説明

オーバーロード制御バルブを有する発電プラントシステム

本発明は、発電プラントシステム(1)および発電プラントシステム(1)を運転するための方法に関し、オーバーロード制御バルブ(12)がオーバーロードライン(10)中に配置されており、かつ、圧力レギュレータによって作動させることが可能であり、オーバーロード制御バルブ(12)は切換制御バルブ(9)が開く前に開き、当該バルブは、目標値が超過されると直ちに、高圧蒸気導入口(6)と高圧蒸気排出口(8)との間にバイパスを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生器および請求項1のプレアンブルに記載の蒸気タービンを備えた発電プラントシステムに、そしてまた、請求項5のプレアンブルに記載の発電プラントシステムを運転するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントシステムは、通常、蒸気発生器および蒸気タービンを備えるが、これは、蒸気の内部エネルギーを機械的回転エネルギーへと変換するように設計されている。そうした蒸気タービンによって駆動される発電機は、たいてい、欧州市場に関しては50Hzにて、そして米国市場に関しては60Hzにて運転される。最新の蒸気タービンは、350バールまでの圧力および700℃までの温度を有するであろう蒸気の流入にさらされる。蒸気タービンにおいて必要とされる、この蒸気は蒸気発生器において生成されるが、これは、蒸気発生器の素材およびコンポーネントに関する課題を提起する。特に重要なコンポーネントは、負荷制御ユニット、圧力制御ユニットおよび回転速度制御ユニットである。必要とされる長い時間にわたって必要とされる50Hzあるいは60Hzで定常的に稼働可能であるために、制御ユニットには高い要求が課される。発電プラントシステムは、通常、長い時間にわたって全システムが常時ストレスを受ける状況に至るベース負荷運転が義務付けられる。連続的な運転の間、蒸気タービンシャフトの周波数、そしてまた、蒸気タービンに供給される蒸気の量は本質的に一定である。だが、電気的消費ネットワークの負荷が突然変化した場合、発電機に加えられるトルク伝達が変化し、その結果、蒸気タービンの出力が急激に変化するという状況が生じる可能性があり、これは制御ユニットによって抑止される必要がある。蒸気タービンの出力への急激な変化はまた、起こり得る機能不全の結果としても生じる。
【0003】
概して、発電プラントシステムは、一定圧力モード、可変圧力モードあるいはオンロードモードで運転される。消費ネットワークの負荷が突然減少した特別な場合、蒸気タービンは発電機に低いレベルのトルクを伝える必要がある。これは、蒸気タービンへの供給のために配置されたバルブを閉塞することによって、あるいは蒸気タービンが少ない量の蒸気を低圧で供給することによって実現できる。
【0004】
現在の発電プラントシステムにおいては、圧力制御ユニットは、高圧蒸気システムにおける生蒸気圧力が、蒸気タービンの始動の間、固定圧力値に達するように設計されている。概して、バイパスラインが、蒸気タービンの高圧蒸気導入口が蒸気タービンの高圧蒸気出口に流体的に接続されるように配置される。
【0005】
公称出力からステーションサービスあるいは無負荷への負荷遮断はマルファンクションと呼ばれる。この場合、生蒸気制御バルブおよび再熱制御バルブの両方が急速な移動レートで閉じる。蒸気発生器は、しかしながら、それほど素早く出力を低下させることができないので、余剰蒸気は蒸気タービンを通り越して案内される必要がある。このために、バイパス制御バルブ(これはバイパスライン中に配置される)が開き、この結果、余剰蒸気は蒸気タービンを通り越して案内される。全負荷での圧力が基準値を上回って上昇する場合、オーバーロード制御バルブが、バイパス制御バルブが開く前に開く。だが、蒸気タービン周りに案内される余剰蒸気は、もはや膨張によって仕事を行うために使用されず、この結果、発電プラントシステムの効率は全体として低下する。バイパス制御バルブは、バイパスラインの圧力基準値が可変圧力ライン上で制御されるように作動させられる。選択されたマージンに対する、そしてそれを上回る圧力増大によって、バイパス制御バルブが開き、そして圧力の上限を設定するが、これは出力の損失につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が役割を果たすのは、この点においてであり、本発明の目的は、出力損失がさらに低減されるように発電プラントシステムをさらに改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明によれば、蒸気発生器と蒸気タービンのオーバーロード制御バルブとの間の流体接続を形成するオーバーロードラインを提供することが、そしてオーバーロードライン中に配置されかつ圧力コントローラーを介して作動させられるオーバーロード制御バルブを提供することが提案される。
【0008】
本発明の利点は、特に、これからは、圧力制御によってかつ全負荷において、余剰蒸気が、もはやバイパスラインを介して蒸気タービンを通り越して案内される必要はなく、オーバーロードステージへとはいえ、オーバーロードラインを介して蒸気タービンへと供給される、ということである。オーバーロードステージの下流で、この導入された蒸気は、膨張して仕事を行い、回転エネルギーへと変換される。これは、全負荷における圧力が基準値を上回って上昇する場合にバイパスラインにおけるバイパス制御バルブが開く前に、オーバーロード制御バルブが開くことによって達成される。したがって、オーバーロードラインは、ある種のバイパスステーションとして機能し、この結果、蒸気は、それが利用されることなく蒸気タービンを通り越して案内される代わりに、蒸気タービン内に案内される。
【0009】
有利な展開は従属請求項に開示されている。有利な展開において、蒸気タービンは、オーバーロードステージ(これはオーバーロードラインに流体的に接続される)が、流入蒸気が転換されて仕事を行うように設計されるよう構成される。したがって、蒸気の熱エネルギーの最適利用は、結果として発電プラントシステムの効率を増大させるために役立てられる。
【0010】
方法に向けられた目的は請求項5に基づいて達成される。本発明に基づく方法の重要な特徴は、圧力コントローラー(これはオーバーロード制御バルブを作動させる)が、基準値を設定可能であり、かつ、この基準値が超過された場合に、オーバーロード制御バルブが既に開放されているときにのみバイパス制御バルブが開くように設計されることである。
【0011】
オーバーロード制御バルブは、有利なことには、部分負荷において、かつ/または全負荷において開く。
【0012】
本発明に基づく発電プラントシステムあるいは発電プラントシステムを運転するための本発明に基づく方法によって、発電プラントを、完全によりフレキシブルな様式で運転することができ、これは、負荷制御モードおよび初期圧力モードの両方において、オーバーロード制御バルブは、いかなる出力と共にでも作動させることができるからである。さらなる利点は、始動損失および出力損失がより少ないことである。というのは、オーバーロード制御バルブは、利用されることなくコンデンサーへと蒸気タービンを通り越してそれを案内する代わりに、蒸気を蒸気タービンへと案内するからである。
【0013】
本発明について、図示する代表的実施形態に基づいて、さらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】発電プラントシステムの概略レイアウトを示す図である。
【図2】グラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に記載の発電プラントシステム1は蒸気タービン2を備えるが、これは、高圧タービンセクション2aと、中圧タービンセクション2bと、低圧タービンセクション2cとを備える。蒸気発生器3によって、生蒸気は、生蒸気ライン4を通り、生蒸気制御バルブ5を通り、高圧タービンセクション2aの高圧蒸気導入口6へと流動する。生蒸気ライン4に加えて、発電プラントシステム1はバイパスライン7を備えるが、これは、生蒸気ライン4を高圧タービンセクション2aの高圧蒸気排出口8に流体的に接続する。バイパス制御バルブ9はバイパスライン7中に配置される。
【0016】
さらに、発電プラントシステム1はオーバーロードライン10を備えるが、これは、蒸気発生器3を、高圧タービンセクション2aのオーバーロードステージ11に流体的に接続する。オーバーロード制御バルブ12は、オーバーロードライン10中に配置される。
【0017】
概して、オーバーロード制御バルブ12およびバイパス制御バルブ9は閉じられ、生蒸気制御バルブ5が開かれ、そして圧力コントローラーあるいは負荷コントローラー(これは詳しくは示していない)によって作動させられる。
【0018】
高圧タービンセクション2aから出てくる蒸気は低温再熱蒸気と呼ばれ、再熱器13内で再度加熱される。再熱器13から出てくる蒸気は高温再熱蒸気と呼ばれる。この高温再熱蒸気14は中圧制御バルブ15を経て中圧タービンセクション2bへと流れ、そしてそこで転換され、膨張して、仕事を行う。中圧タービンセクション2bから出てくる蒸気は、中圧放出ライン16を介して、低圧タービンセクション2cの低圧力蒸気導入口17に流体的に送り込まれる。低圧タービンセクション2cから出てくる蒸気は、低圧放出ライン18を介してコンデンサー19へと導かれ、そこ水に変わり、そして、最終的に、給水ポンプ20によって蒸気発生器3へと導かれ、この結果、水・蒸気サイクルが完成する。熱エネルギーから回転エネルギーへと転換される蒸気はシャフト21を駆動し、これが、今度は、最終的に電気エネルギーを供給する発電機22を駆動する。
【0019】
生蒸気制御バルブ5、オーバーロード制御バルブ12およびバイパス制御バルブ9もまた、各場合に、独立した別個の圧力コントローラー上に配置されている。オーバーロード制御バルブの任を負う圧力コントローラーは、この例では、基準圧力を設定できるように、かつ、この基準圧力が超過された場合にバイパスバルブ9が開く前にオーバーロード制御バルブ12が開くように設計される。この例のオーバーロード制御バルブ12は、全負荷においては、通常、開放状態である。
【0020】
オーバーロードステージ11を経て流れ込む蒸気は、利用されることなくバイパスライン7を経て高圧タービンセクション2aを通り越して案内される代わりに、転換されて仕事を行う。そのようにすることで、結果として、発電プラントシステムの効率がさらに改善される。
【0021】
制御のために、オーバーロード制御バルブ12のための新規な圧力特性ラインが、高圧タービンセクション2aの可変圧力特性ラインと、高圧バイパス特性ラインとの間に配置される。生蒸気圧力が、この新規な圧力特性ラインを上回って上昇する場合、オーバーロード制御バルブ12が開くが、バイパス制御バルブ9は開かない。オーバーロード制御バルブ12は、この場合、新規な圧力特性ラインによって予め決定される圧力を制御する。この結果、生蒸気は、オーバーロード制御バルブ12を介して、高圧タービンセクション2aにおいて利用され、利用されることなくコンデンサー19へと蒸気タービン2を通り越して案内されることはない。
【0022】
蒸気発生器によって生み出された生蒸気を蒸気発生器によって完全に利用できないという二つの運転状況が存在する。一方では、これは、静止状態から公称出力あるいは公称回転速度へと発電プラントを稼働させるときに、他方では、公称運転の間に部分的あるいは完全な負荷分断が生じたときに起こる。この場合、タービン発電機の設定は、可能な限り素早く新しい要求へと調整されるが、蒸気発生器は、遅れを伴ってしか追従できない。この間、蒸気圧力コントローラーが再び全蒸気発生プロセスを制御下に置くまで、蒸気はボイラーによって生成され続ける。吸収できない蒸気体積は大気中へと放出でき、あるいは急速応答バイパスステーションによって蒸気タービンから蒸気を切り離し、そしてそれがコンデンサー内へと流入することを可能とすることもできる。したがって、閉じた蒸気制御回路(そこからは、もはや蒸気が失われない)が維持される。
【0023】
図2は、蒸気質量流の関数として圧力曲線を示している。生蒸気圧力26はY軸上にプロットされ、そして蒸気発生器質量流25はX軸上にプロットされている。可変圧力特性ラインは、慣例的作動曲線を示している。タービンバルブが完全に開放状態である場合、基準圧力にある蒸気質量流体積はタービンによって全て吸収される。バイパスステーションの基準値特性ライン28は、可変圧力特性ライン27の上で圧力差Δpを伴って延びる。これは、バイパスステーションが過度に早期に開放されないという結果をもたらす。作動圧力が圧力差だけ増大させられるまでバイパスバルブは開放されない。
【0024】
本発明によれば、オーバーロードバルブ制御のための付加的な特性ライン29が、可変圧力特性ライン27と基準値特性ライン28との間にプロットされる。この付加的な特性ライン29は、可変圧力特性ライン27の上方で、かつ、基準値特性ライン28の下方に存在する。運転中に生蒸気圧力26が可変圧力特性ライン27のそれを上回って上昇する場合、オーバーロード制御バルブ12がまず開き、その後でのみバイパス制御バルブ9が開く。
【符号の説明】
【0025】
1 発電プラントシステム
2 蒸気タービン
2a 高圧タービンセクション
2b 中圧タービンセクション
2c 低圧タービンセクション
3 蒸気発生器
4 生蒸気ライン
5 生蒸気制御バルブ
6 高圧蒸気導入口
7 バイパスライン
8 高圧蒸気排出口
9 バイパス制御バルブ
10 オーバーロードライン
11 オーバーロードステージ
12 オーバーロード制御バルブ
13 再熱器
14 高温再熱蒸気
15 中圧制御バルブ
16 中圧放出ライン
17 低圧力蒸気導入口
18 低圧放出ライン
19 コンデンサー
20 給水ポンプ
21 シャフト
22 発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電プラントシステム(1)であって、
蒸気タービン(2)の蒸気発生器(3)と、
前記蒸気タービン(2)内へと生蒸気を供給するための生蒸気ライン(4)と、
前記蒸気発生器(3)と前記蒸気タービン(2)のオーバーロードステージ(11)との間の流体接続を形成するオーバーロードライン(10)と、を備え、
オーバーロード制御バルブ(12)が、前記オーバーロードライン(10)中に配置されており、
前記オーバーロード制御バルブ(12)を作動させるよう構成された圧力コントローラーを具備してなることを特徴とする発電プラントシステム(1)。
【請求項2】
高圧蒸気導入口(6)を前記蒸気タービン(2)の高圧蒸気排出口(8)に流体的に接続するバイパスライン(7)を備え、
前記バイパスライン(7)はバイパス制御バルブ(9)を備え、かつ、前記圧力コントローラーは、基準圧力を設定できるように、かつ、この基準圧力が超過された場合に前記オーバーロード制御バルブ(12)が既に開いているときにのみ前記バイパスバルブ(9)が開くよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発電プラントシステム(1)。
【請求項3】
前記蒸気タービン(2)は、高圧タービンセクション(2a)を備え、かつ、前記オーバーロードライン(10)は、前記高圧タービンセクション(2a)の前記供給ステージ(11)に流体的に接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発電プラントシステム(1)。
【請求項4】
前記供給ステージ(11)は、前記蒸気タービン(2)が、前記オーバーロードライン(10)を経て流れ込む蒸気を転換し、仕事を行うように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発電プラントシステム(1)。
【請求項5】
発電プラントシステム(1)を運転するための方法であって、
前記発電プラントシステム(1)は、蒸気タービン(2)と、生蒸気を前記蒸気タービン(2)へと、そしてライン(10)へと供給するための生蒸気ライン(4)と、を備え、前記オーバーロードライン(10)によって、蒸気発生器(3)と前記蒸気タービン(2)のオーバーロードステージ(11)との間の流体接続が形成され、
オーバーロード制御バルブ(12)が前記オーバーロードライン(10)中に配置され、
圧力コントローラーは前記オーバーロード制御バルブ(12)上に配置され、かつ、前記オーバーロード制御バルブ(12)を作動させるよう設計されていることを特徴とする発電プラントシステム(1)を運転するための方法。
【請求項6】
高圧蒸気導入口(6)を前記高圧蒸気排出口(8)に流体的に接続するバイパスライン(7)が設けられ、
バイパス制御バルブ(9)が設けられ、かつ、前記圧力コントローラーは、基準圧力を設定できるように、かつ、この基準圧力が超過された場合に前記オーバーロード制御バルブ(12)が既に開いているときにのみ前記バイパスバルブ(9)が開くよう構成されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記オーバーロード制御バルブ(12)は、部分負荷および/または全負荷で開くことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記オーバーロードライン(10)を経て前記蒸気タービン(2)内へと流れ込む蒸気は膨張させられ、仕事を行うことを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−502538(P2013−502538A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526087(P2012−526087)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063846
【国際公開番号】WO2011/036136
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(508008865)シーメンス アクティエンゲゼルシャフト (99)
【Fターム(参考)】