説明

オートテンショナ

【課題】ベース部材10に揺動可能に支持されたアーム部材20を、ベース部材10のカップ部11とアーム部材20のカップ部21との間に形成された内部空間に配置された捩りコイルばね50でもってベルト押圧方向に回動付勢するようにしたオートテンショナにおいて、既存の部材に対する設計変更を行わなくても、両カップ部11,21間の隙間から入り込んだ異物が半径方向内方に侵入するのを防止できるようにする。
【解決手段】両カップ部11,21間の内部空間に捩りコイルばね50のコイル部51を半径方向外方から覆うように配置され、カップ部11,21同士の隙間から内部空間に入り込んだ異物が半径方向内方に侵入するのを規制する異物防止部材30を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用エンジンの補機駆動ベルトなどのベルトに張力を付与するとともにその張力変動に応じて自動的に張力付与作動を調整するオートテンショナに関し、特に、異物の侵入を防止する対策に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のテンショナにおける異物侵入防止対策については、種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アーム部材のカップ部の開口縁を拡径するとともに軸方向に延設して、ベース部材のカップ部の開口端を半径方向外周側から覆う隆起部とすることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、ベース部材のカップ部とアーム部材のカップ部との間に形成される内部空間にダンピングバンドが設けられる場合に、そのダンピングバンドに、半径方向外側に張り出して両カップ部間の隙間に入り込むフランジ部を設けるようにすることが記載されている。
【0005】
特許文献3には、ベース部材およびアーム部材間の隙間の最外周に、該両部材に摺接可能なシール部材を介装し、そのベース部材側の端部を該ベース部材に周設した環状突起に密着させるようにすることが記載されている。
【0006】
特許文献4には、ベース部材およびアーム部材間の隙間部分において、ベース部材の端部とアーム部材の端部とが重なるように設け、その重なり部分の隙間に樹脂製のスリーブを介装することが記載されている。
【特許文献1】特開平09−042392号公報([0012]段落,図2)
【特許文献2】特開2004−204937号公報([0014]段落,図1)
【特許文献3】特開2001−173737号公報([0027]〜[0036]段落,図4)
【特許文献4】実開平05−032856号公報([0018]〜[0024]段落,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の場合には、既存の部材に新たな部位を設ける必要があることから、既存のオートテンショナに異物対策を加える場合には、少なくとも新たな部位が設けられる部材については設計変更が必要になるという難点がある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、ベース部材に揺動可能に支持されたアーム部材を、ベース部材のカップ部とアーム部材のカップ部との間に形成された内部空間に配置された捩りコイルばねでもってベルト押圧方向に回動付勢するようにしたオートテンショナにおいて、既存の部材に対する設計変更を行わなくても、両カップ部間の隙間から入り込んだ異物が半径方向内方に侵入するのを防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成すべく、本発明では、既存のオートテンショナに形成されている内部空間を利用し、そこに別部材を追加することで、異物侵入対策を講じるようにした。
【0010】
具体的には、本発明では、有底筒状のカップ部を有していて固定体に取り付けられるベース部材と、同じく有底筒状のカップ部とベルトを押圧するためのベルト押圧部とを有していて、上記カップ部がベース部材のカップ部と開口同士を対向させて該両カップ部間に内部空間を形成するように配置されかつ上記ベルト押圧部がベルト押圧方向および反ベルト押圧方向に変位するように揺動軸心回りに揺動可能に該ベース部材に支持されたアーム部材と、コイル部が軸心を上記揺動軸心に略平行にして上記内部空間に配置されていて、ベース部材に対しアーム部材を上記ベルト押圧方向に向かって常時回動付勢する捩りコイルばねとを備えたオートテンショナを前提としている。
【0011】
そして、上記ベース部材のカップ部と上記アーム部材のカップ部との間に形成された内部空間に上記捩りコイルばねのコイル部を半径方向外方から覆うように配置されていて、両カップ部間の隙間から内部空間に入り込んだ異物が半径方向内方に侵入するのを規制する異物防止部材を備えるようにする。
【0012】
尚、上記の構成において、異物防止部材の外周面に、少なくとも1条の溝部を周方向に延びるように設けたり、異物防止部材の軸方向両端部に、それぞれ外向きフランジ部を設けるようにすることができる。
【0013】
また、異物防止部材を、ベース部材のカップ部の周壁内周面およびアーム部材のカップ部の周壁内周面に摺接可能な摺接材と、この摺接材の内周面側に積層されていて、該摺接材の外周面が上記両周壁内周面に押し付けられるように拡径方向の弾性力を有する弾性材とを有してなるものとすることもできる。この場合、摺接材としては、周壁内周面との間の摩擦係数が、オートテンショナの所定のダンピング特性を損なわない程度に低いものが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ベース部材のカップ部とアーム部材のカップ部との間に形成された内部空間に、捩りコイルばねのコイル部を半径方向外方から覆うように配置された異物防止部材を備えるようにしたので、既存の部材の設計変更を行わなくても、カップ部間の隙間から入り込んだ異物が半径方向内方に侵入するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るオートテンショナの全体構成を示しており、このオートテンショナは、自動車用エンジンの出力トルクの一部を1本の伝動ベルトを介して複数の補機に伝達するようにしたサーペンタインレイアウトのベルト式補機駆動装置において使用されるものであり、上記の伝動ベルトに所定の張力を付与する作動を行いつつ、そのベルト張力の変動に応じて上記の作動に対するダンピング力を自動的に変化させるようになっている。
【0017】
このオートテンショナは、固定側としてのエンジンに固定されるベース部材10と、このベース部材10に揺動軸心P回りに揺動可能に支持されたアーム部材20とを備えている。尚、ベルト式補機駆動装置では、レシプロエンジンの場合のクランク軸などの出力軸が略水平となるように配置されていて、上記の伝動ベルトが略鉛直面内を走行するように配置されることから、本オートテンショナは、揺動軸心Pが略水平となるように配置される。
【0018】
上記のベース部材10は、有底筒状のカップ部11と、このカップ部11内の底壁中央に立設された軸部12とを有する。軸部12の外周面は、先端側に向かって外径が漸次小さくなる断面テーパ状に形成されており、また、軸部12の揺動軸心P部分には、該軸部を軸方向に貫通するボルト孔13が設けられている。カップ部11の外周には、図外の取付部が設けられており、ベース部材10は、これら取付部およびボルト孔13においてボルトによりエンジンに固定されるようになっている。さらに、カップ部11の側周壁における周方向の一部には、該側周壁を半径方向に貫通しかつ底壁近傍位置から開口近傍位置に達するスリット状の係止部(図示せず)が形成されている。
【0019】
一方、上記のアーム部材20は、有底筒状のカップ部21と、このカップ部21の底壁中央に上記ベース部材10の軸部12の先端側から外嵌合可能に設けられたボス部22とを有する。ボス部22は、カップ部21の底壁から該カップ部21の開口側に向かって延びるように形成されており、その内周面は、カップ部21の開口側に向かって内径が漸次大きくなる断面テーパ状に形成されている。ボス部22の内周面のテーパ角は、軸部12の外周面のテーパ角と略同じである。このアーム部材20は、カップ部21の開口がベース部材10のカップ部11の開口と重なり合うとともに、ボス部22がベース部材10の軸部12上に該軸部12の先端側から外嵌合された状態に配置されている。軸部12はボス部22を軸方向に貫通しており、その先端部分カップ部21の底壁から軸方向に突出している。この先端部分には、略円板状をなしていて外径がボス部22の内径よりも大きいフロントプレート23が係止されており、これにより、ボス部22が軸部12から抜け出ないようになている。また、カップ部21の側周壁における周方向の一部でありかつ底壁近傍の部位には、該側周壁を半径方向に貫通する係止孔(図示せず)が形成されている。
【0020】
上記カップ部21の外周には、アーム部24が半径方向外方に向かって突出するように設けられており、このアーム部24の先端には、プーリ保持部25が設けられている。プーリ保持部25には、揺動軸心Pに平行な方向に延びるボルト孔26が形成されている。プーリ保持部25の先端側外周は小径になっており、この小径部上には、ベアリング27が内輪において外嵌合されている。この内輪は、ボルト孔26に螺着された鍔付ボルト28の鍔部によりプーリ保持部25に取り付けられている。ベアリング27の外輪上には、ベルト押圧部としてのプーリ29が回転一体に外嵌合されており、このプーリ29が伝動ベルトに接触してプーリ軸心回りに回転しつつ該伝動ベルトを押圧するようになっている。
【0021】
上記アーム部材20のボス部22とベース部材10の軸部12との間には、略円筒状のインサートベアリング40が介装されており、アーム部材20は、このインサートベアリング40を介してベース部材10に揺動軸心P回りに揺動可能に支持されている。インサートベアリング40の内外周面はそれぞれ断面テーパ状に形成されている。内周面のテーパ角は軸部12の外周面と略同じであり、外周面のテーパ角は、ボス部22の内周面と略同じである。また、上記のフロントプレート23と、アーム部材20のカップ部21の底壁との間には、インサートベアリング40と同じ材料からなる円板状のスラストワッシャ41が介装されている。
【0022】
上記ベース部材10とアーム部材20との間には、ベース部材10に対し、アーム部材20をプーリ29が伝動ベルトを押圧する方向に向かって揺動軸心P回りに回動するように常時付勢する捩りコイルばね50が介装されている。具体的には、この捩りコイルばね50は、ベース部材10のカップ部11とアーム部材20のカップ部21との間に収容されており、右巻きのコイル部51と、このコイル部51におけるベース部材10側の端部から半径方向外方に向かって突出する固定側タング(図示せず)と、コイル部51におけるアーム部材20側の端部から半径方向外方に向かって突出する揺動側タング(図示せず)とを有する。コイル部51は、アーム部材20のボス部22上に套嵌されていて、上記固定側タングはベース部材10の上記係止部に周方向の移動を規制された状態に係止されており、一方、上記揺動側タングはアーム部材20の上記係止孔に同じく周方向の移動を規制された状態に係止されている。
【0023】
また、捩りコイルばね50は、コイル部51が縮径する方向に捩られた状態でベース部材10およびアーム部材20間に介装されており、このことで、コイル部51が拡径する方向の捩りトルクでもってアーム部材20を回動付勢するようになっている。さらに、この捩りコイルばね50は、コイル部51が軸方向に圧縮された状態で介装されており、このことで、上記のスラストワッシャ41がフロントプレート23とアーム部材20のカップ部21との間に挟圧された状態となっている。
【0024】
上記捩りコイルばね50のコイル部51と上記アーム部材20のボス部22との間には、略鍔付円筒状のスプリングサポート60が介装されている。このスプリングサポート60は、アーム部材20のボス部22上に外嵌合されていて該ボス部22に対し摺接可能な円筒状の摺接部61と、この摺接部61の一方の開口縁に設けられた外向きフランジ状の鍔部62とからなっている。摺接部61の軸方向寸法は、捩りコイルばね50のコイル部51の1巻き分の軸方向寸法と略同じである。鍔部62は、コイル部51の固定側タングの側の端部とベース部材10のカップ部11の底壁との間に配置されていて、コイル部51の圧縮力により両者間に挟圧保持されており、このことで、スプリングサポート60は、ベース部材10側に回動不能に固定されるようになっている。
【0025】
ここで、上記のように構成されたオートテンショナの作動について説明する。オートテンショナでは、自動車用エンジンの作動に伴い、伝動ベルトの張力が低下したときには、捩りコイルばね50の捩りトルクでもってアーム部材20がベルト押圧方向に回動し、プーリ29が伝動ベルトを押圧するので、ベルト張力の低下が抑えられ、一方、伝動ベルトの張力が上昇したときには、そのベルト反力によりプーリ29が押圧され、アーム部材20がベルト押圧方向とは反対の方向に回動するので、ベルト張力の上昇が抑えられる。
【0026】
一方、捩りコイルばね50の捩りトルクの反力でもって、該捩りコイルばね50のコイル部51における周方向の一部は半径方向内方に向かって常に押圧されており、これにより、アーム部材20のボス部22における周方向の一部がスプリングサポート60の摺接部61とインサートベアリング40との間に挟圧されている。よって、アーム部材20の揺動に伴い、スプリングサポート60の摺接部61とボス部22との間、およびインサートベアリング40とボス部22との間には、それぞれ摺動摩擦が発生し、それらがアーム部材20の揺動を減衰させるダンピング力として作用する。その際に、捩りトルクの反力は、アーム部材20がベルト押圧方向に回動するとき、つまり、コイル部51が拡径するときには、それに応じて低下するので、ダンピング力も低下する。よって、アーム部材20の回動が速やかに行われる。一方、アーム部材20がベルト押圧方向とは反対の方向に回動するとき、つまり、コイル部51が縮径するときには、それに応じて上昇するので、ダンピング力も上昇する。
【0027】
これらの結果、オートテンショナは、ベルト張力が低下したときには速やかに伝動ベルトを押圧してベルト張力の低下を抑え、一方、ベルト張力が増加したときには緩やかにベルト反力の増加分を吸収してベルト張力の増加を抑える。このようにすることで、張力変動に起因する伝動ベルトのばたつきが回避され、これにより、補機プーリに対する伝動ベルトの滑りが抑えられてトルク伝達が確実化するとともに、伝動ベルトの寿命の短命化が防止されることとなる。
【0028】
そして、本実施形態では、上記ベース部材10のカップ部11とアーム部材20のカップ部21との間に形成された内部空間には、カップ部11,21同士の隙間から内部空間に入り込んだ異物が半径方向内方に侵入するのを規制する異物防止部材30が捩りコイルばね50のコイル部51を半径方向外方から覆うように配置されている。
【0029】
具体的には、異物防止部材30は、断面略円形状をなしていてベース部材10のカップ部11の底壁とアーム部材20のカップ部21の底壁との間の寸法よりも少しだけ短い軸方向寸法の筒状体であり、捩りコイルばね50のコイル部51を半径方向外方側から覆うようにして、該コイル部51と両カップ部11,21の側周壁との間に介装されており、両カップ部11,21間の軸方向の隙間を通して捩りコイルばね50のコイル部51が外部に露呈しないようになっている。また、この異物防止部材30は、基本的に、捩りコイルばね50に接触しないようにされている。尚、異物防止部材30の材料としては、両カップ部11,21間に筒形状に装着された状態でその筒形状を保持できる程度の剛性を有するもの(例えば、樹脂など)であることが最低条件であり、さらには、オートテンショナの取付条件や異物防止部材30の装着条件などに応じて、耐水性、耐油性、耐熱性などの種々の必要な観点から検討して適宜採用することができる。
【0030】
したがって、本実施形態では、有底筒状のカップ部11を有していて自動車用エンジンに取り付けられるベース部材10と、同じく有底筒状のカップ部21を有するとともに、伝動ベルトに接触して該ベルトを押圧するためのプーリを有していて、上記カップ部21がベース部材10のカップ部11と開口同士を対向させて該両カップ部11,21間に内部空間を形成するように配置されかつプーリ29がベルト押圧方向および反ベルト押圧方向に変位するように揺動軸心P回りに揺動可能に該ベース部材10に支持されたアーム部材20と、コイル部51の軸心が揺動軸心Pに略平行となるように上記内部空間に配置されていて、ベース部材10に対しアーム部材20を上記ベルト押圧方向に向かって常時回動付勢する捩りコイルばね50とを備えたオートテンショナとして、上記ベース部材10のカップ部11とアーム部材20のカップ部21との間に形成された内部空間に捩りコイルばね50のコイル部51を半径方向外方から覆うように配置されていて、両カップ部11,21間の隙間から内部空間に入り込んだ異物が半径方向内方に侵入するのを規制する異物防止部材30を備えるようにしたので、ベース部材10,アーム部材20,インサートベアリング40,捩りコイルばね50,スプリングサポート60などの既存の部材の設計変更を行わなくても、カップ部11,21間の隙間から内部空間に入り込んだ異物が半径方向内方に侵入するのを防止することができ、そのような異物の侵入に起因するやアーム部材20の揺動不良やダンピング特性の変化などの不具合の発生を未然に防止することができる。
【実施例1】
【0031】
図2および図3は、本発明の実施例1に係る異物防止部材30の横断面形状を示しており、図2は、ベース部材10のカップ部11とアーム部材20のカップ部21との間の内部空間に装着される前の状態での横断面形状,図3は、その内部空間に装着された状態での横断面形状である。
【0032】
本実施例では、異物防止部材30は、予め略円筒状をなしており、よって、装着前の状態と装着後の状態とでは、互いに同じ横断面形状をなしている。
【実施例2】
【0033】
図4および図5は、本発明の実施例2に係る異物防止部材30の横断面形状を示しており、図4は装着前の横断面形状,図5は装着状態での横断面形状である。
【0034】
本実施例では、異物防止部材30は、両カップ部11,21の側周壁内面に沿いかつ周方向両端部が互いに突き合わされた状態に装着される。本実施例の場合、装着前の横断面形状としては、図4(a)に示すように、フラットな平板状であってもよいし、さらには、筒状に変形させやすいように、同図(b)に示す如く、予め、曲り癖を付けておいてもよい。
【実施例3】
【0035】
図6および図7は、本発明の実施例3に係る異物防止部材30の横断面形状を示しており、図6は装着前の横断面形状,図7は装着状態での横断面形状である。
【0036】
本実施例では、異物防止部材30は、両カップ部11,21の側周壁内面に沿いかつ周方向両端部が互いに重なり合った状態に装着される。本実施例の場合においても、装着前の横断面形状としては、上記実施例2の場合と同じく、フラットな平板状(図6(a))であってもよいし、曲り癖を付け(同図(b))ておいてもよい。
【実施例4】
【0037】
図8および図9は、本発明の実施例4に係る異物防止部材30の外周面の形状を示しており、図8は、異物防止部材30の外周面が、両カップ部11,21又は何れか一方のカップ部11(又は21)の側周壁内周面に圧接していてベース部材10およびアーム部材20の何れか一方に固定される固定式の場合であり、図9は、異物防止部材30の外周面と、両カップ部11,21の側周壁内周面との間に半径方向の隙間が形成確保されていてベース部材10およびアーム部材20の何れに対しても異物防止部材30が固定されていない非固定式の場合である。
【0038】
そして、本実施例では、異物防止部材30の外周面形状は、オートテンショナの軸方向において、半径方向における凹凸のないフラットな形状である。
【0039】
尚、上記の実施例1〜3について、本実施例における固定式および非固定式の2つの場合に適用可能な異物防止部材30の全体形状としては、実施例1のみであり、実施例2および実施例3は、本実施例の固定式の場合のみが適用可能である。
【実施例5】
【0040】
図10および図11は、本発明の実施例5に係る異物防止部材30の外周面の形状を示しており、図10は固定式の場合であり、図11は非固定式の場合である。
【0041】
本実施例では、異物防止部材30の軸方向両端部に、それぞれ、半径方向外方に向かって突出する外向きフランジ部31が形成されている。したがって、固定式の場合には、少なくとも一方の外向きフランジ部31が、対応するカップ部11(又は21)の側周壁に圧接していることになる。尚、本実施例の場合、見方を変えれば、周方向に延びる溝幅寸法の大きい1条の溝部が軸方向両端部間に配置されていると表現することもできる。
【0042】
尚、上記の実施例1〜3について、本実施例における固定式および非固定式の2つの場合に適用可能な異物防止部材30の全体形状としては、上記実施例4の場合と同様に、実施例1のみであり、実施例2および実施例3は、本実施例の固定式の場合のみが適用可能である。
【実施例6】
【0043】
図12および図13は、本発明の実施例6に係る異物防止部材30の外周面の形状を示しており、図12は固定式の場合であり、図13は非固定式の場合である。
【0044】
本実施例では、異物防止部材30の外周に、各々、周方向に延びる複数条の溝部32が軸方向に並ぶように配置されている。尚、見方を変えれば、実施例5の場合の異物防止部材30において、軸方向両端部の2つの外向きフランジ部31,31間に、周方向に延びる少なくとも1条の外向きフランジ部が加えられた形状とも表現することができる。したがって、固定式の場合には、少なくとも一方の端部近傍に位置する溝部32における端部側の側壁部が、表現を変えると、少なくとも両端部の外向きフランジ部のうちの一方が、対応するカップ部11(又は21)の側周壁に圧接していることになる。
【0045】
尚、上記の実施例1〜3について、本実施例における固定式および非固定式の2つの場合に適用可能な異物防止部材30は実施例1のみであり、実施例2および実施例3については固定式の場合のみが適用可能であることは、上記実施例4および実施例5の場合と同様である。
【実施例7】
【0046】
図14は、本発明の実施例6に係る異物防止部材30の外周面の形状を示しており、本実施例では、両カップ部11,21間の隙間に沿って周方向に延びるように形成された1条の中央溝部33と、この中央溝部33の軸方向一端側に配置されていて略周方向に延びる少なくとも1条の一端側溝部34と、中央溝部33の軸方向他端側に配置されていて略周方向に延びる少なくとも1条の他端側溝部35とが形成されている。一端側および他端側の2つの溝部34,35は、異物防止部材30の周方向の各部位のうち、最も高い位置に位置付けられる部位では中央溝部33から軸方向に最も離れており、その部位から低い位置に位置付けられる部位に向かっては、中央溝部33に合流する状態に傾斜しており、最も低い部位では、中央溝部33のみが存在するようになっている。
【0047】
これにより、オートテンショナの上方から両カップ部11,21間の隙間を経由して異物防止部材30の外周に達した異物は、該外周上で軸方向に移動したとしても、自重によって下方移動するのに応じて中央溝部に集められるので、異物防止部材30の略最低位置まで下方移動して異物防止部材30の外周表面から落下するときには、両カップ部11,21間の隙間を経由して外部空間に排出されやすくなる。
【実施例8】
【0048】
図15は、本発明の実施例7に係る異物防止部材の構成を拡大して示しており、本実施例では、異物防止部材30は、ベース部材10のカップ部11の周壁内周面およびアーム部材20のカップ部21の周壁内周面に摺接可能な摺接材としての樹脂材30aと、この樹脂材30aの内周面側に積層されていて、該樹脂材30aの外周面が上記両周壁内周面に押し付けられるように拡径方向の弾性復元力を有する弾性材としての金属製の板ばね30bとからなる2層構造である。ここで、樹脂材30aとしては、ベース部材10のカップ部11やアーム部材20のカップ部21との間の摩擦係数が、オートテンショナの所定のダンピング特性に殆ど影響を与えない程度に低いものが選ばれる。
【0049】
この異物防止部材30は、板ばね30bの拡径方向の弾性復元力により該異物防止部材の外周面がベース部材10のカップ部11の周壁内周面およびアーム部材20のカップ部21の周壁内周面に圧接することで各周壁との間の密封性が高くなり、よって、両カップ部11,21間の隙間から内部空間に入り込んだ異物が半径方向内方に侵入するのを効果的に規制することができる。
【0050】
しかも、異物防止部材30の外周側が、ベース部材10のカップ部11やアーム部材20のカップ部21との間の摩擦係数の低い樹脂材30aであるので、アーム部材20の揺動に伴て各周壁内周面との間に発生する摺動摩擦力を小さく抑えることができ、よって、そのような摩擦力によりオートテンショナのダンピング特性が損なわれるという事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るオートテンショナの全体構成を示す縦断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1における異物防止部材の装着前の状態を示す横断面図である。
【図3】図3は、同実施例における異物防止部材の装着後の状態を示す横断面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の実施例2における異物防止部材の装着前の状態を示す図2相当図であり、同図(b)は、同実施例における別の異物防止部材の装着前の状態を示す図2相当図である。
【図5】図5は、同実施例における異物防止部材の装着後の状態を示す図3相当図である。
【図6】図6(a)は、本発明の実施例3における異物防止部材の装着前の状態を示す図2相当図であり、同図(b)は、同実施例における別の異物防止部材の装着前の状態を示す図2相当図である。
【図7】図7は、同実施例における異物防止部材の装着後の状態を示す図3相当図である。
【図8】図8は、本発明の実施例4における異物防止部材の固定式装着状態を模式的に示す縦断面図である。
【図9】図9は、同実施例における異物防止部材の非固定式装着状態を模式的に示す縦断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施例5における異物防止部材の固定式装着状態を模式的に示す縦断面図である。
【図11】図11は、同実施例における異物防止部材の非固定式装着状態を模式的に示す縦断面図である。
【図12】図12は、本発明の実施例6における異物防止部材の固定式装着状態を模式的に示す縦断面図である。
【図13】図13は、同実施例における異物防止部材の非固定式装着状態を模式的に示す縦断面図である。
【図14】図14は、本発明の実施例7における異物防止部材の装着状態を模式的に示す縦断面図である。
【図15】図15は、本発明の実施例8における異物防止部材の構成を示す部分縦断面図である。
【符号の説明】
【0052】
10 ベース部材
11 カップ部
20 アーム部材
21 カップ部
30 異物防止部材
30a 樹脂材(摺接材)
30b 板ばね(弾性材)
31 外向きフランジ部
32 溝部
33 中央溝部(溝部)
34 一端側溝部(溝部)
35 他端側溝部(溝部)
50 捩りコイルばね
51 コイル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状のカップ部を有し、固定側に取り付けられるベース部材と、
有底筒状のカップ部と、所定のベルトに接触して該ベルトを押圧するためのベルト押圧部とを有し、上記カップ部が上記ベース部材のカップ部と開口同士を対向させて該両カップ部間に内部空間を形成するように配置されかつ上記ベルト押圧部がベルト押圧方向および反ベルト押圧方向に変位するように揺動軸心回りに揺動可能に該ベース部材に支持されたアーム部材と、
コイル部の軸心が上記揺動軸心に略平行となるように上記内部空間に配置され、上記ベース部材に対し上記アーム部材を上記ベルト押圧方向に向かって常時回動付勢する捩りコイルばねとを備えたオートテンショナであって、
上記ベース部材のカップ部と上記アーム部材のカップ部との間に形成された内部空間に上記捩りコイルばねのコイル部を半径方向外方から覆うように配置され、両カップ部間の隙間から内部空間に入り込んだ異物が半径方向内方に侵入するのを規制する異物防止部材を備えていることを特徴とするオートテンショナ。
【請求項2】
請求項1に記載のオートテンショナにおいて、
異物防止部材は、該異物防止部材の外周面に周方向に延びるように設けられた少なくとも1条の溝部を有することを特徴とするオートテンショナ。
【請求項3】
請求項1に記載のオートテンショナにおいて、
異物防止部材は、該異物防止部材の軸方向両端部に外向きフランジ部を有することを特徴とするオートテンショナ。
【請求項4】
請求項1に記載のオートテンショナにおいて、
異物防止部材は、ベース部材のカップ部の周壁内周面およびアーム部材のカップ部の周壁内周面に摺接可能な摺接材と、上記摺接材の内周面側に積層され、該摺接材の外周面が上記両周壁内周面に押し付けられるように拡径方向の弾性力を有する弾性材とを有してなることを特徴とするオートテンショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−185984(P2009−185984A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29182(P2008−29182)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】