説明

オルガノポリシルメチレン及びオルガノポリシルメチレン組成物

【課題】シルメチレン結合を有するケイ素系ポリマーからなる付加硬化型オルガノポリシルメチレンの提供、並びに該付加硬化型オルガノポリシルメチレンを含有して成り、硬化すると、耐熱性、電気絶縁特性、耐水性、成型加工性に優れ、気体透過性の少ない硬化物を与えるオルガノポリシルメチレン組成物及びその硬化物を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1):


で表され、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシルメチレン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐熱性、機械的強度、電気絶縁性、電気特性、耐水性を有する付加硬化型オルガノポリシルメチレン及び、該オルガノポリシルメチレンより成る組成物並びにその硬化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬化してシリコーンゴム弾性体となる硬化性シリコーンゴム組成物はよく知られており、その耐候性、耐熱性、電気絶縁性等の優れた性質を利用して電気電子部品のガスケット材、ポッティング材、コーティング材、型取り材等の成形材料、電線被覆用材料等、及び自動車用部品として広く使用されている。しかし、硬化性シリコーンゴム組成物はシリコーン特有のシロキサン結合を有することから、そのイオン結合性により耐酸性、耐アルカリ性などの耐薬品性や耐水性、気体透過性、また高温加湿下での使用など極めて厳しい使用環境ではシリコーンの優れた特性を発揮することが出来ない。
【0003】
その対策としてシロキサン結合の一部をシルエチレン結合としたポリマー(特許文献1)やシルフェニレン結合としたポリマー(特許文献2)が知られている。しかしこれらのポリマーは合成し難く量産性に乏しい、ポリマーが高価であるなど問題点を有しており、特殊な用途や特殊な分野以外では商品化されていない。
【0004】
炭化ケイ素系セラミックスの前駆体としてシルメチレン結合からなるポリジアリールシルメチレンが知られている(特許文献3〜5)。本ポリマーは高融点の結晶性熱可塑性ケイ素系高分子であり、耐熱性、絶縁性、電気特性、耐薬品性、耐水性に優れるが、成型加工性が悪く実用化されていない。成型加工性の改良は種々試みられておりポリジアリールシルメチレンとシリコーンポリマーの混合物(特許文献6)、ポリジアリールシルメチレンとポリアルキルシルメチレン系との混合物(特許文献7〜8)が報告されている。また、ジシラシクロブタン膜を金属微粒子膜で開環重合して基板上にポリジアリールシルメチレンを製膜する方法(特許文献9)が知られている。しかし、ジアリール系シルメチレンポリマーは高結晶性熱可塑性ポリマーであることから合成し難く高価であり加工性が悪い。そのため炭化珪素系セラミックスの前躯体としての活用が検討されたが、ポリマーとしての特性を生かした熱硬化性組成物は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再表01/030887号公報
【特許文献2】特開平5−320350号公報
【特許文献3】特開平8−109264号公報
【特許文献4】特開平8−109265号公報
【特許文献5】特開平8−109266号公報
【特許文献6】特開平9−227781号公報
【特許文献7】特開平9−227782号公報
【特許文献8】特開平9−227783号公報
【特許文献9】特許3069655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、シルメチレン結合を有するケイ素系ポリマーからなる付加硬化型オルガノポリシルメチレンの提供、並びに該付加硬化型オルガノポリシルメチレンを含有して成り、硬化すると、耐熱性、電気絶縁特性、耐水性、成型加工性に優れ、気体透過性の少ない硬化物を与えるオルガノポリシルメチレン組成物及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ケイ素原子に結合した付加反応基であるアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシルメチレンを合成することに成功し、かつ該オルガノポリシルメチレンと、ケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有する、オルガノハイドロジェンポリシルメチレンまたはオルガノハイドロジェンポリシロキサンから選択される架橋剤と、白金族金属系触媒とを含有するからなる付加硬化型オルガノポリシルメチレン組成物が上記特性に優れた硬化物を与えることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は
下記一般式(1):
【化1】

(式中、Rは互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、(R)SiCH−、または(R)SiO−より選ばれる基であり、該1価炭化水素基の少なくとも2つはアルケニル基であり、前記式中Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、アルコキシ基、または水酸基より選ばれる基であり、mは1〜100、nは1〜100の整数である。)で表され、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシルメチレンを提供する。
【0009】
また本発明は、
下記平均組成式(2):
[化2]
ClSi(CH(4−e−f)/2 (2)
(Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基より選ばれる基であり、e、fはe+f=1.5〜2.8を満たす数であり、但し、0.001≦f/(e+f)≦0.9。)で表されるオルガノポリシルメチレンと
下記一般式(3):
[化3]
SiCl4−(g+h) (3)
(Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基より選ばれる基であり、Rは炭素原子数1〜10のアルケニル基であり、gは0〜2、hは1〜3の整数、但しg+hは1〜3である。)で表されるアルケニル基含有シランとの反応により上記一般式(1)のオルガノポリシルメチレンを製造する方法を提供する。
【0010】
さらに本発明は、
(A)上記一般式(1)のオルガノポリシルメチレン、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中2個以上有する、オルガノハイドロジェンポリシルメチレンまたはオルガノハイドロジェンポリシロキサンから選択される架橋剤の上記(A)オルガノポリシルメチレンのアルケニル基1モルあたり、該架橋剤中のSiH基が0.1〜5.0モルとなる量、及び
(D)白金族金属系触媒の触媒量
を含有することを特徴とするオルガノポリシルメチレン組成物及びその硬化物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオルガノポリシルメチレンを含む組成物は、優れた耐熱性、電気絶縁性、機械的強度、光学的特性を有し、シリコーンゴムの欠点である気体透過性や過酷な使用条件下での耐水性、耐加水分解性などに優れる特性を有する硬化物を提供する。また、本発明のオルガノポリシルメチレンを含む組成物は、従来のシリコーンゴム同様の成型加工性を有するため成型装置など従来の加工機械がそのまま転用できる。本発明のオルガノポリシルメチレン組成物から得られる成型体は、シリコーンゴムと同様に絶縁材料、封止材料、ケーブル、パッキン、コネクター等の電気、電子部品、自動車部品、半導体装置等に好適に用いられる。また、その光学的特性を生かし、レンズや透明封止材料などの用途に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1で製造した化合物のNMRである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0014】
(A)オルガノポリシルメチレン
(A)成分は、下記一般式(1)で表され、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシルメチレンである。
【化4】

式中、mは1〜100、好ましくは1〜50の整数であり、nは1〜100、好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜20の整数である。
【0015】
式中、Rは互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、(R)SiCH−、(R)SiO−より選ばれる基であり、Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、アルコキシ基、または水酸基より選ばれる基である。該1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−へキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基;および、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、シアノ基等で置換された、例えば、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2-シアノエチル基が挙げられる。Rの少なくとも2はビニル基、アリル基等のアルケニル基であり、中でも合成のしやすさ、耐熱性からビニル基が好ましい。アルケニル基以外のRとしては、メチル基およびフェニル基が好ましい。特に、メチル基が組成物の硬化特性、硬化物の柔軟性の点から好ましく、Rの50%以上はメチル基であることが好ましい。
【0016】
上記式(1)で表されるオルガノポリシルメチレンは、下記平均組成式(2)で表されるオルガノポリシルメチレンと、下記式(3)で表わされるアルケニル基含有シランを反応させることにより製造することができる。
【0017】
[化5]
ClSi(CH(4−e−f)/2 (2)
(式中、Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基より選ばれる基であり、e、fは、e+f=1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05を満たす数であり、但し、0.001≦f/(e+f)≦0.9、好ましくは0.005≦f/(e+f)≦0.5、より好ましくは0.005≦f/(e+f)≦0.1である。)
【0018】
[化6]
SiCl4−(g+h) (3)
(Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基より選ばれる基、Rは炭素原子数1〜10のアルケニル基であり、gは0〜2、hは1〜3の整数、但しg+hは1〜3である。)
【0019】
、Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;および、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、シアノ基等で置換された、例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基が挙げられる。Rは、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−へキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基である。式(3)で表されるアルケニル基含有シランとしては、ジメチルビニルモノクロロシラン、メチルジビニルモノクロロシラン、トリビニルモノクロロシラン、メチルフェニルビニルモノクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、フェニルビニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシランなどが例示される。
【0020】
本発明のオルガノポリシルメチレンは、上記平均組成式(2)のオルガノポリシルメチレンと式(3)のアルケニル基含有シランを共加水分解反応して合成する方法、平均組成式(2)のオルガノポリシルメチレンを加水分解してケイ素原子に結合する水酸基を導入し、次に一般式(3)のシランと脱塩酸反応により合成する方法により得られる。また、一般式(3)のシランと一緒に、アルケニル基を含まないシラン(RSiCl4-g)を併用することができる。
【0021】
本発明のオルガノポリシルメチレンは、例えば下記に示す構造を有するものである。
【化7】

(式中、Viはビニル、Meはメチルを意味する。nは1〜100、好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜20の整数。)
【0022】
また本発明は、(A)上記一般式(1)のオルガノポリシルメチレン、(C)ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中2個以上有する、オルガノハイドロジェンポリシルメチレンまたはオルガノハイドロジェンポリシロキサンから選択される架橋剤、及び(D)白金族金属系触媒を含有することを特徴とするオルガノポリシルメチレン組成物である。本発明のオルガノポリシルメチレン組成物は、下記一般式(4)で表され、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有する(B)オルガノポリシロキサンをさらに含有していてもよい。
【0023】
(B)オルガノポリシロキサン
(B)成分は、主剤である(A)オルガノポリシルメチレンの一部を代替する任意成分であり、下記一般式(4)で表され、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。
[化8]
SiO(4−b)/2 (4)
(式中、Rは互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、(R)SiO−より選ばれる基であり、該1価炭化水素基の少なくとも2つはアルケニル基であり、前記式中Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、アルコキシ基、または水酸基より選ばれる基であり、bは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の数である。)
【0024】
該1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;および、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、シアノ基等で置換された、例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等が挙げられる。Rの少なくとも2はビニル基、アリル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−へキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基であり、中でも合成のしやすさ、耐熱性からビニル基が好ましい。アルケニル基以外のRとしては、メチル基およびフェニル基が好ましい。特に、メチル基が(A)成分との相溶性に優れ、組成物の硬化特性、硬化物の柔軟性の点から好ましく、Rの50%以上はメチル基であることが好ましい。また、耐熱性、光学特性の点からRの一部はフェニル基であることが好ましい。
【0025】
このようなオルガノポリシロキサンとしては、下記式に示されるような両末端ビニル基ポリジメチルシロキサン、両末端ビニル基ポリジメチルシロキサン‐メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端ビニル基ポリジメチルシロキサン‐ジフェニルシロキサン共重合体が好ましい。
【化9】

(式中、mは0〜300、好ましくは10〜200、さらに好ましくは50〜150、p+qは1〜300、好ましくは10〜200、さらに好ましくは50〜150の整数である。)
【0026】
本発明のオルガノポリシルメチレン組成物は、(A)成分1〜100重量部、(B)成分0〜99重量部、好ましくは(A)成分30〜100重量部、(B)成分0〜70重量部を含有する((A)成分と(B)成分の合計100重量部)。(A)成分が前記下限値未満では、耐水性、光学的特性などオルガノポリシルメチレンの特徴が発現しない。
【0027】
(C)架橋剤
(C)架橋剤は、(A)成分オルガノポリシルメチレン及び(B)成分オルガノポリと付加反応して架橋結合を形成し、3次元網状構造のゴム弾性体を与える。本発明の架橋剤は、ケイ素原子に結合した水素原子(以下、SiH基という。)を1分子中に2個以上有する、オルガノハイドロジェンポリシルメチレンまたはオルガノハイドロジェンポリシロキサンから選択される。
【0028】
本発明の架橋剤は、1分子中にSiH基を少なくとも2個、好ましくは3個以上含有する。該架橋剤の分子構造は特に制限されず、例えば、線状、環状、分岐状、三次元網状(樹脂状)等のいずれであってもよい。このような架橋剤としては、1分子中のケイ素原子数が2〜200個、好ましくは3〜100個であり、25℃において液状であるオルガノハイドロジェンポリシルメチレンまたはオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。特に、合成が容易であり、分子構造が選択できるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
【0029】
特に、下記平均組成式(5)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
[化10]
SiO(4−c−d)/2 (5)
(Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、水素原子、アルコキシ基、水酸基より選ばれる基、cおよびdは、0.7≦c≦2.1、0.001≦d≦1.0、且つ0.8≦c+d≦3.0、好ましくは1.0≦c≦2.0、0.01≦d≦1.0、且つ1.5≦c+d≦2.5を満たす数である。)
中でも、シロキサン単位の繰り返しの数が2〜200であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
【0030】
上記平均組成式(5)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位・(CHSiO1/2単位・SiO4/2単位の共重合体、(CHHSiO1/2単位・SiO4/2単位の共重合体、(CHHSiO1/2単位・SiO4/2単位・(CSiO1/2単位の共重合体等が挙げられる。
【0031】
(C)成分は、(A)成分中のアルケニル基1モル当たり、または(A)成分及び(B)成分中のアルケニル基1モル当たり、(C)成分中のSiH基の量が0.1〜5.0モル、好ましくは0.5〜4.0モル、より好ましくは0.8〜3.0モルとなる量で配合するのがよい。前記下限値未満では、本発明の組成物から得られる硬化物の架橋密度が低くなりすぎ、機械強度が不足する。また、耐熱性に悪影響を及ぼすため好ましくない。前記上限値超では、硬化物中に脱水素反応による発泡が生じる。また、残存SiH基による物性の経時変化が発現することがあるため、更に硬化物の耐熱性が悪影響を受けることとなり好ましくない。尚、組成物中に存在する(A)成分と(B)成分由来のアルケニル基に対し、(A)成分由来のアルケニル基が、50〜100モル%、好ましくは80〜100モル%で存在することがよい。
【0032】
(D)白金族金属系触媒
(D)白金族金属系触媒は(A)成分及び(B)成分と(C)成分との付加反応(ヒドロシリル化)を促進させるための触媒である。このような触媒としては、公知の白金族金属系触媒を用いることができ、白金もしくは白金化合物を用いることが好ましい。このような白金族金属系触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサンまたはアセチレンアルコール類等との錯体が挙げられる。
【0033】
白金族金属系触媒の配合量は触媒としての有効量であり、希望する硬化速度に応じて適宜増減すればよく特に制限されるものではないが、(A)成分または(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して、白金族金属に換算して質量基準で好ましくは0.1〜1,000ppm、より好ましくは1〜200ppmの範囲である。
【0034】
その他の配合成分
本発明のオルガノポリシルメチレン組成物には、上記(A)〜(D)成分に加えて、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、補強性充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、導電性付与剤、接着性付与剤、着色剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤など各種機能性添加剤を配合してもよい。例えば、煙霧質シリカ、沈澱法シリカなどの補強性充填剤、けいそう土、グラファイト、酸化アルミニウム、マイカ、クレイ、カーボン、酸化チタン、ガラスビーズなどの充填剤、導電材料、顔料、滑剤、離型剤としてのポリジメチルシロキサンなどを添加することが出来る。
【0035】
本発明のオルガノポリシルメチレン組成物は、上記成分をプラネタリーミキサーや品川ミキサー等により常法に準じて混合することにより得ることができる。本発明のオルガノポリシルメチレン組成物の硬化条件は、公知の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物と同様でよく、例えば常温でも十分硬化するが、必要に応じて加熱してもよく、この場合、60〜150℃、特に80〜120℃で、5〜120分間、特に10〜60分間加熱することにより硬化することができる。
【0036】
本発明のオルガノポリシルメチレン組成物は、機械的特性、耐熱性、電気絶縁性、耐水性、気体透過性、光学特性に優れ、特に透明性を必要とするLED用レンズやLED用封止材料など光学材料に最適な材料である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記において「部」は質量部を意味し、Meはメチル基、Viはビニル基を意味する。
【0038】
[実施例1]
(A1)アルケニル基含有オルガノポリシルメチレンの合成
下記式(6)のクロル基含有シルメチレン1540g(4.64モル、90mol%)と下記式(7)のジメチルビニルモノクロロシラン54.2g(0.45モル、10mol%)をキシレン1000gに溶解し、水600gとキシレン300gの混合溶媒系に60℃で滴下して、加水分解反応をした。ついで、室温で3時間熟成反応をした後、廃酸分離、水洗洗浄、140℃で共沸脱水した。
【0039】
【化11】

【化12】

【0040】
このアルケニル基導入ポリシルメチレンにKOH0.2gを添加し、140℃、10時間反応させてアルカリ重合し、ついで中和、濾過の後、160℃/5mmHgで30分間ストリップした。1H−NMRによる分析の結果、下記式(8)で表わされる構造のアルケニル基含有オルガノポリシルメチレン(A1)であることがわかった。NMRの測定結果を図1に示す。(NMR:日本電子社製JNM−LA300WB、300MHz、1H−NMR)
【化13】

【0041】
[実施例2]
(A2)アルケニル基含有オルガノポリシルメチレンの合成
下記式(9)のクロル基含有シルメチレン260.3g(0.335モル、67mol%)と上記式(7)のジメチルビニルモノクロロシラン19.9g(0.165モル、33mol%)を実施例1と同様にキシレン200gに溶解し、水200gとキシレン100gの混合溶媒系に60℃で滴下して、加水分解反応をした。ついで、室温で5時間熟成反応をした。その後、廃酸分離、水洗洗浄、140℃で共沸脱水した。このアルケニル基導入ポリシルメチレンにKOH0.2gを添加し、140℃、10時間反応させてアルカリ重合し、ついで中和、濾過の後、160℃/5mmHgで30分間ストリップして、下記式(10)のアルケニル基含有オルガノポリシルメチレン(A2)を得た。
【0042】
【化14】

【化15】

【0043】
[実施例3]
実施例1で調製したアルケニル基含有オルガノポリシルメチレン(A1)100gに下記式(11)で示すSiH基含有ポリシロキサン(C1)34.7g(Si−H/Si−Vi=0.36)、白金触媒として白金含有量が2重量%の塩化白金酸アルコール溶液(D1) 0.1g(白金金属換算量で20ppm)を添加して混合し、該混合物を、縦130×横170×深さ2(mm)の金型に注入し、デシケータにいれて減圧下(10Torr)で10分間脱泡後、150℃で1時間加熱硬化させて、オルガノポリシルメチレン硬化物を成形した。その物性を表1に示す。
【0044】
【化16】

【0045】
[実施例4]
実施例2で調製したアルケニル基含有オルガノポリシルメチレン(A2)100gに、上記式(11)のSiH基含有ポリシロキサン(C1)25.7g(Si-H/Si-Vi=3)、白金触媒(D1)0.1g(白金金属換算量20ppm)を添加して混合し、実施例1と同様に150℃で1時間加熱硬化させて、オルガノポリシルメチレン硬化物を成形した。その物性を表1に示す。
【0046】
[実施例5]
実施例2で調製したアルケニル基含有オルガノポリシルメチレン(A2)70gに、下記式(12)で表わされる両末端ビニル基含有ジメチルポリシロキサン・ジフェニルポリシロキサン共重合体(B1)30g、SiH基含有ポリシロキサン(C1)20.1g(Si-H/Si-Vi=3)、白金触媒(D1)0.1g(白金金属換算量20ppm)を添加して混合し、実施例1と同様に150℃で1時間加熱硬化させて、オルガノポリシルメチレン‐オルガノポリシロキサン硬化物を成形した。その物性を表1に示す。
【化17】

【0047】
[比較例]
上記式(12)で表される両末端ビニル基含有ジメチルポリシロキサン・ジフェニルポリシロキサン共重合体(B1)100g、SiH基含有ポリシロキサン(C1)7g(Si-H/Si-Vi=3)、白金触媒(D1)0.1g(白金金属換算量20ppm)を添加して混合し、実施例1と同様に150℃で1時間加熱硬化させて、オルガノポリシロキサン硬化物を成形した。その物性を表1に示す。
【0048】
上記各硬化物の物性評価は以下の方法で行った。結果を表1に示す。
(1)外観は、硬化物の外観を目視で観察し、変色の有無、透明性を目視にて評価した。
(2)硬度は、JIS K6253準拠タイプAデュロメータにて測定した。
(3)引っ張り強度、伸び、密度、体積抵抗率、絶縁破壊強度、比誘電率、誘電正接は、JIS K6249に準拠して測定した。
(4)水蒸気透過性は、JIS Z0208に準拠して測定した。
【0049】
【表1】

【0050】
表1より、実施例3〜5の硬化物は、透明性を有し、機械的強度に優れ、水蒸気透過性が少ない。比較例の硬化物は機械的強度が劣り、水蒸気透過性が大きい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のオルガノポリシルメチレン組成物は、機械的特性、耐熱性、電気絶縁性、耐水性、気体透過性、光学特性に優れ、特に透明性を必要とするLED用レンズやLED用封止材料など光学材料に最適な材料である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】

(式中、Rは互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、(R)SiCH−、または(R)SiO−より選ばれる基であり、該1価炭化水素基の少なくとも2つはアルケニル基であり、前記式中Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、アルコキシ基、または水酸基より選ばれる基であり、mは1〜100、nは1〜100の整数である)で表され、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシルメチレン。
【請求項2】
下記平均組成式(2):
[化2]
ClSi(CH(4−e−f)/2 (2)
(Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基より選ばれる基であり、e、fはe+f=1.5〜2.8を満たす数であり、但し、0.001≦f/(e+f)≦0.9)で表されるオルガノポリシルメチレンと、
下記一般式(3):
[化3]
SiCl4−(g+h) (3)
(Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基より選ばれる基であり、Rは炭素原子数1〜10のアルケニル基であり、gは0〜2、hは1〜3の整数、但しg+hは1〜3である)で表されるアルケニル基含有シランとの反応により請求項1に記載のオルガノポリシルメチレンを製造する方法。
【請求項3】
(A)請求項1に記載のオルガノポリシルメチレン、
(C)ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中2個以上有する、オルガノハイドロジェンポリシルメチレンまたはオルガノハイドロジェンポリシロキサンから選択される架橋剤の上記(A)オルガノポリシルメチレンのアルケニル基1モルあたり、該架橋剤中のSiH基が0.1〜5.0モルとなる量、及び
(D)白金族金属系触媒の触媒量
を含有することを特徴とするオルガノポリシルメチレン組成物。
【請求項4】
(B)下記平均組成式(4):
[化4]
SiO(4−b)/2 (4)
(式中、Rは互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、または(R)SiO−より選ばれる基であり、該1価炭化水素基の少なくとも2つはアルケニル基であり、前記式中Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、アルコキシ基、または水酸基より選ばれる基であり、bは1.5〜2.8を満たす数である)で表されるオルガノポリシロキサンをさらに含有し、
請求項3に記載の架橋剤(C)が、(A)オルガノポリシルメチレン及び(B)オルガノポリシロキサンのアルケニル基1モルあたり、該架橋剤中のSiH基が0.1〜5.0モルとなる量である請求項3に記載のオルガノポリシルメチレン組成物。
【請求項5】
(A)請求項1に記載のオルガノポリシルメチレン 30〜100重量部、
(B)請求項4に記載のオルガノポリシロキサン 0〜70重量部(但し、(A)と(B)の合計は100重量部である)、及び
(C)上記(A)オルガノポリシルメチレン及び(B)オルガノポリシロキサンのアルケニル基1モルあたりSiH基が0.1〜5.0モルとなる量の請求項3に記載の架橋剤、
(D)白金族金属系触媒の触媒量
を含有することを特徴とする請求項4に記載のオルガノポリシルメチレン組成物。
【請求項6】
請求項3に記載の架橋剤(C)が下記平均組成式(5):
[化5]
SiO(4−c−d)/2 (5)
(Rは、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、水素原子、アルコキシ基、水酸基より選ばれる基であり、cおよびdは0.7≦c≦2.1、0.001≦d≦1.0、かつ0.8≦c+d≦3.0を満足する数である)
で表され、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである請求項3〜5のいずれか1項に記載のオルガノポリシルメチレン組成物。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載のオルガノポリシルメチレン組成物を硬化してなるオルガノポリシルメチレン硬化物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−42744(P2011−42744A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191754(P2009−191754)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】