説明

オートテンショナ

【課題】高い精度管理を必要とせずに、エンジンのベルトを交換するときのベローズの過度の膨張を防止することができるオートテンショナを提供する。
【解決手段】シリンダ15の底14に形成したスリーブ嵌合凹部17にスリーブ16の下部外周を嵌め合わせ、スリーブ16内にロッド18を摺動可能に挿入してシリンダ15内を圧力室19とリザーバ室20に区画し、ロッド18の上端にばね座21を固定し、そのばね座21を付勢するリターンスプリング27を設け、ばね座21とシリンダ15の間の環状開口を覆う上下に伸縮可能な筒状のゴム製ベローズ22を設けたオートテンショナ11において、ばね座21に、リザーバ室20と外気とを連通する通気孔36を形成し、その通気孔36の外気側の端部に手動で開閉を切り替えるエア抜き栓37を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オルタネータ等の自動車補機を駆動するベルトの張力保持に用いられるオートテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の補機、たとえばカーエアコンやウォータポンプなどは、その回転軸がエンジンのクランクシャフトにベルトで連結されており、そのベルトを介してクランクシャフトで駆動される。このベルトの張力を適正範囲に保つために、一般に、支点軸を中心として揺動可能に設けたプーリアームと、そのプーリアームに取り付けたテンションプーリと、そのテンションプーリをベルトに押さえ付ける方向にプーリアームを付勢するオートテンショナとからなる張力調整装置が使用される。
【0003】
この張力調整装置に組み込まれるオートテンショナとして、下部に底を有するシリンダ内に作動油を溜め、そのシリンダの底に形成したスリーブ嵌合凹部にスリーブの下部外周を嵌め合わせ、そのスリーブ内にロッドを軸方向に摺動可能に挿入してシリンダ内を圧力室とリザーバ室に区画し、前記ロッドの上端にばね座を固定し、そのばね座を前記圧力室の容積が拡大する方向に付勢するリターンスプリングを設けたものが知られている(特許文献1,2)。
【0004】
このオートテンショナは、リターンスプリングの付勢力がベルトの張力とつり合う位置までばね座が移動することにより、ベルトの張力変動を吸収する。
【0005】
また、圧力室の下部とリザーバ室の下部は、リザーバ室側から圧力室側への作動油の流れのみを許容するチェックバルブを設けた第1通路を介して連通しており、圧力室の容積が拡大する方向にロッドが移動すると、前記チェックバルブが開き、第1通路を通ってリザーバ室側から圧力室側に作動油が流れる。そのため、圧力室の容積が拡大する方向には、ロッドが速やかに移動する。
【0006】
また、圧力室の上部とリザーバ室の上部は、作動油の流量を制限する絞りを設けた第2通路を介して連通しており、圧力室の容積が縮小する方向にロッドが移動すると、圧力室内の作動油が第2通路を通って流出する。このとき、第2通路を流れる作動油の流量が絞りによって制限されてダンパー作用が生じるので、ロッドはゆっくりと移動する。
【0007】
また、このオートテンショナは、ばね座とシリンダの間の環状開口が上下に伸縮可能な筒状のゴム製ベローズで覆われ、そのベローズの上部が、ばね座の外周に締め代をもって嵌め合わされ、ベローズの下部が、シリンダの外周に締め代をもって嵌め合わされており、このベローズによってリザーバ室内の作動油を密封している。
【0008】
このオートテンショナは、エンジンのベルトを交換するときに、圧力室の容積が縮小する方向にロッドが過度に移動することがあり、この場合、リザーバ室内の圧力変化を吸収する機構を設けないと、リザーバ室内の圧力上昇によってベローズが過度に膨張し、ベローズの上部または下部から作動油が漏れるおそれが生じる。
【0009】
そこで、特許文献3に記載のオートテンショナにおいては、リザーバ室内の圧力変化を吸収するため、リザーバ室と外気とを連通する通気孔をばね座に形成し、その通気孔の外気側の端部に、リザーバ室側と外気側とを仕切るゴム製の隔壁にスリットを入れたベントを組み込んでいる。このオートテンショナは、リザーバ室内の圧力が予め設定した圧力よりも大きくなると、ベントのスリットが開いてリザーバ室内の圧力を外気に逃がし、ベローズの過度の膨張を防止する。
【特許文献1】特表2000−504395号公報
【特許文献2】特開2007−16932号公報
【特許文献3】特開2007−315562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、ベントを使用した場合、リザーバ室内の圧力が上昇してベントのスリットが開いたときに、リザーバ室内の圧力が下がるが、外気圧までは下がらない。そのため、ベントのスリットが開く圧力(以下、「ベントの開放圧力」という)が大きいと、ベローズが膨らんだままの状態となり、ベローズの上部および下部の嵌合強度が低下し、作動油が漏れるおそれがある。
【0011】
一方、ベントの開放圧力が小さいと、ベローズの膨らみは確実に抑えることができるが、エンジン作動中に生じるリザーバ室内の圧力振動によって、ベントのスリットが開放と閉鎖を繰り返し、リザーバ室内の作動油が急速に蒸発して減少する問題がある。
【0012】
したがって、リザーバ室内の圧力変化を吸収するためにベントを使用する場合、ベントの開放圧力を高い精度で管理する必要があり、その管理が煩雑だった。
【0013】
この発明が解決しようとする課題は、高い精度管理を必要とせずに、エンジンのベルトを交換するときのベローズの過度の膨張を防止することができるオートテンショナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、前記ばね座に、前記リザーバ室と外気とを連通する通気孔を形成し、その通気孔の外気側の端部に手動で開閉を切り替えるエア抜き栓を設けた。このようにすると、エンジンのベルトを交換するときは、エア抜き栓を開くことによってリザーバ室内の圧力を外気に開放し、ベローズの過度の膨張を防止することができる。また、エンジン作動中は、エア抜き栓を閉じておくことにより、リザーバ室内の作動油の蒸発を確実に防止することができる。
【0015】
前記エア抜き栓としては、例えば、前記通気孔の外気側の端部内周に形成した雌ねじにねじ係合するビスと、そのビスの頭部と前記ばね座の間に挟み込まれたガスケットとからなる構成のものを採用することができる。このエア抜き栓は、ビスを緩めると、ガスケットの部分に隙間が生じるので、その隙間とビスのねじ隙間とを介してリザーバ室内の圧力を外気に開放することができる。また、ビスを締め込むと、ガスケットの部分の隙間を閉じて、リザーバ室内を密封することができる。
【0016】
また、前記エア抜き栓としては、例えば、前記通気孔の外気側の端部に着脱可能に嵌め込まれた栓体を採用することができる。このエア抜き栓は、栓体を通気孔から取り外すことにより、リザーバ室内の圧力を外気に開放することができる。また、栓体を通気孔に取り付けることにより、通気孔の外気側の端部を閉じて、リザーバ室内を密封することができる。
【0017】
前記エア抜き栓として、通気孔の外気側の端部に着脱可能に嵌め込まれた栓体を採用する場合、栓体に前記通気孔の外気側の端部内径よりも大径の頭部を設けると好ましい。このようにすると、栓体を通気孔に取り付けるときに、栓体の頭部がストッパとなるので、栓体が通気孔に没入して取り外せなくなるのを防止することができる。
【0018】
また、前記エア抜き栓として、通気孔の外気側の端部に着脱可能に嵌め込まれた栓体を採用する場合、前記栓体の通気孔への挿入部分の外周に、周方向に延びる突条を軸方向に間隔をおいて複数形成し、その突条を前記通気孔の内周に締め代をもって嵌合させると好ましい。このようにすると、前記栓体の通気孔への挿入部分の外周を突条のない円筒面とし、その円筒面を通気孔の内周に締め代をもって嵌合させた場合よりも、小さい力で栓体を着脱することが可能となる。
【0019】
前記エア抜き栓として、通気孔の外気側の端部に着脱可能に嵌め込まれた栓体を採用する場合、この栓体は、ゴムで形成してもよく、樹脂で形成してもよい。
【0020】
また、前記エア抜き栓としては、例えば、前記通気孔の外気側の端部に嵌め込まれた筒体と、その筒体に収容されたボールと、前記筒体の外気側の端部に形成された内向きのフランジに前記ボールを押さえ付けるスプリングとからなる構成のものを採用することができる。このエア抜き栓は、外気側からボールを押し込むと、ボールとフランジの間に隙間が生じるので、その隙間を介してリザーバ室内の圧力を外気に開放することができる。また、ボールの押し込みを解除すると、スプリングの力によってボールとフランジの間の隙間が閉じるので、リザーバ室内が密封される。
【0021】
前記通気孔の外気側の端部は、特許文献3に記載のようにばね座の上面に開口させてもよいが、前記ばね座の外周に開口させると、外気中の異物が通気孔に入りにくくなり、リザーバ室内に浸入しにくくなる。
【0022】
前記第2通路を、前記ロッドとスリーブの摺動面間に形成される環状の絞り隙間と、その絞り隙間からロッドの内部とばね座の内部とを順に通ってリザーバ室に連通する油通路とで構成し、その油通路の電磁開閉弁を前記ばね座に組み込むことができる。このようにすると、電磁開閉弁を閉じることにより、圧力室の容積が縮小する方向へのばね座の移動を阻止することができる。そのため、ベルトに接続されたモータジェネレータが駆動して始動するタイプのエンジンにこのオートテンショナを採用した場合、電磁開閉弁を閉じた状態でエンジンを始動することにより、エンジン始動時のベルトのスリップを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
この発明のオートテンショナは、エンジンのベルトを交換するときは、エア抜き栓を開くことによってリザーバ室内の圧力を外気に開放し、ベローズの過度の膨張を防止することができる。また、このオートテンショナは、リザーバ室内の圧力の大きさに関係なく、手動でエア抜き栓を開閉するので、高い精度管理を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1に、自動車補機を駆動するベルト1でクランクシャフト2を回転させてエンジンを始動するアイドリングストップ対応エンジンのベルト伝動装置を示す。ベルト1は、クランクシャフト2に取り付けられたクランクプーリ3と、モータジェネレータの回転軸4に取り付けられたモータプーリ5と、補機の回転軸6に取り付けられた補機プーリ7とに掛け渡されている。
【0025】
このエンジンを始動するときは、モータジェネレータの回転軸4が駆動軸として回転し、その回転が、モータプーリ5からベルト1を介してクランクプーリ3に伝達して、クランクシャフト2が回転する。一方、エンジン作動中は、クランクプーリ3が駆動軸として回転し、その回転が、クランクプーリ3からベルト1を介して補機プーリ7とモータプーリ5に伝達して、補機とモータジェネレータを駆動する。このとき、モータジェネレータはジェネレータ(発電機)として働く。
【0026】
ベルト1は、クランクプーリ3とモータプーリ5の間でテンションプーリ8と接触している。テンションプーリ8が接触する部分は、エンジン作動中は、クランクシャフト2が駆動軸として回転するので弛み側となり、エンジンを始動するときは、モータジェネレータの回転軸4が駆動軸として回転するので張り側となる。
【0027】
テンションプーリ8は、エンジンブロック(図示せず)に固定された支点軸9を中心として揺動可能に支持されたプーリアーム10に取り付けられている。プーリアーム10には、この発明の第1実施形態に係るオートテンショナ11の一端が連結軸12を介して連結され、オートテンショナ11の他端が、エンジンブロックに固定した支点軸13で支持されている。オートテンショナ11は、テンションプーリ8をベルト1に押さえ付ける方向にプーリアーム10を付勢している。
【0028】
図2に示すように、オートテンショナ11は、下部に底14を有するシリンダ15を有し、そのシリンダ15内に作動油が溜められている。また、シリンダ15内には、シリンダ15と同軸にスリーブ16が挿入され、そのスリーブ16の下部外周が、シリンダ15の底14に形成されたスリーブ嵌合凹部17に嵌め合わされている。スリーブ16内には、ロッド18が軸方向に摺動可能に挿入されており、そのロッド18とスリーブ16によって、シリンダ15内が圧力室19とリザーバ室20に区画されている。
【0029】
ロッド18の上端は、ばね座21に固定されている。ばね座21とシリンダ15の間の環状開口は、上下に伸縮可能な筒状のゴム製ベローズ22で覆われている。ベローズ22の上部内周には、周方向に延びる上部リップ23が形成されており、その上部リップ23が、ばね座21の外周の上部リップ溝24に締め代をもって嵌め合わされている。ベローズ22の下部内周にも、周方向に延びる下部リップ25が形成されており、その下部リップ25が、シリンダ15の外周の下部リップ溝26に締め代をもって嵌め合わされている。
【0030】
ばね座21とシリンダ15の底14との間には、リターンスプリング27が組み込まれている。リターンスプリング27は、その下端がシリンダ15の底14で支持され、上端がばね座21を押圧しており、その押圧によって、圧力室19の容積が拡大する方向にばね座21を付勢している。
【0031】
ロッド18は、スリーブ16の上部内周に取り付けられた止め輪28よりも下側で摺動する摺動軸部18Cと、その摺動軸部18Cの上方に連なってスリーブ16から突出する小径軸部18Bと、その小径軸部18Bの上方に連なる大径軸部18Aとからなる。ここで、小径軸部18Bは、止め輪28の内径よりも小径の部分であり、大径軸部18Aは、止め輪28の内径よりも大径の部分である。
【0032】
このロッド18は、大径軸部18Aの下端を止め輪28で係止することによって、圧力室19の容積が縮小する方向のロッド18の移動ストロークが規制され、また、摺動軸部18Cの上端を止め輪28で係止することによって、圧力室19の容積が拡大する方向のロッド18の移動ストロークが規制されている。
【0033】
スリーブ嵌合凹部17とスリーブ16の嵌合面間には、圧力室19の下部とリザーバ室20の下部を連通する第1通路29が形成されている。また、スリーブ16の下部には、圧力室19側からリザーバ室20側への第1通路29の作動油の流れを防止するチェックバルブ30が組み込まれている。
【0034】
圧力室19の上部とリザーバ室20の上部は、第2通路31を介して連通している。第2通路31は、スリーブ16とロッド18の摺動面間に形成された環状の絞り隙間32と、その絞り隙間32からロッド18の内部とばね座21の内部とを順に通ってリザーバ室20に連通する油通路33とからなる。
【0035】
ここで、摺動軸部18Cの外周にはOリング34が取り付けられ、このOリング34によって摺動軸部18Cとスリーブ16の摺動面間がシールされている。また、摺動軸部18Cの外周には、Oリング34よりも下側に油通路33の圧力室19側の端部が開口している。絞り隙間32は、第2通路31の作動油の流量を制限する絞りを構成している。
【0036】
ばね座21には、通電・非通電の切り換えによって第2通路31を開閉する電磁開閉弁35が組み込まれている。
【0037】
図3に示すように、ばね座21には、リザーバ室20と外気とを連通する通気孔36が形成されている。通気孔36は、ばね座21の内部で交差する2つの孔からなり、リザーバ室20側の端部がばね座21の下面に開口し、外気側の端部がばね座21の外周に開口している。
【0038】
通気孔36の外気側の端部には、手動で開閉を切り替えるエア抜き栓37が設けられている。エア抜き栓37は、通気孔36の外気側の端部内周に形成した雌ねじにねじ係合するビス38と、ビス38の頭部38aとばね座21の外周との間に挟み込まれた環状のガスケット39とからなる。ビス38の頭部38aは、通気孔36の外気側の端部内径よりも大径である。
【0039】
このエア抜き栓37は、ビス38を緩めると、ガスケット39の部分に隙間が生じるので、その隙間とビス38のねじ隙間とを介してリザーバ室20内の圧力を外気に開放することができる。また、ビス38を締め込むと、ガスケット39の部分の隙間を閉じて、リザーバ室20内を密封することができる。
【0040】
次に、オートテンショナ11の動作例を説明する。このオートテンショナ11は、エンジンを始動するときは、電磁開閉弁35に通電して第2通路31を閉じた状態で使用し、エンジン作動中は、電磁開閉弁35への通電を遮断し、第2通路31を開いた状態で使用する。
【0041】
エンジン作動中に、ベルト1の張力が小さくなると、そのベルト1の張力とリターンスプリング27の付勢力がつり合う位置までばね座21がシリンダ15に対して移動し、ベルト1の弛みを吸収する。このとき、圧力室19の容積が拡大するので、第1通路29を通ってリザーバ室20から圧力室19に作動油が流れ、ばね座21が速やかに移動する。
【0042】
エンジン作動中に、ベルト1の張力が大きくなると、そのベルト1の張力とリターンスプリング27の付勢力がつり合う位置までばね座21がシリンダ15に対して移動し、ベルト1の緊張を吸収する。このとき、圧力室19の容積が縮小するので、第2通路31を通って圧力室19側からリザーバ室20側に作動油が流れ、その作動油の流量が絞り隙間32によって制限されてダンパー作用が生じるので、ばね座21はゆっくりと移動する。
【0043】
エンジンを始動するときは、ベルト1のテンションプーリ8が接触する部分が張り側となるので、ベルト1の張力が急激に大きくなるが、電磁開閉弁35が第2通路31を閉じているので、圧力室19の容積が縮小する方向へのばね座21の移動が阻止される。そのため、テンションプーリ8の位置が固定され、ベルト1のスリップが発生しにくい。
【0044】
また、このオートテンショナ11は、エンジンのベルト1を交換するときに、圧力室19の容積が縮小する側のストロークエンド(すなわち、ロッド18の大径軸部18Aの下端が止め輪28で係止される位置)までロッド18が移動することがあるが、このときは、ベローズ22の過度の膨張を防止するため、ビス38を緩めてリザーバ室20内の圧力を外気に開放しておく。また、エンジン作動中は、リザーバ室20内の作動油の蒸発を防止するため、ビス38を締め込んでおく。
【0045】
このオートテンショナ11は、エンジンのベルト1を交換するときは、ビス38を緩めることによってリザーバ室20内の圧力を外気に開放し、ベローズ22の過度の膨張を防止することができる。また、このオートテンショナ11は、リザーバ室20内の圧力の大きさに関係なく、ビス38の操作によりエア抜き栓37を開閉するので、高い精度管理を必要としない。
【0046】
また、このオートテンショナ11は、通気孔36の外気側の端部がばね座21の外周に開口しているので、通気孔36の外気側の端部をばね座21の上面に開口させた場合よりも、外気中の異物が通気孔36に入りにくく、リザーバ室20内に浸入しにくい。
【0047】
次に、この発明の第2実施形態のオートテンショナを説明する。第1実施形態に対応する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
図4に示すように、通気孔36の外気側の端部には、手動で開閉を切り替えるエア抜き栓40が設けられている。エア抜き栓40は、通気孔36の外気側の端部に着脱可能に嵌め込まれた栓体41からなる。栓体41の外気側の端部には、通気孔36の外気側の端部内径よりも大径の頭部41aが設けられている。
【0049】
栓体41は、その通気孔36への挿入部分の外周に、周方向に延びる突条42が軸方向に間隔をおいて複数形成されている。栓体41を通気孔36に挿入する前の状態において、突条42の外径は通気孔36の外気側の端部内径よりも大径であり、栓体41を通気孔36に挿入した状態で、突条42は通気孔36の内周に締め代をもって嵌合している。栓体41の隣り合う突条42,42の間の部分の外径は、通気孔36の外気側の端部内径よりも小径である。このような栓体41は、ゴムで形成してもよく、樹脂で形成してもよい。
【0050】
このエア抜き栓40は、栓体41を通気孔36から取り外すことにより、リザーバ室20内の圧力を外気に開放することができる。また、栓体41を通気孔36に取り付けることにより、通気孔36の外気側の端部を閉じて、リザーバ室20内を密封することができる。
【0051】
このオートテンショナは、エンジンのベルト1を交換するときは、栓体41を取り外すことによってリザーバ室20内の圧力を外気に開放し、ベローズ22の過度の膨張を防止することができる。また、このオートテンショナは、リザーバ室20内の圧力の大きさに関係なく、栓体41の着脱操作によりエア抜き栓40を開閉するので、高い精度管理を必要としない。
【0052】
このオートテンショナは、栓体41を通気孔36に取り付けるときに、栓体41の頭部41aがばね座21の外周に当接してストッパとして機能するので、栓体41が通気孔36に没入して取り外せなくなるのを防止することができる。
【0053】
また、このオートテンショナは、栓体41の外周の突条42を通気孔36の内周に締め代をもって嵌合させているので、栓体41の通気孔36への挿入部分の外周を突条42のない円筒面とし、その円筒面を通気孔36の内周に締め代をもって嵌合させた場合よりも、小さい力で栓体41を着脱することができる。
【0054】
次に、この発明の第3実施形態のオートテンショナを説明する。第1実施形態に対応する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
図5に示すように、通気孔36の外気側の端部には、手動で開閉を切り替えるエア抜き栓50が設けられている。エア抜き栓50は、通気孔36の外気側の端部に嵌め込まれた筒体51と、その筒体51に収容されたボール52と、筒体51の外気側の端部に形成された内向きのフランジ53にボール52を押さえ付けるスプリング54とからなる。
【0056】
このエア抜き栓50は、外気側からボール52を押し込むと、ボール52とフランジ53の間に隙間が生じるので、その隙間を介してリザーバ室20内の圧力を外気に開放することができる。また、ボール52の押し込みを解除すると、スプリング54の力によってボール52とフランジ53の間の隙間が閉じるので、リザーバ室20内が密封される。
【0057】
このオートテンショナは、エンジンのベルト1を交換するときは、ボール52を押し込むことによってリザーバ室20内の圧力を外気に開放し、ベローズ22の過度の膨張を防止することができる。また、このオートテンショナは、リザーバ室20内の圧力の大きさに関係なく、ボール52の操作によりエア抜き栓50を開閉するので、高い精度管理を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明の実施形態のオートテンショナを組み込んだベルト伝動装置を示す正面図
【図2】図1に示すオートテンショナの拡大断面図
【図3】図2のエア抜き栓の近傍の拡大断面図
【図4】図3のエア抜き栓の変形例を示す拡大断面図
【図5】図3のエア抜き栓の他の変形例を示す拡大断面図
【符号の説明】
【0059】
11 オートテンショナ
14 底
15 シリンダ
16 スリーブ
17 スリーブ嵌合凹部
18 ロッド
19 圧力室
20 リザーバ室
21 ばね座
22 ベローズ
23 上部リップ
25 下部リップ
27 リターンスプリング
29 第1通路
30 チェックバルブ
31 第2通路
32 絞り隙間
33 油通路
35 電磁開閉弁
36 通気孔
37 エア抜き栓
38 ビス
38a ビスの頭部
39 ガスケット
40 エア抜き栓
41 栓体
41a 栓体の頭部
42 突条
50 エア抜き栓
51 筒体
52 ボール
53 フランジ
54 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に底(14)を有するシリンダ(15)内に作動油を溜め、そのシリンダ(15)の底(14)に形成したスリーブ嵌合凹部(17)にスリーブ(16)の下部外周を嵌め合わせ、そのスリーブ(16)内にロッド(18)を軸方向に摺動可能に挿入してシリンダ(15)内を圧力室(19)とリザーバ室(20)に区画し、前記ロッド(18)の上端にばね座(21)を固定し、そのばね座(21)を前記圧力室(19)の容積が拡大する方向に付勢するリターンスプリング(27)を設け、リザーバ室(20)側から圧力室(19)側への作動油の流れのみを許容するチェックバルブ(30)を設けた第1通路(29)を介して前記圧力室(19)と前記リザーバ室(20)を連通し、作動油の流量を制限する絞り(32)を設けた第2通路(31)を介して前記圧力室(19)と前記リザーバ室(20)を連通し、前記ばね座(21)とシリンダ(15)の間の環状開口を覆う上下に伸縮可能な筒状のゴム製ベローズ(22)を設け、そのベローズ(22)の上部(23)を前記ばね座(21)の外周に締め代をもって嵌め合わせ、前記ベローズ(22)の下部(25)を前記シリンダ(15)の外周に締め代をもって嵌め合わせたオートテンショナにおいて、
前記ばね座(21)に、前記リザーバ室(20)と外気とを連通する通気孔(36)を形成し、その通気孔(36)の外気側の端部に手動で開閉を切り替えるエア抜き栓(37)を設けたことを特徴とするオートテンショナ。
【請求項2】
前記エア抜き栓(37)が、前記通気孔(36)の外気側の端部内周に形成した雌ねじにねじ係合するビス(38)と、そのビス(38)の頭部(38a)と前記ばね座(21)の間に挟み込まれたガスケット(39)とからなる請求項1に記載のオートテンショナ。
【請求項3】
前記エア抜き栓(40)が、前記通気孔(36)の外気側の端部に着脱可能に嵌め込まれた栓体(41)である請求項1に記載のオートテンショナ。
【請求項4】
前記栓体(41)に前記通気孔(36)の外気側の端部内径よりも大径の頭部(41a)を設けた請求項3に記載のオートテンショナ。
【請求項5】
前記栓体(41)の通気孔(36)への挿入部分の外周に、周方向に延びる突条(42)を軸方向に間隔をおいて複数形成し、その突条(42)を前記通気孔(36)の内周に締め代をもって嵌合させた請求項3または4に記載のオートテンショナ。
【請求項6】
前記栓体(41)がゴム製である請求項3から5のいずれかに記載のオートテンショナ。
【請求項7】
前記栓体(41)が樹脂製である請求項3から5のいずれかに記載のオートテンショナ。
【請求項8】
前記エア抜き栓(50)が、前記通気孔(36)の外気側の端部に嵌め込まれた筒体(51)と、その筒体(51)に収容されたボール(52)と、前記筒体(51)の外気側の端部に形成された内向きのフランジ(53)に前記ボール(52)を押さえ付けるスプリング(54)とからなる請求項1に記載のオートテンショナ。
【請求項9】
前記通気孔(36)の外気側の端部を前記ばね座(21)の外周に開口させた請求項1から8のいずれかに記載のオートテンショナ。
【請求項10】
前記第2通路(31)を、前記ロッド(18)とスリーブ(16)の摺動面間に形成される環状の絞り隙間(32)と、その絞り隙間(32)からロッド(18)の内部とばね座(21)の内部とを順に通ってリザーバ室(20)に連通する油通路(33)とで構成し、その第2通路(31)の電磁開閉弁(35)を前記ばね座(21)に組み込んだ請求項1から9のいずれかに記載のオートテンショナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate