説明

カイト状要素を有するウォータークラフト

本発明は、大索(牽引ケーブル)(3)によって接続されるカイト状要素を備えるウォータークラフトに関する。前記ウォータークラフトは、カイト状要素に調整装置とエネルギ発生ユニット(1)とが設けられ、牽引ケーブル(3)に及ぼされる牽引力が変えられるときにエネルギ発生ユニット(1)がエネルギを供給することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大索(牽引ケーブル)によって接続されたカイト状要素を有するウォータークラフトに関する。
【背景技術】
【0002】
1つの既知であるウォータークラフト(国際公開第01/192102号パンフレット)においては、カイト状要素を複数の大索によってウォータークラフトに接続することができる。この場合、カイト状要素は、風によって船舶を推進させるために使用され、その場合、この推進システムは専ら風によってのみ動作することができ、或いは、当該推進システムは、機械的推進システムを支援することにより燃料を節約して速度を高めるためだけに風を使用する。カイト状要素は複数の大索によって制御することができる。しかしながら、複数の大索は、カイト状要素を回収し或いは展開するために個別に引っ張って或いは繰り出さなければならないという欠点を有している。また、複数の大索は絡まってしまう可能性もある。したがって、引用された文献は、最初に述べたタイプのカイト状要素を有するウォータークラフトであって、1つの大索だけを設けることにより前述した問題を回避するウォータークラフトも開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これは、カイト状要素をもはや直接に制御することができないという欠点を有している。
【0004】
本発明の目的は、最初に言及したタイプのカイト状要素を有するウォータークラフトであって、カイト状要素を意図的に制御できるウォータークラフトを形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る解決策は、カイト状要素に調整装置及び出力発生装置を設け、大索に及ぼされる張力が変化するときに出力発生装置が出力を発することを含んでいる。
【0006】
したがって、調整装置が設けられ、それにより、カイト状要素の帆の形状、入射角度、弁開度、縮帆プロセス等を変更することができ或いは与えることができる。この場合、カイト状要素に設けられたセンサにより制御プロセスを自動的に実行することができ、或いはまた、これは船舶からの無線により特に有利である。この場合、信号をカイト状要素へ送るのに問題はない。しかしながら、調整装置のために電源が必要とされる。
【0007】
本発明によれば、大索に及ぼされる張力が変化するときに出力を発する出力発生装置により対応する出力が得られる。したがって、張力が一定のときには出力を得ることができない。大索の張力と伸長移動との結果から出力を得るために、カイト状要素を船舶から更に遠くへと離間して移動できるようにする必要がある。無論、このような解決策は実行不可能である。ここで、本発明においては、大索に及ぼされる張力の変化により出力を得られることが分かった。表現「出力を得る」又は「出力を発生する」が本明細書で使用される場合には、無論、これが無からエネルギを形成するという事柄ではなく、実際には、行なわれる全てがエネルギ変換である。本発明においては、風速が変化する結果として、波の動きによる船舶の動きの結果として、或いは、カイト状要素の経路において意図的に実行される動きの結果として、張力が変化し、これから、そのような広範囲にわたってカイト状要素を制御するための出力を得ることができることが分かった。
【0008】
出力発生装置は、カイト状要素の制御ポッドと大索との間に配置される。大索に作用する荷重(負荷)が低い場合、出力発生装置は比較的に荷重が取り去られた状態にある。荷重が大きくなると、出力発生装置は更に大きな張力に晒される。この張力は出力を発生するために使用できる。
【0009】
測定によれば、必要な操舵出力の最大で200%を張力の変化から得られることが分かった。
【0010】
1つの有利な実施形態においては、出力発生装置がばね荷重ピストンを備えるピストン/シリンダユニットを有しており、シリンダが大索に接続されるとともに、ピストンがカイト状要素に接続され、或いは、シリンダがカイト状要素に接続されるとともに、ピストンが大索に接続され、シリンダが逆止弁を介して加圧リザーバに接続される。張力が増大すると、ピストンは、ばね力に抗して移動されるとともに、シリンダ内に位置する流体を圧縮し、その後、この流体を逆止弁を介して加圧流体リザーバへ送り込むことができる。張力が減少すると、ピストンは、反対方向に移動されるとともに、外部から再び流体を吸い込み、また、これは同様に逆止弁によって制御できる。張力が再び増大すると、流体が再び加圧流体リザーバへ押し出される。
【0011】
1つの有利な実施形態においては、ピストンがピストン/シリンダユニットの中央に配置される。その結果、シリンダ容積は、ピストンの両側に位置されるとともに、それぞれが逆止弁を介して加圧流体リザーバに接続される。張力が上昇すると、加圧流体が一方のシリンダ容積を介して加圧流体リザーバへ送られ、一方、他方のシリンダ容積内に加圧流体が吸い込まれる。張力が減少し且つ1又は複数のばねによりピストンが反対方向に移動されると、他方のシリンダ容積内の加圧流体が圧縮されて加圧流体リザーバ内に送られ、一方、第1のシリンダ容積内に加圧流体が吸い込まれる。
【0012】
このプロセス中、ピストンは加圧流体リザーバの圧力に抗して動作する。加圧流体リザーバ内の圧力が高いと、すなわち、多量のエネルギが蓄えられていると、出力発生装置は、張力が非常に高いときだけ流体を供給し続ける。エネルギが殆ど存在していない場合、すなわち、加圧流体リザーバ内の圧力が低い場合、ピストンは、張力が比較的低いときであっても新たな加圧流体を供給することができる。この場合、張力が非常に高いときに過度に高い高圧を避けるため、装置に安全弁を設けなければならないことは言うまでもない。
【0013】
ピストン/シリンダユニットの代わりに、気密エンベロープを有する袋状構造を成す出力発生装置を設けることができ、前記構造は、一端が大索に接続され且つ他端がカイト状要素に接続されて、弾性拡張要素により広げられるとともに、張力が生じるときに互いに離間するように引かれて容積を減少させ、逆止弁を介して加圧リザーバに接続される。張力がごく小さい場合には、袋状構造は、弾性拡張要素によって拡張され、したがって大きな容積を占める。その後に張力が増大すると、袋状構造の容積が減少されて、当該構造内の圧力が増大され、その結果、圧力増大が十分に大きい場合には空気が加圧流体リザーバへ送られる。この実施形態では空気が適した加圧流体であることは言うまでもない。また、ピストン/シリンダユニットを有する前述したエネルギ発生装置においては液圧流体を使用することができるが、この場合も、重量を理由に、また、漏れが生じる可能性により、加圧流体として空気を使用することが好ましい。
【0014】
一例として、袋状構造はメッシュ状の大索の周囲に編み込むことができる。荷重が大きくなると、大索が引っ張られ、メッシュ状の弾性エンベロープを取り囲む引張荷重ファイバが、互いの方へと移動しようとし(互いに平行に位置しようとする)、そのため、拡張されて空気で満たされた弾性エンベロープを圧縮する。その結果、エンベロープ内に位置され且つ逆止弁を介して流入された空気は、圧縮されるとともに、ピストン/シリンダユニットの場合における態様と同様の態様で加圧流体リザーバへと送ることができる。
【0015】
加圧流体は制御目的で直接に使用することができる。しかしながら、加圧流体リザーバを、電力を発生するための発生器に対して接続することもでき、その場合には、加圧流体によってではなく電力によって制御プロセスが実行される。実際の制御プロセスが加圧流体によって実行される場合であっても、電力を発生するために小型発生器を使用することができ、それにより、弁を動作させたり、センサに電気を供給することができる。
【0016】
ばね荷重可動部を備えるリニア発生器を有する出力発生装置が設けられる場合には、電力を直接に発生させることができる。この場合、ステータが大索に接続されるとともに、可動部がカイト状要素に接続され、或いは、ステータがカイト状要素に接続されるとともに、可動部が大索に接続される。張力が増大すると、可動部がばね力に抗して移動されて電気を発生する。張力が減少すると、ばねが可動部を後退させ、したがって同様に電気が発生される。
【0017】
他の物理的に類似する有利な実施形態において、出力発生装置は、コンポーネント内で移動でき且つコンポーネント上に取り付けられたピニオンを介して発生器を駆動するように設けられたばね荷重歯付きロッドを有しており、コンポーネントが大索に接続されるとともに、歯付きロッドがカイト状要素に接続され、或いは、コンポーネントがカイト状要素に接続されるとともに、歯付きロッドが大索に接続される。動作方法は前述したリニア発生器のそれと類似しており、そのため、これについては更に詳しく説明する必要はない。
【0018】
更なる有利な実施形態においては、出力発生装置が圧電素子である。圧電素子は、一方側が大索に接続されるとともに、他方側がカイト状要素に接続される。圧電素子の作用する機械的な応力が変化すると、電力が発生される。
【0019】
1つの有利な実施形態においては、複数の出力発生装置が設けられて並列に又は直列に配置される。装置を並列に配置すると、個々の出力発生装置の寸法を大きくしなくても、より多くの圧縮空気、加圧流体又はエネルギ量が得られる。出力発生装置が直列に配置される場合には、張力が個々の出力発生装置にわたって分配される。風の強さが弱い場合、すなわち、張力が小さい場合には、出力発生装置のうちの1つをブロックすることができ、それにより、全張力が1つの出力発生装置に作用して、制御のために十分に高い圧力が得られる。逆に、張力が減少すると、2つの(又は、それ以上の)出力発生装置が直列に使用され、それにより、個々の出力発生装置にわたって張力が分配され、その結果、生じる力及び圧力はさほど高くならない。
【0020】
1つのばね要素の代わりに複数のばね要素を設けることができる。一例として、中間の張力が生じるときにピストン、リニアモータ、又は、歯付きロッドを中央位置に配置しようとする場合には、2つのばね要素が設けられる。張力が大きくなればなるほど、ばね要素が圧縮され或いは伸長される程度も大きくなり、それにより、張力が低いとき及び張力が高いときの両方において1つのばね要素を使用することができる。また、しかしながら、ばね力を変えることにより、様々な張力及び風強度を最適化することができる。
【0021】
ばね定数を連続的に変えられる機械的なばね、特に金属ばねを使用することができる。しかしながら、1つの有利な実施形態において、ばねは圧縮空気ばねである。ばね特性は、ばねピストンの圧力によってそれぞれの風状態に適合させることができる。カイト状要素の動作基点は風速に応じてかなり変動してもよい。同じ構成を用いて異なる風速で出力を生成できるようにするためには、可変ばねが有益である。
【0022】
また、ばね力の使用に代えて或いはばね力の使用に加えて、戻り駆動のために加圧流体リザーバ内に位置される加圧流体の一部を使用することによりピストンを後退させることができ或いは空気袋を拡張させることができる。この構成を使用して出力を発生できるようにするためには、無論、張力が比較的弱いときに戻り駆動が行なわれなければならない。
【0023】
液圧流体、特に圧油が加圧流体として使用されることが有益である。これは、物理的に小さい構造及び軽い重量で高い作動力が得られるという利点を有している(高圧及び急速な制御能力により、また、液圧流体の非圧縮性のため、到達した制御状態を維持することが目的である場合に出力消費が無いため)。弁が閉じられていると、この制御状態は特に有利な態様で維持される。更なる利点は、良好で且つ幅広く使用される業界基準、及び、個々の部品の世界的な利用可能性である。
【0024】
液圧流体が流体として使用される場合には、液圧エネルギを直接に蓄えることが有益である。この目的のため、液圧流体に加えて圧縮ガスも含む従来の工業的蓄積手段を使用することができる。出力発生装置はこのリザーバ内にエネルギを蓄えることができ、それにより圧力が増大される。液圧流体がリザーバから引き出されると、圧力が減少し、対応するエネルギを使用できる。カイト状要素は重力の方向及び遠心力の方向及び大きさの経時的な急速な変化に晒される動的なシステムであるため、一端が錘によって重み付けられた可撓性ホースを通じて液圧流体が得られることが有益である。液圧流体は圧縮ガスよりも重いため、重み付けられたホースの一端は常に液圧流体供給源内に位置される。この目的は、任意の操縦状態又は飛行状態で液圧流体を得られるようにすることである。1つの代替の実施形態においては、圧縮ガスを膜によって液圧流体から分離することができる。液圧流体をリザーバから得るためにホースがリザーバの液体領域内に位置されると、任意の操縦状態及び飛行状態で液圧流体を確実に取得して制御のために利用できる。
【0025】
張力が一定である場合には出力を得ることができない。しかしながら、このような状況は稀にしか起こらない。しかしながら、風が非常に均一で且つ波の動きが殆ど無いときの張力の変動は、カイト状要素を制御するための十分な出力を得るには不十分な場合がある。この場合、ウォータークラフト上にウインチを設けることができ、このウインチは、大索を巻き上げ或いは繰り出して大索の張力を変化させるために使用できる。したがって、ウインチは、大索を介してその後に出力発生装置へと伝えられる出力を加えるために使用される。
【0026】
1つの有利な実施形態においては、変化する張力及びしたがって振動エネルギを船舶からポッドへと伝えるためにウインチを使用すると、高い質量慣性及び高い保持力が必要になるという欠点を伴うことから、そのようなウインチを使用するのではなく、大索に作用してパルスによりエネルギを伝える別個の液圧スタンプが設けられる。他の実施形態においては、或いは、これに加えて、キャリッジ上に配置されるウインチを設けることができ、キャリッジ上でウインチを前後に移動させることができるが、これは液圧スタンプを用いて行なうこともできる。これにより、出力を伝えることができるだけでなく、大索が船舶に対して作用する作用点を移動させることもできる。
【0027】
本発明に係る出力発生装置によって電力が発生された場合には、カイト状要素内に配置される再充電可能なバッテリに電力を蓄える能力を有することが好ましい。カイト状要素内で発生される電力の蓄積は不可欠である。これは、例えばカイト状要素が隠されるときにエネルギ収量が低い期間を埋めることができるからである。蓄積は、出力発生ユニットが機能しなくなり且つカイトを安全に回収することが目的であるような状況においても重要である。エネルギ蓄積部は、この目的のために必要な蓄積エネルギを与えることができる。
【0028】
出力発生及び蓄積のための前述した能力に代えて或いは当該能力に加えて、エネルギを蓄積するように構成されたばねを有する出力発生装置を設けることができる。ばねの形態を成すこのようなエネルギ蓄積部は、その力或いはそのトルクをほぼ即座に解放できるという利点を有している。また、力又はトルクは、蓄えられたエネルギが使い果たされるまで利用することができる。また、ばねの形態を成すエネルギ蓄積部は、比較的軽量であるという利点も有している。これにより、液圧機構が非常に重くなるという欠点を回避でき、また、僅かな重量でありつつ同じ力又はトルクを与えることにより同じ量のエネルギを生成することができる。
【0029】
1つの有利な実施形態において、ばねは、圧縮又は伸長によってエネルギを蓄えるヘリカルばねである。
【0030】
他の有利な実施形態においては、ばねがスパイラルばねであり、その一端部が略円筒状のハウジング壁と相互作用し、その他端がハウジングの中心シャフトに接続される。
【0031】
添付図面を参照しながら、有利な実施形態を使用する以下の文章において本発明を一例として説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1は、ピストン/シリンダユニット1の形態を成す出力発生装置を示している。この場合、シリンダ2は大索3に接続され、一方、ピストン4はケーブル15を介してカイト状要素又はその制御ロッドに対して接続されている。ピストン4は圧縮ばね5によって左側へ付勢されている。シリンダ2は、第1の逆止弁6により大気に接続されるとともに、第2の逆止弁7を介して圧縮ガスリザーバ8に接続されている。ピストン4が図示の位置にあるときに張力が増大すると、ピストン4は、ばね力5に抗して右側へ引っ張られるとともに、シリンダ2内に位置するガスを逆止弁7を介して加圧リザーバ8内へ押し出す。圧力が減少すると、圧縮ばね5によりピストン4が元の左側へ再び移動されて、シリンダ内の圧力が減少し、また、更に十分に左側へ偏位されると、逆止弁6を通じて新たな空気が吸い込まれる。その後、圧縮空気8は、ライン9を通って制御要素へ送られ或いは電力を発生するために発生器へ送られる。
【0033】
図2に示される実施形態において、ピストン/シリンダユニット1は2つの圧縮ばね5を有している。図2に示されるように、圧力による力が中間レベルになると、この場合にはピストン4がシリンダ2の中央に位置される。この場合、空気を吸い込むためにピストン4の両側に逆止弁6が設けられ、また、加圧リザーバ8内へ空気を押し出すために逆止弁7が設けられる。圧力による力が増大すると、図2の左側に示されるシリンダ容積内に空気が吸い込まれ、右側に示される容積内で空気が圧縮され、この空気は加圧リザーバへ送られる。張力が減少すると、右側のシリンダ容積内に空気が吸い込まれ、左側のシリンダ容積内で空気が圧縮され、この空気が加圧リザーバ8へ送られる。
【0034】
図3に示される実施形態では、圧縮ばね5により歯付きロッド11が荷重され、この歯付きロッド11は、スライドできるようにハウジング10内に取り付けられるとともに、ピニオン12を介して図示しない発電機を駆動する。張力が上昇すると、歯付きロッド11が右側へ移動されてピニオン12が回転され、それにより電気が発生される。張力が減少すると、ばね力5が歯付きロッド11を反対方向へ移動させ、それによりピニオン12が回転して、同様に電気が発生する。
【0035】
図4、5、6はエネルギ蓄積のためのばねの使用を示している。蓄積エネルギは、前述した出力発生装置の実施形態に代わる手段として或いは当該実施形態に加えて使用することができる。
【0036】
基本的には、ばねの形態のエネルギ蓄積部として板ばね、ヘリカルばね、又は、スパイラルばねを使用できる。曲げによってエネルギを吸収して解放する板ばねは1つの選択肢であるが、本明細書ではこれ以上詳しく説明しない。図4は、圧縮によってエネルギを吸収して解放するヘリカルばねの使用を示している。しかしながら、エネルギは、ばねの伸長によって蓄積することもできる。エネルギを蓄積するために使用されるヘリカルばね16は、カイト状要素のポッドに接続され或いはこのポッドの一部であるハウジング17内に配置され、これによりカイト状要素が制御される。大索3はばね16を荷重する。この場合、大索3によって及ぼされる力がばねにより既に与えられている応力よりも大きいと、ばね端部プレート18は、図4の下方へと引き寄せられ、その過程でラッチ突起19に引っ掛かる。大索3により生成される張力がばねの応力よりも大きくなる度に、端部プレート18は更に下方へと引き寄せられ、更に多くのエネルギが蓄積される。出力が必要とされる場合には、端部プレートの引っ掛かりが外され、ばね力によりプレート18が上方へ移動され、したがって出力発生装置20が作動する。この出力発生装置を例えば液圧シリンダとすることができ、或いは、(適当な偏向装置を介して)ケーブルに張力を加えることができ、それによりフラップ等が動作される。
【0037】
図4に示されるエネルギ蓄積部は、通常、一定のばね特性を有している。これは、カイト状要素が非常に異なる風向き状態で飛行しているときに不利になる場合がある。すなわち、出力を得るために使用できる張力の大きさが変動する。この状況で出力を最適に得られるようにするため、1つの有利な変形例は、ばねが大索によって直接に荷重されず、ばね定数をカイトからの張力に適合させることができるようにするトランスミッションによって荷重されることである。ばねを荷重するためのレバーを使用し、レバー上で張力が作用する点を移動できるようにすることが非常に簡単である。レバー上で力が作用する点を選択することにより、ばねを常に最適に荷重することができる。
【0038】
図5に示される実施形態においては、まず第1に、様々な張力が回転動作に変換される。これは、弾性要素5(好ましくは、ばね定数を変えられる空気ばね)を大索とカイト状要素との間に接続することにより行なうことができる。この場合も、先と同様に、ばね5はハウジング17内に配置される。大索にかかる力は、歯付きロッド11が配置された端部プレート18に作用する。この歯付きロッドは、図6で更に詳しく説明するように、スパイラルばねを有するエネルギ蓄積部22の歯車21に作用する。適正な高い張力が大索3に生じると、プレート18は、歯付きロッド11と共に下方へ引き寄せられ、「したがって、スパイラルばね蓄積部を締め付ける」。張力が減少すると、プレート18はばね5により再び上方へ移動され、その過程でスパイラルばねに蓄積されたエネルギは自由回転能力により変化しない。
【0039】
図5のエネルギ蓄積部が図6において更に明確に示されている。スパイラルばね22の一端はハウジング24の中心シャフト23に接続されており、このハウジング24内にスパイラルばね22が配置されている。歯付きロッド11が下方に移動されると、ハウジング24が時計回りに回転される。この場合、キャッチ25は、ラッチ26によって保持され、時計方向に移動されることによりばねを荷重する。この過程中、図示しないラッチ手段は、ラッチ26により引き起こされる押圧力がもはや存在しないときであってもキャッチ25が反時計方向へ移動することを防止する。これは、歯付きロッド11が上方へ移動され且つハウジング24が反時計方向に回転される瞬間の状況である。この場合、キャッチ25はラッチ突起26を乗り越えてスライドできる。ハウジング24の当初の位置が回復され、それにより、張力が十分に大きくなると直ぐに、スパイラルばね22に対して再び更なる応力を及ぼすことができる。この場合、荷重されたばね22のトルクは中心軸23に対して連続的に作用し、それにより、ここでは何時でも出力を取り出すことができ、一方、同時に、外部から新たなエネルギを歯付きロッド11により供給することができる。
【0040】
また、ばねを荷重するハウジング24の回転動作を使用して出力を得ることもできる。この場合、キャッチ25のロックが解放されなければならず、これにより、ばねの荷重を取り去って、シャフトから出力を引き出すことができるようにする。しかしながら、この解決策は、出力が引き出されている間に任意の新たなエネルギを供給することができないという不都合を有している。この不都合は、中心シャフト23によって出力が取り出される本発明に係る実施形態を用いて回避される。この構成が選択される場合には、以下のような多くの動作状態が存在する。
i.無荷重及び休止:スパイラルばね22の荷重が取り去られ、システム全体が休止状態となる。
ii.ばね22が荷重される:スパイラルばね22が巻き上げられてエネルギを蓄積する。
iii.ばねの荷重が取り去られる:スパイラルばね22は、荷重が取り去られるとともに、この場合にはそのハウジング24内で回転する。出力を得るためのユニットがシャフト23と共に自由に回転する。
iv.ばねが荷重されてその荷重が取り去られる:スパイラルばね22が片側(25において)で巻き上げられ、一方、同時に、スパイラルリングの荷重が取り去られる。(23において)
【0041】
図7は、圧電素子27の形態を成す出力発生ユニットを示している。圧電素子27に作用する機械的な応力が変化すると、電力が発生される。この電力は、ライン28を介して蓄積手段29へと送られ、ここで蓄積される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成を示している。
【図2】本発明の第2の実施形態の構成を示している。
【図3】本発明の第3の実施形態の構成を示している。
【図4】本発明の第4の実施形態を示している。
【図5】本発明の第5の実施形態を示している。
【図6】図5に示される実施形態において使用できるスパイラルばね蓄積部を示している。
【図7】本発明の第6の実施形態を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大索(3)によって接続されたカイト状要素を有するウォータークラフトにおいて、前記カイト状要素には調整装置及び出力発生装置(1)が設けられ、前記出力発生装置が、前記大索(3)に及ぼされる張力が変化するときに出力を発することを特徴とするウォータークラフト。
【請求項2】
前記出力発生装置(1)がばね荷重ピストン(4)を備えるピストン/シリンダユニット(2,4)を有し、前記シリンダ(2)が前記大索(3)に接続されるとともに、前記ピストン(4)が前記カイト状要素に接続され、或いは、前記シリンダ(2)が前記カイト状要素に接続されるとともに、前記ピストン(4)が前記大索(3)に接続され、前記シリンダ(2)が逆止弁(7)を介して加圧リザーバ(8)に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載のウォータークラフト。
【請求項3】
前記ピストン(4)によって分離される2つのシリンダ容積がそれぞれ前記逆止弁(7)を介して前記加圧リザーバ(8)に接続されることを特徴とする、請求項2に記載のウォータークラフト。
【請求項4】
前記出力発生装置が気密エンベロープを有する袋状構造を成しており、この構造が、一端が前記大索(3)に接続され且つ他端が前記カイト状要素に接続されて、弾性拡張要素により広げられるとともに、張力が生じるときに互いに離間するように引かれて容積を減少させ、逆止弁(7)を介して加圧リザーバ(8)に接続されることを特徴とする、請求項1に記載のウォータークラフト。
【請求項5】
前記出力発生装置がばね荷重可動部を有するリニア発生器を有し、ステータが前記大索(3)に接続されるとともに、可動部が前記カイト状要素に接続され、或いは、ステータが前記カイト状要素に接続されるとともに、可動部が前記大索(3)に接続されることを特徴とする、請求項1に記載のウォータークラフト。
【請求項6】
前記出力発生装置が、コンポーネント(10)内で移動でき且つ前記コンポーネント(10)上に取り付けられたピニオン(12)を介して発生器を駆動するように設けられたばね荷重歯付きロッド(11)を有しており、前記コンポーネント(10)が前記大索(3)に接続されるとともに、前記歯付きロッド(11)が前記カイト状要素に接続され、或いは、前記コンポーネント(10)が前記カイト状要素に接続されるとともに、前記歯付きロッド(11)が前記大索(3)に接続されることを特徴とする、請求項1に記載のウォータークラフト。
【請求項7】
前記出力発生装置が圧電素子(27)を有していることを特徴とする、請求項1に記載のウォータークラフト。
【請求項8】
電力を発生させるために前記加圧流体リザーバ(8)が発生器に接続されていることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項9】
流体として空気が使用されることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項又は7に記載のウォータークラフト。
【請求項10】
複数の前記出力発生装置(1)が設けられ且つ平行に又は直列に配置されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項11】
ばね荷重のために複数のばね要素(5)が設けられていることを特徴とする、請求項2又は3又は5〜9のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項12】
ばね力が可変であることを特徴とする、請求項2〜6のいずれか一項又は8〜10のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項13】
ばねが圧縮空気ばねであることを特徴とする、請求項2又は3又は5〜11のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項14】
ばねの代わりに或いはばねに加えて、前記加圧流体リザーバ(8)内の流体の一部が前記出力発生装置(1)をリセットするために使用されることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項又は7〜9のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項15】
流体が液圧流体、特に圧油であることを特徴とする、請求項2又は3又は8に記載のウォータークラフト。
【請求項16】
前記加圧流体リザーバが得気圧流体のためのエアクッションを有していることを特徴とする、請求項15に記載のウォータークラフト。
【請求項17】
可撓性ホースを用いて液圧流体が前記加圧流体リザーバから引き出され、前記可撓性ホースの端部が錘により重み付けられていることを特徴とする、請求項16に記載のウォータークラフト。
【請求項18】
液圧流体及び前記エアクッションが膜によって互いに分離されていることを特徴とする、請求項16に記載のウォータークラフト。
【請求項19】
当該ウォータークラフト上にウインチが設けられ、このウインチが、前記大索(3)を巻き上げ或いは繰り出して前記大索(3)の張力を変化させるために使用できることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項20】
液圧スタンプによって前記大索(3)の張力を変えることができることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項21】
ウインチが、前後に移動させることができ、特にキャリッジ上に配置されることを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項22】
前記カイト状要素が、電気エネルギを蓄積するための再充電可能なバッテリを有していることを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項23】
前記出力発生装置(1)が、エネルギを蓄えるように構成されたばね(16,22)を有していることを特徴とする、請求項1〜22のいずれか一項に記載のウォータークラフト。
【請求項24】
前記ばねが、圧縮又は伸長によってエネルギを蓄えるヘリカルばね(16)であることを特徴とする、請求項23に記載のウォータークラフト。
【請求項25】
前記ばねがスパイラルばね(22)であり、その一端部が略円筒状のハウジング壁(24)と相互作用し、その他端が前記ハウジング壁(24)の中心シャフト(23)に接続されていることを特徴とする、請求項23に記載のウォータークラフト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2008−512593(P2008−512593A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529342(P2007−529342)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009531
【国際公開番号】WO2006/027195
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(506352142)スカイセールズ ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー (5)
【Fターム(参考)】