説明

オンデマンド適応制御系

【課題】コンピュータ数値制御(CNC)機械がもたらす能力を工作機械ユーザにより効果的に使用させるインタフェースを提供する。
【解決手段】適応制御系が提供する負荷監視能力は、スピンドル駆動装置126からの入来負荷信号を監視する。監視対象入来負荷が設定警告レベルを上回った場合、警告出力がアクティブとされ、入来負荷が設定警告レベル未満へ低下するまで維持される。入来負荷が設定警告レベルを上回る場合、警告出力と送り留保出力がアクティブとされ、適応コントローラのリセットが要求されるまで維持される。通常の切削操作は、警報レベルを生成した状態に対処されるまでは再開することはできない。工作機械128の適応制御操作は、入来負荷の監視と比例積分微分(PID)コントローラ(104,106,108)アルゴリズムに基づき送り速度変化を要求することでもたらされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ねCNC操作型工作機械上での切削作業の適応制御に関する。より詳しくは、本発明は機械加工工程期間中の材料の塊状除去の適応制御に関する。
【背景技術】
【0002】
生産には、部品製造時間を最小化し生産処理能力を増大させねばならぬことが要求される。機械の処理能力は、工程期間中の時間と機械加工工程期間中に発生するどんな中断によっても影響を受ける。それ故、材料が取り除く速度を改善し、早期の工具磨損や不良が原因の工程中断を最小化することで、機械加工時間を低減することができる。これらの機能を達成すべく従来技術では適応制御が用いられてきたが、この工程はセットアップと操作が困難であった。
【特許文献1】米国特許第4617635号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コンピュータ数値制御(CNC;computer numerical control)資源を用いた適応制御動作における障害の中には、起動がそもそも手動であることがある。適応制御機能の起動を自動化する従来技術の試みは、時間的或いは幾何学的な情報を知っておかねばならず、それ故起動用に工程の詳細な知識を理解していなければならない点で拙劣であった。
【0004】
どんなCNC機械の基本的機能も、自動かつ精密かつ一貫した動き制御にある。CNC装置の全ての形式が、軸と呼ぶ2以上の運動方向を有する。これらの軸は、それらの移動長さ沿いに精密にかつ自動的に位置決めすることができる。最も一般的な軸種は、直線と回転である。一般に、移動種別と移動軸と移動量と送り速度はほぼ全てのCNC機械工具にとってプログラム可能である。
【0005】
殆ど全ての現行CNC制御が、プログラミング用にワードアドレス形式を用いている。このことは、CNCプログラムが文章様コマンドで出来ていることを意味する。各コマンドは、CNCワードで出来ている。各CNCワードは、文字アドレスと数値を有する。GとMの文字アドレスにより、特別な機能を割り当てることができる。G準備機能は、一般にモード設定に用いられる。M補助機能は、通常はプログラム可能なスイッチ(例えば、スピンドルのオン/オフ)として用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コンピュータ数値制御(CNC)機械がもたらす能力を工作機械ユーザにより効果的に使用させるインタフェースを提供するものである。本発明の適応制御モジュールは経路送り速度を制御し、監視対象である所望の「目標」スピンドル負荷を達成する。このモジュールは、様々な構成において用いることができる。第1の構成(完全一体化型)では、適応制御モジュールは機械工具管理システム内に組み込まれる。第2の構成(準一体化型)では、適応制御モジュールに特注工具インタフェースを組み込む能力が工作機械組立機(すなわち、改装機)に備わる。第3の構成(独立型)では、工具一式データに一切関連付けることなくオペレータに手動インタフェースが提供される。
【0007】
3個の構成は全て、適応制御モジュールのセットアップと操作と保守を容易にするユーザインタフェース(より一般的にはインタフェース)を表示する能力を有する。ユーザインタフェース(UI;User Interface)は、独自開発特注化装備を用いた基本制御内或いはCNCに対する開放型システムインタフェースを用いたパソコン(PC;personal computer)内に実装することができる。本発明中の開放型システムは、開放型(すなわち、所有権のない)ソフトウェアインタフェースに関連付けてある。いずれにせよ、UIは基本的には同じである。UIは、3個の基本画面で出来ている。すなわち、適応セットアップとPIDセットアップとPLC情報とである。
【0008】
経路送り速度の制御は、プログラム可能論理回路コントローラ(PLC;programmable logic controller)内の適応制御モジュール(ここでは、適応コントローラとも呼ぶ)により行われ、アナログ表示負荷に基づき修正型比例−積分−微分(PID)制御計算を実行する。大半の機械加工工程では、この負荷はスピンドル負荷であり、それは工具負荷を表わすものである。この理由から、適応制御モジュールと共に使用するスピンドル駆動装置はスピンドル駆動装置に提示される負荷を表わすアナログ電圧を出力する能力をもたねばならない。このことは通常は問題ではなく、何故なら大半のスピンドル駆動装置はスピンドル負荷の視覚的指示をもたらすよう計器を接続することのできるアナログ出力端を有するからである。スピンドルの基本速度未満の適応負荷制御は、試みるべきではない。基本速度未満では安定な制御は困難であり、何故ならスピンドルはスピンドルモータ動作の一定馬力領域内にないからである。
【0009】
UIは、RS−232シリアルリンク或いはCNCのプログラム可能な機械インタフェースI/O構造を介して適応コントローラ(PLC)と通信する。遠隔端末ユニット(RUT;Remote Terminal Unit)は、シリアルリンク上で情報を送信するのに用いる通信プロトコルである。高速I/O通信プロトコルは、CNCのプログラム可能な機械インタフェースI/O構造上に情報を送信するのにも用いることができる。これらのプロトコルを用いることで、適応コントローラ内のレジスタを視認して編集することができ、PLC向けのプログラミングソフトウェアの必要性を打ち消すことができる。通信パケットは、適応コントローラ内に含まれる情報をユーザに供給するようUIソフトウェアにより定期的にスケジュール管理される。
【0010】
適応制御モジュールの目的は、材料除去の最適化においてオペレータとプログラマを支援し、部品製造における「粗削り」や「準粗削り」工程期間中に可能な最高の部品処理能力を得ることにある。適応制御モジュールは一般に「仕上げ」工程期間中に使用するよう意図されてはおらず、何故なら工具負荷は一般に非常に低くかつ制御が困難であるからである。さらにまた、経路送り速度の変動は望ましからざるもの(表面仕上げのばらつき)である。UIはユーザ入力を最小化し、その一方で柔軟な構成を用いた高度の制御を維持する。目標は、統合された工具管理と高度な適応制御ユニットを用いた簡単な処理を達成することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、添付図面と併せ本発明の以下の詳細な説明を読むことでより良く理解されるものである。本発明の以下の説明は、その最良の現在判明している実施形態における本発明の教示を可能にするものとして提供するものである。関連技術における当業者は、本発明の有益な成果を依然獲得したまま説明した実施形態に対する多くの変形が可能であることを認識しよう。本発明の所望の便益の一部が他の特徴を利用することなく本発明の幾つかのの特徴を選択することで獲得できることもまた、明らかであろう。従って、業界にて仕事をする人には、本発明に対する多くの修正と適用が可能であり、幾つかの実施形態では望ましくさえもあり、本発明の一部をなすことが認識されよう。かくして、以下の説明は本発明原理の例示として提供するものであってその限定ではなく、何故なら本発明範囲は請求項により規定されるからである。
【0012】
適応制御モジュールは、上記に言及した3個の構成を創成する二つの構成要素を含むものである。これらの二つの構成要素は、適応コントローラとインタフェースである。インタフェースは適応制御モジュールの動作にとっては随意選択的であり、適応コントローラは必須である。
【0013】
図1は、オンデマンド適応制御系のブロック線図を示す。図中の各ブロックの機能は、より詳しく後述することにする。適応コントローラ60は、ハードウェアとソフトウェアの両方からなる。適応コントローラ60はプログラム可能論理コントローラ(PLC;programmable logic controller)の一構成要素であり、適応機械制御の遂行に必要な全ての機能を含むものである。これらの機能のうちの一つが、アナログ電圧(PV)を受け取り、それを算術制御アルゴリズムに用いることのできる2値表現へ変換する能力である。他の機能は、24ボルトのディジタル信号として2値情報を受容し出力する能力である。事実、適応コントローラ60は追加の入/出力モジュールを拡張バス内にプラグ接続することでその基板搭載型入/出力構造を拡張する能力を有する。
【0014】
大半のPLCは数学的制御アルゴリズムを実行する能力を有するが、本発明に使用するPLCは適応制御モジュール60の大半の作業を10ミリ秒以内に実行する組み込み型の比例−積分−微分(PID;Proportional−Integral−Derivative)機能ブロック140,106,108を有する。この時間には、入力サンプルのフィルタ処理を達成するアナログ入力のオーバーサンプリングが含まれる。この方法を用いることで、信号対ノイズ比(SNR;Signal to Noise Ratio)は、特別な構成要素やケーブル接続を用いることなく大幅に改善することができる。
【0015】
適応コントローラ60は、CNCのPMCのI/O構造とスピンドル駆動装置126からのアナログ出力(PV)を介して外部制御データを受信する。制御データは、適応コントローラ60に実行対象タスクを知らせる3片の情報及び個別入力で出来ている。
【0016】
適応コントローラ60は、外部からの以下の2値情報を受信する。すなわち、
設定点(SP;Set Point);スピンドル駆動装置が保持すべき所望の負荷を表わす。
警告限界;コントローラが警告出力ビットを設定することになる負荷レベルを表わす。
警報限界;コントローラが帰還保持及び警告出力ビットを設定することになる負荷レベルを表わす。
負荷モニタイネーブル;スピンドル負荷の能動的監視を要求するものである。
PID制御イネーブル;適応制御の起動を要求するものである。
コントローラリセット;全ての未決警報とPIDループ制御をリセットするものである。
【0017】
情報の最初の3片は、動作を起こすべき所望負荷を表わす16ビットの2値である。残りの情報は、所望の動作を起こすことを要求する個別離散入力の形をなす。
【0018】
上記情報とアナログ負荷入力に基づき、適応コントローラ60は以下の2値出力を供給する。すなわち、
PIDアクティブ;適応コントローラがアクティブであって、アナログ出力に関する変化を計算中である。
警告アクティブ;負荷モニタが所望の警告限界を上回る負荷を検出した。
警報アクティブ;負荷モニタが所望の警報限界を上回る負荷を検出した。
送り留保アクティブ;適応コントローラが警報を検出し、CNCに動きを停止することを要求する。
エラー;適応コントローラが制御アルゴリズムエラー状態を検出した。
速度エラー;適応コントローラが動作限界外のスピンドル速度を検出した。
【0019】
上記に説明した出力情報の各項目は、コントローラ60の状態を記述する離散出力の形をなす。この情報にはアナログ出力情報が付随し、これが監視負荷を所望の設定点に持ち込む送り速度変更要求を表わそう。送り速度変更情報はまた、シリアルリンクが利用可能でないときにCNCのプログラム可能な機械インタフェースI/O構造上で伝送することもできる。
【0020】
適応コントローラ60は、PLC上のシリアルポートかCNCのプログラム可能な機械インタフェースI/O構造のいずれかを介してCNCと通信する。PLCは、実際に利用可能な二つのシリアルポートを有する。第1のすなわち主要なポートは一般に、PLC内でのアプリケーションソフトウェアのプログラミングとデバッギングに用いられる。適応コントローラ60を能動的に稼動させたままこの能力を維持するため、第2の二次ポートを通信用に用いる。二次ポートのハードウェアは、RS−485(マルチ−ドロップ)規格を用いるものである。RS−232通信を利用可能にするため、RS−485/RS−232変換器が付加してある。この変換器は、適応制御モジュール60の一部である。変換器の出力はRS−232互換であり、CNC機やパソコン上のシリアルポートと互換性を有する。さもなくば、シリアルポートが望ましくないか或いは利用できない場合、CNCのプログラム可能な機械インタフェースI/O構造をPLCとCNCの間の情報伝達に用いることができる。
【0021】
適応制御モジュール60は、適応コントローラの務めを果たす二つのソフトウェア構成要素を有する。最適制御装置にその基本的機能を実行させることのできるソフトウェア構成要素は、適応コントローラのファームウェアである。このファームウェアは全PLCにロードされることになり、PLCのオペレーティングシステムと考えることができる。アプリケーション構成要素ソフトウェアは、適応制御を実行する制御アルゴリズムを含む。
【0022】
適応制御アプリケーションソフトウェア構成要素は、動作期間中に二つの主要タスクを遂行する。第1のタスクは、入来ロード信号を能動的に監視し、それがプリセットされた警告及び警報レベルを上回るかどうか判定することにある。このタスクは、PLC上の入力端I1に電力を印加(或いは除去により禁止)することで起動することができる。PLCとI/Oインタフェースとの間のディジタル入力結線が、図11に示してある。監視対象である入来負荷がコントローラ内に設定された警告レベルを所定時間期間、すなわち約0.25秒に亙って上回る場合、警告出力Q4(図13)がアクティブとなろう。この出力は、入力負荷がコントローラによる監視対象である警告レベル未満となるまで維持されよう。かくして、警告出力は自己リセット型であり、他の措置を取る必要は一切ない。
【0023】
入力負荷がコントローラ内に設定された警報レベルを所定時間期間、すなわち約0.25秒に亙って上回る場合、警報出力Q5と送り留保出力Q3はアクティブとなろう。警告出力とは異なり、警報出力は自己リセット型ではなく、リセット入力端I3に給電することでコントローラのリセット要求がなされるまで維持されることになる。この動作は、通常の切削操作が再開される前に警報レベルを生成した条件が対処されたかを確認するためにとられる。
【0024】
アプリケーションソフトウェア構成要素の二番目の主要タスクは、入力負荷の監視とPIDコントローラアルゴリズムに基づく送り速度変更の要求を通じて適応制御をもたらすことにある。この作業は、PLC上の入力端I2に電力を印加(或いは除去により禁止)することで起動される。起動時に、PLCは先ずPLCの内部ステータスをリセットし、PID制御変数をユーザが要求するものに初期化する。コントローラ60はそこで、「着装」限界を超える時点まで入来負荷を監視し、その時点で適応コントローラ60はPID制御アルゴリズムの実行へ進み、入力負荷にユーザの要求値を達成させる新たな送り速度を計算するまで入力負荷を監視する。
【0025】
コントローラ60は、負荷が「着装」限界未満になるまで計算と送り速度変更要求をし続ける。それは、そこで「PID能動出力」をオフとし、「待機」モードへ切り替え、「着装」限界を再度上回るまで待つ。こうして、ユーザは離間距離を知ったりプログラムしたりする必要はなく、適応制御を停止することなく中断した切削を介して機械を操作することができる。このことが、適応切削作業の操作とプログラミングの検討を大幅に単純化する。
【0026】
図1を参照するに、適応制御系100はスピンドル駆動装置126にて監視した負荷変動に応答して軸経路送り速度を調整することで一定負荷の機械加工を実行する。適応制御系100は、駆動装置における負荷のアナログ表示(0〜10v)を出力することのできるスピンドル駆動装置126と、目標負荷とスピンドル駆動装置126が表示する負荷との間の差異に基づいて経路送り速度を計算する適応コントローラ60と、外部入力を介して経路送り速度変化を受容することのできる動きコントローラ120とを備える。機械加工工程期間中、工具負荷はバイアス(T≒S+b)を用いてスピンドル駆動負荷に近似させることができる。工具負荷は、軸経路送り速度(T≒1/F)に反比例させて近似することもできる。かくして、工具負荷はスピンドル負荷を監視し、軸経路送り速度(T=S+b=1/Fp=>ΔS=1/ΔF)を調整することで制御できることが判る。これらの要因により、機械加工処理工程は負帰還閉ループ制御アルゴリズムを用いて制御できるようになる。PID(比例/微分/積分)アルゴリズムは、多種多様な工程パラメータと関連遅延内のステップ入力変化に最も良好な応答をもたらす。
【0027】
本発明の独立項PIDアルゴリズムは、二つの入力変数を監視し、補正変数を出力することで動作し、補正が工程を駆動して入力変数を互いに同値とする。二つの入力変数は「設定点」(SP)と「工程変数」(PV;Process Variable)と呼び、出力項は「制御変数」(CV;Control Variable)と呼ぶ。二つの入力変数の間の差異はPIDアルゴリズムにとって重要であり、しかもそれは負帰還制御ループであるため、この量は「誤差項」(ε=SP−PV)と呼ばれる。独立項PIDアルゴリズムでは、一(又は複数)の誤差項を監視し、以下の式を用いて補正出力項と制御変数(CV)が計算される。
【0028】
CV=(K×ε)+(K×Σεδt)+(K×δε/δt) (1)
ここで、
=比例ゲイン
=積分ゲイン
=微分ゲイン
である。
【0029】
式(1)からは、出力制御変数が3項からなることが判る。第1項は、補正出力(CV;corrective output)の比例成分である。それは、「比例ゲイン」として知られる定数を誤差項に乗算することで計算される(ブロック104)。この項は設定点と工程変数との間の差分に比例しており、その機能は単純に設定点(SP)と監視工程変数(PV)との間の差分に基づく補正を適用することにある。
【0030】
第2項は、補正出力(CV)の積分成分である。それは、積算誤差に積算時間を乗算し、続いてこの量に「積分ゲイン」として知られる定数を乗算することで計算される(ブロック106)。この項は、時間経過(Σεδt)に対する積算誤差に基づく補正をもたらし、これが定常誤差を零へ追い込む。
【0031】
第3項は、補正出力(CV)の微分成分である。それは、監視制御変数(PV)の先のサンプリング値と現在のサンプルとの間の誤差における変化を乗算し、それをサンプル間の時間変化で除算し、続いてこの結果に「微分ゲイン」として知られる定数を乗算することで計算される(ブロック108)。この項が誤差項の変化率(δε/δt)に基づき補正をもたらし、それが恒常的に変化する誤差を零へ追い込むよう努める。
【0032】
PID制御アルゴリズムは閉ループ工程に対する補正を計算する強力な方法であるが、それは制御ループ内の低レベルのノイズや過渡現象に過度に感応することがある。この問題を解決するため、PID制御直前に誤差項計算に対し「不感帯」制御(ブロック102)が追加してある。「不感帯」制御の機能は誤差項内の僅かな変化を抑制することにあり、この誤差項がPID計算により拡倍され、不安定な動作に通ずる。「不感帯」制御計算は、誤差項が閾値未満であるときに誤差項を零に設定することでもたらされる。それは、以下の擬似コードにより表わすことができる。
【0033】
(ε<不感帯) (2)
である場合、
ε=0
PID制御アルゴリズムに付随する別の問題は、それが慣性応答内の変化に感応しないことである。機械加工工程は従来は材料の除去を通じて達成され、かくして閉ループ系の質量の変化が力の変化を招く。制御系を非常に低い慣性質量を用いて調整した場合、慣性質量が著しく増大したときに制御が不安定になることがある。このことは、被加工物を動かす経路軸を飽和させ(すなわち覆いかぶさり)得る補正解に通ずることもある。この状態に対処するため、回転制御アルゴリズムがPID計算の出力に付加されてきた(ブロック112)。この回転制御だけが、最大量分を変化させる補正出力を可能にする。PID計算の出力が先の解を回転限界分だけ上回る場合、新たな解を先の解と回転限界の総和に固定する。変化率が固定されているため、その解は固定量に固定され、そのことが機械の慣性応答に起因する力を制限しよう。回転統制は、以下の擬似コードにより表わすことができる。
【0034】
(ΔCV<回転限界) (3)
である場合、
CV=CVlast+回転限界
かくして、ΔCVは加速度であり、ニュートンの法則(F=ma)から以下が得られることが判る。
【0035】
F=mΔCV (4)
CVが変化することのできるレートを制限することで、慣性応答と得られる力を制限し、より高いゲインをPIDループ内に設けることができる。
【0036】
対処を必要とする別の問題は、機械の軸経路送り速度、すなわち負送り速度(異常な状態)を超える解決策を招き得ることにある。この状態を克服するため、最小/最大固定アルゴリズム(ブロック114)が追加してある。補正出力が最大限界を超えるか或いは下側限界未満に降下した場合、その出力をその限界に固定することになる。最小/最大制御は、以下の擬似コードにより表わすことができる。
【0037】
(CV>最大固定値) (5)
である場合、
CV=最大固定値
(CV<最小固定値)
である場合、
CV=最小固定値
一旦補正解を計算し、上記に説明した制御を介して処理すると、動きコントローラの軸経路送り速度コマンド入力に整合するよう解を倍率換算する必要がある。異なるコントローラは異なる要件を有するので、それを統合する動きコントローラの要求に適切に整合させる倍率換算器アルゴリズム(ブロック116)を追加してある。倍率換算器アルゴリズムは、以下の式により表わすことができる。
【0038】
CVscaled=CV×換算倍率 (6)
この適応制御系の主要な特徴は、操作を簡単化する「デマンドスイッチ」アルゴリズム(ブロック118)である。デマンドスイッチは、監視対象負荷に基づき適応制御系を自動的に起動或いは停止することで機能する。これにより、ユーザは手動により或いはプログラムを通じて適応制御機能を「イネーブルとする」ことができるが、それは必要に応じて起動するだけである。
【0039】
適応制御の起動/停止は、プリセットされた「着装限界」をそれぞれ上回るか下回る監視負荷に基づく。かくして、ユーザが適応制御をイネーブルとした場合、一旦監視負荷がユーザがプリセットした「着装限界」を超えたときにコントローラ60が動きコントローラ120へ能動的に補正解を送信することになる。適応コントローラ60は、監視負荷が「着装限界」にオフセットを加えたもの未満に低下するまで補正解を計算し、動きコントローラ120へ送信し続ける。
【0040】
この着装限界オフセットは調整が可能であり、コントローラ60をして起動/停止条件内に「ヒステリシス」を組み込ませる。ヒステリシスは、監視負荷が着装限界に等しいときに不安定、すなわち「不連続な」動作を招く可能性のある条件を克服するものである。
【0041】
「デマンドスイッチ」は、従来版の適応制御系では利用可能ではなく、何故ならそれらは破損した工具の検出にも用いられていたからである。破損した工具の検出を提供するには、適応制御ユニット60は監視負荷が閾値未満に低下する時点を監視し、何故なら工具が破損したときは通常、工具128と被加工物130との間には一切係合は存在せず、工具負荷は一切生じないからである。破損工具検出器を取り除くことで、適応制御60は工具128が被加工物130に係合した時及びそうでない時とを検出することができる。かくして、このことが適応制御を「オンデマンド」制御系とし、操作を簡単化する。
【0042】
従来版の適応制御を用いることで、オペレータはコントローラを起動する機械加工工程に関する時間的或いは位置的のいずれかの情報を知る必要があった。このことが、適応コントローラの満足すべき動作に必要な複雑なプログラミング及び操作規則に繋がっていた。従来版の適応コントローラをもっては克服が困難な一つの問題は、「中断された切削」である。機械加工工程が材料が存在しない箇所(すなわち、部品内の孔)に至ると、適応コントローラ60は軸経路送り速度を増大させ、負荷を増大させようと試みる。適応コントローラ60は、最終的には最大経路送り速度を要求し、負荷を増大させようと試みる。その結果は、最大速度での「中断」を経て前進し、破局的結果をもって工具128と係合する工具128に帰結する。
【0043】
「デマンドスイッチ」はこれらの問題を克服するものであり、何故なら起動は負荷に基づくもので、時間的或いは位置的情報には基づかないからである。適応制御がイネーブルになっても未だ達成されていないときは、補正出力(CV)は動きコントローラ120のプログラムされた軸経路送り速度に保持される。監視された工程変数(PV)が「着装限界」を超えると、補正出力CVはPID制御と上記の補助的補正アルゴリズムとに基づくものとなる。監視工程変数が着装限界にオフセットを加算したもの未満となると、補正出力(CV)は再度動きコントローラのプログラムされた軸経路送り速度に保持される。この「デマンドスイッチ」アルゴリズムは、以下の擬似コードにより表わすことができる。
【0044】
(PVscale>着装限界) (7)
である場合、
CVout=CVscale
そうではなく、
(PVscale<着装限界+オフセット)
である場合、
CVout=プログラムした送り速度
となる。
【0045】
適応制御期間中、命じられた負荷が工程にとって低すぎることが予想される。このことは、命じられた送り速度の1%よりも遅い軸経路送り速度を必要とする設定点負荷を命ずることで実証することができる。この場合、送り速度変更が1%〜0%未満に低下すると、軸は動きを停止し、工具はそれ自体が無負荷状態へ解放されることになる。このことが、「無負荷」状態を検出した際にコマンド発信された100%への送り速度変更を直ちにリセットする「オンデマンド」適応制御に帰結しよう。
【0046】
この状況を克服するため、適応コントローラは低送り速度保護をもたらす。送り速度変更がプリセットレベル、すなわちほぼ5%未満に低下したことを適応コントローラが検出すると、コントローラはCNCへ送り留保要求を発し、ユーザが適切な保護動作を取るのを待つことになる。低送り速度変更保護アルゴリズムは、以下の擬似コードにより表わすことができる。
【0047】
(CVout<FOVlimit) (8)
であれば、
FeedHoldout=1
PID計算が対処することのできない最後の一つの状態は、プログラムされた負荷設定点(SP)に監視工程変数(PV)を整合させるスピンドル駆動装置126の帰還の倍率換算である。一部の駆動装置は、この駆動装置がモータに対し現在出力しているピーク負荷に基づき出力を供給する。他の駆動システムは、平均的な負荷出力RMS(二乗平均)に基づいて出力を供給する。プログラムされた出力が監視された帰還に整合しない場合は、適応コントローラ60の動作は混乱したものとなることがある。異なるスピンドル駆動装置126は異なる出力能力を有するため、換算アルゴリズム(ブロック134)を追加し、それを組み込むスピンドル駆動装置の能力に適切に整合させるようにしてある。帰還換算アルゴリズムは、以下の等式により表わすことができる。
【0048】
PVscaled=PV×換算倍率 (9)
上記の拡大PIDアルゴリズムにより軸経路送り速度を変更することで、工具負荷は単純かつ簡単に制御することができる。
【0049】
適応制御モジュールは、適応機械加工工程を設定し制御し視認する簡単な方法を組み込むのに開発されてきた。先に参照した3個の構成のうちのいずれもが、適応制御モジュールをセットアップし監視するユーザインタフェース(UI)ソフトウェアを利用することができる。完全一体型或いは準一体型構造だけが、UIソフトウェアの設定能力を利用することができる。
【0050】
UIソフトウェアにより、ユーザはコントローラのレジスタ及びI/Oステータスを設定し視認することができる。これによりユーザは追加のプログラム可能なソフトウェアを必要とすることなく適応制御モジュールをセットアップし操作することができる。UIソフトウェアは、規格型及び開放型の両システムを母体とする制御用に開発されてきた。UIソフトウェアは、マイクロソフト社製ウィンドウズ(商標)(Microsoft Windows)(商標)アプリケーションとして開放型システム内に実装することができる。規格準拠制御では、Ulソフトウェアは独自開発特注化装備機能を用いて実装することができる。いずれにせよ、ユーザインタフェース画面と操作方法は類似する。
【0051】
一つの主画面と三つの副画面が、UIソフトウェアの一部をなす。図2に示した主画面10は、監視情報からなる4個の領域12,14,16,18を含む。これらの4個の領域はさらに、画面表示の「左手」側と「右手」側に分割される。画面の「左手」側は、オペレータがCNC機械の操作期間中に知る必要のある情報を表わす。画面の「右手」側は、オペレータ或いは保守要員が制御系のセットアップと適切な操作を検証する必要のある情報を表示するものである。それ故、画面の「左手」側は操作情報を含み、画面の「右手」側はデバッグ情報を含む。
【0052】
UIの操作情報領域内の第1の領域12は、ユーザがプリセットした警告及び警報レベルと共に負荷モニタのアクティブステータスを表示する「負荷モニタ」である。第2の領域14は、適応制御アルゴリズムのアクティブステータスと制御ステータスを表わす「適応モニタ」情報を表示する。「着装」と「設定」点目標が表示され、オペレータに現在のレベルを通知する。「適応モニタ」領域14内には、オペレータに現在のスピンドル負荷レベルと適応制御ソフトウェアが要求する送り速度変更をそれぞれ通知する二つのバー指示計22,24もまた存在する。
【0053】
第3の領域16はUI10のデバック情報領域内にあり、PLCコントローラのI/O像を表示する「制御モニタ」となる。これは、適応制御モジュールに付随するあらゆる困難の問題解決を試みるときの主要なデバッグツールとすることができる。第4の領域18もまたUI10のデバッグ情報領域内にあり、「通信モニタ」となる。この領域は、UIとPLCコントローラとの間の通信の現在のステータスを表示する。データパケットが送信され、或いはPLCコントローラから受信される度に、パケット総数は増加しよう。この情報を用いることで、オペレータ或いは保守要員はどんな通信障害が存在するかどうか判定できねばならない。UIの通信はその動作とは非同期であるため、通常動作において通例ではパケット総数は増加する。
【0054】
UI副画面は、セットアップ及びデバック情報のためだけのものである。コントローラのステータスとオペレータの特権レベルによっては、幾つかの画面が利用できないこともある。図3に示した副画面の最初のものが、「適応セットアップ」画面30である。この画面を用いることで、ユーザは一連の通信パラメータとオンスクリーン倍率換算と制御限界と監視通信ステータスを編集しセットアップすることができる。
【0055】
ユーザ設定32内の最初の7個の欄は、UIとPLCコントローラの間の通信パラメータである。この設定は、PLCコントローラ上のそれらと同一でなければならない。次の二つの欄により、ユーザはPMCと適応制御情報を見出すことのできるマクロ変数内に領域を確立することができる。指示計目盛り34と制御限界36の設定は先ずインストール時に設定されるが、ユーザはこれらの設定を調整し、操作用に所望値を反映させるとができる。
【0056】
「通信ステータス」欄38は読み取り専用であり、ユーザによって変更することはできない。これらの欄は、診断目的に合わせたものであり、シリアル通信ポートのステータスを反映する。
【0057】
図4に示した第2のUI副画面は、「PID設定」画面40である。この画面は、PLCコントローラ内でPID制御アルゴリズムの制御特性を設定するのに用いられる。二つの欄を除き、各欄はPLC動作にとって「通常」ユニット内情報を表わす。
【0058】
図5に示す第3のUI副画面は、「PLC情報」画面50である。この画面は、PLCコントローラに関する情報を提供する。この画面上の全ての欄は、読み取り専用である。適応制御モジュールの通常動作において何らかの障害に遭遇した場合、工場作業員がこのページからの情報を要求し、問題解決を支援することもできる。
【0059】
オペレータと工場作業員をさらに支援すべく、適応制御ユニット内の様々なレジスタに詳細に記録するのに「ログ」ファイル能力が利用可能である。ログファイルは、それらをファイルに書き込む際に「タイムスタンプ」入力能力をもたらす。こうして、スピンドル負荷は現在時刻及び日付と共にログファイルに定期的に保存することができる。これにより、ユーザや他の工場作業員にはさらなる向上へ向けた工程分析能力がもたらされる。
【0060】
ログファイル能力により、ユーザにはそれを保存するファイル名を使用可能にし選択させることができる。スピンドル負荷やスピンドル速度や送り速度変更等の項目を選択することができ、ユーザファイルに対し読み取り可能な値を出力するそれぞれに対し特注目盛りを適用することができる。更新レートはユーザによっても選択可能であり、最適量のデータ保存が可能である。
【0061】
多くの事例では、UIソフトウェアはそれをインストールしたハードウェア内で実行する複数のタスクで出来ている。これは、ソフトウェアが並列処理を行なってシステム効率全体を増やすことができることを意味する。こうして、UIを作り上げる操作をそれらの固有のレートでもって実行し、コントローラに対するだけでなくユーザに対しても全体的な速度と応答性を増大させることができる。
【0062】
上記の如く、適応制御モジュールは、ユーザのニーズと工作機械の能力に応じて3通りの方法のうちの一つとして構成することができる。これらの構成を、ここでさらに詳しく説明する。他の多くの構成は、3個の主要種の変形を通じて得ることができる。
【0063】
適応制御モジュール内の最大の能力は、図6に示す完全一体化構成を用いることで得られる。完全一体化構成では、ユーザインタフェース情報と工具一式情報の両方に合わせPLCコントローラ60はCNC70(開放型システムインタフェースの場合は、パソコン80)に結び付けられる。この構成では、工具管理ソフトウェアを用いて工具一式情報と共に適応制御情報を保存し管理する。CNC70とパソコン80の間の通信(すなわち、開放型システム)は、高速シリアルバス(HSSB;high−speed serial bus)或いはイーサネット(商標)接続上で行なわれる。HSSB接続性は、高性能の独自開発シリアルリンクをもたらす。HSSBバスには、2枚のインタフェースカードと光ファイバケーブルとが含まれる。この連結は、非常に高速の双方向データ転送をもたらす。
【0064】
図7に示したように、適応制御モジュールの次の統合レベルは準一体化構成を用いて得られる。準一体化構成では、PLCコントローラ60はユーザインタフェース情報向けにCNC70(開放型システムインタフェースの場合は、パソコン80)に結び付けられる。工具一式と関連適応制御情報は、プログラム可能な機械コントローラ(PMC)インタフェース90内に保全される。この構成により、適応制御モジュール60は異なる機械ライン用に工作機械組立機(MTB;machine tool builder)により開発された特注工具インタフェースを用いて作業できるようになる。
【0065】
適応制御モジュール内の最低量の一体化は、図8に示す独立型の構成を用いることで得られる。独立型構成では、適応制御コントローラ60は適応コントローラ上のハードウェア入力端62,64を介してユーザインタフェースを提供される。他の構成と異なり、工具一式及び関連適応情報は適応コントローラへ供給されない。この構成により、適応制御モジュールは任意のCNCと作業できるようになるが、コントローラに接続された外部装置を介しユーザに頼って適切な目標と限界を選択する。
【0066】
改良型工具マネージャ(ETM;enhanced tool manager)アプリケーションは、一つのインタフェースを用いて一つの領域内でCNC機械の工具一式情報を全て管理する。この機能を用いることで、幾つかの画面を介して工具一式情報を入力し保全するよう誘導案内する必要は一切なくなる。全ての工具一式情報は、所望の負荷及び速度に対する長さと半径から一つのユーザインタフェースを用いて保全される。
【0067】
ユーザは、完全一体化構成を用いることで適応制御系から全ての便宜を入手することができる。この構成では、ETM(改良型工具マネージャ)を用い、適応制御情報を含め全ての工具一式情報が一つの領域の管理に組み込まれる。
【0068】
一般に、CNCのGコード(準備機能コマンド)或いはMコード(補助機能コマンド)を用い、適応制御モジュール60を起動(停止)するが、押し釦やスイッチを用いることもできる。適応制御モジュール60がサポートするこの二つの機能が、工具負荷監視と工具負荷制御(すなわち、適応制御)である。
【0069】
工具負荷監視は通常、M66コマンドにより起動され、M67コマンドによって停止させられる。工具負荷監視機能がアクティブであるときは、適応コントローラ60はスピンドル負荷を監視し、これらの閾値がプリセットされた時間期間を上回るときに警告或いは警報を出力する。適応制御モジュール60は、ユーザメッセージとトリガ事象を生成すべくこれらの出力を用いるようプログラムすることができる。
【0070】
適応コントローラ60からの警報出力は、監視スピンドル負荷がその警告閾値未満に低下したときに出力をオフする点において自己リセット型である。警報出力は、警報閾値を上回ったときに、たとえ監視スピンドル負荷がその閾値未満に低下しようともその出力を維持する点において異なるものである。発生しているアラーム出力に加え、送り留保要求とエラー出力もまた設定される。これらの出力をオフして通常動作を復活させるには、適応コントローラのリセット要求を直ちにオンしなければならない。
【0071】
負荷適応機能は通常はM64コマンドをもって起動し、M65コマンドをもって停止する。この機能は、スピンドル負荷がユーザが設定した「着装」点を上回ったときにユーザ要求によりイネーブルとされて起動される。負荷適応機能がアクティブであるときは、コントローラはユーザが要求する目標負荷維持に基づき送り速度変更を要求する。
【0072】
送り速度制御は、切削負荷が経路送り速度に比例するという前提に基づくものである。これが厳密には正しくない場合でさえ、アルゴリズムは正確に調整したときは安定な動作を生み出す。経路送り速度は、入来スピンドル負荷とユーザの目標負荷設定点とを監視するPID(比例−積分−微分)アルゴリズムを用いて決定される。
【0073】
PID制御アルゴリズムは、コントローラのA/D変換器(ADC)の最大目盛り入力に基づき動作する。この理由から、倍率換算乗算器をコントローラの入力端に適用してスピンドル出力に整合させ、目標設定点と送り速度要求を適応コントローラ60により計算させる。セットアップ期間中に適応制御モジュールを組み込んだ人物が、これらの倍率換算乗算器を設定する。インストール完了後は、倍率換算乗算器を変更する必要が一切ないようにすべきである。
【0074】
経路送り速度制御は、実際には送り速度変更を用いてCNC機械70内で実行される。一般的な実装では、プログラム可能な機械コントローラ(PMC)90内の論理回路を介して適応送り速度オーバライドを供給し、これが適応送り速度オーバライドにユーザの送り速度オーバライド(機械オペレータパネル)を乗算することになる。オペレータは機械のオペレータパネルから送り速度オーバライドの変化を要求し得るが、適応制御モジュール60はその固有の送り速度オーバライド値の変化を要求することでユーザ入力を素早くオーバライドすることになる。こうして、オペレータの送り速度オーバライド値は、適応制御機能がアクティブでないときに発効することになる。
【0075】
適応コントローラを悩ませてきた問題は、中断された切削問題である。この問題は、コントローラが連続材料に開口を貫通突破したときに発生し、監視スピンドル負荷はそこでスピンドル「空転」負荷へ落ち込む。この場合、適応アルゴリズムはそれが最大の軸速度に固定するか或いはCNC送り速度制御のコマンド入力を飽和させるかのいずれかまで経路送り速度を増大させるよう試みる。いずれにせよ、PIDアルゴリズムはもはや制御下にはなく、その計算を素早く飽和させることになる。この結果は、高速で動く機械が再度部品に係合したときに効き始めるようになる。このことが、工具一式に急速に過負荷をもたらし、機械に対する破損或いは損傷を招くことがある。
【0076】
この状態を克服する一部の先の方法は、これらの中断された切削の位置やこの状態が存在するときのPLCコントローラが課す時間遅延の知識に基づくものであった。これらの方法は両方とも機能はしたが、それは部品形状とこれらの事象のタイミングの知識が必然的に伴なうものであった。
【0077】
適応制御モジュール60は、中断された切削問題を克服するのに異なる方法を用いるものである。負荷制御機能の起動要求は、コントローラ60が経路送り速度変更の要求を開始することを意味しない。能動的制御は、監視スピンドル負荷がユーザが設定した「着装」点を超えるまで開始されない。この点は、経路送り制御がアクティブになる時点を制御するだけでなく、それをディスエーブル状態とする時点もまた制御するものである。
【0078】
適応制御モジュールが送り速度を制御している間に、スピンドル負荷を能動的にチェックし、ユーザが設定した「着装」点未満に低下したかどうか判定する。スピンドル負荷が「着装点」未満に低下した場合、コントローラ60は送り速度制御をディスエーブルとし、そのPIDアルゴリズムをリセットし、再度負荷が「着装点」を超えるのを待つ。こうして、負荷制御機能は部品形状の知識無しでかつ制御アルゴリズム内での遅延分与を伴なうことなく中断された切削期間中アクティブに保つことができる。
【0079】
適応制御モジュールとCNC機械間の接続は、ハードウェアとソフトウェアの両方である。これらの接続には、ユーザの完全一体化パソコン(PC)を含めたり、或いは準一体化構成を用いることもできる。3種類の構成だけを本願明細書に説明したが、これら3種類の多くの派生体を特定の機械に用いることができる。CNC70とPLC60と随意選択的ではあるがユーザPC80は相互に通信し、適応制御モジュール機能をセットアップし動作させる必要がある。随意選択的なPC80は、外部ユニットとして配設、またはCNC機械70内への一体化のいずれかが可能である。
【0080】
適応制御モジュール60の独自開発特注化装備版では、CNC機械70は適応コントローラ(PLC)60とCNC70との間の通信用にシリアル資源を備える。この理由から、二つの入力間には簡単なシリアル結線が必要である。このシリアルケーブルにはハードウェアハンドシェークを設ける必要はなく、3本のワイヤ接続だけが必要である。このケーブルは、JD36A(又はJD36B)のCNCシリアルポートとPLCポート#2上のRS232C変換器へのSNPとへ接続してある。図9は、適応コントローラ60とCNC70の間の3線結線を示すものである。
【0081】
CNCのI/Oハードウェア90は、大半の結線がコントローラ60とCNC70の間に配設されるであろう箇所にある。この結線は、PMC論理回路へ写像するPMCI/O点を介して供給される。この写像は、アプリケーションにとって必要な必要数の入力端と出力端を有するPMC90をプログラムすることにより達成される。
【0082】
表1に、適応コントローラ上に設けたコントローラI/O点を一覧掲載する。
【0083】
【表1】

【0084】
上記のテーブルにて参照する最初の二つの入力は、スピンドル増幅器66に接続したアナログ入力である。スピンドル増幅器66は、スピンドル負荷と速度を表わすアナログの0〜10V信号を出力できねばならない。これらの出力は、大半の基本的増幅器にてさえ利用可能であり、アナログ負荷と速度計の接続を可能にしている。アナログ接続は、全体シールド付き4芯撚り合わせ対ケーブルを用いて達成することができる。推奨最小導線寸法は、24AWGである。図10は、適応制御モジュール60とスピンドル増幅器66との間の例示アナログ入力結線を示す。
【0085】
コントローラ60入力の残りは、PMC90に関する写像入力である。コントローラ60への入力は吹き出し型或いは吸い込み型のいずれかの出力を受け入れることができるが、吹き出し型出力はPMC90上で正論理が使用できることを意味する。吸い込み型を使用するには、各PLC90入力点にプルアップ抵抗が必要となろう。それ故、吹き出し型出力モジュールは、適応制御モジュール60と共に使用しなければならない。図11は、適応制御モジュール60とプログラム可能機械コントローラ90の間の例示ディジタル入力結線を示す。
【0086】
表1内で参照する第1の出力点は、適応コントローラ60からのアナログ送り速度変更である。この点は、CNC70制御上の予備のアナログ入力点に接続するか、或いは機械のプログラム可能機械インタフェースI/O構造を介してディジタル的に通信させねばならない。アナログ結線は、1本の撚り合わせ対だけを必要とする点を除き、アナログ入力について記述したのと同様のケーブルを用いて達成すべきである。図12は、適応制御モジュール60とスピンドル増幅器66の間の例示的アナログ出力結線を示す。
【0087】
最適コントローラ60の残る出力は、PMC用写像入力であろう。適応コントローラからの出力はリレーとなるため、それらは吹き出し型入力或いは吸い込み型入力のいずれかとすることができ、吸い込み型入力はPMC90上で正論理を用いることができることを意味する。それ故、吸い込み型入力は適応制御モジュール60と共に使用すべきである。図13は適応制御モジュールとプログラム可能な機械コントローラとの間の例示的ディジタル出力結線を示す。
【0088】
CNC機械70と適応コントローラ60の間の結線は、CNC機械のアプリケーションと特定のニーズに応じて変化しよう。3種の環境設定は全て、適応コントローラ60内の機能の何らかの起動方法をもたせる必要がある。独立型の構成は積分器が備える機械的スイッチから直接これらの機能を起動させることができるが、部品プログラム或いは手動データ入力(MDI;manual data input)インタフェースからのプログラム可能な起動を用いることでより簡単に行なうようにできる。
【0089】
これらの機能の起動は一般に、MコードやGコードプログラミングを用いることで行なわれる。これを可能にすべく、積分器は機械インタフェースにPMC論理回路を付加しなければならない。各構成では、工具一式情報はPMC90メモリを介して適応制御モジュール60へ供給される。このメモリは、Dワード(保持型情報)又はRワード(非保持型情報)のいずれかの形をとる。メモリ種と配置の選択肢は、適応制御モジュール60をCNC機械70内へ組み込む人次第である。この選択肢は、工具管理の配備具合とPMC90内での未割り当てメモリ空間に基づくものでなければならない。
【0090】
CNC70内のメモリの他の一つの領域は、CNC部品プログラム情報を適応制御モジュール60へ通信するのに用いられる。自由マクロ変数は、適応制御モジュール60に対し部品プログラム情報の通信を可能にするよう選択すべきである。統合担当者もまた、この情報を保持するか或いは非保持とするかに関する選択肢を有する。マクロ変数値を#100の領域で選択した場合、この情報は電力遮断時に失われ、CNCリセット(パラメータにより設定可能)期間中にクリアすることができる。選択したマクロ変数が#500を上回る場合、制御を給電開始した後で情報が保留されることになる。
【0091】
適応制御モジュール60のセットアップは、3個の領域に分類することができる。これらの3個の領域は、ハードウェアとアプリケーションソフトウェアとユーザインタフェースソフトウェアである。これらのうちで、大半の時間はユーザインタフェースソフトウェアのセットアップに費やされよう。
【0092】
アプリケーションソフトウェアを初期化し、内部作業レジスタをプリセットするには、ユーザ或いは統合担当者はコマンドストローブ入力端(I4)へ電力を瞬間的に印加し、その一方でコマンドモードビット(15)に対してだけ電力が印加されるよう保証する。この状態が、適応コントローラ内のアプリケーションソフトウェアに内部作業レジスタを初期動作値へプリセットするよう強いることになる。
【0093】
さらなるアプリケーション構成は、ユーザインタフェースソフトウェアを用いて特定のアプリケーションニーズに適合するよう内部レジスタを変更することで行なうことができる。ユーザインタフェースソフトウェアは、適応コントローラの全ての構成で用いることができる。特に、セットアップ位相期間中は、ソフトウェアを用いて正規のコントローラ動作を決定し、CNC機械用に適応制御を調整する。ユーザインタフェースソフトウェアは、独自開発特注化装備版を用いた場合はCNC機械上に、或い開放型システム版ソフトウェアを用いた場合はPC上に組み込むことができる。いずれにせよ、ソフトウェアの動作は同様である。
【0094】
ユーザインタフェースソフトウェアのセットアップにおける次のステップは、ソフトウェアによる倍率換算とコントローラ限界の設定である。3個の項目が存在し、それらはCNC機械アプリケーションに適合するよう倍率換算することができる。第1項は「D/A変換器(DAC;Digital to Analog Converter)倍率換算@100%」である。この値は、適応コントローラモジュール内の内部100%表示である。
【0095】
他の二つの項目(「最大負荷%」と「最大FOV%」)は、ユーザが望む任意の値に設定することができる。これらの項目がユーザインタフェースページ上の棒グラフを倍率換算し、この設定における最大目盛りとする。これらの項目に関する一般的な設定は、255である。
【0096】
「制御限界」は、設定点と警報限界に関する最大閾値を設定する。これらの限界は、通常は機械限界に基づく。これらの設定は、工具テーブル情報内のユーザ入力エラーに対する何らかの保護をもたらす。工具テーブル情報或いはユーザ入力がこれらの値を上回った場合、このソフトウェアはこれらの設定をそれらの個別値に「固定」する。以下は、「制御限界」に関する一般的な設定である。
設定点限界150
警報限界250
ユーザインタフェース内のセットアップに対する最後の領域は、適応コントローラ内のPID設定である。これは、適応ユーザインタフェース画面40へ戻ることによって達成される。この画面上に設定する最初の項目は、PLCコントローラ60上のD/A変換器に関するものである。例示設定は、以下の通りである。
出力@100%:12600
初期化時間:8ミリ秒
UI画面40上の次の項目は、スピンドル速度に関係がある。適応制御モジュール60は、スピンドルモータ68の基本速度を上回って動作させるよう設計してある。この項目は、スピンドルの基本速度チェックをその最大速度の百分率として設定する。基本速度百分率は、CNC機械70上で使用するスピンドルに関する最大速度の百分率として設定すべきである。一例示設定は、以下の通りである。
最大スピンドル速度:6000RPM
スピンドルの基本速度:600RPM
基本速度:10%
UI画面40上に設定する必要のある最後の項目は、PID制御アルゴリズムである。
これらの項目が、PID制御装置が動作する特性を設定する。以下の値は、標準動作用の典型である。これらのうちのごく僅かは、常に調整を必要としよう。
CVバイアス:数値0
不感帯:数値50
CV上側固定値:数値17400
CV下側固定値:数値−12600
最小回転時間:0秒
サンプル周期:10ミリ秒
着装点:5%
上記の値から、3個の項目だけが常に調整を必要としなければならない。「CVバイアス」は、スピンドルが零RPMであるときにスピンドル増幅器66から出力電圧が存在するときに用いる。通常の環境下では、PIDアルゴリズムはスピンドル負荷に対するほどほどのバイアスにあってさえ満足できる状態で動作できる。この理由から、この値は決して変更の必要があってはならない。
【0097】
「不感帯」設定は、PID制御装置が補正を試みないであろう負荷変化の領域を設定する能力をもたらす。この設定は通常使用されないが、負荷における小さな変化を無視するよう設定し、より高いゲインでより安定な動作を生み出すようにできる。
【0098】
「着装点」は、コントローラをセットアップするユーザや人物により最も変更されそうな設定である。「着装点」は、スピンドルの「空転」負荷(スピンドルが自由雰囲気中で稼動)よりも大きく、かつ適応制御を発生させるべき最小負荷未満に設定しなければならない。このスピンドルの「空転」負荷は、様々な速度とギヤレンジでチェックしなければならない。この値が適応制御下で所望の部品とスピンドル速度とギヤレンジに基づき調整する必要があろうことが、判るかも知れない。
【0099】
適応コントローラ60内のPIDゲインの調整は、幾つかの異なる方法を用いて対処することができる。PID制御ループの調整について、多くの論説や研究開発がなされてきた。これらは、分析的手法と実用的手法に分類することができる。分析的方法は、「閉ループ」応答を装備し計測する能力に基づくものである。これらの方法はよく機能するが、制御理論に精通していない人々を混乱させることもある。以下は、適応制御モジュールを調整する実用的方法である。
【0100】
調整工程を始める前に、負荷モニタ機能を試験しなければならない。かくして、スピンドル負荷較正だけでなく、切削前に負荷モニタインタフェースもまたチェックすることができる。第1のステップは電池ボックスを用い、適応コントローラ60に対する負荷入力を模擬しなければならない。IN1+及びIN1−アナログ入力端からの配線を取り除き、電池ボックスをこれらの点に接続する。電池ボックスをオンし、5V信号を適応コントローラへ印加する。スピンドル負荷棒グラフは、ほぼ50%を示さねばならず、制御モニタ内の「アナログ負荷」は16000台でなければならない。これらの値は、概算に過ぎない。
【0101】
負荷モニタ機能が適切に実装されていることを検証すべく、警報及び警告レベルはこの機能を組み込んだ人物が提供する方法を用いて設定される。この機能は、MコードやGコード或いは統合担当者が配設したスイッチを用いて起動する。電池ボックス電圧は、制御モニタ上で「警告」出力が起動されるまで増大する。棒グラフ表示にて読み取ったスピンドル負荷は、「警告限界」について設定された値に等しいか上回るものでなければならない。警告レベル指示計が起動しない場合、継続する前に組み付けを再チェックしなければならない。
【0102】
電池ボックスの電圧レベルを「警告限界」未満にもっていくことで、制御モニタ上の「警告」出力は停止させねばならない。この動作が正しく機能するように見える場合、ユーザは次のステップへ進まねばならない。
【0103】
電池ボックスを依然接続したまま、「警報限界」を超えるまで電圧を増大させる。今回は、いくつかの指示計を起動させねばならない。「警告限界」が「警報限界」よりも低い場合、「警告」と「警報」と「送り留保」出力を全てアクティブとしなければならない。電池ボックスをオフとすることで、「警報」と「送り留保」出力は依然アクティブとされる。これは通常の動作であり、これらの指示計は「適応コントローラ」の「リセット」入力端に入力されるまで停止することはない。
【0104】
上記チェックが満足できるものである場合、ユーザはそこで調整を続行しなければならない。以下は、実際の切削を実行し、ユーザインタフェース画面を用いてループ制御の安定性を監視することで最適ゲイン設定を割り出すのに用いることのできる実際の手法である。最初のステップは、切削中に75%までの連続したスピンドル負荷の達成を可能にする材料と工具の選択である。大半のフライス盤では、このことは或る種の軟鋼と適当な切削具を意味する。
【0105】
調整は幾つかの負荷レベルにおいて実行されるが、調整工程は同一となろう。この工程は、固定送り速度にてスピンドルにほぼ25%負荷をもたらすことになる空間送り(切削の深さと幅)を計算することで始まる。ユーザが適切な送り速度及び切削空間に自信がない場合は、異なる値の深さを試し、送り速度オーバライドを用いてスピンドルにほぼ25%負荷をもたらすであろう送りと空間を割り出すべきである。
【0106】
次に、適応負荷調節機能の設定点は25%目標負荷に設定しなければならない。部品を横断する少なくとも一つの切削経路は、スピンドルと送り速度が正しいことを保証するようになさねばならない。次に、負荷調節機能をイネーブルとしなければならない。ユーザインタフェースは、この機能がディスプレイの「適応監視」部の下でイネーブルとされたことを指示しなければならない。コントローラが監視する負荷が「着装点」設定を上回ると、負荷制御機能をアクティブとしなければならない。このことは、ディスプレイの「適応制御モニタ」部の下で「能動」ステータスを視認することで確認することができる。
【0107】
一旦負荷調節機能を起動すると、送り速度制御が経路送り速度を調整し、ユーザが設定した目標設定点を達成するよう試みる。調整不足状態では、負荷制御特徴は非常に「停滞」し、所望の目標「設定点」を達成し得ない。
【0108】
コントローラ60の「比例ゲイン」を先ず調整し、安定な動作を維持し、何らかの安定余裕をもたらす。このタスクを達成するため、ユーザは、「PID設定」画面40へ行き、「比例−PIDゲイン」を増大させる(1〜10の数値刻みを先ず用いる)。再度、部品の切削をなし、スピンドル負荷を観察する。負荷が安定している場合、ループは安定しており、ゲインをさらに増大させることができる。
【0109】
負荷が低負荷から高負荷へ激変し、前後に変動する場合、ループは不安定になる。不安定なループ動作が存在する場合は、切削は停止(すなわち、送り留保)すべきであり、「比例−PIDゲイン」は約10%低減させるべきである。
【0110】
ユーザは、最大の安定設定が見出される(すなわち、極端な負荷発振が一切なくなる)まで、「比例−PIDゲイン」の調整と部品の切削を続け、そこでゲイン設定をほぼ10%低減させるべきである。このことが、10%の安全余裕をもってPIDループの比例領域の安定動作をもたらさねばならない。
【0111】
次のステップは、「積分−PIDゲイン」の調整である。ユーザは比例ゲインの調整と同様前に進むが、今回は積分ゲインを調整する。積分ゲインは、10〜100の刻みでもって調整することができる。ユーザは再び安定な操作を提供する最大設定を見出し、そこで設定を約10%だけ戻す。
【0112】
最終ステップは、「微分−PIDゲイン」の調整である。ユーザは再び比例ゲインの調整と同様に前へ進むが、今回は微分インを調整する。微分ゲインは通常は使用されず、何故ならその感度は極めて高いからである。それ故、ユーザはたとえ数値1のゲインでさえ不安定な動作が生じるであろうことに気づき得る。大半の場合、このゲインは零に設定される。
【0113】
一旦ループを25%負荷で調整すると、ループ安定性を50%と75%と100%負荷で試験し、必要に応じて再調整しなければならない。PIDループを調整した後、安定で正確な制御は負荷制御機能により達成される。或る場合には、ユーザは異なるギヤレンジが調整を劣化させることがあり、ループの再調整を行なわねばならないことに気付こう。
【0114】
以下の特許請求の範囲の全ての手段付加型機能要素の対応する構造や材料や動作や等価物は、特に特許請求した他の特許請求要素と組み合わせて機能を実行する全ての構成や材料や動作を包含することを意図したものである。
【0115】
当業者には、本発明の例示実施形態に対する多くの変更態様が本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく可能であることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の例示実施形態になるオンデマンド適応制御系を示すブロック線図である。
【図2】例示的な適応制御ユーザインタフェース表示画面を示す図である。
【図3】例示的な適応制御ユーザインタフェースセットアップ表示画面を示す図である。
【図4】適応制御モジュールの比例−積分−微分制御機能用の例示的ユーザインタフェースセットアップ表示画面を示す図である。
【図5】例示的適応コントローラ情報表示画面を示す図である。
【図6】完全一体化構成の適応制御系を示すブロック線図である。
【図7】準一体化構成の適応制御系を示すブロック線図である。
【図8】自立型構成の適応制御系を示すブロック線図である。
【図9】シリアル通信ケーブルを用いた適応制御モジュールとCNCとの間の3線結線を示す図である。
【図10】適応制御モジュールとスピンドル増幅器との間のアナログ入力結線を示す図である。
【図11】適応制御モジュールとプログラム可能機械コントローラとの間のディジタル入力結線を示す図である。
【図12】適応制御モジュールとスピンドル増幅器との間のアナログ出力結線を示す図である。
【図13】適応制御モジュールとプログラム可能機械コントローラとの間のディジタル出力結線を示す図である。
【符号の説明】
【0117】
10 主画面
12,14,16,18 領域
22,24 指示計
30 「適応セットアップ」画面
32 ユーザ設定
34 指示計目盛り
36 制御限界
38 「通信ステータス」欄
40 「PID設定」画面
50 「PLC情報」画面
60 適応コントローラ
62,64 ハードウェア入力端
68 スピンドルモータ
70 CNC
80 パソコン
90 プログラム可能な機械コントローラ(PMC)
100 適応制御系
102 不感帯
104 機能ブロック(比例)
106 機能ブロック(積分)
108 機能ブロック(微分)
110 バイアス
112 回転制御
114 最大/最小限界
116 送り倍率換算器
118 デマンドスイッチ
120 動きコントローラ
122 スピンドル制御
124 軸制御
126 スピンドル駆動装置
128 工具
130 被加工物
134 帰還倍率換算器
182 軸モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ制御された工具により機械加工工程期間中の加工物からの材料の塊状除去の適応制御方法であって、
前記工具が能動的切削モードにないときにスピンドル駆動装置上の定常負荷を割り出すステップと、
前記能動切削期間中に前記スピンドルの回転負荷を計測するステップと、
前記定常負荷に基づき前記スピンドルの回転負荷を調整するステップと、
制御アルゴリズムを用いて前記調整されたスピンドル負荷の関数として前記被加工物に関する新規経路送り速度を割り出すステップと、
動きコントローラからの信号を確認することで前記割り出された新規経路送り速度に基づき現在の送り速度を調整するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記割り出された経路送り速度を固定することで該割り出された経路送り速度の変化率を制限し、前記現在の経路送り速度を制御アルゴリズムの各連続的な反復期間中にプリセット量だけ変化させられるようにするステップをさらに含む、請求項1記載の適応制御方法。
【請求項3】
被加工物上でコンピュータ制御工具により機械加工作業するオンデマンド適応制御系であって、
前記工具用スピンドルモータを制御し、前記スピンドルの負荷を表わす信号を出力するスピンドル駆動装置と、
前記スピンドル負荷を監視し、前記工具に関連して前記被加工物に関する経路送り速度を割り出す適応コントローラと、
前記スピンドル負荷に基づき前記適応制御を自動的にイネーブルとするデマンドスイッチと、
前記適応コントローラからの出力信号に応答して前記経路送り速度を調整する動きコントローラとを備える、オンデマンド適応制御系。
【請求項4】
複数の軸モータをさらに備え、各軸モータが前記動きコントローラから受信した軸制御信号に基づき前記被加工物の送り速度動作を制御する、請求項3記載のオンデマンド適応制御系。
【請求項5】
前記適応コントローラは、閉ループ負帰還制御アルゴリズムを用いた機械加工作業を制御する制御論理回路を含む、請求項3記載のオンデマンド適応制御系。
【請求項6】
設定点と工程変数との間の差分を比例/積分/微分(PID)アルゴリズムに対する入力として供給し、前記動きコントローラに供給する制御変数を割り出して経路送り速度を調整する、請求項3記載のオンデマンド適応制御系。
【請求項7】
前記適応制御は、前記スピンドル負荷がプリセット限界及びオフセット値未満に低減したときに停止させ、前記スピンドル負荷がプリセット限界及びオフセットを超えて増大したときに起動する、請求項3記載のオンデマンド適応制御系。
【請求項8】
被加工物上でコンピュータ制御された工具による機械加工作業のオンデマンド適応制御系であって、
工具用のスピンドルモータを制御し、前記スピンドル負荷を表わす信号を出力するスピンドル駆動装置と、
前記スピンドル負荷を監視し、前記工具に関連する前記被加工物用の経路送り速度を割り出す適応コントローラと、
前記スピンドルの負荷に基づき前記適応制御を自動的にイネーブルとするデマンドスイッチと、
前記適応コントローラからの出力信号に応答して経路送り速度を調整する動きコントローラと、
前記適応コントローラをセットアップし監視するインタフェースとを備える、オンデマンド適応制御系。
【請求項9】
前記インタフェースは、負荷監視モジュールと適応監視モジュールと制御監視モジュールと通信監視モジュールとを備える、請求項8記載のオンデマンド適応制御系。
【請求項10】
前記インタフェースは、前記適応コントローラの制御論理モジュール内の比例/積分/微分(PID)制御アルゴリズムの特性を設定する表示をオペレータに供給する、請求項8記載のオンデマンド適応制御系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2006−518674(P2006−518674A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503824(P2006−503824)
【出願日】平成16年2月24日(2004.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/005367
【国際公開番号】WO2004/077181
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】