説明

カスポファンギンの合成のための方法および中間体

本発明は、ある種のアザシクロヘキサペプチド化合物、例えばカスポファンギンを調製するための新規な方法、前記方法において使用される新規な中間体および前記中間体を調製する方法に関する。特に、この中間体は、式II


(式中、Xはアミノまたは置換アミノであり、シアノ/ニトリル官能基を含む)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある種のアザシクロヘキサペプチド化合物を調製するための新規な方法、前記方法において使用される新規な中間体および前記中間体を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に定義されるような式Iのアザシクロヘキサペプチド化合物は、とりわけカンジダ(Candida)、アスペルギルス属(Aspergillus)、ヒストプラズマ属(Histoplasma)、コクシジオイデス属(Coccidioides)およびブラストミセス属(Blastomyces)によって引き起こされる全身の真菌類感染を治療する際に有用である、エキノカンジンファミリーに属する大環状リポポリペプチドである。これらは、またAIDSの患者などの免疫無防備状態の患者においてしばしば見出されるニューモシスティス・カリニ(Pneumocystis carinii)によって引き起こされる感染の治療および予防に有用であることが見出された。ニューモカンジンは、真菌グラレア・ロゾエンシス(Glarea lozoyensis)によって自然に産生されるエキノカンジンのサブセットである。これらの単離、構造解明および生物学的評価は、Cutaneous Antifungal Agents、1993、375−394頁にSchmatz等によって報告されている。
【0003】
ニューモカンジンBは、以前ザレリオン・アルボリコラ(Zalerion arboricola)として識別された真菌グラレア・ロゾエンシスによって産生される二次代謝産物であり、カスポファンギンの製造において中間体として役立つ(例えば、米国特許第5,194,377号および同第5,202,309号参照)。ニューモカンジンBは、また化合物1−[4,5−ジヒドロキシ−N−(10,12−ジメチル−1−オキソテトラデシル)オルニチン]−5−(3−ヒドロキシグルタミン)−6−[3−ヒドロキシプロリン]エキノカンジンBと名付けられており、例えば米国特許第5,202,307号に記載されているように、1−[4,5−ジヒドロキシ−N2−(10,12−ジメチル−1−オキソテトラデシル)−L−オルニチン]−5−(3−ヒドロキシ−L−グルタミン)−6−[3−ヒドロキシ−L−プロリン]エキノカンジンBである好ましい立体異性体を有する。ニューモカンジンBは、例えば欧州特許EP620232に記載されているようにカスポファンギンの製造において中間体として役立つ。
【0004】
化合物1−[(4R,5S)−5−[(2−アミノエチル)アミノ]−N2−(10,12−ジメチル−1−オキソテトラデシル)−4−ヒドロキシ−L−オルニチン]−5−[(3R)−3−ヒドロキシ−L−オルニチン]−ニューモカンジンBおよびこの医薬として許容できる塩は、INNカスポファンギンの下に知られている(Merck Index、13版、モノグラフ番号1899参照)。カスポファンギンは、真菌感染を治療するため、またAIDSにかかっている患者などの特に免疫無防備状態の患者において、ニューモシスティス・カリニによって引き起こされる感染の予防および/または治療のために有用であることが知られている。
【0005】
アザシクロヘキサペプチド化合物のおよびカスポファンギンの調製方法は、例えばWO94/21677、EP620232、WO96/24613、US5,552,521、WO97/47645、US5,936,062およびWO02/083713に記載されている。
【0006】
WO94/21677およびEP620232は、ニューモカンジンBから出発する方法を開示しており、無水の非プロトン溶剤中で、アルキルチオールまたはアリールチオール、例えばアミノエチルチオールと反応させ、続いてスルホン中間体に酸化し、この中間体をアミン化合物、例えばエチレンジアミンなどのジアミン化合物と引き続いて反応させる。この反応生成物は、とりわけクロマトグラフ法によって単離することができる。
【0007】
WO96/24613およびUS5,552,521、ニューモカンジンBを、この第一アミド基において対応するアミン基に還元し、続いてチオフェノールと、さらにはエチレンジアミンと反応させて、アザシクロヘキサペプチド化合物、例えばカスポファンギンを得る方法をとりわけ開示している。この還元ステップの収率は、WO96/24613またはUS5,552,521のCompoundIIIの分析収率において表されているように約47%であると報告されている。
【0008】
WO97/47645およびUS5,936,062は、ニューモカンジンBから出発する2つの立体選択的方法を開示している。第1の方法は、保護基としてフェニルホウ酸塩を使用してニューモカンジンBの第一アミド基を対応するアミン基に還元し、この還元された中間体を例えばフェニルチオールと、引き続いてエチレンジアミンと反応させることを含む。第2の方法は、保護基としてフェニルホウ酸塩の存在下で、5−orn位にS−アリール基を有する中間体の第一アミド基を対応するアミンに還元し、続いて例えばエチレンジアミンと反応させることを含む。アミドのアミン基への還元は、両方のプロセス変異体において約61%(HPLC分析)の反応収率を有すると報告されている。
【0009】
WO02/083713は、カスポファンギンの調製において中間体として有用である、ある種のスルフィド置換エキノカンジンおよび/またはニトリル化合物を調製する方法を開示している。これらの中間体の調製は、保護基を形成するためにボロン酸またはホウ酸塩を使用するものである。
【0010】
しかし、知られている方法は、収率、純度、安定性および副生物の量の点で工業生産には最適ではない。いくつかの方法は、例えば分子篩を使用することによって厳格な無水の条件下で操作する必要がある。その上、いくつかの方法においては所望の純度を実現するために保護基の使用が必要である。いくつかのクロマトグラフステップが、最終製品と同様に中間体を精製するために必要である。したがって、工業的規模で使用できる経済的方法においてアザシクロヘキサペプチド化合物を調製するための改良された方法が必要である。さらに、アミドをアザシクロヘキサペプチド化合物中のアミン基に還元する場合、反応収率を向上することが望ましいことになる。さらに、純粋な形態で単離することができる、すなわち実質上不純物のない中間体の必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、高収率および高純度においてアザシクロヘキサペプチド化合物またはこの医薬として許容できる塩を調製する方法を提供する。本発明の方法は、容易に適用可能であり、例えば工業的規模に、容易にスケールアップすることができる。本発明は、例えばカスポファンギンの調製のために、前記方法において使用される新規な、硬度に精製された中間体をさらに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、一態様において本発明は、
式I
【0013】
【化16】

[式中、Xは、NRであり、ここで
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OHまたは(CH2−4NRであり、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRであり、または
ここでNRは複素環を形成し、RおよびRは一緒になって(CH、(CH、(CHO(CHまたは(CHNH(CHであり、
は、HまたはC−Cアルキルであり、
は、HまたはC−Cアルキルである。]
のアザシクロヘキサペプチド化合物またはこの医薬として許容できる塩を製造するための方法に関し、この方法は、
a)式II
【0014】
【化17】

[式中、Xは上記の通り定義される。]
の化合物またはこの酸付加塩を還元して、式Iの化合物またはこの医薬として許容できる塩を得るステップ、および
b)ステップa)において得られた式Iの化合物またはこの医薬として許容できる塩を場合によって単離するステップ
を含む。
【0015】
別の態様において、本発明は、式Iの化合物またはこの医薬として許容できる塩を製造するための方法を提供し、この方法は、
a)式III
【0016】
【化18】

の化合物を脱水剤と反応させて、式IVの化合物
【0017】
【化19】

を得るステップ、
b)ステップa)において得られた式IVの化合物をチオフェノールと反応させて、式V
【0018】
【化20】

の化合物を得るステップ、
c)ステップb)において得られた式Vの化合物を式HX(式中、Xは上記の通り定義される。)の化合物と反応させて、式IIの化合物またはこの酸付加塩を得るステップ、
d)ステップc)において得られた式IIの化合物またはこの酸付加塩を還元して、式Iの化合物またはこの医薬として許容できる塩を得るステップ、および
e)ステップd)において得られた式Iの化合物またはこの医薬として許容できる塩を場合によって単離するステップ
をさらに含む。
【0019】
好ましくは、Xは、上記の方法においてHN−CH−CH−NHである。
【0020】
他の態様において本発明は、式II
【0021】
【化21】

[式中、Xは、NRであり、ここで
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OHまたは(CH2−4NRであり、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRであり、または
ここでNRは複素環を形成し、RおよびRは一緒になって(CH、(CH、(CHO(CHまたは(CHNH(CHであり、
は、HまたはC−Cアルキルであり、
は、HまたはC−Cアルキルである。]
の化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、XがHN−CH−CH−NHである式IIの化合物(これは式VIの化合物である。)またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物、好ましくはこれらのモノ酢酸塩(これは式VIaの化合物である。)を提供する。
【0023】
さらなる態様において、本発明は、式IIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を製造するための方法に関し、この方法は、
a)式III
【0024】
【化22】

の化合物を脱水剤と反応させて、式IV
【0025】
【化23】

の化合物を得るステップ、
b)ステップa)において得られた式IVの化合物をチオフェノールと反応させて、式V
【0026】
【化24】

の化合物を得るステップ、
c)ステップb)において得られた式Vの化合物を式HX
[式中、Xは、NRであり、ここで
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OHまたは(CH2−4NRであり、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRであり、または
ここでNRは複素環を形成し、RおよびRは一緒になって(CH、(CH、(CHO(CHまたは(CHNH(CHであり、
は、HまたはC−Cアルキルであり、
は、HまたはC−Cアルキルである。]
の化合物と反応させて、式IIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を得るステップ、および
d)ステップc)において得られた式IIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を場合によって単離するステップ
を含む。
【0027】
他の態様において、本発明は、式VIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を製造するための方法を提供し、この方法は、
a)式III
【0028】
【化25】

の化合物を脱水剤と反応させて、式IV
【0029】
【化26】

の化合物を得るステップ、
b)ステップa)において得られた式IVの化合物をチオフェノールと反応させて、式V
【0030】
【化27】

の化合物を得るステップ、
c)ステップb)において得られた式Vの化合物をHN−CH−CH−NHと反応させて、式VIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を得るステップ、および
d)ステップc)において得られた式VIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を場合によって単離するステップ
を含む。
【0031】
さらに、本発明は、カスポファンギンを調製するための式IIまたはVIまたはVIaの化合物の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
式Iのアザシクロヘキサペプチド化合物またはこの医薬として許容できる塩の上記を製造するための方法の好ましい実施形態において、
は、Hであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択され、または
は、C−Cアルキルであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択され、または
は、C−Cアケニルであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択され、
は、(CH2−4OHであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択され、または
は、(CH2−4NRであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択される。
【0033】
上の方法のさらに好ましい実施形態において、XはHN−CH−CH−NHである。
【0034】
上の方法のよりさらに好ましい実施形態において、式Iのアザシクロヘキサペプチド化合物またはこの医薬として許容できる塩が製造され、
式中、Xは、NRであり、ここで
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OHまたは(CH2−4NRであり、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRであり、または
ここでNRは複素環を形成し、RおよびRは一緒になって(CH、(CH、(CHO(CHまたは(CHNH(CHであり、
は、HまたはC−Cアルキルであり、
は、HまたはC−Cアルキルである。
【0035】
式Iのアザシクロヘキサペプチド化合物またはこの医薬として許容できる塩の上記製造方法のさらに好ましい実施形態において、
は、Hであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択され、または
は、C−Cアルキルであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択され、または
は、C−Cアケニルであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択され、または
は、(CH2−4OHであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択され、または
は、(CH2−4NRであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択される。
【0036】
下記の条件は、式Iのアザシクロヘキサペプチド化合物またはこの医薬として許容できる塩の製造に対する上記の本発明の第1の方法に関し、この方法は、
a)Xが上のように定義された式IIの化合物またはこの酸付加塩を還元して、式Iの化合物またはこの医薬として許容できる塩を得るステップ、および
b)ステップa)において得られた式Iの化合物またはこの医薬として許容できる塩を場合によって単離するステップ
を含む。
【0037】
場合によって、例えばXがいくつかの反応性求核基を含む場合、所望のレジオ選択性を実現するために、Xを、アミンまたはヒドロキシル保護基などの保護基によって保護することができる。前記保護基は、還元ステップの前に、同時に、または後に除去することができる。
【0038】
式Iの化合物を得るために、ステップa)における式IIの化合物またはこれらの付加塩の還元は、任意のニトリル還元剤を使用することによって実施することができる。好ましくは、触媒水素化が適用される。還元に適する触媒は、例えば、貴金属例えばパラジウム、プラチナ、ロジウム、ルテニウムから作られる触媒、例えばHRh(PR(式中、Rは、場合によって置換されたフェニル基、またはアルキル基例えばイソプロピルを表す。)、Rh/Al、ClR(PR、Pt、PtO、Pd、炭素上Pd、またはRuもしくはRuClまたはニッケルなどの触媒である。好ましくは、Rh/Alまたは炭素上Pdが触媒として使用される。水素源は、Hであってもまたは例えばアンモニウムホルミエートもしくはジイミン反応からその場所で発生させてもよい。
【0039】
還元ステップにおいて使用される触媒の量は、式IIの化合物に基づいて5重量%から500重量%まで変化し得る。
【0040】
適用される圧力は、大気圧から20バールまで、例えば大気圧から10バールまで変化し得、例えば5バールまで、例えば3バールまで、例えば約1バールであり得る。
【0041】
還元ステップは、適切な溶剤中に式IIの化合物またはこの酸付加塩を溶解または懸濁させることによって実施することができる。適切な溶剤は、還元に不活性な溶剤である。このような溶剤は、日常試験において技術者によって特定することができる。適切な溶剤は、場合によって水と組み合わせて、例えばC−Cアルコール例えばメタノール、エタノールまたはイソプロパノールなどのアルコール、N,N−ジメチルホルムアミドまたはn−メチルピロリドンなどのアミドである。好ましい溶剤は、イソプロパノールと水の混合物である。
【0042】
好ましくは、水の量は、イソプロパノールの量の5%を超える。場合によって酸、例えば酢酸が不純物形成を抑えるために還元ステップにおいて存在してよい。
【0043】
還元ステップが完了した後に、生成物をステップb)において当分野において知られている方法によって単離することができる。例えば、触媒は濾別することができ、生成物はクロマトグラフィー、例えば逆相クロマトグラフィー(例えば、aRP−8またはRP−18タイプ変性シリカゲル)によって精製することができる。画分からの単離は、凍結乾燥によって行うことができ、生成物をアミンを含まずに、または例えば蟻酸、酢酸、酒石酸またはトリフルオロ酢酸などの有機酸によるこれらの付加塩として単離することができる。カスポファンギンは、好ましくはこのジアセタートとして単離される。
【0044】
驚くことには、ニトリルの還元は、他の官能基、例えばアザシクロヘキサペプチド化合物中に存在するアミン性基の存在において高い選択性を有する。理論によって束縛されることは望まないが、本発明者らは、この高い選択性が本発明の還元方法において得られる高い収率(反応収率は、知られているHPLC法を適用し、外部標準に対して計算することにより約82重量%など、約80重量%から約90重量%までであり得る)に対する1つの理由であると考える。さらに、本発明の還元方法において、残存する出発材料は、5%未満、例えば3%未満、好ましくは2%未満である。
【0045】
本発明の還元反応のこれらの高い収率は驚くべきことである。というのは本明細書において記載されたアザシクロヘキサペプチド化合物のアミド基のアミン基への還元に対して、従来技術の方法は、例えばUS5,552,521にみられるように47%(分析)などの、またはUS5,936,062にみられるように保護基を使用するにも拘わらず61%(HPLC分析)などのかなり低い反応収率を示す。さらに、例えばUS5,552,521(これは、実施例1a)において1:1の生成物に対する出発材料の比を報告している。)において、および例えばUS5,936,062(これは、実施例2b)において反応時間の終わりに30%未満の出発材料が残存することを開示している。)においてみられるように従来技術の還元反応の完了後に、より多くの出発材料が残存すると思われる。
【0046】
したがってさらなる態様において、本発明は、「C5−orn」位にアミノ性基をさらに含む化合物において触媒水素化によってニトリル基をアミノ基に還元する方法に関する。用語「C5−orn」は、4−ヒドロキシオルニチン成分の5−炭素を意味すると理解される。特に、前記化合物は、式IIのアザシクロヘキサペプチド化合物またはこの医薬として許容できる塩、例えば酸付加塩などの付加塩、もしくは溶媒和物である。好ましくは、前記化合物は、下記のように、式VIの化合物、さらに好ましくは式VIaの化合物またはこの塩、例えば付加塩、もしくはこの溶媒和物である。前記方法によって得られる生成物は、式Iのアザシクロヘキサペプチド化合物またはこの医薬として許容できる塩である。好ましくは、前記化合物はカスポファンギンである。
【0047】
したがって、本発明は、また、アミン性基をさらに含む化合物においてニトリル基をアミノ基に変換させるための触媒水素化の使用に関する。上述の化合物は、この使用に対して好ましい化合物である。
【0048】
その上、本明細書に記載されている、式IIの化合物の、および/または、式VIおよび/またはVIaの化合物の単離および結晶化は、他の不純物の除去の中でベンジル位C35(ホモチロシン基)におけるエピ異性体化合物の除去を容易にする。
【0049】
前記方法の出発材料としてニューモカンジンBを使用することができる。ニューモカンジンBは、脱水、チオフェノールとの反応およびチオフェニル基の置換によってさらに加工して、式IIの化合物を得ることができる。
【0050】
したがって、本発明は、また、式I
【0051】
【化28】

[式中、Xは、NRであり、ここで
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OHまたは(CH2−4NRであり、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRであり、または
ここでNRは複素環を形成し、RおよびRは一緒になって(CH、(CH、(CHO(CHまたは(CHNH(CHであり、
は、HまたはC−Cアルキルであり、
は、HまたはC−Cアルキルである。]
のアザシクロヘキサペプチド化合物またはこの医薬として許容できる塩を製造するための方法に関し、この方法は、
a)式III
【0052】
【化29】

の化合物を脱水剤と反応させて、式IV
【0053】
【化30】

の化合物を得るステップ、
b)ステップa)において得られた式IVの化合物をチオフェノールと反応させて、式V
【0054】
【化31】

の化合物を得るステップ、
c)ステップb)において得られた式Vの化合物を式HX(式中、Xは上記の通り定義される。)の化合物と反応させて、式IIの化合物またはこの酸付加塩を得るステップ、
d)ステップc)において得られた式IIの化合物またはこの酸付加塩を還元して、式Iの化合物またはこの医薬として許容できる塩を得るステップ、および
e)ステップd)において得られた式Iの化合物またはこの医薬として許容できる塩を場合によって単離するステップ
を含む。
【0055】
上の方法の好ましい実施形態において、
は、Hであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択され、または
は、C−Cアルキルであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択され、または
は、C−Cアケニルであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択され、または
は、(CH2−4OHであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択され、または
は、(CH2−4NRであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択される。
【0056】
上の方法のさらに好ましい実施形態において、XはHN−CH−CH−NHである。
【0057】
上の方法のさらに他の好ましい実施形態において、式Iのアザシクロヘキサペプチド化合物またはこの医薬として許容できる塩が製造され、
式中、Xは、NRであり、
ここで、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OHまたは(CH2−4NRであり、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRであり、または
ここでNRは複素環を形成し、RおよびRは一緒になって(CH、(CH、(CHO(CHまたは(CHNH(CHであり、
は、HまたはC−Cアルキルであり、
は、HまたはC−Cアルキルである。
【0058】
上の方法のさらに好ましい実施形態において、
は、Hであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択され、または
は、C−Cアルキルであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択され、または
は、C−Cアルケニルであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択され、または
は、(CH2−4OHであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択され、または
は、(CH2−4NRであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRから選択される。
【0059】
下記条件は、式Iのアザシクロヘキサペプチド化合物またはこの医薬として許容できる塩の製造に対する本発明の上記のさらなる方法に関し、この方法は、
a)式IIIの化合物を脱水剤と反応させて、式IVの化合物を得るステップ、
b)ステップa)において得られた式IVの化合物をチオフェノールと反応させて、式Vの化合物を得るステップ、
c)ステップb)において得られた式Vの化合物を式HX(式中、Xは上記の通り定義される。)の化合物と反応させて、式IIの化合物またはこの酸付加塩を得るステップ、
d)ステップc)において得られた式IIの化合物またはこの酸付加塩を還元して、式Iの化合物またはこの医薬として許容できる塩を得るステップ、および
e)ステップd)において得られた式Iの化合物またはこの医薬として許容できる塩を場合によって単離するステップ
を含む。
【0060】
ステップa)、すなわち式IIIの化合物を脱水剤と反応させて、式IVの化合物を得るステップは、例えばEP535967Aに記載されているような、例えば反応のこのようなタイプに対して知られている条件下で、当分野において知られている方法により実施することができる。式IIIのアミドを脱水するために適する試薬は、無水酢酸、トリフルオロ無水酢酸および五酸化リン、塩化オキサリル、リン酸塩化物等などの酸塩化物、塩化トリフェニルホスホニウムなどのホスホニウム試薬、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカルボジイミド、またはシアヌール酸塩化物、塩化アルミニウムまたは四塩化チタンなどの他の脱水剤である。好ましくは、EP535967Aに記載されているようなシアヌール酸塩化物が使用される。
【0061】
ステップb)、すなわち式IVの化合物をチオフェノールと反応させて、式Vの化合物を得るステップは、例えばEP912603に、および/またはWO97/47645に開示されているような、例えば、当分野において知られている方法により同様に実施することができる。したがって、式IVの化合物をアセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸中でチオフェノールと反応させて、チオフェノール含有式Vの中間体を製造することができる。いずれの適度な強度の酸、例えばトリフルオロ酢酸、リン酸またはトリクロロ酢酸も、式Vの中間体を良好な収率において生じると期待される。置換チオフェノール、例えば1つまたは2つ以上のハロゲン(例えばフルオロ、クロロまたはヨード)、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ(例えば4−メトキシチオフェノールなどの)によって置換されたチオフェノールなどの、または、置換複素環式化合物、例えば2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、2−メルカプトベンズチアゾールその他などの、他のメルカプタンもまた使用することができる。好ましくはチオフェノールが使用される。
【0062】
ステップc)、すなわち式Vの化合物のチオフェノールを、式HX(ここでXは、本明細書において記載されたように定義される。)の求核性化合物により置換するステップは、例えば当分野において知られている方法により同様に実施することができ、例えばチオフェニル基を対応するアミンと反応させることにより、例えばアミノ基によって、好ましくは純粋なエチレンジアミンによる置換によって置換することができる。ステップc)は、また、例えば同様に、例えばWO97/47645に開示されている方法により実施することができる。
【0063】
ステップd)、すなわち式IIの化合物またはこれらの付加塩を還元して、式Iの化合物またはこの医薬として許容できる塩を得るステップは、上記のように実施することができる。ステップd)は、例えば請求項4に記載のように実施することができ、および/または前に記載された条件を適用することによって本発明の第1の方法に対して上記のように実施することができる。
【0064】
ステップe)、すなわち式Iの化合物またはこの医薬として許容できる塩を単離するステップは、当分野において知られている方法により、または本明細書に記載のように実施することができる。
【0065】
場合によって、例えばXがいくつかの反応性求核基を含む場合、所望のレジオ選択性を実現するために、Xを、アミンまたはヒドロキシル保護基などの保護基によって保護することができる。前記保護基は、還元ステップの前に、同時に、または後に除去することができる。
【0066】
好ましくは、ステップc)において上記のように、式HXの化合物は、上記のようにステップd)により還元した後に、カスポファンギンをもたらすエチレンジアミンである。
【0067】
好ましくは、本明細書に記載された方法において得られた式Iの化合物は、式Ia
【0068】
【化32】

を有するカスポファンギン、およびこの医薬として許容できる塩である。
【0069】
式IIの化合物およびこの付加塩、例えば酸付加塩、および溶媒和物は新規である。したがって、その他の態様において本発明は、式II
【0070】
【化33】

[式中、
Xは、NRであり、ここで
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OHまたは(CH2−4NRであり、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRであり、または
ここでNRは複素環を形成し、RおよびRは一緒になって(CH、(CH、(CHO(CHまたは(CHNH(CHであり、
は、HまたはC−Cアルキルであり、
は、HまたはC−Cアルキルである。]
の化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物に関する。
【0071】
式IIの化合物の好ましい一実施形態は、例えば下記のような式VIaの化合物などの式VIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物である。
【0072】
化合物IIおよび/またはVIの酸付加塩は、例えば塩酸などの鉱酸との、または例えば蟻酸、酢酸もしくはトリフルオロ酢酸などの有機酸との付加塩であってよい。式IIまたはVIの化合物は、また遊離アミンとして存在してもよい。
【0073】
その他の態様において、本発明は、式VI
【0074】
【化34】

の化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物に関する。この化合物は、酢酸とのモノ付加塩として結晶形態で得ることができるので、この向上した安定性によりカスポファンギンの調製において価値のある中間体である。したがって、式VIの化合物のモノ酢酸塩、すなわち式VIaの化合物
【0075】
【化35】

は、本発明の好ましい実施形態である。
【0076】
式VIの化合物は、例えばRP−18材料に基づくクロマトグラフィーにより、続いて濃厚カット画分を凍結乾燥することによってこの反応混合物から単離することができる。クロマトグラフィーには酢酸およびアセトニトリルの混合物を使用することができ、ここで、酢酸とアセトニトリルとの比は、約60から40対約80から20、例えば約70から30、例えば75から25である。式VIの非晶質化合物は、次いで有機溶剤中に、酢酸の存在下で例えばメタノールまたはエタノールなどのアルコール中に溶解させることができる。式VIの化合物のモノ酢酸塩は、エステルなどの貧溶剤、例えば酢酸エチルなどの酢酸C−Cアルキルエステルの添加によって結晶化させることができる。その上、C35(ホモチロシン基)におけるエピマーなどの不純物(経済的な方法ではクロマトグラフィーによって除去するのが困難または殆んど不可能である不純物)は、結晶化プロセスによって効率的に除去される。
【0077】
式IIの化合物は、本明細書に記載のようにアザシクロペプチド化合物の調製に有用な中間体である。特に、式VIおよびVIaの化合物は、カスポファンギンの調製に対する価値のある中間体である。
【0078】
したがって、さらなる態様において本発明は、カスポファンギンの調製における式IIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物の使用に関する。
【0079】
その他に、さらなる態様において本発明は、カスポファンギンの調製における式VIの化合物またはこの付加塩もしくは溶媒和物の、またはこのモノ酢酸塩、すなわち式VIaの化合物の使用に関する。前記化合物の使用は、本明細書に記載のように式Iの化合物において得られるアミンへの式IIの化合物のニトリル基の還元の高い反応収率を有利にもたらす。本発明の還元方法の前記反応収率は、約80%から90%までであり、したがって例えばEP535967A(ここでは反応収率は約43%)に報告されているように、他のアザシクロペプチド化合物に関する従来技術の方法において観察される反応収率よりも著しく高い。
【0080】
さらなる態様において、本発明は、式IIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を製造するための方法に関し、この方法は、
a)上記のように式IIIの化合物を脱水剤と反応させて、上記のように式IVの化合物
を得るステップ、
b)ステップa)において得られた式IVの化合物をチオフェノールと反応させて、上記のように式Vの化合物を得るステップ、
c)ステップb)において得られた式Vの化合物を式HX(式中、Xは、NRであり、ここでX、RおよびRは、本明細書に記載の通りである。)の化合物と反応させて、式IIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を得るステップ、および
d)ステップc)において得られた式IIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を場合によって単離するステップ
を含む。
【0081】
さらなる実施形態において、本発明は、式VIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を製造するための方法に関し、この方法は、
a)上記のように式IIIの化合物を脱水剤と反応させて、上記のように式IVの化合物
を得るステップ、
b)ステップa)において得られた式IVの化合物をチオフェノールと反応させて、上記のように式Vの化合物を得るステップ、
c)ステップb)において得られた式Vの化合物をHN−CH−CH−NHと反応させて、式VIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を得るステップ、および
d)ステップc)において得られた式VIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を場合によって単離するステップ
を含む。
【0082】
上記方法のステップa)における使用に適する脱水剤は、上に定義した通りである。好ましくは、脱水剤は、シアヌール酸塩化物である。
【0083】
好ましくは、式VIの化合物は、上のステップd)においてこのモノ酢酸塩として、すなわち式VIaの化合物として単離される。
【0084】
(実施例)
以下の実施例は、本発明を例示するが、いかなる点でも本発明を制約することを意図するものではない。全ての温度は、摂氏温度において与えられ、補正はされていない。
【実施例1】
【0085】
式IVの化合物の調製
ニューモカンジンB(10.2g)を、乾燥1−メチル−2−ピロリドン(90ml)および乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(10ml)の混合物中に溶解する。この淡黄色の溶液を−20℃に冷却し、シアヌール酸塩化物(4.2g)を一度に添加する。この混合物を98%転化率に達するまで−20℃で撹拌する(HPLC、約3.5時間)。水(100ml)を10分間にわたって添加し、この混合物を周囲温度に加温する。
【0086】
この粗製混合物を激しく撹拌された水中(1400ml)にゆっくりと注ぐ。この懸濁液を2時間熟成させ、次いで濾過する。この生成物を水で完全に洗浄し、次いで真空下で乾燥する。この材料(9.3g)をさらに精製することなしに次のステップにおいて使用する。
【実施例2】
【0087】
式IVの化合物の調製
ニューモカンジンB(10.0g)を、乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(100ml)中に溶解する。この溶液の水分を求め、約0.15%に調整する。この溶液を−20℃に冷却し、シアヌール酸塩化物(4.2g)を一度に添加する。この混合物を97%転化率に達するまで−20℃で撹拌する(HPLC、約1.0時間)。水(100ml)を10分間にわたって添加し、この混合物を周囲温度に加温する。
【0088】
この粗製混合物を激しく撹拌された水中(1400ml)にゆっくりと注ぐ。この懸濁液を2時間熟成させ、次いで濾過する。この生成物を水で完全に洗浄し、次いで真空下で乾燥する。この材料(8.2g)をさらに精製することなしに次のステップにおいて使用する。
【実施例3】
【0089】
カスポファンギンの調製
式VIの化合物(500mg)を、2−プロパノール/水(13ml)および酢酸(650μl)の9:1混合物中に溶解する。この混合物を活性炭(50mg)で処理し、濾過する。この濾液に酢酸アンモニウム(1.35g)およびRh/Al(5%ロジウム、105mg)を添加する。得られた混合物を室温で約24時間水素(大気圧)で処理する。活性炭(100mg)を添加し、混合物を濾過する。この濾液を減圧下で蒸発させる。この残渣をメタノール(10ml)および水(50ml)中に溶解し、分取C−18カラムに装填する。生成物を22%アセトニトリル/水(0.15%酢酸)で溶出させる。濃厚なカット画分を集め、凍結乾燥して、非晶質白色固体としてカスポファンギンジ酢酸(291mg)を得る。
【実施例4】
【0090】
カスポファンギンの調製
式VIの化合物(250mg)を、2−プロパノール/水(25ml)および酢酸(325μl)の8:2混合物中に溶解する。この混合物を活性炭(25mg)で処理し、濾過する。濾液にPd/C(10%パラジウム、250mg)およびアンモニウムホルミエート(2.03g)を添加する。得られた混合物を室温で約24時間激しく撹拌する。この混合物を濾過する。この濾液を水で希釈し、分取C−18カラムに装填する。生成物を22%アセトニトリル/水(0.15%酢酸)で溶出させる。濃厚なカット画分を集め、凍結乾燥して、非晶質白色固体としてカスポファンギンジ酢酸(94mg)を得る。
【実施例5】
【0091】
カスポファンギンの調製
式VIの化合物(20g)を、2−プロパノール/水(284ml)および酢酸(20ml)の85:15混合物中に溶解する。酢酸アンモニウム(50g)およびRh/Al(5%ロジウム、2g)を添加する。得られた混合物を、出発材料の2%未満が残り、82(重量*)%の反応収率が達成される(これは約7.5時間以内に生じる)まで30℃で水素(1バール)により処理する。次いで触媒を濾別する。濾液を金属捕集剤(例えば、MSA−FC C−1、17g)と共に30℃で2時間撹拌し、次いで再度濾過する。このフィルターケーキを2−プロパノール(それぞれ20ml、3回)で洗浄する。この濾液および洗浄液を合わせ、減圧下で蒸発させる。この残渣をメタノール(250ml)および水(1250ml)中に溶解し、逆相C−8カラムを使用して分取HPLCによって精製する。生成物を22%アセトニトリル/水(0.15%酢酸)で溶出させる。濃厚なカット画分を集め、凍結乾燥して、非晶質白色固体としてカスポファンギンジ酢酸(13.7g)を得る。
*知られているHPLC法を使用し、以下の条件を適用して外部標準に対して求めた:
装置 Agilent(商標)1100シリーズ;
カラム:Agilent Zorbax(商標)300SB−C18、3.5μm、4.6×150mm
流速:1.5ml/分;検出:220nm;温度:30℃;注入体積:20μl
グラディエント:Mobile Phase A:1800mlHO/200mlCHCN/1mlCFCOOH
移動相 B:100mlHO/900mlCHCN/0.5mlCFCOOH
グラディエント:0分:25%B;17分:50.5%B;17.1分:70%B;20分:70%B;20.1分:25%B;25分:25%B。
【0092】
この固体(2g)を25℃でエタノール(21.7ml)および水(2.35ml)中に溶解する。不溶解材料を濾過によって除去する。濾液に酢酸(122μl)を添加し、続いて酢酸エチル(17.5ml)をゆっくりと添加する(2時間)。この溶液に種結晶を入れ、25℃で1時間撹拌する。酢酸エチル(22.5ml)の他の部分を5時間にわたり添加し、結晶懸濁液を1時間熟成する。結晶固体を濾別し、エタノール/水/酢酸エチル(22ml/2.5ml/40ml)の混合物で洗浄する。この湿潤ケーキを窒素ストリーム中で乾燥して、カスポファンギンジ酢酸の1.7gを生じる。
【実施例6】
【0093】
式Vの化合物の調製
式IVの化合物の6.0gを乾燥アセトニトリル240ml中に懸濁させ、−15℃に冷却する。チオフェノール2.6gを添加する。トリフルオロ酢酸12.7mlを−10℃より低い温度で添加する。この反応混合物を、式IVの化合物の含量が反応混合物中で約3%(HPLC)より低くなるまで−15から−10℃で撹拌する。581ml冷水を1時間の内にこの反応懸濁液に添加する。沈殿を単離し、アセトニトリル/水3:1で洗浄溶液が5を超えるpHになるまで洗浄する。式Vの化合物の5.6gが得られる。この材料は、さらに精製することなしに次のステップにおいて使用する。
【実施例7】
【0094】
式VIの化合物の調製
式Vの化合物の15.0gを純エチレンジアミン42.6mlに添加し、出発材料が完全に消費されるまで周囲温度で撹拌する。メタノール72mlを25℃より低い温度で添加する。続いて、酢酸(65%)204mlを同じ温度で添加する。さらに水206mlを添加する。
【0095】
黄色がかった溶液をn−ヘプタン140mlで抽出する。この層を分離し、この有機層を酢酸(65%)38mlを使用して逆抽出する。この水性層を濾過し、0.15%酢酸/アセトニトリル70/30を使用してクロマトグラフにかける。この濃厚なカットを合わせて、凍結乾燥する。式VIの化合物の7.65gが酢酸付加物として得られる。
【実施例8】
【0096】
モノ酢酸付加塩としての式VIの化合物の結晶化
実施例5に記載したように調製された、80%(HPLC)の分析物および3.0%(HPLC)のC35におけるエピマーの含量を有する式VIの非晶質化合物の69.9gを、周囲温度でメタノールの760mlおよび氷酢酸の4.3ml中に溶解する。酢酸エチルの645mlを1時間にわたり添加する。この混合物に種結晶を入れ、さらに1時間撹拌する。2時間にわたり酢酸エチルの1.2lをさらに添加した後に、結晶生成物を濾過によって単離する。このフィルターケーキをメタノールの183ml、酢酸エチルの490mlおよび水の16mlの混合物で洗浄する。この生成物を真空中で乾燥し、モノ酢酸付加塩(収率88%)として式VIの結晶化合物の53gを生じる。
分析物93.1%(HPLC)
水分:3.0%
不純物C35−エピマー:0.1%
MS(LC−MS,ESI)
1098.7[M+H]
H−NMR(CDOD,300MHz)
7.15(d,J=8.5Hz,2H)、6.78(d,J=8.5Hz,2H)、4.55(m,5H)、4.3(m,5H)、4.19(d,J=4.5Hz,1H)、4.1−3.75(m,5H))、3.15−2.65(m,6H)、2.45(m,1H)、2.35−1.85(m,8H)、1.93(s,3H)、1.7−0.8(m,36H)
13C NMR(CDOD,75MHz)
10.59、18.5、19.2、19.74、22.39、22.86、26.1、27.01、29.32、29.35、29.54、29.72、30.11、30.21、31.88、33.62、35.98、37.04、37.5、39.04、42.24、44.9、46.02、49.96、53.89、54.92、56.13、57.6、61.65、63.06、67.27、68.31、68.77、69.48、70.33、74.04、74.67、76.21、115.27、118.71、128.71、131.96、157.46、167.28、171.76、171.88、172.5、172.66、172.85、175.22、178.82
【実施例9】
【0097】
モノ酢酸付加塩としての式VIの化合物の結晶化
実施例7に記載したように調製された、80%(HPLC)の分析物および3.0%(HPLC)のベンジル位C35(ホモチロシン基)におけるエピマーの含量を有する式VIの非晶質化合物の69.9gを、周囲温度でメタノールの760mlおよび氷酢酸の4.3ml中に溶解する。酢酸エチルの645mlを1時間にわたり添加する。この混合物に種結晶を入れ、さらに1時間撹拌する。2時間にわたり酢酸エチルの1.2lをさらに添加した後に、結晶生成物を濾過によって単離する。このフィルターケーキをメタノールの183ml、酢酸エチルの490mlおよび水の16mlの混合物で洗浄する。この生成物を真空中で乾燥し、モノ酢酸付加塩(収率88%)として式VIの結晶化合物の53gを生じる。
分析物93.1%(HPLC、フリーベースとして計算される)
水分:3.0%
不純物C35−エピマー:0.1%
MS(LC−MS,ESI)
1098.7[M+H]
H−NMR(CDOD,300MHz)
7.15(d,J=8.5Hz,2H)、6.78(d,J=8.5Hz,2H)、4.55(m,5H)、4.3(m,5H)、4.19(d,J=4.5Hz,1H)、4.1−3.75(m,5H))、3.15−2.65(m,6H)、2.45(m,1H)、2.35−1.85(m,8H)、1.93(s,3H)、1.7−0.8(m,36H)
13C NMR(CDOD,75MHz)
10.59、18.5、19.2、19.74、22.39、22.86、26.1、27.01、29.32、29.35、29.54、29.72、30.11、30.21、31.88、33.62、35.98、37.04、37.5、39.04、42.24、44.9、46.02、49.96、53.89、54.92、56.13、57.6、61.65、63.06、67.27、68.31、68.77、69.48、70.33、74.04、74.67、76.21、115.27、118.71、128.71、131.96、157.46、167.28、171.76、171.88、172.5、172.66、172.85、175.22、178.82
HPLCは、知られている方法により以下の条件を適用して実施する:
流速:1.5ml/分;カラム温度:30℃;停止時間:8.5分;ポストラン:1.5分
波長:220nm;注入体積:10μl(マイクロリットル)
溶離剤A:900mlHPLC−水/100mlアセトニトリルグラディエント品種/0.5mlトリフルオロ酢酸;
溶離剤B:100mlHPLC−水/900mlアセトニトリルグラディエント品種/0.5mlトリフルオロ酢酸
固定相:Agilent(商標)Technologies、Zorbax(商標)300SB−C18、迅速分解能、4.6mm×100mm、3.5−ミクロン。
グラディエント:0分:37%B;2分:40%B;4分:46%B;7分:70%B;8.5分:70%B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式II
【化1】

[式中、Xは、NRであり、ここで
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OHまたは(CH2−4NRであり、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRであり、または
ここでNRは複素環を形成し、RおよびRは一緒になって(CH、(CH、(CHO(CHまたは(CHNH(CHであり、
は、HまたはC−Cアルキルであり、
は、HまたはC−Cアルキルである。]
の化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
式VI
【化2】

の化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物。
【請求項3】
式VIa
【化3】

の化合物。
【請求項4】
式I
【化4】

[式中、Xは、NRであり、ここで
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OHまたは(CH2−4NRであり、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRであり、または
ここでNRは複素環を形成し、RおよびRは一緒になって(CH、(CH、(CHO(CHまたは(CHNH(CHであり、
は、HまたはC−Cアルキルであり;
は、HまたはC−Cアルキルである。]
のアザシクロヘキサペプチド化合物またはこの医薬として許容できる塩を製造するための方法であって、
a)式II
【化5】

[式中、Xは上記の通り定義される。]
の化合物またはこの酸付加塩を還元して、式Iの化合物またはこの医薬として許容できる塩を得るステップ、および
b)ステップa)において得られた式Iの化合物またはこの医薬として許容できる塩を場合によって単離するステップ
を含む方法。
【請求項5】
式I
【化6】

[式中、Xは、NRであり、ここで
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OHまたは(CH2−4NRであり、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRであり、または
ここでNRは複素環を形成し、RおよびRは一緒になって(CH、(CH、(CHO(CHまたは(CHNH(CHであり、
は、HまたはC−Cアルキルであり、
は、HまたはC−Cアルキルである。]
のアザシクロヘキサペプチド化合物またはこの医薬として許容できる塩を製造するための方法であって、
a)式III
【化7】

の化合物を脱水剤と反応させて、式IV
【化8】

の化合物を得るステップ、
b)ステップa)において得られた式IVの化合物をチオフェノールと反応させて、式V
【化9】

の化合物を得るステップ、
c)ステップb)において得られた式Vの化合物を式HX(式中、Xは上記の通り定義される。)の化合物と反応させて、式IIの化合物またはこの酸付加塩を得るステップ、
d)ステップc)において得られた式IIの化合物またはこの酸付加塩を還元して、式Iの化合物またはこの医薬として許容できる塩を得るステップ、および
e)ステップd)において得られた式Iの化合物またはこの医薬として許容できる塩を場合によって単離するステップ
を含む方法。
【請求項6】
a)式III
【化10】

の化合物を脱水剤と反応させて、式IV
【化11】

の化合物を得るステップ、
b)ステップa)において得られた式IVの化合物をチオフェノールと反応させて、式V
【化12】

の化合物を得るステップ、
c)ステップb)において得られた式Vの化合物を式HX
[式中、Xは、NRであり、ここで
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OHまたは(CH2−4NRであり、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、(CH2−4OH、(CH2−4NRであり、または
ここでNRは複素環を形成し、RおよびRは一緒になって(CH、(CH、(CHO(CHまたは(CHNH(CHであり、
は、HまたはC−Cアルキルであり、
は、HまたはC−Cアルキルである。]
の化合物と反応させて、式IIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を得るステップ、および
d)ステップc)において得られた式IIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を場合によって単離するステップ
を含む、式IIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を製造するための方法。
【請求項7】
a)式III
【化13】

の化合物を脱水剤と反応させて、式IV
【化14】

の化合物を得るステップ、
b)ステップa)において得られた式IVの化合物をチオフェノールと反応させて、式V
【化15】

の化合物を得るステップ、
c)ステップb)において得られた式Vの化合物をHN−CH−CH−NHと反応させて、式VIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を得るステップ、および
d)ステップc)において得られた式VIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を場合によって単離するステップ
を含む、式VIの化合物またはこの酸付加塩もしくは溶媒和物を製造するための方法。
【請求項8】
ステップd)における式VIの化合物が、このモノ酢酸塩形態で単離される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
Xが、HN−CH−CH−NHである請求項4または5に記載の方法。
【請求項10】
還元ステップが、触媒水素化によって実施される請求項4または5に記載の方法。
【請求項11】
炭素上のRh/AlまたはPdが触媒として使用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
還元ステップにおいてHが水素源として使用される、請求項4または5および9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
シアヌール酸塩化物が、ステップa)において脱水剤として使用される、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
カスポファンギンの調製における請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2009−515917(P2009−515917A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540498(P2008−540498)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010867
【国際公開番号】WO2007/057141
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(305008042)サンド・アクチエンゲゼルシヤフト (54)
【Fターム(参考)】