説明

オーディオ信号の無線伝送方法

【課題】無線通信を用い、音切れの可能性の少ないオーディオ信号の伝送を実現したオーディオ信号の無線伝送方法を提供する。
【解決手段】3以上のチャンネル数を有する通信チャネル群の通信チャンネルから、プライマリチャンネル、セカンダリチャンネルを選択する。両チャンネルを交互に用いてオーディオ信号の伝送を行う。オーディオ信号の伝送を行いつつ、両チャンネルの伝送エラー率を計測し、両チャンネルのエラー率を比較する。比較の結果、プライマリチャンネルのエラー率がセカンダリチャンネルのエラー率より大きかった場合、現在のセカンダリチャンネルを新たなプライマリチャンネルとして選択し、通信チャンネル群の通信チャンネルから新たなセカンダリチャンネルを選択したのち、オーディオ信号の伝送を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オーディオ信号を電波を用いて伝送する無線伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯オーディオプレーヤにスピーカを接続して大きい音量で音楽を楽しみたい場合がある。このような場合、従来は、携帯オーディオプレーヤのイヤフォンジャックにスピーカケーブルを接続してスピーカ(アンプ付きスピーカなど)にオーディオ信号を入力する方式が一般的であった。しかし、携帯オーディオプレーヤにスピーカケーブルを接続すると、ケーブルが邪魔になるうえ、ケーブルの長さや引き回し場所の制約等から携帯オーディオプレーヤをユーザの手元に置くことができない場合がある。
【0003】
そこで、携帯オーディオプレーヤが再生した楽音を、無線通信を用いてスピーカへ伝送することが考えられる。この種の無線通信には、一般的に民生用途に開放された2.4GHz帯の周波数が使用される。この周波数帯は、無線LAN、電子レンジ、コードレス電話機など種々の民生用機器が使用しているため、電波状態の良好な他の機器に占用されていない周波数(チャンネル)を選択して使用する必要がある。電波状態を検出する従来より一般的な手法は、受信信号強度測定(RSSI:Received Signal Strength Indicator)によるスキャンであった。RSSIスキャンは、各チャンネルを受信して信号強度を測定し、信号強度が最も弱いチャンネルを状態の良い空きチャンネルであると判断するものである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−258836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、RSSIスキャンを行うためには、正確な信号レベルを測定する回路が必要であるため高価である。
【0006】
また、2.4GHz帯は、種々の機器が頻繁に使用するため、電波状態は常に変動しており、オーディオ信号の伝送に好適なチャンネルも常に変動している。したがって、エラーの少ないオーディオ信号の伝送を行おうとすれば、適当な間隔で通信チャンネルの選択を見直す必要がある。しかし、RSSIスキャンを行うためには、オーディオ信号の伝送を停止する必要があるため、この間に音切れの危険性が増加するという問題点があった。
【0007】
この発明は、複数の無線通信チャンネルを用いたオーディオ信号の伝送において、音切れの可能性の少ない伝送を実現したオーディオ信号の無線伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、3以上のチャンネル数を有する通信チャネル群を使用してオーディオ信号を伝送する方法であって、
(1)前記通信チャネル群の通信チャンネルから、プライマリチャンネル、セカンダリチャンネルを選択する手順
(2)前記プライマリチャンネル、セカンダリチャンネルを交互に用いてオーディオ信号の伝送を行う手順
(3)(2)の手順を実行しつつ、プライマリチャンネル、セカンダリチャンネルのそれぞれの伝送エラー率を計測する手順
(4)所定のタイミングに、プライマリチャンネル、セカンダリチャンネルのエラー率を比較する手順
(5)(4)の比較の結果、プライマリチャンネルのエラー率がセカンダリチャンネルのエラー率以下であった場合、(2)に戻ってオーディオ信号の伝送を継続する手順
(6)(4)の比較の結果、プライマリチャンネルのエラー率がセカンダリチャンネルのエラー率より大きかった場合、現在のセカンダリチャンネルを新たなプライマリチャンネルとして選択し、前記通信チャンネル群の通信チャンネルから新たなセカンダリチャンネルを選択したのち、(2)に戻ってオーディオ信号の伝送を継続する手順
を順次実行することを特徴とする。
【0009】
また、上記発明の(6)の手順を、
(11)前記通信チャンネル群の前記新たなプライマリチャンネル以外の1つのチャンネルを仮のセカンダリチャンネルとして選択する手順
(12)前記新たなプライマリチャンネルおよび前記仮のセカンダリチャンネルを交互に用いてオーディオ信号の伝送を行う手順
(13)前記通信チャンネル群の通信チャンネルのうち、前記新たなプライマリチャンネルを除く全てのチャンネルについて(11)、(12)の手順を実行する手順
(14)(13)の手順を実行したのち、各チャンネルの伝送エラー率を比較して、新たなセカンダリチャンネルを決定する手順
としてもよい。
【0010】
また、上記発明の(2)の手順において、プライマリチャンネルをセカンダリチャンネルよりも高い使用率で用いるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、オーディオ信号の伝送を行いつつ、プライマリチャンネル、セカンダリチャンネルを通信状態の良好なチャンネルに変更してゆくことができるため、音切れの可能性が少ないオーディオ信号の伝送を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態である無線オーディオシステムの構成図
【図2】同無線オーディオシステムが用いる通信チャンネル群の構成を示す図
【図3】同無線オーディオシステムにおける通信チャンネルの切換手順を説明する図
【図4】無線オーディオシステムのトランスミッタの動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1はこの発明の実施形態である無線オーディオシステムの構成図である。図2はこの無線オーディオシステムで用いられる通信チャンネル群を示す図である。この無線オーディオシステムは、楽曲のオーディオ信号を再生する携帯オーディオプレーヤ3、このオーディオ信号を入力して音響として放音する据置型のアンプ付スピーカ4、および、携帯オーディオプレーヤ3からアンプ付スピーカ4までオーディオ信号を伝送するトランスミッタ1、レシーバ2で構成される。
【0014】
携帯オーディオプレーヤ3は、MP3などに圧縮符号化された楽曲データを記憶する記憶部、圧縮符号化された楽曲データを復号して再生する再生部、再生中の楽曲の曲名等を表示する表示部、ユーザの操作を受け付けるPLAYボタン、STOPボタンなどの操作部を有している。なお、操作部は、表示部表面に設けられたタッチパネルと、表示部に表示されるアイコン画像で構成してもよい。携帯オーディオプレーヤ3は、ユーザの操作に応じて楽曲データを選択し、この楽曲データを再生する。再生されたオーディオ信号は出力端子から出力される。携帯オーディオプレーヤ3は、オーディオ出力端子として、たとえばミニジャックなどのイヤホン端子および複合コネクタを備えている。複合コネクタとは、たとえばドックコネクタ(商標)のレセプタクル(メスコネクタ)であり、ステレオオーディオ出力端子、制御信号入出力端子、電源端子などを備えている。この複合コネクタがトランスミッタ1に接続され、この複合コネクタを介してオーディオ信号がトランスミッタ1に入力される。
【0015】
トランスミッタ1は、携帯オーディオプレーヤ3が再生したオーディオ信号をレシーバ2に送信する。レシーバ2は、トランスミッタ2から受信したオーディオ信号をアンプ付スピーカ4に入力する。トランスミッタ1・レシーバ2間の通信は2.4GHz帯に設定されている通信チャンネル群を用いて行われる。通信チャンネル群は、相互に干渉しない8個の通信チャンネルからなる(図2参照)。トランスミッタ1・レシーバ2間の通信は、デジタルのパケット転送によって行われる。オーディオ信号の伝送は高速の単方向通信で行われ、コマンド等の制御信号の送受信は低速の双方向通信で行われる。
【0016】
トランスミッタ1は、携帯オーディオプレーヤ3が接続されるオーディオ入力部10、携帯オーディオプレーヤ3から入力されたオーディオ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ11、トランスミッタ1の動作を制御するコントローラ12、通信チャネルを用いた無線通信を行う通信回路13、および、アンテナ14を備えている。オーディオ入力部10は、携帯オーディオプレーヤ3と同様の複合コネクタを有している。この複合コネクタは、携帯オーディオプレーヤ3のレセプタクルと接続されるプラグコネクタ(オスコネクタ)であり、このコネクタを介して携帯オーディオプレーヤ3からオーディオ信号を入力するとともに携帯オーディオプレーヤ3のバッテリを充電する。A/Dコンバータ11は、オーディオ入力部10から入力されたオーディオ信号をデジタル信号に変換する。通信回路13は、オーディオ信号を送信するとともに、レシーバ2との間で制御信号等の送受信を行う。制御信号は、確認応答ACKや通信チャネルの切り換えスケジュール等である。コントローラ12は、通信エラー率の算出や通信チャンネルの選択等の処理を行う。コントローラ12の処理の詳細は後述する。
【0017】
レシーバ2は、トランスミッタ1から送信される高周波信号を受信し、この高周波信号に重畳されているオーディオ信号を復調してアンプ付スピーカ4に入力する機器である。 レシーバ2は、内蔵のアンテナ24、各通信チャネルで通信を行う通信回路20、レシーバ2の動作を制御するコントローラ21、受信したデジタルのオーディオ信号を所定量蓄えるバッファ22、デジタルのオーディオ信号をバッファ22から読み出してアナログ信号に変換するD/Aコンバータ23、および、アンプ付スピーカ4にオーディオ信号を出力するためのオーディオ出力部24を有している。通信回路20は、トランスミッタ1から送信された高周波信号を受信してオーディオ信号、制御信号を復調するとともに、コントローラ21から入力された制御信号をトランスミッタ1に対して送信する。通信回路20によって復調された制御信号はコントローラ21に入力される。また、通信回路20によってベースバンドのデジタル信号に復調されたオーディオ信号はバッファ22に蓄えられる。バッファ22は、たとえば50ミリ秒分の容量を有している。D/Aコンバータ23は、バッファ22に蓄えられたオーディオ信号を順次読み出してアナログ信号に変換しオーディオ出力部24に入力する。オーディオ出力部24は入力されたオーディオ信号をアンプ付スピーカ4に出力する。
【0018】
アンプ付スピーカ4は、筐体内にオーディオアンプおよびステレオのスピーカ内蔵し、レシーバ2のオーディオ出力部24に接続されるコネクタを備えた機器であり、レシーバ2から入力されたオーディオ信号をオーディオアンプで増幅し、スピーカから放音する。ユーザは、このアンプ付スピーカ4の操作をパネルスイッチから行ってもよいが、トランスミッタ1に接続された携帯オーディオプレーヤ3をリモコン装置のように用いて操作してもよい。すなわち、ユーザが携帯オーディオプレーヤ3を操作すると、その操作情報がトランスミッタ1、レシーバ2を介してアンプ付スピーカ4に送られ、アンプ付スピーカ4はこの操作情報に基づいて機能が制御される。
【0019】
なお、この実施形態では、レシーバ2をアンプ付スピーカ4と別体に設け、コネクタで接続するようにしているが、レシーバ2をアンプ付スピーカ4に内蔵してもよい。
【0020】
図2は、オーディオ信号の伝送に用られる通信チャンネル群の構成を示す図である。通信チャンネル群として、2.4GHz帯に、相互に干渉しない間隔で帯域幅20MHzの8チャンネルが設定されている。このように各チャンネルが相互に干渉しない間隔で設定されているため、複数のシステムが隣接したチャンネルを使用してオーディオ信号を伝送することが可能である。トランスミッタ1およびレシーバ2は、これらのチャンネルのうち、最も通信状態の良好なチャンネルをプライマリチャンネルとして選択・使用し、次に通信状態の良好なチャンネルをセカンダリチャンネルとして選択・使用する。なお、本発明において、通信チャンネル群は8チャンネルに限定されない。また、周波数帯は2.4GHz帯に限定されない。
【0021】
以下、図3のタイムチャートおよび図4のフローチャートを用いて、トランスミッタ1のコントローラ12によるプライマリチャンネル、セカンダリチャンネルの選択方式等について説明する。トランスミッタ1からレシーバ2へのオーディオ信号の伝送が途切れ、レシーバ2のバッファ22のオーディオデータが空になると、アンプ付スピーカ4から放音される音響に音切れが発生する。この無線オーディオシステムでは、このような音切れが発生しないように、オーディオ信号の伝送に用いるチャンネルとして、8チャンネルの通信チャンネル群のなかから、最も通信状態の良好なチャンネルをプライマリチャンネル、次に通信状態の良好なチャンネルをセカンダリチャンネルとして選択し、これら2チャンネルを交互に用いてオーディオ信号の伝送を行う。さらに、このオーディオ信号の伝送を行いつつ、両チャンネルのエラー率を測定し、この測定結果に基づいてプライマリチャンネル、セカンダリチャンネルの入れ換え、および、セカンダリチャンネルの再選択(入れ換え)を行う。
【0022】
図3(A)は、プライマリチャンネル、セカンダリチャンネルを用いたオーディオ信号の伝送手順を説明する図である。まず、プライマリチャンネル、セカンダリチャンネルが選択される。通信開始時のプライマリチャンネル、セカンダリチャンネルは、どのような方式で選択してもよい。たとえば、各チャンネルの受信信号強度を測定し、すなわちRSSI(Received Signal Strength Indicator)スキャンを行い、その結果、受信信号(ノイズ)強度が最も小さいチャンネルをプライマリチャンネル、次に小さいチャンネルをセカンダリチャンネルとすればよい。ただし、プライマリチャンネル、セカンダリチャンネルの選択はこの方式に限定されるものではなく、たとえば、ランダムにプライマリチャンネル、セカンダリチャンネルを選択してもよい。
【0023】
プライマリチャンネル、セカンダリチャンネルが選択されると、プライマリチャンネルが大きい比率となるような重みづけでプライマリチャンネル、セカンダリチャンネルを交互に用いてオーディオ信号を伝送する。たとえば、プライマリチャンネル:8、セカンダリチャンネル:2の比率とする。プライマリチャンネル、セカンダリチャンネルとしてどのチャンネルを選択したかのチャンネル選択情報およびオーディオ信号伝送時のプライマリチャンネル/セカンダリチャンネルの切り換えタイミング等は、トランスミッタ1からレシーバ2に予め通知され、両方の同期した送信および受信が可能にされる。
【0024】
このプライマリチャンネル、セカンダリチャンネルを交互に用いたオーディオ信号の伝送を所定時間(1セット)継続する。この時間に制限はないが、レシーバ2のバッファ22の容量(たとえば50ミリ秒)程度の時間が適当である。たとえば、50ミリ秒を1セットとして、プライマリチャンネル:4ミリ秒、セカンダリチャンネル:1ミリ秒のずつの時間で交互にオーディオ信号の伝送を行うと、各チャンネル10回ずつの伝送で1セットの時間が経過する。こののち、次のセットの伝送を行いつつ、終了したセットにおけるプライマリチャンネル、セカンダリチャンネルのエラー率を判定する。なお、エラー率は、パケットの再送率で判定することができる。
【0025】
プライマリチャンネルのエラー率Ep、セカンダリチャンネルのエラー率Esとし、Ep≦Esなら、プライマリチャンネルの方がセカンダリチャンネルよりも通信状態が良好であるため、プライマリチャンネルの選択をこのまま維持して伝送を継続する。すなわち、図3(A)の破線矢印Rのように処理がもどる。
【0026】
なお、この例では、プライマリチャンネルとセカンダリチャンネルを時間比率で重みづけしたが、他の比率、たとえば伝送パケット数の比率で重みづけしてもよい。
【0027】
もし、Ep>Esであった場合には、図3(A)、(B)の実線矢印Sのように処理が進み、現在のセカンダリチャンネルを新たなプライマリチャンネルとして選択し、このチャンネルで大きい比率の(たとえば4ミリ秒の)オーディオ信号の伝送を行う。そして、図3(B)に示すように、この新たなプライマリチャンネル以外の7チャンネルから新たなセカンダリチャンネルを選出する。なお、プライマリチャンネルの入れ換え、および、セカンダリチャンネルの再選択のスケジュールは、トランスミッタ1からレシーバ2に通知される。
【0028】
図3(B)は、セカンダリチャンネルの選出手順を示す図である。新たなプライマリチャンネルに大きな比率をおきつつ、7つのチャンネル(同図ではチャンネルa〜g)を順次仮のセカンダリチャンネルとしてオーディオ信号の伝送を行う。通信状態の良好なチャンネルをプライマリチャンネルとして選択しているため、仮のセカンダリチャンネルの通信状態が悪くてもオーディオ信号の伝送が完全に途切れてしまうことはなく、レシーバ2側で音切れが発生することはない。なお、図3(B)では、チャンネルa〜gが仮のセカンダリチャンネルとして選択されるのは1回ずつであるが、複数回ずつであってもよい。図3(A)のような1セットの伝送を、チャンネルa〜gを仮のセカンダリチャンネルとして選択した状態で各々行ってもよい。
【0029】
チャンネルa〜gを仮のセカンダリチャンネルとしたオーディオ信号の伝送が終了すると、各チャンネルのエラー率を測定する。そして、最もエラー率の低かったチャンネルを新たなセカンダリチャンネルとして選択する。図3(B)では、チャンネルbが新たなセカンダリチャンネルとして選択されている。これをプライマリチャンネルの伝送期間中に行い、レシーバ2にその選択の結果を通知する。新たなセカンダリチャンネルが選択されると、この新たなプライマリチャンネル、セカンダリチャンネルの組合せで、一点鎖線矢印Tのように図3(A)の伝送手順にもどる。
【0030】
このような手順でプライマリチャンネル、セカンダリチャンネルの更新を行いつつオーディオ信号の伝送を行うことにより、音切れなくオーディオ信号の伝送を行いながら、そのときの状況に応じた最良のプライマリチャンネル、セカンダリチャンネルの組合せを維持することができる。また、以上の構成では、トランスミッタ1に高周波エネルギ検出回路(RSSI回路)が必須ではないため、高品位なアナログ回路が不要になり、簡略且つ廉価な回路構成にすることができる。また、RSSIスキャンを頻繁に行う必要がないため、制御上の負荷を軽くすることができる。
【0031】
なお、新たなセカンダリチャンネルの選択手順は、図3(B)に示した手順に限定されない。新たなプライマリチャンネル以外の通信チャンネルのなかから通信状態(電波状態)の最も良好な通信チャンネルを選択する手順であればよい。
【0032】
図4のフローチャートを参照してトランスミッタ1のコントローラ12の動作を説明する。まず通信チャンネル群の8チャンネル全てに対してRSSIスキャンを実行する(S1)。スキャン結果に基づき、最も電波状態のよい、すなわち最もノイズの少ないチャンネルをプライマリチャンネル、2番目に電波状態のよいチャンネルをセカンダリチャンネルとして選択する(S2)。このプライマリチャンネル、セカンダリチャンネルの選択情報はレシーバ2に通知される。なお、S1のRSSIスキャンは必須ではなく、S2では適当な方法でプライマリチャンネル、セカンダリチャンネルを選択すればよい。
そして、このプライマリチャンネル、セカンダリチャンネルを用いてオーディオ信号の伝送を開始する(S3)。このオーディオ信号の伝送は、上述したように、プライマリチャンネル、セカンダリチャンネルを交互に用いて行うが、プライマリチャンネルの比率が高くなるような重みづけで行われる。1セットの伝送が終了すると、プライマリチャンネルとセカンダリチャンネルの伝送エラー率を比較する(S4)。プライマリチャンネルのエラー率Epがセカンダリチャンネルのエラー率Es以下であれば(S5でNO)、S4にもどって、現在のプライマリチャンネル、セカンダリチャンネルの選択を維持してオーディオ信号の伝送を継続する。
もし、プライマリチャンネルのエラー率Epがセカンダリチャンネルのエラー率Esよりも大きい場合には(S5でYES)、セカンダリチャンネルを新たなプライマリチャンネルとして選択し(S6)、新たなプライマリチャンネルを除く7チャンネルの中から新たなセカンダリチャンネルを選択する(S7、S8)。本実施形態では、新たなセカンダリチャンネルの選択は図3(B)に示した手順で手順で行う。すなわち、新たなプライマリチャンネル以外の7チャンネルを仮のセカンダリチャンネルとして使用してオーディオ信号を伝送し(S7)、このオーディオ信号の伝送時のエラー率を集計する。そして、エラー率が最小であったチャンネルを新たなセカンダリチャンネルに選出して(S8)、S4にもどる。なお、新たなプライマリチャンネルの選択情報、新たなセカンダリチャンネルの選択情報はそれぞれレシーバ2に通知される。
【0033】
なお、この実施形態では、S5の処理で、プライマリチャンネルのエラー率Epがセカンダリチャンネルのエラー率Es以下であれば、プライマリチャンネル、セカンダリチャンネルの組み合わせをそのまま維持してS4にもどり、オーディオ信号の伝送を継続しているが、セカンダリチャンネルのエラー率Esが一定値以上であった場合には、プライマリチャンネルはそのまま維持し、セカンダリチャンネルのみ再選択を行うようにしてもよい。
【0034】
なお、この実施形態では、オーディオ信号を再生する装置を携帯オーディオプレーヤ1としているが、再生装置は携帯型の装置に限定されない。
【符号の説明】
【0035】
1 トランスミッタ
12 コントローラ
2 レシーバ
21 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3以上のチャンネル数を有する通信チャネル群を使用してオーディオ信号を伝送する方法であって、
(1)前記通信チャネル群の通信チャンネルから、プライマリチャンネル、セカンダリチャンネルを選択する手順
(2)前記プライマリチャンネル、セカンダリチャンネルを交互に用いてオーディオ信号の伝送を行う手順
(3)(2)の手順を実行しつつ、プライマリチャンネル、セカンダリチャンネルのそれぞれの伝送エラー率を計測する手順
(4)所定のタイミングに、プライマリチャンネル、セカンダリチャンネルのエラー率を比較する手順
(5)(4)の比較の結果、プライマリチャンネルのエラー率がセカンダリチャンネルのエラー率以下であった場合、(2)に戻ってオーディオ信号の伝送を継続する手順
(6)(4)の比較の結果、プライマリチャンネルのエラー率がセカンダリチャンネルのエラー率より大きかった場合、現在のセカンダリチャンネルを新たなプライマリチャンネルとして選択し、前記通信チャンネル群の通信チャンネルから新たなセカンダリチャンネルを選択したのち、(2)に戻ってオーディオ信号の伝送を継続する手順
を順次実行することを特徴とするオーディオ信号の無線伝送方法。
【請求項2】
前記(6)の手順は、
(11)前記通信チャンネル群の前記新たなプライマリチャンネル以外の1つのチャンネルを仮のセカンダリチャンネルとして選択する手順
(12)前記新たなプライマリチャンネルおよび前記仮のセカンダリチャンネルを交互に用いてオーディオ信号の伝送を行う手順
(13)前記通信チャンネル群の通信チャンネルのうち、前記新たなプライマリチャンネルを除く全てのチャンネルについて(11)、(12)の手順を実行する手順
(14)(13)の手順を実行したのち、各チャンネルの伝送エラー率を比較して、新たなセカンダリチャンネルを決定する手順
を含む請求項1に記載のオーディオ信号の無線伝送方法。
【請求項3】
前記(2)の手順において、プライマリチャンネルをセカンダリチャンネルよりも高い使用率で用いる請求項1または請求項2に記載のオーディオ信号の無線伝送方法。
【請求項4】
前記(1)の手順は、前記通信チャンネル群の各チャンネルの受信信号強度を測定し、電波状態が最良のチャンネルをプライマリチャンネル、電波状態が次に良好なチャンネルをセカンダリチャンネルとして選択する手順である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のオーディオ信号の無線伝送方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−31059(P2013−31059A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166657(P2011−166657)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】