説明

カットオフ周波数自動調整回路及び携帯情報端末

【課題】本発明の目的は、使用する容量比の大きなフィルタカットオフ周波数を自動調整すること、並びにその自動調整にかかる時間を短縮することにある。
【解決手段】チャネルフィルタ回路の帰還容量及び不帰還容量(接地容量)ごとにフィルタカットオフ周波数自動調整回路及び誤差修正用のレジスタを設ける。これにより、帰還容量及び不帰還容量の容量差による誤差の拡大を招くことなく、フィルタカットオフ周波数の調整が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタカットオフ周波数自動調整回路に関係し、使用する容量値の比の大きなフィルタのカットオフ周波数の自動調整回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線信号処理回路は、各機能ブロック(信号を増幅する増幅器、信号の周波数を変換するミキサ、信号の所望の帯域のみ通過させるフィルタなど)ごとに個別部品を用いて構成していた。近年の半導体技術の向上は、これらの無線信号処理回路を構成する機能ブロックを複数、1つの半導体チップへ内蔵することを可能としている。1つ或いは数個の半導体チップへ内蔵された無線信号処理回路はアンテナから受信した高周波信号を、高い品質(低雑音、所望帯域以外の信号を抑圧などによる)でより低い周波数帯の信号に変換する。
【0003】
無線信号処理回路を低コストで実現するためには、より多くの無線信号処理回路を構成する機能ブロックを1つの半導体チップへ内蔵することが望まれる。この目的に対する障害の一つが、所望以外の帯域の信号を抑圧するフィルタ回路の半導体チップへの内蔵化である。このフィルタ回路は、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ、誘電体フィルタなどが用いられ、これらにより所望以外の帯域に存在する信号を抑圧する。しかし、SAWフィルタや誘電体フィルタはその構成から、半導体チップへ内蔵することはできない。
【0004】
一般に個別部品での無線信号処理回路はスーパーヘテロダイン方式と呼ばれる構成で、SAWフィルタ等を必要とする。従って、半導体で製造する無線信号処理回路をスーパーヘテロダイン方式で構成すると半導体チップ外部にSAWフィルタや誘電体フィルタを外付けすることになる。そのため、部品点数、実装面積の増大を招く。
【0005】
これに対し、SAWフィルタや誘電体フィルタが不要なゼロIF方式、低IF方式と言った無線信号処理回路方式が提案されている。いずれも、半導体チップ間の部品定数の絶対値はばらつくが、1つの半導体チップ内での部品定数の相対値は高精度で一致するという半導体回路の長所を利用し、SAWフィルタや誘電体フィルタを必要とせず、所望の帯域以外の帯域に存在する信号の抑圧は半導体へ内蔵可能なフィルタで行なうことを特徴とする。
【0006】
ゼロIF方式、低IF方式では、所望のチャネル以外の信号を除去するフィルタをミキサ回路で周波数変換した後の低周波数帯の信号を扱うステージに配置する。以下、これをチャネルフィルタと呼ぶ。
【0007】
チャネルフィルタは、所望チャネルの隣接チャネル、隣々接チャネルに存在する信号を抑圧するものである。しかし、チャネルフィルタのマイナス3dBの直接利得を有する周波数であるカットオフ周波数が、半導体の製造ばらつき、素子の温度、電圧特性等でずれることにより受信する信号品質が劣化する。
【0008】
例えば、カットオフ周波数が高いほうにずれると、隣接チャネル、隣々接チャネルに存在する信号の抑圧度が劣化する。また、カットオフ周波数が低いほうにずれると、所望チャネルの信号電力が下がるので信号対雑音比が劣化し、受信感度が落ちる。また、デジタル変調された信号を受信する場合、シンボル間干渉特性が劣化するので、受信するデータ誤り率に影響が及ぶ。
【0009】
特開2007−184856号公報(以下特許文献1)記載の発明では、かかるフィルタの補正手段として、基準信号を生成し、該基準信号を受信部に供給・計測し、その結果に基づいてフィルタの調整を行う技術が記載されている。
【0010】
また、フィルタの調整用にデジタルPLL(フェイズロックループ)回路を使用し、フィルタの調整用信号の信頼性を保つ方法も考えられる。
【特許文献1】特開2007−184856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記文献では自身が基準信号を出力し、それを受信してフィルタの調整を行う以上、自身の動作が正常であることが条件となる。しかし、製造当初の誤差調整を行う場面で該調整対象の機器内の回路の正しい動作を補償することは、そもそも無理がある。
【0012】
また、デジタルPLLを用いれば、確かにフィルタの調整用周波数が適切なものに維持されるが、PLLでは安定までに時間がかかる。
【0013】
本発明の目的は、使用する容量比の大きなフィルタカットオフ周波数を自動調整すること、並びにその自動調整にかかる時間を短縮することにある。
【0014】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0016】
本発明の代表的な実施の形態に関わるカットオフ周波数自動調整回路は基準電圧源、電圧電流変換回路、充電回路、放電回路、複数のコンデンサを有するデジタル容量及びこのデジタル容量を制御する容量制御回路を含み、電圧電流変換回路、充電回路、放電回路、デジタル容量が第1の自動調整回路を構成し、デジタル容量はスイッチによって充電回路及び放電回路に接続され、スイッチ及び容量制御回路はクロック信号が入力され、クロック信号の電位によりスイッチが切り替えられることでデジタル容量が充電回路又は放電回路に接続され、デジタル容量は複数のコンデンサの全部又は一部をスイッチングにより並列的に接続し、デジタル容量の端子間電位の差と基準電圧源の電圧との差分の対比の結果に基づき容量制御回路回路がデジタル容量を制御することを特徴とする。
【0017】
このカットオフ周波数自動調整回路は、デジタル容量に入力される電圧及び基準電圧源の電圧の対比を行う比較器及び前記クロック信号が入力されるラッチを更に有し、クロック信号の所定のタイミングでラッチが前記比較器の出力をラッチし、容量制御回路に出力することを特徴としても良い。
【0018】
このカットオフ周波数自動調整回路の容量制御回路はバイナリーサーチ回路であることを特徴としても良い。
【0019】
また、このカットオフ周波数自動調整回路の容量制御回路は、デジタル容量の電位と基準電圧源の電位との差分が所定の電位差以内になることを目的として、前記デジタル容量を制御することを特徴としても良い。
【0020】
また、このカットオフ周波数自動調整回路は、更に電圧電流変換回路、充電回路、放電回路、デジタル容量を含む第2の自動調整回路を有することを特徴としても良い。
【0021】
このカットオフ周波数自動調整回路は、更にチャネルフィルタ回路を含み、このチャネルフィルタ回路は帰還するデジタル容量である帰還容量及び接地するデジタル容量である接地容量を有し、容量制御回路は、第1の自動調整回路のデジタル容量の制御条件で帰還容量を設定し、第2の自動調整回路のデジタル容量の制御条件で接地容量を設定することを特徴としても良い。
【0022】
また、このカットオフ周波数自動調整回路において、チャネルフィルタ回路はバタワース低域通過フィルタであることを特徴としても良い。
【発明の効果】
【0023】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0024】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態に関わるフィルタカットオフ周波数自動調整回路は、使用する容量の比の大きなフィルタのカットオフ周波数を自動かつ短時間に調整することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下図を用いて本発明に関わるカットオフ周波数自動調整回路について説明する。
【0026】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態のフィルタカットオフ周波数自動調整回路のブロック図である。このフィルタカットオフ周波数自動調整回路は、基準電圧10、抵抗20、電圧電流変換回路30、放電回路40、充電回路50、スイッチ61、デジタル容量70、比較器80、ラッチ90、クロック信号100、リセット信号110、バイナリーサーチ回路120、チャネルフィルタ回路150、帰還デジタル容量151、不帰還デジタル容量152、キャリブレーション完了信号160から構成される。
【0027】
基準電圧10は、温度や電源電圧に依存しない基準電圧源より出力される直流電圧VBGである。VBGは電圧電流変換回路30と抵抗値R1の抵抗20により、
I=VBG/R1
の直流電流に変換する。
【0028】
電圧電流変換回路30より出力された直流電流Iは充電回路50に入力される。
【0029】
クロック信号100はラッチ90及びバイナリーサーチ回路120の基準動作クロックである。また、リセット信号110はラッチ90及びバイナリーサーチ回路120に記憶された内容をリセットする信号である。本明細書中では、クロック信号100は一定の周波数Fclkのデューティ比50%の矩形波である。
【0030】
本明細書の説明では、Highになるとリセット状態になり、Lowでラッチ90等の内部記憶が可能な状態となる。リセット信号110がLowになった後、クロック信号100がHighになると、ラッチ90及びバイナリーサーチ回路120が動き始め、フィルタカットオフ周波数自動調整回路が動作を開始する。
【0031】
スイッチ61は、スイッチ極性図60に従い切り替えられるスイッチである。すなわち、クロック信号100のHigh又はLowに従って、デジタル容量70を放電回路40又は充電回路50のいずれに接続するかを決定する。
【0032】
デジタル容量70は半導体チップ上に実装された複数の容量の異なるコンデンサの集合であり、これらのコンデンサが並列に接続されスイッチングで制御されるものである。図3はこのデジタル容量70の模式図である。
【0033】
本発明の説明においては5ビットのデジタル容量を使用することを前提に説明するが、必ずしもこれにはこだわらない。本発明が想定するデジタル容量は−32%から+30%の範囲で容量を可変することができる。
【0034】
このデジタル容量70はCDcom331、#0コンデンサ340、#1コンデンサ341、#2コンデンサ342、#3コンデンサ343、#4コンデンサ344、#0スイッチ350、#1スイッチ351、#2スイッチ352、#3スイッチ353、#4スイッチ354を主要構成要素とする。また、入力端子300、出力端子310、デジタル値入力端子320を含む。
【0035】
デジタル値入力端子320から入力される5ビットのデジタル値に応じて、#0スイッチ350、#1スイッチ351、#2スイッチ352、#3スイッチ353、#4スイッチ354がオン・オフされる。すなわち、デジタル容量70内の全てのスイッチがオフされるとCDcom331の容量が該デジタル容量70の容量となる。従って、CDCom331の容量はデジタル容量70の想定する容量の68%、となる。なお、図3中の「c」はデジタル容量で実現する容量の大きさである。
【0036】
5ビットで−32%から+30%の範囲を可変させるためには、2%刻みになる。従って、#0コンデンサ340の容量はデジタル容量70の想定容量の32%、#1コンデンサ341の容量はデジタル容量70の想定容量の16%、#2コンデンサ342の容量はデジタル容量70の想定容量の8%、#3コンデンサ343の容量はデジタル容量70の想定容量の4%、#4コンデンサ344の容量はデジタル容量70の想定容量の2%となる。そしてデジタル値入力端子320から入力される5ビットのデジタル値は、それぞれ#0スイッチ350、#1スイッチ351、#2スイッチ352、#3スイッチ353、#4スイッチ354のオン・オフに対応している。バイナリーサーチ回路120はこのデジタル値入力端子320にデータを出力することで、デジタル容量70の調整を行う。
【0037】
放電回路40は、デジタル容量70の各コンデンサに蓄積された電荷を除去するための回路である。
【0038】
充電回路50は、デジタル容量70の各コンデンサに充電を行うための回路である。スイッチ61によりデジタル容量70と充電回路50が接続されると、充電回路50から電圧電流変換回路30の出力である直流電流I=VBS/R1が供給される。デジタル容量70にはスイッチ61が切り替わって入力が開始されてからの時間Δtに比例した電圧、
V=VBG/R1/C1×Δt
が入力端子300と出力端子310の間に現れる。ここでC1は、現時点におけるデジタル容量70の端子間容量である。
【0039】
比較器80は基準電圧10とデジタル容量70への入力電圧との電圧の比較を行う。デジタル容量70に流れる電流(VBG/R1/C1×Δt)と、基準電圧10の電流(VBG/R1)を対比する。
【0040】
この形態では、デジタル容量70に流れる電流が基準電圧10の電流より大きければ、比較器80の出力はHighとなる。またデジタル容量70に流れる電流が基準電圧10の電流より小さければ、比較器80の出力はLowとなる。これを、本実施の形態の条件である5ビットのデジタル容量では、5回行うと、デジタル容量70の#0スイッチ350、#1スイッチ351、#2スイッチ352、#3スイッチ353、#4スイッチ354に与えるべきデジタル値が定まる。
【0041】
バイナリーサーチ回路(容量制御回路)120は上述したデジタル容量70内の各スイッチの制御を行う。なお、ここでは容量制御回路としてバイナリーサーチ回路120を説明するが、デジタル容量70内の各スイッチの制御ができれば必ずしもこれに限られるものでない。
【0042】
以下、バイナリーサーチ回路120の動作を図4に基づき詳述する。この図において、P1からP6はクロック信号100の周期名である。またクロックはHigh→Lowで1周期を構成する。
【0043】
まず、クロック信号100の周期P1の立ち上りで、デジタル容量70の各スイッチに、
#4スイッチ=High
#3スイッチ=Low
#2スイッチ=Low
#1スイッチ=Low
#0スイッチ=Low
のデジタル値をバイナリーサーチ回路120が与える。
【0044】
周期P1のクロック信号100のHighレベルの間、スイッチ61はスイッチ極性図60の極性により、放電回路40に接続される。従って、デジタル容量70の端子間電圧は0Vになる。
【0045】
周期P1のクロック信号100のLowレベルの間、スイッチ61はスイッチ極性図60の極性により、充電回路50に接続されるため、デジタル容量70には電圧電流変換回路30の出力である直流電流VBG/R1が供給される。クロック信号100の周期P2の立ち上がり時にはデジタル容量70の端子間は、クロック信号100が周期P1の立下りから周期P2の立ち上りまでの時間Δtに比例した電圧、
V=VBG/R1/C1×Δt
が現れる。C1はデジタル容量70の容量値であり、ここではCDCom331、#4コンデンサ344の容量である(0.68+0.02)C、すなわち、デジタル容量70の想定する70%の容量である。
【0046】
この電圧がVBGより大きければ比較器80の出力はクロック信号100の周期P2の立ち上がり時点でLowレベルとなる。この比較器80の出力レベルはクロック信号100の周期P2の立ち上がり時点でラッチ90によってラッチされると同時に、バイナリーサーチ回路120が#4スイッチ354へ与えるデジタル信号値として記憶される。
【0047】
次に、周期P2のクロック信号100の立ち上りで、デジタル容量70の各スイッチに、
#4スイッチ=周期P2のクロック信号100の立ち上り時点での比較器80の出力レベル
#3スイッチ=High
#2スイッチ=Low
#1スイッチ=Low
#0スイッチ=Low
のデジタル値をバイナリーサーチ回路120が与える。
【0048】
周期P2のクロック信号100のHighレベルの間、スイッチ61はスイッチ極性図60の極性により放電回路40に接続される。これにより、デジタル容量70の端子間は0Vになる。
【0049】
周期P2のクロック信号100のLowレベルの間、スイッチ61はスイッチ極性図60の極性により、充電回路50に接続されるため、デジタル容量70には電圧電流変換回路30の出力である直流電流VBG/R1が供給される。周期P3のクロック信号100の立ち下り時には、デジタル容量70の端子間は、クロック信号100が周期P2の立ち下りから周期P3の立ち上がりまでの時間Δtに比例した電圧、
V=VBG/R1/C1×Δt
が現れる。ここでC1はCDCom331、#3コンデンサ343の容量である(0.68+0.04)C、すなわち、デジタル容量70の想定する72%の容量(#4スイッチ354がオフのとき)もしくはCDCom331、#3コンデンサ343及び#4コンデンサ344の容量の合計である74%の容量(#4スイッチ354がオンのとき)である。
【0050】
周期P1同様、この電圧がVBGより大きければ、比較器80の出力はクロック信号100の周期P3の立ち上がり時点でHighレベルに、小さければ同時点でLowレベルになる。この比較器80の出力レベルはクロック信号100の周期P3の立ち上がり時点でラッチ90にラッチされると同時に、バイナリーサーチ回路120の#3スイッチ353へ与えるデジタル信号値として記憶される。
【0051】
次に、周期P3のクロック信号100の立ち上りで、デジタル容量70の各スイッチに、
#4スイッチ=周期P2のクロック信号100の立ち上り時点での比較器80の出力レベル
#3スイッチ=周期P3のクロック信号100の立ち上り時点での比較器80の出力レベル
#2スイッチ=High
#1スイッチ=Low
#0スイッチ=Low
のデジタル値をバイナリーサーチ回路120が与える。
【0052】
周期P1及びP2同様、周期P3のクロック信号100のHighレベルの間、スイッチ61はスイッチ極性図60の極性により放電回路40に接続される。これにより、デジタル容量70の端子間は0Vになる。
【0053】
周期P3のクロック信号100のLowレベルの間でも、スイッチ61はスイッチ極性図60の極性により、充電回路50に接続されるため、デジタル容量70には電圧電流変換回路30の出力である直流電流VBG/R1が供給される。周期P3のクロック信号100の立ち下り時には、デジタル容量70の端子間は、クロック信号100が周期P3の立ち下りから周期P4の立ち上がりまでの時間Δtに比例した電圧、
V=VBG/R1/C1×Δt
が現れる。周期P1及びP2同様にC1は、オンになっている各スイッチに対応した各コンデンサの容量の合算値である。
【0054】
この電圧がVBGより大きければ、比較器80の出力はクロック信号100の周期P3の立ち上がり時点でHighレベルに、小さければ同時点でLowレベルになる。この比較器80の出力レベルはクロック信号100の周期P4の立ち上がり時点でラッチ90にラッチされると同時に、バイナリーサーチ回路120の#2スイッチ352へ与えるデジタル信号値として記憶される。
【0055】
次に、周期P4のクロック信号100の立ち上りで、デジタル容量70の各スイッチに、
#4スイッチ=周期P2のクロック信号100の立ち上り時点での比較器80の出力レベル
#3スイッチ=周期P3のクロック信号100の立ち上り時点での比較器80の出力レベル
#2スイッチ=周期P4のクロック信号100の立ち上り時点での比較器80の出力レベル
#1スイッチ=High
#0スイッチ=Low
のデジタル値をバイナリーサーチ回路120が与える。
【0056】
これまで同様、周期P4のクロック信号100のHighレベルの間、スイッチ61はスイッチ極性図60の極性により放電回路40に接続される。これにより、デジタル容量70の端子間は0Vになる。
【0057】
周期P4のクロック信号100のLowレベルの間でも、スイッチ61はスイッチ極性図60の極性により、充電回路50に接続されるため、デジタル容量70には電圧電流変換回路30の出力である直流電流VBG/R1が供給される。周期P4のクロック信号100の立ち下り時には、デジタル容量70の端子間は、クロック信号100が周期P4の立ち下りから周期P5の立ち上がりまでの時間Δtに比例した電圧、
V=VBG/R1/C1×Δt
が現れる。これまで同様にC1は、オンになっている各スイッチに対応した各コンデンサの容量の合算値である。
【0058】
この電圧がVBGより大きければ、比較器80の出力はクロック信号100の周期P5の立ち上がり時点でHighレベルに、小さければ同時点でLowレベルになる。この比較器80の出力レベルはクロック信号100の周期P5の立ち上がり時点でラッチ90にラッチされると同時に、バイナリーサーチ回路120の#1スイッチ351へ与えるデジタル信号値として記憶される。
【0059】
次に、周期P5のクロック信号100の立ち上りで、デジタル容量70の各スイッチに、
#4スイッチ=周期P2のクロック信号100の立ち上り時点での比較器80の出力レベル
#3スイッチ=周期P3のクロック信号100の立ち上り時点での比較器80の出力レベル
#2スイッチ=周期P4のクロック信号100の立ち上り時点での比較器80の出力レベル
#1スイッチ=周期P5のクロック信号100の立ち上り時点での比較器80の出力レベル
#0スイッチ=High
のデジタル値をバイナリーサーチ回路120が与える。
【0060】
周期P5のクロック信号100のHighレベルの間、スイッチ61はスイッチ極性図60の極性により放電回路40に接続される。これにより、デジタル容量70の端子間は0Vになる。
【0061】
周期P5のクロック信号100のLowレベルの間、スイッチ61はスイッチ極性図60の極性により、充電回路50に接続される。このため、デジタル容量70には電圧電流変換回路30の出力である直流電流VBG/R1が供給される。周期P5のクロック信号100の立ち下り時には、デジタル容量70の端子間は、クロック信号100が周期P5の立ち下りから周期P6の立ち上がりまでの時間Δtに比例した電圧、
V=VBG/R1/C1×Δt
が現れる。これまで同様にC1は、オンになっている各スイッチに対応した各コンデンサの容量の合算値である。
【0062】
この電圧がVBGより大きければ、比較器80の出力はクロック信号100の周期P6の立ち上がり時点でHighレベルに、小さければ同時点でLowレベルになる。この比較器80の出力レベルはクロック信号100の周期P6の立ち上がり時点でラッチ90にラッチされると同時に、バイナリーサーチ回路120の#0スイッチ350へ与えるデジタル信号値として記憶される。
【0063】
これで、各スイッチに与えるデジタル値は、
#4スイッチ=周期P2のクロック信号100の立ち上り時点での比較器80の出力レベル
#3スイッチ=周期P3のクロック信号100の立ち上り時点での比較器80の出力レベル
#2スイッチ=周期P4のクロック信号100の立ち上り時点での比較器80の出力レベル
#1スイッチ=周期P5のクロック信号100の立ち上り時点での比較器80の出力レベル
#0スイッチ=周期P6のクロック信号100の立ち上り時点での比較器80の出力レベル
という値に決定する。これは、抵抗20の抵抗値R1とデジタル容量70の端子間の容量値C1の製造バラツキを補正したもので、R1×C1の積は各スイッチへ上記のデジタル値を与えれば一定となる。
【0064】
クロック信号100の周期P6の立ち上り以降、キャリブレーション完了信号160の立ち上りでチャネルフィルタ回路150へ上記のデジタル値が与えられる。
【0065】
チャネルフィルタ回路150は必要な周波数帯域の電波のみを抽出するフィルタ回路である。図5はこのチャネルフィルタ回路150の一例である。本図においても図1と同様の動作を行う部分には図1と同じ番号を付し説明を略す。
【0066】
本チャネルフィルタ回路は帰還容量C11、C21、C31、C41、不帰還容量(接地容量)C12、C22、C32、C42、抵抗R11、R12、R21、R22、R31、R32、R41、R42、及びアンプAMP1、AMP2、AMP3、AMP4を主要構成とする。また入力端子200及び出力端子210を有する。
【0067】
このチャネルフィルタ回路は正帰還型低域通過回路で8次のバタワース低域通過フィルタを構成したものである。入力端子200から入力された信号は上記各低域通過回路により所望のカットオフ周波数より大きな周波数帯の信号が抑圧された後、出力端子210から出力される。
【0068】
図5の帰還容量C11、C21、C31、C41、不帰還容量C12、C22、C32、C42は、それぞれデジタル容量151、152となっており、与えられたデジタル値によって容量の大きさを変化させることができる。
【0069】
バイナリーサーチ回路120でR1×C1の積が一定に補正されるためのデジタル値が定まるので、同じデジタル値を与えると、カットオフ周波数は一定に補正されることになる。
【0070】
キャリブレーション完了信号160は周期P6におけるクロック信号100の立ち上りから図3の入力端子200へ入力信号が入力される前の任意の時刻に立ち上げる信号である。キャリブレーション完了信号160の立ち上りでチャネルフィルタ回路150の帰還容量[C11、C21、C31、C41]へデジタル容量70の#0スイッチないし#4スイッチへ与えたデジタル値を、チャネルフィルタ回路150の不帰還容量[C12、C22、C32、C42]へデジタル容量70の#0スイッチないし#4スイッチへ与えたデジタル値を与える。
【0071】
なお、チャネルフィルタ回路150のバタワース低域通過フィルタに対し、カットオフ周波数2MHzの動作をするための回路定数を図6に表す。
【0072】
このチャネルフィルタ回路の構成により、クロック信号がコンデンサの数+1クロックでその設定を確定することが可能となりPLL回路などを使用する場合に比べ迅速にチャネルフィルタ回路の安定動作を図ることが可能になる。
【0073】
このフィルタカットオフ周波数自動生成回路にはいくつかの問題点がある。
【0074】
1つ目は、チャネルフィルタ回路150の各アンプの利得が誤差を有した場合によるカットオフ周波数の誤差が、このフィルタカットオフ周波数自動生成回路では補正できない点である。
【0075】
2つ目は、チャネルフィルタ回路150のバタワース低域通過フィルタで用いるコンデンサ容量の容量差が大きいことである。
【0076】
容量値が最小であるC42の1.552pFから最大であるC41の40.790pFでは約26倍の広がりを持つ。従って、デジタル容量70の容量の多き差異の中心値CをC42に近い値にするとC41側での誤差が大きくなり、カットオフ周波数の誤差が大きくなる。また逆にC41に近い値にすると、C42側での誤差が大きくなり、やはりカットオフ周波数の誤差が大きくなるのである。
【0077】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施の形態におけるフィルタカットオフ周波数自動調整回路のブロック図である。このフィルタカットオフ周波数自動調整回路は、基準電圧10、抵抗20、21、電圧電流変換回路30、31、放電回路40、41、充電回路50、51、スイッチ61、62、デジタル容量70、71、比較器80、81、ラッチ90、91、クロック信号100、リセット信号110、バイナリーサーチ回路120、オフセットレジスタ値130、131、加算回路140、141、チャネルフィルタ回路150、キャリブレーション完了信号160より構成される。すなわち、図1記載の第1の実施の形態のフィルタカットオフ周波数自動調整回路と対比して、本実施の形態では、電圧電流変換回路30、31からラッチ90、91にいたる周波数自動調整回路の主要部が2系統になっている点に特徴がある。これらの周波数自動調整回路の構成は第1の実施の形態とほぼ同一である(各部品のパラメータ等は除く)。よって、各部品の説明は省略し、以下、追加部分の回路の動作を中心に説明する。
【0078】
第1の実施の形態同様、基準電圧10は温度や電源電圧に依存しない直流電圧VBGである。電圧電流変換回路30、31によって以下のように直流電流に変換される。
【0079】
I1=VBG/R1
I2=VBG/R2
まず、リセット信号110がHighとなり、ラッチ90、91とバイナリーサーチ回路120をリセットし、ラッチ等の電位をLowとすることで内部記憶を消去する。
【0080】
次にリセット信号110がLowとなり、その後、クロック信号100がHighとなると、自動調整回路が動作し始める。第1の実施の形態同様、クロック信号100は一定の周波数fclkのデューティ比50%の矩形波であるとする。
【0081】
クロック信号100がHighなので、スイッチ61、62はスイッチ極性図60の極性により、デジタル容量70は放電回路40で、デジタル容量71は放電回路41でそれぞれ全ての電荷が放電され、デジタル容量70、デジタル容量71の端子間電圧は0Vになる。これに伴い、比較器80、81の出力もLowとなる。
【0082】
クロック信号100がLowになると、スイッチ61、62によって、デジタル容量70、デジタル容量71は充電回路50、51に接続される。これにより、電圧電流変換回路30の出力である直流電流I1=VBG/R1がデジタル容量70に、電圧電流変換回路31の出力である直流電流I2=VBG/R2がデジタル容量71にそれぞれ流れる。
【0083】
デジタル容量70及びデジタル容量71にはクロック信号100がLowになってからの時間Δtに比例した電圧、
V1=VBG/R1/C1×Δt
V2=VBG/R2/C2×Δt
が現れる。ここでV1はデジタル容量70の端子間電圧、V2はデジタル容量71の端子間電圧である。またC1はデジタル容量70の端子間の容量値であり、C2はデジタル容量71の端子間の容量値である。
【0084】
なおデジタル容量70及びデジタル容量71の構成は第1の実施の形態のものと同じ、図3の構成を採るため、ここでは省略する。
【0085】
第1の実施の形態同様に、V1=VBG/R1/C1×ΔtがVBGより大きければ、比較器80の出力はHighとなり、小さければ比較器80の出力はLowとなる。同様に、V2=VBG/R2/C2×ΔtがVBGよりも大きければ、比較器81の出力はHighとなり、小さければLowとなる。
【0086】
第1の実施の形態同様、これを5ビットのデジタル容量であれば5回(クロック5周期分)行うと、デジタル容量70、71の各スイッチに与えるべきデジタル値が定まる。これらを制御するのがバイナリーサーチ回路120である。
【0087】
バイナリーサーチ回路120は第1の実施の形態のバイナリーサーチ回路120と同様であるが、制御対象が倍になったところが相違する。以下、図4に基づきバイナリーサーチ回路120の動作について説明する。
【0088】
「第1の実施の形態」同様、周期(P1ないしP6)ごとに説明する。
【0089】
周期P1のクロック信号100の立ち上がりで、デジタル容量70、71のスイッチに
#4スイッチ=High
#3スイッチ=Low
#2スイッチ=Low
#1スイッチ=Low
#0スイッチ=Low
のデジタル値をバイナリーサーチ回路120が与える。
【0090】
周期P1のクロック信号100がHighレベルの間、スイッチ61、62はスイッチ極性図60の極性により、デジタル容量70は放電回路40で、デジタル容量71は放電回路41で全ての電荷が放電され、デジタル容量70、71の端子間は0Vになる。したがって、比較器80、81の出力はLowとなる。
【0091】
周期P1のクロック信号100のLowレベルに立ち下がると、スイッチ61、62は、デジタル容量70には充電回路50により、電圧電流変換回路30の出力である直流電流I1=VBG/R1が、デジタル容量71には充電回路51により、電圧電流変換回路31の出力である直流電流I2=VBG/R2が供給される。
【0092】
周期P2のクロック信号100の立ち上がり時にデジタル容量70の端子間には、周期P1におけるクロック信号100の立ち下がりから周期P2における同信号の立ち上がりまでの時間Δtに比例した電圧、
V1=VBG/R1/C1×Δt
が現れる。またデジタル容量71の端子間には
V2=VBG/R2/C2×Δt
が現れる。ここでC1がデジタル容量70の端子間の容量値、C2はデジタル容量71の端子間の容量値である。
【0093】
電圧V1がVBGより大きければ、比較器80の出力は周期P2におけるクロック信号100の立上り時点でHighレベルに、電圧V1がVBGより小さければ、比較器80の出力はクロック信号100の周期P2の立ち上り時点でLowレベルになる。同様に、電圧V2がVBGより大きければ、比較器81の出力は周期P2におけるクロック信号100の立ち上り時点でHighレベルに、電圧V2がVBGより小さければ、比較器81の出力は周期P2におけるクロック信号100の立上り時点でLowレベルになる。
【0094】
比較器80、81の出力レベルは周期P2におけるクロック信号100の立上り時点でそれぞれラッチ90、91によってラッチされると同時に、バイナリーサーチ回路120がデジタル容量70、71の#4スイッチそれぞれに与えるデジタル信号値として記憶される。
【0095】
周期P2のクロック信号100の立ち上がりで、デジタル容量70の#0スイッチないし#4スイッチに、
#4スイッチ=周期P2におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器80の出力レベル
#3スイッチ=High
#2スイッチ=Low
#1スイッチ=Low
#0スイッチ=Low
をバイナリーサーチ回路120が与える。またデジタル容量71の#0スイッチないし#4スイッチに、
#4スイッチ=周期P2におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器81の出力レベル
#3スイッチ=High
#2スイッチ=Low
#1スイッチ=Low
#0スイッチ=Low
をバイナリーサーチ回路120が与える。
【0096】
周期P2におけるクロック信号100がHighレベルの間、スイッチ61及び62はスイッチ極性図60の極性により、デジタル容量70は放電回路40で、デジタル容量71は放電回路41で全ての電荷が放電され、デジタル容量70、71の端子間は0Vになる。したがって、比較器80、81の出力はLowとなる。
【0097】
周期P2におけるクロック信号100がLowレベルとなると、スイッチ61及び62により、デジタル容量70とデジタル容量71には、それぞれ充電回路50、51に接続される。これにより、電圧電流変換回路30の出力である直流電流I1=VBG/R1がデジタル容量70に、電圧電流変換回路31の出力である直流電流I2=VBG/R2がデジタル容量71に供給される。
【0098】
これにより、周期P3のクロック信号100の立ち上がり時にデジタル容量70の端子間には、周期P2のクロック信号100の立下りから周期P3の立ち上がり時の時間Δtに比例した電圧、
V1=VBG/R1/C1×Δt
が現れる。またデジタル容量71の端子間には
V2=VBG/R2/C2×Δt
が現れる。
【0099】
電圧V1がVBGより大きければ、比較器80の出力は周期P3におけるクロック信号100の立上り時点でHighレベルに、小さければ、比較器80の出力はLowレベルになる。同様に、電圧V2がVBGより大きければ、比較器81の出力はクロック信号100の周期P3における立ち上がり時点でHighレベルに、小さければ比較器81の出力はLowレベルになる。
【0100】
比較器80、81の出力レベルは周期P3のクロック信号100の立ち上がり時点で、それぞれラッチ90、91にラッチされると共に、バイナリーサーチ回路120がデジタル容量70、71の#3スイッチへ与えるデジタル信号値として記憶される。
【0101】
周期P3のクロック信号100の立ち上がりで、デジタル容量70の#0スイッチないし#4スイッチに、
#4スイッチ=周期P2におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器80の出力レベル
#3スイッチ=周期P3におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器80の出力レベル
#2スイッチ=High
#1スイッチ=Low
#0スイッチ=Low
をバイナリーサーチ回路120が与える。また、デジタル容量71の#0スイッチないし#4スイッチに、
#4スイッチ=周期P2におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器81の出力レベル
#3スイッチ=周期P3におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器81の出力レベル
#2スイッチ=High
#1スイッチ=Low
#0スイッチ=Low
をバイナリーサーチ回路120が与える。
【0102】
周期P3におけるクロック信号100のHighレベルの間、スイッチ61、62により、デジタル容量70は放電回路40で、デジタル容量71は放電回路41で全ての電荷が放電され、デジタル容量70、71の端子間は0Vになる。したがって、比較器80、81の出力はLowとなる。
【0103】
周期P3におけるクロック信号100がLowレベルになると、スイッチ61、62により、デジタル容量70は充電回路50、51に接続される。これによりデジタル容量70には電圧電流変換回路30の出力である直流電流I1=VBG/R1が、デジタル容量71には電圧電流変換回路31の出力である直流電流I2=VBG/R2が、供給される。
【0104】
これにより、周期P4のクロック信号100の立ち上がり時にデジタル容量70の端子間には、周期P3のクロック信号100の立下りから周期P4の立ち上がり時の時間Δtに比例した電圧、
V1=VBG/R1/C1×Δt
が現れる。またデジタル容量71の端子間には
V2=VBG/R2/C2×Δt
が現れる。
【0105】
電圧V1がVBGより大きければ、比較器80の出力は周期P4におけるクロック信号100の立上り時点でHighレベルに、小さければ、比較器80の出力はLowレベルになる。同様に、電圧V2がVBGより大きければ、比較器81の出力はクロック信号100の周期P4における立ち上がり時点でHighレベルに、小さければ比較器81の出力はLowレベルになる。
【0106】
比較器80、81の出力レベルは周期P4におけるクロック信号100の立ち上がり時点でそれぞれラッチ90、91にラッチされると同時に、バイナリーサーチ回路120がデジタル容量70、71の#2スイッチへ与えるデジタル信号値として記憶される。
【0107】
更に、周期P4のクロック信号100の立ち上がりで、デジタル容量70の#0スイッチないし#4スイッチに、
#4スイッチ=周期P2におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器80の出力レベル
#3スイッチ=周期P3におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器80の出力レベル
#2スイッチ=周期P4におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器80の出力レベル
#1スイッチ=High
#0スイッチ=Low
をバイナリーサーチ回路120が与える。また、デジタル容量71の#0スイッチないし#4スイッチに、
#4スイッチ=周期P2におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器81の出力レベル
#3スイッチ=周期P3におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器81の出力レベル
#2スイッチ=周期P4におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器81の出力レベル
#1スイッチ=High
#0スイッチ=Low
をバイナリーサーチ回路120が与える。
【0108】
周期P4におけるクロック信号100のHighレベルの間、スイッチ61、62により、デジタル容量70は放電回路40で、デジタル容量71は放電回路41で全ての電荷が放電され、デジタル容量70、71の端子間は0Vになる。したがって、比較器80、81の出力はLowとなる。
【0109】
周期P4におけるクロック信号100がLowレベルになると、スイッチ61、62により、デジタル容量70は充電回路50、51に接続される。これによりデジタル容量70には電圧電流変換回路30の出力である直流電流I1=VBG/R1が、デジタル容量71には電圧電流変換回路31の出力である直流電流I2=VBG/R2が、供給される。
【0110】
これにより、周期P5のクロック信号100の立ち上がり時にデジタル容量70の端子間には、周期P4のクロック信号100の立下りから周期P5の立ち上がり時の時間Δtに比例した電圧、
V1=VBG/R1/C1×Δt
が現れる。またデジタル容量71の端子間には
V2=VBG/R2/C2×Δt
が現れる。
【0111】
電圧V1がVBGより大きければ、比較器80の出力は周期P5におけるクロック信号100の立上り時点でHighレベルに、小さければ、比較器80の出力はLowレベルになる。同様に、電圧V2がVBGより大きければ、比較器81の出力はクロック信号100の周期P5における立ち上がり時点でHighレベルに、小さければ比較器81の出力はLowレベルになる。
【0112】
比較器80、81の出力レベルは周期P5におけるクロック信号100の立ち上がり時点でそれぞれラッチ90、91にラッチされると同時に、バイナリーサーチ回路120がデジタル容量70、71の#2スイッチへ与えるデジタル信号値として記憶される。
【0113】
周期P5のクロック信号100の立ち上がりで、デジタル容量70の#0スイッチないし#4スイッチに、
#4スイッチ=周期P2におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器80の出力レベル
#3スイッチ=周期P3におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器80の出力レベル
#2スイッチ=周期P4におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器80の出力レベル
#1スイッチ=周期P5におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器80の出力レベル
#0スイッチ=High
をバイナリーサーチ回路120が与える。また、デジタル容量71の#0スイッチないし#4スイッチに、
#4スイッチ=周期P2におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器81の出力レベル
#3スイッチ=周期P3におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器81の出力レベル
#2スイッチ=周期P4におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器81の出力レベル
#1スイッチ=周期P5におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器81の出力レベル
#0スイッチ=High
をバイナリーサーチ回路120が与える。
【0114】
周期P5におけるクロック信号100のHighレベルの間、スイッチ61、62により、デジタル容量70は放電回路40で、デジタル容量71は放電回路41で全ての電荷が放電され、デジタル容量70、71の端子間は0Vになる。したがって、比較器80、81の出力はLowとなる。
【0115】
周期P5におけるクロック信号100がLowレベルになると、スイッチ61、62により、デジタル容量70は充電回路50、51に接続される。これによりデジタル容量70には電圧電流変換回路30の出力である直流電流I1=VBG/R1が、デジタル容量71には電圧電流変換回路31の出力である直流電流I2=VBG/R2が、供給される。
【0116】
これにより、周期P6のクロック信号100の立ち上がり時にデジタル容量70の端子間には、周期P5のクロック信号100の立下りから周期P6の立ち上がり時の時間Δtに比例した電圧、
V1=VBG/R1/C1×Δt
が現れる。またデジタル容量71の端子間には
V2=VBG/R2/C2×Δt
が現れる。
【0117】
電圧V1がVBGより大きければ、比較器80の出力は周期P6におけるクロック信号100の立上り時点でHighレベルに、小さければ、比較器80の出力はLowレベルになる。同様に、電圧V2がVBGより大きければ、比較器81の出力はクロック信号100の周期P6における立ち上がり時点でHighレベルに、小さければ比較器81の出力はLowレベルになる。
【0118】
比較器80、81の出力レベルは周期P5におけるクロック信号100の立ち上がり時点でそれぞれラッチ90、91にラッチされると同時に、バイナリーサーチ回路120がデジタル容量70、71の#2スイッチへ与えるデジタル信号値として記憶される。
【0119】
これで、デジタル容量70の各スイッチに与えるデジタル値は、
#4スイッチ=周期P2におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器80の出力レベル
#3スイッチ=周期P3におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器80の出力レベル
#2スイッチ=周期P4におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器80の出力レベル
#1スイッチ=周期P5におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器80の出力レベル
#0スイッチ=周期P6におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器80の出力レベル
という値に決定する。また、デジタル容量71の各スイッチに与えるデジタル値は、
#4スイッチ=周期P2におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器81の出力レベル
#3スイッチ=周期P3におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器81の出力レベル
#2スイッチ=周期P4におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器81の出力レベル
#1スイッチ=周期P5におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器81の出力レベル
#0スイッチ=周期P6におけるクロック信号100の立ち上がり時点での比較器81の出力レベル
という値に決定する。
【0120】
これは、抵抗20の抵抗値R1とデジタル容量70の端子間の容量値C1の製造バラツキと、抵抗21の抵抗値R2とデジタル容量71の端子間の容量値C2の製造バラツキとを補正したもので、R1×C1の積とR2×C2の積は#0スイッチないし#4スイッチへ上記のデジタル値を与えれば一定となる。
【0121】
周期P6のクロック信号100の立ち上がり以降、キャリブレーション完了信号160の立ち上がりでチャネルフィルタ回路150へ上記デジタル値が与えられる。
【0122】
この実施の形態では、チャネルフィルタ回路150の帰還容量に対するデジタル容量151へデジタル容量70の各スイッチへ与えたデジタル値にオフセットレジスタ130の第1オフセット値を加算回路140で加える。また、チャネルフィルタ回路150の不帰還容量に関するデジタル容量152へデジタル容量71の各スイッチへ与えたデジタル値にオフセットレジスタ131の第2オフセット値を加算回路141で加えている。
【0123】
このようにすることで、チャネルフィルタ回路150の8次バタワース低域通過フィルタの帰還容量C11、C21、C31、C41と不帰還容量C12、C22、C32、C42をそれぞれ別の構造の容量を使って製造してもカットオフ周波数の誤差を補正することが可能になる。
【0124】
すなわち、デジタル容量70を含む自動調整回路とデジタル容量71を含む自動調整回路をそれぞれ、帰還容量C11、C21、C31、C41と不帰還容量C12、C22、C32、C42に別個独立に対応させたものとすることで、図1の様な、帰還容量または不帰還容量いずれか一方にあわせることによる他方への誤差の発生を防ぐことができる。
【0125】
ここでオフセットレジスタ130、131は完成した半導体チップを評価し、適切な値を後から設定するためのレジスタである。オフセットレジスタ130、131によりアンプAMP1ないしAMP4の利得が1から誤差を有した場合によるカットオフ周波数を補正することができる。
【0126】
なお、図2のフィルタカットオフ周波数自動調整回路と、図3の8次バタワース低域通過フィルタを半導体チップ上に図6の条件でレイアウトする場合、抵抗R41、R42、帰還容量C41、不帰還容量C42の近くに抵抗20、21とデジタル容量70、71を配置する。これは帰還容量と不帰還容量の比が大きいブロックがもっともQが高いので精度を要求されるためである。
【0127】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、カットオフ周波数自動調整回路に関係し、使用する容量値の比の大きなフィルタのカットオフ周波数の自動調整回路に関するものである。本発明のカットオフ周波数自動調整回路の決定するデジタル値は、抵抗と容量の積を一定に保つ働きをするので、フィルタカットオフ周波数自動調整回路のみならず、演算増幅器の位相補償、CR発振器の中心周波数補正など抵抗と容量の積が挙動に関係する任意の回路の補正値に用いることも可能である。また、それらを用いた携帯電話機等の携帯情報端末への適用も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の第1の実施の形態のフィルタカットオフ周波数自動調整回路のブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態のフィルタカットオフ周波数自動調整回路のブロック図である。
【図3】本発明で想定するデジタル容量の模式図である。
【図4】フィルタカットオフ周波数自動調整についてのタイミングチャートである。
【図5】本発明で想定するチャネルフィルタ回路の回路図である。
【図6】カットオフ周波数を2MHzに想定するチャネルフィルタ回路の内部素子の回路定数の値である。
【符号の説明】
【0130】
10…基準電圧、20、21…抵抗、30、31…電圧電流変換回路、
40、41…放電回路、50、51…充電回路、61、62…スイッチ、
70、71…デジタル容量、80、81…比較器、90、91…ラッチ、
100…クロック信号、110…リセット信号、120…バイナリーサーチ回路、
130、131…オフセット値、150…チャネルフィルタ回路、
151…帰還デジタル容量、152…不帰還デジタル容量、
160…キャリブレーション完了信号
C11、C21、C31、C41…帰還容量、
C12、C22、C32、C42…不帰還容量、
R11、R12、R21、R22、R31、R32、R41、R42…抵抗、
AMP1、AMP2、AMP3、AMP4…アンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧源、電圧電流変換回路、充電回路、放電回路、複数のコンデンサを有するデジタル容量及び前記デジタル容量を制御する容量制御回路を含むカットオフ周波数自動調整回路であって、
前記電圧電流変換回路、前記充電回路、前記放電回路、前記デジタル容量が第1の自動調整回路を構成し、
前記デジタル容量はスイッチによって前記充電回路及び前記放電回路に接続され、
前記スイッチ及び前記容量制御回路にはクロック信号が入力され、
前記クロック信号の電位により前記スイッチが切り替えられることで前記デジタル容量が前記充電回路又は前記放電回路に接続され、
前記デジタル容量は前記複数のコンデンサの全部又は一部をスイッチングにより並列的に接続し、
前記デジタル容量の端子間電位の差と前記基準電圧源の電圧との差分の対比の結果に基づき前記容量制御回路が前記デジタル容量を制御することを特徴とするカットオフ周波数自動調整回路。
【請求項2】
請求項1記載のカットオフ周波数自動調整回路において、前記デジタル容量に入力される電圧と前記基準電圧源の電圧との対比を行う比較器及び前記クロック信号が入力されるラッチを更に有し、
前記クロック信号の所定のタイミングで前記ラッチが前記比較器の出力をラッチし、前記容量制御回路に出力することを特徴とするカットオフ周波数自動調整回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカットオフ周波数自動調整回路において、前記容量制御回路はバイナリーサーチ回路であることを特徴とするカットオフ周波数自動調整回路。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のカットオフ周波数自動調整回路において、前記デジタル容量の電位と前記基準電圧源の電位との差分が所定の電位差以内になることを目的として、前記容量制御回路が前記デジタル容量を制御することを特徴とするカットオフ周波数自動調整回路。
【請求項5】
請求項1記載のカットオフ周波数自動調整回路において、更に電圧電流変換回路、充電回路、放電回路、デジタル容量を含む第2の自動調整回路を有することを特徴とするカットオフ周波数自動調整回路。
【請求項6】
請求項5記載のカットオフ周波数自動調整回路において、更にチャネルフィルタ回路を含み、
前記チャネルフィルタ回路は帰還するデジタル容量である帰還容量及び接地するデジタル容量である接地容量を有し、
前記容量制御回路は、前記第1の自動調整回路の前記デジタル容量の制御条件で前記帰還容量を設定し、前記第2の自動調整回路の前記デジタル容量の制御条件で前記接地容量を設定することを特徴とするカットオフ周波数自動調整回路。
【請求項7】
請求項6記載のカットオフ周波数自動調整回路において、前記チャネルフィルタ回路はバタワース低域通過フィルタであることを特徴とするカットオフ周波数自動調整回路。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に関わるカットオフ周波数自動調整回路を用いることを特徴とする携帯情報端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−94734(P2009−94734A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262637(P2007−262637)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】