説明

カフェオイルキナ酸誘導体及びそれを有効成分とするプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター抑制用の組成物

【課題】 特定の植物成分により、プラスミノゲーンアクチベータインヒビター(PAI)を抑制する技術を提供する。
【解決手段】1−ベンゾイル−2−カフェオイル−4,6−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシカルボニルシクロヘキサン及び/又はその塩を有効成分とする、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター抑制用の組成物を提供する。前記1−ベンゾイル−2−カフェオイル−4,6−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシカルボニルシクロヘキサンとしては、4−ベンゾイル−5−カフェオイルキナ酸が好ましく、組成物は血流量を改善する目的で使用されるものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規カフェオイルキナ酸誘導体及びそれを有効成分とする、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター抑制用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食事体系の西欧化による、所謂生活習慣病の急増が社会問題として大きく取り上げられるようになっている。即ち、食生活の西欧化に伴い、動物性脂質の摂取量が急増し、これにより血中のコレステロール含量が増加し、余分なコレステロールを貪食した貪食細胞が血管壁に積層し、アテロームを形成し、血栓を形成せしめ、血流量を阻害し、血圧を上昇せしめると言う、循環器の増悪コースを形成する駆動力となっている。この様な増悪をくい止めるためには、血栓の形成を阻害することが重要な課題となる。この様な血栓の形成阻害をする薬剤は、現在幾つかは開発されて実用に供されているが、一度投与を始めると、途中中断が出来なくなるため、思いもかけぬ副作用の発現などが発生する可能性が存し、結果、血栓形成は抑制されても、延命効果やQOLの向上に結びつかない例も存し、通常の生活において、血栓形成を阻害する手段の開発が望まれていた。この様な手段としては、食事を介しての方法が特に期待されている。これは、この様な疾患そのものの発生が食事に起因するところが大きいことを勘案すれば当然のことと思われる。この様な食事を介しての血栓の形成阻害の手段としては、特定な食品成分によるプラスミノーゲンアクチベータなどの線溶酵素の活性を高める方法と、プラスミノーゲンアクチベータインヒビターなどの線溶酵素活性阻害物質の阻害作用を抑制する方法の2種が存在する。前者としては、ヒラタケや納豆などが知られている。(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)しかしながら、後者については、食品成分では未だ有効なものが見出されていないのが現状である。
【0003】
一方、バラ科プルナス属の植物の花及び/又は蕾は、「白桃花」のように古来より、漢方生薬として知られているものであり、その効能としては、抗肥満効果や抗便秘効果などが知られている。(例えば、特許文献3、特許文献4を参照)しかしながら、線溶系への作用は全く知られていない。
【0004】
カフェオイルキナ酸誘導体は、例えば、アイビー・ツリー(Ivy Tree)等に含有されており、その中には抗ウィルス効果を有するものが存することは知られている(例えば、非特許文献1を参照)が線溶系への作用は知られていないし、4−ベンゾイル−5−カフェオイルキナ酸は文献未記載の新規化合物である。
【0005】
【特許文献1】特開2003−116535号公報
【特許文献2】特開2002−065294号公報
【特許文献3】特開2003−055249号公報
【特許文献4】特開2004−244389号公報
【非特許文献1】Li Y, But PP, Ooi VE. ,Antiviral Res. ,2005 ;68(1):1-9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、特定の植物成分により、プラスミノゲーンアクチベータインヒビター(PAI)を抑制する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、特定な食品成分により、プラスミノゲーンアクチベータインヒビター(PAI)を抑制する技術を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、バラ科プルナス属の植物の花及び/又は蕾の抽出物より、新規カフェオイルキナ酸誘導体である、4−ベンゾイル−5−カフェオイルキナ酸を単離し、このものに優れたPAIを抑制する作用が存することを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
(1)次に示す、1−ベンゾイル−2−カフェオイル−4,6−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシカルボニルシクロヘキサン及び/又はその塩を有効成分とする、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター抑制用の組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
(2)前記1−ベンゾイル−2−カフェオイル−4,6−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシカルボニルシクロヘキサンが、4−ベンゾイル−5−カフェオイルキナ酸であることを特徴とする、(1)に記載のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター抑制用の組成物。
【0010】
【化2】

【0011】
(3)血流量を改善する目的で使用されるものであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター抑制用の組成物。
(4)経口投与されることを特徴とする、(1)〜(3)何れか1項に記載のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター抑制用の組成物。
(5)食品であることを特徴とする、(4)に記載のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター抑制用の組成物。
(6)4−ベンゾイル−5−カフェオイルキナ酸又はその塩。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特定の植物成分により、プラスミノゲーンアクチベータインヒビター(PAI)を抑制する技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のPAIを抑制する組成物は、カフェオイルキナ酸誘導体及び/又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする。本発明にいうキナ酸誘導体は、1−ヒドロキシカルボニル−1,3,4,5−テトラヒドロキシシクロヘキサンの水酸基にカフェオイル基を1個乃至は2個以上導入したものを意味し、かかるキナ酸誘導体としては、前記1−ベンゾイル−2−カフェオイル−4,6−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシカルボニルシクロヘキサン構造を有するものが好ましく、中でも、4−ベンゾイル−5−カフェオイルキナ酸が特に好ましい。又、生理的に許容されるものであれば、特段の限定無く使用でき、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノエタノールアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩等が好適に例示できる。
【0014】
かかるカフェオイルキナ酸誘導体は、バラ科プルナス属の植物の花及び/又は蕾の抽出物より、精製単離することができる。バラ科プルナス属の植物としては、例えば、モモ、ノモモ、プルーン、ソルダム、アプリコットなどが例示でき、モモ及び/又はノモモが特に好ましい。
【0015】
抽出溶剤としては、通常使用されている抽出溶剤で有れば特段の限定無く適用することが出来、水、エタノール、プロパノール、ブタノール或いは1,3−ブタンジオールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ノルマルヘキサンなどの炭化水素類などが好適に例示でき、中でも、水、アルコールなどの極性溶剤がより好ましく、30〜70質量%のエタノール水溶液が特に好ましい。抽出は、溶剤中に溶剤量の1〜50質量%のプルナス属の植物の花及び/又は蕾を加え、所望により攪拌しながら、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬することにより、これらの植物に含有される、カフェオイルキナ酸誘導体を含有する形で抽出できる。この様な抽出を行った後、室温まで冷却後、濾過などにより不溶分を除去し、しかる後に溶媒を減圧溜去等の手技で除去することが出来る。更に、これらを液液抽出やカラムクロマトグラフィーなどで、順次分画精製することにより、カフェオイルキナ酸誘導体を単離精製することが出来る。液液抽出としては、アルコールを含有していても良い水とノルマルヘキサン、酢酸エチルと水、ノルマルブタノールと水などの系が例示でき、この順で順次非極性部分を除去しながら精製することが好ましい。カラムクロマトグラフィーとしてはシリカゲルカラムクロマトグラフィーや「ダイアイオンHP−20」(三菱化学株式会社製)などのイオン交換カラムクロマトグラフィー、ODSを担体とするカラムクロマトグラフィーで精製することが好ましい。精製に際しては分画を薄層クロマトグラフィーなどで随時チェックし、分離精度を確認し、同一成分を含む分画はまとめ、複数の成分を含む分画は再度精製分離を繰り返し、精製を重ねることにより、単一成分の分画を得ることができる。かくして、カフェオイルキナ酸誘導体を単離精製することができる。
【0016】
斯くして得られたカフェオイルキナ酸誘導体及び/又はその塩は、プラスミノーゲンアクチベータインヒビターを抑制する作用を有し、かかる誘導体を有効成分として組成物に含有せしめることにより、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビターを阻害する作用に優れる組成物とすることが出来る。該組成物としては、化粧料のような皮膚外用組成物、食品のような経口投与組成物が好適に例示でき、経口投与組成物に含有せしめることが特に好ましい。
【0017】
又、本発明の組成物においては、有効成分であるカフェオイルキナ酸誘導体及び/又はその塩の含有量を実用的な範囲まで高める形であれば、カフェオイルキナ酸誘導体及び/又はその塩を単離することなく、抽出・精製物の形態で組成物に含有することもできる。この様な含有可能な精製物としては、該当するカフェオイルキナ酸誘導体及び/又はその塩を、抽出精製物全量に対して、0.1〜10質量%含有するものが好ましく例示できる。
【0018】
斯くして得られたカフェオイルキナ酸誘導体及び/又はその塩は、常法に従って、賦形剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、矯味矯臭剤、着色剤、糖衣剤などとともに処理して経口投与組成物へと加工することが出来る。本発明の経口投与組成物における、かかるカフェオイルキナ酸誘導体及び塩の好ましい含有量は0.01〜3質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%である。
【0019】
前記経口投与組成物と同様、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノール等の抗菌剤などの任意成分とともに、常法に従って処理して、化粧料に加工することもできる。化粧料における、カフェオイルキナ酸誘導体及びその塩の好ましい含有量は、0.0001〜1質量%であり、より好ましくは0.001〜0.1質量%である。
【0020】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみに限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0021】
市販の白桃花(バラ科モモの花蕾(からい)を乾燥させたもの)150gを70%含水エタノール6リットル中でホモジナイズし,ろ過,濃縮し,水溶液としたものをノルマルヘキサン,酢酸エチル,ノルマルブタノール各1.3リットルで3回ずつ順次液液分配し,それぞれ濃縮,乾燥し白桃花ヘキサン抽出物2.3g,白桃花酢酸エチル抽出物7.3g,白桃花ブタノール抽出物7.9g,白桃花水抽出物26.7gを得た.白桃花酢酸エチルエキス2gをダイアイオンHP−20(三菱化成製)カラムクロマトグラフィー(溶出溶媒、水:メタノール=60:40〜0:100)およびODSカラムを装着した分取高速液体クロマトグラフィーで精製し、4−ベンゾイル−5−カフェオイルキナ酸25mgを得た。4−ベンゾイル−5−カフェオイルキナ酸の機器分析データを次に示す。この物質は文献未記載の新規物質である。
【0022】
4-O-Benzoyl-5-O-caffeoylquinic acid 物性
淡黄色無晶形粉末C23H22O10.1H NMR (500 MHz, 重水+アセトン-d6) δ 8.05 (2H, d, J=8 Hz), 7.61 (1H, t, J=8 Hz), 7.52 (1H, d, J=16 Hz), 7.49 (2H, t, J=8 Hz), 7.10 (1H, d, J=2 Hz), 6.95 (1H, dd, J=2, 8 Hz), 6.84 (1H, d, J=8 Hz), 6.20 (1H, d, J=16 Hz), 5.84 (1H, m), 5.26 (1H, dd, J=3, 10 Hz), 4.52 (1H, d, J=3 Hz), 2.37 (2H, m), 2.24 (2H, m), 13C NMR (126 MHz, 重水+アセトン-d6) δ37.9, 39.4, 67.9, 68.9, 75.8, 76.7, 114.6, 114.8, 116.1, 122.5, 126.9, 129.2 (2C), 130.3 (2C), 130.8, 134.0, 146.2, 146.5, 149.0, 166.5, 167.0, 175.3.
【0023】
4−ベンゾイル−5−カフェオイルキナ酸について、PAIに対する作用を調べた。PAIとしては、PAI−1を用いた。即ち、市販のヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞(Huvec、クラボウ)を培養したものを24 穴コラーゲンコートプレートに1x10 cells/wellでまき24時間インキュベートした。無血清培地に交換し、更に一晩インキュベートし、低血清培地に交換すると共に上記の4−ベンゾイル−5−カフェオイルキナ酸をDMSOに溶かしたものを被検物として終濃度1μg/mLで添加し、同時にTNF−αを終濃度10 ng/mLで添加した。24時間後に培地を回収し、遠心(3000rpm)後上清について、市販のPAI−1 ELISAキットで培地中のPAI−1濃度を測定した。被検物のかわりにDMSOを添加したものをコントロールとして、コントロールのPAI−1量に対する100分率で各被検物のPAI−1産生抑制率を求めた。ポジティブコントロールとしてはオールトランスレチノイン酸(終濃度1μg/mL)を用いた。結果を表1に示す。これより、本発明の化合物である、4−ベンゾイル−5−カフェオイルキナ酸は優れたPAI−1抑制作用を有することがわかる。
【0024】
【表1】

【実施例2】
【0025】
前記の如くに得られたカフェオイルキナ酸誘導体を用いて、本発明の経口投与組成物である、食品(プラスミノーゲンアクチベーターインヒビターを抑制し、これにより線溶系の活性化で血流を改善する旨の表示を有する。)を製造した。即ち、処方成分を混合した後、処方成分10質量部に対し、3質量部の水を噴霧しながら流動層造粒を行い、40℃で24時間乾燥させた後に、打錠機で打錠し、錠剤を得た。
【0026】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は血流を改善する食品、化粧品などの組成物に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次に示す、1−ベンゾイル−2−カフェオイル−4,6−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシカルボニルシクロヘキサン及び/又はその塩を有効成分とする、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター抑制用の組成物。
【化1】

【請求項2】
前記1−ベンゾイル−2−カフェオイル−4,6−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシカルボニルシクロヘキサンが、4−ベンゾイル−5−カフェオイルキナ酸であることを特徴とする、請求項1に記載のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター抑制用の組成物。
【化2】

【請求項3】
血流量を改善する目的で使用されるものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター抑制用の組成物。
【請求項4】
経口投与されることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター抑制用の組成物。
【請求項5】
食品であることを特徴とする、請求項4に記載のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター抑制用の組成物。
【請求項6】
4−ベンゾイル−5−カフェオイルキナ酸又はその塩。

【公開番号】特開2007−204434(P2007−204434A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25748(P2006−25748)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】