説明

カオリン含有シリコーンゴム組成物の製造方法

オルガノポリシロキサンと;処理カオリンと;硬化剤と;1つ以上の、レオロジー調整剤、顔料、着色剤、接着防止剤、可塑剤、接着促進剤、発泡剤、難燃剤及び乾燥剤の群から選択される任意の添加剤とから本質的になり、補強性充填剤を実質的に含まない処理カオリン含有シリコーンゴム組成物。これらの完成カオリン含有シリコーンゴム組成物は、シリコーン異形押出、ワイヤ及びケーブルコーティング、グレージング等の用途において、並びに建築用ガスケットのために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理カオリンを含有する高充填シリコーンゴム組成物、処理カオリンを含有する高充填シリコーンゴム組成物の製造方法に関する。特に、本発明は、シリコーンゴム組成物中における実質的にただ1つの充填剤としてのカオリンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンエラストマーと呼ばれることが多いシリコーンゴムは、3つの必須成分から構成される。これらの成分は、(i)実質的に線状の高分子量シリコーンポリマー、(ii)1つ以上の充填剤、及び(iii)硬化剤(架橋剤又は加硫剤と呼ばれることもある)である。一般に、熱加硫又は高温加硫(HTV)シリコーンゴム組成物(高コンシステンシーゴム(HCR)と呼ばれることも多い)と、室温加硫(RTV)シリコーンゴム組成物とである2つの主要なタイプのシリコーンゴム組成物が存在するが、多くのRTV組成物は、適当な速度で反応を進行させるためにわずかな熱を必要とするので、後者の用語は誤解を招くかもしれない。
【0003】
HTVシリコーンゴム組成物は、実質的に線状の高分子量シリコーンポリマーと、充填剤及びその他の所望の添加剤とを混合してベース(base)又は原材料(raw stock)を形成することによって典型的に調製される。使用する前に、ベースは、硬化剤、その他の充填剤、並びに顔料、接着防止剤、可塑剤及び接着促進剤等の添加剤を取り込むように混合され、プレス加硫により加硫されるか、又は押出成形、すなわち射出及びトランスファ成形により連続的に加硫されて、最終シリコーンゴム製品を形成することができる。例えば、ケーブル絶縁体は、角型押出機ヘッド(angular extruder head)によってシリコーンゴムがケーブルコアに施される特別な技法で押出される。
【0004】
最も広く使用されている実質的に線状の高分子量シリコーンポリマーは、1,000,000センチストーク(mm/s)以上の粘度を有するポリシロキサンガムである。これらのポリシロキサンガムは、シロキサン骨格(−Si−O−)を一般に含有しており、該骨格には、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及びt−ブチル基等)、並びに不飽和基(例えば、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル又はヘキセニル基等のアルケニル基)が結合しているが、ビニル基、及び/又はビニル基とヒドロキシル基との組み合わせが特に好ましく、その架橋の助けとなる。このようなポリシロキサンガムは、500〜10,000の重合度(DP)を典型的に有し、これはポリマー中の繰り返し単位の数を表す。
【0005】
一般に、2つのタイプの充填剤が使用され、これらは、補強性充填剤及び非補強性充填剤と通常呼ばれる。補強性充填剤は加硫ゴムに高強度を付与し、ヒュームドシリカ及び沈降シリカ等の微粉化されたアモルファスシリカを含み得る。増量充填剤又は非補強性充填剤は、シリコーンゴム組成物のコストを低減するために一般に使用され、粉砕石英、炭酸カルシウム及びケイ藻土等の安価な充填材料を一般に含む。補強性充填剤は、単独か、又は増量充填剤若しくは非補強性充填剤と一緒に典型的に使用される。補強性充填剤は、シリコーンゴム組成物の物理特性及び/又は機械特性、すなわち引張強度及び圧縮永久歪を改善するために、オルガノシラン、オルガノシロキサン又はオルガノシラザンで通常処理される。
【0006】
最も広く使用されている硬化剤は、加熱したときにフリーラジカルを生成し、メチルとの反応により、及び線状の高分子量シリコーンポリマーにアルケニル基が存在するところで、架橋を形成することができる有機過酸化物である。一般に使用されるいくつかの有機過酸化物は、ベンゾイルペルオキシド、1,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチル−パーベンゾエート及びモノクロロベンゾイルペルオキシド等の非ビニルに特有の有機過酸化物、並びにジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ビス−(t−ブチル−ペルオキシ)−2,5−ジメチルへキサン、t−ブチル−トリメチルペルオキシド、t−ブチル−t−ブチル−t−トリフェニルペルオキシド、及びt−ブチルパーベンゾエート等のビニルに特有の有機過酸化物である。
【0007】
HTVシリコーンゴム組成物を含むシリコーンゴム組成物は、ゴムサンプルを破断させるのに必要とされる力の量である引張強度と、ゴムサンプルが伸長され得る長さである伸びと、ゴムサンプルの永久変形のために必要とされる力の量である圧縮永久歪とを含む様々なパラメータを用いて評価することができ、且つ評価することが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
「着色可能なシリコーンエラストマーの熱安定性の改善方法(Method of Improving Heat Stability of Pigmentable Silicone Elastomer)」という表題の米国特許第4,677,141号(1987年6月30日)(本発明と同一の譲受人に譲渡され、以下141号特許と称する)は、当該技術分野の上記状況の最も代表的なものであり、本発明は改善が意図される。141号特許は、オレフィン系不飽和シロキシ基で前処理されたカオリン等のホワイトクレーを用いて、ビニル末端オルガノポリシロキサンポリマー、シリカベースの補強性充填剤及び有機過酸化物硬化剤を含む着色可能なシリコーンエラストマーの熱安定性を改善する手段について記載している。欧州特許第0057084号は同様の技術に関するが、この場合もシリカの形態で補強性充填剤の存在を必要とする。
【0009】
本出願の優先日よりも後の国際出願日を有する国際公開第2004/070102号パンフレットは、4.5以下のモース硬度及び3.0μm以下の平均粒径を有する、組成物全体の100重量部あたり15〜30重量部の充填剤を含む、織布、特にエアバッグをコーティングするためのコーティング材料について記載している。カオリンは、適切な充填剤と考えられる幅広い種類の無機化合物からの1つの選択として記載されているが、実施例は、実現性のある代替例としての炭酸カルシウム又はアルミニウム三水和物の使用に実質的に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の実施形態によると、
(i)1,000,000センチストーク(mm/s)の粘度を有するオルガノポリシロキサンと、
(ii)処理カオリンと、
(iii)硬化剤と、
(iv)1つ以上の、レオロジー調整剤(rheology modifier)、顔料、着色剤、接着防止剤、可塑剤、接着促進剤、発泡剤、難燃剤及び乾燥剤(dessicant)の群から選択される任意の添加剤と
から本質的になり、補強性充填剤を実質的に含まない処理カオリン含有シリコーンゴム組成物が提供される。
【0011】
オルガノポリシロキサンポリマーは、式RSiO[(RSiO)(RViSiO)]SiR(式中、各Rは同一又は異なり、1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基、フェニル基又は3,3,3−トリフルオロアルキル基であり、好ましくは、各R基はメチル又はエチル基であり;Rはヒドロキシ基又はアルケニル基であり、好ましくはビニル又はヘキセニル基であり;xは整数であり;yはゼロ又は整数であり;x+yは700〜10000である)を好ましくは有する1つ以上のポリマーを含む。1つの実施形態では、オルガノポリシロキサンは、式RViSiO[(RSiO)(RViSiO)]SiRVi及びRViSi(RSiO)SiRVi(式中、Rは1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基であり;Viはビニルであり;x及びyは500〜1,000である)を有する2つのポリシロキサンガムの混合物である。
【0012】
本発明による好ましい代表的なポリシロキサンガムは、式MeViSiO[(MeSiO)(MeViSiO)]SiMeViを有する高分子量のガム、及び式MeViSi(MeSiO)SiMeViの高分子量のガムである。式中、Meはメチル基−CHを表し、Viはビニル基CH=CH−を表し、重合度(DP)は約1,000であり、すなわちDPは、xの値又はx及びyの合計に相当する。
【0013】
適切なカオリンはどれでも用いることができ、焼成(calcined)カオリンが特に好ましい。カオリンは当該技術分野においてよく知られている。カオリンは、ケイ酸アルミニウムであり、いくらかのイライト及び不純物と一緒にAl・2SiO・2HOを主に含む。カオリンは白色形態で容易に入手可能であるため、特に有用である。本発明の目的では、「白色」は、シリコーンエラストマー組成物を所望の色へさらに着色させるのを妨げるのに十分な強度の色又は色合いが存在しないことと考えられるべきである。カオリンは、参照によって援用される141号特許においてさらに説明されている。
【0014】
上述のとおり、処理カオリン充填剤、特にシラン、シラザン又は短鎖オルガノポリシロキサンポリマーを含む群のうちの1つ以上で処理されたカオリンを用いることは、本発明の本質的な特徴である。カオリンの処理に最も適切であることが分かったシランは、一般式R(4−n)Si(OR)のアルコキシシラン(式中、nは1〜3の値を有し;各Rは同一又は異なり、且つアルキル基、アリール基、又はアルケニル基(例えば、ビニル又はアリル)、アミノ基若しくはアミド基等の官能基のような一価の有機ラジカルを表す)である。従って、いくつかの適切なシランとしては、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のフェニルトリアルコキシシラン、又はビニルトリエトキシシラン及びビニルトリメトキシシラン等のアルケニルトリアルコキシシランが挙げられる。所望されるなら、カオリン充填剤のための処理剤として、へキサメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン及び1,3−ジビニルテトラメチルジシラザン等のシラザンを使用することもできる。短鎖オルガノポリシロキサンは、例えば、2〜20の重合度を有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、2〜20の重合度を有するヒドロキシ末端ポリジアルキルアルキルアルケニルシロキサン、及び末端基であっても、又はそうでなくてもよい少なくとも1つのSi−H基を含むオルガノポリシロキサンを含み得る。
【0015】
上記のように硬化剤が必要とされ、本明細書中で使用することができる化合物としては、ジアルキルペルオキシド、ジフェニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、1,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチル−パーベンゾエート、モノクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ビス−(t−ブチル−ペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、t−ブチル−トリメチルペルオキシド、t−ブチル−t−ブチル−t−トリフェニルペルオキシド及びt−ブチルパーベンゾエート等の有機過酸化物が挙げられる。最も適切な過酸化物系硬化剤は、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド及びジクミルペルオキシドである。
【0016】
また、本発明の組成物は、各ポリマー分子がオルガノ水素シロキサンとの架橋に適切な少なくとも2つの不飽和基を含有するという場合には、有機過酸化物の代わりの硬化剤として、ヒドロシリル化反応触媒をオルガノ水素シロキサンと組み合わせることによって硬化及び/又は架橋させることができる。これらの基は、典型的にアルケニル基であり、最も好ましくはビニル基である。本発明の組成物の硬化をもたらすために、オルガノ水素シロキサンは、1つの分子あたり3つ以上のケイ素結合水素原子を含有しなければならない。オルガノ水素シロキサンは、例えば、1分子あたり約4〜20個のケイ素原子を含有し、25℃で約10Pa・s以下の粘度を有することができる。オルガノ水素シロキサン中に存在するケイ素結合有機基は、1〜4個の炭素原子を有する置換及び非置換のアルキル基を含むことができ、他の点ではエチレン性又はアセチレン性不飽和を含まない。
【0017】
好ましくは、ヒドロシリル化触媒は、白金、ロジウム、イリジウム、パラジウム又はルテニウム触媒から選択される白金族金属系の触媒である。本発明の組成物の硬化を触媒するのに有用な白金族金属含有触媒は、ケイ素結合水素原子とケイ素結合アルケニル基との反応を触媒することが知られているもののいずれでもよい。ヒドロシリル化による本発明の組成物の硬化をもたらす触媒として使用するのに好ましい白金族金属は、白金である。本発明の組成物を硬化させるためのいくつかの好ましい白金系のヒドロシリル化触媒は、白金金属、白金化合物及び白金錯体である。代表的な白金化合物としては、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、二塩化白金、及び低分子量のビニル含有オルガノシロキサンを含有する該化合物の錯体が挙げられる。本発明における使用に適切なその他のヒドロシリル化触媒としては、例えば、[Rh(OCCH、Rh(OCCH、Rh(C15、Rh(C、Rh(C)(CO)、Rh(CO)[PhP](C)、RhX[(RS]、(RP)Rh(CO)X、(RP)Rh(CO)H、Rh、HRhオレフィンCl、Rh(O(CO)R3−n(OH)等のロジウム触媒(式中、Xは水素、塩素、臭素又はヨウ素であり;Yは、メチル若しくはエチル等のアルキル基、CO、C14又は0.5C12であり;Rはアルキルラジカル、シクロアルキルラジカル又はアリールラジカルであり;Rはアルキルラジカル、アリールラジカル又は酸素置換ラジカルであり;aは0又は1であり;bは1又は2であり;cは1〜4の整数(全てを含む);dは2、3又は4であり;nは0又は1である)が挙げられる。Ir(OOCCH、Ir(C、[Ir(Z)(En)又は[Ir(Z)(Dien)]等の任意の適切なイリジウム触媒(式中、Zは、塩素、臭素、ヨウ素又はアルコキシであり;Enはオレフィンであり;Dienはシクロオクタジエンである)が使用されてもよい。
【0018】
白金族金属含有触媒は、組成物100万重量部あたり、わずか0.001重量部(ppm)の元素白金族金属に相当する量で本発明の組成物に添加することができる。好ましくは、組成物中の白金族金属の濃度は、少なくとも1ppmの元素白金族金属に相当する量を提供できる濃度である。約3〜50ppmの元素白金族金属に相当する量を提供する触媒濃度が、一般に好ましい量である。
【0019】
この硬化の代替例は当該技術分野において知られており、例えば、米国特許第5,863,968号(1999年1月26日)を参照することができる。
【0020】
好ましくは、(i)の混合物は、シリカ等の既知の補強性充填剤を含まない。好ましくは、混合物はその他の全ての充填剤も含まない。しかしながら、組成物は、ポリマー+処理カオリン100部あたり、5重量部以下のレオロジー調整剤を含んでもよい。存在する場合、レオロジー調整剤は、ポリマー+処理カオリン100部あたり、1〜3重量部の量で存在するのが好ましい。レオロジー調整剤は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ホウ酸、アモルファスの沈降シリカ又はヒュームドシリカを含むことができる。許可された範囲内で存在するシリカの量が、得られる組成物の物理特性に対して無視できる程度の影響を有するように少量で存在するようなものであることは理解されるべきである。
【0021】
使用することができるその他の添加剤には、硬化組成物の最終使用/用途によって、顔料及び着色剤、接着防止剤、可塑剤、接着促進剤、発泡剤、難燃剤、並びに乾燥剤が含まれる。
【0022】
従来のシリコーンゴム組成物と同等の機械特性を有するシリコーンゴム組成物は、加熱を伴わず、補強性充填剤として高価なヒュームドシリカを使用する必要性を回避するプロセスにおいて、本発明に従って製造することができる。
【0023】
本発明の第2の実施形態によると、(i)オルガノポリシロキサン及び処理カオリンを室温条件下で混合する工程((i)で調製される混合物は補強性充填剤を含まない)と、(ii)(i)の混合物に硬化剤を添加し、熱を加えることにより室温よりも高い温度で(ii)の混合物を硬化させる工程とから本質的になる処理カオリン含有シリコーンゴム組成物の製造方法が提供される。
【0024】
室温条件が、20〜25℃(68〜77°F)の標準周囲温度における大気圧及び室温を意味することは理解されるべきである。工程(i)中に、補強性充填剤のその場処理(in-situ treatment)を行う際に必要とされるような熱を加えることが必要とされないことは、本発明の場合における大きな利点である。全ての混合プロセスの場合のように、混合の効果は熱を発生し得るが、本発明の場合の混合は更なる入熱を必要としないであろう。
【0025】
高充填シリコーンゴム組成物の従来の調製経路は、まず、ヒュームドシリカ、シリカ用処理剤、及びオルガノポリシロキサン(例えば、ポリシロキサンガム)の混合物をミキサー内で加熱することによって、シリコーンゴムベースを製造する。シリコーンゴムベースは、第1のミキサーから取り出されて第2のミキサーに移され、一般に、シリコーンゴムベース100重量部あたり、約150重量部の粉砕石英等の非補強性充填剤又は増量充填剤が添加される。硬化剤、顔料及び着色剤、熱安定剤、接着防止剤、可塑剤、並びに接着促進剤等のその他の添加剤は、第2のミキサーへ典型的に供給される。
【0026】
これらの完成組成物の機械特性は、一般に、シリコーンゴムベースの機械特性よりもはるかに低いことが分かっている。従って、高充填シリコーンゴムベース組成物は、約8MPaを超える引張強度、300パーセントを超える破断伸び、20kNm−1を超える引裂強度、40〜80の硬度(ショアA)、及び1.1〜1.2gcm−3の密度によって一般に表される比較的高い機械特性を有する。しかしながら、シリコーンゴムベースを混合して完成組成物にすると、得られる組成物が、対応するシリコーンゴムベースよりも低い機械特性、すなわち、5〜7MPaの引張強度、180〜300パーセントの破断伸び、10〜20kNm−1の引裂強度、60〜90の硬度(ショアA)、及び1.2〜1.8gcm−3の密度を示すであろうことはよく知られている。
【0027】
しかし、本発明によると、200℃の空気中で240時間熱エージングした後でも、依然として、6MPaを超える引張強度、40〜80の硬度(ショアA)、1.1〜1.5gcm−3の密度、約25kvを超える絶縁耐力、150パーセントを超える伸び、及び30パーセント未満の圧縮永久歪のような値を有する特性プロファイルによって一般に表される、許容可能なレベルの機械特性、熱特性及び電気特性を得ることが可能である。
【0028】
本発明に従うプロセスでは、ヒュームドシリカを含有するシリコーンゴムベース、次に二次的な非補強性又は半補強性(semi-reinforcing)充填剤を含有する別の組成物を製造する必要性が回避される。それどころか、処理された半補強性カオリン充填剤は、オルガノポリシロキサン(例えば、ポリシロキサンガム)と直接混合されて、従来のシリコーンゴム組成物と同等の機械特性を有する完成組成物が製造される。さらに、熱を加える必要性が回避され、単一の混合装置において全体のプロセスを迅速且つ効率的に行うことができる。
【0029】
カオリンは、ポリシロキサンガム中に、ヒュームドシリカよりもはるかに容易に分散するので、全体の混合サイクルはかなり低減され、ミキサーの利用性がはるかによくなる。さらに、カオリンは半補強性充填剤なので、適切な機械特性を有する完成組成物を提供することが可能である。しかしながら、カオリンは半補強性でしかないため、ヒュームドシリカの場合よりも高い充填レベル(loading level)で用いることが必要とされる。他方で、カオリンはシリカと比較してコストが低いので、完成組成物の適当なレベルの経済的魅力を得るために大量のカオリンを使用することは必要でない。好ましくは、処理カオリンとオルガノポリシロキサンとの比率は、1:2〜2:1である。従って、ヒュームドシリカを用いることなく、例えば、オルガノポリシロキサン(例えば、ポリシロキサンガム)100重量部において約100重量部のカオリンを使用することができる。
【0030】
従って、ヒュームドシリカを含有する完成組成物と同じレベルの機械特性を得ることができる。さらに、ヒュームドシリカの排除は、加熱が要求されず、配合プロセス全体が単一のミキサー内で行われ得ることを意味する。さらに、カオリンの混和時間(incorporate time)はヒュームドシリカよりもはるかに速く、その結果、より速い処理量(throughput)を用いることによりミキサーの能力が増大される。最後に、カオリンはヒュームドシリカよりもはるかに高い嵩密度を有し、取り扱い及び保存の容易性がはるかに改善される。
【0031】
これらの完成カオリン含有シリコーンゴム組成物は、シリコーン異形押出、ワイヤ及びケーブルコーティング、グレージング等の用途において、並びに建築用ガスケットのために有用である。特定の例としては、窓ガラスのグレージングガスケット、プレナム又は安全ケーブル被覆材用途等のワイヤ及びケーブル、ダブルグレージングスペーサーガスケット(double glazing spacer gasket)におけるこの製品の使用が挙げられる。その使用に関するただ1つの要件は、完成組成物が特定の用途のために許容可能なものと大体等しい特性プロファイルを有することである。また、本発明の組成物は、適切な発泡剤の添加と共にシリコーンゴムスポンジの製造において使用されてもよい。適切な任意の発泡剤が使用され得る。例えば、発泡剤は、欧州特許第1149871号及び欧州特許第0820807号において記載されるタイプの中空樹脂粒子を含むことができる。得られる製品は、絶縁グレージングスペーサーガスケットを製造するのに特に有用である。
【0032】
本発明の方法を141号特許に記載される方法と区別する特徴は、ただ1つの充填剤がシラン処理カオリンを示し、熱が加えられず、プロセスがシリカ等の補強性充填剤を実質的に含まず、最も好ましくは全く含まず、粉砕石英等の二次的な充填剤を含まないことである。
【0033】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提供される。
【0034】
本発明の方法を説明するために、添付の実施例において3つのカオリン組成物を用いた。カオリンは、英国コーンウォール(Cornwall)のイメリスミネラルズリミテッド(Imerys Minerals Limited)により製造及び配送された製品であった。カオリンは全て、焼成カオリンから構成され、焼成プロセスの詳細及び粒子サイズのみが異なった。
【0035】
実施例は全て、同一の調合を有するシリコーンゴム組成物を用いて行った。調合物は、100重量部のカオリン及び100重量部のポリシロキサンガムから構成された。ポリシロキサンガムは、等しい重量部の上記の第1の式を有する1つのポリシロキサンガムと、等しい重量部の上記の第2の式を有するもう1つのポリシロキサンガムとの混合物から構成された。ブラベンダー(Braebender)(登録商標)ミキサー内で30分間、成分を混合することによって、シリコーンゴム組成物を調製した。プロセスの間、熱を加えず、又は用いなかった。全て既存の室温で行った。
【0036】
本明細書中で使用される場合、室温という用語は20〜25℃(68〜77°F)の標準周囲温度を意味することが意図される。次に、0.6重量部の2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド硬化剤を用いて、116℃で5分間、混合したシリコーンゴム組成物をシート状にプレス硬化させた。試験及び評価を受けさせる前に、シートを200℃で4時間、後硬化させた。
【0037】
テーブルに示される試験結果は、約240時間までの期間、200℃の空気中でシートを熱エージングしたときの試験シートの特性の変化を示す。評価した特性は、硬度、引張強度及び破断伸びであった。硬度は、米国材料試験協会の仕様書ASTM D2240(これは、機器及び試験手順について認められた仕様書である)に記載されるデュロメーターを用いて、ゴム、プラスチック及びその他の非金属材料の硬度測定のための国際標準に従って決定した。
【0038】
シリカベースの補強性充填剤と、例えば、石英を含む非補強性充填剤とを含有するシリコーンゴム化合物の典型的な特性プロファイルは、参考として以下のテーブルに示される。
【0039】
【表1】

【実施例】
【0040】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために示される。本明細書における使用では、ASTMは米国材料試験協会を意味し、DINはドイツ規格協会を意味する。
【0041】
[処理カオリンの調製−手順A]
イメリスミネラルズリミテッドにより製造される焼成カオリンを普通の家庭用フードミキサーのミキシングボウルに入れ、強力に攪拌してかき混ぜた。次に、カオリンの入ったミキシングボウル内に、カオリン表面の所望のレベルの処理を得るのに十分な量の処理剤を導入した。処理剤の添加後、ミキサーを10分間運転させたままにした。次に、ミキシングボウルの内容物を金属トレイに移し、最低12時間の間、120℃の空気循環式オーブン内に置いた。
【0042】
[処理カオリンの調製−手順B]
処理カオリンを加熱処理しなかった点を除いて、手順Aを繰り返した。
【0043】
[配合]
上記のように調製した充填剤(典型的に、処理カオリン)を、ブラベンダーのインターナルミキサー(internal mixer)内でポリジメチルシロキサンポリマー(PDMS)と混合した。全ての場合において、用いた混合手順は同じであった。手順に従って、最大速度で回転するようにミキサーブレードを起動させ、必要量のPDMSをミキサーに入れ、必要量の処理カオリンをミキサーに添加し、カオリンの添加が完了したら、ミキサーをさらに30分間運転させた。カオリン及びPDMSの量を容積で計算することによってミキサーの充填レベルを一定に保持した。これは、PDMSの密度が1.0gcm−3であり、処理カオリンの密度が2.2gcm−3であると仮定して行った。
【0044】
[化合物の試験]
上記のように調製した処理カオリン化合物を、2本ロールミルにおいて、適切な熱活性化硬化剤と混合した。次に、適切なモールド内で熱及び圧力を加えることにより化合物を試験シート内で架橋及び/又は硬化させた。
【0045】
[実施例1−未処理カオリン充填剤]
(i)以下の5つの可能性のある充填剤を用いて比較試験を初めに行った。100重量部の5つの異なる未処理の増量充填剤:
i.タルク
ii.石英
iii.ケイ藻土
iv.モンモリロナイト
v.カオリン
調製した各サンプルにおいて、上記のような100部の各充填剤を、
a)7,000の平均重合度(dp)を有する、50重量部のジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位とのモル比=99.82:0.18)、及び
b)7,000の平均dpを有する、50重量部のジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンと
混合した。
得られたシリコーンゴム組成物を、100グラムあたり1.5部の、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド(50重量%)及びシリコーン流体の混合物で加硫し、2MPaの圧力下、116℃で5分間プレス成形して、厚さ2mmのシリコーンゴムシートを形成し、次に、これを200℃の熱循環型オーブン内に4時間置いた。得られたシートから試料を切断し、機械特性を測定した。DIN 53504によって引張強度及び伸びを決定した。ASTM D2240によってデュロメーター(ショアA)を決定した。モンモリロナイト増量充填剤は、2,4ジクロロベンゾイルペルオキシドの硬化を抑制し、それ自体、硬化しなかった。かかる結果はテーブル1aに示される。
【0046】
【表2】

【0047】
テーブル1aは、市販の鉱物充填剤から選択されたものにおいて測定した物理特性の範囲を示す。使用した充填剤の中でカオリンだけが、必要とされる物理特性を有するシリコーンゴムを提供可能であったことが注目されるであろう。特に、未処理カオリン充填剤シリコーンゴムが、かなり良い引張強度の結果を与えたことは注目されるべきである。
【0048】
後者を考慮して、未処理カオリン充填シリコーンゴムの機械特性における熱エージングの効果に関して未処理カオリンサンプルをさらに分析した。
【0049】
100重量部の未処理カオリン充填剤を使用した点を除いて、実施例1aを繰り返した。さらに、200℃の熱循環型オーブン内で3日、7日及び10日の期間、試料に熱処理を施した。また、200℃の温度の熱循環型オーブン内で、3日、7日及び10日の期間、試料に熱処理を施して、機械特性を再測定し、パーセント差を決定した。結果は、テーブル1bに示される。
【0050】
【表3】

【0051】
初期の機械特性は未処理カオリンを用いる場合に必要とされる値の範囲内に入るが、硬度が大幅に増大し、未処理カオリンを含有するゴムの伸び及び引張強度がその伸び特性の大部分及びその引張強度のかなりの部分を失うという事実に見られるように、もはやエラストマーではないので、熱エージングがゴムを脆弱にし、崩壊させることが分かるであろう。従って、未処理カオリンは、熱処理を伴う用途には使用されない。
【0052】
[実施例2]
[フェニルトリメトキシシランを用いる処理レベルの効果]
カオリン100グラムあたり、3.7グラム、7.4グラム及び9.3グラムのフェニルトリメトキシシランの処理レベルで処理された100重量部の処理カオリン充填剤を、手順Aにおいて上記したとおりに調製し、上記のように、
a)7,000の平均dpを有する、50重量部のジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位とのモル比は99.82:0.18である)、及び
b)7,000の平均dpを有し、その分子鎖の両末端部がジメチルビニルシロキシ基により末端保護されている50重量部のジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンと
混合した。
【0053】
得られたシリコーンゴム組成物を、100グラムあたり1.5部の、50重量パーセントの2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド及び50重量パーセントのシリコーン流体を含有する混合物で加硫した。2MPaの圧力下、116℃で5分間プレス成形して、厚さ2mmのシリコーンゴムシートを形成した。次に、シートを200℃の熱循環型オーブン内に4時間置いた。得られたシートから試料を切断し、その機械特性を測定した。DIN 53504によって引張強度及び破断伸びを決定した。ASTM D2240によってデュロメーター(ショアA)硬度を決定し、ASTM D624Bによって引裂強度を決定した。また、200℃の温度の熱循環型オーブン内で10日間、試料に熱処理を施し、機械特性を再測定し、パーセント差を決定した。かかる結果は、テーブル2に示される。
【0054】
【表4】

【0055】
[実施例3−メチルトリメトキシシランを用いる処理レベルの効果]
カオリン100グラムあたり、3.8グラム、5.1グラム及び6.4グラムのメチルトリメトキシシランの処理レベルで処理した100重量部の処理カオリン充填剤を用いたことを除いて実施例2を繰り返した。結果はテーブル3に示される。
【0056】
【表5】

【0057】
[実施例4−フェニルトリメトキシシラン及びビニルトリメトキシシランによる処理レベルの効果]
フェニルトリメトキシシラン及びビニルトリメトキシシランの混合物の処理レベルで処理した100重量部の処理カオリン充填剤を使用したことを除いて、実施例2を繰り返した。かかる結果はテーブル4に示される。処理Aは、カオリン100グラムあたり2.77グラムのビニルトリメトキシシランであり;処理Bは、カオリン100グラムあたり2.77グラムのビニルトリメトキシシラン、及びカオリン100グラムあたり0.92グラムのフェニルトリメトキシシランであり;処理Cは、カオリン100グラムあたり2.77グラムのビニルトリメトキシシラン、及びカオリン100グラムあたり1.84グラムのフェニルトリメトキシシランであり;並びに処理Dは、カオリン100グラムあたり2.77グラムのビニルトリメトキシシラン、及びカオリン100グラムあたり3.73グラムのフェニルトリメトキシシランである。
【0058】
【表6】

【0059】
[実施例5−フェニルトリメトキシシラン処理カオリンの硬化特性に対する過酸化物硬化剤の効果]
カオリン100グラムあたり3.7グラムのフェニルトリメトキシシラン処理レベルで処理した100重量部の処理カオリン充填剤を用いた点を除いて、実施例2を繰り返した。さらに、得られたシリコーンゴム組成物を、異なる条件下で、次のような4つの異なる有機過酸化物系を用いて加硫及び硬化させた。
(i)100グラムあたり1.5部の、50重量パーセントの2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド及び50重量パーセントのシリコーン流体を含有する混合物、116℃で5分間硬化、
(ii)100グラムあたり1.5部の、40重量パーセントのジクミルペルオキシド及び60重量パーセントのシリコーン流体を含有する混合物、150℃で10分間硬化、
(iii)100グラムあたり1.0部の、50重量パーセントのジベンゾイルペルオキシド及び50重量パーセントのシリコーン流体を含有する混合物、127℃で5分間硬化、並びに
(iv)100グラムあたり1.0部の、45重量パーセントの2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン及び55重量パーセントのシリコーン流体を含有する混合物、171℃で10分間硬化。
【0060】
アルファテクノロジーズインコーポレイテッド(Alfa Technologies Inc.)により製造される移動ダイレオメータ、モデルMDR 2000Eを用いて、加硫の最終状態を表す最大トルク値を達成した。最終トルク値の0パーセント、10パーセント及び90パーセントにおいてトルク/時間値を測定した。これは硬化速度の指標である。かかる結果は、テーブル5に示される。テーブル5において、DCBPは2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシドであり、DCPはジクミルペルオキシドであり、DBPはジベンゾイルペルオキシドであり、BTBPは2,5−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンである。
【0061】
【表7】

【0062】
[実施例6−フェニルトリメトキシシラン処理カオリンの硬化特性に対するヒドロシリル化硬化剤の効果]
カオリン100グラムあたり3.7グラムのフェニルトリメトキシシランの処理レベルで処理した100重量部の処理カオリン充填剤を使用したことを除いて、実施例2を繰り返した。さらに、得られたシリコーンゴム組成物を、
i)ポリマー100重量部あたり2.5重量部の、10重量%の1−エチニル−1シクロヘキサノール抑制剤及び90%の高分子量シロキサンポリマーを含有する混合物、
ii)ポリマー100重量部あたり9.0重量部の、1分子あたり少なくとも2つのSi−H基を含有する20重量%のオルガノポリシロキサン及び80%の高分子量ポリマーを含有する混合物、
iii)ポリマー100重量部あたり0.85重量部の、0.2%の白金系錯体触媒及び99.8%のポリジメチルシロキサンを含有する混合物、
を含むヒドロシリル化硬化系を用いて加硫及び硬化させた。
得られた組成物を150℃の温度で10分間硬化させた。
【0063】
【表8】

【0064】
[実施例7−低粘度シリコーンポリマー中の処理カオリン充填剤の効果]
カオリン100グラムあたり3.7グラムのフェニルトリメトキシシランの処理レベルで処理した200重量部の処理カオリン充填剤を、手順Aにおいて上記したように調製した。120rpm(1分あたり120回転)/12.6rad/sec(1秒あたり12.6ラジアン)の混合速度で運転されるブラベンダーミキサーを用いて、処理カオリンを、約850の平均dpを有する100重量部のジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンと混合した。70分の混合時間の後、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位とのモル比が99.82:0.18であり、7,000の平均dpを有するジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体をさらに100重量部ミキサーに入れた。
【0065】
得られたシリコーンゴム組成物を、100グラムあたり1.5部の、50重量パーセントの2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド及び50重量パーセントのシリコーン流体の混合物で加硫した。2MPaの圧力下、116℃で5分間プレス成形して、厚さ2mmのシリコーンゴムシートを形成した。次に、シートを200℃の熱循環型オーブン内に4時間置いた。シートから試料を切断し、機械特性を測定した。DIN 53504によって引張強度及び破断伸びを決定した。ASTM D2240によってデュロメーター(ショアA)硬度を決定した。結果は、テーブル6に示される。
【0066】
【表9】

【0067】
これらの実施例において上記で示された結果は、本発明におけるシリコーンゴム組成物が、従来のシリコーンゴム組成物と同等の機械特性を有するが、加熱の必要性及び充填剤として高価なヒュームドシリカを使用する必要性を回避するプロセスで製造されることを示す。
【0068】
本明細書中に記載される化合物、組成物及び方法によって、本発明の本質的な特徴から逸脱することなく他の変化がなされる。本明細書において具体的に説明される本発明の実施形態は単なる具体例であって、添付の特許請求の範囲で定義されるものを除いてその範囲に対する限定の意図はない。
【0069】
[実施例8:加速UV露光試験]
異なる組成の2つのサンプルを調製した。
【0070】
カオリン100グラムあたり3.7グラムのフェニルトリメトキシシランの処理レベルで処理した100重量部の処理カオリン充填剤を用いたこと以外は実施例2で記載した方法に従って、サンプル8.1を調製した。さらに、100グラムあたり1.5部の、50重量パーセントの2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド及び50重量パーセントのシリコーン流体を含有する混合物を用いて、得られたシリコーンゴム組成物を加硫させた。得られた組成物を116℃で5分間硬化させた。
【0071】
バルブタイプ(bulb type)UVA340によりASTM試験要綱G154−00aε1を用いて、得られたサンプルをエージングさせた。UVエージングに用いた露光サイクルは、60℃(+/−3℃)のブラックパネル温度で4時間のUVエージングの後、50℃(+/−3℃)のブラックパネル温度で4時間の結露(condensation)であった。ASTM C 1115−00で定義される基準に従って、非エージングサンプル(初期)及びUVエージングサンプルにおいて物理特性試験を行い、試験方法D 2240を用いてショアA硬度を決定し、試験方法D 395を用いて圧縮永久歪(最大%)を決定し、試験方法D 412を用いて引張強度及び伸びを決定した。サンプル8.1の結果は、以下のテーブル8.1で提供される。
【0072】
【表10】

【0073】
カオリン100グラムあたり3.8グラムのメチルトリメトキシシランの処理レベルで処理した100重量部の処理カオリン充填剤を用いたこと以外は実施例2で記載した方法に従って、サンプル8.2を調製した。さらに、100グラムあたり1.5部の、50重量パーセントの2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド及び50重量パーセントのシリコーン流体を含有する混合物を用いて、得られたシリコーンゴム組成物を加硫させた。得られた組成物を116℃で5分間硬化させた。
【0074】
サンプル8.1に関して上記で説明したものと同じ試験を行なった。結果は、以下のテーブル8.2に提供される。
【0075】
【表11】

【0076】
[実施例9−本発明に従う組成物を用いるシリコーンゴムスポンジの調製]
手順Aにおいて上記したように、カオリン100グラムあたり3.8グラムのメチルトリメトキシシランの処理レベルで処理した100重量部の処理カオリン充填剤を調製し、上記のように、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位とのモル比が99.82:0.18であり、7,000の平均dpを有する50重量部のジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン共重合体、及び7,000の平均dpを有し、その分子鎖の両末端部がジメチルビニルシロキシ基により末端保護されている50重量部のジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンと混合した。
【0077】
100gあたり0.7gの発泡剤と、100gあたり1.0gmの、20%のSIH官能性シロキサン及び80%の高分子量ポリマーを含有する混合物を含む組成物と、100gmあたり0.2gmの、カプセル化した白金系触媒を含有する混合物とを添加して、シリコーンゴムスポンジを調製した。
【0078】
発泡剤は、水と、欧州特許第0820807号に記載されるタイプの中空シリコーン樹脂粒子と、5>15%の非イオン性界面活性剤及び15>30%のアニオン界面活性剤を含む界面活性剤との混合物であった。
【0079】
得られた組成物を、スパチュラを用いて手で混合し、次に2本ロールミルにおいて、処理カオリン(上記)を発泡剤、架橋剤及び触媒(上記)と共に混合した。得られたシリコーン組成物を250℃で10分間硬化させた。得られたスポンジ材料の外観検査を行ない、均質的にスポンジ状であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理カオリン含有シリコーンゴム組成物であって、
(i)1,000,000センチストーク(mm/s)の粘度を有するオルガノポリシロキサンと、
(ii)処理カオリンと、
(iii)硬化剤と、
(iv)1つ以上の、レオロジー調整剤、顔料、着色剤、接着防止剤、可塑剤、接着促進剤、発泡剤、難燃剤及び乾燥剤の群から選択される任意の添加剤と
から本質的になり、補強性充填剤を実質的に含まない処理カオリン含有シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
前記ポリシロキサンガムが、式RViSiO[(RSiO)(RViSiO)]SiRVi及び式RViSi(RSiO)SiRVi(各式中、Rは1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基を表し;Viはビニル基を表し;x及びyはそれぞれ500〜1,000の値を有する)を有する2つのポリシロキサンガムの混合物を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カオリンが、式R(4−n)Si(OR)(式中、nは1〜3の値を有し;Rはアルキル基、アリール基又はアルケニル基である)のアルコキシシランで処理されたカオリンを含む請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アルコキシシランが、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びビニルトリメトキシシランからなる群から選択される化合物である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ほぼ等しい量のポリシロキサンガム及びカオリンを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記硬化剤が、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド及びジクミルペルオキシドからなる群から選択される過酸化物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記硬化剤がオルガノ水素シロキサン硬化剤であり、前記組成物を硬化させるのに十分な量の白金族金属ヒドロシリル化触媒が添加される請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の処理カオリン含有シリコーンゴム組成物の製造方法であって、
(i)オルガノポリシロキサン及び処理カオリンを室温条件下で混合する工程と、
(ii)(i)の混合物に硬化剤を添加し、熱を加えることにより室温よりも高い温度で(ii)の混合物を硬化させる工程と
から本質的になる処理カオリン含有シリコーンゴム組成物の製造方法。
【請求項9】
前記室温が、20〜25℃(68〜77°F)の標準周囲温度である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
シリコーン異形押出、ワイヤ及びケーブルコーティング、グレージングガスケットにおける、並びに建築用ガスケットのための請求項1〜7のいずれか一項に記載の処理カオリン含有シリコーンゴム組成物の使用。

【公表番号】特表2007−515517(P2007−515517A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541924(P2006−541924)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014512
【国際公開番号】WO2005/054352
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(590001418)ダウ・コ−ニング・コ−ポレ−ション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】