説明

オリーブ油脂肪酸から誘導された脂質小胞

オリーブ油脂肪酸(olivate)として知られるオリーブ油脂肪酸から誘導される脂質を含む新規な脂質小胞組成物、それらの調製する方法、及び化粧品、食品、皮膚科用剤及び調合薬におけるそれらを使用する方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本出願は、2008年1月22日に出願された米国出願第12/017,932号の優先権を主張し、前記の出願の内容は、引用により本明細書に援用されている。
本発明の背景
リポソームとしても知られている脂質小胞は、リン脂質及び界面活性剤のような高脂質含量を有する両親媒性材料からなる、実質的に球形構造である。これらの球形小胞の脂質は、二層脂質の形態、例えば前記の二層の間に水層を取り囲む二層の脂質の多数の玉ねぎのような殻で構成されている。少重膜脂質小胞(paucilamellar lipid vesicle)は、水又は脂溶性材料(疎水性材料及び親水性材料)により満たされていてもよい、大きな非構造的な中央の空洞を取り囲む2−10重の周辺二層を有する。
【0002】
脂質小胞は、それらが細胞間及び細胞内の輸送に関与している細胞中で天然に発生すると同時に、それらは、また、原型の膜として使用するために合成されてもよい。他の用途としては、化粧成分、経口成分、皮膚科の成分及び薬学的成分のカプセル化及び放出が挙げられる。
【0003】
本発明の概略
本発明は、新規な脂質小胞及びそれらの調製方法を提供する。本発明は、主要な構造材料としてオリーブ油脂肪酸(olivates)として知られているようなオリーブ油脂肪酸誘導体を含む新規な脂質小胞の開発に少なくとも部分的に基づいている。特に、本発明は、化粧品、経口、皮膚科及び薬学といった用途のために、非常に優れた特質を備えた少重膜脂質小胞を開示する。
【0004】
一つの態様では、本発明は、脂質層及び水性層を含む脂質小胞組成物であって、前記の組成物が少なくとも一つの二重層を含む組成物を提供する。前記の脂質層の構成成分は、さらに少なくとも一つのオリーブ油脂肪酸を含む。
【0005】
もう一つの態様では、本発明は、また、オリーブ油脂肪酸(olivate)を含む脂質小胞組成物を調製する方法を提供する。前記の方法は、少なくとも一つのオリーブ油脂肪酸(olivate)を含む脂質層を加熱するステップ、別に水性層を加熱するステップ、前記の加熱された水性層に前記の加熱された脂質層を混合して溶液を形成するステップ、及び前記の溶液を冷却するステップを含む。
【0006】
本発明の詳細な開示
本発明は、新規な脂質小胞組成物及びそれらの調製の方法を提供する。本発明は、主要な構造材料としてオリーブ油脂肪酸として知られているオリーブ油脂肪酸誘導体を含む新規な脂質小胞の開発に少なくとも部分的に基づいている。特に、本発明は、化粧品、経口、皮膚科及び薬学への用途のための非常に優れた特質を備えた少重膜脂質小胞を開示する。
【0007】
I.脂質小胞組成物
一つの態様では、本発明は、脂質層及び水性層を含む脂質小胞組成物であって、前記の組成物がオリーブ油脂肪酸を含む、少なくとも一つの二重層を含む組成物を提供する。前記のオリーブ油脂肪酸が、前記の二重層の主要な構造材料であってもよい。
【0008】
本発明の脂質小胞組成物が、単層、多層又は少重膜(paucilamellar)であってもよい。一つの態様では、前記の小胞が、例えば、材料で満たされていてもよい無晶質の中心の空洞を取り囲む二つ以上の脂質二重層を有する少重膜である。本発明の脂質小胞がカプセルに包んでもよい材料の例としては、高分子、ウイルス、免疫アジュバント、ホルモン、ペプチド、成長因子、リンフォカイン、血液タンパク質、植物ホルモン及び殺虫剤、放射性ヌクレオチド、癌細胞静止薬、抗生物質、フェロモン、ポリフィリン、防カビ剤、虫除けスプレー、香料及び芳香剤、オイル、油脂並びにビタミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、前記の小胞のカプセル化材料は、前記の小胞材料の約0重量%から約60重量%を占めてもよい。
【0009】
「約」という用語は、指定された値又は範囲の10%以内、好ましくは5%以内、及びより好ましくは1%以内である。「約」という用語は、当業者が想定する、許容される平均の標準誤差の範囲内をも含む。
【0010】
一般に、前記の脂質層は、前記の脂質小胞のおよそ10-70重量%を占め、そして前記の水性層は残りの30-90%を占める。
本発明は、少なくとも一つの脂質二重層を含む脂質小胞を特徴とする。「脂質二重層」という用語は、エステル結合又はエーテル結合を通して疎水性の「尾部」基に結合した親水性の「頭部」基を備えた両親媒性体の配列を意味する。前記の両親媒性体は、水性環境下では、前記の疎水性「尾部」が、前記の二重層の内部のほうに向くのに対し、前記の親水性の「頭部」が、前記の二重層の外部のほうを向くという、二つの分子の層を形成する。前記の疎水性「尾部」は、例えば長鎖脂肪酸、長鎖アルコール及びそれらの誘導体、長鎖アミン、ポリオールスフィンゴ脂質、並びにグリセロ脂質のような物質から誘導されてもよい。
【0011】
本発明の脂質二重層の前記の疎水性「尾部」を形成するのに有用な脂肪酸の例としては、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸のようなオリーブ油から誘導される不飽和脂肪酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。脂肪酸の更なる例として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、パルミトール酸、リシノール酸、カプリル酸、カプリン酸、及びアラキドン酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
一つの態様では、前記の脂質二重層は脂肪酸及び脂肪酸エステルを含む。好ましくは、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約 95重量%、又は約100重量%の脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルがオリーブ油から誘導される。
【0013】
一つの態様では、本発明は、前記の脂質小胞の脂質層が、オリーブ油脂肪酸ソルビタン、オリーブ油脂肪酸ポリエチレングリコール-4(polyethyleneglycol-4 olivate)、オリーブ油脂肪酸セテアリル及びそれらの混合物からなる群から選ばれるオリーブ油脂肪酸を含む、組成物に関するものである。
【0014】
「オリーブ油脂肪酸(olivate)」という用語は、オリーブオイルトリグリセリド(例えば、グリセリントリオレアート、グリセリントリリノレアート及びグリセリントリリノレナート)をケン化してオリーブ油脂肪酸のカルボン酸塩を形成する場合に形成される化合物を意味する。ケン化は、前記の脂肪酸のカルボン酸塩及びグリセリンを作り出す、塩基により促進される、グリセリントリエステルのエステル加水分解である。例えば、オリーブ油脂肪酸カリウムは、オリーブ油と水酸化カリウムとの反応によりを形成されてもよい。スキーム1には、オリーブ油の主要成分である、グリセリントリオレアートのケン化によりオリーブ油脂肪酸カリウムが調製されることが示されている。
【化1】

【0015】
オリーブ油脂肪酸カリウムに、例えばソルビタン、ポリエチレングリコール-4、及びセテアリルのようなアルコールと反応させて、例えば、それぞれオリーブ油脂肪酸ソルビタン、ポリエチレングリコール-4オリーブ油脂肪酸(polyethyleneglycol-4 olivate)、及びオリーブ油脂肪酸セテアリルを形成してもよい。
【0016】
前記の油脂二重層は、一般的に約0.1%から約75%のオリーブ油脂肪酸(olivate)を含む。
【0017】
本発明の前記の小胞組成物の脂質層は、更にステロールを含んでもよい。前記の脂肪二重層を形成するのに有用なステロールとしては、脂質膜の調節剤として有用であると当業者に知られている、あらゆるステロールが挙げられる。適切なステロールとしては、コレステロール、コレステロール誘導体、コレステロール塩、コレステロールエステル、エトキシ化されたコレステロール、ヒドロコルチゾン、フィトステロール、アボガト不ケン化物及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ステロールの量は、カプセルに包み込まれる親油性材料とそれが競合するかどうかにある程度まで依存してもよい。一つの態様では、一般に前記の脂質二重層は、例えばステロールのようなステロイドを約0%から約25%まで含む。
【0018】
本発明のもう一つの態様では、前記の小胞組成物は、例えば、炭化水素、トリカプリル酸グリセリン(caprylic
triglyceride)、トリカプリン酸グリセリン(capric triglyceride)、鉱油、大豆油、スクアレンオイル、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、ナタネ油、サフラワー油、ひまわり油、パーム油、パーム核油、魚油、フレーバー油(flavor oil)、パラフィンワックス、ワセリン、杏仁油、ククイナッツオイル(kukui oil)、ステアリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソデカン、グレープシードオイル(grape seed oil)、ゴールデンホホバ、パルミチン酸エチルヘキシル、ジメチコン、シクロメチコン、ジメチコンコポリオール、ヤシ油、2−エチルヘキサン酸セテアリル、ヒマシ油、安息香酸C12-C15アルキル、ボラージ油、エステル、アボガドオイル及び水溶性ビタミンのようなオイルを含んでいてもよい。前記の小胞を調製する間に、前記のオイルは、前記の小胞の中核に分配するのに対し、前記の残存する脂質は、前記の中核を取り囲む前記の脂質二重層に取り込まれる。
【0019】
一つの態様では、前記のオイルは、例えばトリカプリル酸グリセリン(caprylic triglyceride)、トリカプリン酸グリセリル(capric triglyceride)又はそれらの混合物のようなトリグリセリドであってもよい。例えば、トリグリセリドは、約0重量%から約60重量%、約5重量%から約55重量%、約10重量%から約50重量%、約10重量%から約50重量%又は約20重量%から約40重量%のトリグリセリドとして含まれている。
【0020】
もう一つの態様では、前記のオイルが鉱油であってもよい。例えば、前記の脂質小胞組成物が、約0重量%から約50重量%、約10重量%から約40重量%、又は約20重量%から約30重量%の鉱油を含んでもよい。
【0021】
更なる態様では、前記の脂質小胞の脂質層は、さらに非イオン性洗浄剤を含んでいてもよい。「非イオン性洗浄剤」という用語は、イオン性基を備えていないことから水性溶液でイオン化しない洗浄剤を意味することから、例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレアート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレアート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、及びそれらの混合物が挙げられる。前記の非イオン性洗浄剤が、約0重量%から約2.0重量%、約0.5重量%から約1.5重量%又は約1.0重量%で含まれていてもよい。
【0022】
本発明の組成物もまた、例えば非イオン水のような水、水溶性材料又は水混和性成分、及び任意に抗微生物薬を含んでいてもよい。
【0023】
「抗微生物薬」という用語は、細菌、酵母、菌類、及びカビに対して防腐作用を発揮する組成物を含む。前記の抗微生物薬としては、プロピレングルコール、ジアゾリジニルウレア、イミダゾリジニルウレア、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール、カプリリルグリコール及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定にされるものではない。例えば、前記の抗微生物薬は、GERMABEN II(例えば、約56%のプロピレングリコール、約30%のジアゾリジニルウレア、約11%のメチルパラベン及び約3%のプロピルパラベンの混合物)であってもよい。
【0024】
前記の抗微生物薬の量は、その意図された目的に適合するように選択されてもよい。例えば、前記の抗微生物薬の量は、約0重量%から約2重量%又は約1重量%であってもよい。
【0025】
本発明の小胞は、また、特定の生物学的な部位において前記の小胞のカプセルに包み込まれた前記の材料を放出するために特定の標的部位に向けるように使用することができる、親水性分子又は両親媒性分子のいずれかである、標的分子を含んでいてもよい。もし、親水性標的分子が使用されるならば、それらは、直接又はスペースを介して前記の脂質のOH残基に結合することができる。もし、スペーサーが使用される場合、前記の標的分子は、これらの化合物のアシル鎖を経由して二重膜の前記の親水性の核の中に組み合わせることができる。好ましい親水性標的分子としては、モノクローナル抗体、他の免疫グロブリン、レシチン及びペプチドホルモンが挙げられる。親水性標的分子に加えて、両親媒性標的分子を使用することも可能である。両親媒性標的分子は、前記の界面活性分子と通常化学的に結合しないが、前記の脂質小胞の二重層の薄膜を構成する分子の脂肪親和性部位、すなわち疎水性部位と相互作用する。好ましい両親媒性標的分子は、中性糖脂質、ガラクトセレブロシド(例えば、肝臓のガラクトシル受容体)、又は例えばガングリオシドのような電荷を有する糖脂質である。
【0026】
もう一つの態様では、前記の脂質小胞組成物のpHは、前記の脂質小胞組成物がその意図された用途に適切であるように選択される。例えば、化粧品に使用する場合には、前記のpHは、前記の組成物が皮膚を刺激しないように選択されてもよい。さらなる態様では、前記の脂質組成物のpHは約2から約8までであってもよい。
【0027】
II.脂質小胞の調製法
本発明の脂質小胞は、引用により本明細書に援用されている米国特許第4,911,928号に開示されている「ホットローディング法(hot loading technique)」を使用して調製されてもよい。いずれかの場合において、脂質層は、前記の脂質二重層に取り込まれ、ステロール及び脂質材料を添加するか又は添加することなく、主要な構成材料(例えば、オリーブ油脂肪酸(olivate))及び共存できる両親媒性体を混合することにより形成されて、均一な脂質層を形成する。前記のホットローディング法(hot loading technique)において、親脂肪性層は形成され、ついで加熱され、ついで加熱された水性層(例えば、水、生理食塩水、又は前記の脂質を水和するために使用されるであろう他のあらゆる水性溶液)と、前記の小胞を形成するための剪断混合条件下で混合される。「剪断混合条件(Shear mixing conditions)」は、本明細書で使用されているように1mmの孔を通して5-50m/sの相対流速に相当する剪断を意味する。前記に開示の少層脂質小胞(paucilamellar lipid vesicle)は、剪断混合ための十分に高度な剪断を提供する様々な装置により調製され得る。本発明の脂質小胞を調製するのに特に有用な装置は、米国特許第4,985,452号(譲受人:Micro Vesicular Systems, Inc.)に開示されている。
【0028】
もう一つの態様では、本発明は、脂質小胞組成物を調製する方法に関するものである。前記の方法は、少なくとも一つのオリーブ油脂肪酸を含む脂質層を約60℃から約80℃(例えば約75℃)に加熱するステップ;別に水性層を約55℃から約75℃(例えば、約60℃)に加熱するステップ;前記の加熱された脂質層を前記の加熱された水性層と混合して溶液を調製するステップ;及び最後に前記の混合された溶液を約20℃から約30℃(例えば、約25℃)に冷却するステップを含む。
【0029】
加えて、前記の方法は、さらに抗微生物薬を前記の冷却した溶液に添加するステップ及び均一になるまで前記の溶液を混合するステップを含んでもよい。
【0030】
有利なことに、本発明の小胞は、周辺温度(例えば、20−50℃)で安定である(例えば、前記の液体から分離しないし、そして凝集体を形成しない。)。一つの態様では、本発明の小胞は、少なくとも24時間、一週間、一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月又はそれ以上の長期間、約20℃から約50℃で安定である。好ましくは、前記の小胞は、球状であるが、他の形状が特定の用途には好ましい場合もある。
【0031】
本発明のもう一つの態様では、本発明は、哺乳動物のための外皮のスキンケアにおける皮膚軟化剤又は湿潤剤として使用する脂質小胞組成物に関するものである。好ましい哺乳動物としては、例えばヒト、チンパンジー又はゴリラのような霊長類、家畜(例えば、雌牛、ヒツジ、ブタ、ウマ、ヤギ)、実験動物(例えば、ラット、マウス、サル)及びペット(例えば、ネコ、イヌ、白イタチ)が挙げられる。前記のスキンケア製品として、保育(day-care)品、サンケア(sun-care)品、赤ちゃんのケア(baby-care)品、化粧品及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
「皮膚軟化剤」という用語は、外用薬として使用された場合、皮膚の水分喪失を防止するように作用する物質を意味する。例えば、皮膚軟化剤としては、コレステロール、スクワラン(squaline)及び脂肪酸、ヒマシ油、アーモンド油、オレイン酸オレイルエステル、トリカプリル酸グリセリン、トリカプリン酸グリセリン、ドデカノールオクリル(ocryl dodecanol)、イソナノ酸セテアリル(cetearyl isonanoate)、オレイルアルコール(oleyl alcohol)、ジオクチルシクロヘキサン、ステアリン酸イソプロピル、並びにミリスチン酸イソプロピル、脂肪酸エステルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
「湿潤剤」という用語は、外用薬として使用されたときに水分を吸収し、そして水分を保持する物質を意味する。湿潤剤の例としては、グリセリン、プリピレングリコール、多糖、ソルビトール、尿素、アルファヒドロキシ酸、及び糖が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明は、次の実施例によりさらに例示されるが、これらの実施例は、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0035】
実施例1:オリーブ油脂肪酸ポリエチレングリコール-4、非イオン性洗剤及びトリグリセライドを使用しての脂質小胞組成物の調製
この実施例の脂質小胞は、オリーブ油脂肪酸ポリエチレングリコール-4を使用して調製される。三つの異なる製剤からなる本発明の脂質小胞50gを調製するのに使用された材料及び使用比率を表1に纏めた。次の手順で本発明の小胞を調製した。
【0036】
前記の手順のように、剪断混合条件により前記の小胞を調製した。前記の脂質層の構成成分を量り、ステンレス鋼製のポットに入れ、次いで約75℃に加熱した。前記の材料を一緒に混合し、澄明な溶液状態とした。各々の小胞調製の前記の水性成分、脱イオン水を量り、別のステンレス鋼製のポットに入れた。各溶液を約65℃に加熱した。
【0037】
NovamixTM 脂質小胞調製機(米国特許第4,895,452号に開示されている)を使用して、各調合物それぞれについて、前記の脂質構成成分及び水性構成成分を合わせ混合した。得られた混合物それぞれを連続して攪拌し、室温、約25℃に冷却した。ついで、抗微生物薬を前記の冷却された溶液に加え、ついで得られた溶液を均一な溶液となるまで混合後保存した。
【0038】
保存してある各調合物の小胞を、さらに希釈することなく直接、スプレー装置に移した。各調合物を黒白表面にスプレーし、ついで分析した。前記のすべての調合物は、満足のいくものであり、かつ商業的に利用できるものであることが判明した。顕微鏡による観察により、ほぼ均一な粒子群であり、かつ滑らかで白色の流動性のローションを形成する試料A1、B1及びC1の各々が、小型で、整然と並んだ、球形の小胞であることが明らかになった。
【表1】

*プロピレングリコール、ジアゾリジニルウレア、メチルパラベン及びプロピルパラベン
【0039】
この実施例において、製剤A1は約25℃、約40℃及び約50℃で少なくとも24時間安定であった。製剤B1は、約40℃及び約50℃で少なくとも1週間安定であった。製剤C1は、約40℃少なくとも2週間安定であった。
【0040】
実施例2:オリーブ油脂肪酸ポリエチレングリコール-4及び鉱物油を使用しての脂肪小胞組成物の調製
この実施例の脂質小胞は、オリーブ油脂肪酸ポリエチレングリコール-4を使用して調製された。三つの異なる製剤からなる本発明の脂質小胞50gを調製するのに使用された材料及び使用比率を表2に纏めた。前記の小胞は、前記の実施例1の手順を使用して、前記の剪断混合条件により調製された。顕微鏡による観察により、試料製剤A2、B2及びC2の各々が、小型で、整然と並んだ、球形の小胞であることが明らかになった。製剤A2は滑らかな、白色の流動性ローションを形成した。製剤B2は滑らかな、白色の薄いローションを形成した。製剤C2は、前記の球状の小胞が僅か乃至適度に密集し、滑らかで、白色の厚いローションを形成した。
【表2】

*プロピレングリコール、ジアゾリジニルウレア、メチルパラベン及びプロピルパラベン
【0041】
この実施例において、製剤A2、B2及びC2のそれぞれは、約25℃で少なくとも24時間物理的に安定であった。
【0042】
実施例3:オリーブ油脂肪酸ソルビタンを使用しての脂質小胞組成物の調製
この実施例の脂質小胞は、オリーブ油脂肪酸ソルビタンを使用して調製された。三つの異なる製剤からなる本発明の脂質小胞50gを調製するのに使用された材料及び使用比率を表3に纏めた。前記の小胞は、前記の実施例1の手順を使用して、前記の剪断混合条件により調製された。顕微鏡による観察により、試料製剤A3、B3及びC3の各々が、大型で、不規則な小胞であることが明らかになった。製剤A3及びB3の各々は、白色の流動性ローションを形成した。製剤C3は、大きく密集した、白色の薄いローションを形成した。
【表3】

*プロピレングリコール、ジアゾリジニルウレア、メチルパラベン及びプロピルパラベン
【0043】
この実施例のすべての製剤は物理的に安定であった。
【0044】
実施例4:オリーブ油脂肪酸セテアリル、オリーブ油脂肪酸ソルビタン及び鉱油を使用しての脂質小胞組成物の調製
この実施例の脂質小胞は、オリーブ油脂肪酸セテアリル及びオリーブ油脂肪酸ソルビタンを使用して調製された。三つの異なる製剤からなる本発明の脂質小胞50gを調製するのに使用された材料及び使用比率を表4に纏めた。前記の小胞は、前記の実施例1の手順を使用して、前記の剪断混合条件により調製された。顕微鏡による観察により、製剤A4及びB4の各々が、不均一な粒子群で、大型で、不均一な大きさの小胞であり、滑らかで、白色の薄いローションを形成していることが明らかになった。製剤Cは、不均一な粒子群であって、小さな球状の小胞及び幾らかの非球状の凝集体からなる白色の薄いローションを形成していた。
【表4】

*プロピレングリコール、ジアゾリジニルウレア、メチルパラベン及びプロピルパラベン
【0045】
この実施例では、製剤B4及びC4は約25℃、約40℃及び約50℃で少なくとも4週間安定であった。製剤A4は約25℃及び約40℃で少なくとも4週間ほとんど分離しなかった。
【0046】
実施例5:オリーブ油脂肪酸セテアリル及びオリーブ油脂肪酸ソルビタン、非イオン性合成洗剤並びにトリグリセライドを使用した脂質小胞組成物の調製
この実施例の脂質小胞は、オリーブ油脂肪酸セテアリル及びオリーブ油脂肪酸ソルビタンを使用して調製された。三つの異なる製剤からなる本発明の脂質小胞50gを調製するのに使用された材料及び使用比率を表5に纏めた。前記の小胞は、前記の実施例1の手順を使用して、前記の剪断混合条件により調製された。顕微鏡による観察により、製剤A5、B5及びC5のそれぞれが、不均一な粒子群であって、小さな球状の小胞でもって滑らかで白色の薄いローションを形成していることが明らかになった。
【表5】

*プロピレングリコール、ジアゾリジニルウレア、メチルパラベン及びプロピルパラベン
【0047】
この実施例では、製剤B5及びC5は、約25℃及び約40℃で少なくとも4週間安定であった。製剤A5は幾らかの分離を示した。
【0048】
均等物
当業者ならば、本明細書に開示された前記の具体的な手順についての多くの均等物を、認識するであろうし、又は確立された実験により確認できるであろう。前記の均等物は、本発明の範囲に含まれるであろうし、そして以下の請求項によりカバーされるであろう。本出願で引用された、すべての引用文献、特許及び特許出願の内容は、引用により本明細書に援用されている。これらの特許、特許出願及び他の文献の適切な構成要素、プロセス及び方法は、本発明及び本発明の態様のために選択されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質層及び水性層を含む少なくとも一つの脂質二重層を有する脂質小胞組成物であって、前記脂質層が少なくとも一つのオリーブ油脂肪酸を含む、脂質小胞組成物。
【請求項2】
前記オリーブ油脂肪酸が、オリーブ油脂肪酸ソルビタン、オリーブ油脂肪酸ポリエチレングリコール-4(polyethyleneglycol-4 olivate)、オリーブ油脂肪酸セテアリル及びそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水性層が水を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記水性層が、さらに抗微生物薬を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記脂質層が、さらにステロールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ステロールが、コレステロール、コレステロール誘導体、コレステロール塩、コレステロールエステル、ヒドロコルチゾン、フィトステロール、アボガド不ケン化物及びそれらの混合物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記脂質層が、さらにオイルを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記オイルが、トリカプリル酸グリセリン(caprylic
triglyceride)、トリカプリン酸グリセリン(capric triglyceride)及びその混合物からなる群から選ばれるトリグリセライドである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記オイルが炭化水素である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記炭化水素が鉱物油である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記脂質層が、さらに非イオン性合成洗剤を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記非イオン性合成洗剤が、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート及びその混合物からなる群から選ばれる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗微生物薬がプロピレングリコール、ジアゾリジニルウレア、メチルパラベン及びプロピルパラベンを含む組成物である、請求項4に記載の組成物。
【請求項14】
前記pHが約2乃至約8である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、前記組成物の約0.1重量%乃至約75重量%の量の前記オリーブ油脂肪酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、前記組成物の約0.1重量%乃至約25重量%の量の前記ステロールを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、前記組成物の約0.1重量%乃至約60重量%の量の前記トリグリセライドを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、前記組成物の約0.1重量%乃至約50重量%の量の前記鉱物油を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、前記組成物の約0.1重量%乃至約2.0重量%の量の前記非イオン性合成洗剤を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、前記脂質小胞が少重膜脂質小胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、前記少重膜脂質小胞が無晶質の中心の空洞を取り囲む2-10の脂質二重層を備えている、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
脂質小胞組成物を調製する方法であって、
(a)少なくとも一つのオリーブ油脂肪酸を含む脂質層を、約75℃に加熱するステップ、
(b)水性層を約60℃に加熱するステップ、
(c)前記加熱された脂質層を前記加熱された水性層を混合し、溶液を調製するステップ、及び
(d)前記溶液を約25℃に冷却して、脂質小胞を調製するステップ
を含む、方法
【請求項23】
前記溶液に抗微生物薬を添加するステップ及び均一になるまで前記溶液を混合するステップを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記オリーブ油脂肪酸が、オリーブ油脂肪酸ソルビタン、オリーブ油脂肪酸ポリエチレングリコール-4(polyethyleneglycol-4 olivate)、オリーブ油脂肪酸セテアリル及びそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項22に記載の方法。


【公表番号】特表2011−510081(P2011−510081A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544365(P2010−544365)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/030296
【国際公開番号】WO2009/094238
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(510199410)アイジーアイ ラボラトリーズ, インク. (1)
【Fターム(参考)】