説明

オリゴマー−抗ヒスタミン複合体

本発明は、水溶性オリゴマーの共有結合によって化学的に修飾された小分子薬物を提供する。本発明の複合体は、数多くの投与経路のうちのいずれかによって投与した時に、水溶性オリゴマーに結合されていない小分子薬物の特性とは異なる特性を呈する。本発明の1つ以上の実施形態において、化合物が提供され、該化合物は、安定したまたは分解性の結合を介して水溶性の非ペプチドオリゴマーに共有結合した、抗ヒスタミンの残基を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の説明)
本出願は、2007年3月12日に出願された米国暫定出願第60/906,416号、2007年11月13日に出願された米国暫定出願第61/002,970号、および2007年11月20日に出願された米国暫定出願第61/003,808号の、合衆国法典35巻第119(e)の下の優先権の利益を主張し、そのそれぞれは、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、(とりわけ)化学修飾を欠く抗ヒスタミンに勝る特定の利点を有する、化学的に修飾された抗ヒスタミンを提供する。本明細書に記載されている化学的に修飾された抗ヒスタミンは、(とりわけ)創薬、薬物療法、生理学、有機化学、および高分子化学の分野に関連する、および/またはその分野における用途を有する。
【背景技術】
【0003】
抗ヒスタミンは、ヒスタミン−1(H)受容体の拮抗薬である。「H受容体遮断薬」としても知られるこれらの薬剤は、平滑筋収縮の軽減をもたらす。加えて、H受容体遮断薬は、過敏症反応に関連する、かなりの量のヒスタミン放出の効果を中和する役目を果たし得る。ヒトにおけるそのような過敏症反応には、花粉、ハチ刺傷、特定の食物等に対して一部のヒトが有するアレルギー反応が挙げられる。
【0004】
ジフェンヒドラミンおよびヒドロキシジンは、「第1世代」の抗ヒスタミンの代表的な構成員であり、依然として、最も有効な市販の抗ヒスタミンのうちの2つである。アレルギー反応が、ヒスタミン放出の即時かつ有効な逆転を必要とする場合、これらおよび他の第1世代抗ヒスタミンが投与される。実証済みのそれらの効能にもかかわらず、多くの第1世代抗ヒスタミンが、一般的なアレルギーに罹患する患者を治療する際の第1選択薬となることはない。臨床医および患者は、それらの副作用のため、日常的なアレルギー応答に対処するために、これらの抗ヒスタミンに頼らない。そのような副作用には、相当な眠気、ならびに運動失調、口渇、紅潮した皮膚、不整脈、かすみ目、羞明、瞳孔拡張、尿閉、便秘、集中力の欠如、短期記憶喪失、幻覚、錯乱、勃起不全、およびせん妄の可能性が挙げられる。
【0005】
使用可能になった比較的最近の抗ヒスタミン(ロラタジン、アステミゾール、およびテルフェナジン等)は、第1世代抗ヒスタミンと同じ効能を提供するが、眠気がないと考えられた。しかしながら、経験によれば、これらのより新しい抗ヒスタミンは、それらの第1世代対応物の有効性に欠ける、あるいは、所望の有効性を提供するためにより高用量が与えられる場合、やはり眠気の副作用をもたらすことが示されている。
【0006】
したがって、第1世代抗ヒスタミンと同じ抗ヒスタミン活性を有するが、それらの眠気を誘発する副作用を欠く抗ヒスタミンを提供することは、有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、(とりわけ)水溶性の非ペプチドオリゴマーと抗ヒスタミンとの複合体を提供することにより、当技術分野におけるこれらおよび他の必要性に対処することを模索する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つ以上の実施形態において、化合物が提供され、該化合物は、安定したまたは分解性結合を介して水溶性の非ペプチドオリゴマーに共有結合した、抗ヒスタミンの残基を含む。
【0009】
本発明の1つ以上の実施形態において、化合物が提供され、該化合物は、安定した結合を介して水溶性の非ペプチドオリゴマーに共有結合した、抗ヒスタミンの残基を含み、抗ヒスタミンは、以下の式により包含される構造を有し、
【0010】
【化1】

式中、
(a)は、0または1のいずれかであり、
Zは、N、CH、およびC(CH)から成る群より選択され、
Arは、芳香族含有部分(好ましくは
【0011】
【化2】

から成る群より選択される)であり、
Arは、芳香族含有部分(好ましくは
【0012】
【化3】

から成る群より選択される)であるか、または、Ar−Z−Arは、組み合わされて、
【0013】
【化4】

等の芳香族含有部分を形成する。
【0014】
本発明の1つ以上の実施形態において、組成物が提供され、該組成物は、
(i)安定した結合を介して水溶性の非ペプチドオリゴマーに共有結合した、抗ヒスタミンの残基を含む化合物と、
(ii)任意選択で、薬剤として許容される賦形剤と、を含む。
【0015】
本発明の1つ以上の実施形態において、投薬形態が提供され、該投薬形態は、安定した結合を介して、水溶性非のペプチドオリゴマーに共有結合した、抗ヒスタミンの残基を含む化合物を含む。
【0016】
本発明の1つ以上の実施形態において、方法が提供され、該方法は、水溶性非のペプチドオリゴマーを、抗ヒスタミンに共有結合させるステップを含む。
【0017】
本発明の1つ以上の実施形態において、方法が提供され、該方法は、安定した結合を介して、水溶性非のペプチドオリゴマーに共有結合した、抗ヒスタミンの残基を含む化合物を投与するステップを含む。
【0018】
本発明のこれらおよび他の目的、態様、実施形態、および特徴は、以下の発明を実施するための形態とともに読まれることで、より完全に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ヒドロキシジンおよび種々のヒドロキシジン複合体の、ラット血漿中の複合体濃度を示すグラフである。
【図2】経口投与されたヒドロキシジンおよび種々のヒドロキシジン複合体の、ラット血漿中の遊離(非結合)ヒドロキシジンを示すグラフである。
【図3】経口投与されたヒドロキシジンおよび種々のヒドロキシジン複合体の、ラット血漿中の遊離(非結合)セチリジンを示すグラフである。
【図4】ヒドロキシジンおよび種々のヒドロキシジン複合体の、ラット肝ミクロソーム中の体外代謝速度を示すグラフである。
【図5】ヒドロキシジンおよび種々のヒドロキシジン複合体の投与後、肝ミクロソームにより形成される代謝物セチリジンの生成速度を示すグラフである。
【図6】ジフェンヒドラミンのPEG複合体の、ヒトH1ヒスタミン受容体への結合を示すグラフである[「PEG(5)−N−DPH」はmPEG(5)−N−ジフェンヒドラミンであり、「PEG(6)−N−DPH」はmPEG(6)−N−ジフェンヒドラミンであり、「PEG(7)−N−DPH」はmPEG(7)−N−ジフェンヒドラミンである]。
【図7】ジフェンヒドラミンのPEG複合体の、ヒトH1ヒスタミン受容体への結合を示すグラフである[「PEG−6−NH−DPH」はmPEG(6)−NH−ジフェンヒドラミンであり、「PEG−7−N−DPH」はmPEG(7)−N−ジフェンヒドラミンである]。
【図8】PEGの大きさの、PEG−ジフェンヒドラミン複合体のヒトH1ヒスタミン受容体への結合に対する影響を示す、グラフである[「DPH」はジフェンヒドラミンであり、「PEG−3−DPH」はmPEG(3)−N−ジフェンヒドラミンであり、「PEG−4−DPH」はmPEG(4)−N−ジフェンヒドラミンであり、「PEG−5−DPH」はmPEG(5)−N−ジフェンヒドラミンであり、「PEG−6−DPH」はmPEG(6)−N−ジフェンヒドラミンであり、「PEG−7−DPH」はmPEG(7)−N−ジフェンヒドラミンである]。
【図9】ラットにおける静注投与後の、DPHおよびPEG−N−DPH複合体の血漿濃度−時間プロファイルを示すグラフである。
【図10】ラットにおける経口投与後の、DPHおよびPEG−N−DPH複合体の血漿濃度−時間プロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で使用される、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明確に指示していない限り、複数の指示物を含む。
【0021】
本発明の記載および請求においては、以下に記載されている定義に従って、以下の専門用語を使用する。
【0022】
「水溶性非ペプチドオリゴマー」は、室温の水において、少なくとも35重量%、好ましくは70重量%を超える、より好ましくは95重量%を超える可溶性を有するオリゴマーを示す。一般的に、「水溶性」オリゴマーの未濾過の水溶液調製物は、濾過した後の同じ溶液によって透過される光の量の、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも95%を透過する。しかしながら、水溶性オリゴマーは、少なくとも95重量%水に溶ける、または完全に水に溶けることが最も好ましい。「非ペプチド」に関しては、オリゴマーが35重量%未満のアミノ酸残基を有する際に非ペプチドとなる。
【0023】
「モノマー」、「モノマー副単位」、および「モノマー単位」という用語は、本明細書で代替可能に使用され、ポリマーまたはオリゴマーの基本的な構造単位のうちの1つを指す。ホモオリゴマーの場合、単一の繰り返し構造単位がオリゴマーを形成する。コオリゴマーの場合、2つ以上の構造単位が(あるパターンで、またはランダムに)繰り返されて、オリゴマーを形成する。本発明に関連して使用される好適なオリゴマーは、ホモオリゴマーである。水溶性非ペプチドオリゴマーは、一般的に、モノマー鎖を形成するように連続的に結合した1つ以上のモノマーを含む。オリゴマーは、単一のモノマー型(すなわち、ホモオリゴマー)または2つまたは3つのモノマー型(すなわち、コオリゴマーである)から形成することができる。
【0024】
「オリゴマー」は、約2個〜約50個のモノマー、好ましくは約2個〜約30個のモノマーを有する分子である。オリゴマーの構成は、変化し得る。本発明に使用する特定のオリゴマーは、以下に詳述する、直線、分岐、または叉状等の、種々の形状を有するものを含む。
【0025】
本明細書で使用される「PEG」または「ポリエチレングリコール」は、あらゆる水溶性ポリ(エチレンオキシド)を包含するように意図される。別途明記しない限り、「PEGオリゴマー」(オリゴエチレングリコールとも呼ばれる)は、実質的に全ての(およびより好ましくは、全ての)モノマー副単位がエチレンオキシド副単位であるものである。しかしながら、オリゴマーは、例えば複合化のための、はっきりとした末端封止または官能基を含み得る。一般的に、本発明に使用するPEGオリゴマーは、例えば合成変換中に末端酸素が置き換えられたかどうかに基づいて、「−(CHCHO)−」または「−(CHCHO)n−1CHCH−」の2つの構造のうちの1つを含む。PEGオリゴマーについて、「n」は、約2から50まで、好ましくは約2から30まで変化し、末端基およびPEG全体の構成は変化し得る。PEGが、例えば小分子薬物にリンクするための官能基Aをさらに備える時には、その官能基は、PEGオリゴマーに結合する際、(i)酸素−酸素結合(−O−O−、過酸化物結合)、または(ii)窒素−酸素結合(N−O、O−N)の形成をもたらさない。
【0026】
「末端封止基」は、概して、PEGオリゴマーの末端酸素に結合される非反応性炭素を含有する基である。例示的な末端封止基には、メチル、エチル、およびベンジル等のC1−5アルキル基、およびアリール、ヘテロアリール、シクロ、ヘテロシクロ等が挙げられる。本発明のために、好適な封止基は、メチルまたはエチルのような比較的低い分子量を有する。末端封止基はまた、検出可能な標識を含むこともできる。このような標識には、発光物質、化学発光物質、酵素標識化に使用される部分、比色標識(例えば、染料)、金属イオン、および放射性部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
「分岐」とは、オリゴマーの形状または全体的な構造に関して、分岐点から伸びる、はっきりと区別できる「腕」を表す2つ以上のポリマーを有するオリゴマーを指す。
【0028】
「叉状」とは、オリゴマーの形状または全体的な構造に関して、(一般的に1つ以上の原子を通じて)分岐点から伸びる2つ以上のポリマーを有するオリゴマーを指す。
【0029】
「分岐点」とは、オリゴマーが直線構造から1つ以上のさらなる腕に分岐する、または叉状になる1つ以上の原子を含む分岐点を指す。
【0030】
「反応性」または「活性」という用語は、有機合成の慣習的な条件下で、容易に、または実用的な速度で反応する官能基を指す。これは、反応しないか、または反応するために強力な触媒または非実用的な条件を必要とする基(すなわち、「非反応性」または「不活性」基)とは対照的である。
【0031】
「容易に反応しない」とは、反応混合物中の分子上に存在する官能基に関して、基が、反応混合物中の所望の反応を生成するのに有効である条件下で、大部分がそのままの状態であることを示す。
【0032】
「保護基」は、ある反応条件下で、分子中の特定の化学反応性官能基の反応を妨げる、または阻止する部分である。保護基は、保護される化学反応基の型、および用いられる反応条件、ならびに分子中におけるさらなる反応基または保護基の存在によって異なる。保護され得る官能基には、一例として、カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基等が挙げられる。カルボン酸に対する代表的な保護基には、エステル(p−メトキシベンジルエステル等)、アミド、およびヒドラジド、アミノ基に対しては、カルバメート(tert−ブトキシカルボニル等)およびアミド、ヒドロキシル基に対しては、エーテルおよびエステル、チオール基に対しては、チオエーテルおよびチオエステル、カルボニル基に対しては、アセタールおよびケタール、等が挙げられる。このような保護基は当業者に知られており、例えば、T.W.Green and Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999に記載されており、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0033】
「保護形態」にある官能基とは、保護基を担持する官能基を指す。本明細書で使用される、「官能基」またはそのあらゆる同義語は、その保護形態を包含する。
【0034】
「生理学的に開裂可能な」、「加水分解性」、または「分解性」結合は、通常の生理学的条件下で水と反応する(すなわち、加水分解される)、比較的不安定な結合である。通常の生理学的条件下で、水中で加水分解するように結合する傾向は、2つの中央の原子を接続する結合の一般的な型だけでなく、これらの中央の原子に結合される置換基に依存する。このような結合は、概して、当業者によって認識可能である。適切な加水分解的に不安定な、または弱い結合には、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、オリゴヌクレオチド、チオエステル、および炭酸塩が挙げられるが、こられに限定されない。
【0035】
「酵素分解性結合」は、通常の生理学的な条件下で、1つ以上の酵素によって分解を受ける結合を意味する。
【0036】
「安定した」結合とは、実質的に水中で安定している、すなわち長期間にわたっていかなる検知できる程度まで、通常の生理学的条件下で、加水分解を受けることがない、化学的部分または結合、典型的には共有結合を指す。加水分解的に安定した結合の例には、(例えば、脂肪族鎖における)炭素−炭素結合、エーテル、アミド、ウレタン、アミン等が挙げられるが、これらに限定されない。概して、安定した結合は、通常の生理学的条件下で、1日あたり約1〜2%未満の加水分解速度を呈するものである。代表的な化学結合の加水分解速度は、大部分の標準的な化学書に見出すことができる。
【0037】
所与の組成物におけるオリゴマーのコンシステンシの記述に関して、「実質的に」または「基本的に」とは、ほぼ完全に、または完全にという意味であり、例えば、所与の分量のうちの95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、さらに好ましくは99.9%以上、最も好ましくは99.99%以上を意味する。
【0038】
「単分散」とは、組成物における実質的に全てのオリゴマーが、明確な単一の分子量、およびクロマトグラフィーまたは質量分析によって定められる規定数のモノマーを有する、オリゴマー組成物を指す。単分散オリゴマー組成物は、ある意味においては純粋である。すなわち、いくつかの異なる数のモノマー(すなわち、3つ以上の異なるオリゴマーの大きさを有するオリゴマー組成物)ではなく、実質的に単一で定義可能な数のモノマーを有する分子を含む。単分散オリゴマー組成物は、1.0005以下のMW/Mn値、より好ましくは、1.0000のMW/Mn値を有する。ひいては、単分散複合体から成る組成物は、組成物中の全ての複合体の実質的に全てのオリゴマーが、分布ではなく、単一で(整数として)定義可能な数のモノマーを有し、オリゴマーが抗ヒスタミンの残基に結合されなかった場合に、1.0005のMW/Mn値、より好ましくは、1.0000のMW/Mn値を有することを意味する。しかしながら、単分散複合体から成る組成物は、溶媒、試薬、賦形剤等の1つ以上の非複合体物質を含むことができる。
【0039】
「二峰性」とは、オリゴマー組成物に関連して、組成物中の実質的に全てのオリゴマーが、分布ではなく、2つのうち1つの定義可能で(整数として)異なる数のモノマーを有し、その分子量の分布が、数分率対分子量でプロットした時に、2つの別個の識別可能なピークとして現れる、オリゴマー組成物を指す。本明細書に記載された二峰性オリゴマー組成物について、2つのピークが異なる場合があるが、各ピークは、概して、その平均に関して対称である。理想的には、二峰性分布内の各ピークの多分散性指数Mw/Mnは、1.01以下、より好ましくは1.001以下、さらに好ましくは1.0005以下、最も好ましくは1.0000のMW/Mn値である。ひいては、二峰性複合体から成る組成物は、組成物中の全ての複合体の実質的に全てのオリゴマーが、大きい分布ではなく、2つのうち1つの(整数として)定義可能な異なる数のモノマーを有し、オリゴマーが抗ヒスタミンの残基に結合されなかった場合に、1.01以下、より好ましくは、1.001以下、さらに好ましくは1.0005以下のMW/Mn値、最も好ましくは1.0000のMW/Mn値を有することを意味する。しかしながら、二峰性複合体から成る組成物は、溶媒、試薬、賦形剤等の1つ以上の非複合体物質を含むことができる。
【0040】
「抗ヒスタミン」は、本明細書において、典型的に約1000ダルトン未満(および典型的に、500ダルトン未満)の分子量を有し、ヒスタミン−1受容体において拮抗薬としてある程度の活性を有する、有機、無機、または有機金属化合物を指すように、広義で使用される。抗ヒスタミンは、H受容体遮断薬またはH受容体拮抗薬とも称される。
【0041】
「生物学的膜」は、典型的に、特殊な細胞または組織から作られるあらゆる膜であり、少なくともいくつかの外来物または他の望ましくない材料に対する関門として機能する。本明細書で使用される、「生物学的膜」は、生理学的な保護関門に関連する膜を含み、例えば、血液脳関門(BBB)、血液脳脊髄液関門、血液胎盤関門、血液乳関門、血液精巣関門、および膣粘膜、尿道粘膜、肛門粘膜、頬粘膜、舌下粘膜、直腸粘膜等を含む粘膜関門を含む。文脈が明らかに異なるように述べていない限り、「生物学的膜」という用語は、中間の胃腸管(例えば、胃および小腸)に関連する膜を含まない。
【0042】
本明細書で使用される、「生物学的膜の横断速度」は、生物学的膜(血液脳関門に関連する膜)を横断する化合物の能力の尺度を提供する。種々の方法を使用して、あらゆる所与の生物学的膜を横断する分子の輸送を評価することができる。あらゆる所与の生物学的関門(例えば、血液脳脊髄液関門、血液胎盤関門、血液乳関門、腸関門等)に関連する生物学的膜の横断速度を評価する方法は、当技術分野において知られており、本明細書および/または関連する文献に記載されており、および/または当業者によって決定することができる。
【0043】
「減少した代謝速度」とは、本発明に関して、水溶性オリゴマー(すなわち、小分子薬物自体)に結合していない小分子薬物、または参照標準材料の代謝の速度と比較して、水溶性オリゴマー小分子薬物複合体の代謝速度の測定可能な減少を指す。「代謝の初回通過速度の減少」の特殊な場合においては、同じく、小分子薬物(または参照標準材料)および対応する複合体が経口投与されることを除いては、「代謝速度の減少」が必要である。経口投与薬物は、胃腸管から門脈循環へ吸収され、体循環に到達する前に、肝臓を通過しなければならない。肝臓は、薬物代謝または生体内変化の主たる部位であるので、相当量の薬物が、体循環に到達する前に代謝することができる。初回通過代謝の程度、したがって、そのいかなる減少も、多くの異なる手法で測定することができる。例えば、動物の血液試料は、代謝物レベルに対して、定められた間隔で、液体クロマトグラフィー/質量分析によって分析される血漿または血清で収集することができる。初回通過代謝および他の代謝性プロセスに関連する「代謝速度の減少」は当技術分野において知られており、本明細書および/または関連する文献に記載されており、および/または当業者によって決定することができる。本発明の複合体は、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、および少なくとも約90%の値のうちの少なくとも1つを満たす、代謝速度の減少を提供できることが好ましい。「経口的に生物学的に利用可能な」化合物(小分子薬物またはその複合体等)は、好ましくは、経口投与される際、25%を超える、好ましくは70%を超える生物学的利用能を有するものであり、化合物の生物学的利用能は、非代謝形態で体循環に到達する投与薬物の画分である。
【0044】
「アルキル」とは、典型的に長さが約1〜20個の原子の範囲である炭化水素鎖を指す。このような炭化水素鎖は、飽和されることが好ましいが、必ずしもそうである必要はなく、また、分岐鎖または直鎖であってもよいが、一般的に直鎖が好ましい。例示的なアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、3−メチルペンチル等が挙げられる。本明細書で使用される、「アルキル」は、3つ以上の炭素原子に言及される時には、シクロアルキルを含む。「アルケニル」基は、少なくとも1つの炭素−炭素の二重結合を有する2〜20個の炭素原子のアルキルである。
【0045】
「置換アルキル」またはqおよびrがアルキル基に含まれる炭素原子の範囲を表す整数である「置換Cq−rアルキル」は、1つ、2つ、または3つのハロ(例えば、F、Cl、Br、I)、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、C1−7アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル等)、C1−7アルコキシ、C1−7アシルオキシ、C3−7複素環、アミノ、フェノキシ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシ、アシル、シアノによって置換された、上述のアルキル基を意味する。置換アルキル基は、同じまたは異なる置換基で、1回、2回、または3回置換され得る。
【0046】
「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基を指し、メチル、エチル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチルによって例示されるように、直鎖または分岐であってもよい。「低級アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する、2〜6個の炭素原子の低級アルキル基を指す。
【0047】
「非干渉置換基」は、分子中に存在する時に、一般的に、分子内に含まれる別の官能基と非反応性である基である。
【0048】
「アルコキシ」とは、−O−R基を指し、Rは、アルキルまたは置換アルキルであって、好ましくはC−C20アルキル(例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ベンジル等)、好ましくはC−Cである。
【0049】
「薬剤として許容される賦形剤」または「薬剤として許容される担体」とは、本発明の組成物内に含めることができる成分を指し、それは、その成分を欠く組成物と比較して、利点(例えば、患者への投与にさらに適する)を有し、また、患者に対して著しく有害な毒物学的影響を生じさせないものと認識される組成物を提供することを目的とする。
【0050】
「アリール」という用語は、最高で14個の炭素原子を有する芳香族基を意味する。アリール基には、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントレニル、ナフタセニル等が挙げられる。「置換フェニル」および「置換アリール」はそれぞれ、ハロ(F、Cl、Br、I)ヒドロキシ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アルキル(例えば、C1−6アルキル)、アルコキシル(例えば、C1−6アルコキシ)、ベンジルオキシ、カルボキシ、アリール等より選択された、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ(例えば1〜2、1〜3、または1〜4個の置換基)によって置換された、フェニル基およびアリール基を意味する。
【0051】
「芳香族化合物含有部分」は、少なくともアリールおよび任意選択で1つ以上の原子を含む、一群の原子である。好適な芳香族化合物含有部分は、本明細書に記載されている。
【0052】
簡潔にするため、化学的部分は、本書全体を通じて、主に一価の化学的部分(例えば、アルキル、アリール等)として定義され、それを指す。しかしながら、このような用語は、当業者には明らかである適切な構造的環境下で、対応する多価部分を伝えることにも使用される。例えば、「アルキル」部分は、概して、一価の基部(例えば、CH−CH−)を指すが、ある種の環境においては、二価リンク部分を「アルキル」とすることができ、その場合、当業者は、アルキルが、二価の基部(例えば、−CH−CH−)となり、「アルキレン」という用語と同等物であると理解するであろう。(同様に、二価部分が必要であり、「アリール」と述べられる環境においては、当業者は、「アリール」という用語が、対応する二価部分、アリーレンを指すと理解するであろう)。全ての原子は、結合形成のための正常数の原子価(すなわち、炭素の場合は4、窒素の場合は3、酸素の場合は2、および硫黄の場合は、硫黄の酸化状態に基づいて2、4、または6)を有するものと理解されたい。
【0053】
「薬理学的有効量」、「生理学的有効量」、および「治療上有効量」は、血流中または標的組織内において、活性剤および/または複合体の閾値レベルを提供するのに必要な、組成物中に存在する、水溶性オリゴマー小分子薬物複合体の量を意味するように、本明細書において代替可能に使用される。正確な量は、例えば、特定の活性剤、組成物の成分および物理特性、対象とする患者集団、患者上の問題等の数多くの要因に依存し、本明細書に提供された情報および関連する文書中の利用可能な情報に基づいて、当業者によって容易に決定することができる。
【0054】
「二官能性」オリゴマーは、典型的にその末端において、2つの官能基がその中に含まれるオリゴマーである。官能基が同じものである時には、該オリゴマーは、ホモ二官能性であると言われる。官能基が異なる時には、該オリゴマーは、ヘテロ二官能性であると言われる。
【0055】
本明細書に記述されている塩基性反応物質または酸性反応物質は、中性で荷電したもの、およびあらゆる対応するその塩形態を含む。
【0056】
「患者」という用語は、一般的に、必ずしもそうではないが、水溶性オリゴマー小分子薬物複合体の形態で、本明細書に記載されている複合体の投与によって予防または治療することができる状態にある、またはその傾向がある、生きた組織を指し、人および動物の両者を含む。
【0057】
「任意選択」または、「任意選択で」とは、その後に記述される状況が、必ずしも生じるわけではなく、その説明は、その状況が生じる場合、および生じない場合を含むことを意味する。
【0058】
上述のように、本発明は、(とりわけ)安定した結合を介して、水溶性の非ペプチドオリゴマーに共有結合した、抗ヒスタミンの残基を含む化合物を対象とする。
【0059】
本発明の1つ以上の実施形態において、化合物が提供され、該化合物は、安定したまたは分解性結合を介して水溶性の非ペプチドオリゴマーに共有結合した、抗ヒスタミンの残基を含み、抗ヒスタミンは、以下の式により包含される構造を有し、
【0060】
【化5】

式中、
(a)は、0または1のいずれかであり、
Zは、N、CH、およびC(CH)から成る群より選択され、
Arは、芳香族含有部分(好ましくは
【0061】
【化6】

から成る群より選択される)であり、
Arは、芳香族含有部分(好ましくは
【0062】
【化7】

から成る群より選択される)であるか、または、Ar−Z−Arは、組み合わされて、
【0063】
【化8】

等の芳香族含有部分を形成する。
【0064】
具体的な抗ヒスタミンの例としては、アクリバスチン、アリメマジン、アンタゾリン、アステミゾール、アザタジン、アゼラスチン、バミピン、ブロマジン、ブロムフェニラミン、ブロモジフェンヒドラミン、ブクリジン、カルビノキサミン、セチリジン、クロルサイクリジン、クロロピラミン、クロルフェニラミン、クロルフェノキサミン、シンナリジン、クレマスチン、シクリジン、シプロヘプタジン、デプトロピン、デスロラタジン、デクスブロムフェニラミン、デクスクロルフェニラミン、ジメチンデン、ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、ドキシラミン、ジメンヒドリナート、エバスチン、ヒスタピロジン、ヒドロキシエチルプロメタジン、ヒドロキシジン、イソチペンジル、ケトチフェン、ロラタジン、レボセチリジン、メブヒドロリン、メクリジン、メピラミン、メキタジン、メタピリレン、メトジラジン、ミゾラスチン、ニアプラジン、オキソメマジン、オキサトミド、フェニンダミン、フェニラミン、ピメチキセン、プロメタジン、ピリベンザミン、ピリラミン、ピロブタミン、ルパタジン、タラスチン、テルフェナジン、トンジルアミン、トリメプラジン、およびトリペレナミンから成る群より選択されるものが挙げられる。
【0065】
本発明の複合体の利点は、臨床的に意味のある眠気を誘発せずに、ある程度の抗ヒスタミン活性を保持するそれらの能力であると考えられる。理論に束縛されるものではないが、オリゴマーにより導入された追加の大きさが、(複合されていない「元々の」抗ヒスタミンとは対照的に)該化合物の血液脳関門を横断する能力を減少させる。このようにして、複合体の抗ヒスタミン効果が、中枢神経系を避けながら、末梢内で作用し得る(そしてそれにより、中枢神経系が介在する副作用を避ける)。
【0066】
本発明の複合体を形成するためのオリゴマーの使用(例えば、比較的不純な組成物とは対照的に、オリゴマーの単分散または二峰性組成物から)により、対応する小分子薬物に関連する特定の性質を、有利に変更することができる。例えば、本発明の複合体は、非経口、経口、経皮、口腔内、経肺、または経鼻等の、多くの好適な投与経路のうちのいずれかにより投与されると、血液脳関門浸透性の低下を呈する。複合体は、減速した、最小限の血液脳関門の通過を呈するか、または事実上それを通過しないが、それでもなお、経口送達が意図される場合、胃腸(GI)壁を通過して体循環に入ることが好ましい。さらに、本発明の複合体は、全てのオリゴマーを含まない化合物の生物活性および生物学的利用能と比較して、それらの複合形態において、ある程度の生物活性ならびに生物学的利用能を維持する。
【0067】
血液脳関門(「BBB」)について、この関門は、薬物の血液から脳への輸送を制限する。この関門は、密着接合により連結される、独特の内皮細胞の連続層から成る。BBBの全表面積の95%超を占める脳毛細血管は、ほとんどの溶質および薬物の中枢神経系への主要な侵入経路である。
【0068】
血液脳関門横断能力の程度が容易に分からない化合物について、そのような能力は、本明細書に記載される原位置ラット脳灌流(「RBP」)モデル等の、好適な動物モデルを使用して、判定することができる。手短に述べると、RBP法は、頚動脈のカニューレ挿入、その後の管理された条件下での、化合物溶液での灌流、次いで、脈管性間隙に残存する化合物を除去するための洗い流し段階を含む。(そのような分析は、例えば、Absorption Systems,Exton,PA等の委託研究機関により行われ得る)。より具体的には、RBPモデルにおいて、左頚動脈にカニューレを配置し、側枝を縛る。分析物を含有する生理緩衝液(典型的には、5ミクロモルの濃度レベルであるが、必ずしもこれに限らない)を、単回通過灌流実験で、約10mL/分の流速で灌流させる。30秒後、灌流を停止し、さらに30秒間、化合物を含まない緩衝液で脳血管内容物を洗い流す。その後、脳組織を除去し、タンデム質量分析検出(LC/MS/MS)を用いて、液体クロマトグラフにより化合物濃度を分析する。代替的に、血液脳関門透過性は、分子における極性原子(通常、酸素、窒素、および結合水素)の表面の寄与の合計として定義される、化合物の分子極性表面積(「PSA」)の計算に基づき、推定され得る。PSAは、血液脳関門輸送等の化合物輸送特性と相関することが示されている。化合物のPSAを決定するための方法は、例えば、Ertl,P.,et al.,J.Med.Chem.2000,43,3714−3717、およびKelder,J.,et al.,Pharm.Res.1999,16,1514−1519において見出すことができる。
【0069】
血液脳関門について、水溶性非ペプチドオリゴマー−小分子薬物複合体は、水溶性非ペプチドオリゴマーに結合されない小分子薬物の横断速度と比較して、低下した血液脳関門横断速度を呈する。本明細書に記載される化合物の、好ましい例示的な血液脳関門横断速度における低下としては、水溶性オリゴマーに結合されない小分子薬物の血液脳関門横断速度と比較した場合、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%の低下が挙げられる。複合体にとって好ましい血液脳関門横断速度における低下は、少なくとも約20%である。
【0070】
上述のように、本発明の化合物は、抗ヒスタミンの残基を含む。所与の化合物が(化合物が、複合形態であるかどうかに関わらず)H抗ヒスタミン受容体を遮断するかどうかを判定するための検定法を下述する。
【0071】
場合によっては、抗ヒスタミンは、商業的供給源から入手することができる。加えて、抗ヒスタミンは、化学合成により得ることができる。抗ヒスタミンを調製するための合成手法は、文献、および例えば、米国特許第2,421,714号、第2,427,878号、第4,525,358号、第4,219,559号、第2,567,245号、第2,676,964号、第3,061,517号、第2,785,202号、第2,951,082号、第4,282,233号、第2,709,169号、第2,899,436号、第2,406,594号、および第2,502,151号に記載されている。
【0072】
これらの(および他の)抗ヒスタミンのそれぞれは、(直接または1つ以上の原子を通じてのいずれかで)水溶性非ペプチドオリゴマーに共有結合させることができる。
【0073】
本発明に有用な小分子薬物は、概して1000Da未満の分子量を有する。小分子薬物の例示的な分子量には、約950未満、約900未満、約850未満、約800未満、約750未満、約700未満、約650未満、約600未満、約550未満、約500未満、約450未満、約400未満、約350未満、および約300未満の分子量が挙げられる。
【0074】
キラルの場合、本発明に使用される小分子薬物は、ラセミ混合物、または単一の光学活性鏡像体等の光学活性形態、あるいは鏡像体のあらゆる組み合わせまたは比率(すなわち、スケールミック混合物)であり得る。加えて、小分子薬物は、1つ以上の幾何異性体を有し得る。幾何異性体に関して、組成物は、単一の幾何異性体、または2つ以上の幾何異性体の混合物を含むことができる。本発明に使用する小分子薬物は、その慣習的な活性形態とすることができ、またはある程度の修飾を有し得る。例えば、小分子薬物は、オリゴマーの共有結合の前または後に、標的薬剤、タグ、またはそれに結合させた輸送体を有し得る。代替的に、小分子薬物は、リン脂質(例えば、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、すなわち「DSPE」、ジパルミトイルジホスファチジルエタノールアミン、すなわち「DPPE」等)、または小脂肪酸等の、それに結合させた親油性部分を有し得る。しかしながら、場合によっては、小分子薬物部分は、親油性部分への結合を含まないことが好ましい。
【0075】
水溶性の非ペプチドオリゴマーに結合させるための抗ヒスタミンは、オリゴマーへの共有結合に好適な遊離ヒドロキシル、カルボキシル、チオ、アミノ基等(すなわち、「ハンドル」)を有する。加えて、抗ヒスタミンは、反応基の導入によって、好ましくはその既存の官能基のうちの1つから、オリゴマーと薬物との間に安定した共有結合を形成するのに好適な官能基への変換によって、修飾することができる。両手法とも、実験の項に示されている。
【0076】
水溶性の非ペプチドオリゴマーは、一般的に、モノマー鎖を形成するように連続的に結合した1つ以上のモノマーを含む。オリゴマーは、単一のモノマー型(すなわち、ホモオリゴマー)または2つまたは3つのモノマー型(すなわち、コオリゴマーである)から形成することができる。各オリゴマーは、好ましくは2個のモノマーのコオリゴマーであり、または、ホモオリゴマーであることがより好ましい。
【0077】
したがって、各オリゴマーは、エチレンオキシドまたは酸化プロピレン等のアルキレンオキシド、ビニルアルコール、1−プロペノールまたは2−プロペノールオレフィンアルコール等のオレフィンアルコール、ビニルピロリドン、好ましくはアルキルがメチルであるヒドロキシアルキルメタクリルアミドまたはメタクリル酸ヒドロキシアルキル、乳酸またはグリコール酸等のα−ヒドロキシ酸、ホスファゼン、オキサゾリン、アミノ酸、単糖類等の炭水化物、糖類、またはマンニトール、およびN−アクリロイルモルホリンから成る群より選択される、最高で3つの異なるモノマー型で構成される。好適なモノマー型には、アルキレンオキシド、オレフィンアルコール、ヒドロキシアルキルメタクリルアミドまたはメタクリレート、N−アクリロイルモルホリン、およびα−ヒドロキシ酸が挙げられる。各オリゴマーは、独立して、この群から選択される2つのモノマー型のコオリゴマーであることが好ましく、または、この群から選択される1つのモノマー型のホモオリゴマーであることがより好ましい。
【0078】
コオリゴマーにおける2つのモノマー型は、同じモノマー型であり得、例えば、エチレンオキシドおよび酸化プロピレン等の2つのアルキレンオキシドであり得る。オリゴマーは、エチレンオキシドのホモオリゴマーであることが好ましい。通常、必ずではないが、小分子に共有結合されていないオリゴマーの末端(または複数の末端)は、それを不活性にするように封止される。代替的に、末端は、反応基を含み得る。末端が反応基である時、反応基は、最終的なオリゴマーの形成条件下で、またはオリゴマーの小分子薬物への共有結合中に不活性となるように、または必要に応じて保護されるように選択される。1つのよく使用される末端官能基は、特にオリゴエチレン酸化物に対して、ヒドロキシルまたは−OHである。
【0079】
水溶性の非ペプチドオリゴマー(例えば、本明細書に記載される種々の構造の「POLY」)は、多くの異なる形状のうちのいずれをも有することができる。例えば、それは直線、分岐、または叉状であり得る。最も典型的には、水溶性非ペプチドオリゴマーは、直線、または、例えば1つの分岐点を有する分岐である。本明細書における考察の多くが、例示的なオリゴマーとしてポリ(エチレンオキシド)に注目しているが、本明細書に示される考察および構造は、上述した水溶性非ペプチドオリゴマーのうちのいずれをも包含するように、容易に拡張することができる。
【0080】
リンカー部分を除く水溶性非ペプチドオリゴマーの分子量は、概して、比較的低い。水溶性高分子の分子量の例示的な値には、約1500ダルトン未満、約1450ダルトン未満、約1400ダルトン未満、約1350ダルトン未満、約1300ダルトン未満、約1250ダルトン未満、約1200ダルトン未満、約1150ダルトン未満、約1100ダルトン未満、約1050ダルトン未満、約1000ダルトン未満、約950ダルトン未満、約900ダルトン未満、約850ダルトン未満、約800ダルトン未満、約750ダルトン未満、約700ダルトン未満、約650ダルトン未満、約600ダルトン未満、約550ダルトン未満、約500ダルトン未満、約450ダルトン未満、約400ダルトン未満、約350ダルトン未満、約300ダルトン未満、約250ダルトン未満、約200ダルトン未満、および約100ダルトン未満が挙げられる。
【0081】
水溶性非ペプチドオリゴマー(リンカー以外)の分子量の例示的な範囲には、約100〜約1400ダルトン、約100〜約1200ダルトン、約100〜約800ダルトン、約100〜約500ダルトン、約100〜約400ダルトン、約200〜約500ダルトン、約200〜約400ダルトン、約75〜1000ダルトン、および約75〜約750ダルトンが挙げられる。
【0082】
水溶性非ペプチドオリゴマー中のモノマーの数は、約1〜約30(1および30を含む)の間、約1〜約25の間、約1〜約20の間、約1〜約15の間、約1〜約12の間、約1〜約10の間のうちの1つ以上の範囲内にあることが好ましい。特定の場合においては、オリゴマー(および対応する複合体)中の連続するモノマーの数は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、または8個のうちの1つである。追加的な実施形態において、オリゴマー(および対応する複合体)は、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個のモノマーを含む。さらなる実施形態において、オリゴマー(および対応する複合体)は、連続する21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、または30個のモノマーを有する。したがって、例えば、水溶性非ペプチドオリゴマーが、CH−(OCHCH−を含む時には、「n」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30とすることができ、また、約1〜約25の間、約1〜約20の間、約1〜約15の間、約1〜約12の間、約1〜約10の間のうちの1つ以上の範囲内とすることができる整数である。
【0083】
水溶性非ペプチドオリゴマーが1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のモノマーを有する時には、これらの値は、それぞれ、約75、119、163、207、251、295、339、383、427、および471ダルトンの分子量を有する、メトキシで末端封止されたオリゴ(エチレンオキシド)に対応する。オリゴマーが11個、12個、13個、14個、または15個のモノマーを有する時には、これらの値は、それぞれ、約515、559、603、647、および691ダルトンに対応する分子量を有する、メトキシで末端封止されたオリゴ(エチレンオキシド)に対応する。
【0084】
水溶性の非ペプチドオリゴマーが、(抗ヒスタミン上へ有効にオリゴマーを「成長させる」ように、1つ以上のモノマーをステップ的に付加するのとは対照的に)抗ヒスタミンに結合される時には、水溶性非ペプチドオリゴマーの活性形態を含む組成物が単分散であることが好ましい。しかしながら、それらの場合においては、二峰性の組成物を用いた場合に、該組成物は、上述した数のモノマーのうちのいずれか2つを中心とする二峰性分布を有することになる。理想的には、二峰性分布内の各ピークの多分散指数、Mw/Mnは、1.01以下であり、より好ましくは1.001以下であり、より好ましくは1.0005以下である。各ピークが、1.0000のMW/Mn値を有することが最も好ましい。例えば、二峰性オリゴマーは、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、1−7、1−8、1−9、1−10等、2−3、2−4、2−5、2−6、2−7、2−8、2−9、2−10等、3−4、3−5、3−6、3−7、3−8、3−9、3−10等、4−5、4−6、4−7、4−8、4−9、4−10等、5−6、5−7、5−8、5−9、5−10等、6−7、6−8、6−9、6−10等、7−8、7−9、7−10等、および8−9、8−10等の、モノマー副単位の例示的な組み合わせのうちのいずれをも有し得る。
【0085】
場合によっては、水溶性非ペプチドオリゴマーの活性形態を含む組成物は、三峰性、あるいはさらに四峰性でもあり、上述のようなモノマー単位の範囲を有する。オリゴマーの明確な混合物を有するオリゴマー組成物は(すなわち、二峰性、三峰性、四峰性等)は、所望のプロファイルのオリゴマー(モノマーの数だけが異なる2つのオリゴマーの混合物は、二峰性であり、モノマーの数だけが異なる3つのオリゴマーの混合物は、三峰性であり、モノマーの数だけが異なる4つのオリゴマーの混合物は、四峰性である)を得るように、精製された単分散オリゴマーを混合することによって得ることができ、または代替的に、所望の定義された分子量範囲にあるオリゴマーの混合物を得るように、「センターカット」を復元することによって、多分散オリゴマーのカラムクロマトグラフィーから得ることができる。
【0086】
水溶性非ペプチドオリゴマーは、好ましくは単分子または単分散である組成物から得られることが好ましい。すなわち、組成物中のオリゴマーは、分子量の分布ではなく、同じ別個の分子量値を有する。いくつかの単分散オリゴマーは、Sigma−Aldrich社から入手できるもの等の修業的供給源から購入することができ、または、代替的に、Sigma−Aldrich社等の市販の出発材料から直接調製することができる。水溶性非ペプチドオリゴマーは、Chen Y.,Baker,G.L.J.Org.Chem.、6870−6873(1999)、国際特許第WO 02/098949合、および米国特許出願公報第2005/0136031号に記載されているように調製することができる。
【0087】
存在する場合、スペーサ部分(水溶性非ペプチドポリマーが通って抗ヒスタミンに結合される)は、酸素原子もしくは硫黄原子等の、単結合、単一原子、2個の原子、または多数の原子であり得る。スペーサ部分は、必ずではないが、典型的には、直線である。スペーサ部分「X」は、加水分解的に安定していることが好ましく、酵素的にも安定していることが好ましい。好ましくは、スペーサ部分「X」は、約12個未満の原子鎖長、好ましくは約10個未満の原子鎖長、より好ましくは約8個未満の原子鎖長、さらに好ましくは約5個未満の原子鎖長を有するものであり、ここで、長さは、置換基を数に入れない、単一の鎖内の原子数を意味する。例えば、このRオリゴマー−NH−(C=O)−NH−R′drug等の尿素結合は、3つの原子(−H−(O)−H−)の鎖長を有すると見なされる。選択された実施形態において、スペーサ部分結合は、さらなるスペーサ基を含まない。
【0088】
場合によっては、スペーサ部分「X」は、エーテル、アミド、ウレタン、アミン、チオエーテル、尿素、または炭素−炭素結合を含む。以下に論じられ、実施例に示されている官能基が、典型的に、結合の形成に使用される。スペーサ部分はまた、以下にさらに記載するように、それほどは好ましくないが、スペーサ基を含む(または、隣接する、あるいは側面に位置する)場合がある。
【0089】
より具体的には、選択された実施形態において、スペーサ部分、Xは、「−」(すなわち、安定したまたは分解性であり得る、小分子抗ヒスタミンと、水溶性非ペプチドオリゴマーの残基との間の共有結合)、−O−、−NH−、−S−、−C(O)−、C(O)−NH、NH−C(O)−NH、O−C(O)−NH、−C(S)−、−CH−、−CH−CH−、−CH−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−、−O−CH−、−CH−O−、−O−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CH−CH−O−、−O−CH−CH−CH−、−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−、−CH−CH−CH−O−、−O−CH−CH−CH−CH−、−CH−O−CH−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−CH−O−CH−、−CH−CH−CH−CH−O−、−C(O)−NH−CH−、C(O)−NH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−、−C(O)−NH−CH−CH−CH−CH−、−CH−C(O)−NH−CH−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−C(O)−NH−、−NH−C(O)−CH−、−CH−NH−C(O)−CH−、−CH−CH−NH−C(O)−CH−、−NH−C(O)−CH−CH−、−CH−NH−C(O)−CH−CH、−CH−CH−NH−C(O)−CH−CH、−C(O)−NH−CH−、−C(O)−NH−CH−CH−、−O−C(O)−NH−CH−、−O−C(O)−NH−CH−CH−、−NH−CH−、−NH−CH−CH−、−CH−NH−CH−、−CH−CH−NH−CH−、−C(O)−CH−、−C(O)−CH−CH−、−CH−C(O)−CH−、−CH−CH−C(O)−CH−、−CH−CH−C(O)−CH−CH−、−CH−CH−C(O)−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NH−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NHC(O)−、−CH−CH−CH−C(O)−NH−CH−CH−NHC(O)−CH−、二価シクロアルキル基、Rが、H、またはアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、および置換アリールからなる群より選択される有機基部であるN(R)、のうちのいずれか1つであり得る。
【0090】
しかしながら、本発明の目的のために、一群の原子は、オリゴマーセグメントに直接隣接している時には、スペーサとみなされず、また、その一群の原子は、その群が単にオリゴマー鎖の拡張を表すように、オリゴマーのモノマーと同じとされる。
【0091】
水溶性非ペプチドオリゴマーと小分子との間の結合「X」は、典型的に、オリゴマーの末端上の官能基(または、抗ヒスタミン上へオリゴマーを「成長させる」ことが望まれる時には、1つ以上のモノマー)と、抗ヒスタミンの対応する官能基との反応によって形成される。以下、例示的な反応を簡潔に説明する。例えば、オリゴマー上のアミノ基は、アミド結合を生成するように、小分子上のカルボン酸または活性カルボン酸誘導体と反応させる、またはその逆に反応させてもよい。代替的に、オリゴマー上のアミンと、薬物上の活性炭酸塩(例えば、スクシンイミジルまたは炭酸ベンゾトリアジル)、またはその逆の反応は、カルバメート結合を形成する。オリゴマー上のアミンと、薬物上のイソシアネート(R−N=C=O)、またはその逆の反応は、尿素結合(R−NH(C=O)−NH−R′)を形成する。さらに、オリゴマー上のアルコール(アルコキシド)基と、薬物内のハロゲン化アルキル、またはハロゲン化基、またはその逆の反応は、エーテル結合を形成する。さらに別の結合手法においては、アルデヒド機能を有する小分子は、還元的アミノ化によってオリゴマーアミノ基に結合し、オリゴマーと小分子との間の第2級アミン結合の形成をもたらす。
【0092】
特に好適な水溶性非ペプチドオリゴマーは、アルデヒド官能基を担持するオリゴマーである。この点に関して、オリゴマーは、以下の構造を有す。CHO−(CH−CH−O)−(CH−C(O)H、式中、(n)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10のうちの1つであり、(p)は、1、2、3、4、5、6、および7のうちの1つである。好適な(n)の値は、3、5、および7を含み、好適な(p)の値は、2、3、および4である。加えて、−C(O)H部分に対する炭素原子αは、任意選択でアルキルによって置換することができる。
【0093】
典型的に、官能基を担持していない水溶性非ペプチドオリゴマーの末端は、それを不活性にするように封止される。オリゴマーが、複合体の形成を目的とする以外に、末端にさらなる官能基を含む時には、その基は、結合「X」の形成条件下で不活性であるか、または結合「X」の形成中に保護されるように選択される。
【0094】
上述のように、水溶性非ペプチドオリゴマーは、複合化の前に少なくとも1つの官能基を含む。官能基は、一般的に、小分子内に含有する、または小分子内へ導入される反応基に基づいて、小分子への共有結合のための求電子または求核基を含む。オリゴマーまたは小分子内に存在し得る求核基の例には、ヒドロキシル、アミン、ヒドラジン(−NHNH)、ヒドラジド(−C(O)NHNH)、およびチオールが挙げられる。好適な求核剤には、アミン、ヒドラジン、ヒドラジド、およびチオール、特にアミンが挙げられる。オリゴマーへの共有結合のための大部分の小分子薬物は、遊離ヒドロキシル、アミノ、チオ、アルデヒド、ケトン、またはカルボキシル基を有する。
【0095】
オリゴマーまたは小分子内に存在し得る求電子官能基の例には、カルボン酸、カルボン酸エステル、特にイミドエステル、オルトエステル、炭酸塩、イソシアネート、イソチオシアネート、アルデヒド、ケトン、チオン、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、スルホン、マレイミド、ジスルフィド、ヨード、エポキシ、スルホネート、チオスルホネート、シラン、アルコキシシラン、およびハロゲノシランが挙げられる。これらの基のより具体的な例には、スクシンイミジルエステルまたは炭酸塩、イミダゾイルエステルまたは炭酸塩、ベンゾトリアゾールエステルまたは炭酸塩、ビニルスルホン、クロロエチルスルホン、ビニルピリジン、ピリジルジスルフィド、ヨードアセトアミド、グリオキサール、ジオン、メシラート、トシラート、およびトレシレート(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)が挙げられる。
【0096】
また、チオン、チオン水和物、チオケタール、2−チアゾリジンチオン等、ならびに上述の部分のうちのいずれかの水和物または保護誘導体(例えば、アルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、ケタール、チオケタール、チオアセタール)も挙げられる。
【0097】
カルボン酸の「活性誘導体」とは、概して、非誘導体化カルボン酸よりも極めて容易に、求核原子と容易に反応するカルボン酸誘導体を指す。活性カルボン酸には、例えば、酸性ハロゲン化物(酸塩化物等)、無水物、炭酸塩、およびエステルが挙げられる。このようなエステルには、一般的な形態が−(CO)O−N[(CO)−]であるイミドエステル、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステルまたはN−ヒドロキシフタルイミジルエステルが挙げられる。また、イミダゾリルエステルおよびベンゾトリアゾールエステルも好ましい。共同所有の米国特許第5,672,662号に記載されている、活性プロピオン酸またはブタン酸エステルが特に好まれる。これらは、−(CH2−3C(=O)O−Qの形態の基を含み、Qは、N−スクシンイミド、N−スルホスクシンイミド、N−フタルイミド、N−グルタルイミド、N−テトラヒドロフタルイミド、N−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、ベンゾトリアゾール、7−アザベンゾトリアゾール、およびイミダゾールから選択されることが好ましい。
【0098】
他の好適な求電子基には、スクシンイミジル炭酸塩、マレイミド、ベンゾトリアゾール炭酸塩、グリシジルエーテル、イミダゾイル炭酸塩、p−ニトロフェニル炭酸塩、アクリレート、トレシレート、アルデヒド、およびオルトピリジルジスルフィドが挙げられる。
【0099】
これらの求電子基は、例えばヒドロキシ、チオ、アミノ基等の求核原子との反応を受けて、種々の結合型を生成する。本発明には、加水分解的に安定した結合を形成し易い反応が好ましい。例えば、オルトエステル、スクシンイミジルエステル、イミダゾリルエステル、およびベンゾトリアゾールエステルを含むカルボン酸およびその活性誘導体は、上述した型の求核原子と反応して、それぞれエステル、チオエステル、およびアミドを形成し、そのうちのアミドが最も加水分解的に安定している。スクシンイミジル、イミダゾリル、およびベンゾトリアゾール炭酸塩を含む炭酸塩は、アミノ基と反応してカルバメートを形成する。イソシアネート(R−N=C=O)は、ヒドロキシルまたはアミノ基と反応して、それぞれ、カルバメート(RNH−C(O)−OR′)または尿素(RNH−C(O)−NHR′)結合を形成する。アルデヒド、ケトン、グリオキサール、ジオン、およびそれらの水和物またはアルコール付加物(すなわち、アルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、およびケタール)は、アミンと反応することが好ましく、その後に、結果として生じるイミンの還元を行い、必要に応じて、アミン結合(還元的アミノ化)を提供する。
【0100】
求電子官能基のうちのいくつかは、例えばチオエーテル結合を形成するように、チオール等の求核基を添加することができる求電子二重結合を含む。これらの基には、マレイミド、ビニルスルホン、ビニルピリジン、アクリレート、メタクリレート、およびアクリルアミドが挙げられる。他の基は、求核原子によって置き換えることができる離脱基を含み、これらには、クロロエチルスルホン、ピリジルジスルフィド(開裂可能なS−S結合を含む)、ヨードアセトアミド、メシラート、トシラート、チオスルホネート、およびトレシレートが挙げられる。エポキシドは、求核原子による開環によって反応して、例えばエーテルまたはアミン結合を形成する。オリゴマーおよび小分子上に上述したような相補的な反応基を伴う反応を利用して、本発明の複合体を調製する。
【0101】
場合によっては、抗ヒスタミンは、複合化に適した官能基を持たなくてもよいことがある。この場合、所望の抗ヒスタミンを有するように、「元々の」抗ヒスタミンを修飾することが可能である。例えば、抗ヒスタミンがアミド基を有するが、アミン基が望まれる場合は、Hofmann転位、Curtius転位(アミドが1回アジドに変換される)、またはLossen転位(アミドが1度ヒドロキシアミドに変換され、その後に、トルエン−2−スルホニルクロリド/塩基による処理が続く)を経て、アミド基をアミン基に修飾することが可能である。
【0102】
小分子抗ヒスタミンをオリゴマーに共有結合させるアミド基を有する複合体を提供するように、カルボキシル基を担持する小分子抗ヒスタミンが、アミノ末端オリゴマエチレングリコールに結合されるカルボキシル基を担持する、小分子抗ヒスタミンの複合体を調製することが可能である。これは、例えば、無水の有機溶媒中で、結合試薬(ジシクロヘキシルカルボジイミド、すなわち「DCC」)の存在下で、カルボキシル基を担持する小分子抗ヒスタミンを、アミノ末端オリゴマエチレングリコールと結合させることによって行うことができる。
【0103】
さらに、エーテル(−O−)結合の小分子複合体をもたらすように、ヒドロキシル基を担持する小分子抗ヒスタミンが、オリゴマエチレングリコールに結合されるヒドロキシル基を担持する、小分子抗ヒスタミンの複合体を調製することが可能である。これは、例えば、水素化ナトリウムを使用してヒドロキシル基を脱プロトン化し、その後に、ハロゲン化末端のオリゴマエチレングリコールと反応させることによって行うことができる。
【0104】
他の実施例において、対応するヒドロキシル基を形成するように、最初にケトン基を減少させることによって、ケトン基を担持する小分子抗ヒスタミンの複合体を調製することが可能である。その後、その段階でヒドロキシル基を担持するようになった小分子抗ヒスタミンを、本明細書に記載されているように結合することができる。
【0105】
さらに他の事例において、アミン基を担持する小分子抗ヒスタミンの複合体を調製することが可能である。一手法においては、アミン基を担持する小分子抗ヒスタミン、およびアルデヒドを担持するオリゴマーを、好適な緩衝液中に溶解し、その後、好適な還元剤(例えば、NaCNBH)を添加する。還元に続いて、結果として、アミン基含有小分子抗ヒスタミンのアミン基と、アルデヒドを担持するオリゴマーのカルボニル炭素との間にアミン結合が形成される。
【0106】
アミン基を担持する小分子抗ヒスタミンの複合体を調製するための他の手法においては、カルボン酸を担持するオリゴマーと、アミン基を担持する小分子抗ヒスタミンとを、典型的には結合試薬(例えば、DCC)の存在下で、結合させる。その結果、アミン基含有小分子抗ヒスタミンのアミン基と、カルボン酸を担持するオリゴマーのカルボニルとの間にアミド結合が形成される。
【0107】
化学式Iの抗ヒスタミンの例示的な複合体は、以下の構造を有するものを含み、
【0108】
【化9−1】

式中、(a)、Z、Ar、およびArのそれぞれは、式Iに関してすでに定義された通りであり、Xは、スペーサ部分であり、POLYは、水溶性の非ペプチドオリゴマーである。式I−Caに関して、好適な「POLY」としては、
【0109】
【化9−2】

が挙げられ、式中、(n)は1〜20である。また、式I−Caに関して、好適なXは、安定した共有結合(すなわち、「−」)である。
【0110】
抗ヒスタミンのさらなる例示的な複合体は、以下の構造を有するもの含み、
【0111】
【化10】

式中、(a)、Z、Ar、およびArのそれぞれは、式Iに関してすでに定義された通りであり、Xは、スペーサ部分であり、POLYは、水溶性の非ペプチドオリゴマーである。式I−Cbに関して、好適な「POLY」としては、(CHCHO)CHが挙げられ、式中、(n)は1〜20である。また、式I−Cbに関して、好適なXは、安定した共有結合(すなわち、「−」)である。
【0112】
抗ヒスタミンまたさらなる例示的な複合体は、以下の構造を有するものを含み、
【0113】
【化11−1】

式中、(a)、Z、Ar、およびArのそれぞれは、式Iに関してすでに定義された通りであり、Xは、スペーサ部分であり、POLYは、水溶性の非ペプチドオリゴマーである。式I−Ccに関して、好適な「POLY」としては、
【0114】
【化11−2】

が挙げられ、式中、(n)は1〜20である。また、式I−Ccに関して、好適なXは、安定した共有結合(すなわち、「−」)である。
【0115】
本発明の複合体は、低下した血液脳関門横断速度を呈し得る。さらに、複合体は、無修飾の親小分子薬物の生物活性の少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%以上を維持する。
【0116】
本明細書で開示される複合体の全ての範囲が記載されたと考えられるが、最適な大きさのオリゴマーは、以下の通り決定され得る。
【0117】
まず、単分散または二峰性の水溶性オリゴマーから得られたオリゴマーが、小分子薬物に複合化される。該薬物は、好ましくは、経口で生物学的に利用可能であり、それ自体では、無視できない血液脳関門横断速度を呈する。次に、複合体の血液脳関門を横断する能力は、適切なモデルを使用し、無修飾の親薬物のものと比較して、判定される。結果が好ましければ、つまり、例えば横断速度が有意に低下した場合、複合体の生物活性をさらに評価する。本発明による化合物は、親薬物に対して有意な程度の生物活性、すなわち、親薬物の生物活性の約30%を上回ることが好ましく、さらに好ましくは親薬物の生物活性の約50%を超えて維持する。
【0118】
上記のステップを、同一モノマー型であるが、異なる数の副単位を有するオリゴマーを使用して、1回以上繰り返し、その結果を比較する。
【0119】
次いで、血液脳関門を横断する能力が、非複合化小分子薬物と比較して低下する個々の複合体に関して、その経口生物学的利用能を評価する。これらの結果に基づき、つまり、異なる大きさのオリゴマーの複合体の、小分子内の所与の位置または場所における所与の小分子との比較に基づき、生物学的膜横断の低下、経口生物学的利用能、および生物活性の間の最適な均衡を有する複合体の提供において最も有効なオリゴマーの大きさを決定することができる。オリゴマーが小さいので、そのようなスクリーニングが可能になり、結果として生じた複合体の特性を有効に調製することが可能になる。オリゴマーの大きさを少しずつ、斬新的に変化させ、実験計画法を利用し、生物学的膜横断速度の低下、生物活性、および経口生物学的利用能の間の好ましい均衡を有する複合体を、効果的に識別することができる。場合によっては、本明細書に記載されるオリゴマーの結合が、薬物の生物学的利用能を実際に高めるために有効である。
【0120】
例えば、日常的に実験を使用する当業者は、最初に、異なる重量および官能基を有する一連のオリゴマーを調製し、次いで、患者に複合体を投与し、定期的な血液および/または尿の試料採取を行うことによって必要なクリアランスプロファイルを得て、経口生物学的利用能の改善に最適な分子の大きさおよび結合を決定することができる。試験を行った複合体ごとに、一連のクリアランスプロファイルが得られると、好適な複合体を識別することができる。
【0121】
また、動物モデル(齧歯類およびイヌ)を使用して、経口薬輸送を研究することができる。加えて、非体内方法には、齧歯類反転腸切除組織、およびCaco−2細胞単層組織培養モデルが挙げられる。加えて、実験の項は、経口薬輸送を試験するためのさらなる手法を提供する。これらのモデルは、経口薬の生物学的利用能の予測において有用である。
【0122】
式Iの抗ヒスタミン、または抗ヒスタミンと水溶性の非ペプチドポリマーとの複合体が、ヒスタミン−1受容体に対する結合活性を有するかどうかを判定するために、そのような化合物を試験することが可能である。この点に関しては、以下の実験の項に、ヒスタミン−1受容体への化合物の結合活性を判定するための説明を含む。
【0123】
抗ヒスタミン活性に関しては、式Iの抗ヒスタミン、または抗ヒスタミンと水溶性の非ペプチドポリマーとの複合体が、ヒスタミン−1受容体拮抗薬としての活性を有するかどうかを判定することが可能である。一手法において、体外モルモット回腸試験が有用である。手短に述べると、モルモット回腸の単離した部分を、10mlの組織浴中、定着部と変換器との間に張力(500mg)で固定し、30℃の温度で一定通気させ、マグネシウムを含まないタイロード液に浸す。変換器からの出力を増幅する。次いで、増幅された出力を、平床記録計(flat bed recorder)に供給する。収縮力が最大に至るまで、ヒスタミン濃度が段階的に上昇するように、測定された量のヒスタミンを組織浴に添加する。組織浴を洗い流し、新しい、対象となる化合物を含有するマグネシウムを含まないタイロード液で満たす。8分間、溶液を組織と接触したままにし、最大収縮が記録されるまで、測定された量のヒスタミンを添加する。試験化合物の濃度を上昇させて、該検定を繰り返し、最大収縮の50%をもたらすヒスタミンの用量を記録する。最大反応の50%を生成するために必要とされるヒスタミンの濃度を、拮抗薬の不在および存在下で比較することにより、用量比(DR)を計算することができる。Log DR−1をLog D(試験中の化合物の濃度)に対してグラフ化し、Log(DR−1)座標との交差点を、活性の測定値として取る(pA値)。
【0124】
本発明はまた、医薬品賦形剤と組み合わせた、本明細書において提供される複合体を含む医薬品も含む。概して、複合体自体は、固体の形態(例えば、沈殿物)となり、固体または液体のいずれかの形態となり得る好適な医薬品賦形剤と結合させることができる。
【0125】
例示的な賦形剤には、炭水化物、無機塩、抗菌剤、酸化防止剤、界面活性剤、緩衝液、酸、塩基およびそれらの組み合わせから成る群より選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
糖、アルジトール等の誘導体化糖、アルドン酸、エステル化糖、および/または糖ポリマー等の炭水化物が、賦形剤として存在し得る。具体的な炭水化物賦形剤には、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、ブドウ糖、D−マンノース、ソルボース等の単糖類、乳糖、ショ糖、トレハロース、セロビオース等の二糖類、ラフィノース、メレチトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン等の多糖類、およびマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)ピラノシルソルビトール、ミオイノシトール等のアルジトールが挙げられる。
【0127】
賦形剤には、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせ等の、無機塩または緩衝液も挙げられる。
【0128】
製剤は、微生物成長を妨げる、または阻止するための抗菌剤を含み得る。本発明に好適な抗菌剤の非限定的な例には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0129】
酸化防止剤は、調製時に存在させることもできる。酸化防止剤は、酸化の防止に使用され、それによって、複合体または製剤の別の成分の劣化を防止する。本発明に使用する好適な酸化防止剤には、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、プロピルガレート、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0130】
界面活性剤が、賦形剤として存在し得る。例示的な界面活性剤には、「Tween20」および「Tween80」等のポリソルベート、およびF68およびF88(どちらも、BASF,Mount Olive,New Jerseyから入手することができる)等のプルロニック、ソルビタンエステル、レシチンおよび別のホスファチジルコリン等のリン脂質、ホスファチジルエタノールアミン(しかし、好ましくは、リポソーム形態ではない)、脂肪酸、および脂肪酸エステル等の脂質、コレステロール等のステロイド、およびEDTA、亜鉛、および他のこのような好適なカチオン等のキレート薬が挙げられる。
【0131】
薬剤として許容される酸または塩基が、製剤中に賦形剤として存在し得る。使用できる酸の非限定的な例には、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびそれらの組み合わせから成る群より選択されるものが挙げられる。好適な塩基の例には、水酸化ナトリウム、ナトリウム酢酸塩、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、およびそれらの組み合わせからなる基から選択される塩基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
組成物中の複合体の量は、多数の要因に応じて変化するが、組成物が単位用量容器内に貯蔵される際に治療上有効用量であることが最適である。治療上有効用量は、どの量が臨床的に所望の終了点を実現するのかを決定するために、複合体の量を増加させて繰り返し投与することによって実験的に決定することができる。
【0133】
組成物中のあらゆる個々の賦形剤の量は、賦形剤の活性および組成物の特定の必要性に応じて変化する。一般的に、あらゆる個々の賦形剤の最適な量は、日常的実験を通じて、すなわち、種々の量の賦形剤(少量から多量まで)を含有する組成物を準備し、安定性および別のパラメータを検査し、次いで、いかなる重大な悪影響も生じずに最適な性能が得られる範囲を決定することによって決定される。
【0134】
しかしながら、概して、賦形剤は、約1〜約99重量%、好ましくは約5〜98重量%、より好ましくは約15〜95重量%の量、最も好ましくは30重量%未満の濃度の賦形剤として、組成物中に存在する。
【0135】
他の賦形剤とともに、これらの上述の医薬品賦形剤、および医薬組成物に関する一般的な教示は、「Remington:The Science & Practice of Pharmacy」,19th ed.,Williams & Williams(1995)、「Physician’s Desk Reference」,52nd ed.,Medical Economics,Montvale、NJ(1998)、およびKibbe,A.H.,Pharmaceutical Excipients,3rd Edition,American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.,2000に記載されている。
【0136】
医薬組成物は複数の形態を取ることができ、本発明は、この点に関しては制限されない。例示的な製剤は、錠剤、カプレット、カプセル、ゲルキャップ、トローチ、分散体、懸濁液、溶液、エリキシル、シロップ、菓子錠剤(lozenge)、経皮的パッチ、スプレー、坐剤、および粉末等の、経口投与に好適な形態であることが最も好ましい。
【0137】
経口投与形態は、経口で有効な複合体に好適であり、錠剤、カプレット、カプセル、ゲルキャップ、懸濁液、溶液、エリキシル、およびシロップが挙げられ、また、任意選択でカプセル化された、複数の顆粒、ビーズ、粉末、またはペレットを含むこともできる。このような投薬形態は、医薬製剤の分野で知られている、および関連する文書に記載されている従来の方法を使用して調製される。
【0138】
錠剤およびカプレットは、例えば、標準的な錠剤処理手順および装置を使用して製造することができる。本明細書に記載される複合体を含む錠剤またはカプレットを調製する時には、直接圧縮および粒状化技術が好ましい。複合体に加えて、錠剤およびカプレットは、概して、結合剤、潤滑液、崩壊剤、充填剤、安定剤、界面活性剤、着色剤等の、不活性の薬剤として許容される担体材料を含有する。結合剤は、粘着性を錠剤に与え、したがって、錠剤がそのままの状態を保つように使用される。好適な結合剤材料には、デンプン(トウモロコシデンプンおよびアルファ化デンプンを含む)、ゼラチン、糖(ショ糖、ブドウ糖、ブドウ糖、および乳糖を含む)、ポリエチレングリコール、ワックス、および天然および合成ガム、例えば、アカシアアルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、セルロースポリマー(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等を含む)、およびVeegumが挙げられるが、これらに限定されない。滑剤は、錠剤製造を容易にし、粉末の流れを促進して、圧力が減じられた時の粒子の冠着を防止するのに使用される。有用な滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、カルシウムステアリン酸塩、およびステアリン酸である。崩壊剤は、錠剤の崩壊を容易にするために使用され、概して、デンプン、クレイ、セルロース、アルギン、ガムまたは架橋ポリマーである。充填剤には、例えば、二酸化シリコン、二酸化チタン、アルミナ、タルク、カオリン、粉末セルロース、および微結晶性セルロース等の材料、ならびにマンニトール、尿素、ショ糖、乳糖、ブドウ糖、塩化ナトリウム、およびソルビトール等の可溶性材料が挙げられる。安定剤は、当技術分野において既知あるように、一例として、酸化的反応を含む薬物分解反応を抑制または妨害するのに使用される。
【0139】
カプセルは、好適な経口投与形態でもあり、その場合、複合体含有組成物は、液体またはゲル(例えば、ゲルキャップの場合)、または固体(顆粒、ビーズ、粉末、またはペレット等の粒状物を含む)の形態にカプセル化することができる。好適なカプセルには、硬質および軟質カプセルが挙げられ、概して、ゼラチン、デンプン、またはセルロース材料で作製される。ツーピースの硬質ゼラチンカプセルは、ゼラチン帯等で封止されることが好ましい。
【0140】
実質的に乾燥形態の非経口製剤(一般的に、粉末またはケーキの形態とすることができる、凍結乾燥物または沈殿物として)、および一般的に、液体であり、乾燥形態の非経口製剤を再構成するステップを必要とする、注射用に調製された製剤が挙げられる。注射の前に固体組成物を再構成するための好適な希釈剤の例には、注射用静菌水、5%ブドウ糖水、リン酸緩衝食塩水、リンガー溶液、生理食塩水、無菌水、脱イオン水、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0141】
ある場合では、非経口投与を対象とする組成物は、一般的にそれぞれ無菌である、非水性溶液、懸濁液、または乳濁液の形態を取ることができる。非水溶媒または媒体の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油またはコーン油等の植物油、ゼラチン、およびオレイン酸エチル等の、注射可能な有機エステルが挙げられる。
【0142】
本明細書に記載されている非経口製剤はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤等の補助剤を含有することもできる。製剤は、滅菌剤、バクテリアを保持したフィルタによる濾過、照射、または熱の導入によって無菌化される。
【0143】
複合体はまた、従来の経皮的パッチまたは別の経皮的送達系を使用して、皮膚を通じて投与することもでき、複合体は、皮膚に固定される薬物送達装置として機能する積層構造内に含有される。このような構造においては、複合体は、上部支持体層の下側にある層、すなわち「貯蔵器」内に収容される。積層構造は、単一の貯蔵器を収容することができ、または複数の貯蔵器を収容することができる。
【0144】
複合体はまた、直腸投与用の坐剤に処方することもできる。坐剤に関して、複合体は、コカバター(カカオ脂)、ポリエチレングリコール、グリセリン処理したゼラチン、脂肪酸、およびそれらの組み合わせ等の(例えば、室温では固体であるが、体温で軟化、融解、または溶解する賦形剤)坐剤基剤材料と混合される。坐剤は、例えば、坐剤基剤材料を融解させて融解物を形成するステップと、複合体を(坐剤基剤材料の融解前または後に)導入するステップと、溶解物を金型に注入するステップと、融解物を冷却し(例えば、融解物含有金型を室温環境中に置く)、それによって坐剤を形成するステップと、金型から坐剤を取り出すステップと、を行うことによって調製することができる(必ずしも示された順序ではない)。
【0145】
本発明はまた、本明細書において提供される複合体を、複合体による治療に応答する状態にある患者に投与するための方法も提供する。本方法は、概して、経口的に、治療上有効量の複合体(医薬品の一部として提供されることが好ましい)を投与するステップを含む。また、肺、鼻腔、口腔、直腸、舌下、経皮、非経口等の、別の投与様式も意図される。本明細書で使用される、「非経口」という用語は、皮下、静脈内、動脈内、腹膜内、心臓内、髄腔内、および筋肉内注射、ならびに注入注射を含む。
【0146】
非経口投与が利用される事例においては、上述したものよりも幾分大きい、分子量が約500〜30Kダルトンの(例えば、分子量が、500、1000、2000、2500、3000、5000、7500、10000、15000、20000、25000、30000、またはそれ以上である)オリゴマーを用いることが必要となり得る。
【0147】
本投与方法を使用して、特定の複合体の投与によって治す、または防止することができるあらゆる状態を治療し得る。当業者は、どの状態を特定の複合体が効果的に治療することができるのかを認識している。実際の用量は、対象の年齢、体重、および全般の状態、ならびに治療されている疾患の深刻さ、医療関係者の判断、および投与されている複合体に基づいて変化する。治療上有効量は、当業者に知られており、および/または関連する参考文書および文献に記載されている。概して、治療上有効量は、約0.001mg〜1000mg、好ましくは0.01mg/日〜750mg/日の用量、より好ましくは0.10mg/日〜500mg/日の用量の範囲である。
【0148】
あらゆる所与の複合体(同じく、医薬品の一部として提供されることが好ましい)の単位投与量は、臨床医の判断、患者の要求等に応じて、種々の投薬スケジュールで投与することができる。特定の投薬スケジュールは、当業者に知られており、または日常的方法を使用して実験的に決定することができる。例示的な投薬スケジュールには、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回、およびあらゆるそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。臨床的な終了点が達成されると、組成物の投薬は停止される。
【0149】
本発明の複合体を投与する1つの利点は、親薬物と比較して、初回通過代謝の減少が、達成され得ることである。このような結果は、腸を通過することによって大幅に代謝される、多数の経口投与薬物に好都合である。このようにして、複合体のクリアランスは、所望のクリアランス特性を提供するオリゴマー分子の大きさ、結合、および共有結合の位置を選択することによって調節することができる。当業者は、本明細書の教示に基づいて、オリゴマーの理想的な分子の大きさを決定することができる。本明細書に引用される全ての記事、本、特許、特許公報、および他の刊行物は、参照することによりその全体が組み込まれる。対応する非複合小薬物分子と比較した、複合体の初回通過代謝の好適な減少には、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%および少なくとも約90%、が挙げられる。
【0150】
したがって、本発明は、活性剤の代謝を減少させるための方法を提供する。該方法は、単分散または二峰性複合体を提供するステップであって、各複合体は、安定した結合によって水溶性オリゴマーに共有結合された小分子薬物由来の部分を含み、該複合体は、水溶性オリゴマーに結合されていない小分子薬物の代謝速度と比較して、代謝速度の減少を呈する、ステップと、複合体を患者に投与するステップと、を含む。典型的に、投与は、経口投与、経皮投与、口腔投与、経粘膜投与、膣内投与、直腸投与、非経口投与、および肺投与から成る群より選択される1つの投与形式を介して行われる。
【0151】
多くの種類の代謝(第1相代謝および第2相代謝の両者を含む)を減少させることができることは有用であるが、本複合体は、小分子薬物が、肝酵素(例えば、シトクロムP450アイソフォームのうちの1つ以上)によって、および/または1つ以上の腸酵素によって代謝されるときに特に有用である。
【0152】
本明細書に引用される全ての記事、本、特許、特許公報、および他の刊行物は、参照することによりその全体が組み込まれる。本明細書の教示と参照することにより組み込まれた教示との間に矛盾が生じた場合には、本明細書の教示の意味を優先する。
【実施例】
【0153】
実験
本発明は、ある種の好適な特定の実施形態に関して記載されているが、上述の説明およびそれに続く実施例は、例示することを意図したものであり、本発明の範囲を制限するものではないと理解されたい。本発明の範囲内の他の態様、利点、および変更は、本発明に関係する当業者に明らかである。
【0154】
別途明記しない限り、添付の実施例内に引用される全ての化学試薬は、市販のものである。PEG−mersの調製は、例えば、米国特許出願広報第2005/0136031号に記載されている。
【0155】
全てのH NMR(核磁気共鳴)データは、Brukerにより製造されたNMRスペクトロメータにより作成された(MHz≧300)。
【0156】
(実施例1)
ジフェンヒドラミン複合体の調製
mPEG−ジフェンヒドラミン複合体を合成するための一手法の概略を、以下のスキーム1に提供する。
【0157】
【化12】

mPEG−NHの合成
丸底フラスコの中で、2グラムのmPEG−OHを、1.7mLのトリエチレンアミンに添加した。次いで、ジクロロメタン(5mL)を添加した。溶液を氷浴に入れ、30分間撹拌させた。その後、塩化メタンスルホニル(1.08mL)を反応フラスコに添加した。反応物を、室温で終夜撹拌させた。脱イオン水(15mL)を添加し、反応混合物をさらに30分間撹拌した。分液漏斗を使用して、層を分離させた。有機層を0.1NのHCl(1×100mL)および水(1×100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で2時間乾燥させ、濾過し、減圧下で溶媒を除去した。フラスコの中で、塩化アンモニウム(18g)を水酸化アンモニウム(120mL)に添加した。固体を溶解させ、その時点で、mPEG−メシラートを添加し、48時間室温で撹拌させた。その後、塩化ナトリウム(18 g)をフラスコに添加し、溶解させた。生成物を、ジクロロメタン(3×100mL)によって抽出した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去し、油を得た。
【0158】
mPEG−NH−ジフェンヒドラミンの合成
ベンズヒドリル2−クロロエチルエーテル(2mmol)およびmPEG−NH(3mmol)を10mLのアセトニトリルで溶解し、次いで、該溶液に水(1mL)中の水酸化ナトリウム(2mmol)を添加した。その混合物を、100℃で16時間撹拌した。ジクロロメタン(200mL)を反応混合物に添加し、結果として生じた溶液を水(200mL×3)で洗浄した。有機相を乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(SiO:DCM/CHOH、20:1)により、または代替的に、CAN/HO(40M C−18RPカラム、Biotage,Inc.,Charlottesville,VA)を使用した、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーを使用して、精製した。所望のmPEG−NH−ジフェンヒドラミンの生成物を、約70%の収率で得、mPEG−N−(ジフェンヒドラミン)も、15%の収率で得た。
【0159】
mPEG−NH−ジフェンヒドラミン(3,n=3):H NMR(300MHz,CDCl):δ 7.34−7.25(m,10H)、5.39(s,1H)、3.64−3.61(m,10H)、3.55(m,2H)、3.37(s,3H)、2.93(t,2H)、2.89(t,2H)。LC−MS:374.3(MH)。
【0160】
mPEG−NH−ジフェンヒドラミン(3,n=4):H NMR(300MHz,CDCl):δ 7.34−7.25(m,10H)、5.39(s,1H)、3.64−3.61(m,14H)、3.55(m,2H)、3.37(s,3H)、2.93(t,2H)、2.89(t,2H)。LC−MS:418.4(MH)。
【0161】
mPEG−NH−ジフェンヒドラミン(3,n=5):H NMR(300MHz,CDCl):δ 7.34−7.25(m,10H)、5.39(s,1H)、3.64−3.61(m,18H)、3.55(m,2H)、3.37(s,3H)、2.93(t,2H)、2.89(t,2H)。LC−MS:461.3(MH)。
【0162】
mPEG−NH−ジフェンヒドラミン(3,n=6):H NMR(300MHz,CDCl):δ 7.34−7.25(m,10H)、5.41(s,1H)、3.68−3.61(m,22H)、3.55(m,2H)、3.38(s,3H)、2.99(t,2H)、2.94(t,2H)。LC−MS:計算値505.3、実測値506.4(MH)。
【0163】
mPEG−NH−ジフェンヒドラミン(3,n=7):H NMR(300MHz,CDCl):δ 7.37−7.25(m,10H)、5.41(s,1H)、3.68−3.63(m,26H)、3.57(m,2H)、3.39(s,3H)、2.95(t,2H)、2.91(t,2H)。LC−MS:計算値549.3、実測値550.5(MH)。
【0164】
mPEG−N−(ジフェンヒドラミン)(4,n=6):H NMR(300MHz,CDCl):δ 7.36−7.23(m,20H)、5.35(s,2H)、3.65−3.60(m,16H)、3.53(m,10H)、3.39(s,3H)、2.90(t,4H)、2.81(t,2H)。LC−MS:計算値715.4、実測値716.4(MH)。
【0165】
mPEG−N(CH)−ジフェンヒドラミン(5)の合成
mPEG−NH−ジフェンヒドラミン(0.25mmol)、パラホルムアルデヒド(0.5mmol)、および塩化亜鉛(0.5mmol)を、8mLのDCM中で溶解した。混合物を室温で1時間撹拌してから、水素化ホウ素ナトリウム(0.5mmol)を添加した。結果として生じた反応混合物を、室温で終夜撹拌した。ジクロロメタン(150mL)を反応混合物に添加し、結果として生じた溶液を、水(150mL×4)で洗浄した。合わせた有機相を乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。DCM/MeOH(12Mカラム、Biotage,Inc.,Charlottesville,VA)を使用して、粗製生成物をシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。定量的収率の生成物を得た。
【0166】
mPEG−N−ジフェンヒドラミン(5,n=3):H−NMR(300MHz,CDCl)、δ 7.35−7.19(m,10H,2Ph)、5.34(s,1H,Ph)、3.62−3.50(m,12H,6OC)、3.35(s,3H,OC)、2.76(t,J=5.4−5.7Hz,2H,NC)、2.68(t,J=5.1−5.4Hz,2H,NC)、2.34(s,3H,NC)、LC−MS:388.3(MH)。
【0167】
mPEG−N−ジフェンヒドラミン(5,n=4):H−NMR(300MHz,CDCl)、δ 7.35−7.19(m,10H,2Ph)、5.34(s,1H,Ph)、3.62−3.50(m,16H,8OC)、3.35(s,3H,OC)、2.76(t,J=5.4−5.7Hz,2H,NC)、2.68(t,J=5.1−5.4Hz,2H,NC)、2.34(s,3H,NC)、LC−MS:432.4(MH)。
【0168】
mPEG−N−ジフェンヒドラミン(5,n=5):H NMR(300MHz,CDCl):δ 7.38−7.25(m,10H)、5.39(s,1H)、3.67−3.61(m,20H)、3.40(s,3H)、2.80(t,2H)、2.72(t,2H)、2.38(s,3H)。LC−MS:計算値475.3、実測値476.4(MH)。
【0169】
mPEG−N−ジフェンヒドラミン(5,n=6):H NMR(300MHz,CDCl):δ 7.38−7.25(m,10H)、5.38(s,1H)、3.67−3.60(m,24H)、3.39(s,3H)、2.76(t,2H)、2.68(t,2H)、2.35(s,3H)。LC−MS:計算値519.3、実測値520.4(MH)。
【0170】
mPEG−N−ジフェンヒドラミン(5,n=7):H NMR(300MHz,CDCl):δ 7.38−7.25(m,10H)、5.38(s,1H)、3.67−3.60(m,28H)、3.39(s,3H)、2.76(t,2H)、2.68(t,2H)、2.35(s,3H)。LC−MS:計算値563.3、実測値564.5(MH)。
【0171】
スケールアップを目的としたジフェンヒドラミン複合体の合成。
【0172】
体内研究を支援するための上記のPEG−ジフェンヒドラミン複合体のスケールアップは、反応温度を120℃に上昇させる必要があり、特定のステップ後のクロマトグラフィーにより、低い全収率がもたらされ、無水条件の達成および持続が困難であったため、準最適であると見なされた。
【0173】
複合体を合成するための代替的手法において、以下に示す合成スキーム(スキーム2)に従って、市販のベンズヒドロールおよび2−ブロモエタノールを使用した。
【0174】
【化13】

この手法では、ベンズヒドロール(6)を、濃硫酸の存在下、90℃でトルエン中の2−ブロモエタノールと反応させ、2−ブロモエチルベンズヒドリルエーテル(7)を生じた。塩基としての炭酸カリウム、および相間移動触媒としての臭化テトラブチルアンモニウム(「TBAB」)の存在下、室温(「rt」)でTHF中のメチルアミンと反応させて、2−ブロモエチルベンズヒドリルエーテル(7)を(2−ベンズヒドロキシエチル)メチルアミン(8)に変換した。塩基としての炭酸カリウムの存在下、(2−ベンズヒドロキシエチル)メチルアミン(8)をmPEG−OMs(式中、「Ms」はメシラートである)と反応させて、最終生成物mPEG−N−ジフェンヒドラミン(5)を得た。
【0175】
ベンズヒドリル2−ブロモエチルエーテル(7)の合成
濃硫酸(1.7mL)を、室温で、トルエン(70mL)中の2−ブロモエタノール(1.042g、76.34mmol)の撹拌溶液に添加した。溶液を60℃に加温した。温めたトルエン(65mL)中のベンズヒドロール(9.623g、51.71mmol)を20分間にわたって滴下した。添加中、溶液が濁った。反応混合物を90℃で6.5時間維持し、室温に冷却し、その後、トルエン(50mL)で希釈した。混合物を氷水浴に注いだ。有機相を5%の含水重炭酸ナトリウム(100mL)、食塩水(2×200mL)で分離および洗浄し、NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。3〜8%のEtOAc/ヘキサン(40Mカラム、Biotage,Inc.,Charlottesville,VA)を使用して、結果として生じた残渣をシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、11.64gの生成物を77%の収率で得た。注:生成物は、減圧下で蒸留により精製することが可能である(沸点125〜165℃/2.5mmHg)。H−NMR(300MHz,CDCl)、δ 7.35−7.19(m,10H,2Ph)、5.38(s,1H,Ph)、3.77(t,J=6.0−6.3Hz,2H,OC)、3.51(t,J=6.0−6.3Hz,2H,CBr)。
【0176】
2−ベンズヒドロキシエチル}メチルアミン(8)の合成
メチルアミン(2.0MのTHF溶液、63mL、126mmol)中のベンズヒドリル2−ブロモエチルエーテル7(3.35g、11.50mmol)、炭酸カリウム(10.13g、72.57mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム(652mg、2.0mmol)の混合物を、室温で27.5時間撹拌した。水を添加して反応を停止させ、濃縮し、有機溶媒および余分なメチルアミンを除去した。残りの水溶液を、ジクロロメタン(4×30mL)によって抽出した。合わせた有機溶液を食塩水(2×40mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。3〜8%のMeOH/DCM(40Mカラム、20CV、Biotage,Inc.,Charlottesville,VA)を使用して、結果として生じた残渣をシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、生成物(1.93g)を69%の収率で生じた。H−NMR(300MHz,CDCl)、δ 7.35−7.19(m,10H,2Ph)、5.36(s,1H,Ph)、3.61(t,J=5.1Hz,2H,OC)、2.84(t,J=5.1Hz,2H,NC)、2.43(s,3H,NC)、LC−MS:242.1(MH)。
【0177】
mPEG−N−ジフェンヒドラミン(5,n=3)の精製
炭酸カリウム(441mg、3.16mmol)存在下のアセトニトリル(20mL)中の(2−ベンズヒドロキシエチル)メチルアミン8(280mg、1.16mmol)およびmPEG−OMs(252mg、1.04mmol、式中、「Ms」はメシラートを表す)の混合物を、室温で60分間撹拌し、次いで、23時間加熱還流した。混合物を室温に冷却し、濾過し、固体をDCMで洗浄した。収集した有機溶液を減圧下で濃縮し、0〜10%のMeOH/DCM(25Mカラム、20CV、Biotage,Inc.,Charlottesville,VA)を使用して、シリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製し、生成物(300mg)を74%の収率で得た。H−NMR(300MHz,CDCl)、δ 7.35−7.19(m,10H,2Ph)、5.34(s,1H,Ph)、3.62−3.50(m,12H,6OC)、3.35(s,3H,OC)、2.76(t,J=5.4−5.7Hz,2H,NC)、2.68(t,J=5.1−5.4Hz,2H,NC)、2.34(s,3H,NC)、LC−MS:388.3(MH)。
【0178】
mPEG−N−ジフェンヒドラミン(5,n=6)
炭酸カリウム(399mg、2.86mmol)の存在下のアセトニトリル(15mL)中の(2−ベンズヒドロキシエチル)メチルアミン8(228mg、0.95mmol)およびmPEG−OMs(410mg、1.10mmol)の混合物を、室温で90分間撹拌し、次いで、22.5時間加熱還流した。追加量のmPEG−OMs(100mg、0.27mmol)を添加した。混合物をさらに23時間加熱還流した。混合物を室温に冷却し、濾過し、固体をアセトニトリルおよびDCMで洗浄した。収集した有機溶液を減圧下で濃縮し、3〜10%のMeOH/DCM(25Mカラム、20CV、Biotage,Inc.,Charlottesville,VA)を使用して、シリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製し、生成物(308mg)を63%の収率で得た。H−NMR(300MHz,CDCl)、δ 7.35−7.18(m,10H,2Ph)、5.34(s,1H,Ph)、3.70−3.50(m,24H,12OC)、3.35(s,3H,OC)、2.76(t,J=5.7−6.0Hz,2H,NC)、2.68(t,J=5.7−6.0Hz,2H,NC)、2.34(s,3H,NC)、LC−MS:520.4(MH)。
【0179】
さらなる合成手法が使用され、その概略を、以下に「スキーム3」として提供する。
【0180】
【化14】

この手法では、触媒として塩化アンモニウムを使用し、活性化されたmPEG−Omsをメチルアミンと反応させることにより、mPEG−N−Me(9)の調製を行った。その後、mPEG−N−Meを市販のベンズヒドリル2−クロロエチルエーテル(1)と反応させて、2ステップのみで、スキーム1で概説した合成経路で得られたものと同程度の収率を有する、所望のmPEGn−N−ジフェンヒドラミン複合体を得た。
【0181】
mPEG−OMs(9)の合成
丸底フラスコの中で、mPEG−OH(4.00g)をトリエチルアミン(3.39mL)に添加した。次いで、ジクロロメタン(10mL)を添加し、溶液を氷浴に入れ、30分間撹拌させた。次いで、塩化メタンスルホニル(2.16mL)を反応フラスコに添加した。反応物を終夜撹拌させ、次いで、脱イオン水(15mL)を反応混合物に添加した。溶液を、さらに30分間撹拌した。次いで、ジクロロメタン(40mL)を添加した。分液漏斗を使用して、層を分離し、0.1NのHCl(100mL)を添加した。有機層を収集し、脱イオン水(3×100mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去し、油として所望のmPEG−Omsを得た。
【0182】
mPEG−N−CH(9)の合成
丸底フラスコの中で、塩化アンモニウム(30g)を水酸化アンモニウム(200mL)中に溶解した。次いで、上記で調製したmPEG−OMs(3.8g)を添加し、反応混合物を48時間撹拌させた。生成物を、ジクロロメタン(3×100mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をNaSO上で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。油として所望の生成物を得、2時間後分解が観察されたため、真空下には置かなかった。生成物をH NMRにより確認した。
【0183】
mPEG−N−ジフェンヒドラミン(5)の調製
ベンズヒドリル2−クロロエチルエーテル(1)をアセトニトリル(10mL)中に溶解し、mPEG−N−CH(9、370g)に添加した。次いで、水酸化ナトリウム/水(160mg)の溶液を、撹拌しながら添加した。反応混合物を終夜120℃で撹拌し、次いで、ジクロロメタン(400mL)を溶液に添加した。有機層を(3×300mL)、NaCl/HO(1×300mL)で洗浄し、NaSO上で2時間乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。MeOH/DCM(25Mカラム、Biotage,Inc.,Charlottesville,VA)を使用して、結果として生じた生成物をシリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、所望の生成物を生じた。
【0184】
mPEG−N−ジフェンヒドラミン(5,n=3):H−NMR(300MHz,CDCl)、δ 7.35−7.19(m,10H,2Ph)、5.34(s,1H,Ph)、3.62−3.50(m,12H,6OC)、3.35(s,3H,OC)、2.76(t,J=5.4−5.7Hz,2H,NC)、2.68(t,J=5.1−5.4Hz,2H,NC)、2.34(s,3H,NC)、LC−MS:388.3(MH)。
【0185】
mPEG−N−ジフェンヒドラミン(5,n=5):H NMR(300MHz,CDCl):δ 7.38−7.25(m,10H)、5.39(s,1H)、3.67−3.61(m,20H)、3.40(s,3H)、2.80(t,2H)、2.72(t,2H)、2.38(s,3H)。LC−MS:計算値475.3、実測値476.4(MH)。
【0186】
mPEG−N−ジフェンヒドラミン(5,n=6):H NMR(300MHz,CDCl):δ 7.38−7.25(m,10H)、5.38(s,1H)、3.67−3.60(m,24H)、3.39(s,3H)、2.76(t,2H)、2.68(t,2H)、2.35(s,3H)。LC−MS:計算値519.3、実測値520.4(MH)。
【0187】
mPEG−N−ジフェンヒドラミン(5,n=7):H NMR(300MHz,CDCl):δ 7.38−7.25(m,10H)、5.38(s,1H)、3.67−3.60(m,28H)、3.39(s,3H)、2.76(t,2H)、2.68(t,2H)、2.35(s,3H)。LC−MS:計算値563.3、実測値564.5(MH)。
【0188】
(実施例2)
ヒドロキシジン複合体の調製
mPEG−Br(n=1、3、5、6、7、8)の調製の概略図
【0189】
【化15】

mPEG−Brを使用してヒドロキシジン複合体を調製するための合成手順
mPEG(n=5)−メシラート:撹拌しながら、トリエチルアミン(5.7mL、40mmol)を、ジクロロメタン(20mL)中のmPEG(n=5)−OH(5.0g、20mmol)に添加した。N下、溶液を氷浴中で冷却し、2.5mLの塩化メタンスルホニル(32mmol)を30分間にわたって滴下した。次いで、室温で終夜溶液を撹拌した。40mLの水を反応混合物に添加し、溶液をCHCl(3×150mL)で抽出し、有機相を0.1NのHCl(3×80mL)および水(2×80mL)で洗浄した。NaSOで乾燥させ、減圧下で溶媒を除去した後、淡褐色の液体として、定量的収率の所望のmPEG(n=5)−メシラートを得た。H NMR(300Hz,CDCl):δ 4.41(m,2H)、3.80(m,2H)、3.71(m,14H)、3.58(m,2H)、3.41(s,3H)、3.11(s,3H)。
【0190】
mPEG(n=5)−Br:mPEG(n=5)−メシラート(6.51g、19.8mmol)およびBuNBr(12.80g、39.7mmol)をCHCN(50mL)中に溶解し、結果として生じた溶液を、N下、50℃で15時間撹拌した。室温に冷却後、CHCNを減圧下で除去し、赤色液体を得、これを150mLの水に溶解し、EtOAc(2×200mL)で抽出した。有機相を合わせ、水で洗浄し、NaSO上で乾燥させた。溶媒の除去後、赤色液体を得た(4.83g、77.4%)。H NMR(300Hz,CDCl):δ 3.82(t,2H)、3.67(m,14H)、3.51(m,2H)、3.40(s,3H)。
【0191】
上記の手順後、5以外の値のmPEG−Brを調製した。
【0192】
mPEG−ヒドロキシジン複合体(n=1、3、5、6、7、8)の一般的合成の概略
【0193】
【化16】

ヒドロキシジン二塩酸塩(1.0mmol)を6mLのDMFに溶解した。その溶液に、撹拌しながらNaH(5.0mmol)を添加した。20分後、mPEG−Br(3.0mmol)を溶液に添加し、次いで、室温で終夜撹拌した。ジクロロメタン(150mL)を添加し、沈殿した固体を濾過により収集した。有機濾液を水(100mL×2)で洗浄し、その後乾燥させた。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(SiO:DCM/メタノール20:1)で精製した。淡黄色油として、高収率および高純度の生成物を得た(収率:約90%、純度:99%超)。
【0194】
mPEG−ヒドロキシジン:H NMR(300Hz,CDCl):δ 7.40(m,4H)、7.28(m,5H)、4.23(s,1H)、3.65(m,8H)、3.57(m,2H)、3.40(s,3H)、2.64(t,2H)、2.61(b,4H)、2.57(b,4H)。
【0195】
mPEG−ヒドロキシジンH NMR(300Hz,CDCl):δ 7.38(m,4H)、7.28(m,5H)、4.20(s,1H)、3.64(m,18H)、3.42(s,3H)、2.64(t,2H)、2.61(b,4H)、2.57(b,4H)。LC−MS:計算値520.3、実測値521.3(M+H
mPEG−ヒドロキシジン:H NMR(300Hz,CDCl):δ 7.36(m,4H)、7.24(m,5H)、4.21(s,1H)、3.63(m,26H)、3.39(s,3H)、2.61(t,2H)、2.55(b,4H)、2.43(b,4H)。LC−MS:計算値:608.3、実測値609.3(M+H
mPEG−ヒドロキシジン:H NMR(300Hz,CDCl):δ 7.36(m,4H)、7.24(m,5H)、4.19(s,1H)、3.63(m,30H)、3.39(s,3H)、2.61(t,2H)、2.55(b,4H)、2.43(b,4H)。
【0196】
mPEG−ヒドロキシジン:H NMR(300Hz,CDCl):δ 7.38(m,4H)、7.28(m,5H)、4.20(s,1H)、3.64(m,34H)、3.42(s,3H)、2.64(t,2H)、2.61(b,4H)、2.57(b,4H)。LC−MS:計算値696.4、実測値697.4(M+H
mPEG−ヒドロキシジン:H NMR(300Hz,CDCl):δ 7.36(m,4H)、7.24(m,5H)、4.21(s,1H)、3.63(m,38H)、3.39(s,3H)、2.61(t,2H)、2.55(b,4H)、2.43(b,4H)。
【0197】
(実施例3)
セチリジン複合体の調製
mPEG−NHの調製の概略図を真下に提供する。
【0198】
【化17】

セチリジン複合体の調製の概略図を、真下に提供する。
【0199】
【化18】

mPEG−セチリジンを調製するための合成手順
セチリジン二塩酸塩(1.0mmol)を、8mLのDMF中に溶解した。DCC(1.1mmol)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(1.1mmol)を溶液に添加した。混合物を室温で終夜撹拌し、次いで、mPEG−NH(5mmol)を添加した。さらに5時間、反応を継続させた。沈殿した固体を濾過により除去し、減圧下で溶媒を除去した。結果として生じた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、約80%の収率で、99%超の純度の所望の生成物を得た(HPLC)。
【0200】
mPEG−セチリジン:δ 7.42(m,1H)、7.40(m,4H)、7.28(m,5H)、4.25(s,1H)、3.99(s,2H)、3.65(t,2H)、3.48(m,4H)、3.34(s,3H)、2.63(t,2H)、2.58(b,4H)、2.46(b,4H)、分析用HPLC:t=7.15分。
【0201】
mPEG−セチリジン:δ 7.45(m,1H)、7.35(m,4H)、7.25(m,5H)、4.22(s,1H)、3.96(s,2H)、3.59(m,10H)、3.53(m,2H)、3.46(m,2H)、3.37(s,3H)、2.60(t,2H)、2.58(b,4H)、2.43(b,4H)、分析用HPLC:t=7.22分。
【0202】
mPEG−セチリジン:δ 7.42(m,1H)、7.36(m,4H)、7.24(m,5H)、4.23(s,1H)、3.96(s,2H)、3.60(m,20H)、3.46(m,2H)、3.38(s,3H)、2.60(t,2H)、2.55(b,4H)、2.43(b,4H)、分析用HPLC:t=7.28分。
【0203】
mPEG−セチリジン:δ 7.45(m,1H)、7.35(m,4H)、7.25(m,5H)、4.22(s,1H)、3.96(s,2H)、3.59(m,28H)、3.46(m,2H)、3.37(s,3H)、2.60(t,2H)、2.58(b,4H)、2.43(b,4H)。
【0204】
(実施例4)
血液脳関門(「BBB」)検定
BBBモデル
原位置脳灌流法は、無傷のラット脳を利用し、通常の生理学的条件下での、BBBを横断する薬物透過性の判定を可能にした。また、該モデルにより、担体介在輸送と受動拡散の比較等の輸送機構の研究が可能になった。灌流は、単一時点法を使用して行った。注入ポンプにより低速で(20mL/分)、試験化合物を含有する灌流液体(灌流液)を、左外頚動脈を介してラットに注入した。灌流流速は、通常の生理学的血圧値(80〜120mmHg)で完全に流量を脳へ送るように設定した。灌流時間は30秒であった。灌流の直後、薬物を含まない灌流液で脳血管系をさらに30秒間灌流し、残留薬物を除去した。ポンプを止め、その直後に頭蓋骨から脳を除去した。まず、各ラットからの左脳試料の重さを量り、次いで、ポリトロンホモジナイザーを使用して均質化した。均質化のために、各ラット脳に、4mLの20%のメタノールを添加した。均質化後、ホモジネートの総量を測定し、記録した。
【0205】
測定された量のホモジネートを有機溶媒で希釈し、遠心分離した。上澄みを除去し、窒素気流中で蒸発させ、再構成し、LC/MS/MSにより分析した。薬物を空の(すなわち薬物を含まない)脳ホモジネートに加えることにより生成された較正曲線に対して、脳ホモジネート中の薬物濃度の定量化を行った。脳ホモジネート中の薬物濃度の分析を3回繰り返して行った。
【0206】
各灌流溶液は、アテノロール(標的濃度、50μM)、アンチピリン(標的濃度、5μM)、および20μMの標的濃度の試験化合物(上記の列挙から)を含有した。
【0207】
【表1】

【0208】
【表2−1】

【0209】
【表2−2】

(実施例5)
生物学的利用能検定
いくつかのヒドロキシジン複合体をラットに経口投与し、その後、血漿を定期的に試験し、血漿中に存在する複合体(または対照)の量を測定した。Zorbax XDB C−8カラム2.1×50mm、1.8μmの粒度、150μL/分で、LC−MS/MSを行った。使用した緩衝液は、0.1%のギ酸、20%のアセトニトリルとして「A」、0.1%のギ酸、70%のアセトニトリルとして「B」であり、勾配溶離は、2.5分間に0%〜100%Bであった。検出は、ヒドロキシジン、セチリジン、PEG−ヒドロキシジン、PEG−ヒドロキシジン、PEG−ヒドロキシジンに対応する389−201m/z、521−201m/z、609−201m/z、および697−201m/zに設定したMRM−質量分析計で達成した。図1に結果を示す。
【0210】
(実施例6)
遊離薬物検定(ヒドロキシジン)
いくつかのヒドロキシジン複合体をラットに経口投与し、その後、血漿を定期的に試験し、血漿中に存在する遊離ヒドロキシジン(または対照)の量を測定した。実施例5に記載の通り、LC−MS/MSを行った。図2に結果を示す。
【0211】
(実施例7)
遊離薬物検定(セチリジン)
いくつかのセチリジン複合体をラットに経口投与し、その後、血漿を定期的に試験し、血漿中に存在する遊離セチリジン(または対照)の量を測定した。実施例5に記載の通り、LC−MS/MSを行った。図3に結果を示す。
【0212】
(実施例8)
代謝検定−体外
NADPH再生緩衝液の存在下、いくつかのヒドロキシジン複合体を、体外でラット肝臓酵素と組み合わせた。複合体(または対象となる対照)を添加し、37℃で培養した。PAPSおよびUDPGA(スルホン化およびグルクロン酸抱合第II相反応に必要な物質)は反応系に添加されなかったため、第I相代謝が確認された。図4に結果を示す。
【0213】
(実施例9)
代謝検定−体内
雌のSprague−Dawleyラット(合計16匹のラット、それぞれ180g)が、5mg/kgのヒドロキシジン用量を得るように、(1)ヒドロキシジン、(2)PEG−ヒドロキシジン、(3)PEG−ヒドロキシジン、および(4)PEG−ヒドロキシジンを経口投与され、1時間、2時間、および4時間後血液試料を採取した。試料を遠心分離し、血漿を収集し、分析に使用する時まで、−80℃で凍結した。図5に結果を示す。
【0214】
(実施例10)
ヒスタミン受容体における受容体結合
Novascreen目録番号100−0456(Caliper Life Sciences,Hopkinton,MA)に関する手順に従い、ヒト組換えHヒスタミン受容体を使用して、受容体結合研究を行った。高親和性リガンド[H]ピリラミン(Kd 1.0nM)の、10μMのトリプロリジンを使用して判定した非特異的結合との置換を使用した、競合阻害研究を使用した。本研究は、各データ点につき二重試料を使用して行った(n=2)。種々のPEG−ジフェンヒドラミン複合体の結合親和性(Ki)を、以下の表IIIに提供する。種々のPEG−ジフェンヒドラミン複合体で検定を繰り返し、この繰り返された検定で試験された化合物には、表IIIに星印を付けた。検定の両方の実行において試験された化合物について得られた相対結合親和性は、同一範囲内であった。追加の結果を、図6から8に提供する。
【0215】
【表3】

(実施例11)
、H、M、M、およびM受容体における受容体結合
他の受容体におけるPEG−ジフェンヒドラミンの結合親和性を判定するために、Novascreen目録番号100−0456、100−0086、100−0038、100−0039、および100−0040(Caliper Life Sciences,Hopkinton,MA)に関連する手順に従い、それぞれHヒスタミン受容体、Hヒスタミン受容体、Mムスカリン受容体、Mムスカリン受容体、およびMムスカリン受容体におけるPEG−6−DPH[mPEG(6)−N−ジフェンヒドラミン]を使用して、結合研究を行った。各データ点につき3重試料(n=3)を用いて、受容体(N=1)につき1回の実験を行った。これらの実験の詳細を、以下の表IVに示す。
【0216】
【表4】

これらの実験の結果を、以下の表Vに要約する。
【0217】
【表5−1】

【0218】
【表5−2】

結果は、PEG−6−DPHが、Hよりも高いH選択性を保持することを示している(H受容体への特異結合は観察されなかったため)。ムスカリン受容体については、Mサブタイプにおける特異結合が観察され、ジフェンヒドラミンのものに近い親和性(低μM)であった。これらの実験を考慮すると、HおよびM受容体における結合についての値には、信頼性があると考えられる。H、M、およびM受容体について計算された価は、完全な結合曲線を生成するには低すぎたリガンドの濃度を使用した実験計画に基づいており、概算である。
【0219】
(実施例12)
代謝
ヒト肝細胞での培養後に残る、未代謝の親化合物の量を検査することにより、ヒト肝細胞におけるPEG−ジフェンヒドラミン複合体の代謝的安定性を判定した。本実験計画は、全ての複合体が、等しく細胞膜透過性ではない可能性を明らかにする。代謝酵素の細胞内位置は、薬物がまず細胞に進入することが必要である。ミクロソームではなく全肝細胞を使用した代謝的安定性実験は、このパラメータを含み、これらの化合物の全体的な代謝的安定性を理解するために最も適切なシステムを提供する。
【0220】
表VIに記載した半減期は、PEG複合化が、肝細胞におけるジフェンヒドラミンの代謝速度を低下させないことを実証している。親分子(n=1)の最初の速度損失に基づき、化合物間で比較的わずかな差異しか観察されず、mPEG(5)−N−ジフェンヒドラミンは、ジフェンヒドラミン自体よりも中程度に速い代謝分解を示している。
【0221】
【表6】

ジフェンヒドラミン対PEG(6)−N−ジフェンヒドラミンの、肝細胞代謝における種差異が明らかであることが観察された。ヒトおよびイヌの両方のモデルにおいて、PEG(6)−N−ジフェンヒドラミンの肝固有クリアランスは、親ジフェンヒドラミンのものよりも速い。しかしながら、ラット肝細胞培養においては、PEG(6)−N−ジフェンヒドラミンは、ジフェンヒドラミンよりも遅い代謝分解を示す。
【0222】
(実施例13)
タンパク質結合
ジフェンヒドラミンは、公開された体外研究において、心臓のhERGチャネルとの相互作用を介し、電気生理学的効果を生成することが示されている。したがって、PEG(6)−N−ジフェンヒドラミンおよびPEG(7)−N−ジフェンヒドラミン複合体を、HEK細胞において安定的に発現されたクローン化hERGチャネルと相互作用する、それらの能力について評価した。hERG電流の抑制を、電気生理学的技術を使用して測定し、PEG−ジフェンヒドラミン複合体についてのIC50値を、濃度反応曲線から計算した。
【0223】
ジフェンヒドラミンおよびPEG(6)−N−ジフェンヒドラミンは、それぞれ3.18μMおよび3.79μMのIC50値を有する、hERGチャネルの等電位抑制物質であった。PEG(7)−N−ジフェンヒドラミンのIC50は、4倍低かった(12.99μM)。これらのデータは、PEG−ジフェンヒドラミン複合体が、親ジフェンヒドラミン分子のhERGチャネル抑制性質を保持することを示唆している。
【0224】
(実施例14)
体外安全性薬理学
本研究の目的は、ラット心臓の自然発生的拍動における、電気生理学的(PQ、QRS、RR、QT、QTc)、および機械的(dLVP/dtmaxおよびdLVP/dtmin)性質に対する、複合体濃度の上昇の潜在的効果を判定することであった。全ての生理的パラメータ(PQ、QRS、RR、QT、dLVP/dtmax、dLVP/dtmin)の測定を、洞律動を表す拍動の間隔から、EMKA ECG Autoソフトウェア(QTc[Fridericia]を計算した)を使用して、手作業で行った。被験物質を受けた全ての動物の平均を、全ての濃度について計算した。全ての動物に加えて陰性対照動物の平均値(±標準誤差)を、全てのパラメータについて濃度に対してプロットした。全てのパラメータについて、濃度に対して陽性対照をプロットした。全てのパラメータの値から媒体の値を差し引いたものを、基準調整してプロットした。
【0225】
該プロトコルは、キニジンの薬理学的性質から予想された様式で、陽性対照に反応した。PEG(5)−N−ジフェンヒドラミンは、キニジンと同様、ジフェンヒドラミンよりも大きな負の変伝導性(PQおよびQRSの長期化)を表した。
PEG(5)−N−ジフェンヒドラミンは、10−5Mにおいて、他の2つの複合体よりも大きい心臓減速度を生成した。PEG(5)−N−ジフェンヒドラミンは、ジフェンヒドラミンまたはキニジンよりもわずかに多く、心室再分極(QTおよびQTc)を遅らせると思われた。PEG(5)−N−ジフェンヒドラミンは、キニジンまたはジフェンヒドラミンと比較して、10−5Mにおいて著しく正の変力性および弛緩性を発揮した。PEG(5)−N−ジフェンヒドラミンは、ジフェンヒドラミンまたはキニジンのいずれもが示さない、冠状動脈平滑筋に対する血管拡張効果を有すると思われた。人間により類似したイオンチャネルを有するプロトコル(例えばモルモット)に対する電気生理学的効果を、さらに比較することが重要である。
【0226】
複合体濃度の上昇の潜在的効果を判定する目的で、モルモット研究を行った。全ての生理的パラメータ(PQ、QRS、RR、QT、dLVP/dtmax、dLVP/dtmin)の測定を、洞律動を表す拍動の間隔から、EMKA ECG Autoソフトウェア(QTc[Fridericia]を計算した)を使用して、手作業で行った。被験物質を受けた全ての動物の平均を、全ての濃度について計算した。全ての動物に加えて陰性対照動物の平均値を、全てのパラメータについて濃度に対してプロットした。全てのパラメータについて、濃度に対して陽性対照をプロットした。全てのパラメータの値から媒体の値を差し引いたものを、基準調整してプロットした。さらに、モルモット心臓における、電気生理学的および機械的パラメータへの、化合物(10−8、10−7、10−6、10−5、および10−4M)および媒体(クレブス)濃度の上昇の効果を行った。
【0227】
ラットおよびモルモットの両方の調製物が、同様に応答した。試験調整物の、変時性、変伝導性、変力性、および弛緩性における変化への応答の有効性は、薬理学が既知の化合物、キニジンへの応答により支持される。概して、心拍が下がり、QRSおよびPQ期間は、10−5Mの濃度のPEG(5)−N−ジフェンヒドラミンについてのみ延び、QTcではなくQTが、飛躍的に長期化したキニジンを除き、全ての被験物質についてわずかに長期化し、心筋収縮能および弛緩性の両方は、共に10−8Mの濃度についてのみ上昇した後、用量応答的に減少した。冠動脈灌流は、飛躍的に増加したPEG(5)−N−ジフェンヒドラミンを除き、わずかに減少したか、または全く減少しなかったかのいずれかであった。全ての被験物質について、10−4Mの濃度が致命的であった。全ての変化は、被験物質の、特定のイオンチャネル調節カルシウム(変時性、変力性、弛緩性、および変伝導性について)およびカリウム動態(変時性および心室再分極について)への効果に起因し得る。
【0228】
(実施例15)
末梢的有効性
膨疹および発赤実験
PEG−ジフェンヒドラミンの体内活性を測定するために、ラットにおいて膨疹および発赤(紅斑)実験を行った。ヒスタミンの皮内注射は、ヒスタミン誘発性マスト細胞脱顆粒の結果、「膨疹および発赤」応答を皮膚に発生させるが、それは、有効な抗ヒスタミンでの治療により防止される。
【0229】
0.01、0.03、0.1、および0.3mg/kgの用量のジフェンヒドラミン(1条件につきn=4)、0.03、0.1、および0.3mg/kgの用量のmPEG(6)−N−ジフェンヒドラミン(1条件につきn=4)、および生理食塩水対照(n=8)を使用した。全ての値は、「ジフェンヒドラミン当量」濃度、すなわち、モル当量を表す。
【0230】
最初の動物には、1mg/kgのmPEG(6)−N−ジフェンヒドラミンを投与し、痙攣を起して死亡した。その後、試験される最高用量を、全ての動物について、0.3mg/kgに引き下げた。投与スキームの詳細を、以下の表VIIに提供する。
【0231】
【表7】

実験の詳細
PBS中の1mg/mL(3.26mM)のヒスタミン2リン酸塩からヒスタミンを調製し、被験物質の尾静脈への静脈注射後、皮内注射により2.5分間投与した。注射の5、10、20、30、および60分後、ノギスを使用して膨疹の大きさを測定し、面積を計算した(幅×長さ、mm)。発赤応答を眼で測定し、1(最も深刻でない)〜5(最も重症な)の採点システムで採点した。
【0232】
結果:発赤応答
mPEG(6)−N−ジフェンヒドラミンがヒスタミン効果を減少させるかどうかを判定するために、発赤応答の目視採点を行った。生理食塩水処置は、10分で平均最大値に至り、10〜30分の間で徐々に収まり、60分までに無くなる発赤を生成するが、最高濃度のジフェンヒドラミンおよびmPEG(6)−N−ジフェンヒドラミンは、検出可能な発赤を生成しない。(注:mPEG(6)−N−ジフェンヒドラミンについて、5分時点で何らかの最小応答、または「雑音」が観察された)。薬物濃度が低下するにつれて、保護効果が衰え始める。したがって、0.03mg/kgのmPEG(6)−N−ジフェンヒドラミンで、発赤応答が戻り始め、その一方、同一濃度のジフェンヒドラミンは、まだ応答を効果的に抑える。しかしながら、0.01mg/kgのジフェンヒドラミンで、ジフェンヒドラミンの保護効果が減少し始め、それにつれて発赤応答が記録される。
【0233】
これらのデータは、ジフェンヒドラミンおよびmPEG(6)−N−ジフェンヒドラミンの両方が、膨疹応答を抑え、また、抗ヒスタミン効果が、ジフェンヒドラミンが依然として有効である濃度(0.03mg/kg)で失われるため、mPEG(6)−N−ジフェンヒドラミンがジフェンヒドラミンよりもわずかに弱いことを示唆している。
【0234】
結果:膨疹応答
試験される全ての濃度において、膨疹が生成され、その大きさは約30分で安定期に到達した。ジフェンヒドラミンは、この膨疹の大きさにおいて、明らかな用量依存的な減少を生成した。高用量のmPEG(6)−N−ジフェンヒドラミン(0.1、0.3mg/kg)により、対照注射と比較して膨疹の大きさを減少させたが、この効果の程度は、同一の濃度のジフェンヒドラミンついてよりも低かった。mPEG(6)−N−ジフェンヒドラミン(0.03mg/kg)は、膨疹の大きさにおける検出可能な変化を生成しなかった。
【0235】
20分時点からの用量応答効果を、「膨疹応答における下落率」を使用して分析すると、該効果は、0.1〜0.3mg/kgの用量範囲で、ジフェンヒドラミンが膨疹の大きさにおいて約40%の変化をもたらすことを示す。この同一の用量範囲で、mPEG(6)−N−ジフェンヒドラミンは、膨疹応答において約25%の変化をもたらし、曲線の形状は、これが最大ではないことを示唆している。
【0236】
さらなる研究
静脈内注入を介して投与された際の、ジフェンヒドラミン、PEG(5)−N−ジフェンヒドラミン、およびPEG(7)−N−ジフェンヒドラミンの抗ヒスタミン効果を比較する目的で、さらなる研究を行った。手短に述べると、ラットは、内頸静脈カテーテルを介して60分間、持続注入を受けた。注入の最後の20分(61〜80分)にかけて、安定した状態を維持するために、注入速度を変更した。注入時間の開始から60分後、4回のヒスタミンの皮間(ID)注射(生理食塩水中200mg/mL、10μg/ラットで50μL用量)をラットに行った。さらに、それぞれのラットに、内頸静脈カテーテルを介してトリパンブルーを注射した(生理食塩水中0.4%、0.5mL容量)。ヒスタミン注射の20分後、ノギス(Fowler Sylvac Ultra−Cal Mark III)を使用して、膨疹および発赤(青い部分の直径)を測定した。ヒスタミン注射部位の青い部分の直径の、2つの測定値を、互いに90度の個所でとった。膨疹反応の隆起の評価は、0、1、および2の尺度で評価した。ジフェンヒドラミンの定量化のために、心穿刺を介して収集した血液試料を使用した。血液試料を、K2 EDTAを含有するバキュテナー管に入れた。ラットを失血させ、脳を氷冷生理食塩水中ですすぎ、アルミ箔に包み、凍結させた。薬物含量について、脳および血漿試料を分析した。
【0237】
膨疹の大きさにおける用量依存的な減少が、ジフェンヒドラミンについて、試験されたヒスタミンの全ての濃度において、観察された。10μg〜30μgの間のヒスタミンでは、膨疹面積における有意な変化は検出されていない。したがって、ジフェンヒドラミンは、ラットにおける膨疹および発赤において、良好な用量応答を提供し、EC50は約400ng/mL標的血漿濃度である(すなわち、約1.6mM)(1〜3日目のデータに基づき)。PEG(5)−N−ジフェンヒドラミンは有効性を示したが、同一濃度において、毒性が生じた。PEG(5)−N−ジフェンヒドラミンは、ジフェンヒドラミン当量標的血漿濃度での有効性に基づき、ジフェンヒドラミンより10倍以上弱い。PEG(7)−N−ジフェンヒドラミンは、試験された濃度範囲において、有効性を示さなかった。
【0238】
(実施例16)
経口生物学的利用能
ラットにおける経口生物学的利用能を、以下の4つの化合物の静注および経口投与後の、薬物動態プロファイル(血漿濃度対時間)の比較により、判定した。DPH(ジフェンヒドラミン)、PEG−5−DPH[mPEG(5)−N−ジフェンヒドラミン]、PEG−6−DPH[mPEG(6)−N−ジフェンヒドラミン]、およびPEG−7−DPH[mPEG(7)−N−ジフェンヒドラミン]。静注投与については、1mg/kgのDPH当量を使用した。経口投与については、5mg/kgのDPH当量を使用した。
【0239】
投与液の調製
最終静注用量(1mg/kg)が1.03μM(0.3mg/mLのDPH)、最終経口用量(5mg/kg)が5.14μM(1.5mg/mLのDPH)となるように、モル当量用量の4つの全ての化合物を投与した。水性緩衝液中のPEG−DPH複合体の溶解性が限られるため、2%のエタノール中で試料を調製した。最終用量は、静注投与については0.30〜0.58mg、経口投与については1.50〜2.90mgの範囲であった。表VIIIおよびIXは、化合物の投与パラメータを列挙する。
【0240】
【表8】

【0241】
【表9】

実験の詳細
動物に、大腿静脈へのボーラス注射(静注)または強制経口(経口)により3重に投与し、血漿試料の調製のために、適切な時点で全ての動物の頚動脈から、全血を収集した。血漿中の被験物質の定量化を、LC−MS/MSにより行った。
【0242】
IVおよび経口投与後の血漿濃度−時間プロファイルを、図14および15に表示する。対応する薬物動態パラメータを、以下の表XおよびXIに示す。
【0243】
結果:IV投与
ラットにおける、静注投与後のPEG−N−DPH複合体の薬物動態パラメータを、表Xに提供する。ラットにおける、静注投与後のDPHおよびPEG−N−DPH複合体の血漿濃度−時間プロファイルを、図9に提供する。
【0244】
【表10−1】

【0245】
【表10−2】

ラットにおける静注投与後の薬物動態プロファイルのうちの最も注目すべき特徴は、PEG−DPH複合体の、親DPHと比較して遅いクリアランス速度(CL)および低い分布量(Vss)である。親ジフェンヒドラミン化合物と比較して、PEG−DPH複合体では、クリアランス速度が2倍の減少を示し、分布量値は4倍低く、血漿中により長期間残るより高い濃度をもたらす。
【0246】
結果:経口投与
ラットにおける経口投与後のPEG−N−DPH複合体の薬物動態パラメータを、表XIに提供する。ラットにおける経口投与後のDPHおよびPEG−N−DPH複合体の血漿濃度−時間プロファイルを、図10に提供する。
【0247】
【表11】

ラットにおける経口生物学的利用能は、4つの全ての化合物に対して非常に低く、齧歯類における経口投与が実用的にはならないことを示した(DPHと比較して、PEG−N−DPH複合体について、いくらかの生物学的利用能における増加が観察されたが)。ジフェンヒドラミンについてのヒトの経口生物学的利用能は、約72%であるため、これは、齧歯類が、ヒトにおけるこれらの複合体の薬物動態挙動について、限定的なモデルとしかならず、確実に予測的でない可能性があることを示唆している。
【0248】
(実施例17)
血液脳関門(「BBB」)浸透性
PEGへの複合化後のDPH(ジフェンヒドラミン)の脳分布への効果を、4つの化合物、DPH(ジフェンヒドラミン)、PEG−5−DPH[mPEG(5)−N−ジフェンヒドラミン]、PEG−6−DPH[mPEG(6)−N−ジフェンヒドラミン]、およびPEG−7−DPH[mPEG(7)−N−ジフェンヒドラミン]の脳:血漿濃度比を比較することにより、判定した。ラットの尾静脈への静脈内注射後、4つの化合物を試験した。2%のエタノール中で(上述の通り)、以下の表XIIに示す濃度で、PEG−DPH溶液を調製した。
【0249】
【表12】

ジフェンヒドラミンモル用量は、PEG−DPH複合体の2倍であったため、化合物は、したがって、等モル量では投与されなかった。この事を、それに続く計算で考慮した。
【0250】
1匹のラットが、試験投与後も引き続き生存可能であることを確認した後、ラット(1条件につき4匹)に尾静脈注射により投与し、1時間後に殺処理した。心穿刺により血液を収集し、脳組織を収集した。血漿を調製し、LC−MS/MSによって薬物含量の定量化が可能なように、脳組織を均質化した。それぞれの化合物の濃度を測定し、それに合わせて脳:血漿比を計算した。
【0251】
結果
結果は、ジフェンヒドラミンと比較して、PEG−DPH誘導体の脳:血漿比の著しい低減を示す。ジフェンヒドラミンは、21:1の脳:血漿比を示し、他の者により報告されたものと良好に一致している。これは、尾静脈注射後、殺処理のために選択された1時間時点において、ジフェンヒドラミンが組織全体にわたり平衡分布に達したことを示唆している。
【0252】
ジフェンヒドラミンとは対照的に、全ての3つのPEG−DPH複合体は、0.2:1、すなわち、脳において、血漿中よりも5倍低い濃度を示している。
【0253】
したがって、ジフェンヒドラミンと比較して、PEG−DPH複合体は105倍低い脳浸透性を有し、有意な程度で中枢神経系が除外されることを示唆している。脳および血漿におけるジフェンヒドラミンおよびPEG−DPH複合体の定量化を、表XIIIに提供する。
【0254】
【表13】

薬物動態実験は、PEG複合化が、ジフェンヒドラミンの生体内分布において、有意な変化をもたらすことを示している。とりわけ、親分子よりも100倍低い脳浸透性を有する、脳からの目覚しい除外が観察されている。加えて、PEG複合体は、3〜4倍低い分布量を示し、それらがさほど組織分布を受けず、比較的血漿区画に集中することを示唆している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有する化合物であって、
【化19】

式中、
(a)は、0または1のいずれかであり、
Zは、N、CH、およびC(CH)から成る群より選択され、
(i)Arは、芳香族含有部分であり、Arは、芳香族含有部分であるか、あるいは(ii)
【化20】

は、組み合わされて、芳香族含有部分を形成するかのいずれかであり、
Xは、スペーサ部分であり、
POLYは、水溶性非ペプチドオリゴマーである、化合物。


【請求項2】
以下の構造を有する化合物であって、
【化21】

式中、
(a)は、0または1のいずれかであり、
Zは、N、CH、およびC(CH)から成る群より選択され、
(i)Arは、芳香族含有部分であり、Arは、芳香族含有部分であるか、あるいは(ii)
【化22】

は、組み合わされて、芳香族含有部分を形成するかのいずれかであり、
Xは、スペーサ部分であり、
POLYは、水溶性非ペプチドオリゴマーである、化合物。

【請求項3】
以下の構造を有する化合物であって、
【化23】

式中、
(a)は、0または1のいずれかであり、
Zは、N、CH、およびC(CH)から成る群より選択され、
(i)Arは、芳香族含有部分であり、Arは、芳香族含有部分であるか、あるいは(ii)
【化24】

は、組み合わされて、芳香族含有部分を形成するかのいずれかであり、
POLYは、水溶性非ペプチドオリゴマーである、化合物。

【請求項4】
a)は、0である、請求項1、2、および3のうちのいずれか1項に記載の化合物。

【請求項5】
a)は、1である、請求項1、2、および3のうちのいずれか1項に記載の化合物。

【請求項6】
Arは、芳香族含有部分であり、Arは、芳香族含有部分である、請求項1、2、および3のうちのいずれか1項に記載の化合物。

【請求項7】
ArおよびArのそれぞれは、
【化25】

から成る群より独立して選択される、請求項6に記載の化合物。

【請求項8】
【化26】

は、組み合わされて、芳香族含有部分を形成する、請求項1、2、および3のうちのいずれか1項に記載の化合物。

【請求項9】
前記芳香族含有部分は、
【化27】

である、請求項8に記載の化合物。

【請求項10】
前記水溶性非ペプチドオリゴマーは、ポリ(アルキレンオキシド)である、請求項1、2、および3のうちのいずれか1項に記載の化合物。

【請求項11】
前記ポリ(アルキレンオキシド)は、ポリ(エチレンオキシド)である、請求項10に記載の化合物。

【請求項12】
前記水溶性非ペプチドオリゴマーは、1〜30個のモノマーを有する、請求項1、2、および3のうちのいずれか1項に記載の化合物。

【請求項13】
前記水溶性非ペプチドオリゴマーは、1〜10個のモノマーを有する、請求項12に記載の化合物。

【請求項14】
前記ポリ(アルキレンオキシド)は、アルコキシまたはヒドロキシの末端封止部分を含む、請求項10に記載の化合物。

【請求項15】
前記スペーサ部分は、安定した結合を提供する、請求項1、2、および3のうちのいずれか1項に記載の化合物。

【請求項16】
前記スペーサ部分は、分解性結合を提供する、請求項1、2、および3のうちのいずれか1項に記載の化合物。

【請求項17】
前記スペーサ部分は、共有結合である、請求項1、2、および3のうちのいずれか1項に記載の化合物。

【請求項18】
前記スペーサ部分は、−O−である、請求項1、2、および3のうちのいずれか1項に記載の化合物。

【請求項19】
請求項1、2、および3のうちのいずれか1項に記載の化合物と、任意選択で、薬剤として許容される賦形剤と、を含む、組成物。

【請求項20】
請求項1、2、および3のうちのいずれか1項に記載の化合物を含む組成物であって、前記化合物は、投薬形態で存在する、組成物。

【請求項21】
請求項1、2、および3のうちのいずれか1項に記載の化合物を投与するステップを含む、方法。

【請求項22】
ヒスタミン受容体を結合するステップを含む方法であって、前記結合するステップは、請求項1、2、および3のうちのいずれか1項に記載の化合物を投与するステップにより、達成される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−521462(P2010−521462A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553617(P2009−553617)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/003288
【国際公開番号】WO2008/112257
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(504177402)
【Fターム(参考)】