説明

カチオン性界面活性剤の殺胞子剤としての使用

脂肪酸とエステル化された二塩基アミノ酸との縮合から、例えば、ラウリン酸とアルギニンとから誘導されたカチオン性界面活性剤、特に、アルギニン一塩酸塩のラウリン酸アミドのエチルエステル(LAE)は、胞子に感染する対象の処理に用いることができる。胞子は細菌またはカビから発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性界面活性剤の新規な用途に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン性界面活性剤は、食品、化粧品および医薬品の産業界において、保存料として知られている。カチオン性界面活性剤は、微生物の増殖に対して非常に有効であることが判明していると同時に、一般的に、ヒトや哺乳類が摂取しても安全である。これらのことから、カチオン性界面活性剤は、産業界において魅力的なツールである。
【発明の概要】
【0003】
脂肪酸とエステル化された二塩基アミノ酸との縮合から誘導された式(1):
【0004】
【化1】

(1)
【0005】
[式中、Xは、有機酸または無機酸から誘導される対イオン、好ましくはBr、ClまたはHSO、またはフェノール化合物に基づくアニオンであり;Rは、アミド結合を介してα−アミノ酸基に連結した炭素数8〜14の飽和脂肪酸またはヒドロキシ酸に由来する直鎖アルキル鎖であり;Rは、炭素数1〜18の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル鎖または芳香族基であり;Rは、
【0006】
【化2】

【0007】
【化3】


または
【0008】
【化4】


であり;nは0〜4である]
【0009】
で示されるカチオン性界面活性剤は、微生物に対して非常に有効な防御物質であることが実証されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
対イオンXの起源である有機酸としては、クエン酸、乳酸、酢酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸、プロピオン酸、ソルビン酸、安息香酸、炭酸、グルタル酸または他のアミノ酸、ラウリン酸ならびに脂肪酸、例えば、オレイン酸およびリノレン酸などが挙げられるのに対し、無機酸としては、リン酸、硝酸およびチオシアン酸が挙げられる。
【0011】
アニオンXの基礎であるフェノール化合物としては、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)および関連するブチル化ヒドロキシトルエン、第3ブチルヒドロキノンおよびパラベン、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンおよびブチルパラベンなどが挙げられる。
【0012】
上記の化合物群のうち最も好ましい化合物は、アルギニン一塩酸塩のラウリン酸アミドのエチルエステルであり、以下、LAEと称する(CAS番号60372−77−2)。この化合物は、現在のところ、抗菌剤としての使用が公知である。実際の使用時に、LAEは、ヒトが充分に耐性を有し、また、ヒトに対する毒性が非常に低いことが判明している。LAEは、下記式(2):
【0013】
【化5】

(2)
で示される化学構造を有する。
【0014】
化合物LAEは、食品中(WO03/034842)、また、化粧品および製剤中(WO03/013453、WO03/013454およびWO03/043593)に存在し得る様々な微生物、例えば、細菌、カビおよび酵母に対して、その活性が顕著である。
【0015】
上記のカチオン性界面活性剤の一般的な調製は、スペイン特許ES512643および国際特許出願WO96/21642、WO01/94292およびWO03/064669に記載されている。
【0016】
LAEは、ラウリン酸アルギナートとしても知られており、ラボラトリオス・ミレ,エス.ア.(Laboratorios Miret,S.A.)(ラミルザ(LAMIRSA),スペイン)により製造されている。ラウリン酸アルギナートは、FDA(アメリカ食品医薬品局)により、GRAS物質(一般に安全であると認められる)であるとして、GRN000164でリストに記載されている。USDA(アメリカ農務省)は、獣鳥肉中における使用を承認しており(FSIS(アメリカ食品安全検査局)指令7120.1)、また、新鮮な獣鳥肉の製品用の加工助剤としても承認している。
【0017】
上記式(2)で示されるカチオン性界面活性剤のラットにおける代謝が研究されている;これらの研究は、急速に吸収され、天然に存在するアミノ酸および脂肪酸のラウリン酸に代謝され、最終的には二酸化炭素および尿素として排出されることを示している。毒物学的な研究は、LAEが動物およびヒトに対して完全に無害であることを実証している。
【0018】
それゆえ、LAEおよび関連化合物は、すべての腐敗しやすい食品の保存に使用するのに特に適している。LAEおよび関連化合物は、同様に、化粧品に使用するのに適している。
【0019】
上述したように、上記のカチオン性界面活性剤は、様々な微生物、例えば、細菌、カビおよび酵母の増殖に対する阻害作用が顕著である。LAEの最低阻害濃度を下記の表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
上記の化合物は、使用前に、下記の食品グレードの好ましい溶媒の1つに溶解することが好ましい:水、エタノール、プロピレングリコール、イソプロピルアルコール、他のグリコール、グリコールの混合物、および、グリコールと水との混合物、ジアセチン、トリアセチン、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、ならびに、キシリトール。特定のpH値で処理を行うのであれば、対応する緩衝液の使用が推奨される。他方、上記の化合物は、固形状で容易に使用することができるし、あるいは、塩、糖、マルトデキストリン、ヒドロコロイドおよびソルビトールなどの固形担体を用いて、容易に製剤化することもできる。
【0022】
上記式(1)で示されるカチオン性界面活性剤について、他の微生物、例えば、カビおよび酵母に対する抗菌活性および生物活性が充分に実証される。
【0023】
細菌感染の有効な処理は、通常、ある種の細菌が内生胞子を産生する能力により限定される。
【0024】
内生胞子は、Firmicute phylumに属する少数の細菌により産生される休眠中の頑丈で非再生性の構造体である。大部分の内生胞子の第一の機能は、環境からストレスを受ける期間を通じて、細菌の生存を確実にすることである。それゆえ、内生胞子は、紫外線やγ線、乾燥、リゾチーム、温度、飢餓および化学的消毒剤に対して耐性を有する。内生胞子は、通常、長期間にわたり生存しうる土壌中や水中に見出される。また、内生胞子は、食品、化粧品の中、および、機器の表面に見出される。外生胞子または嚢胞を産生する細菌も存在する。
【0025】
内生胞子は、それらが形成される増殖性細胞を通常死滅させる大部分の薬剤に対して、耐性を有する。家庭用の洗浄剤は、一般に全く効果を有しないし、大部分のアルコール、4級化合物および洗剤も、全く効果を有しない。しかし、アルキル化剤、例えば、エチレンオキシドは、内性胞子に対して有効である。
【0026】
内生胞子は、極端な熱および放射線に対して耐性を有する反面、焼却または加圧殺菌により死滅させることができる。充分な長時間にわたり極端な熱に曝露すれば、一般に、ある程度の効果を有するが、沸騰または調理の時間では、多くの内生胞子は生存することができる。高エネルギーの放射線、例えば、X線およびγ線に長時間曝露しても、大部分の内生胞子を死滅させることができる。
【0027】
本発明の目的は、内生胞子を死滅させるためのさらなる薬剤を提供することにある。
【0028】
上記式(1)で示されるカチオン性界面活性剤が殺胞子活性を示すことは、本発明者らにより行われた研究の驚くべき結果である。これまで、カチオン性の保存料が殺胞子活性を示すことは、知られていなかった。
【0029】
上記のカチオン性界面活性剤の活性は、細菌およびカビの胞子、例えば、細菌およびカビの内生胞子に対して観察される。また、上記のカチオン性界面活性剤は、カビにより産生された内生胞子に対して殺胞子活性を示すという、さらに驚くべき観察が本発明者らによりなされている。
【0030】
このことは、様々な起源に由来する胞子の存在に感染しうる対象の非常に活性の高い処理を可能にする。
【0031】
本発明に使用される上記のカチオン性界面活性剤は、上記式(1)で示される、脂肪酸とエステル化された二塩基アミノ酸との縮合物から誘導される。式(1)で示されるカチオン性界面活性剤のうち最も好ましい種は、上記式(2)で示される、ラウリン酸アルギナートのエチルエステルである。
【0032】
上記のカチオン性界面活性剤は、最も簡便には、適当な溶媒に溶解させた溶液として投与すればよいが、固形状または固形製剤の適用により、洗浄される対象の処理を行うこともできる。
【0033】
上記のカチオン性界面活性剤が溶液として適用され、かつ、洗浄されるべき対象がヒトまたは動物により摂取されることを意図した製品であるなら、溶液の液体ベースは、食品を調製するのに適したいかなる液体であってもよい。このような液体としては、水、プロピレングリコール、エタノールまたはグリセリンなどが挙げられる。これら液体の混合物も同様に可能である。
【0034】
ここで、水とは、水道水、脱塩水、蒸留水、または、水に適当な塩を溶解させた溶液を意味する。
【0035】
上記のカチオン性界面活性剤を水溶液に溶解させることが好ましい。溶液の媒体としては、水道水および脱塩水などの水が最も適しており、食塩水の溶液も可能である。
【0036】
さらなる溶媒、例えば、有機溶媒を添加することは、さらに添加された溶媒が摂取者のヒトにより後に摂取される際に悪影響を及ぼさない限り可能である。一般に、さらなる溶媒を添加しても、何ら明確な利点はなく、通常の目的では、水道水の溶液を投与することで充分である。
【0037】
処理がヒトまたは動物により摂取されることを直接的に意図しない対象に向けられるなら、同様に厳格な要件を満たす必要はなく、より積極的な溶液を選択すればよい。このような対象としては、内生胞子を産生する細菌およびカビで汚染されうる産業界の環境における表面などが挙げられる。
【0038】
胞子に対して所望の効果を発揮するには、充分な濃度の式(1)で示されるカチオン性界面活性剤が必要とされる。このような充分な濃度は、溶液が式(1)で示されるカチオン性界面活性剤を、特に、好ましい実施態様では、LAEを0.001〜5質量%の濃度で含有する場合に達成される。より好ましい濃度は、0.01〜2.5質量%の範囲内であり、最も好ましい濃度は、0.05〜0.1質量%の範囲内である。
【0039】
表面上に固体状に塗布すれば、処理された表面上における、式(1)で示されるカチオン性界面活性剤の濃度は、特に、好ましい実施態様では、このような表面で所望の生物学的作用を達成するのに充分なレベルのLAEとなるはずである。このような充分なレベルの濃度は、10〜20,000ppm、より好ましくは200〜15,000ppm、さらに好ましくは500〜12,000ppmの範囲内であると期待される。これらの濃度は、処理すべき表面に塗布される上記のカチオン性界面活性剤を含有する溶液の濃度により与えられる。表面が上記式(1)で示されるカチオン性界面活性剤の固形製剤で処理されるなら、適用される量は、上記式(1)で示されるカチオン性界面活性剤の量が0.05〜200mg/dm、好ましくは0.5〜150mg/dm、より好ましくは1〜100mg/dm、最も好ましくは5〜80mg/dmの範囲内であるような量である。
【0040】
他の製品、例えば、リン酸塩、ポリソルベート、キレート剤、ナイシン、リゾチーム、および、殺胞子剤として、すでに認識されている他の製品との組合せも可能である。例えば、殺胞子処理用の水性組成物は、適当量のトリポリリン酸ナトリウムを含有することができる。このような適当量は、10〜10,000ppmであり、好ましい範囲は、100〜1,000ppmである。ポリソルベートとの組合せの場合、適当量は、10〜100,000ppmであり、ポリソルベート20は、好ましいポリソルベートである。ナイシンとの組合せの場合、適当量は、10〜600ppmであり、リゾチームとの組合せの場合、適当量は、20〜400ppmの範囲内である。
【実施例】
【0041】
実施例1
欧州標準EN13704:2002:「化学的殺菌剤−食品、産業界、家庭および機関の領域で使用される化学的殺菌剤の殺胞子活性を評価するための定量的懸濁試験−試験法および要件」に従って、LAEの殺胞子活性の測定を行った。
【0042】
本実施例の目的は、試験微生物である枯草菌(Bacillus subtilis)由来の細菌性内生胞子に対するLAEの活性を実証することにある。
【0043】
枯草菌ATCC6633由来の内生胞子を含有する試験懸濁液を栄養寒天培地上で増殖させた培養物から調製し、これに付加的な胞子形成増強成分を添加した。プレートを滅菌水で採取し、繰り返しの遠心分離および水中への再懸濁により、内生胞子を精製した。
【0044】
中和剤:中和剤混合物は、12.7%ポリソルベート80、6.0%Tamol(登録商標)SN(ナフタレン−ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩の商品名)、1.7%レシチン、1%ペプトンおよび0.1%シスチンから構成されていた。この溶液は、化学薬品がその後の細菌の増殖に悪影響を与えないように、これらの化学薬品を中和することを意図するものであった。
【0045】
与えられた製品の殺胞子活性は、この方法で設定された条件下で、懸濁液中における枯草菌の細菌性胞子の量を少なくとも10だけ減少させる能力により定義される。
【0046】
LAEは、ラミルザ(Lamirsa)により製造されている。
【0047】
上記の製品を細菌性胞子の懸濁液と設定時間である60分間にわたり接触させた。干渉物質を懸濁液に添加した。この場合、蒸留水中の0.3%ウシ血清アルブミンであった。次いで、生存胞子数をカウントする前に、予め選択された中和剤を添加することにより、上記の製品の影響を中和した。
【0048】
手法:
1.枯草菌の胞子培養物から胞子懸濁液を得る。
2.枯草菌の胞子懸濁液をカウントする。
3.上記の製品の非存在下で、胞子に対する中和剤の毒性効果を評価する。
4.上記の製品について、中和剤の中和効果を評価する。
5.上記の製品の阻害効果を評価する。
6.結果を計算する。
【0049】
結果:
結果は、下記の項目について、胞子懸濁液の生存率の減少として表される:
−上記の製品を中和することの有効性確認
−中和剤が非毒性であることの有効性確認
−上記の製品の殺胞子活性
【0050】
【表2】

【0051】
有効性確認試験の結果は、両方の場合に、生存胞子数が各試験に使用した溶液と同様であることから、使用した中和剤(ポリソルベート80の2%水溶液)が毒性を有さず、上記の製品の影響を中和することを示している。
【0052】
殺胞子活性は、以下のように計算される:
R=N×0.1/N
Nは、胞子懸濁液のcfu/mLである。
は、殺胞子活性のcfu/mLである。
【0053】
溶液の計算された減少は、以下のとおりである:
50ppmのLAEは、R=3.5×10cfu/mL
100ppmのLAEは、R=3.4×10cfu/mL
150ppmのLAEは、R=4.3×10cfu/mL
250ppmのLAEは、R>10cfu/mL
【0054】
このデータは、50ppmのLAE濃度から胞子の発芽が阻害されていることを示す。
【0055】
ある製品は、それを使用した結果、EN13704:2000に規定される条件下で60分間接触させた後、枯草菌の細菌性胞子数が10以上減少していれば、殺胞子性であると見なされる。
【0056】
それゆえ、LAEは250ppm以上の濃度で、枯草菌の内生胞子に対して殺胞子活性を示す。この種は、殺胞子活性の試験における通常の種である。この種は、炭疽病を引き起こす細菌と同じ属に属する。属が同様であることから、枯草菌の胞子は、炭疽病を引き起こす細菌である炭疽菌(Bacillus anthracis)の胞子の非病原性置換物として使用されている。これらの結果は、炭疽菌に適用可能であると考えられる。
【0057】
実施例2
欧州標準UNE−EN1275:「化学的殺菌剤および消毒剤。殺カビ活性。試験方法および要件」に従って、LAEの殺カビ活性を調べた。
【0058】
与えられた製品の殺カビ活性は、この方法で設定された条件下で、懸濁液中におけるクロコウジカビ(Aspergillus niger)のカビ性胞子の量を少なくとも10だけ減少させる能力により定義される。
【0059】
LAEは、ラミルザにより製造されている。
【0060】
上記の製品をカビ性胞子の懸濁液と設定時間(60分間)にわたり接触させた。この時間の後、生存胞子数をカウントする前に、ポリソルベート80の2%水溶液を添加することにより、上記の製品の影響を中和した。
【0061】
手法:
1.クロコウジカビの胞子培養物から胞子懸濁液を得る。
2.クロコウジカビの胞子懸濁液をカウントする。
3.上記の製品の非存在下で、胞子に対する中和剤の毒性効果を評価する。
4.上記の製品について、中和剤の中和効果を評価する。
5.上記の製品の殺カビ効果を評価する。
6.結果を計算する。
【0062】
結果:
結果は、下記の項目について、胞子懸濁液の生存率の減少として表される:
−上記の製品を中和することの有効性確認
−中和剤が非毒性であることの有効性確認
−上記の製品の殺胞子活性
【0063】
【表3】

【0064】
殺カビ活性は、以下のように計算される:
R=N×0.1/N
Nは、胞子懸濁液のcfu/mLである。
は、殺胞子活性のcfu/mLである。
【0065】
溶液の計算された減少は、以下のとおりである:
100μg/mLのLAEは、R=3.1×10cfu/mL
200μg/mLのLAEは、R=1.3×10cfu/mL
300μg/mLのLAEは、R=1.4×10cfu/mL
400μg/mLのLAEは、R=1.7×10cfu/mL
500μg/mLのLAEは、R>10cfu/mL
【0066】
このデータから分かるように、100ppmからカビ性胞子の発芽が阻害されている。
【0067】
500ppmから、カビ性胞子の発芽が全体的に阻害されることが観察された。
【0068】
ある製品は、それを使用した結果、UNE−EN1275に規定される条件下で60分間接触させた後、クロコウジカビのカビ性胞子数が10以上減少していれば、殺カビ性であると見なされる。
【0069】
それゆえ、LAEは500ppm以上の濃度で、殺カビ活性を示す。
【0070】
実施例3
欧州標準EN13704:2002:「化学的殺菌剤−食品、産業界、家庭および機関の領域で使用される化学的殺菌剤の殺胞子活性を評価するための定量的懸濁試験−試験法および要件」に従って、LAEの殺胞子活性の測定を行った。
【0071】
本実施例の目的は、試験微生物であるゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)由来の細菌性内生胞子に対するLAEの活性を実証することにある。
【0072】
ゲオバチルス・ステアロサーモフィルスATCC12980由来の内生胞子を含有する試験懸濁液を栄養寒天培地上で増殖させた培養物から調製し、これに付加的な胞子形成増強成分を添加した。プレートを滅菌水で採取し、繰り返しの遠心分離および水中への再懸濁により、内生胞子を精製した。
【0073】
中和剤:中和剤混合物は、30g/Lポリソルベート80水溶液から構成されていた。この溶液は、化学薬品がその後の細菌の増殖に悪影響を与えないように、これらの化学薬品を中和することを意図するものであった。
【0074】
与えられた製品の殺胞子活性は、この方法で設定された条件下で、懸濁液中におけるゲオバチルス・ステアロサーモフィルスの細菌性胞子の量を少なくとも10だけ減少させる能力により定義される。
【0075】
LAEは、ラミルザにより製造されている。
【0076】
上記の製品を細菌性胞子の懸濁液と設定時間である60分間にわたり接触させた。干渉物質を懸濁液に添加した。この場合、水であった。次いで、生存胞子数をカウントする前に、予め選択された中和剤を添加することにより、上記の製品の影響を中和した。
【0077】
手法:
1.ゲオバチルス・ステアロサーモフィルスの胞子培養物から胞子懸濁液を得る。
2.ゲオバチルス・ステアロサーモフィルスの胞子懸濁液をカウントする。
3.上記の製品の非存在下で、胞子に対する中和剤の毒性効果を評価する。
4.希釈−中和法の有効性を確認する。
5.上記の製品の阻害的殺胞子効果を評価する。
6.結果を計算する。
【0078】
結果:
結果は、下記の項目について、胞子懸濁液の生存率の減少として表される:
−上記の製品を中和することの有効性確認
−中和剤が非毒性であることの有効性確認
−上記の製品の殺胞子活性
【0079】
【表4】

【0080】
有効性確認試験の結果は、両方の場合に、生存胞子数が各試験に使用した溶液と同様であることから、使用した中和剤(30g/Lポリソルベート80水溶液)が毒性を有さず、上記の製品の影響を中和することを示している。
【0081】
殺胞子活性は、標準EN13704:2002の基準に従って計算される:
R=N×0.1/N
Nは、胞子懸濁液のcfu/mLである。
は、殺胞子活性のcfu/mLである。
【0082】
ゲオバチルス・ステアロサーモフィルスに対してLAEの様々な濃度で計算された減少(R)は、以下のとおりである:
58μg/mLのLAEは、R<10cfu/mL
115μg/mLのLAEは、R<10cfu/mL
173μg/mLのLAEは、R>10cfu/mL
230μg/mLのLAEは、R>10cfu/mL
460μg/mLのLAEは、R>10cfu/mL
【0083】
ある製品は、それを使用した結果、EN13704:2002に規定される条件下で60分間接触させた後、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルスの細菌性胞子数が10以上減少(R)していれば、殺胞子性であると見なされる。
【0084】
それゆえ、LAEは173μg/mL以上の濃度で、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルスの内生胞子に対して殺胞子活性を示す。
【0085】
実施例4
欧州標準EN13704:2002:「化学的殺菌剤−食品、産業界、家庭および機関の領域で使用される化学的殺菌剤の殺胞子活性を評価するための定量的懸濁試験−試験法および要件」に従って、LAEの殺胞子活性の測定を行った。
【0086】
本実施例の目的は、試験微生物であるサーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリチカム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)由来の細菌性内生胞子に対するLAEの活性を実証することにある。
【0087】
サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリチカムATCC7956由来の内生胞子を含有する試験懸濁液を栄養寒天培地上で増殖させた培養物から調製し、これに付加的な胞子形成増強成分を添加した。プレートを滅菌水で採取し、繰り返しの遠心分離および水中への再懸濁により、内生胞子を精製した。
【0088】
中和剤:中和剤混合物は、30g/Lポリソルベート80水溶液から構成されていた。この溶液は、化学薬品がその後の細菌の増殖に悪影響を与えないように、これらの化学薬品を中和することを意図するものであった。
【0089】
与えられた製品の殺胞子活性は、この方法で設定された条件下で、懸濁液中におけるサーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリチカムの細菌性胞子の量を少なくとも10だけ減少させる能力により定義される。
【0090】
LAEは、ラミルザにより製造されている。
【0091】
上記の製品を細菌性胞子の懸濁液と設定時間である60分間にわたり接触させた。干渉物質を懸濁液に添加した。この場合、水であった。次いで、生存胞子数をカウントする前に、予め選択された中和剤を添加することにより、上記の製品の影響を中和した。
【0092】
手法:
1.サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリチカムの胞子培養物から胞子懸濁液を得る。
2.サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリチカムの胞子懸濁液をカウントする。
3.上記の製品の非存在下で、胞子に対する中和剤の毒性効果を評価する。
4.希釈−中和法の有効性を確認する。
5.上記の製品の阻害的殺胞子効果を評価する。
6.結果を計算する。
【0093】
結果:
結果は、下記の項目について、胞子懸濁液の生存率の減少として表される:
−上記の製品を中和することの有効性確認
−中和剤が非毒性であることの有効性確認
−上記の製品の殺胞子活性
【0094】
【表5】

【0095】
有効性確認試験の結果は、両方の場合に、生存胞子数が各試験に使用した溶液と同様であることから、使用した中和剤(30g/Lポリソルベート80水溶液)が毒性を有さず、上記の製品の影響を中和することを示している。
【0096】
殺胞子活性は、標準EN13704:2002の基準に従って計算される:
R=N×0.1/N
Nは、胞子懸濁液のcfu/mLである。
は、殺胞子活性のcfu/mLである。
【0097】
溶液の計算された減少は、以下のとおりである:
32μg/mLのLAEは、R<10cfu/mL
51μg/mLのLAEは、R<10cfu/mL
102μg/mLのLAEは、R>10cfu/mL
205μg/mLのLAEは、R>10cfu/mL
【0098】
ある製品は、それを使用した結果、EN13704:2002に規定される条件下で60分間接触させた後、サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリチカムの細菌性胞子数が10以上減少(R)していれば、殺胞子性であると見なされる。
【0099】
それゆえ、LAEは102μg/mL以上の濃度で、サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリチカムの内生胞子に対して殺胞子活性を示す。
【0100】
実施例5
欧州標準EN13704:2002:「化学的殺菌剤−食品、産業界、家庭および機関の領域で使用される化学的殺菌剤の殺胞子活性を評価するための定量的懸濁試験−試験法および要件」に従って、LAEの殺胞子活性の測定を行った。
【0101】
本実施例の目的は、試験微生物であるクロストリジウム スポロゲネス(Clostridium sporogenes)由来の細菌性内生胞子に対するLAEの活性を実証することにある。
【0102】
クロストリジウム スポロゲネスATCC7955由来の内生胞子を含有する試験懸濁液を栄養寒天培地上で増殖させた培養物から調製し、これに付加的な胞子形成増強成分を添加した。プレートを滅菌水で採取し、繰り返しの遠心分離および水中への再懸濁により、内生胞子を精製した。
【0103】
中和剤:中和剤混合物は、30g/Lポリソルベート80水溶液から構成されていた。この溶液は、化学薬品がその後の細菌の増殖に悪影響を与えないように、これらの化学薬品を中和することを意図するものであった。
【0104】
与えられた製品の殺胞子活性は、この方法で設定された条件下で、懸濁液中におけるクロストリジウム スポロゲネスの細菌性胞子の量を少なくとも10だけ減少させる能力により定義される。
【0105】
LAEは、ラミルザにより製造されている。
【0106】
上記の製品を細菌性胞子の懸濁液と設定時間である60分間にわたり接触させた。干渉物質を懸濁液に添加した。この場合、水であった。次いで、生存胞子数をカウントする前に、予め選択された中和剤を添加することにより、上記の製品の影響を中和した。
【0107】
手法:
1.クロストリジウム スポロゲネスの胞子培養物から胞子懸濁液を得る。
2.クロストリジウム スポロゲネスの胞子懸濁液をカウントする。
3.上記の製品の非存在下で、胞子に対する中和剤の毒性効果を評価する。
4.希釈−中和法の有効性を確認する。
5.上記の製品の阻害的殺胞子効果を評価する。
6.結果を計算する。
【0108】
結果:
結果は、下記の項目について、胞子懸濁液の生存率の減少として表される:
−上記の製品を中和することの有効性確認
−中和剤が非毒性であることの有効性確認
−上記の製品の殺胞子活性
【0109】
【表6】

【0110】
有効性確認試験の結果は、両方の場合に、生存胞子数が各試験に使用した溶液と同様であることから、使用した中和剤(30g/Lポリソルベート80水溶液)が毒性を有さず、上記の製品の影響を中和することを示している。
【0111】
殺胞子活性は、標準EN13704:2002の基準に従って計算される:
R=N×0.1/N
Nは、胞子懸濁液のcfu/mLである。
は、殺胞子活性のcfu/mLである。
【0112】
溶液の計算された減少(R)は、以下のとおりである:
13μg/mLのLAEは、R<10cfu/mL
26μg/mLのLAEは、R<10cfu/mL
51μg/mLのLAEは、R>10cfu/mL
64μg/mLのLAEは、R>10cfu/mL
【0113】
ある製品は、それを使用した結果、EN13704:2002に規定される条件下で60分間接触させた後、クロストリジウム スポロゲネスの細菌性胞子数が10以上減少(R)していれば、殺胞子性であると見なされる。
【0114】
それゆえ、LAEは51μg/mL以上の濃度で、クロストリジウム スポロゲネスの内生胞子に対して殺胞子活性を示す。
【0115】
実施例6
欧州標準EN13704:2002:「化学的殺菌剤−食品、産業界、家庭および機関の領域で使用される化学的殺菌剤の殺胞子活性を評価するための定量的懸濁試験−試験法および要件」に従って、LAEとトリポリリン酸ナトリウムとの組合せの殺胞子活性の測定を行った。
【0116】
本実施例の目的は、試験微生物であるゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)由来の細菌性内生胞子に対するLAEとトリポリリン酸ナトリウムとの組合せの活性を実証することにある。
【0117】
ゲオバチルス・ステアロサーモフィルスATCC12980由来の内生胞子を含有する試験懸濁液を栄養寒天培地上で増殖させた培養物から調製し、これに付加的な胞子形成増強成分を添加した。プレートを滅菌水で採取し、繰り返しの遠心分離および水中への再懸濁により、内生胞子を精製した。
【0118】
中和剤:中和剤混合物は、30g/Lポリソルベート80水溶液から構成されていた。この溶液は、化学薬品がその後の細菌の増殖に悪影響を与えないように、これらの化学薬品を中和することを意図するものであった。
【0119】
与えられた製品の殺胞子活性は、この方法で設定された条件下で、懸濁液中におけるゲオバチルス・ステアロサーモフィルスの細菌性胞子の量を少なくとも10だけ減少させる能力により定義される。
【0120】
LAEは、ラミルザにより製造されている。
【0121】
以下の溶液を試験した:
(1)LAE(1%)とポリソルベート20(7.5%)との溶液
(2)トリポリリン酸ナトリウム(5%)とポリソルベート20(10%)との溶液
(3)LAE(1%)とトリポリリン酸ナトリウム(0.2%)とポリソルベート20(7.5%)と塩化ナトリウム(0.4%)とを含有する溶液
(4)LAE(1%)とトリポリリン酸ナトリウム(5.0%)とポリソルベート20(7.5%)とを含有する溶液。
【0122】
上記の製品を細菌性胞子の懸濁液と設定時間である60分間にわたり接触させた。干渉物質を懸濁液に添加した。この場合、蒸留水中の0.3%ウシ血清アルブミンであった。次いで、生存胞子数をカウントする前に、予め選択された中和剤を添加することにより、上記の製品の影響を中和した。
【0123】
手法:
1.ゲオバチルス・ステアロサーモフィルスの胞子培養物から胞子懸濁液を得る。
2.ゲオバチルス・ステアロサーモフィルスの胞子懸濁液をカウントする。
3.上記の製品の非存在下で、胞子に対する中和剤の毒性効果を評価する。
4.希釈−中和法の有効性を確認する。
5.上記の製品の阻害的殺胞子効果を評価する。
6.結果を計算する。
【0124】
結果:
結果は、下記の項目について、胞子懸濁液の生存率の減少として表される:
−上記の製品を中和することの有効性確認
−中和剤が非毒性であることの有効性確認
−上記の製品の殺胞子活性
【0125】
【表7】

【0126】
有効性確認試験の結果は、両方の場合に、生存胞子数が各試験に使用した溶液と同様であることから、使用した中和剤(30g/Lポリソルベート80水溶液)が毒性を有さず、上記の製品の影響を中和することを示している。
【0127】
殺胞子活性は、標準EN13704:2002の基準に従って、下記式を用いて計算される:
R=N×0.1/N
Nは、胞子試験懸濁液のcfu/mL数値である。
は、上記の製品の殺胞子活性に関する試験後の試験胞子のcfu/mL数値である。
【0128】
ゲオバチルス・ステアロサーモフィルスに対して様々な濃度で試験された上記の製品について見出された生存率の減少は、以下のとおりである:
【0129】
【表8】

【0130】
【表9】

【0131】
【表10】

【0132】
【表11】

【0133】
標準EN13704:2002に従って、少なくとも10cfu/mLの減少が見出される場合に、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルスATCC12980に対する上記の製品の殺胞子活性を評価する。
【0134】
F.1は、濃度25.5mg/mL、20℃で1時間接触させた後に殺胞子活性を有する。これは、204μg/mLのLAEである。
F.2は、濃度2.56mg/mL、20℃で1時間接触させた後に殺胞子活性を有する。これは、102μg/mLのトリポリリン酸ナトリウムである。
F.3は、濃度6.37mg/mL、20℃で1時間接触させた後に殺胞子活性を有する。これは、51μg/mLのLAEである。
F.4は、濃度2.56mg/mL、20℃で1時間接触させた後に殺胞子活性を有する。これは、20μg/mLのLAEである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

(1)
[式中、Xは、有機酸または無機酸から誘導される対イオン、好ましくはBr、ClまたはHSO、またはフェノール化合物に基づくアニオンであり;Rは、アミド結合を介してα−アミノ酸基に連結した炭素数8〜14の飽和脂肪酸またはヒドロキシ酸に由来する直鎖状のアルキル鎖であり;Rは、炭素数1〜18の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル鎖または芳香族基であり;Rは、
【化2】


【化3】


または
【化4】


であり;nは0〜4である]
で示される、脂肪酸とエステル化された二塩基アミノ酸との縮合から誘導されたカチオン性界面活性剤の殺胞子処理への使用。
【請求項2】
式(1)で示されるカチオン性界面活性剤が下記式(2):
【化5】

(2)
で示されるアルギニン一塩酸塩のラウリン酸アミドのエチルエステル(LAE)である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
細菌から発生する胞子の処理への請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
カビから発生する胞子の処理への請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
溶液の調製用溶媒が、水、プロピレングリコール、エタノール、グリセリンまたはこれら液体の混合物である請求項3または4に記載の使用。
【請求項6】
前記溶液が、保存料、酸化防止剤、界面活性剤、増粘剤、酵素阻害剤、有機および無機塩、有機および無機酸、ならびに、液状および固形担体などの成分をさらに含有する請求項5に記載の使用。
【請求項7】
製剤中における前記カチオン性界面活性剤の濃度が0.0001〜5質量%の範囲内である請求項3〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記カチオン性界面活性剤が、10〜100,000ppm、好ましくは100〜10,000ppmの範囲内の用量レベルのポリソルベートと組み合わせられる前記請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
前記カチオン性界面活性剤がさらなる殺胞子剤と組み合わされる前記請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
前記さらなる殺胞子剤が、10〜10,000ppm、好ましくは100〜1,000ppmの範囲内の用量レベルのトリポリリン酸ナトリウムである請求項9に記載の使用。
【請求項11】
胞子が、食品、化粧品の中、および、機器の表面に存在する前記請求項のいずれかに記載の使用。

【公表番号】特表2011−526593(P2011−526593A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515435(P2011−515435)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058197
【国際公開番号】WO2010/000744
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(508030039)
【Fターム(参考)】