説明

カスパーゼイメージングプローブ

本発明は、インビトロアッセイで、細胞内でまたは多細胞生物内で選択されたカスパーゼの触媒活性の観察を可能にする、本明細書中に定義されたとおりの式(I)
{L1−R1−L}−A−CO−NH−R2−L2 (I)
の分子プローブ、これらの製造方法およびこれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインビトロアッセイで、細胞内で(in cells)、または多細胞生物内で個々のタンパク質分解酵素またはタンパク質分解酵素のグループの触媒活性の観察を可能にする分子プローブ(基質)に関する。本発明はさらにこのようなプローブ(基質)の合成および設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)は、他の酵素またはペプチドを生細胞の内部および外側で切断または分解する。プロテアーゼは多くの生命プロセスにかかわり、その多くは細胞のシグナル伝達および組織の恒常性において重要である。プロテアーゼの異常または亢進した活性は、癌、変形性関節症、動脈硬化症(arthereosclerosis)、炎症およびその他多くを含む種々の疾患と関連している。生体系の緊縮調節下においてタンパク質分解活性が維持されなければならないので、多くのプロテアーゼは不活性な前駆体タンパク質(チモーゲン)として発現され、この前駆体タンパク質は、制御されたタンパク質分解切断によって活性化される。タンパク質分解活性のさらなる制御は、結合して酵素の触媒的活性形態を不活化する内在性インヒビターによってもたらされる。この緊縮調節に鑑みて、細胞内または生理学的事象におけるプロテアーゼ機能の調査には、プロテアーゼ発現単独をモニタリングするよりもむしろプロテアーゼ活性をモニタリングすることが必要である。従って、活性ベースの種々の化学プローブが文献で提唱されている。一般に適用されるプロテアーゼプローブは、(i)レポーター系の分光学的特性の変化をもたらすペプチド結合の酵素的切断を介してか、または(ii)関心あるプロテアーゼに対するメカニズムベースのインヒビターの共有結合によってのいずれかで検出可能なシグナルを生成する。特定のプロテアーゼまたはプロテアーゼ群の活性および阻害の局在化および定量調査(例えば細胞ベースのアッセイまたは動物全個体イメージング実験において)は、(i)プロテアーゼが作用する生理学的関連位置(locus)(例えば、動物全個体イメージングにおける細胞または特定の器官のサイトゾル)に到達し、(ii)所望のプロテアーゼまたはプロテアーゼ群に対して選択的である、イメージングプローブの開発を必要としている。プロテアーゼ選択的プローブの創出には、この分野に対する相当な難題が課されている。本発明は、(i)システインプロテアーゼ、好ましくはカスパーゼサブファミリー由来のものに対する新規な選択的プローブ、(ii)これらのプローブの、インビトロアッセイ、細胞内(in cell)または多細胞生物内(in multicellular organisms)への適用(例えば分子イメージング方法を通じて)、および(iii)このようなプローブの合成および設計方法に関する。
【0003】
最近になって、いくつかの分子イメージング技術(光学的および非光学的)は、インビボにおける特定の分子標的および経路の非侵襲的な可視化がますます重要となっている。どの画像信号の情報内容でも、第一に内部対比の機能であるので、酵素反応(例えばペプチド結合の切断)の際に活性化可能な内部消光イメージングプローブの開発が、触媒的に活性なプロテアーゼを画像化および局在化させるために通常適用されている。個々のプロテアーゼに対して選択的であり、インビボでのプロテアーゼ作用の位置(locus)に到達する能力を示すプローブの創出は、従来のアプローチではほとんど達成されていない。製薬工業における薬化学者は適切な薬物動態学的特性と所定の標的に対する適切な特異性を持つ薬物の開発において関連する問題に直面している。本発明者らは、本発明において、システインプロテアーゼに対する選択的活性ベースのプローブに向かう新しいルートを考案し、カスパーゼサブファミリー由来のプロテアーゼにこのアプローチを応用した。
【0004】
システインプロテアーゼは活性部位中のシステイン残基によって特徴づけられ、触媒作用中の求核剤として働く。触媒システインは、通常適切な隣接残基と水素結合して、チオラートイオンが形成され得る。このプロテアーゼによって基質が認識されると、容易に切断可能なペプチド結合が触媒システインの近位に置かれ、この触媒システインがオキソアニオン中間体を形成するカルボニル炭素を攻撃する。次いでこのアミド結合が切断され、C末端ペプチドをアミンとして遊離する。この容易に切断されるペプチドのN末端部分は、共有結合性のアシル−酵素中間体に残り、これが引き続いて水によって切断されて酵素の再生をもたらす。基質のN末端切断生成物は、カルボン酸として遊離される。
【0005】
カスパーゼは、システイニルアスパルテート特異的プロテアーゼのファミリーである。ヒトゲノムは、11個のカスパーゼをコードしている。これらのうちの8個(カスパーゼ−2、3、6、7、8、9、10および14)が、アポトーシスまたはプログラム細胞死において機能する。これらは高度に調節されたシグナル伝達カスケードを通して進行する。階層順に、いくつかのイニシエーターカスパーゼ(カスパーゼ−2、8、9および10)は、エフェクターカスパーゼ(カスパーゼ−3、6および7)を切断し、活性化させる。これらのカスパーゼは癌、自己免疫疾患、変性障害および発作(strokes)に関与している。他の3つのカスパーゼ(カスパーゼ−1、4および5)は、別の機能(炎症性サイトカインのサブセットの活性化によって仲介される炎症)に作用する。
【0006】
カスパーゼ1またはインターロイキン−1β変換酵素(ICE)は、単核球性細胞中で最初に発見された。このプロテアーゼは炎症性サイトカインインターロイキン−1−βおよびインターロイキン−18の産生を担っている。カスパーゼ−1の阻害は、関節リウマチ、変形性関節症、炎症性腸疾患およびぜん息を含むヒトの炎症性疾患のモデルにおいて有益であることが示されている。
【0007】
カスパーゼ3は、細胞骨格タンパク質、キナーゼおよびDNA修復酵素を含む種々の基本的なタンパク質のタンパク質分解切断を担っている。これは、ニューロンにおけるアポトーシスの重要なメディエーターである。カスパーゼ3の阻害は、発作(stroke)、外傷性脳脊髄損傷、低酸素性脳障害、心虚血および再灌流傷害のようなモデルにおいて効果を示している。
【0008】
カスパーゼ−8は、アポトーシスイニシエーターカスパーゼであり、TNFスーパーファミリー死受容体の下流にある。その基質には、アポトーシス関連エフェクターカスパーゼおよびプロアポトーシスBcl−2ファミリーメンバーが含まれる。がんのアポトーシスに対する耐性は、カスパーゼ−8の発現レベルが低いことと関連付けられており、カスパーゼ−8の阻害は、化学療法および放射線のようなアポトーシス誘発ストレッサーに対する耐性を増加させる。従って、カスパーゼ8は、腫瘍および転移性病巣の治療のための魅力的な標的である。ノックアウト研究によって、さらにアポトーシスとは関連がない、カスパーゼ−8の他のいくつかの潜在的役割が明らかとなっている。例えば、カスパーゼ−8ノックアウトは、白血球の分化、増殖および免疫応答の欠損を示す。
【0009】
タンパク質分解酵素にとって、細胞生理学および細胞病理学における機能的な役割に影響するのは、単なる発現レベルというよりもこれらの活性である。従って、カスパーゼの活性を阻害する分子は、疾患の治療における治療剤として、およびタンパク質分解活性を可視化する特異的イメージングバイオマーカーの開発において有用であり、薬物候補物質によるそれらの阻害は標的バリデーション、薬物開発および臨床試験さえも促進する可能性がある(非特許文献1)。活性ベースのイメージング試薬を用いることで、特定のタンパク質またはタンパク質ファミリーを、複合タンパク質混合物中、インタクト細胞中、およびインビボにおいてさえも容易にモニターすることができる。さらに、酵素クラス特異的プローブは、機能研究に用いることのできる小分子阻害剤のスクリーニングを進展させるために使用することができる(非特許文献2)。
【0010】
従来、ペプチド基質を組み入れた活性ベースのイメージングプローブは、セルベースアッセイにおいてカスパーゼ−1(非特許文献3)またはカスパーゼ−3(非特許文献4)をモニターおよび標識するために開発されてきた。さらに近赤外の蛍光プローブは、生きている動物中のカスパーゼ−1活性を検出することが報告されている(非特許文献5)。
【0011】
カスパーゼによって用いられる酵素メカニズムは十分研究されてきており、高度に保存されている。切断可能なペプチドの研究およびスクリーニングデータから、求電子性基質アナログはこの保存された活性部位の文脈においてのみ反応するものが開発されている。このようなプローブの求電子性中心は、通常、「弾頭」(“warhead”)と呼ばれる部分であり、その求電子特性およびその幾何学的配置で最適化されて、カスパーゼの活性部位に完全に組み込まれ、ここで触媒システイン残基と反応する分子実体である。多種多様なこのような求電子基質は、機序ベースの(mechanism based)システインプロテアーゼインヒビターとして説明されており、例えばジアゾメチルケトン類、フルオロメチルケトン類、アシルオキシメチルケトン類、O−アシルヒドロキシルアミン類、ビニルスルホン類およびエポキシコハク酸誘導体が挙げられるが、これらに限定されない(非特許文献6)。
【0012】
プロテアーゼ活性をモニターするための別のツールは、生物発光アッセイにある。この方法は、プロテアーゼ基質に連結した、アミノ改変甲虫プロルシフェリン(beetlesn pro−luciferine)(ケージ化ルシフェリン)またはそのカルボキシ末端誘導体を利用する。最初のタンパク質分解切断によってルシフェリンが放出され、これは引き続いてルシフェラーゼによって変換され、発光シグナルとして検出可能である。この二次アッセイは蛍光プローブより類似のアプリケーションスペクトルを有し、高いシグナル対ノイズ比のさらなる利点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】H.Pien et al.Drug Discovery Today,2005,10,259−266
【非特許文献2】D.A.Jeffery,M.Bogyo Curr.Opp.Biotech.2003,14,87−95
【非特許文献3】W.Nishii et al.,FEBS Letters 2002,518,149−153
【非特許文献4】S.Mizukami et al.,FEBS Letters 1999,453,356−360
【非特許文献5】S.Messerli et al.,Neoplasia 2004,6,95−105
【非特許文献6】S.Verhelst,M.Bogyo QSAR Comb.Sci.2005,24,261−269
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
生物学的ツールとして有効であるためには、プロテアーゼインヒビターは非常に強力なだけでなく特定のプロテアーゼに対する結合において高度に選択的でなければならない。特定のプロテアーゼに対する小分子インヒビターの開発はしばしばペプチド基質から開始されてきた。ペプチドは多様な生物学的特性を示すが、それらの薬物としての使用は、それらの不安定性および低い経口バイオアベイラビリティにより損なわれる可能性がある。有効な薬物であるためには、低減されたペプチド様特性、非選択的なタンパク質分解に対する高い安定性、所定のプロテアーゼに対する高い選択性、およびプロテアーゼの作用位置(locus)への良好なバイオアベイラビリティを備えるプロテアーゼインヒビターが望ましい。これらの要求がカスパーゼインヒビターA−B(Aは求電子性弾頭Bに共有結合する化学的スカフォールド)の開発につながった。カスパーゼの存在下において、Bは触媒システイン(機序ベースのインヒビター)と共有結合的に反応する。多くの症例において、このようなインヒビターの選択性および薬物動態学特性は生物医学研究の文脈において首尾よく最適化された。触媒システインの有効な求核攻撃を可能にするためには、このようなインヒビターの求電子中心が酵素の活性部位内に精密に配向されなければならない。弾頭の求電子炭素原子に対する触媒システインの特定の配置は、容易に切断可能なペプチド基質の触媒システインとペプチドカルボニルの空間的配置に良好に対応している。本発明者らは、この比較によって、切断可能な基質中への最適化された共有結合性インヒビター(化学的スカフォールドAおよび求電子弾頭Bを備えている)の「再デザイン(redesign)」が可能であるだろうという考えにたどり着いた。この化学的スカフォールドAはインヒビター選択性の決定基として考えられ得るので、本発明者らのアプローチは最適化されたインヒビターの選択性または選択性の部分を活性ベースの化学プローブ中に移すことを可能にすると考えた。本発明者らは、このプロセスを選択的カスパーゼインヒビターからの選択的な活性ベースのプローブの「逆デザイン(reversed design)」と呼ぶ。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、式(I):
{L1−R1−L}n−A−CO−NH−R2−L2 (I)
のシステインプロテアーゼに対する分子プローブであって、式中、
Aは、カスパーゼによって認識可能な基であり;
R1は、リンカーであり;
R2は、結合またはリンカーであり;
Lは、結合またはL1基の容易な複合を可能にさせる基であり;
L1およびL2は、互いに独立して場合により固体支持体に結合した少なくとも1つの標識であり;かつ
nは、1であるか、
または
R2は、結合であり;
L2は、結合生物発光アッセイに適した基質であり;かつ
nは、0である、
分子プローブに関する。
【0016】
式(I)の化合物は、システインプロテアーゼ、好ましくはカスパーゼファミリー由来のシステインプロテアーゼに対する、活性ベースのプローブ(activity based probe)(基質)である。
【0017】
これらの最も基本的な形態では、この化学プローブは以下の4つの機能要素からなる:a)プロテアーゼの作用によって切断され得る、反応基としてのアミド基−CO−NH−、b)所定のプロテアーゼ標的に対する選択性を規定するスカフォールドA、c)互いにサブユニットを連結するリンカー部分R1およびR2、ならびにd)検出のための標識L1およびL2のセット。
【0018】
A基は、好ましくは所定のカスパーゼまたはカスパーゼのグループ、好ましくはカスパーゼ−1、3および8に向かう特異性のための主要な決定基である(例えば、表1、2および3の化合物1〜43に示される)。本発明の活性ベースのプローブは、ファクター1000〜1、好ましくはファクター10〜1の所定のカスパーゼに対する選択性を示し、ここで選択性は好ましい基質濃度における相対代謝回転数(酵素2の代謝回転数に対する酵素1の代謝回転数)によって定義される。この相対代謝回転数は、関心ある酵素(酵素1)の代謝回転数を、選択性が所望される別の酵素(酵素2)の代謝回転数で割ることによって各酵素対について計算される。インビボ適用のためには、高い選択性が低い(例えばマイクロモルまたはマイクロモル以下(サブミクロモル)の)基質濃度で望まれる。
【0019】
スキーム1は、基質を備えるプロテアーゼPの反応を示しており、Aは特異性決定基を表し、Pはチオール基S-を含むその反応性システインを持つプロテアーゼを表している:
【化1】

【0020】
この反応速度は基質の構造に依存する。
【0021】
リンカー基R1またはR2は、好ましくはそれぞれ標識L1またはL2に接続する可撓性リンカー(flexible linker)であるか、または複数の同一または異なる標識L2またはL1である。このリンカー基は、想定された用途の文脈、すなわち特定のプロテアーゼに対する活性ベースのイメージングプローブの文脈で選択される。リンカーはまた、適切な溶媒中の基質の溶解度を高めるものであってもよい。使用されるリンカーは、実際の適用条件下で化学的に安定である。リンカーは、選択したプロテアーゼ標的の反応に干渉しないだけでなく標識L1および/またはL2の検出とも干渉しないが、時間内にいくつかのポイントで切断されるように構築することができる。特に、リンカー基R1またはR2は、1〜300個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン基であり、ここで場合により
(a)1つまたはそれ以上の炭素原子が酸素で置き換えられ、特にここで第3炭素原子毎に酸素で置き換えられる(例えば、1〜100個のエチレンオキシ単位を有するポリエチレンオキシ基);および/または
(b)1つまたはそれ以上の炭素原子が水素原子を保持する窒素で置き換えられ、そしてその隣接炭素原子がオキソで置換されて、アミド基−NH−CO−を表している;および/または
(c)1つまたはそれ以上の炭素原子がエステル基−O−CO−で置き換えられる;
(d)2つの隣接炭素原子間の結合が二重結合または三重結合である;および/または
(e)2つの隣接炭素原子がジスルフィド結合で置き換えられる。
【0022】
基質の標識L1およびL2は、プローブの目的とする適用に応じて当業者によって選択され得る。
【0023】
標識L1およびL2は、互いに独立して発蛍光団;クエンチャーまたは発色団;磁気プローブ;造影剤(contrast reagent);パートナーに特異的に結合し得る特異的結合対の一方の部分である分子;酵素に対する基質である分子、ポリマー支持体に共有結合した分子、デンドリマー、ガラススライド、当業者に公知のマイクロタイタープレート;または上記の特性の任意の組み合わせを持つ分子、のような分光学的プローブである。
【0024】
本発明の好ましい実施形態は、レポーター基として改変されたアミノルシフェリンまたはカルボキシ末端保護されたその誘導体の使用であり、これらは中心スカフォールドAからの切断の際にルシフェラーゼによるその変換を通して発光シグナルを発生させることができる。従って、標識L2は、代替として結合生物発光アッセイに適し、レポーター基として改変されたアミノルシフェリンまたはカルボキシ末端保護されたその誘導体を特徴とする基質であってよい。
【0025】
US7148030は、改変されたアミノルシフェリンに結合するカスパーゼ基質としてペプチドを含む生物発光プロテアーゼアッセイの例を開示している。
【0026】
好ましいプローブは、ポリマーバックボーンおよびスカフォールドAを介してそのバックボーンに共有結合する複数の蛍光色素を蛍光の消光をもたらす密度(density)で含む内部消光蛍光プローブからなる。
【0027】
本発明の別の好ましい実施形態は、樹状高分子の使用であり、この高分子上では2つまたはそれ以上の発蛍光団は蛍光消光を引き起こす密度でスカフォールドAを介して共有結合されている。ポリマープローブの使用は、局在化したプローブの送達(ターゲッティング)、および動物またはヒトの血流中の循環時間を持続させる利点がある。ポリマー複合は、毒性の部位へのアクセスを減らし、腫瘍特異的ターゲッティング(浸透性と保持効果を増強する(EPR効果)ことによって)を可能にする低分子量物質の体内分布を変化させ、低分子量イメージングプローブを備えるポリマー複合体の組み合わせはマウス、ラットのような哺乳動物を含む多細胞生物の画像処理のための本発明の最も好ましい実施形態である。ポリマーバックボーンは、任意の生体適合性ポリマーからなることができ、ポリペプチド、多糖類、核酸または合成ポリマーを含んでもよい。本発明の範囲内で有用なポリマーの包括的概要は、M.J.Vincent et al.Trends Biotech.2006,24,39−47およびR.Duncan,Nature Reviews Cancer,2006,688−701で得ることができる。本発明の範囲内で有用なポリマーのさらなる記述はWO99/58161に開示されている。このポリマーまたは樹状プローブは、バックボーンに共有結合する保護鎖または樹状分子を含むこともできる。保護鎖としては、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコールおよびさらにはエチレングリコールのコポリマーが挙げられる。
【0028】
本発明のプローブは、抗体、抗体フラグメント、受容体結合リガンド、ペプチドフラグメントまたは合成タンパク質インヒビターのような標的化部分をさらに含むこともできる。
【0029】
標識L1およびL2は、さらにプラスに帯電した直鎖または分枝鎖のポリマーであってもよい。該ポリマーは生存細胞の原形質膜上の結合分子の移動を容易にすることが当業者に知られている。これは、特に好ましい物質であり、これは他に細胞膜浸透性が低いかまたは生存細胞の細胞膜に対して結局不浸透性である。細胞不浸透性化学プローブ(non cell permeable chemical probe)は、L1基またはL2基などへの結合の際に細胞膜浸透性となる。このような細胞膜透過エンハンサー基L1およびL2は、例えば6〜15個のアルギニン残基を持つD−および/またはL−アルギニンである直鎖状ポリ(アルギニン)、6〜15個のサブユニットのそれぞれがグアニジウム基を保持する直鎖ポリマー、6〜50個までのサブユニットのオリゴマーまたは短鎖ポリマー、結合グアニジウム基を持つ部分、および/またはHIV−tatタンパク質の配列の一部(例えば、サブユニットTat49−Tat57(一文字アミノ酸表記でRKKRRQRRR)を含む。6〜15個のアルギニン残基を持つD−および/またはL−アルギニンである直鎖状ポリ(アルギニン)は、FRETペアのように2つの相互作用分光プローブL1/L2の一方の膜がL1であり、他方の膜がL2である場合にポリマー標識として好ましく利用される。
【0030】
標識L1および/またはL2として最も好ましいのは分光プローブである。標識L2として最も好ましいのは、L1との分光干渉対の一部に相当する分子であり、さらには固体支持体に共有結合するパートナーおよび分子に特異的に結合し得る標識である。
【0031】
特に好ましいのは、2つの相互作用分光プローブL1/L2の一方の膜がL1であり他方の膜がL2であるような標識であり、この標識では、動的消光または静的消光のいずれかを通してエネルギーがドナーとアクセプター(クエンチャー)との間を非放射的に移動することができる。このような標識L1/L2のペアは、対応するカスパーゼプロテアーゼによる反応/切断の際にその分光特性を変化させる。このような標識L1/L2のペアの例は、FRET(Foerster resonance energy transfer)ペアであり、例えば片方の末端(例えばL1)でドナー(レポーター)と、そして別の位置(L2)でアクセプター(クエンチャー)と共有結合的に標識されるプロ蛍光プローブである(逆もまた同様)。
【0032】
具体的には、L1がドナー(レポーター)でありL2がアクセプター(クエンチャー)であるか、またはL1がクエンチャーでありL2がレポーターである。このプローブの使用では、システインプロテアーゼとこのプローブとの反応が蛍光を変化させることになる。二重に標識された基質内のレポーターとクエンチャーとの距離がプロテアーゼと反応すると変化し、蛍光の出現または発光波長の変化を引き起こすレポーターとクエンチャーの空間的分離をもたらす。広域に選択されるレポーター基を、それぞれ標識L1またはL2として使用することができ、例えば近赤外放射発蛍光団を含む。レポーターおよびクエンチャーを含む基質は、プロテアーゼと反応するまでは暗いままであり、反応するとすぐ、このレポーター標識とクエンチャー標識が空間的に分離するので、反応混合物が発蛍光団発光のスイッチをオンにして「点灯(lit up)」される。蛍光消光とエネルギー移動は、2つの標識、消光されているかまたはエネルギードナーの標識のうちの1つのみの発光によって測定することができる。エネルギー移動が生じ、そのエネルギー受容標識も蛍光性である場合、アクセプター標識の蛍光も測定することができる。これらの2つの相互作用標識のうちのドナー標識は、励起ランプを必要とせず、アクセプターのバックグラウンド蛍光を低減させた化学発光ドナープローブから選択することができる。このような二重標識基質を用いた前記特定の方法は、蛍光時間測定をベースにした反応動力学を測定するために有用であり、インビボと同様にインビトロでも適用することができる。
【0033】
あるいは、標識L2は、固体支持体であるか、または固体支持体にさらに結合しているか、またはポリマー/固体支持体に結合しているかまたは結合可能であり得る。6〜15個のアルギニン残基を持つD−および/またはL−アルギニンである直鎖状ポリ(アルギニン)は、L1/L2FRETペアのためのポリマー標識として好適に利用される。
【0034】
特に好ましい組み合わせは、異なる親和性を持つ2つの標識であり、特に分光学的に相互作用する標識L1/L2のペア(例えばFRETペア)である。親和性標識は、パートナーに特異的に結合し得る特異的結合対の一部の分子として定義される。考えられる特異的結合対は、ビオチンとアビジンまたはストレプトアビジンさらには酵素ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の強結合阻害剤であるメトトレキセートである。
【0035】
適切なレポーターとクエンチャーとのペアは、当業者によって選択され得る。典型的には、レポーターとクエンチャーは、例えばレポーターとしてフルオレセイン、クエンチャーとしてローダミンのような大きくスペクトルが重複する蛍光色素である。他のクエンチャーは、金クラスタおよび金属クリプテートである。
【0036】
本発明において使用される第二の部類のクエンチャーは、「ダーククエンチャー」すなわち、最大のFRET消光をもたらす通常のレポーター色素の放射スペクトルとオーバーラップする吸収スペクトルをもつ自然蛍光のない色素である。さらなる色素ペアは、それらの吸収バンドが基底状態の複合体(安定消光)内で共鳴双極子−双極子相互作用メカニズムを促進するようにオーバーラップするように選択することができる。
【0037】
考慮した特定の発蛍光団およびクエンチャーとしては、以下である:Alexa色素(例えば、Alexa350、Alexa488、Alexa532、Alexa546、Alexa555、Alexa635およびAlexa647)(US5696157、US6130101、US6716979);ジメチルアミノクマリン(例えば、7−ジメチルアミノクマリン−4−酢酸スクシンイミジルエステル(Inbitrogenより製品D374として供給されている、CA 92008、USA);クエンチャーQSY35、QSY9およびQSY21(Invitrogen、CA 92008、USA);シアニン−3(Cy3)、シアニン5(Cy5)およびシアニン5.5(Cy5.5)(Amersham−GE Healthcare、Solingen、Germany);BHQ−1、BHQ−2およびBHQ−3(Black Hole QuencherTM of Biosearch Technologies、Inc.、Novato、CA 94949、USA);発蛍光団ATTO488、ATTO532、ATTO600およびATTO655ならびにクエンチャーATTO540QおよびATTO612Q(Atto−Tec、D57076 Siegen、Germany);発蛍光団DY−505、DY−547、DY−632およびDY−647(Dyomics、Jena、Germany);5/6−カルボキシフルオレセイン、テトラメチルローダミン、4−ジメチルアミノアゾベンゼン−4’−スルホニル誘導体(Dabsyl)および4−ジメチルアミノアゾベンゼン−4’−カルボニル誘導体(Dabcyl)。これらは、以下の組み合わせで好都合に組み合わせることができる:
【0038】
【表1】

【0039】
酵素学的な事象に関連づけられる生物発光アッセイは、瞬時の触媒作用に結び付けられる光を出す。この方法は、結果としてカスパーゼによって認識され、続いて切断される基質となる、中心スカフォールドAにアミド結合を介して連結されるアミノルシフェリンのアミノ基であったアミノ改変甲虫類アミノルシフェリンまたはカルボキシ末端保護されたこれらの誘導体を含む。カスパーゼの酵素活性は、アミノルシフェリンをスカフォールドAに繋ぐペプチド結合を切断してルシフェラーゼに対する基質であるアミノルシフェリンを遊離させる。ルシフェラーゼとその基質との以下の反応によって検出可能なシグナル(発光)が生じる。従ってこの方法はカスパーゼ活性と読み出しシグナルとして発光を生じる第2の酵素反応を関連付ける。このタイプのアッセイは、先立つ酵素的事象(例えばタンパク質分解切断)によってルシフェリンに変換される場合に限り基質としてルシフェラーゼに認識される「プロルシフェリン」(「ケージ化ルシフェリン」)の開発を必要とする。この方法において、発光シグナルは先の酵素事象に直接的に依存する。従って本発明のさらなる実施形態は、発光手段によってカスパーゼのタンパク質分解活性を検出するためのプローブを提供することである。
【0040】
特定の実施形態において、本方法は、L2が固体支持体であるか、またはレポーター/クエンチャーペアの1要素をさらに保持する固体支持体に結合されている基質か、またはL2が固体支持体とレポーター/クエンチャーペアの1要素との組み合わせであり、L1がこのペアの他の要素である、基質を必要とする。この方法において、暗固体支持体は、適切なプロテアーゼによる反応によって蛍光性となる。
【0041】
固体支持体はガラススライド、マイクロタイタープレートまたは当業者に公知の任意のポリマー(例えば機能化ポリマー(好ましくはビーズ形態)、化学修飾された酸化表面(oxidic surface)(例えば二酸化ケイ素、五酸化タンタル、または二酸化チタン)、あるいは化学修飾された金属表面(例えば金または銀表面のような貴金属表面)であり得る。固体支持体はまた、適切なセンサー部品であってもよい。
【0042】
好ましくは、式(I)の化合物はカスパーゼ−1のインヒビターであるA基を含む。カスパーゼ−1阻害活性を有するスカフォールドAの製造は、例えば以下に記載されている:US5670494;WO9526958;WO9722619;WO9816504;WO0190063;WO03106460;WO03104231;WO03103677;W.G.Harter,Bioorg.Med.Chem.Lett.2004,14,809−812;Shahripour et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.2001,11,2779−2782;Shahripour et al.,Bioorg.Med.Chem.2002,10,31−40;M.C.Laufersweiler et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.2005,15,4322−4326;K.T.Chapman,Bioorg.Med.Chem.Lett.1992,2,613−618;Dolle et al.,J.Med.Chem.1997,40,1941−1946;D.L.Soper et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.2006,16,4233−4236;D.L.Soper et al.,Bioorg.Med.Chem.2006,14,7880−7892;D.J.Lauffer et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.2002,12,1225−1227;およびC.D.Ellis et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.2006,16,4728−4732。より好ましくは、式(I)の化合物が以下の好ましいスカフォールドAを含む化合物によって特徴づけられるカスパーゼ−1に対するプローブ(表1)であることである。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【0048】
【表7】

【0049】
【表8】

【0050】
【表9】

【0051】
【表10】

【0052】
【表11】

【0053】
表中、1〜28の基における変数は、それぞれの化合物の次の定義で示されるように定義される:Xは、−CONH−R2−L2;Yは、−L−R1−L1;そしてR1、R2、L、L1およびL2は上記のとおりである。
【0054】
さらに好ましくは、式(I)の化合物は、カスパーゼ−3のインヒビターであるA基を含む。このカスパーゼ−3阻害活性をもつスカフォールドAの製造は、例えば以下に記載されている:WO0032620;WO0055127;WO0105772;WO03024955;WO2008/008264;P.Tawa et al.,Cell Death and Differentiation 2004,11,439−447;Micale et al.,J.Med.Chem.2004,47,6455−6458;およびBerger et al.,Molecular Cell,2006,23,509−521。より好ましくは、式(I)の化合物は以下の好ましいスカフォールドAを含む化合物によって特徴づけられるカスパーゼ−3に対するプローブ(表2)である。
【0055】
【表12】

【0056】
【表13】

【0057】
【表14】

【0058】
【表15】

【0059】
【表16】

【0060】
【表17】

【0061】
【表18】

【0062】
表中、29〜42における変数は、それぞれの化合物の次の定義に示されるように定義される;Xは、−CONH−R2−L2;Yは、−L−R1−L1;そしてR1、R2、L、L1およびL2は、上記のとおりである。
【0063】
さらに好ましくは、式(I)の化合物は、カスパーゼ−8のインヒビターであるA基を含む。カスパーゼ−8阻害活性を有するスカフォールドAの製造は、例えば以下に記載される:Berger et al.,Molecular Cell,2006,23,509−521;およびGarcia−Calvo,J.Biol.Chem.1998,273(49),32608−32613。より好ましくは、式(I)の化合物は、以下の好ましいスカフォールドAを含む化合物によって特徴づけられるカスパーゼ−8に対するプローブ(表3)である。
【0064】
【表19】

【0065】
式中、Xは、−CONH−R2−L2;Yは、−L−R1−L1;そしてR1、R2、L、L1およびL2は、上記のとおりである。
【0066】
他に述べない限り以下の定義が当てはまる:
アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖を意味する。(C1−C6)アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、ブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、ペンチルおよびヘキシルである。
【0067】
アシルは、−C(=O)アルキル基と定義される。
【0068】
アリールは、6〜10個の炭素原子を有する芳香族炭化水素として定義される。アリール基の例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0069】
ヘテロアリールは、アリール基のとおりに定義され、その芳香族炭化水素の1つまたはそれ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されており、用語「ヘテロ原子」には、酸素、窒素、硫黄およびリンが含まれる。ヘテロアリール基の例としては、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピロール、チアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ベンゾフラン、インドール、クマリン、キノリン、イソキノリン、およびナフチリジンが挙げられる。
【0070】
シクロアルキルは、3〜10個の炭素原子を有する環状アルキル基を意味する。シクロアルキル基の例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンが挙げられる。
【0071】
複素環またはヘテロシクリルは、1つまたはそれ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されているシクロアルキル基を意味する。複素環の例としては、ピペラジン、モルホリンおよびピリジンが挙げられる。
【0072】
このアリール、ヘテロアリール、またはシクロアルキル基は、同一であるかまたは異なっていてもよい1つまたはそれ以上の置換基で置換されていてもよい。適切な置換基の例としては、以下が挙げられる:アルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、NO2、CN、CO2H、CO2アルキル、SO3H、CHO、C(=O)アルキル、CONH2、CONH−アルキル、CONHRq、C(=O)N(アルキル)2、(CH2nNH2、OH、CF3、O(C1−C6)アルキル、(CH2nNH−アルキル、NHRq、NHCORq、フェニル、ここで、nは1〜5であり、Rqは水素または(C1−C6)アルキルである。
【0073】
本発明の活性ベースのプローブは、中心スカフォールドAを作り上げ、リンカーと標識L1またはL2のいずれかをL基および−C(O)−NH−基を介してこのユニットに結合させるように当該分野で公知の適切な保護基の化学的性質を用いて合成することができる。適切なビルディングブロックならびにシアニン色素(例えばCy3B、Cy5.5、Cy7)のようなFRETペアは市販されている(例えばSigma−Aldrich,GE−Healthcare)。本発明に記載されるプローブのサブセットについて固相合成法は特に有用である(B.J.Merrifield,Methods in Enzymology 1997,289,3−13)。合成の必要条件によってリンカー、クエンチャーまたは発蛍光団の結合は固体支持体上または液相の化学的性質によってなされ得る。
【0074】
一般に、中心スカフォールドAの反応性の側鎖残基および必要に応じてL基は、保護され、それぞれサブユニットL1R1およびL2R2でのさらなる変更のために順番に遊離される。これらのサブユニットの接合は、既知の化学合成法によって達成することができる。特に有用なのは、アミド結合を介して両方のユニットを接続する色素活性エステルとスカフォールドAの1級アミン基間の反応である。中間体だけでなく最終プローブ分子も、標識化および画像処理試験に使用する前に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製し、質量分析器および分析用HPLCで特性付けることができる。
【0075】
本発明は、いくつか挙げるが非限定的な実施例によって以下の段落に例示される:
好ましい実施形態において、式(I)のプローブはテトラペプチドカスパーゼ−1インヒビター(表1、化合物2)から誘導され、C末端側およびN末端側に発色団を持つスカフォールドAを含む。適切な発色団はそれらのスペクトル特性が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に適切であるということで選択される。発色団は、蛍光性でも非蛍光性でもよい。原則として、ペプチド結合のタンパク質分解切断後のスペクトル変化という中心的な必要条件が満たされる限り多種多様な発色団を本発明で使用してもよい。このような相互作用する発色団と中心スカフォールドとの結合は、必要に応じてリンカーユニットを介してなされる。
【0076】
好ましくは、この発蛍光団はキサンテン色素またはシアニン色素の群から選択される。より好ましくは、カルバシアニン、チアシアニン、オキサシアニンおよびアザシアニンの群由来のシアニン色素である。本発明の内容で使用するのに適切なシアニン色素は、US5268468およびUS5627027に開示されている。これらは、以下の商標(Amersham,GE Healthcare)の色素である:Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7およびCy7.5。
【0077】
好ましくは、このクエンチャーユニットは非蛍光発色団であり、以下が含まれる:2,4−ジニトロフェニル、4−(4−ジメチルアミノフェニル)アゾ安息香酸(DABCYL)、7−メトキシ−クマリン−4−イル)アセチルおよびWO9964519に記載されるような非蛍光性シアニン色素。
【0078】
好ましい実施形態において、クエンチャーは有意な発光を示さず、より好ましくは非蛍光性の発色団である。この実施形態において、イメージング試薬は、発蛍光団および非蛍光性(ダーク)アクセプター発色団を含む。
【0079】
より好ましいのは、テトラペプチドスカフォールドをベースにした式(I)のプローブ(表1、化合物2)であり、N末端側にQSY21−クエンチャーを、そしてC末端にCY5.5発蛍光団を保持している(スキーム2):
【化2】

【0080】
さらに好ましい実施形態は、N末端側にダーククエンチャーBHQ3を、そしてC末端にCy7発蛍光団を保持している同じスカフォールドを含む(スキーム3):
【化3】

【0081】
好ましい実施形態において、フルオレセインおよびテトラメチルローダミンは、相互作用するFRETペアのように選択され、このテトラメチルローダミンは、(スキーム4)に示されるようにこのスカフォールドのN末端に配置されるのに対し、フルオレセインはC末端側に連結される:
【化4】

【0082】
さらに好ましい実施形態において、FRETペアのひとつの相互作用パートナーは、ナノ粒子を含む。本発明の内容においてより好ましいのは、CdSeナノ粒子(例えばQuantum−dots)、ランタニドイオン処理酸化物ナノ粒子(例えばY0.6Eu0.4VO4)および鉄酸化物ナノ粒子(例えばVisEn Medical,Inc.,MA 01801,USAより販売されているアミノSPARK680およびアミノSPARK750)である。このようなナノ粒子がFRETペアのドナーのように使用される場合、これらはアクセプターの吸収よりもより短い波長で励起し、直接的なアクセプターの励起を最小化させる。さらに、この狭域のドナー発光は、受容体発光と重複してよい。さらに、このようなナノ粒子は、速い光脱色を起こす有機色素よりもより安定であることが分かった。化学結合のために活性化された量子ドットは市販されており(Invitrogen,CA92008,USA)これらの発光波長は、種々の製品から選択することができる。
【0083】
スキーム5および6は、カスパーゼ−1に特異的な式(I)の量子ドットに基づくプローブを示す。従って式(I)のさらに好ましいプローブにおいて、この量子ドット(例えばInvitrogen,CA92008,USAより販売されているQD605)は、適切なリンカーによってカスパーゼ−1プローブのN末端側(スキーム5)またはカスパーゼ−1プローブのC末端側(スキーム6)のいずれかに配置され得る。
【0084】
【化5】

【0085】
【化6】

【0086】
この量子ドットは、黒丸で表わされ、適切なアクセプター分子はシアニン色素CY7によって示される。
【0087】
さらに好ましい実施形態において、式(I)のプローブ中の量子ドットは、タンパク質分解サブユニットによって金ナノ粒子に結合される(スキーム7):
【化7】

【0088】
量子ドットおよび金ナノ粒子は、黒丸で表わされる。
【0089】
金ナノ粒子(AuNPs)は、量子ドットのためだけではなく有機蛍光色素のための有効なクエンチャーとして示されている。AuNPsと組み合わせての量子ドットの応用は、例えばWO2006126570に開示されている。
【0090】
さらに好ましい実施形態において、式(I)のプローブは、マルチFRET系で構成されており、2つの特異的プロテアーゼプローブが互いに共有結合している(スキーム8):
【化8】

【0091】
この配置では、単波長で励起させ、独特なFRETサインとして異なる放射比を使用することができる(K.E Sapsford et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2006,45,4562−4588)。このプローブは、1つの分子中に、カスパーゼ−1に対するスカフォールドとカスパーゼ−3に対するスカフォールドの2つの特異性を合わせている。
【0092】
さらに好ましい実施形態において、式(I)のプローブは、長い循環時間を持ち、腫瘤を多く蓄積し、酵素の活性化後に近赤外スペクトルの蛍光となる消光された蛍光マーカーを含むように設計される。これらのプローブは、合成グラフトコポリマーである[部分的にメトキシポリ(エチレングリコール)改変されたポリ−L−リジン]をベースにしており、このプローブ上でマルチプルNIR蛍光色素は遊離ポリリジン残基に結合される。これらの高分子の蛍光は、高密度に近接するNIR発色団によって内部消光されることで、非常に低減される。
【0093】
実施例のように、スキーム9はポリマーをベースにしたカスパーゼ−1プローブを示しており、D−および/またはL−リジンのポリリジンスカフォールドへのAの結合は、C末端側でリンカーにより達成されるが、NIR発色団のCy5.5は、N末端側でリンカーにより結合される:
【化9】

【0094】
逆のシチュエーションはスキーム10に示され、D−および/またはL−リジンのポリリジンスカフォールドへのAの結合はN末端側でリンカーにより達成される一方、NIR発色団のCy5.5は、C末端側でリンカーにより結合される:
【化10】

【0095】
さらに好ましい実施形態に置いて、式(I)のプローブは均質酵素結合発光アッセイに使用されるように設計される。以下のスキームは、上述の作用メカニズムを包括的に示している。ルシフェリンは、ルシフェラーゼに対する基質であり、発光シグナルは第2の酵素反応によって生成される:
【化11】

【0096】
以下のスキームは、上述の作用メカニズムを示しており、ルシフェリンはピリダジノジアゼピン誘導体でマスクされ、前述のカスパーゼ−1のタンパク質分解活性によって遊離される:
【化12】

【0097】
本発明は、さらにインビトロアッセイ、細胞内、または多細胞生物内においてある個々のタンパク質分解酵素またはタンパク質分解酵素のグループ(例えば、あるカスパーゼまたはいくつかのカスパーゼ)の触媒活性を観察するための分子プローブの設計方法に関し、個々のタンパク質分解酵素またはタンパク質分解酵素のグループのインヒビターを、これらの個々のタンパク質分解酵素またはタンパク質分解酵素のグループ(好ましくはカスパーゼ酵素)に対する選択的イメージングプローブ中にトランスフォーミングすることによって特徴づけられる。これを達成するために、本発明者らは特定の既知のカスパーゼインヒビターの求電子基を容易に切断できるアミド結合と置き換えた。好ましい化合物は、特定の標的の酵素活性(例えばタンパク質分解活性)によって検出可能なシグナルを発生する方法で合成される。特に好ましいプローブは、(i)切断されやすい結合のN末端部分の特異的決定基A、および(ii)切断されやすい結合のC末端部分の特異的決定基Aに連結される内部消光発蛍光団(例えば、適切なFRETペア)を含む。本発明によって、既知のインヒビターの望ましく事前に最適化された特性の要素を、新規の活性ベースのプローブ中に移動することができる。
【0098】
先行技術に記載されるカスパーゼインヒビターは、P1位の求電子弾頭を利用する。本発明の活性ベースのプローブは、前述の既知のスカフォールドを使用して、まずは求電子弾頭を切断されやすいアミド基に変換し、次にその切断されやすいアミド結合の両サイドに相互作用する標識ペアまたは適切なモジュレーターを配置するという2つの変更を導入する。
【0099】
インビトロでは本発明の基質でのプロテアーゼの反応は一般的には細胞抽出物中で行われるかまたは精製されるかもしくは濃縮されたプロテアーゼを用いてのいずれかで行われる。インビボでの用途については、好ましいレポーターは近赤外(NIR)領域のエミッターである。なぜならこの領域は相互干渉する生体蛍光が存在しないからである。これらの要求を満たす既知のシアニンNIR色素は、本発明の基質中に好適に導入される。
【0100】
式(I)の化合物の分子構築は、アミド官能基を保持する中心スカフォールドAならびに2つのサブユニットL1R1およびL2R2で構成される。L2R2は、アミド基がカスパーゼ酵素によって切断可能であるので、式(I)に示されるようにこのアミド基を介してスカフォールドAに常に結合されている。スカフォールドAへのサブユニットL1R1の結合に適切な官能基は当業者によって選択され得、例は以下に示される。前駆化合物中の特定の官能基L’は、式(I)の化合物内のL基を得るために適切なL1R1サブユニットの結合用のスカフォールドA上に配置され得、合成ストラテジーおよび活性に基づいたイメージング試薬としてのこのような基質の最終的な使用の必要条件によってのみ限定される。従ってこれらの選択は所望の基質を構築するように選択される特定の試薬に依存する。AをサブユニットL1R1と接続するためにスカフォールドA上に与えられる官能基L’の例としては、フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、ニトロ、アミノ、アジド、アルキルカルボニルアミノ、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバルデヒド、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合などが挙げられる。最も好ましい例としては、アミノ、アジド、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、カルバモイル、カルバルデヒド、または炭素−炭素二重結合もしくは炭素−炭素三重結合が挙げられる。従ってLは、好ましくは直接結合または以下から選択される基である:
【化13】

−(NRx)−、−O−、−C=N−、−C(=O)−、−C(=O)−NH−、−NH−C(=O)−、−C(=O)H、−CRx=CRy−、−C≡C−およびフェニル(式中、RxおよびRyは、独立してHまたは(C1−C6)アルキルである)。
【0101】
特に、式(I)の化合物の好ましい合成は、直交保護官能基を利用する。このような保護基の選択によって、別々の脱保護か可能となり、順番に放出される各官能性がスカフォールドAに対応するサブユニットの結合に対してさらに化学的に操作される。想定された官能性に対する適切な保護基は、当業者によって選択され得、例えばT.W.Greene and P.G.M.Wuts in “Protective Groups in Organic Synthesis”,John Wiley & Sons,New York 1991に要約されている。
【0102】
式L’−A−CO−OH(スカフォールド)の化合物は、例えば、以下の国際出願に記載されるような当該分野で公知の標準的な方法によって製造することができる:US5670494;WO9526958;WO9722619;WO9816504;WO0032620;WO0055127;WO0105772;WO0190063;WO03024955;WO03106460;WO03104231;WO03103677;W.G.Harter,Bioorg.Med.Chem.Lett.2004,14,809−812;Shahripour et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.2001,11,2779−2782;Shahripour et al.,Bioorg.Med.Chem.2002,10,31−40;M.C.Laufersweiler et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.2005,15,4322−4326;K.T.Chapman,Bioorg.Med.Chem.Lett.1992,2,613−618;Dolle et al.,J.Med.Chem.1997,40,1941−1946;D.L.Soper et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.2006,16,4233−4236;D.L.Soper et al.,Bioorg.Med.Chem.2006,14,7880−7892;D.J.Lauffer et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.2002,12,1225−1227;C.D.Ellis et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.2006,16,4728−4732;P.Tawa et al.,Cell Death and Differentiation 2004,11,439−447;Micale et al.,J.Med.Chem.2004,47,6455−6458;Berger et al.,Molecular Cell,2006,23,509−521;およびGarcia−Calvo,J.Biol.Chem.1998,273(49),32608−32613。
【0103】
本発明はまた、式(I)の化合物を製造する方法であって:
nが1である場合:
(a)式(II)
L’−A−CO−OH (II)
(式中、Aの一般的かつ好ましい意味は上記に定義されるとおりであり、L’は、フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、ニトロ、アミノ、アジド、アルキルカルボニルアミノ、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバルデヒド、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、好ましくはアミノ、アジド、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、カルバモイル、カルバルデヒド、または炭素‐炭素二重結合もしくは炭素−炭素三重結合、より好ましくはアミノである)、
の化合物を、式L1−R1−H(式中、L1の一般的かつ好ましい意味は上記に定義されるとおりである)の化合物と、当業者に公知の条件下で反応させて式(III)
L1−R1−L−A−CO−OH (III)
の化合物とし、
(b)この化合物(III)を化合物H2N−R2−L2と反応させて式(I)の化合物とする、
ことを特徴とする、方法。
【0104】
必要に応じて、式(I)の化合物の合成は、オルトゴナルに(orthogonally)保護する基を利用する。このような保護基の選択によって別々の脱保護が可能となり、順番に放出されたそれぞれの官能性は標識をそれに結合させるかまたはリンカーR1および/もしくはR2のさらなる伸長の導入のためかのいずれかで化学的にさらに操作され得る。想定される官能性のための適切な保護基は当業者によって選択され得、例えばT.W.Greene and P.G.M.Wuts in “Protective Groups in Organic Synthesis”,John Wiley & Sons,New York 1991に要約されている。
【0105】
nが1である式(I)のプローブのさらなる製造方法は、
(a1)式(II)の化合物を、当業者に公知の条件下で式(IV)
2N−L2−PG2 (IV)
の化合物と反応させて式(V)
L’−A−CO−NH−R2−PG2 (V)
の化合物とする工程、
(b)その後化合物(V)を、それぞれの基に対して当業者に公知の条件下で化合物(VI)
PG1−R1−L’’ (VI)
と反応させて化合物
PG1−R1−L−A−CO−NH−R2−PG2 (VI)
(式中、PG1およびPG2は、互いに独立した保護基、好ましくはオルトゴナルに保護する基であり、L’’は、当業者によって選択され得るL’に対するそれぞれの接続基または結合である)
とする工程、
(c1)化合物(VI)のPG2基を切断し、得られた化合物を標識L2と反応させ、引き続いて保護基PG1を切断し、得られた化合物を標識L1と反応させて式(I)の化合物とする工程、あるいは
(c2)化合物(VI)のPG1基を切断し、得られた化合物を標識L1と反応させ、引き続いて保護基PG2を切断して得られた化合物を標識L2と反応させて式(I)の化合物とする工程、
を包含する。
【0106】
工程(b)において、L’とL’’および反応タイプ(括弧内)の好ましい組み合わせは以下のとおりである:
L’がフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードである場合、L’’はアミノ(R−NH2)、ヒドロキシ(R−OH)、三重結合(Sonogashira反応)、二重結合(Heck反応)、アルキルボラン(Suzuki反応);
L’がシアノである場合、L’’はアミノ(R−NH2)、ヒドロキシ(R−OH)、チオール(R−SH);
L’がアミノである場合、L’’は活性化カルボン酸(NHS−エステル、・・・)、カルバルデヒド、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード;
L’がアジドである場合、L’’は三重結合、ホスフィン部分(Staudinger ligation);
L’がカルボキシである場合、L’’はアミノ、ヒドロキシル、ヒドラジド;
L’がアルコキシカルボニルである場合、L’’はアミノ、ヒドロキシル、ヒドラジド;
L’がアリールオキシカルボニルである場合、L’’はアミノ、ヒドロキシル、ヒドラジド;
L’がヒドロキシである場合、L’’はフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシ(Mitsunobu反応)、カルボキシ;
L’がカルバルデヒドである場合、L’’はアミノ、ヒドラジン;
L’が炭素−炭素二重結合である場合、L’’は、ブロモ、クロロ、ヨード(Heck反応)、アルキルボラン(Suzuki反応);
L’が炭素−炭素三重結合である場合、L’’はブロモ、クロロ、ヨード(Sonogashira反応)、アジド。
【0107】
nが0である式(I)の化合物は、式A−CO−OH(IV)の化合物を化合物H2N−R2−L2と反応させて式(I)のプローブとすることにより製造することができる。
【0108】
異なる標識で機能的にされた好ましいシステインプロテアーゼ基質は、固体支持体上で合成される。
【0109】
式(I)のカスパーゼプローブとペプチド模倣構造の非ペプチドビルディングブロックとの合成については、固相合成を利用してもよい。ビルディングブロックの合成については実施例8にさらに記載する。
【0110】
ビルディングブロック(VII)は、カスパーゼ−1プローブ(例えば、実施例1および2の化合物)の合成のために好適に使用される。
【化14】

【0111】
本発明のプローブは、カスパーゼ−1、カスパーゼ−3、またはカスパーゼ−8に対して好ましいプローブである。
【0112】
本発明のプローブは、スクリーニングおよび全身の動物のイメージングを含む、インビトロ、細胞内培養実験、エキソビボ実験または生体内(インビボ)での分子イメージングする状況で使用される。最も好ましくは光学イメージングおよび磁気共鳴イメージング(MRI)のようなイメージング様式である。
【0113】
本発明のプローブは、プロテアーゼ活性の画像診断に使用することを目的とする。最も好ましくは、標的化されたプロテアーゼに対する薬物または薬物様物質の効果をモニタリングする方法を提供するという用途である。このような薬物または薬物様物質の投与は、本発明のプローブからのシグナルに対して測定可能な効果を有していなければならない。
【0114】
本発明のプローブのさらに最も好ましい局面は、外科的ガイダンスでのイメージング試薬として、および内科療法の効果をモニターするためのそれらの使用である。外科的ガイダンスとしては、腫瘍縁の検出および腫瘍転位の進行の検出が挙げられる。
【0115】
従って、本発明のさらなる局面は、生きる有機体のイメージング方法であり、以下の工程を包含する:
(a)前述の生物に式(I)のプローブを投与する工程
(b)その生物を、非消光発蛍光団を励起させる電磁放射線に曝露させ、検出可能なシグナルを発生させる工程、および
(c)そのシグナルを検出し、それにより画像を作出する工程。
【0116】
あるいは、生きる有機体のイメージング方法であり、以下の工程を包含する:
(a)前述の生物に式(I)のプローブを投与する工程
(b)その生物を、発蛍光団を励起させる電磁放射線に曝露させ、検出可能なシグナルを発生させる工程、および
(c)そのシグナルを検出し、それにより画像を作出する工程。
【0117】
「生体」とは、検出されるべきシステインプロテアーゼを含むいかなる生きる細胞または生物体全体であってよく、好ましくは、その生きる有機体は哺乳動物(例えば、マウスまたはラット)である。
【0118】
本発明のプローブは高度に選択的であり、そのため偽陽性のリスクを避けることができる。
【0119】
略語:
DMF = ジメチルホルムアミド
DMSO = ジメチルスルホキシド
DCM = ジクロロメタン
equiv.= 当量
sat.= 飽和
THF = テトラヒドロフラン
DIPEA = ジイソプロピルエチルアミン
HOAt = 1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
HATU = O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
NHS = N−ヒドロキシスクシンイミジンエステル
【0120】
固相ペプチド合成の一般的手順:
以下のプローブを標準的な固相ペプチド合成を用いて合成した。2−クロロトリチル樹脂を固体支持体として使用した。樹脂の充填のために2当量のFmoc保護アミノ酸および3当量のDIPEAをDCM中に溶解し、反応混合物をその樹脂に加えた(充填:1.4mmol/g)。この反応混合物を室温で一晩振とうした。この樹脂をDMCおよびDMFで洗浄した。Fmoc脱保護のためにこの樹脂を2度、30%のピペリジン/DMF溶液で15分間処理した。固相ペプチド合成のために標準的なプロトコルを使用した:4当量のFmoc保護アミノ酸、4当量のHATU、4当量のHOAtおよび8当量のDIPEAをDCM/DMF(1/1)の混合物に溶解した。この反応混合物を室温で20分間攪拌し、次いで樹脂に加えた。F−moc保護アミノ酸が立体的に妨げられている場合、この反応混合物を2時間またはそれ以上振盪した。固相から切断するために、樹脂をDCMに溶解した5%TFAで15分間、2度処理した。溶媒を減圧下でトルエンと共蒸発(coevaporate)させ、最終生成物を分取HPLCによって精製した(Gradient:H2O+0.05% TFA;5〜95% CH3CN)。
【実施例】
【0121】
実施例1: カスパーゼ−1プローブ
【化15】

この化合物を一般的な手順に従い固体支持体上で製造し、HPLCで精製した(H2O+0.05% TFA;4−95% CH3CN)。Calculated:[M+H]+=1569,70,found:[M+H]+=1569,45.Yield:54%。
【0122】
実施例2: カスパーゼ−1プローブ
【化16】

この化合物を一般的な手順に従い固体支持体上で製造し、HPLCで精製した(H2O+0.05% TFA;4−95% CH3CN)。Calculated:[M+H]+=1583,73 found:[M+H]+=1583,2.Yield:72%。
【0123】
実施例3: カスパーゼ−1プローブ
【化17】

この化合物を一般的な手順に従い固体支持体上で製造し、HPLCで精製した(H2O+0.05% TFA;4−95% CH3CN)。Calculated:[M+H]+=1591,19 found:[M+H]+=1591,50.Yield:66%。
【0124】
実施例4: カスパーゼ−3プローブ
【化18】

この化合物を一般的な手順に従い固体支持体上で製造し、HPLCで精製した(H2O+0.05% TFA;4−95% CH3CN)。Calculated:[M+H]+=1517,66 found:[M+H]+=1517,55.Yield:59%。
【0125】
実施例5: カスパーゼ−3プローブ
【化19】

この化合物を一般的な手順に従い固体支持体上で製造し、HPLCで精製した(H2O+0.05% TFA;4−95% CH3CN)。Calculated:[M+H]+=1546,79 found:[M+H]+=1546,35.Yield:61%。
【0126】
実施例6: カスパーゼ−8プローブ
【化20】

この化合物を一般的な手順に従い固体支持体上で製造し、HPLCで精製した(H2O+0.05% TFA;4−95% CH3CN)。Calculated:[M+H]+=1523,45 found:[M+H]+=152325.Yield:55%。
【0127】
実施例7
【化21】

ビルディングブロック(VII)をWO9722619に記載される手順に従って製造した。
【0128】
実施例8: カスパーゼ−1生物発光プローブ
【化22】

この化合物を一般的な手順に従って6−Fmoc−アミノ−D−ルシフェリンから出発し、固体支持体上で製造し、HPLCで精製した(H2O+0.05% TFA;4−95% CH3CN)。Calculated:[M+H]+=772.82,found:[M+H]+=773.15.Yield:13%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
{L1−R1−L}−A−CO−NH−R2−L2 (I)
のシステインプロテアーゼに対する分子プローブであって、式中、
Aは、カスパーゼによって認識可能な基であり;
R1は、リンカーであり;
R2は、結合またはリンカーであり;
Lは、結合またはL1基の容易な複合を可能にさせる基であり;
L1およびL2は、互いに独立して場合により固体支持体に結合した少なくとも1つの標識であり;かつ
nは、1であるか、
または
R2は、結合であり;
L2は、結合生物アッセイに適した基質であり;かつ
nは、0である、
分子プローブ。
【請求項2】
カスパーゼが、カスパーゼ−1、カスパーゼ−3またはカスパーゼ−8である、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
Lが直接結合または以下:
【化1】

−(NRx)−、−O−、−C=N−、−C(=O)−、−C(=O)−NH−、−NH−C(=O)−、−C(=O)H、−CRx=CRy−、−C≡C−およびフェニルから選択される基(式中RxおよびRyは独立してHまたは(C1−C6)アルキルである)である、請求項1または2に記載のプローブ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のプローブであって、ここでR1またはR2は1〜300個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン基であり、ここで場合により以下:
(a)1つまたはそれ以上の炭素原子が酸素によって置き換えられ、特にここで第三炭素原子毎に酸素によって置き換えられる(例えば、1〜100個のエチレンオキシ単位を有するポリエチレンオキシ基);および/または
(b)1つまたはそれ以上の炭素原子が水素原子を保持する窒素によって置き換えられ、そしてその隣接炭素原子はオキソによって置換されて、アミド基−NH−CO−で表わされる;および/または
(c)1つまたはそれ以上の炭素原子がエステル基−O−CO−によって置き換えられる;および/または
(d)2つの隣接炭素原子間の結合が二重結合または三重結合である;および/または
(e)2つの隣接炭素原子がジスルフィド結合によって置き換えられる、
であるプローブ。
【請求項5】
標識L1およびL2は互いに独立して以下:
発蛍光団;クエンチャーまたは発色団;磁気プローブ;造影剤;パートナーに特異的に結合可能な特異的結合対の一方の部分である分子;固体支持体(ここで支持体は、ガラススライド、マイクロタイタープレートまたは当業者に公知の任意のポリマーであり得る)に共有結合した分子;望ましい酵素学的、化学的または物理学的特徴を備える生体分子;または上述の特徴の任意の組み合わせを持つ分子;または正に帯電した直鎖もしくは分枝鎖のポリマー
のような分光学的プローブである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項6】
標識L1およびL2が互いに独立して正に帯電した直鎖または分枝鎖ポリマーに結合される、請求項5に記載のプローブ。
【請求項7】
一方の標識L1およびL2が、6〜15個のアルギニン残基を有するD−および/またはL−アルギニンの直鎖状ポリ(アルギニン)である、請求項6に記載のプローブ。
【請求項8】
相互作用している2つの分光プローブL1/L2のうちL1が一方のメンバーであり、L2が他方のメンバーである、請求項5〜7のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項9】
L1/L2がFRETペアである、請求項8に記載のプローブ。
【請求項10】
一方のL1/L2が、Alexa350、ジメチルアミノクマリン、5/6−カルボキシフルオレセイン、Alexa488、ATTO488、DY−505、Alexa532、Alexa546、Alexa555、ATTO532、テトラメチルローダミン、Cy3、DY−505、DY−547、Alexa635、Alexa647、ATTO600、ATTO655、DY−632、Cy5、DY−647、Cy5.5、から選択される発蛍光団であり、他方の標識L1/L2が、Dabsyl、Dabcyl、BHQ1、QSY35、BHQ2、QSY9、ATTO540Q、BHQ3、ATTO612Q、QSY21から選択されるクエンチャーである、請求項9に記載のプローブ。
【請求項11】
nが0であり、R2が結合であり、かつL2が結合生物発光アッセイに適した基質である請求項1〜4のいずれか1項に記載のプローブであって、基質が中心スカフォールドAからの切断の際にルシフェラーゼによるその変換を経て発光シグナルを発生することができるレポーター基として変性アミノルシフェリンまたはカルボキシ末端保護されたその誘導体を特徴とする、上記プローブ。
【請求項12】
以下の表の化合物1〜28を特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の選択的カスパーゼ−1プローブ:
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【請求項13】
以下の表の化合物29〜42を特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の選択的カスパーゼ−3プローブ:
【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【請求項14】
以下の表の化合物43〜44を特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の選択的カスパーゼ−8プローブ:
【表17】

【請求項15】
請求項1〜14に記載の式(I)のプローブを製造する方法であって:
nが1である場合:
(a)式(II)
L’−A−CO−OH (II)
の化合物を式 L1−R1−H の化合物と反応させて式(III)
L1−R1−L−A−CO−OH (III)
の化合物とし、
(b)化合物(III)を化合物 H2N−R2−L2と反応させて式(I)のプローブとし、
(式中、
L’は、フルオロ、クロロ、ブロモ、シアノ、ニトロ、アミノ、アジド、アルキルカルボニルアミノ、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバルデヒド、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、好ましくはアミノ、アジド、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、カルバモイル、カルバルデヒド、または炭素−炭素二重結合もしくは炭素−炭素三重結合、より好ましくはアミノであり、かつ
R1および/またはR2は、適切なオルトゴナルに保護する基によって保護されていてもよく、続いて化合物(I)を製造する過程で切断される);および
nが0の場合:
式A−CO−OH(IV)の化合物を化合物H2N−R2−L2と反応させて式(I)のプローブとする、
ことを特徴とする、方法。
【請求項16】
インビトロ、細胞内培養実験、エキソビボ実験で、または生体で分子イメージングするための請求項1〜14に記載の式(I)のプローブの使用。
【請求項17】
生体をイメージングするための請求項1〜14に記載の式(I)のプローブの使用であって:
(a)式(I)のプローブを該生物に投与する工程、
(b)該生物を、非消光発蛍光団を励起させる電磁放射線に曝して検出可能なシグナルを生成させる工程、および
(c)該シグナルを検出し、それによって画像を作出する工程
を含む使用。
【請求項18】
生体をイメージングするための請求項1〜14に記載の式(I)のプローブの使用であって:
(a)式(I)のプローブを該生物に投与する工程、
(b)該生物を、発蛍光団を励起させる電磁放射線に曝して検出可能なシグナルを生成させる工程、および
(c)該シグナルを検出し、それによって画像を作出する工程
を含む使用。

【公表番号】特表2010−535167(P2010−535167A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518602(P2010−518602)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059358
【国際公開番号】WO2009/019115
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】