説明

カチオン重合性組成物、インクジェット用インク組成物及び画像形成方法

【課題】 硬化性に優れたカチオン重合性組成物を提供し、インク硬化性、基材密着性に優れ、滲みのない高品位の画像を得られ、かつ保存性に優れたインクジェット用インク組成物及びこのインクジェット用インク組成物を用いた画像形成方法を提供する。
【解決手段】 1つ以上のオキセタン環を有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、少なくとも1つ以上のオキシラン環を有し、かつ、オキシラン環を構成する酸素原子の隣接炭素原子に少なくとも1つの芳香族基が置換した化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有することを特徴とするカチオン重合性組成物、インクジェット用インク組成物及び画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキセタン環含有化合物と特定のオキシラン環含有化合物、活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物を含有するカチオン重合性組成物、及びこれを用いたインクジェット用インク組成物と画像形成方法に関し、詳しくは、オキセタン環含有化合物とオキシラン環を構成する酸素原子の隣接炭素原子上に芳香族基を少なくとも1つ以上有するオキシラン環含有化合物および活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物を含有するカチオン重合性組成物及びこれを用いたインクジェット用インク組成物を用い、反応性が高くなおかつ保存性も良好で、かつ高画質な画像を得ることのできる光硬化型のインクジェット用インク組成物及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作製出来るため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御する記録装置や、色再現、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。今日のインクジェット記録方式の画質向上は、記録装置、インク、専用紙の全てが揃って初めて達成されている。
【0003】
しかしながら、専用紙を必要とするインクジェットシステムは、記録媒体が制限されること、記録媒体のコストアップが問題となる。そこで、専用紙と異なる被転写媒体へインクジェット方式により記録する試みが多数なされている。具体的には、室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジェット方式、速乾性の有機溶剤を主体としたインクを用いるソルベント系インクジェット方式や、記録後紫外線(UV)光により架橋させるUVインクジェット方式などである。
【0004】
中でも、UVインクジェット方式は、ソルベント系インクジェット方式に比べ比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い記録媒体への記録が出来る点で、近年注目されつつあり、紫外線硬化型インクジェットインクが開示されて(例えば、特許文献1、2参照。)いる。
【0005】
UVインクとしては、主にラジカル重合型、カチオン重合型が知られている。紫外線硬化型インクジェット記録方式においては、画質、即ち着弾ドット径は、着弾後の光照射タイミング、光照射照度、エネルギー、インク液滴サイズ、インクの感度、表面エネルギー、粘度、基材の濡れ性、着弾配列、誤差拡散パターンなどの因子により制御される。特に、画質を大きく左右する要因としては、インクの感度、粘度、表張、基材濡れ性と露光条件である。この中でも、インク感度は、ラジカル重合系の場合は酸素による重合阻害の影響を受けるためインク膜厚や露光照度に大きく依存し、カチオン重合系においては温度と湿度に大きく依存する。
【0006】
ラジカル重合型紫外線硬化インクにおいては、酸素による重合阻害を改善するためには、酸素阻害を受けないモノマー、開始剤、開始助剤の工夫や、窒素などの不活性化ガスによりパージする方法等が知られている。
【0007】
カチオン重合型紫外線硬化インクにおいては、湿度依存の影響を改善するためには、着弾したインクを加熱する方法(例えば、特許文献3参照。)が知られている。
【0008】
カチオン重合硬化技術の応用分野の一つであるカチオン重合型紫外線硬化インクで用いられるカチオン重合性組成物を構成するモノマーとしては、オキシラン環を持つエポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物が知られている。
【0009】
特に、エポキシ化合物とオキセタン化合物とを共に用いることにより、重合速度を顕著に増加させることが知られて(例えば、非特許文献1、特許文献4参照。)いる。特に、オキセタン化合物は、良好な耐熱性、接着性、耐薬品性を有することから、反応性を高めるエポキシ化合物との併用は有用である。
【0010】
この技術の応用例として、紫外線硬化型のインクジェットに用いることが開示されて(例えば、特許文献5参照。)いる。紫外線によりインクを硬化する紫外線硬化型インクジェット記録方式は、インク吸収性の乏しい基材に対しても画像形成する方法として、近年注目を集めている。
【0011】
一般的には、紫外線硬化型のインクとしては、ラジカル重合型インクのものが良く知られ、実用化されている。一方、カチオン重合型のインクは、ラジカル重合型インクに見られるような酸素による重合阻害が無く、低照度の光源を用いることができること、アクリルモノマーが持つ臭気も無いこと、素材が低刺激性であることなど有利な点があるが、未だ実用化に至っていない。
【0012】
その一因としては、高湿下で著しく感度低下する性質、温度により感度が依存する性質が挙げられる。環境依存性のあるインクは、その画質が環境に依存するという本質的な課題を有する。
【0013】
カチオン重合系のインクを用い、着弾したインクを加熱して光照射する方法が開示されて(例えば、特許文献6参照。)いる。しかしながら、加熱機構はプリンターコスト、熱に弱い基材などの適用の観点で好ましいものとは言えない。特定構造のオキセタンとエポキシ化合物を併用した活性エネルギー線硬化組成物が開示されて(例えば、特許文献7参照。)おり、また、特定のオキセタン化合物と芳香族基を有するエポキシ化合物を併用した硬化組成物が開示されている(例えば、特許文献8参照。)が、いずれの場合においても、エポキシ化合物のオキシラン環の隣接炭素原子に芳香族基が置換した構造は開示されていない。また、オキセタン化合物と併用し、反応速度を向上させる化合物として、2−(4−メトキシフェニル)−3,3−ジメチルオキセタンが開示されて(例えば、特許文献9参照。)いる。この化合物は、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテルなどのオキセタン化合物と脂環式エポキシ化合物との併用において、脂環式エポキシ化合物を代替できる程度の反応性がある。しかしながら、蛍光灯のような低照度光源を用いる場合においては、高湿環境における感度レベルはまだ十分なものとは言えなかった。
【特許文献1】特開平6−200204号公報 (実施例)
【特許文献2】特表2000−504778号公報 (実施例1〜5)
【特許文献3】特開2002−137375号公報 (明細書第3〜5頁)
【非特許文献1】東亞合成研究年報 TREND2号(1999年)、「オキセタン化合物の光カチオン硬化システムへの応用」
【特許文献4】特許第2679586号明細書 (実施例)
【特許文献5】特開2001−220526号公報 (実施例)
【特許文献6】特開2002−137375号公報 (明細書第3〜5頁)
【特許文献7】特開平7−53711号公報 (実施例1)
【特許文献8】特開2001−40085号公報 (実施例1〜8)
【特許文献9】特開2001−181386号公報 (実施例1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、硬化性に優れたカチオン重合性組成物を提供することであり、さらに、インク硬化性、基材密着性に優れ、滲みのない高品位の画像を得られ、かつ保存性に優れたインクジェット用インク組成物及びこのインクジェット用インク組成物を用いた画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0016】
(請求項1)
1つ以上のオキセタン環を有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、少なくとも1つ以上のオキシラン環を有し、かつ、オキシラン環を構成する酸素原子の隣接炭素原子に少なくとも1つの芳香族基が置換した化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有することを特徴とするカチオン重合性組成物。
【0017】
(請求項2)
少なくとも1つ以上のオキセタン環を有し、かつ、オキセタン環を構成する酸素原子の隣接炭素原子に少なくとも1つの芳香族基が置換した化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、少なくとも1つ以上のオキシラン環を有し、かつ、オキシラン環を構成する酸素原子の隣接炭素原子に少なくとも1つの芳香族基が置換した化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有することを特徴とするカチオン重合性組成物。
【0018】
(請求項3)
活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のカチオン重合性組成物。
【0019】
(請求項4)
活性エネルギー線が紫外線であることを特徴とする請求項3に記載のカチオン重合性組成物。
【0020】
(請求項5)
活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物が下記一般式(b)で表されるスルホニウム塩化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカチオン重合性組成物。
【0021】
【化1】

【0022】
(式中、Rb1からRb3は各々置換基を表し、Xb-は対イオンを表す。)
(請求項6)
請求項1〜5のいずれか1項に記載のカチオン重合性組成物を含有することを特徴とするインクジェット用インク組成物。
【0023】
(請求項7)
請求項6に記載のインクジェット用インク組成物を、選択的にインク滴の吐出制御可能な少なくとも1つのノズルを有する記録ヘッドにより、記録材料上に該インクジェット用インク組成物をインク滴として吐出して該記録材料上へ噴射し、該インク滴が着弾した後、活性エネルギー線を照射して該インク滴を硬化させることを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、反応性が高くなおかつ保存性も良好なカチオン重合性組成物を提供することができ、本発明のカチオン重合性組成物を用いることで長期間保存した場合でも優れた反応性を維持しながらさらに増粘抑制に優れ、低照度の光源でも環境湿度に影響を受けずにインク硬化性、基材密着性に優れ、滲みのない高品位、高画質な画像が得られるインクジェット用インク組成物及びこのインクジェット用インク組成物を用いた画像形成方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意検討を行った結果、オキセタン環含有化合物と特定のオキシラン環含有化合物、活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物を含有するカチオン重合性組成物を用いた場合に、環境湿度の影響を受けず、安定した硬化性を有するカチオン重合性硬化組成物が得られることを見出し、さらに、特定のオキセタン環含有化合物と特定のオキシラン環含有化合物、活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物を用いた場合に、低照度の光源でも優れた硬化性を有するカチオン重合性組成物が得られることを見出し、これを用いたインクジェット用インク組成物においては、硬化性、硬化膜特性ならびに保存性が非常に優れ、かつ高画質な画像を得ることができることを見いだし、本発明に至った次第である。
【0026】
以下本発明について詳細に説明する。まず、本発明における少なくとも一つ以上のオキセタン環を有する化合物(本明細書中においては、オキセタン環含有化合物、オキセタン化合物とも記載し、いずれも同義の化合物を表す)について説明する。オキセタン環とは環状4員環エーテル構造を表し、本発明の少なくとも一つ以上のオキセタン環を有する化合物とは、4員環エーテル構造を分子中に少なくとも一つ以上有していれば良く、他の部分構造は特に制限は無い。本発明のオキセタン化合物のオキセタン環の数およびその他の部分構造は、本発明のカチオン重合性組成物を実際に使用するにあたり、使用者の所望する性能を発揮するために必要な種々の性能評価を検討の上、決定すればよい。
【0027】
下記一般式(1)で表されるオキセタン化合物は本発明においてより好ましい。
【0028】
【化2】

【0029】
一般式(1)において、R1〜R6は、各々水素原子または置換基を表す。ただし、R1〜R6は全てが同時に水素原子を表すことはない。
【0030】
一般式(1)において、R1〜R6で各々表される置換基としては、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、アセチレニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、プロパルギル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、複素芳香族基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基、ピロリル基、2−キノリル基、1−イソキニリル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基、2−テトラヒドロフラニル基、2−テトラヒドロチエニル基、2−テトラヒドロピラニル基、3−テトラヒドロピラニル基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、が挙げられる。R1とR2、R3とR4、R5とR6が互いに結合して2価の基となり環を形成してもよい。R1〜R6で各々表される置換基として好ましいのは、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、芳香族炭化水素基、複素芳香族基、ハロゲン原子、フッ化炭化水素基である。
【0031】
これらのR1〜R6で各々表される基は、更に置換基を有していてもよい。
【0032】
1〜R6で各々表される置換基に置換可能な基の例としてはアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、アセチレニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、複素芳香族基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基、ピロリル基、2−キノリル基、1−イソキニリル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基、2−テトラヒドロフラニル基、2−テトラヒドロチエニル基、2−テトラヒドロピラニル基、3−テトラヒドロピラニル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基等が挙げられ、これらの置換基は、上述したR1〜R6で各々表される置換基に置換可能な基の例と同義の基によってさらに置換されていてもよく、また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0033】
1〜R6で各々表される置換基に置換可能な基として好ましいのは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、芳香族炭化水素基、複素芳香族基、水酸基、フッ化炭化水素基である。R1〜R6で表される置換基の任意の位置のいずれかが、一般式(1)と同義のオキセタン環を置換基として有し、二官能以上の多官能オキセタン化合物となっても良い。
【0034】
本発明のオキセタン化合物は、オキセタン環の2位もしくは3位に置換基を有することが好ましい。
【0035】
オキセタン環の2位に置換可能な置換基としては特に制限は無いが、好ましくは、芳香族基であり、本発明の芳香族基とは、上述した、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、複素芳香族基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基、ピロリル基、2−キノリル基、1−イソキニリル基等)と同義の基を表す。これらの芳香族基はさらに置換基を有していても良く、置換基の例としては、上述したハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基と同義の基である。2位の置換基が芳香族基の場合、さらに3位に置換基を有していても良く、好ましい置換基の例としては、上述したアルキル基、アルコキシ基と同義の基である。
【0036】
2位に置換基を有する本発明のオキセタン化合物は下記一般式(A)もしくは下記一般式(B)で表されるオキセタン化合物がより好ましい。
【0037】
【化3】

【0038】
一般式(A)中QAは(mA+nA)価の芳香族基を表し、RA1からRA4は各々水素原子または置換基を表し、RA5は置換基を表し、mAは1から3の正数をあらわし、nAは0から5の整数をあらわす。QAで表される芳香族基は、(mA+nA)価の上述した芳香族基と同義の基を表す。RA1からRA4で表される置換基は上述したR1からR6で表される置換基と同義の基を表し、RA1からRA4は各々好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基である。RA5で表される置換基は上述したR1からR6で表される置換基と同義の基を表し、複数個のRA5は各々同一でも異なっていても良く、互いに結合して2価の基となり環を形成してもよい。RA5は好ましくは、アルキル基、アルコキシ基であり、複数個のRA5のうち少なくとも一つはアルコキシ基であることがより好ましい。mAは好ましくは1から2の整数であり、nAは好ましくは0から3の整数であり、より好ましくは0から2の整数であり、mA+nAは1から6の整数であることが好ましく、より好ましくは1から3の整数である。
【0039】
【化4】

【0040】
一般式(B) 中QBは(nB+2)価の芳香族基を表し、RB1からRB4は各々水素原子または置換基を表し、RB5は置換基を表し、LBはmB価の連結基を表し、mBは2から4の整数を表し、nBは0から4の整数をあらわす。
Bで表される芳香族基は、(nB+2)価の上述した芳香族基と同義の基を表す。RB1からRB4で表される置換基は上述したR1からR6で表される置換基と同義の基を表し、RB1からRB4は各々好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基である。RB5で表される置換基は上述したR1からR6で表される置換基と同義の基を表し、複数個のRB5は各々同一でも異なっていても良く、互いに結合して2価の基となり環を形成してもよい。RB5はアルキル基、アルコキシ基であることがより好ましい。mBは好ましくは2もしくは3の整数であり、nBは好ましくは0から3の整数であり、より好ましくは0から2の整数である。
【0041】
Bは、主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数0〜15のmB価の連結基あるいは単結合であることが好ましく、主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い2価の連結基の例としては、以下の列挙する基及びこれらの基と−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
メチレン基[−CH2−]、エチリデン基[>CHCH3]、イソプロピリデン基[>C(CH32]、1,2−エチレン基[−CH2CH2−]、1,2−プロピレン基[−CH(CH3)CH2−]、1,3−プロパンジイル基[−CH2CH2CH2−]、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(CH32CH2−]、2,2−ジメトキシ−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(OCH32CH2−]、2,2−ジメトキシメチル−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(CH2OCH32CH2−]、1−メチル−1,3−プロパンジイル基[−CH(CH3)CH2CH2−]、1,4−ブタンジイル基[−CH2CH2CH2CH2−]、1,5−ペンタンジイル基[−CH2CH2CH2CH2CH2−]、オキシジエチレン基[−CH2CH2OCH2CH2−]、チオジエチレン基[−CH2CH2SCH2CH2−]、3−オキソチオジエチレン基[−CH2CH2SOCH2CH2−]、3,3−ジオキソチオジエチレン基[−CH2CH2SO2CH2CH2−]、1,4−ジメチル−3−オキサ−1,5−ペンタンジイル基[−CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2−]、3−オキソペンタンジイル基[−CH2CH2COCH2CH2−]、1,5−ジオキソ−3−オキサペンタンジイル基[−COCH2OCH2CO−]、4−オキサ−1,7−ヘプタンジイル基[−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2−]、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基[−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−]、1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基[−CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2−]、5,5−ジメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2C(CH32CH2OCH2CH2−]、5,5−ジメトキシ−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2C(OCH32CH2OCH2CH2−]、5,5−ジメトキシメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2C(CH2OCH32CH2OCH2CH2−]、4,7−ジオキソ−3,8−ジオキサ−1,10−デカンジイル基[−CH2CH2O−COCH2CH2CO−OCH2CH2−]、3,8−ジオキソ−4,7−ジオキサ−1,10−デカンジイル基[−CH2CH2CO−OCH2CH2O−COCH2CH2−]、1,3−シクロペンタンジイル基[−1,3−C58−]、1,2−シクロヘキサンジイル基[−1,2−C610−]、1,3−シクロヘキサンジイル基[−1,3−C610−]、1,4−シクロヘキサンジイル基[−1,4−C610−]、2,5−テトラヒドロフランジイル基[2,5−C46O−]、p−フェニレン基[−p−C64−]、m−フェニレン基[−m−C64−]、α,α′−o−キシリレン基[−o−CH2−C64−CH2−]、α,α′−m−キシリレン基[−m−CH2−C64−CH2−]、α,α′−p−キシリレン基[−p−CH2−C64−CH2−]、フラン−2,5−ジイル−ビスメチレン基[2,5−CH2−C42O−CH2−]、チオフェン−2,5−ジイル−ビスメチレン基[2,5−CH2−C42S−CH2−]、イソプロピリデンビス−p−フェニレン基[−p−C64−C(CH32−p−C64−]。
【0042】
3価以上の連結基としては、上記で列挙した2価の連結基から任意の部位の水素原子を必要なだけ除いてできる基、及びそれらと−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0043】
上述したオキセタン化合物の製造方法は特に制限されず、従来知られた方法に従えば良く、以下の文献に記載の方法に準じて合成することができる。
【0044】
A:Hu Xianming,Richard M.Kellogg,Synthesis,533〜538,May(1995)
B:A.O.Fitton,J.Hill,D.Ejane,R.Miller,Synth.,12,1140(1987)
C:Toshiro Imai and Shinya Nishida,Can.J.Chem.Vol.59,2503〜2509(1981)
D:Nobujiro Shimizu,Shintaro Yamaoka and Yuho Tsuno,Bull.Chem.Soc.Jpn.,56,3853〜3854(1983)
E:Walter Fisher and Cyril A.Grob,Helv.Chim.Acta.,61,2336(1978)
F:Chem.Ber.101,1850(1968)
G:“Heterocyclic Compounds with Three− and Four−membered Rings”,Part Two,Chapter IX,Interscience Publishers,John Wiley & Sons,New York(1964)
H:Bull.Chem.Soc.Jpn.,61,1653(1988) I:Pure Appl.Chem.,A29(10),915(1992) J:Pure Appl.Chem.,A30(2&3),189(1993)
K:特開平6−16804号公報
L:ドイツ特許第1,021,858号明細書
以下に一般式(1)、一般式(A)、一般式(B)で表されるオキセタン化合物の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0045】
【化5】

【0046】
【化6】

【0047】
【化7】

【0048】
【化8】

【0049】
【化9】

【0050】
【化10】

【0051】
【化11】

【0052】
【化12】

【0053】
【化13】

【0054】
【化14】

【0055】
【化15】

【0056】
【化16】

【0057】
【化17】

【0058】
オキセタン環の3位に置換可能な置換基としては特に制限は無いが、好ましくは上述したアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、芳香族炭化水素基、複素芳香族基、ハロゲン原子、フッ化炭化水素基と同義の基を上げることができる。
【0059】
3位に置換基を有するオキセタン化合物としては、2位が置換されていないオキセタン化合物がより好ましい。2位が置換されていないオキセタン化合物の1例としては、下記一般式(101)で示される化合物が挙げられる。
【0060】
【化18】

【0061】
一般式(101)において、R1は水素原子やメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基またはチエニル基である。R2はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜6個のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等の芳香環を有する基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等の炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、またはエチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等の炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基等である。本発明で使用するオキセタン化合物としては、1個のオキセタン環を有する化合物を使用することが、得られる組成物が粘着性に優れ、低粘度で作業性に優れるため、特に好ましい。
【0062】
2個のオキセタン環を有する化合物の一例としては、下記一般式(102)で示される化合物等が挙げられる。
【0063】
【化19】

【0064】
一般式(102)において、R1は上記一般式(101)におけるそれと同様の基である。R3は、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の線状または分枝状アルキレン基、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等の線状または分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等の線状または分枝状不飽和炭化水素基、またはカルボニル基またはカルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基等である。
【0065】
また、R3としては、下記一般式(103)、(104)及び(105)で示される基から選択される多価基も挙げることができる。
【0066】
【化20】

【0067】
一般式(103)において、R4は水素原子やメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のアルコキシ基、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、またはカルバモイル基である。
【0068】
【化21】

【0069】
一般式(104)において、R5は酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF32、またはC(CH32を表す。
【0070】
【化22】

【0071】
一般式(105)において、R6はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、またはアリール基である。nは0〜2000の整数である。R7はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基の炭素数1〜4個のアルキル基、またはアリール基である。R7としては、更に下記一般式(106)で示される基から選択される基も挙げることができる。
【0072】
【化23】

【0073】
一般式(106)において、R8はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、またはアリール基である。mは0〜100の整数である。
【0074】
2個のオキセタン環を有する化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0075】
【化24】

【0076】
例示化合物11は、前記一般式(102)において、R1がエチル基、R3がカルボキシル基である化合物である。また、例示化合物12は、前記一般式(102)において、R1がエチル基、R3が前記一般式(105)でR6及びR7がメチル基、nが1である化合物である。
【0077】
2個のオキセタン環を有する化合物において、上記の化合物以外の好ましい例としては、下記一般式(107)で示される化合物がある。
【0078】
【化25】

【0079】
一般式(107)において、R1は前記一般式(101)のR1と同義である。
【0080】
また、3〜4個のオキセタン環を有する化合物の一例としては、下記一般式(108)で示される化合物が挙げられる。
【0081】
【化26】

【0082】
一般式(108)において、R1は前記一般式(101)におけるR1と同義である。R9としては、例えば、下記A〜Cで示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記Dで示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基または下記Eで示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは3または4である。
【0083】
【化27】

【0084】
上記Aにおいて、R10はメチル基、エチル基またはプロピル基等の低級アルキル基である。また、上記Dにおいて、pは1〜10の整数である。
【0085】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物の一例としては、例示化合物13が挙げられる。
【0086】
【化28】

【0087】
更に、上記説明した以外の1〜4個のオキセタン環を有する化合物の例としては、下記一般式(109)で示される化合物が挙げられる。
【0088】
【化29】

【0089】
一般式(109)において、R8は前記一般式(106)のR8と同義である。R11はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基またはトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
【0090】
本発明で使用するオキセタン化合物の好ましい具体例としては、以下に示す化合物がある。
【0091】
【化30】

【0092】
【化31】

【0093】
上述したオキセタン環を有する各化合物の製造方法は、特に限定されず、従来知られた方法に従えばよく、例えば、パティソン(D.B.Pattison,J.Am.Chem.Soc.,3455,79(1957))が開示している、ジオールからのオキセタン環合成法等がある。また、これら以外にも、分子量1000〜5000程度の高分子量を有する1〜4個のオキセタン環を有する化合物も挙げられる。これらの具体的化合物例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0094】
【化32】

【0095】
次に、少なくとも1つ以上のオキシラン環を有し、かつ、オキシラン環を構成する酸素原子の隣接炭素原子に少なくとも1つの芳香族基が置換した化合物(以下本発明のオキシラン化合物、あるいは本発明のエポキシ化合物とも記載し、いずれも同義の化合物を表す)について説明する。本発明のオキシラン環とは3員環環状エーテル構造を指し、オキシラン環を有する化合物の例としては通常エポキシ化合物として知られている化合物である。本発明のオキシラン化合物とは、3員環環状エーテル構造を分子中に少なくとも一つ以上有し、オキシラン環の2位に芳香族基を有していれば他の部分構造は特に制限は無い。本発明のオキシラン化合物のオキシラン環の数およびその他の部分構造は、本発明のカチオン重合性組成物を実際に使用するにあたり、使用者の所望する性能を発揮するために必要な種々の性能評価を検討の上、決定すればよい。
【0096】
本発明の芳香族基とは、上述した、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、複素芳香族基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基、ピロリル基、2−キノリル基、1−イソキニリル基等)と同義の基を表す。これらの芳香族基はさらに置換基を有していても良く、置換基の例としては、上述した一般式(1)中R1からR6で表される基と同義の基であり、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基である。
【0097】
本発明のオキシラン化合物は下記一般式(C)もしくは下記一般式(D)で表される化合物がより好ましい。
【0098】
【化33】

【0099】
一般式(C)中QCは(mC+nC)価の芳香族基を表し、RC1およびRC2は各々水素原子または置換基を表し、RC3は置換基を表し、mCは1から3の整数をあらわし、mCは0から5の整数をあらわす。QCで表される芳香族基は、(mC+mC)価の上述した芳香族基と同義の基を表す。RC1およびRC2で表される置換基は上述したR1からR6で表される置換基と同義の基を表し、RC1およびRC2は各々好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基であり、RC1およびRC2は同時に水素原子とはならない事が好ましい。RC3で表される置換基は上述したR1からR6で表される置換基と同義の基を表し、複数個のRC3は各々同一でも異なっていても良く、互いに結合して2価の基となり環を形成してもよい。RC3は好ましくは、アルキル基、アルコキシ基であり、複数個のRC3のうち少なくとも一つはアルコキシ基であることがより好ましい。mCは好ましくは1から2の整数であり、mCは好ましくは0から3の整数であり、より好ましくは0から2の整数であり、mC+mCは1から6の整数であることが好ましく、より好ましくは1から3の整数である。
【0100】
【化34】

【0101】
一般式(D)中QDは(nD+2)価の芳香族基を表し、RD1およびRD2は各々水素原子または置換基を表し、RD3は置換基を表し、LDはmD価の連結基を表し、mDは2から4の整数を表し、nDは0から4の整数をあらわす。
【0102】
Dで表される芳香族基は、(nD+2)価の上述した芳香族基と同義の基を表す。RD1およびRD2で表される置換基は上述したR1からR6で表される置換基と同義の基を表し、RD1およびRD2は各々好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基であり、RD1およびRD2は同時に水素原子とはならない事が好ましい。RD3で表される置換基は上述したR1からR6で表される置換基と同義の基を表し、複数個のRD3は各々同一でも異なっていても良く、互いに結合して2価の基となり環を形成してもよい。RD3はアルキル基、アルコキシ基であることがより好ましい。mDは好ましくは2もしくは3の整数であり、nDは好ましくは0から3の整数であり、より好ましくは0から2の整数である。
【0103】
Dは、主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数0〜15のmD価の連結基あるいは単結合であることが好ましく、主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い2価の連結基の例としては、上述した一般式(B)中のLBと同義の連結基を挙げることができる。3価以上の連結基としても、上述した一般式(B)中のLBと同義の連結基を挙げることができる。
【0104】
上述した本発明のオキシラン化合物の製造方法は特に制限されず、従来知られた方法に従えば良く、以下の文献に記載の方法に準じて合成することができる。
【0105】
A:E.Borredon,F.Clavellinas,M.Delmas,A.Gaset,J.V.Sinisterra,J.Org.Chem.,55,501〜504(1990).
B:Elisabeth Borredon,Michel Delmas,Antoine Gaset,Tetrahedron Letters,23(50),5283〜5286(1982).
C:E.J.Corey,Michael Chaykovsky,J.Amer.Chem.Soc.,87,1353〜1364(1965).
D:A.Guy,J.Doussot,C.Ferroud,R.Garreau,A.Godefroy−Falguieres,SYNTHESIS,821〜822,September(1992).
E:Luis Bohe,Majed Kammoun,Tetrahedron Letters,43803〜805(2002).
F:Pausacker Lynch,J.Chem.Soc.,1525(1955).
以下に本発明のオキシラン化合物、一般式(C)および一般式(D)で表される化合物の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0106】
【化35】

【0107】
【化36】

【0108】
【化37】

【0109】
【化38】

【0110】
本発明のカチオン重合性組成物はさらに活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤、光カチオン重合開始剤,カチオン重合開始剤とも記載する)を含有しても良い。
【0111】
カチオン重合性組成物で用いる光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニックス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
【0112】
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物の、BF4-、B(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、p−CH364SO3-塩、CF3SO3-塩などのスルホン酸塩を挙げることができる。対アニオンとしてボレート化合物をもつものおよびPF6-塩が酸発生能力が高く好ましい。オニウム化合物の具体的な例を以下に示す。
【0113】
【化39】

【0114】
第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができる。具体的な化合物を以下に例示する。
【0115】
【化40】

【0116】
第3に、ハロゲン化水素を発生するハロゲン化物も用いることができる。以下に具体的な化合物を例示する。
【0117】
【化41】

【0118】
第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
【0119】
【化42】

【0120】
本発明で用いられる光カチオン重合開始剤としては、アリールスルホニウム塩誘導体(例えば、ユニオン・カーバイド社製のサイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−6974、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172)、アリルヨードニウム塩誘導体(例えば、ローディア社製のRP−2074)、アレン−イオン錯体誘導体(例えば、チバガイギー社製のイルガキュア261)、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤が挙げられる。
【0121】
活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物として好ましくは、前記一般式(b)で表されるスルホニウム塩化合物である。
【0122】
一般式(b)において、Rb1からRb3は置換基を表し、それぞれが同一でも異なる置換基でも良く、該置換基としては特に制限は受けないが、例としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、複素芳香族基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)等が挙げられ、これらのRb1からRb3で表される置換基はさらに置換基を有していても良く、Rb1からRb3で表される置換基に置換可能な基の例としては、上述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、複素芳香族基、複素環基の他に、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、水酸基、ニトロ基、カルボキシル基等が挙げられ、これらの置換基は、上述した置換基によってさらに置換されていてもよく、また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。RB1からRB3は各々任意に互いに結合して環を形成していてもよい。Rb1からRb3は好ましくは、アルキル基、芳香族炭化水素基であり、これらはさらに置換基を有していても良く、該置換基としては上述したRb1からRb3で表される置換基に置換可能な基の例を挙げることができる。
【0123】
b-は対イオンを表し、該対アニオンとしては、F-、Cl-、Br-などのハロゲンイオン、BF4-、B(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、GaF6-、などの錯イオン、ベンゼンスルホン酸イオン(例えばp−CH364SO3-、C65SO3-、)、アルキルスルホン酸イオン(例えばCH3SO3-、C25SO3-)、フッ化アルキルスルホン酸イオン(例えばCF3SO3-、C25SO3-、C919SO3-)、フッ化アルキルベンゼンスルホン酸イオン(例えばp−CF3−C64SO3-、p−CF3−C64SO3-)、フッ化ベンゼンスルホン酸イオン(例えばp−F−C64SO3-、C65SO3-、)などのスルホネートイオンを挙げることができる。対アニオンとしては、PF6-、BF4-、SbF6-、GaF6-、AsF6-、B(C654-、フッ化アルキルスルホン酸イオン(例えばCF3SO3-、C25SO3-、C919SO3-)、がより好ましく、BF4-、B(C654-およびPF6-が最も好ましい。
【0124】
一般式(b)で表される化合物は下記一般式(I−1)、(I−2)、(I−3)で表されるスルホニウム塩のいずれかであることが好ましい.
【0125】
【化43】

【0126】
上記一般式(I−1)中、R11、R12、R13は置換基を表し、m、n、pは0〜2の整数を表す。X11-は対イオンを表す。
【0127】
【化44】

【0128】
上記一般式(I−2)中、R14は置換基を表し、qは0〜2の整数を表す。R15、R16は置換、無置換のアルキル基、置換、無置換のアルケニル基、置換、無置換のアルキニル基、または置換、無置換のアリール基を表す。X12-は対イオンを表す。
【0129】
【化45】

【0130】
上記一般式(I−3)中、R17は置換基を表し、rは0〜3の整数を表す。R18は水素原子または置換、無置換のアルキル基を表し、R19、R20は置換、無置換のアルキル基、置換、無置換のアルケニル基、置換、無置換のアルキニル基、または置換、無置換のアリール基を表す。X13-は対イオンを表す。
【0131】
更に、一般式(I−1)、(I−2)、(I−3)で表されるスルホニウム塩について説明する。一般式(I−1)で、R11、R12、R13は置換基を表す。置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数3〜6個のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数1〜6個のアルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基等)、炭素数1〜6個のアルキニル基(例えば、アセチレニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)、炭素数1〜6個のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基等)、炭素数6〜14のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、炭素数6〜10のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基等)、炭素数6〜10のアリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等)、炭素数4〜8のヘテロ原子含有芳香族環基(例えば、フリル基、チエニル基等)、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0132】
置換基として好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシル基である。これらの置換基のうち可能なものは更に置換されていてもよい。m、n、pは0〜2の整数を表しそれぞれが1以上であることが好ましい。X11-は対アニオンを表す。対アニオンとしては、BF4-、B(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-などの錯イオン、p−CH364SO3-、CF3SO3-などのスルホネートイオンを挙げることができる。対アニオンとしてはボレートイオンおよびPF6-が酸発生能力が高く好ましい。
【0133】
一般式(I−2)で、R14は置換基を表す。置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数3〜6個のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数1〜6個のアルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基等)、炭素数1〜6個のアルキニル基(例えば、アセチレニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)、炭素数1〜6個のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基等)、炭素数6〜14のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、炭素数6〜10のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基等)、炭素数6〜10のアリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等)、炭素数4〜8のヘテロ原子含有芳香族環基(例えば、フリル基、チエニル基等)、ニトロ基、シアノ基、等が挙げられる。好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基である。これらの置換基のうち可能なものは更に置換されていてもよい。qは0〜2の整数を表し1以上であることが好ましく、より好ましくは2である。
【0134】
またR15、R16は置換、無置換のアルキル基、置換、無置換のアルケニル基、置換、無置換のアルキニル基、または置換、無置換のアリール基を表す。置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数3〜6個のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数1〜6個のアルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基等)、炭素数1〜6個のアルキニル基(例えば、アセチレニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)、炭素数1〜6個のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基等)、炭素数6〜14のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、炭素数6〜10のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基等)、炭素数6〜10のアリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等)、炭素数4〜8のヘテロ原子含有芳香族環基(例えば、フリル基、チエニル基等)、ニトロ基、シアノ基、水酸基等が挙げられる。好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基である。
【0135】
15、R16として好ましくは、置換、無置換のアルキル基、または置換、無置換のアリール基であり、置換基として好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、水酸基である。
【0136】
12-は対アニオンを表す。対アニオンとしては、BF4-、B(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-などの錯イオン、p−CH364SO3-、CF3SO3-などのスルホネートイオンを挙げることができる。対アニオンとしてはボレートイオンおよびPF6-が酸発生能力が高く好ましい。
【0137】
一般式(I−3)で、R17は置換基を表す。置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数3〜6個のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数1〜6個のアルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基等)、炭素数1〜6個のアルキニル基(例えば、アセチレニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)、炭素数6〜14のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、炭素数4〜8のヘテロ原子含有芳香族環基(例えば、フリル基、チエニル基等)、ニトロ基、シアノ基、等が挙げられる。好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基である。rは0〜3の整数を表し1以上であることが好ましく、より好ましくは2である。
【0138】
18は水素原子または置換、無置換のアルキル基を表し、R19、R20は置換、無置換のアルキル基、置換、無置換のアルケニル基、置換、無置換のアルキニル基、または置換、無置換のアリール基を表す。置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数3〜6個のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数1〜6個のアルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基等)、炭素数1〜6個のアルキニル基(例えば、アセチレニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)、炭素数6〜14のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、炭素数4〜8のヘテロ原子含有芳香族環基(例えば、フリル基、チエニル基等)、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基である。
【0139】
18として好ましくは、水素原子または無置換の低級アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基)であり、R19、R20として、好ましくは置換、無置換のアルキル基、または置換、無置換のアリール基であり、置換基として、好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基である。X13-は対アニオンを表す。対アニオンとしては、BF4-、B(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-などの錯イオン、p−CH364SO3-、CF3SO3-などのスルホネートイオンを挙げることができる。対アニオンとしてはボレートイオンおよびPF6-が酸発生能力が高く好ましい。
【0140】
以下に、一般式(I−1)、(I−2)、(I−3)で表されるスルホニウム塩の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0141】
【化46】

【0142】
【化47】

【0143】
【化48】

【0144】
【化49】

【0145】
【化50】

【0146】
さらに一般式(I−1)は下記一般式(T−1)で表されるスルホニウム塩であることがより好ましい。
【0147】
【化51】

【0148】
式中、RT11、RT12はアルキル基もしくは芳香族基を表し、ZT1は酸素原子または硫黄原子を表し、RT13、RT14は各々アルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、mt1は0から4の整数を表し、nt1及びpt1は各々1から5の整数を表し、XT1-は対アニオンを表す。
【0149】
更に、一般式(T−1)で表されるスルホニウム塩について説明する。
【0150】
一般式(T−1)において、RT11、RT12はアルキル基もしくは芳香族基を表し、該アルキル基は直鎖でも分岐を有していても、環状になっていてもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、該芳香族基としては芳香族炭化水素環基でも芳香族複素環基でもよく、縮合環を有していてもよく、例としては芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)等が挙げられる。
【0151】
上述したアルキル基もしくは芳香族基は、更に置換基を有していていもよく、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよく、縮合環を有していてもよく、該置換基の例としては、上述したアルキル基の他に、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、複素芳香族基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)、ヘテロ環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。
【0152】
これらの置換基は上記の置換基によって更に置換されていてもよく、またこれらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。RT11、RT12で表されるアルキル基もしくは芳香族基は、更に置換基を有していても有していなくてもよいが、好ましくは無置換のアルキル基もしくは芳香族基であるか、またはハロゲン原子が置換したアルキル基、もしくはアルコキシ基が置換した芳香族基であり、より好ましくは無置換のアルキル基もしくは芳香族基であるか、またはフッ素原子が置換したアルキル基、またはアルコキシ基が置換した芳香族基であり、フッ素原子が置換したアルキル基の例としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等を挙げる事ができる。
【0153】
T1は酸素原子または硫黄原子を表し、ZT1はスルホニウムイオンが結合したベンゼン環に対して、オルト位もしくはパラ位に結合する事が好ましく、パラ位で結合することがより好ましい。RT13、RT14は各々アルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、該アルキル基、芳香族基は上述したRT11、RT12と同義の基を表し、該アルコキシ基、該アリールオキシ基としては、酸素原子に上述したRT11、RT12と同義の基が一箇所結合した基であり、例としてはアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)等が挙げられ、該アルキルチオ基、該アリールチオ基としては、硫黄原子に上述したRT11、RT12と同義の基が一箇所結合した基であり、例としてはアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)等が挙げられる。
【0154】
上述した芳香族基、アリールオキシ基、アリールチオ基は、縮合環を有していてもよい。上述したアルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基は更に置換基を有していていもよく、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよく、縮合環を有していてもよく、該置換基の例としては、上述したRT11の置換基の例と同義の基を挙げることができ、これらの置換基は、更に置換基によって置換されていてもよく、また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。RT13、RT14で表される、アルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基は、更に置換基を有していても、有していなくてもよいが、好ましくは無置換のアルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基であるか、またはハロゲン原子が置換したアルキル基、もしくはアルコキシ基が置換した芳香族基であり、より好ましくは無置換のアルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基であるか、またはフッ素原子が置換したアルキル基、またはアルコキシ基が置換した芳香族基であり、フッ素原子が置換したアルキル基の例としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等を挙げる事ができる。
【0155】
mt1は0から4の整数を表し好ましく0から3であり、より好ましくは0から2であり、nt1及びpt1は各々1から5の整数を表し、各々好ましくは1から3であり、より好ましくは各々1から2である。複数個のRT12、RT13、RT14、は各々同じでも異なってもよく、RT11とRT12あるいは複数個のRT12同士が結合して環を形成してもよく、RT12とRT13あるいは複数個のRT13同士が結合して環を形成してもよく、RT12とRT14あるいは複数個のRT14同士が結合して環を形成してもよく、RT12とRT14が結合して環を形成してもよい。RT13の少なくとも一つはスルホニウムイオンが結合したベンゼン環に対して、オルト位もしくはパラ位に結合する事が好ましく、パラ位で結合することがより好ましい。RT14の少なくとも一つはスルホニウムイオンが結合したベンゼン環に対して、オルト位もしくはパラ位に結合する事が好ましく、パラ位で結合することがより好ましい。
【0156】
T1-は対アニオンを表し、対アニオンとしてはF-、Cl-、Br-などのハロゲンイオン、BF4-、B(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、GaF6-などの錯イオン、ベンゼンスルホン酸イオン(例えば、p−CH364SO3-、C65SO3-)、アルキルスルホン酸イオン(例えば、CH3SO3-、C25SO3-)、フッ化アルキルスルホン酸イオン(例えば、CF3SO3-、C25SO3-、C919SO3-)、フッ化アルキルベンゼンスルホン酸イオン(例えば、p−CF3−C64SO3-、p−CF3−C64SO3-)、フッ化ベンゼンスルホン酸イオン(例えば、p−F−C64SO3-、C65SO3-)などのスルホネートイオンを挙げることができる。対アニオンとしては、PF6-、BF4-、SbF6-、GaF6-、AsF6-、B(C654-、フッ化アルキルスルホン酸イオン(例えばCF3SO3-、C25SO3-、C919SO3-)がより好ましく、BF4-、B(C654-及びPF6-が最も好ましい。
【0157】
以下に、一般式(T−1)で表されるスルホニウム塩の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0158】
【化52】

【0159】
【化53】

【0160】
【化54】

【0161】
【化55】

【0162】
【化56】

【0163】
【化57】

【0164】
カチオン重合開始剤は、カチオン重合性を有する化合物100質量部に対して、0.2〜20質量部の比率で含有させることが好ましい。重合開始剤の含有量が0.2質量部未満では、硬化物を得ることが困難であり、20質量部を越えて含有させても、更なる硬化性向上効果はない。これらカチオン重合開始剤、1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0165】
また、本発明のカチオン重合性組成物においては、さらに他のエポキシ化合物を含有しても良い。
【0166】
エポキシ化合物において、芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルであり、例えばビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、ならびにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0167】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによつて得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0168】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0169】
これらのエポキシドのうち、迅速な硬化性を考慮すると、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0170】
脂環式エポキシドとして特に好ましいのは以下の一般式(A)、(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)で表される化合物である。
【0171】
【化58】

【0172】
式中、R100は置換基を表し、m0は0〜2の整数を、r0は1〜3の整数を表す。L0は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr0+1価の連結基または単結合を表す。
【0173】
【化59】

【0174】
式中、R101は置換基を表し、m1は0〜2の整数を、p1、q1はそれぞれ0または1を、r1は1〜3の整数を表す。L1は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr1+1価の連結基または単結合を表す。
【0175】
【化60】

【0176】
式中、R102は置換基を表し、m2は0〜2の整数を、p2、q2はそれぞれ0または1を、r2は1〜3の整数を表す。L2は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr2+1価の連結基または単結合を表す。
【0177】
【化61】

【0178】
式中、R103は置換基を表し、m3は0〜2の整数を、p3は0または1を表す。L3は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜8の2価の連結基または単結合を表す。
【0179】
【化62】

【0180】
式中、R104は置換基を表し、m4は0〜2の整数を、p4は0または1を表す。L4は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜8の2価の連結基または単結合を表す。
【0181】
【化63】

【0182】
式中、R105は置換基を表し、m5は1または2を表す。
【0183】
【化64】

【0184】
式中、R106は置換基を表し、m6は0〜2の整数を表す。
【0185】
前記一般式(A)、一般式(I)〜一般式(VI)において、R100、R101、R102、R103、R104、R105、R106は各々置換基を表す。該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等)等が挙げられる。上記置換基の中でも好ましいものは、アルキル基、アルコキシ基、またはアルコキシカルボニル基である。
【0186】
前記一般式(A)、一般式(I)〜一般式(VI)において、m0、m1、m2、m3、m4、m6は各々0〜2の整数を表し、0または1が好ましい。また、m5は1または2を表す。
【0187】
前記一般式(A)において、L0は、主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr0+1価の連結基あるいは単結合を、前記一般式(I)において、L1は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr1+1価の連結基あるいは単結合を、前記一般式(II)において、L2は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜15のr2+1価の連結基あるいは単結合を、前記一般式(III)、前記一般式(IV)において、L3、L4は各々主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数8の2価の連結基あるいは単結合を表す。
【0188】
上記主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い2価の連結基の例としては、以下の列挙する基及びこれらの基と−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0189】
メチレン基[−CH2−]、
エチリデン基[>CHCH3]、
イソプロピリデン[>C(CH32
1,2−エチレン基[−CH2CH2−]、
1,2−プロピレン基[−CH(CH3)CH2−]、
1,3−プロパンジイル基[−CH2CH2CH2−]、
2,2−ジメチル−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(CH32CH2−]、
2,2−ジメトキシ−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(OCH32CH2−]、
2,2−ジメトキシメチル−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(CH2OCH32CH2−]、
1−メチル−1,3−プロパンジイル基[−CH(CH3)CH2CH2−]、
1,4−ブタンジイル基[−CH2CH2CH2CH2−]、
1,5−ペンタンジイル基[−CH2CH2CH2CH2CH2−]、
オキシジエチレン基[−CH2CH2OCH2CH2−]、
チオジエチレン基[−CH2CH2SCH2CH2−]、
3−オキソチオジエチレン基[−CH2CH2SOCH2CH2−]、
3,3−ジオキソチオジエチレン基[−CH2CH2SO2CH2CH2−]、
1,4−ジメチル−3−オキサ−1,5−ペンタンジイル基[−CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2−]、
3−オキソペンタンジイル基[−CH2CH2COCH2CH2−]、
1,5−ジオキソ−3−オキサペンタンジイル基[−COCH2OCH2CO−]、
4−オキサ−1,7−ヘプタンジイル基[−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2−]、
3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基[−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−]、
1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基[−CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2−]、
5,5−ジメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2C(CH32CH2OCH2CH2−]、
5,5−ジメトキシ−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2C(OCH32CH2OCH2CH2−]、
5,5−ジメトキシメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2C(CH2OCH32CH2OCH2CH2−]、
4,7−ジオキソ−3,8−ジオキサ−1,10−デカンジイル基[−CH2CH2O−COCH2CH2CO−OCH2CH2−]、
3,8−ジオキソ−4,7−ジオキサ−1,10−デカンジイル基[−CH2CH2CO−OCH2CH2O−COCH2CH2−]、
1,3−シクロペンタンジイル基[−1,3−C58−]、
1,2−シクロヘキサンジイル基[−1,2−C610−]、
1,3−シクロヘキサンジイル基[−1,3−C610−]、
1,4−シクロヘキサンジイル基[−1,4−C610−]、
2,5−テトラヒドロフランジイル基[2,5−C46O−]
p−フェニレン基[−p−C64−]、
m−フェニレン基[−m−C64−]、
α,α′−o−キシリレン基[−o−CH2−C64−CH2−]、
α,α′−m−キシリレン基[−m−CH2−C64−CH2−]、
α,α′−p−キシリレン基[−p−CH2−C64−CH2−]、
フラン−2,5−ジイル−ビスメチレン基[2,5−CH2−C42O−CH2−]
チオフェン−2,5−ジイル−ビスメチレン基[2,5−CH2−C42S−CH2−]
イソプロピリデンビス−p−フェニレン基[−p−C64−C(CH32−p−C64−]
3価以上の連結基としては、上記で列挙した2価の連結基から任意の部位の水素原子を必要なだけ除いてできる基、及びそれらと−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0190】
0、L1、L2、L3、L4は各々置換基を有していても良い。置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等)等が挙げられる。置換基として好ましいのは、アルキル基、アルコキシ基、またはアルコキシカルボニル基である。
【0191】
0、L1、L2としては、主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでも良い炭素数1〜8の2価の連結基が好ましく、あるいはL0、L1、L2、L3、L4としては各々主鎖が炭素のみからなる炭素数1〜5の2価の連結基がより好ましい。
【0192】
p1、q1は各々0または1を表し、p1+q1が1以上であることが好ましい。p2、q2は各々0または1を表し、各々1が好ましい。p3、p4は各々0または1を表す。
【0193】
以下に、好ましい脂環式エポキシドの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0194】
【化65】

【0195】
【化66】

【0196】
【化67】

【0197】
【化68】

【0198】
【化69】

【0199】
【化70】

【0200】
【化71】

【0201】
【化72】

【0202】
【化73】

【0203】
【化74】

【0204】
本発明のカチオン重合性組成物はさらにビニルエーテル化号物を含有していていも良い。ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0205】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0206】
光重合促進剤としては、アントラセン、アントラセン誘導体(例えば、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−100)、フェノチアジン(10H−フェノチアジン)、フェノチアジン誘導体が(例えば、10−メチルフェノチアジン、10−エチルフェノチアジン、10−デシルフェノチアジン、10−アセチルフェノチアジン10−デシルフェノチアジン−5−オキシド、10−デシルフェノチアジン−5,5−ジオキシド、10−アセチルフェノチアジン−5,5−ジオキシド、など)挙げられる。これらの光重合促進剤は1種又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0207】
本発明のインクジェットインクには、上記説明した構成要素の他に、各種の添加剤を用いることができる。
【0208】
本発明のインクジェットインクで用いる色材としては、重合性化合物の主成分に溶解または分散できる色材が使用出来るが、耐候性の点から顔料が好ましい。
【0209】
本発明で好ましく用いることのできる顔料を、以下に列挙する。
【0210】
C.I.Pigment Yellow−1、3、12、13、14、17、81、83、87、95、109、42、
C.I.Pigment Orange−16、36、38、
C.I.Pigment Red−5、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、144、146、185、101、
C.I.Pigment Violet−19、23、
C.I.Pigment Blue−15:1、15:3、15:4、18、60、27、29、
C.I.Pigment Green−7、36、
C.I.Pigment White−6、18、21、
C.I.Pigment Black−7、
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。また、顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましく、高分子分散剤としてはAvecia社のSolsperseシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。分散媒体は、溶剤または重合性化合物を用いて行うが、本発明に用いる活性光線硬化型インクでは、インク着弾直後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤ではなく重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0211】
顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化の感度を維持することができる。
【0212】
本発明のインクジェットインクにおいては、色材濃度として、インク全体の1質量%乃至10質量%であることが好ましい。
【0213】
本発明においては、吐出安定性、保存性を向上させる目的で、熱塩基発生剤も用いることができる。
【0214】
熱塩基発生剤としては、例えば、加熱により脱炭酸して分解する有機酸と塩基の塩、分子内求核置換反応、ロッセン転位、ベックマン転位等の反応により分解してアミン類を放出する化合物や、加熱により何らかの反応を起こして塩基を放出するものが好ましく用いられる。具体的には、英国特許第998,949号記載のトリクロロ酢酸の塩、米国特許第4,060,420号に記載のアルファースルホニル酢酸の塩、特開昭59−157637号に記載のプロピール酸類の塩、2−カルボキシカルボキサミド誘導体、特開昭59−168440号に記載の塩基成分に有機塩基の他にアルカリ金属、アルカリ土類金属を用いた熱分解性酸との塩、特開昭59−180537号に記載のロッセン転位を利用したヒドロキサムカルバメート類、加熱によりニトリルを生成する特開昭59−195237号に記載のアルドキシムカルバメート類等が挙げられる。その他、英国特許第998,945号、米国特許第3,220,846号、英国特許第279,480号、特開昭50−22625号、同61−32844号、同61−51139号、同61−52638号、同61−51140号、同61−53634号〜同61−53640号、同61−55644号、同61−55645号等に記載の熱塩基発生剤が有用である。更に具体的に例を挙げると、トリクロロ酢酸グアニジン、トリクロロ酢酸メチルグアニジン、トリクロロ酢酸カリウム、フェニルスルホニル酢酸グアニジン、p−クロロフェニルスルホニル酢酸グアニジン、p−メタンスルホニルフェニルスルホニル酢酸グアニジン、フェニルプロピオール酸カリウム、フェニルプロピオール酸グアニジン、フェニルプロピオール酸セシウム、p−クロロフェニルプロピオール酸グアニジン、p−フェニレン−ビス−フェニルプロピオール酸グアニジン、フェニルスルホニル酢酸テトラメチルアンモニウム、フェニルプロピオール酸テトラメチルアンモニウムがある。上記の熱塩基発生剤は広い範囲で用いることができる。
【0215】
本発明のインクは、特開平8−248561号、同9−34106号をはじめとし、既に公知となっている活性光線の照射で発生した酸により新たに酸を発生する酸増殖剤を含有することも可能である。
【0216】
本発明のインクジェット用インクは、活性エネルギー線硬化性化合物、顔料分散剤と共に、顔料をサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することにより製造される。予め、顔料高濃度の濃縮液を調製しておき、活性エネルギー線硬化性化合物で希釈することが好ましい。通常の分散機による分散でも充分な分散が可能であり、このため、過剰な分散エネルギーがかからず、多大な分散時間を必要としないため、インク成分の分散時の変質を招きにくく、安定性に優れたインクが調製される。インクは、孔径3μm以下、更には1μm以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0217】
本発明のインクジェット用インクは、25℃での粘度が5〜50mPa・sと高めに調整することが好ましい。25℃での粘度が5〜50mPa・sのインクは、特に通常の4〜10KHzの周波数を有するヘッドから、10〜50KHzの高周波数のヘッドにおいても安定した吐出特性を示す。粘度が5mPa・s未満の場合は、高周波数のヘッドにおいて、吐出の追随性の低下が認められ、50mPa・sを越える場合は、加熱による粘度の低下機構をヘッドに組み込んだとしても吐出特性そのものの低下を生じ、吐出の安定性が不良となり、全く吐出できなくなる。
【0218】
また、本発明のインクジェット用インクは、ピエゾヘッドにおいては、10μS/cm以下の電導度とし、ヘッド内部での電気的な腐食のないインクとすることが好ましい。また、コンティニュアスタイプにおいては、電解質による電導度の調整が必要であり、この場合には、0.5mS/cm以上の電導度に調整する必要がある。
【0219】
本発明においては、インクの25℃における表面張力が、25〜40mN/mの範囲にあることが好ましい。25℃におけるインクの表面張力が25mN/m未満では、安定した出射が得られにくく、また40mN/mを越えると所望のドット径を得ることができない。25〜40mN/mの範囲外では、本発明のように、インクの粘度や含水率を制御しながら出射、光照射しても、様々な支持体に対して均一なドット径を得ることが困難となる。
【0220】
表面張力を調整するために、必要に応じて、界面活性剤を含有させてもよい。本発明に係るインクに好ましく使用される界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、重合性基を有する界面活性化合物などが挙げられる。これらの中で特に、シリコーン変性アクリレート、フッ素変性アクリレート、シリコーン変性エポキシ、フッ素変性エポキシ、シリコーン変性オキセタン、フッ素変性オキセタンなど、不飽和結合やオキシラン、オキセタン環など重合性基を有する界面活性化合物が好ましい。
【0221】
本発明のインクには、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することが出来る。記録媒体との密着性を改善するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その使用量は0.1〜5%の範囲であり、好ましくは0.1〜3%である。また、ラジカル重合性モノマーと開始剤を組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも可能である。
【0222】
本発明の画像形成方法においては、インク組成物をインクジェット記録方式により記録材料上に吐出、描画し、次いで紫外線などの活性光線を照射してインクを硬化させる。
【0223】
本発明の画像形成方法においては、インク出射時にはインクをインクジェットノズルごと加温し、インク液を低粘度させることが好ましい。加熱温度としては、30〜80℃、好ましくは35〜60℃である。
【0224】
本発明において、インクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜20μmであることが好ましい。スクリーン印刷分野の活性光線硬化型インクジェット記録では、総インク膜厚が20μmを越えているのが現状であるが、記録材料が薄いプラスチック材料であることが多い軟包装印刷分野では、前述した記録材料のカール・しわの問題でだけでなく、印刷物全体のこし・質感が変わってしまうという問題が有るため使えない。また、本発明では、各ノズルより吐出する液滴量が2〜15plであることが好ましい。
【0225】
本発明においては、高精細な画像を形成するためには、照射タイミングができるだけ早い方が好ましいが、本発明においては、インクの粘度または含水率が好ましい状態となるタイミングで光照射を開始することが好ましい。
【0226】
詳しくは、発生光線の照射条件として、インク着弾後0.001〜2.0秒の間に活性光線照射を開始することが好ましく、より好ましくは0.001〜0.4秒である。また、0.1〜3秒後、好ましくは0.2〜1秒以内に、インクの流動性が失われる程度まで光照射を行なった後、終了させることが好ましい。上記条件とすることにより、ドット径の拡大やドット間の滲みを防止することができる。
【0227】
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号に開示されている。これによると、記録ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式で記録ヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源を記録ヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらのいずれの照射方法も用いることができる。
【0228】
また、活性光線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、かつ、全印字終了後、更に活性光線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性光線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0229】
活性光線照射で用いる光源の例としては、水銀アークランプ、キセノンアークランプ、螢光ランプ、炭素アークランプ、タングステン−ハロゲン複写ランプ高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極UVランプ、低圧水銀ランプ、UVレーザー、キセノンフラッシュランプ、捕虫灯、ブラックライト、殺菌灯、冷陰極管、LEDをなどがあるが、これらに限定されないが、この中でも蛍光管が低エネルギー・低コストであり、好ましい。光源波長としては250〜370nm、好ましくには270〜320nmに発光波長のピークがある光源が、感度の点で好ましい。照度は、1〜3000mW/cm2、好ましくは1〜200mW/cm2である。また、電子線により硬化させる場合には、通常300eVの以下のエネルギーの電子線で硬化させるが、1〜5Mradの照射量で瞬時に硬化させることも可能である。
【0230】
本発明のインクジェット用インクを用いて、被記録媒体(基材ともいう)への画像印字を行うが、被記録媒体としては、従来各種の用途で使用されている広汎な合成樹脂を全て用いることができ、具体的には、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等が挙げられ、これらの合成樹脂基材の厚みや形状は何ら限定されない。
【0231】
本発明で用いることのできる基材としては、通常の非コート紙、コート紙などの他に、非吸収性支持体を用いることができるが、その中でも、基材として非吸収性支持体を用いることが好ましい。
【0232】
本発明においては、非吸収性支持体としては、各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムを挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。これらの記録材料の中でも、特に熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に本発明の構成は、有効となる。これらの基材は、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が基材の収縮に追従し難い。
【0233】
これら、各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは大きく異なり、記録材料によってインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含むが、基材として、濡れ指数が40〜60mN/mであることが好ましい。
【0234】
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録材料のコスト、プリントの作製効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録材料を使用する方が有利である。
【実施例】
【0235】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0236】
実施例1
《カチオン重合性組成物の調製》
下記の組成からなるカチオン重合性組成物101を調製した。
【0237】
オキセタン化合物:化合物例 1 75質量部
オキシラン化合物:化合物例 AP−21 20質量部
光酸発生剤:化合物例 TAS−13 5質量部
上記活性エネルギー線硬化組成物のオキセタン化合物、オキシラン化合物を表1に変更して、カチオン重合性組成物102〜135を調製した。
【0238】
得られたカチオン重合性組成物1mlを157cm2のPETフィルムに塗布し、30℃に加熱した状態で、湿度80%に保った状態で、高圧水銀灯を用いて照射エネルギー10mJ/cm2にて20秒間照射を行なった。得られた硬化組成物の粘性の変化を表1に示す。また、カチオン重合組成物10mlをサンプル瓶に密栓して温度70℃湿度80%の恒温槽内にて、3日間保存した後のカチオン重合性硬化組成物の粘性の変化を評価した。こちらの結果もあわせて表1に示す。さらに3日間保存後のカチオン重合組成物のうち粘性変化が少ないものについて再度保存前と同じ条件で紫外線照射実験を行った。結果を表1に合わせて示す。
【0239】
粘性の変化は、光未照射塗膜と光照射後の塗膜を金属スパチュラで触り、実験者の触感から判定した。「硬化」とは完全に硬化した堅牢な塗膜が形成したことを示し、「ゲル化」とはゲル状の塗膜が形成した事を示し、「増粘した」とは、光未照射塗膜と光照射後の塗膜で明らかに粘性に差があることを示し、「わずかに増粘した」とは光未照射塗膜と光照射後の塗膜で粘性にわずかに差があることを示し、「増粘せず」とは光未照射塗膜と光照射後の塗膜で触感に有意な差が見られなかった事を示す。表から明らかなように、本発明のオキセタン化合物とオキシラン化合物からなるカチオン重合性組成物に紫外線を照射すると、塗膜の硬化が生じ、重合が進行している事を示している。さらに、70℃3日間保存してもカチオン重合性組成物は良好な重合性を維持しつつ、粘度上昇がほとんど無いことを示している。
【0240】
【表1】

【0241】
<光酸発生剤>
ESACURE1187:トリフェニルスルホニウム塩(ESACURE 1187 lambertie社製)
UVI6990:トリフェニルスルホニウム塩(サイラキュアUVI6990 ユニオンカーバイド社製)
RODOSIL2074:ヨードニウム塩(RODOSIL2074 RODIA社製)
CGI552:ヨードニウム塩(CGI552 チバガイギー社製)
CI2855:アリールジアルキルスルホニウム塩(CI2855 日本曹達社製)
<オキシラン化合物>
セロキサイド3000:脂環式エポキシ(ダイセルUCB社製)
セロキサイド2021P:脂環式エポキシ(ダイセルUCB社製)
<オキセタン化合物>
OXT−221:ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル(東亞合成社製)
OXT−212:3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン
実施例2
《インクジェットインクの調製》
(マゼンタインク201の調製)
下記の組成からなるマゼンタインク1を調製した。マゼンタインク201は、光酸発生剤を除く各組成物を、サンドグラインダーを用いて4時間分散した後、光酸発生剤を添加し、0.8μmのメンブランフィルターで濾過を行った後、50℃に加熱しながら減圧脱水を行って調製した。
【0242】
顔料:C.I.ピグメントレッド184 3質量部
分散剤:ソルスパース24000(Avecia社製) 1質量部
オキセタン化合物:OXT221 75質量部
オキシラン化合物:セロキサイド3000 20質量部
光酸発生剤:UVI6990 5質量部
(インク202〜249の調製)
オキセタン化合物、オキシラン化合物、光酸発生剤、顔料を以下に示す表2に記載したような構成に変更した以外はインク201と同様に調製して本発明のインクジェット用インクであるインク201〜249を得た。
【0243】
【表2】

【0244】
表2に記載の各化合物の詳細を、以下に示す。
【0245】
<顔料>
P0:C.I.ピグメントレッド184
P1:粗製銅フタロシアニン(東洋インク製造社製「銅フタロシアニン」)の250部、塩化ナトリウムの2500部及びポリエチレングリコール(東京化成社製「ポリエチレングリコール300」)の160部を、スチレン製4.55L(1ガロン)のニーダー(井上製作所社製)に仕込み、3時間混練した。次に、この混合物を2.5リットルの温水に投入し、約80℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌しスラリー状とした後、濾過、水洗を5回繰り返して塩化ナトリウムおよび溶剤を除き、次いでスプレードライをして乾燥して顔料P1を得た。
【0246】
P2:キナクリドン系赤顔料(Ciba Geigy社製「シンカシアマゼンタRT−355−D」)の250部、塩化ナトリウムの2500部及び「ポリエチレングリコール300」の160部を、スチレン製4.55L(1ガロン)ニーダーに仕込み、P1と同様にして顔料P2を得た。
【0247】
<光酸発生剤>
ESACURE1187:トリフェニルスルホニウム塩(ESACURE 1187 lambertie社製)
UVI6990:トリフェニルスルホニウム塩(サイラキュアUVI6990 ユニオンカーバイド社製)
<オキシラン化合物>
セロキサイド3000:脂環式エポキシ(ダイセルUCB社製)
セロキサイド2021P:脂環式エポキシ(ダイセルUCB社製)
<オキセタン化合物>
OXT−221:ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル(東亞合成社製)
OXT−212:3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン
《インクジェット画像記録及び評価》
上記調製した各インクを用いて、下記の方法に従って画像記録及び得られた画像の評価を行った。また各インクをガラスサンプル瓶に密栓し、70℃80%RHの恒温槽内で3日間保存後、同様の画像記録及び画像評価を行った。
【0248】
〔画像評価A〕
(画像記録)
得られた各マゼンタインクを、液滴サイズ7plが得られるピエゾタイプのインクジェットノズル(ノズルピッチ360dpi、本発明でいうdpiとは2.54cm当たりのドット数を表す)を、ノズル部分を50℃に加熱制御し、コロナ処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として用いて出射し、マゼンタベタ画像(インク液付き量10g/m2)と6ポイントMS明朝体文字を印字した。光源は、308nmに主ピークを持つ蛍光管を用い、光源直下、基材面の照度が1mW/cm2の条件で、着弾後0.3秒後に露光を開始し、0.5秒後に露光を終了させた。
【0249】
なお、露光エネルギーは0.5mJ/cm2であった。この画像印字を30℃、20%RHおよび85%RHの環境下にて行った。
【0250】
(画像の評価)
以上のようにして得られた各画像について、下記の評価を行った。
【0251】
〈インク硬化性の評価〉
印字画像について、下記の基準に則りインク硬化性の評価を行った。
【0252】
○:露光終了直後に触っても画像はタッキネスがない
△:露光終了直後に触ると画像はタッキネスが若干あるが、1分後にはタッキネスが無くなる
×:露光終了1分後でもタッキネスが残る
〈基材接着性の評価〉
ベタ画像上に、幅25mmのセロテープ(登録商標)を貼り付けて強く圧着した後、90度の剥離角度で素早く剥離し、隔離後の画像の状態を目視観察し、下記の基準に則り基材接着性の評価を行った。
【0253】
○:テープ剥離でも画像は剥がれない
△:テープ剥離で画像が一部剥がれる
×:テープ剥離で画像が全て剥がれる
〈画像滲み耐性の評価〉
6ポイントMS明朝体文字をルーペで観察し、隣り合うドットの状態を観察し、下記の基準に則り画像滲み耐性の評価を行った。
【0254】
○:2ドット間の滲みが殆どない
△:2ドット間の滲みが僅かに見られる
×:ドットが大きく滲む
以上により得られた結果を表3、表4に示す。
【0255】
【表3】

【0256】
【表4】

【0257】
表3、表4より明らかなように、本発明のインクジェット用インク組成物は、格段に優れたインク硬化性、基材密着性に優れ、滲みのない高品位の画像を得られることが分かる。また、インク保存後においても本発明のインクジェット用インク組成物は格段に優れたインク硬化性を維持していることが分る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のオキセタン環を有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、少なくとも1つ以上のオキシラン環を有し、かつ、オキシラン環を構成する酸素原子の隣接炭素原子に少なくとも1つの芳香族基が置換した化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有することを特徴とするカチオン重合性組成物。
【請求項2】
少なくとも1つ以上のオキセタン環を有し、かつ、オキセタン環を構成する酸素原子の隣接炭素原子に少なくとも1つの芳香族基が置換した化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、少なくとも1つ以上のオキシラン環を有し、かつ、オキシラン環を構成する酸素原子の隣接炭素原子に少なくとも1つの芳香族基が置換した化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有することを特徴とするカチオン重合性組成物。
【請求項3】
活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のカチオン重合性組成物。
【請求項4】
活性エネルギー線が紫外線であることを特徴とする請求項3に記載のカチオン重合性組成物。
【請求項5】
活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物が下記一般式(b)で表されるスルホニウム塩化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカチオン重合性組成物。
【化1】

(式中、Rb1からRb3は各々置換基を表し、Xb-は対イオンを表す。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のカチオン重合性組成物を含有することを特徴とするインクジェット用インク組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のインクジェット用インク組成物を、選択的にインク滴の吐出制御可能な少なくとも1つのノズルを有する記録ヘッドにより、記録材料上に該インクジェット用インク組成物をインク滴として吐出して該記録材料上へ噴射し、該インク滴が着弾した後、活性エネルギー線を照射して該インク滴を硬化させることを特徴とする画像形成方法。

【公開番号】特開2006−45415(P2006−45415A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230621(P2004−230621)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】