説明

オレフィン系熱可塑性エラストマーの製造方法

【課題】製造工程における発熱を抑えてオレフィン系共重合体ゴムの劣化を抑制しながら、効率的にオレフィン系熱可塑性エラストマーを製造する方法を提供する。
【解決手段】エチレン、炭素原子数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンを重合して得られるオレフィン系共重合体ゴム(A)100重量部、該オレフィン系共重合体ゴム(A)100重量部に対し揮発性有機溶媒(B)を11〜50重量部、オレフィン系樹脂(C)を5〜150重量部、鉱物油軟化剤(D)を1〜300重量部混合した混合物を、押出機中で混練しながら前記揮発性有機溶媒(B)を除去してオレフィン系熱可塑性エラストマーを製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系熱可塑性エラストマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマーは加硫工程が不要であり、通常の熱可塑性樹脂を加工するための成形機で加工が可能であるという特徴を生かして、自動車部品、家電部品或いは雑貨等を始めとする広い分野において使用されている。熱可塑性エラストマーの中でも、エチレン、炭素原子数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンを重合して得られるオレフィン系共重合体ゴムとオレフィン系樹脂とを混練して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、軽量で、かつリサイクル可能であり、塩素を含まない環境に優しい材料として幅広く使用されている。
【0003】
オレフィン系熱可塑性エラストマーの製造方法としては、オレフィン系共重合体ゴムとオレフィン系樹脂とをバンバリーミキサーで例示される密閉式混練機により混練を行う方法が知られている。ところがこの方法は、バンバリーミキサーのようなバッチ式混練機を使用するため、生産性が悪く、効率的な方法ではないという問題があった。
【0004】
このような問題を解決する方法として、オレフィン系共重合体ゴムとオレフィン樹脂とを二軸押出機で混練する方法が知られている。例えば特許文献1には、オレフィン系共重合体ゴム100重量部と揮発性有機溶媒3〜10重量部とからなるゴム混合物を多段ベント式押出機の供給部より押出機内に導入するとともに、不活性ガス雰囲気下でポリオレフィン樹脂を他の供給部より該押出機内部に導入して、ゴム混合物とポリオレフィン樹脂とを混練、脱溶媒するゴム組成物の製造方法が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−37115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記ような割合でオレフィン系共重合体ゴム、揮発性有機溶媒およびオレフィン系樹脂とを押出機にて混練した場合には、押出機中で著しく発熱し、オレフィン系共重合体ゴムが劣化してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、製造工程における発熱を抑えてオレフィン系共重合体ゴムの劣化を抑制しながら、効率的にオレフィン系熱可塑性エラストマーを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、エチレン、炭素原子数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンを重合して得られるオレフィン系共重合体ゴム(A)100重量部、該オレフィン系共重合体ゴム(A)100重量部に対し揮発性有機溶媒(B)を11〜50重量部、オレフィン系樹脂(C)を5〜150重量部、鉱物油軟化剤(D)を1〜300重量部混合した混合物を、押出機中で混練しながら前記揮発性有機溶媒(B)を除去してオレフィン系熱可塑性エラストマーを製造する方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーの製造方法によれば、製造工程における発熱を抑えてオレフィン系共重合体ゴムの劣化を抑制しながら、効率的にオレフィン系熱可塑性エラストマーを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では、エチレン、炭素原子数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンを重合して得られるオレフィン系共重合体ゴム(A)を用いる。本発明におけるオレフィン系共重合体ゴム(A)とは、JIS K−6253のA硬度が98以下のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムである。以下、本発明において「エチレン単位」のような用語は、重合して得られたゴム、あるいは樹脂中に存在するモノマー由来の構成単位を意味する。
【0011】
上記炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテン等;ならびに、これらの2以上の組合せを例示することができる。中でも、入手容易性の観点から、プロピレンまたは1−ブテンが好ましく、プロピレンがより好ましい。
【0012】
上記非共役ポリエンとしては、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、および7−メチル−1,6−オクタジエンのような鎖状非共役ジエン;ならびに、シクロへキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、および6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネンのような環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ナノジエン等のトリエンを例示することができる。中でも、5−エチリデン−2−ノルボルネンまたはジシクロペンタジエンが好ましい。
【0013】
オレフィン系共重合体ゴム(A)に含まれるエチレン単位、炭素原子数3〜20のα−オレフィン単位、および非共役ポリエン単位の合計を100重量%とするとき、該オレフィン系共重合体ゴム(A)に含まれるエチレン単位の量は、通常30〜90重量%、好ましくは40〜80重量%であり、炭素原子数3〜20のα−オレフィン単位の量は、通常5〜70重量%、好ましくは15〜60重量%である。オレフィン系共重合体ゴム(A)に含まれる非共役ポリエン単位の量は、通常0.1〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%である(これら3種類のモノマー単位の合計を100重量%とする)。オレフィン系共重合体ゴム(A)として、具体的には、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・1,4−ヘキサジエン共重合体、およびエチレン・プロピレン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体;ならびにこれらの2以上の組合せを例示することができる。中でも、エチレン単位の含有量が40〜80重量%、プロピレン単位の含有量が15〜55重量%、5−エチリデン−2−ノルボルネン単位の含有量が2〜10重量%のエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体が好ましい。
【0014】
オレフィン系共重合体ゴム(A)は公知の方法で重合して得ることができる。該重合方法として、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒のような重合触媒を用いて、ヘキサンやヘプタン、トルエン、キシレンのような不活性溶媒中で重合する方法を例示することができる。
【0015】
オレフィン系共重合体ゴム(A)のムーニー粘度(ML1+4100℃)は、好ましくは10〜350、より好ましくは30〜300である。ムーニー粘度が前記範囲にあるようなオレフィン系共重合体ゴム(A)を用いて得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、成形した際に、機械的強度に優れ、かつ極めて外観良好な成形品を与えることができる。
【0016】
本発明における揮発性有機溶媒(B)とは、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素およびそのハロゲン誘導体、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素およびそのハロゲン誘導体、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、およびクロロベンゼン等のハロゲン誘導体などが用いられる。これら溶媒は、単独で、あるいは組合せて用いてもよい。揮発性有機溶媒(B)は、オレフィン系共重合体ゴム(A)を溶液重合法において重合する際に用いられる溶媒であってもよい。また、揮発性有機溶媒(B)には、オレフィン系共重合体ゴム(A)を重合する際に用いられるモノマーが含まれていてもよい。
【0017】
本発明におけるオレフィン系樹脂(C)とは、エチレンおよび/またはα−オレフィンを重合して得られる樹脂であり、例えば、エチレン単位を70重量%以上含むエチレン系樹脂や、プロピレン単位を50重量%以上含むプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0018】
本発明においてオレフィン系樹脂(C)として用いられるプロピレン系樹脂としては、プロピレン単位を50〜100重量%、好ましくは80〜100重量%含有する、プロピレンの単独重合体、またはプロピレンと、エチレン及び/又は炭素原子数4〜10のα−オレフィン(たとえば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、1−オクテンおよび4−メチル−1−ペンテン)とのランダム共重合体もしくはブロック共重合体が挙げられる。該共重合体として、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン共重合体を例示することができる。オレフィン系樹脂(C)として、プロピレンの単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体またはプロピレン・1−ブテン共重合体を用いることが好ましい。
【0019】
上記ブロック共重合体とは、プロピレンとエチレンとを用いる場合について説明すると、以下のような工程からなる製造方法で製造される重合体を意味する。
(1)プロピレンを単独重合し、ポリプロピレンを生成させる工程;
(2)該ポリプロピレンの存在下に、プロピレンとエチレンとを共重合させる工程。
または
(1)プロピレンを単独重合し、ポリプロピレンを生成させる工程;
(2)未反応のプロピレンモノマーを除去し、該ポリプロピレンの存在下に、エチレンを添加して重合させる工程。
前者の場合、得られる重合体は実質上、工程(1)で生成されるポリプロピレンと、工程(2)で生成されるプロピレン−エチレン共重合体との混合物である。
【0020】
本発明で用いるオレフィン系樹脂(C)がプロピレン系樹脂である場合、該プロピレン系樹脂は、JIS K6758に従って、21.18Nの荷重下、温度230℃で測定されるメルトフローレートが0.1〜300g/10分であることが好ましく、0.5〜200g/10分であることがより好ましい。
【0021】
本発明においてオレフィン系樹脂(C)として用いられるエチレン系樹脂としては、エチレン単位を70〜100重量%含有する、(1)エチレンの単独重合体、または(2)エチレンと、炭素原子数3〜10のα−オレフィン(たとえば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−ヘキセン)および/または極性基と炭素−炭素二重結合とを有する単量体(たとえば、酢酸ビニル、アクリル酸エステルおよびメタアクリル酸エステル)との共重合体が挙げられる。好ましいエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ペンテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体が挙げられる。
【0022】
本発明で用いるオレフィン系樹脂(C)がエチレン系樹脂である場合、該エチレン系樹脂は、JIS K6760に従って、21.18Nの荷重下、温度190℃で測定されるメルトフローレートが0.01〜300g/10分であることが好ましく、0.1〜200g/10分であることがより好ましい。
【0023】
本発明で用いるオレフィン系樹脂(C)は、公知の方法で重合して得ることができる。該重合方法としては、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒のような重合触媒を用いて、(1)ヘキサンやヘプタン、トルエン、キシレンのような不活性溶媒中で重合する方法;(2)液状のモノマーを重合する方法(バルク重合法);(3)気体のモノマーを重合する方法(気相重合法);および(4)これらの組合せ;を例示することができる。オレフィン系樹脂(C)の立体構造は特に限定されず、立体構造として、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造、およびこれら両構造が混合した構造を例示することができる。中でも、アイソタクチック構造を主たる構造とするプロピレン系樹脂が好ましい。
【0024】
本発明における鉱物油軟化剤(D)としては、アロマ系鉱物油、ナフテン系鉱物油、およびパラフィン系鉱物油のような、平均分子量が300〜1500で流動点が0℃以下の、石油の高沸点留分を例示することができる。中でも、パラフィン系鉱物油が好ましい。鉱物油軟化剤(D)は、予めオレフィン系共重合体ゴムに含有させておいてもよい。ゴム分野において、このように鉱物油軟化剤を含有するオレフィン系共重合体ゴムは、一般に油展ゴムと呼ばれており、該鉱物油軟化剤は伸展油と呼ばれている。
【0025】
鉱物油軟化剤を含有するオレフィン系共重合体ゴムを得る方法としては、(1)ロールやバンバリーミキサーのような混練装置を用い、両者を機械的に混練する方法、(2)オレフィン系共重合体ゴム(A)の製造工程で得られるオレフィン系共重合体ゴムの溶液に鉱物油軟化剤を添加し、その後、スチームストリッピングのような方法によって脱溶媒する方法、を例示することができる。
【0026】
本発明は、前記したオレフィン系共重合体ゴム(A)100重量部と、該オレフィン系共重合体ゴム(A)100重量部に対し揮発性有機溶媒(B)を11〜50重量部、オレフィン系樹脂(C)を5〜150重量部、鉱物油軟化剤(D)を1〜300重量部混合した混合物を、押出機中で混練しながら前記揮発性有機溶媒(B)を除去してオレフィン系熱可塑性エラストマーを製造する方法である。オレフィン系共重合体ゴム(A)と、揮発性有機溶媒(B)、オレフィン系樹脂(C)および鉱物油軟化剤(D)を前記の割合で押出機中で混練することにより、製造工程における発熱を抑えてオレフィン系共重合体ゴムの劣化を抑制しながら、効率的にオレフィン系熱可塑性エラストマーを製造することができる。オレフィン系共重合体ゴム(A)100重量部に対する揮発性有機溶媒(B)の割合は、15重量部以上であることが好ましく、20重量部以上であることがさらに好ましい。また、オレフィン系共重合体ゴム(A)100重量部に対するオレフィン系樹脂(C)の割合は、10〜140重量部であることが好ましく、15〜120重量部であることがさらに好ましい。オレフィン系共重合体ゴム(A)100重量部に対する鉱物油軟化剤(D)の割合は、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーの柔軟性と粘着性のバランスの観点から、5〜200重量部であることが好ましい。
【0027】
本発明では、オレフィン系共重合体ゴム(A)、揮発性有機溶媒(B)、オレフィン系樹脂(C)および鉱物油軟化剤(D)以外の成分、たとえば、タルクおよび炭酸カルシウムのような無機フィラー;難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、耐熱・耐光安定剤、老化防止剤、および離型剤のような添加剤;または顔料を併用してもよい。これらは、オレフィン系共重合体ゴム(A)やオレフィン系樹脂(C)中に配合されていてもよいし、オレフィン系共重合体ゴム(A)、揮発性有機溶媒(B)オレフィン系樹脂(C)および鉱物油軟化剤(D)を押出機中で混練する際に別途添加してもよい。
【0028】
本発明で用いる押出機は1台であってもよく、複数の押出機を連結して用いてもよい。オレフィン系共重合体ゴム(A)、揮発性有機溶媒(B)、オレフィン系樹脂(C)および鉱物油軟化剤(D)を混練する際に用いる押出機は、揮発性有機溶媒(B)を放出するためのベントを1つ以上、好ましくは2つ以上有するベント式押出機である必要がある。また、オレフィン系共重合体ゴム(A)、揮発性有機溶媒(B)、オレフィン系樹脂(C)および鉱物油軟化剤(D)を混練する際に用いる押出機は、二軸押出機であることが好ましい。二軸押出機としては、2本のスクリューの回転方向が同方向のもの、異方向のもの、或いは2本のスクリューが完全に又は部分的にかみ合うもの、かみ合わないもの等任意のものが挙げられるが、その中でも特に、スクリュー回転方向が同方向で、2本のスクリューが完全に又は部分的にかみ合うものが好ましい。
【0029】
本発明では、オレフィン系共重合体ゴム(A)、揮発性有機溶媒(B)、オレフィン系樹脂(C)および鉱物油軟化剤(D)を同時に押出機に供給する必要はないが、押出機中でこれらを混練する際に、オレフィン系共重合体ゴム(A)100重量部と、該オレフィン系共重合体ゴム(A)100重量部に対し、揮発性有機溶媒(B)11〜50重量部、オレフィン系樹脂(C)5〜150重量部、鉱物油軟化剤(D)1〜300重量部の割合になっている必要がある。このような割合の混合物を混練しながら、前記揮発性有機溶媒(B)を押出機のベントから除去することにより、発熱を抑えてオレフィン系共重合体ゴムの劣化を抑制しながら、効率的にオレフィン系熱可塑性エラストマーを製造することができる。
【0030】
1台の押出機を用いてオレフィン系熱可塑性エラストマーを製造する方法としては、オレフィン系共重合体ゴム(A)、揮発性有機溶媒(B)、オレフィン系樹脂(C)および鉱物油軟化剤(D)を1つの供給口から押出機に供給して混練しながら、ベントから揮発性有機溶媒(B)を除去する方法や、複数の供給口を有するベント式押出機を用いて、オレフィン系共重合体ゴム(A)、揮発性有機溶媒(B)および鉱物油軟化剤(D)を上流側の供給口から押出機に供給し、下流側の供給口からオレフィン系樹脂(C)を供給して混練しながら、ベントから揮発性有機溶媒(B)を除去する方法が挙げられる。オレフィン系樹脂(C)は、2箇所以上の供給口から分割して供給してもよい。また後者の方法では、図2に例示するように、重合槽(12)で重合されたオレフィン系共重合体ゴム(A)が重合溶媒に分散された分散液を、オレフィン系共重合体ゴム(A)100重量部に対し重合溶媒11〜50重量部となるように調整した後、直接押出機(13)へ供給し、さらに鉱物油軟化剤(D)とオレフィン系樹脂(C)を押出機(13)へ供給してもよい。このような場合には、重合溶媒が揮発性有機溶媒(B)となる。これらを押出機(13)で混練しながら、ベント(16)、(17)および(18)から揮発性有機溶媒(B)を除去し、エラストマーを得ることができる。
【0031】
2台の押出機を用いてオレフィン系熱可塑性エラストマーを製造する方法としては、第1の押出機にオレフィン系共重合体ゴム(A)および揮発性有機溶媒(B)を供給して混合しながら、該第1の押出機が連結された第2の押出機に供給し、さらに該第2の押出機に鉱物油軟化剤(D)とオレフィン系樹脂(C)を供給して混練しながら、ベントから揮発性有機溶媒(B)を除去する方法が挙げられる。鉱物油軟化剤(D)は、第1の押出機に供給してもよい。連結された2台の押出機を用いる場合には、第1の押出機としてはベントのない押出機を用いる。第2の押出機としては、オレフィン系樹脂(C)の供給口より下流側にベントを有するベント式押出機を用いる。このように2台の押出機を用いる場合にも、重合槽で重合されたオレフィン系共重合体ゴム(A)が重合溶媒に分散された分散液を、オレフィン系共重合体ゴム(A)を重合溶媒との割合が、オレフィン系共重合体ゴム(A)100重量部に対し重合溶媒11〜50重量部となるように調整した後、直接第1の押出機へ供給してもよい。
【0032】
3台の押出機を用いてオレフィン系熱可塑性エラストマーを製造する場合には、第1の押出機と第2の押出機が、それぞれ第3の押出機に連結された押出機を用いる。第1の押出機には、オレフィン系共重合体ゴム(A)、揮発性有機溶媒(B)および鉱物油軟化剤(D)を供給する。第2の押出機には、オレフィン系樹脂(C)を供給する。これらを第3の押出機中で合流させて混練しながら、ベントから揮発性有機溶媒(B)を除去してオレフィン系熱可塑性エラストマーを得ることができる。この場合には、第1の押出機としてはベントのない押出機を用い、第3の押出機としてはベント式押出機を用いる。第2の押出機は、ベントがあってもなくてもよい。このように3台の押出機を用いる場合にも、重合槽で重合されたオレフィン系共重合体ゴム(A)が重合溶媒に分散された分散液を、オレフィン系共重合体ゴム(A)を重合溶媒との割合が、オレフィン系共重合体ゴム(A)100重量部に対し重合溶媒11〜50重量部となるように調整した後、直接第1の押出機へ供給することができる。
【0033】
本発明では、連結された2台の押出機を用いてオレフィン系熱可塑性エラストマーを製造することが好ましい。2台の押出機を用いる場合について、図3を用いて詳細に説明する。図3は、第1押出機と第2押出機とが連結された装置を表している。また、オレフィン系共重合体ゴム(A)と揮発性有機溶媒(B)は、オレフィン系共重合体ゴムの重合槽(19)から、図示していない濃度調整工程を経て、直接第1押出機(20)へ供給可能となっている。第1押出機中では、オレフィン系共重合体ゴム(A)と揮発性有機溶媒(B)とが混練される。その後第2押出機(21)へ供給され、供給ポンプ(22)から供給される鉱物油軟化剤(D)と、供給口(23)から供給されるオレフィン系樹脂(C)とともにさらに混練される。ベント(24)、(25)および(26)から揮発性有機溶媒(B)を除去して、オレフィン系熱可塑性エラストマーを得ることができる。
【0034】
本発明の製造方法で製造されるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、バンパー部品、ルーフモール、サイドモール、ボディパネル、サイドシールド、グラスランチャンネル、インストルメントパネル表皮、ドア表皮、天井表皮、ウェザーストリップ材、ホース、およびステアリングホイールのような自動車部品;電線被覆、コネクター、およびキャッププラグのような電気部品;靴底およびサンダルのような履物;水泳用フィン、水中眼鏡、ゴルフクラブグリップ、および野球バットグリップのようなレジャー用品;ガスケット、土木・建築用の各種ガスケットやシート、防水布、ガーデンホース、ベルト、および工業用パッキンのような工業用雑品等に用いられる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(1)原料
オレフィン系共重合体ゴム(A)として、ベール状のエスプレン553(住友化学(株)製)を、ゴム用の粉砕機で粉砕したものを用いた(以下、EPDMと称する)。該EPDMは、エチレン単位の含有量:58.0重量%、プロピレン単位の含有量:37.5重量%、5−エチリデン−2−ノルボルネン単位の含有量:4.5重量%であるエチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴムである。
オレフィン系樹脂(C)として、ノーブレンU501E1(住友化学(株)製)を用いた(以下、PPと称する)。該PPは、230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートが130g/10分、融点が160℃のプロピレンの単独重合体である。
揮発性有機溶媒(B)として、ヘキサンと5−エチリデン−2−ノルボルネンを、ヘキサン:5−エチリデン−2−ノルボルネン=15:1の重量比で混合した混合溶媒を用いた(以下、混合溶媒と称する)。
鉱物油軟化剤(D)として、PW−100(出光興産(株)製)を用いた(以下、軟化剤と称する)。該軟化剤は、パラフィン系鉱物油であり、平均分子量が545、流動点が−12.5℃である。
(2)装置
図1に示すような第1押出機と第2押出機とが連結された装置を用いて、オレフィン系熱可塑性エラストマーを製造した。第1押出機は、日本製鋼所製の商品名がTEX65XCTなる二軸押出機であり、シリンダー内径が69mm、シリンダー長さとシリンダー内径との比(L/D)が31.5であった。また、シリンダーの内側には冷却用の水配管を有しており、シリンダーの外側には、温度をコントロールするためのヒーターを有していた。第2押出機は、日本製鋼所製の商品名がTEX30αなる二軸押出機であり、シリンダー内径が32mm、シリンダー長さとシリンダー内径との比(L/D)が42であった。また、シリンダーの内側には冷却用の水配管を有しており、シリンダーの外側には、温度をコントロールするためのヒーターを有していた。
【0036】
[実施例1]
EPDMとPPを、それぞれ重量式フィーダーを用いて第1押出機(1)の供給口(3)から、EPDMを20kg/hr、PPを8.6kg/hrの供給速度で連続的に供給した。さらに第1押出機の供給ポンプ(4)から混合溶媒を4kg/hrの供給速度で、供給ポンプ(5)から軟化剤を6.8kg/hrの供給速度で、連続的に供給した。第1押出機(1)のスクリュー回転数は50rpm、シリンダー温度は130℃に設定した。該第1押出機(1)において、EPDM、PP、混合溶媒、軟化剤を混合しながら、供給口(10)を通じて連続的に第2押出機(2)に供給した。第2押出機(2)は、スクリュー回転数300rpm、シリンダー温度180℃に設定した。第2押出機(2)において、EPDM、PP、混合溶媒、軟化剤を混練しながら、ベント(6)、ベント(7)、ベント(8)およびベント(9)から混合溶媒を除去し、第2押出機に併設したペレタイザーにより混練物をカットしてペレット状のオレフィン系熱可塑性エラストマーを得た。第2押出機の(11)の位置に設けた温度計で測定したエラストマーの温度を、表1に示した。
【0037】
[比較例1]
混合溶媒の供給速度を2kg/hrに変更したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

実施例1と比較例1を対比すると、実施例1のほうが、第2押出機出口温度が低いことがわかる。このことから、実施例1では、オレフィン系共重合体ゴム(A)の劣化が抑制されているといえる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例および比較例で用いたベント式二軸押出機の概略図である。
【図2】本発明で用いられる他の押出機の概略図である。
【図3】本発明で用いられる他の押出機の概略図である。
【符号の説明】
【0040】
1:第1押出機
2:第2押出機
3:供給口
4:供給ポンプ
5:供給ポンプ
6:ベント
7:ベント
8:ベント
9:ベント
10:供給口
11:第2押出機樹脂温度測定位置
12:オレフィン系共重合体ゴム重合槽
13:押出機
14:供給ポンプ
15:オレフィン系樹脂(C)供給口
16:ベント
17:ベント
18:ベント
19:オレフィン系共重合体ゴム重合槽
20:第1押出機
21:第2押出機
22:供給ポンプ
23:オレフィン系樹脂(C)供給口
24:ベント
25:ベント
26:ベント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン、炭素原子数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンを重合して得られるオレフィン系共重合体ゴム(A)100重量部、該オレフィン系共重合体ゴム(A)100重量部に対し揮発性有機溶媒(B)を11〜50重量部、オレフィン系樹脂(C)を5〜150重量部、鉱物油軟化剤(D)を1〜300重量部混合した混合物を、押出機中で混練しながら前記揮発性有機溶媒(B)を除去してオレフィン系熱可塑性エラストマーを製造する方法。
【請求項2】
オレフィン系樹脂(C)がプロピレン系樹脂である請求項1に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマーを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−156407(P2008−156407A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344191(P2006−344191)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】