODNの重合
1− 3-(ヒドロキシエチル)ピロールの重合体プレフィルムの製造
溶液(2)を使用して、0.75Vの電流を2.4秒(51 mC.cm-2の電荷)を通電した。
図4:白金電極(直径1mm)上での、3-(ヒドロキシエチル)ピロールモノマーの0.1M溶液についての、サイクリックボルタンメトリーの最初のサイクル(H20中、0.5M LiClO4電解質、v=50mV.s-1)。
【0140】
図5:モノマーを含まない電解液中に移行させた3-(ヒドロキシエチル)ピロールの重合体フィルムによって変性された電極についてのサイクリックボルタンメトリー曲線
(H20中、0.5M LiClO4電解質、v=50mV.s-1)。
【0141】
この重合体は表面を均一にし、3-位がODNで置換されたピロールの重合の第2層を開始させるための定着点(anchoring point)としての働きをすることが観察された。現在、3-位がODNで置換されたピロールを電極上で直接、単独重合させることは不可能である。従って、この重合体プレフィルム上でのピロール-ODN単独の重合は、支持体上で固定されたODNプローブの量を増大すること、従って、この重合体の電気化学的応答のより明確な変性を観察することを可能にする。
【0142】
2−溶液(4)を使用して、プレフィルム上でのピロール-3位ODNの重合を0.6Vで115秒行った(19 mC cm-2の荷電)。
【0143】
図6:白金電極(直径1mm)上での、ピロール-3位ODNの5mM溶液におけるサイクリックボルタンメトリーの第1サイクル(H20中、0.5M LiClO4電解質)、v=50mV.s-1)。
【0144】
二層重合体のLiClO4電解質溶液への移行はサイクリックボルタンメトリー図7に示されている:
(a) 3-(ヒドロキシエチル)ピロールの重合体下層について(Q=57 mC.cm-2)、(b) 下層及びポリピロール−3-位ODN(Q=15 mC.cm-2)についての、H2O中の0.5M LiClO4中でのサイクル、v=50mV.s-1
【0145】
沈着物をハイブリダイゼーションバッファー(溶液(5))に移し、非相補的ターゲット(溶液(6)ットを存在させ、洗浄し、ついで相補的ターゲット(溶液(7)を存在させる。
【0146】
これらの種々の溶液においては、沈着物をサイクリックボルタンメトリーによって分析する(サイクルさせる)。得られた結果は図8に示されている;この図には酸化ピークの電気的活性の減少と酸化ピークの電位におけるシフトが示されている。
【0147】
図8:種々の溶液に曝露された変性電極の電気化学的信号の変性
1X HBにおけるサイクル、v=50 mV.s-1.a:1X HB中に3日;b:M5中に1時間;c:CP中に2時間。
【0148】
従って、ピロール−3位ODN重合体はこれらのプローブのハイブリダイゼーションの現象を電気化学的信号に変換することができる。
【0149】
B− 3-(ヒドロキシエチル)ピロール/ピロール−3位ODNの、3-(ヒドロキシエチル)ピロールの重合体プレフィルム上での共重合
1−3-(ヒドロキシエチル)ピロールの重合体プレフィルムの製造
溶液(2)を使用して、0.75Vの電流を0.5秒通電した(9mC.cm2の電荷)。
2−溶液(3)を使用して、3-(ヒドロキシエチル)ピロール/ピロール-3位ODNの、プレフィルム上での共重合を0.75Vで1.3秒行った(30 mC cm-2の荷電)。
【0150】
図9:(a) 3-(ヒドロキシエチル)ピロールの重合体下層について(Q=37mC cm-2)、(b)下層及び及び3-位が置換された共重合体(Q=60 mC.cm-2)についての、H2O中の0.5M LiClO4中での2層の重合体を含有するフィルムのサイクリックボルタンメトリー曲線。
【0151】
沈着物をハイブリダイゼーションバッファー(溶液(5))に移し、非相補的ターゲット(溶液(6)ットを存在させ、洗浄し、ついで相補的ターゲット(溶液(7)を存在させる。
【0152】
これらの種々の溶液においては、沈着物をサイクリックボルタンメトリーによって分析する(サイクルさせる)。
【0153】
得られた結果は図10に示されている;この図には酸化ピークにおける電気的活性の減少と酸化ピークにおける電位におけるシフトが示されている。
【0154】
図10:
a.ハイブリダイゼーションバッファー
b.非相補的ターゲットの存在下でのハイブリダイゼーション溶液
c.相補的ターゲットの存在下でのハイブリダイゼーション溶液
に曝露した変性電極の電気化学的信号の変性。
【0155】
従って、3-(ヒドロキシエチル)ピロール/ピロール−3-位ODNの共重合体はこれらのプローブのハイブリダイゼーションの現象を電気化学的信号に変換することができる。
【0156】
C− 3-(ヒドロキシエチル)ピロールとピロール−3-位ODNとの白金電極上での直接的共重合
3-(ヒドロキシエチル)ピロールとピロール−3-位ODNとの共重合のための溶液
この溶液はピロール単位20000当リ、ピロール−ODN1の比で調製した。
【0157】
3-(ヒドロキシエチル)ピロール=0.1M
[ピロール−ODN]=0.5μM
LiClO4電解質=H2O中、0.5M。
【0158】
共重合は直径3mmの白金電極、白金対向電極及びSCE参照電極を使用し、0.75Vで生起させ、沈着前、アルゴン下で15分間、撹拌及び脱ガスを行い、沈着時間を20秒として行った;得られた荷電=7.39mC。
【0159】
ついで、生成した沈着物を電解質溶液及びハイブリダイゼーション溶液に移した。サイクリックボルタンメトリー曲線(図11)の出現により安定でかつ可逆的な電気的活性な被膜の存在が確認された。
【0160】
a.ハイブリダイゼーションバッファー中での、20mV/sでのサイクリックボルタンメトリー;
b.20分後の、非相補的プローブの存在下でのハイブリダイゼーションバッファー中での20mV/sでのサイクリックボルタンメトリー;
c.相補的プローブの存在下での20mV/sのハイブリダイゼーションバッファー中でのサイクリックボルタンメトリー、t=20分;
d.20分後の、相補的プローブの存在下でのハイブリダイゼーションバッファー中での
20mV/sでのサイクリックボルタンメトリー;
にかけた変性電極の電気化学的信号の変化。
【0161】
非相補的ターゲットの付加は、10mVの電位において若干のシフトを示した。
20分後、相補的ターゲットの存在により、約60mVの置換が生じた。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】1-[N-(トシル)]-3-[7-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホルアミジチ ル)ヒドロキシエチル]の結合の前及び後の、5’ OHオリゴヌクレオチドのクロマトグラムである。
【図2】トシル基の開裂のUPLC監視を示す図面である。
【図3】3位で置換されたピロールを担持しているかつMMTを担持しているピロールモノマーから合成された精製オリゴヌクレオチドのクロマトグラムである。
【図4】白金電極上での、3-(ヒドロキシエチル)ピロールの溶液についてのサイクリックボルタンメトリーの最初のサイクルを示す図面である。
【図5】モノマーを含まない電解質中に移行させた3-(ヒドロキシエチル)ピロールの重合体フィルムで変性された電極についてのサイクリックボルタンメトリー曲線である。
【図6】白金電極上での、ピロール−3位のODNの5μM溶液におけるサイクリックボルタンメトリーの最初のサイクルを示す図面である。
【図7】モノマーを含まない電解質溶液中に移行させた、3-(ヒドロキシエチル)ピロールのプレフィルム上での、ピロール−3位のODNのフィルムで変性された電極についてのサイクリックボルタンメトリー曲線である。
【図8】種々の媒体に曝露された変性電極の電気化学的信号の変性を示す図面である。
【図9】モノマーを含まない電解質溶液中に移行させたプレフィルム上での、共重合体で変性された電極についてのサイクリックボルタンメトリー曲線である。
【図10】種々の媒体に曝露された変性電極の電気化学的信号の変性を示す図面である。
【図11】種々の媒体に曝露された共重合体で変性された電極の電気化学的信号の変性を示す図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)

(式中、
R1はオリゴヌクレオチドを表し、
YはS又はOを表し、
Xは-(CH2)n-O-、-(CH2)p-O-[(CH2)2-O]q-、-(CH2)r-CO-NR’-(CH2)r’-O-、
-(CH2)r-NCH3-(CH2)r’-O-、-(CH2)r-CO-NR’-[(CH2)2-O]s-、-(CH2)r-NCH3-[(CH2)2-O]s-
から選ばれたスペーサーアームを表し、
R’は-H又は-CH3を表し、
nは1〜5の整数であり、
pは1〜2の整数であり、
qは1〜4の整数であり、
rは1〜3の整数であり、
r’は1〜3の整数であり、
sは1〜3の整数であり、
n、p、q、r、r’及びsは同一であるか異なるものであり、ピロール環は2-、3-、4-又は5-位で置換されている)で表される、オリゴヌクレオチド置換ピロール。
【請求項2】
一般式(II)

(式中、R1、Y及びXは前記の意義を有する)で表される、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド置換ピロール。
【請求項3】
Xが-(CH2)n-O-であり、nが2に等しい、請求項2に記載のオリゴヌクレオチド置換ピロール。
【請求項4】
一般式(III)

(式中、R1、Y及びXは前記の意義を有する)で表される、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド置換ピロール。
【請求項5】
Xが-(CH2)n-O-であり、nが2に等しい、請求項4に記載のオリゴヌクレオチド置換ピロール。
【請求項6】
a) 請求項2及び3のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド置換ピロールから選ばれた少なくとも1種のモノマーを準備する工程、
b) 他のピロールと重合し得る置換ピロールから選ばれた少なくとも1種のモノマーを準備する工程、
c) 工程a)のモノマーを工程b)のモノマーと電気化学的に共重合させる工程、
からなるオリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体の製造方法。
【請求項7】
工程a)の置換ピロールと工程b)の置換ピロールとのモル比が1/1000〜1/100000である、請求項6に記載のオリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体の製造方法。
【請求項8】
a) 他のピロールと重合し得る置換ピロールから選ばれた少なくとも1種のモノマーを準備する工程、
b) 工程a)のモノマーを電気化学的に重合させて第1の導電性、電気的活性重合体を製造する工程、
c) 請求項2及び3のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド置換ピロールから選ばれたモノマーを準備する工程、
d) 他のピロールと重合し得る置換ピロールから選ばれた少なくとも1種のモノマーを準備する工程、
e) 工程c)のモノマーと工程d)のモノマーとを、工程b)で形成された第1の導電性、電気的活性重合体上で電気化学的に共重合させて、オリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体を製造する工程、
からなるオリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体の製造方法。
【請求項9】
工程c)の置換ピロールと工程d)の置換ピロールとのモル比が1/1000〜1/100000である、請求項8に記載のオリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体の製造方法。
【請求項10】
a) 他のピロールと重合し得る置換ピロールから選ばれた少なくとも1種のモノマーを準備する工程、
b) 工程a)のモノマーを電気化学的に重合させて第1の導電性、電気的活性重合体を製造する工程、
c) 請求項2及び3のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド置換ピロールから選ばれたモノマーを準備する工程、
d) 工程c)のモノマーを、工程b)で形成された第1の導電性、電気的活性重合体上で電気化学的に重合させて、オリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性重合体を製造する工程、
からなるオリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体の製造方法。
【請求項11】
a) 他のピロールと重合し得る置換ピロールから選ばれた少なくとも1種のモノマーを準備する工程、
b) 工程a)のモノマーを電気化学的に重合させて第1の導電性、電気的活性重合体を製造する工程、
c) 請求項4及び5のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド置換ピロールを準備する工程、
d) 工程c)の置換ピロールを、工程b)で形成された第1の導電性、電気的活性重合体上で電気化学的にカップルさせて、オリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体を製造する工程、
からなるオリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体の製造方法。
【請求項12】
請求項6〜11の一つに記載の方法によって得られる、オリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体。
【請求項13】
請求項12に記載のオリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体の少なくとも1種で表面被覆された導電性支持体からなる電極。
【請求項14】
請求項13に記載の電極の少なくとも1つからなる、電極のマトリックス。
【請求項15】
請求項12に記載の共重合体の少なくとも1種及び/又は請求項13に記載の電極の少なくとも1種からなる、試料中の検体を検出するための装置。
【請求項16】
請求項14に記載の電極のマトリックスの少なくとも1つからなる、試料中の検体を検出するための装置。
【請求項17】
a) 請求項12に記載のオリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体又は請求項13に記載のオリゴヌクレオチドで官能性化された導電性、電気的活性共重合体で表面被覆された導電性支持体からなる電極を準備する工程、
b) 工程a)の前記電気的活性共重合体又は電極と試料とを、検体と上記オリゴヌクレオチドとの特異的な相互作用に適当な条件下で接触させる工程、
c) 上記オリゴヌクレオチドと結合した検体を電気的測定により検出する工程、
からなる、試料中の検体の検出方法。
【請求項18】
工程c)において、導電性、電気的活性共重合体のオリゴヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするDNA又はRNAを検出する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程c)において、電位の変化又は電流の変化を測定する、請求項17及び18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
一般式(IV)

(式中、
R2はモノメトキシトリチル、ジメトキシトリチル、トシル、トリイソプロピルシリル、tert-ブトキシカルボニル、9-フルオレニルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル及びアセチルから選ばれたアミン保護基であり、
R3はホスホトリエステル、H-ホスホネート又はホスホルアミダイト基から選ばれた、遊離の水酸基と反応し得るリン含有基であり、
Xは-(CH2)n-O-、-(CH2)p-O-[(CH2)2-O]q-、-(CH2)r-CO-NR’-(CH2)r’-O-、
-(CH2)r-NCH3-(CH2)r’-O-、-(CH2)r-CO-NR’-[(CH2)2-O]s-、-(CH2)r-NCH3-[(CH2)2-O]s-
から選ばれたスペーサーアームを表し、
R’は-H又は-CH3を表し、
nは1〜5の整数であり、
pは1〜2の整数であり、
qは1〜4の整数であり、
rは1〜3の整数であり、
r’は1〜3の整数であり、
sは1〜3の整数であり、
n、p、q、r、r’及びsは同一であるか異なるものであり、ピロール環は2-、3-、4-又は5-位で置換されている)で表される置換ピロール。
【請求項21】
一般式(V)

(式中、R2、R3及びXは前記の意義を有する)で表される、請求項20に記載の置換ピロール。
【請求項22】
R2はモノメトキシトリチルである、請求項21に記載の置換ピロール。
【請求項23】
R3はホスホルアミダイト基である、請求項21及び22のいずれかに記載の置換ピロール。
【請求項24】
Xが-(CH2)n-O-であり、nが2に等しい、請求項21〜23の一つに記載の置換ピロール。
【請求項25】
一般式(VI)

(式中、R2、R3及びXは前記の意義を有する)で表される、請求項20に記載の置換ピロール。
【請求項26】
R2はモノメトキシトリチルである、請求項25に記載の置換ピロール。
【請求項27】
R3はホスホルアミダイト基である、請求項25及び26のいずれかに記載の置換ピロール。
【請求項28】
Xが-(CH2)n-O-であり、nが2に等しい、請求項25〜27の一つに記載の置換ピロール。
【請求項29】
a) オリゴヌクレオチドを合成するためのサイクルを行う工程、
b) 上記オリゴヌクレオチドを合成するための最終サイクルにおいて、一般式(IV)

(式中、R2、R3及びXは前記の意義を有する)で表される置換ピロールを、上記オリゴヌクレオチドの最終ヌクレオチドにおいて5’位又は3’位で置換する工程、
c) 前記保護基R2を開裂させる工程;
からなる、一般式(I)

(式中、R1、X及びYは、前記の意義を有する)のオリゴヌクレオチド置換ピロールの製造方法。
【請求項30】
工程b)において、保護基R2はモノメトキシトリチルであり、工程c)において、保護基を酸媒体中で処理することにより開裂させる、請求項29に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−518334(P2006−518334A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564281(P2004−564281)
【出願日】平成15年12月16日(2003.12.16)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003747
【国際公開番号】WO2004/060904
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(505233572)ビョメリウー ソシエテ アノニム (1)
【Fターム(参考)】