説明

カフ部材及びカフ部材ユニット

【課題】生体皮下組織から細胞が容易に侵入、生着し、毛細血管が構築されることで皮下組織との癒着が頑強に得られ、その結果、創傷部を外界と隔絶し、治癒機転における細菌感染等の増悪因子を防御し、ダウングロースの進行を抑制し、トンネル感染を始めとする各種の感染トラブルの少ないカフ部材及びカフ部材ユニットを提供する。
【解決手段】カフ部材2は、フランジ部3と筒状部4とを有する。カフ部材2は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂で形成された、平均孔径10〜500μmで、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmの、連通性のある多孔性三次元網状材料よりなる。フランジ部3の上面の外周縁と内周縁との間に凸条3tが周設されている。凸条3tの内側領域に対しパッド5が重ね合わされ、チューブ6が挿通される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織からの細胞の侵入が可能で、生体組織と頑強な癒着が得られるカフ部材に係り、特に、カニューレやカテーテル類を皮下刺入する療法である補助人工心臓による血液循環法、腹膜透析療法、中心静脈栄養法、経胃ろう栄養法、膀胱ろうカテーテル、経カニューレDDS及び経カテーテルDDSなどの生体皮膚刺入部に有用なカフ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年発達した補助人工心臓や腹膜透析などの療法で使用されるカニューレやカテーテルは、外界へ開放された脈管へ挿入・留置される尿道カテーテル、経消化管的栄養法及び気道確保術などと異なり、皮下組織を切開した上で刺入を行って生体内に留置する必要がある。生体内への留置が長期間へ及ぶ場合、生体内と外界を隔て、生体内への細菌の侵入や体液水分の揮発を防止するためにカフ部材(スキンカフなどともいう)を利用して疑似的に刺入部を密閉することが行われている。従来、補助人工心臓による血液循環法では、主としてポリエステル繊維からなるファブリックベロアを刺入カニューレに巻き付け、刺入部において該ファブリックベロアと皮下組織を縫合することで固定し、カニューレを留置している。腹膜透析療法においても、ポリエステル繊維からなるファブッリクベロアなどをカフ部材としてカテーテルの皮膚刺入位置に固定し、このカフ部材を圧迫するように皮下組織を縫合することでカテーテルを留置している。これらファブリックベロアにはコラーゲンなどを含浸させ、より頑強な癒着を狙ったものもある。また、生体適合性に優れる部材からなるカフ部材を刺入部の皮下組織に固定させる方法もある。
【0003】
なお、本出願人は、感染トラブルの少ない材料よりなるカフ部材を特開2004−97267号にて提案している。
【特許文献1】特開2004−97267号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補助人工心臓による血液循環法は、患者体外に設置された脈動ポンプによって血液循環を補助する療法であるため、約1.5Hzに相当する脈動ポンプの振動がカニューレに伝達している。即ち、カニューレの刺入部は、常時、振動による力学的負荷を受けている。更に、患者自身の体位の変化、刺入部の消毒作業時などにカニューレが動くことによっても皮下組織とカフ部材の接着界面にはこれを剥離しようとする応力が生じている。これらの応力負荷によってカフ部材と皮下組織の癒着性が低下することが要因と判断されるトラブルの代表例に、トンネル感染などの感染トラブルがあり、補助人工心臓療法の症例の中でも、これら感染トラブルの経験数は非常に多くなっている。細菌感染による合併症や心不全へ影響を考慮すれば、本療法においては感染を防止できるカフ部材の開発が急務であるといえる。
【0005】
同様に、皮下刺入を行ってカテーテルを長期間留置する腹膜透析療法においても、カフ部材に大きな課題がある。即ち、この療法では、透析液を注排液するためにカテーテルを腹腔内に留置するが、生体がカテーテルを異物と認識することによりカテーテルを排除しようとする作用が働き、皮下組織とカテーテルが癒着せず、表皮がカテーテルに沿って腹腔内へ入り込むダウングロース現象が生じてしまう。このダウングロースのポケットは、消毒液の到達を困難なものとし、表皮炎症やトンネル感染の要因となり、最終的には腹膜炎の誘発にも繋がっている。緑膿菌性の腹膜炎を頻繁に経験した患者においてSEP(硬化性被繭性腹膜炎)の発症率が高いという報告もあることを考慮すれば、カフ部材の改良による感染防止は腹膜透析療法の大きな課題であるといえる。
【0006】
このようなことから、上述の如く、コラーゲンを主成分とするカフ部材などが開発されているが、このようなカフ部材の場合、生理食塩水、アルコール、イソジン、血液、体液など液体を吸収することで体積が減少し、カテーテル刺入部に皮下組織を増殖させることが困難であり、その結果、ダウングロースの抑制効果は得られていない。
【0007】
また、補助人工心臓療法においては、上記したダウングロースの問題以外に大きな問題がある。それは、カニューレ刺入部では皮下組織と外界との隔絶性が低くなっているために刺入部を水で濡らすことが許されず、日常行われる患者の身体を清潔に保つための処置としては体表面を清浄綿などで拭うのみで、入浴は勿論のことシャワーを浴びることも不可能となっている。このことは患者のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)を非常に低いものとしている。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題を顧みて達成されたものであり、ダウングロース作用による露出が抑制されるカフ部材ユニットとそのためのカフ部材とを提供することを目的とする。特に、本発明は、生体皮下組織から細胞が容易に侵入、生着し、毛細血管が構築されることで皮下組織との癒着が頑強に得られ、その結果、ダウングロースの進行を抑制し、トンネル感染を始めとする各種の感染トラブルの少ないカフ部材であって、補助人工心臓療法などにおいても皮下組織と外界との隔絶性を向上させ、患者がシャワーを浴びることも可能となるカフ部材を提供することを第1の目的とする。
【0009】
ところで、生体に留置したカフ部材ユニットを取り外すときに一番大変なのは、皮下組織の下の方にフォーム体が入っているときである。表皮などは簡単に切除でき、また仮に手術で切除したとしても治癒が早いが、中の組織は強固にウレタンフォーム体と癒着するため切除が大変である。
【0010】
本発明は、生体から取り外すことが容易であるカフ部材及びカフ部材ユニットを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(請求項1)のカフ部材は、生体の外面に重なるフランジ部と、該フランジ部の一方の面から立設された筒状部と、該フランジ部の他方の面に突設されており、該フランジ部の外周縁と内周縁との間を周回している凸条と、を有するカフ部材であって、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂よりなる基材樹脂で形成された、平均孔径10〜500μmで、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmの、連通性のある多孔性三次元網状構造部を有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項2のカフ部材は、請求項1において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径が100〜500μmで、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3のカフ部材は、請求項2において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径が200〜500μmで、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4のカフ部材は、請求項1ないし3のいずれか1項において、該多孔性三次元網状構造の見掛け密度が0.05〜0.3g/cmであることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5のカフ部材は、請求項4において、該多孔性三次元網状構造の見掛け密度が0.05〜0.2g/cmであることを特徴とするものである。
【0016】
請求項6のカフ部材は、請求項1ないし5のいずれか1項において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径10〜300μmの孔の寄与率が10%以上であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項7のカフ部材は、請求項6において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径10〜300μmの孔の寄与率が20%以上であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項8のカフ部材は、請求項7において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径10〜300μmの孔の寄与率が30%以上であることを特徴とするものである。
【0019】
請求項9のカフ部材は、請求項8において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径10〜300μmの孔の寄与率が40%以上であることを特徴とするものである。
【0020】
請求項10のカフ部材は、請求項9において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径10〜300μmの孔の寄与率が50%以上であることを特徴とするものである。
【0021】
請求項11のカフ部材は、請求項1ないし10のいずれか1項において、該多孔性三次元網状構造部の厚みが0.2〜500mmであることを特徴とするものである。
【0022】
請求項12のカフ部材は、請求項11において、該多孔性三次元網状構造部の厚みが0.2〜100mmであることを特徴とするものである。
【0023】
請求項13のカフ部材は、請求項12において、該多孔性三次元網状構造部の厚みが0.2〜50mmであることを特徴とするものである。
【0024】
請求項14のカフ部材は、請求項13において、該多孔性三次元網状構造部の厚みが0.2〜10mmであることを特徴とするものである。
【0025】
請求項15のカフ部材は、請求項14において、該多孔性三次元網状構造部の厚みが0.2〜5mmであることを特徴とするものである。
【0026】
請求項16のカフ部材は、請求項1ないし15のいずれか1項において、該基材樹脂が、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポシキ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂並びにこれらの誘導体よりなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とするものである。
【0027】
請求項17のカフ部材は、請求項16において、該基材樹脂がポリウレタン樹脂であることを特徴とするものである。
【0028】
請求項18のカフ部材は、請求項17において、該ポリウレタン樹脂がセグメント化ポリウレタン樹脂であることを特徴とするものである。
【0029】
請求項19のカフ部材は、請求項1ないし18のいずれか1項において、該凸条部分にのみ硬化性化合物を含浸させてあることを特徴とするものである。
【0030】
請求項20のカフ部材は、請求項19において、該硬化性化合物がキチン、キトサン及びケラチンよりなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とするものである。
【0031】
請求項21のカフ部材は、請求項1ないし20のいずれか1項において、該フランジ部の外周縁と凸条との距離が1〜100mmであることを特徴とするものである。
【0032】
請求項22のカフ部材は、請求項1ないし21のいずれか1項において、該多孔性三次元網状構造部に、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプII、コラーゲンタイプIII、コラーゲンタイプIV、アテロ型コラーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ケラタン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸B、エラスチン、ヘパラン硫酸、ラミニン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、オステオネクチン、エンタクチン、ヒドロキシエチルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合体、ヒドロキシエチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合体、アルギン酸、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド及びポリビニルピロリドンよりなる群から選択される1種又は2種以上が保持されていることを特徴とするものである。
【0033】
請求項23のカフ部材は、請求項22において、該多孔性三次元網状構造部に更に血小板由来増殖因子、上皮増殖因子、形質転換増殖因子α、インスリン様増殖因子、インスリン様増殖因子結合蛋白、肝細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、アンジオポイエチン、神経増殖因子、脳由来神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、形質転換増殖因子β、潜在型形質転換増殖因子β、アクチビン、骨形質タンパク、繊維芽細胞増殖因子、腫瘍増殖因子β、二倍体繊維芽細胞増殖因子、ヘパリン結合性上皮増殖因子様増殖因子、シュワノーマ由来増殖因子、アンフィレグリン、ベーターセルリン、エピグレリン、リンホトキシン、エリスロエポイエチン、腫瘍壊死因子α、インターロイキン−1β、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−17、インターフェロン、抗ウイルス剤、抗菌剤及び抗生物質よりなる群から選択される1種又は2種以上が保持されていることを特徴とするものである。
【0034】
請求項24のカフ部材は、請求項23において、該多孔性三次元網状構造部に細胞が接着されていることを特徴とするものである。
【0035】
請求項25のカフ部材は、請求項24において、該細胞が胚性幹細胞、血管内皮細胞、中胚葉性細胞、平滑筋細胞、末梢血管細胞及び中皮細胞よりなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とするものである。
【0036】
請求項26のカフ部材は、請求項25において、該胚性幹細胞が分化されたものであることを特徴とするものである。
【0037】
請求項27のカフ部材は、請求項1ないし26のいずれか1項において、少なくとも前記フランジ部の一方の面の一部を覆う生分解性ポリマーよりなるフォーム体を備えたことを特徴とするものである。
【0038】
請求項28のカフ部材は、生体の外面に重なるフランジ部と、該フランジ部の一方の面から立設された筒状部と、を有するカフ部材であって、少なくとも前記フランジ部の一方の面の一部を覆う生分解性ポリマーよりなるフォーム体を備えたことを特徴とするものである。
【0039】
請求項29のカフ部材は、筒状部を有するカフ部材であって、該筒状部の外周面の一部を覆う生分解性ポリマーよりなるフォーム体を備えたことを特徴とするものである。
【0040】
請求項30のカフ部材は、生体接触面の少なくとも一部を覆う生分解性ポリマーよりなるフォーム体を備えたことを特徴とするものである。
【0041】
本発明(請求項31)のカフ部材ユニットは、請求項1ないし27のいずれか1項に記載のカフ部材と、該カフ部材の前記フランジ部の他方の面の前記凸条よりも内側領域に重なる高分子材料製パッドとを備えてなることを特徴とするものである。
【0042】
請求項32のカフ部材ユニットは、請求項31において、生体に対する流体の供給又は排出用のチューブが、該パッドと、カフ部材のフランジ部及び筒状部を貫通して挿通されていることを特徴とするものである。
【0043】
請求項33のカフ部材ユニットは、請求項32において、該チューブと該パッドとの界面が密封されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0044】
本発明のカフ部材は、上記特定の平均孔径及び見掛け密度を有する、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる、連通性のある多孔性三次元網状構造部を有するため、この多孔性三次元網状構造部の空孔部分へ細胞が容易に侵入して生着し、生体組織と頑強な癒着が得られる。
【0045】
本発明のカフ部材によれば、生体皮下組織から細胞が容易に侵入、生着し、毛細血管が構築されることで皮下組織との癒着が頑強に得られ、その結果、創傷部を外界と隔絶し、治癒機転における細菌感染等の増悪因子を防御ダウングロースの進行を抑制し、トンネル感染を始めとする各種の感染トラブルの少ないカフ部材が提供される。
【0046】
このような本発明のカフ部材は、カニューレやカテーテル類を皮下刺入する療法である補助人工心臓による血液循環法、腹膜透析療法、中心静脈栄養法、経カニューレDDS及び経カテーテルDDSなどの生体皮膚刺入部に好適に使用することができる。
【0047】
このカフ部材を用いたカフ部材ユニットにあっては、凸条よりも内側領域が高分子材料製パッドで覆われたフランジ部が存在する。このため、皮膚のダウングロース作用が筒状部にまで及ぶのに時間がかかるし、水がカニューレに沿って皮下組織へ浸入することを防ぐことも可能となる。また、フランジ部はその凸条よりも外周縁側が皮下へ埋入され、皮下組織の浸潤によって器質化される。この凸条よりも外周縁側の上に存在する表皮の末端が該フランジ部の凸条へ接着し、表皮がフランジ部と高分子樹脂製パッドの接着面を剥がすように潜り込む現象や、表皮が高分子樹脂製パッド上に這い上がる現象を防ぐことが可能である。
【0048】
この結果、長期にわたり、ダウングロースの影響を受けることなく生体に対しカフ部材ユニットを装着しておくことができ、刺入カニューレを濡らすこともなく補助人工心臓療法において患者がシャワーを浴びることも可能となる。
【0049】
また、パッドが生体の外面に重なるように配置されるので、チューブの脈動などの振動がパッドを介しても生体に伝達されるようになり、チューブから生体に加えられる応力が広い範囲に分散される。
【0050】
本発明では、カフ部材の生体接触面の少なくとも一部を生分解性ポリマーよりなるフォーム体で覆ってもよい。
【0051】
特にカフ部材ユニットを使用した短期間の治療を終了した場合、生分解性ポリマー層には生体組織は生着しているものの、生分解性ポリマー層で覆われた多孔性網状構造を形成した層には生体組織が行き届かないので、生分解性ポリマーを体内に残しつつ、その他のカフ部材ユニットを取り外すことができるので、きわめて簡便にカフ部材ユニットを取り外すことができる。
【0052】
体内に残った生分解性ポリマー部分は後々に生分解されていくので、生体への影響も少なくてすむ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下に本発明のカフ部材及びカフ部材ユニットの実施の形態を詳細に説明する。
【0054】
第1図(a)は実施の形態に係るカフ部材を用いたカフ部材ユニットの分解斜視図、第1図(b)はこのカフ部材ユニットの縦断面図、第2図はこのカフ部材ユニットの使用例を示す断面図、第3図〜第6図はそれぞれ別の実施の形態に係るカフ部材ユニットの縦断面図である。第7図は比較例を示す断面図である。
【0055】
第1図の通り、カフ部材2は、フランジ部3と、このフランジ部3の一方の面から立設された筒状部4とを有する。フランジ部3の中央には直径が5〜100mm程度の円形の開口3aが筒状部4と同軸に設けられている。フランジ部3の内周縁と外周縁との間には、凸条3tが周回して設けられている。この凸条3tの内側領域にパッド5が嵌合されるようにして重ね合わされる。
【0056】
なお、本発明のカフ部材及びカフ部材ユニットには複数のチューブ6を通すことも可能である。例えば、補助人工心臓療法では送血管及び脱血管の2本のチューブ6(カニューレ)を患者へ刺入するが、この場合にパッド5に2個の開口5aを設け、フランジ部3に2個の開口3aと2本の筒状部4を設けることで、1個のカフ部材又はカフ部材ユニットにて2本のチューブを刺入することができ、患者への侵襲を低減できる可能性もある。
【0057】
送血管と脱血管をそれぞれ独立に2個カフ部材又はカフ部材ユニットにて刺入した方が良いか、1個のカフ部材又はカフ部材ユニットで送血管及び脱血管を同時に刺入する方が良いか、臨床学的意義、患者の状態、侵襲程度を考慮して当業者によって適宜使い分ければ良いし、あるいは、送血管及び脱血管をこれらよりも太い1本のチューブ内へ挿入し、当該1本のチューブをカフ部材又はカフ部材ユニットを介して生体へ刺入する、いわゆるダブルルーメン式でチューブを挿入することも可能である。もちろん、補助人工心臓療法以外でも1本のチューブ内に人工心臓のポンプ用の電源コード、制御用コード、測定用コード、DDS用の細チューブなど複数の線状構造体を一本のチューブ内にまとめてカフ部材又はカフ部材ユニットを介して刺入することも可能である。
【0058】
この開口3aの直径は筒状部4の内径(直径)と同一となっている。
【0059】
このカフ部材2は、後述する生体組織との癒着性に優れた多孔性樹脂材料よりなり、筒状部4とフランジ部2とが一体に設けられたものである。
【0060】
フランジ部3は円形、楕円形、レンズ形、涙滴形等の平面視形状を有するものが使用可能であるが、通常、皮膚をメスで直線に切開した場合には楕円形に生体組織が露出されるので、該露出部位を効率良く被覆できる楕円形であることが好ましい。フランジ部3の厚さは該フランジ部3の物理的強度以外に、後述するカフ部材2の平均孔径やその傾斜性(これらは組織浸潤深度や分化程度へ影響する)など複雑な因子が関連するが、通常は0.05〜20mm程度が好適である。フランジ3が円形の場合、その直径は10〜200mm程度が好適である。フランジ部3が楕円形、レンズ形、涙滴形等の場合、長径が10〜200mmであり、短径が長径の5〜80%程度であることが好ましい。
【0061】
凸条3tのフランジ部半径方向の幅は0.0〜5.0mm程度が好適である。ここでいう、幅とは、鉛直方向へ一定の幅でも良いし、徐々に幅が狭くなるようなテパーを有していても良い。テーパーがある場合、先端部で幅が0.0mmと解釈することができる。凸条3tの高さは0.5〜5.0mm程度が好適であり、パッド5の厚み以上であることが好ましい。
【0062】
凸条3tからフランジ部3の外周縁までの距離は1〜100mm、特に5〜20mm程度が好適である。筒状部4の長さは10〜500mm程度が好適であり、筒状部4の肉厚は該筒状部4の物理的強度以外に、後述するカフ部材2の平均孔径やその傾斜性(これらは組織浸潤深度や分化程度へ影響する)など複雑な因子が関連するが、通常は0.05〜20mm程度が好適である。ここで筒状部4は直線状とは限らず、刺入部位からチューブに沿って自在に曲げて使用することが可能である。
【0063】
カフ部材ユニット1は、該カフ部材2のフランジ部3の他方の面にパッド5を重ね合わせ、接着等によって一体化したものである。このパッド5は、フランジ部3と相似形であるがフランジ部3よりも小さいことが好ましい。このパッド5には、フランジ部3の開口3aと同軸に且つ該開口3aと同一大きさにて開口5aが設けられている。
【0064】
このパッド5は、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポシキ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、キチン、キトサン、ケラチン、ヒアルロン酸、フィブロイン並びにこれらの誘導体よりなる群から選択される1種又は2種以上などの高分子材料よりなる。
【0065】
パッド5の厚みは高分子材料の柔軟性とも関連するが、0.1〜100mm程度が好適である。刺入する部位によって当業者によって適宜選択すれば良い。例えば、体側面であれば曲面に追随するためにやや柔軟なパッドを使用し、胸部中央付近の肋骨上であれば体表はほぼ平らであるため、やや硬めのパッドを使用するなどである。このカフ部材ユニット1は、生体外面からチューブ6を生体内に刺入する用途に好適に用いられる。
【0066】
チューブ6は開口5a、3a及び筒状部4に挿通され、パッド部5に高周波融着、熱融着、レーザー融着、超音波融着、接着剤等により水密的に接着される。この実施の形態では、パッド5とチューブ6とを接着剤7によって固着している。
【0067】
このカフ部材ユニット1を用いてチューブ6を生体に刺入するには、第2図の通り皮膚を切開して生体組織を露出させる。また、生体組織を切開してカフ部材ユニット1のチューブ6を生体組織に刺入し、フランジ部3を生体組織の外面に重ね合わせる。筒状部4はチューブ6と共に生体組織内に埋め込まれる。チューブ6の周囲の生体組織切開部は必要に応じ縫合される。パッド5は生体組織の露出面に被さると共に、該露出面の周囲の皮膚の縁部に重ね合わされる。パッド5を患者体表へ固定するための縫合を行う場合にはパッド5の外縁付近に数個の孔の穿孔を行うと縫合針でパッド5を貫通穿孔させる必要がなく楽に縫合が行える。さらに、パッド5の外縁とその周囲の皮膚に跨るようにして、通気性及び遮水性を有した粘着テープ(図示略)が貼着され、パッド5の下側への水等の浸入を防止することも可能である。
【0068】
このようにカフ部材ユニット1を用いてチューブ6を生体組織に刺入した場合、皮膚のダウングロースは、第2図の通り矢印Dのようにフランジ部3の下側に向って進行する。このため、ダウングロースが筒状部4に達するまでの時間がかなり長いものとなる。また、フランジ部3はその凸条3tよりも外周縁側が皮下へ埋入され、皮下組織の浸潤によって器質化される。この凸条3tよりも外周縁側の上に存在する表皮の末端が該凸条3t、特にその外周側の側面へ接着し、表皮が高分子樹脂製パッドを異物として認識し、高分子樹脂製パッド5とフランジ部3の接着を剥がすようにして隙間に潜り込む現象や、高分子樹脂製パッド5上に這い上がる現象を防ぐことが可能である。
【0069】
また、チューブ6の脈動等によりチューブ6から生体に加えられる応力がパッド5を介しても生体に伝わるようになり、応力が広い範囲に分散する。このため、チューブ6の周囲の生体組織に加えられる刺激が緩和される。
【0070】
第3図は、カフ部材2と同種の材料からなる円筒状のカフ部材8をチューブ6の外面に装着し、生体組織に刺入した比較例を示す。
【0071】
この場合、皮膚のダウングロースは、矢印Dの通り、カフ部材8に沿って生体組織内に向って進行するため、カフ部材8が早期に多量に露出するようになる。また、チューブ6の周囲の狭い範囲にチューブ6の脈動等の振動が集中して加えられる。第1、2図のカフ部材ユニット1によると、このような短所が解消される。
【0072】
第1、2図では、チューブ6は生体外面と垂直状に延出しているが、第3図のカフ部材ユニット1’のカフ部材2’のように筒状部4’をフランジ部3に対し斜めとし、チューム6を斜めに貫通させてもよい。また、第4図のカフ部材ユニット1Aのチューブ6Aのように、カフ部材2の人体外側において屈曲することにより斜めに延出してもよく、第5,6図のカフ部材ユニット1B,1Cのチューブ6Bのようにパッド5に沿うように延出してもよい。これは、患者の体位と刺入管が接続される医療機器との関係や、チューブ6,6A,6Bの重量、可動幅などを考慮して当業者によって適宜選択されれば良い。なお、第6図では、パッド5’の外面側に筒状ガイド部5Cが一体に設けられ、この中にチューブ6Bが挿通されている。
【0073】
第3図〜第6図のその他の構成はそれぞれ第1、2図と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0074】
本発明では、凸条3t部分にのみ硬化性化合物を含浸させ強度を高めるようにしてもよい。硬化性化合物としては、キチン、キトサン、ケラチンなどを用いることができる。次に、カフ部材の好適な材料について説明する。
【0075】
本発明のカフ部材を構成する熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる、連通性のある三次元網状構造部は、平均孔径が50〜1,000μm、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmの多孔性三次元網状構造であれば良く、厚み方向の切断断面において、その全面が類似の構造を有してもいても、一方の面側と他方の面側において異なる構造を有していても良い。また、部分的に平均孔径や見掛け密度が変化するものであっても良く、例えば、一方の面側から他方の面側に向けて平均孔径や見掛け密度が徐々に変化する、所謂、異方性を有していても良い。厚み方向に平均孔径が同一でないカフ部材を使用する場合には、生体組織との接触面側を大きくし深部において小さい孔径とすることが好ましい。この理由としては、生体組織との接触面から浸潤した組織は、通常厚み方向へ10mm程度の深度までは安定して到達するが、多孔体内に形成される新生血管が成熟していても深部の細胞は壊死したり分化が不十分となる危険性があるため、10mm程度よりも深い部分では孔径を小さくして組織の浸潤を抑制することが好ましいのである。
【0076】
また、生体組織との接触面側には平均孔径を大きく外れる大孔径の孔が存在しても構わない。このような孔としては500〜2,000μm程度の孔が好ましく、これらが生体組織側の表層近くに存在することでコラーゲンなどの細胞外マトリックスを深部まで均質に含浸させること容易となり、また、組織からの細胞の侵入や毛細血管の構築などに有利に働くこととなる。ただし、このような大孔径の孔は、本発明でいう多孔性三次元網状構造の平均孔径の計算の概念に導入されるものではない。
【0077】
本発明に係る多孔性三次元網状構造の平均孔径は10〜500μmで、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmであるが、好ましい平均孔径は100〜500μm、より好ましくは200〜500μmである。見掛け密度としては0.01〜0.5g/cm範囲内であれば、細胞生着性が良好で、優れた物理的強度を維持し、細胞が侵入、生着し、組織化した際に皮下組織と近似した弾性特性が得られるが、好ましくは0.05〜0.3g/cm、より好ましくは0.05〜0.2g/cmである。
【0078】
また、平均孔径が同一であっても孔径の分布としては、細胞の侵入に重要な孔径サイズである10〜300μmの孔の寄与率が高いことが望ましく、孔径10〜300μmの孔の寄与率が10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上、特に好ましくは50%以上であると、細胞が侵入し易く、また、侵入した細胞が接着、成長しやすいため、好ましい。
【0079】
なお、多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径10〜300μmの孔の寄与率とは、全孔の数に対する孔径10〜300μmの孔の数の割合を指す。
【0080】
このような平均孔径、見掛け密度及び孔径分布の多孔性三次元網状構造であれば、細胞が容易に空孔部分へ浸透し、多孔性三次元網状構造部へ細胞が接着、成長し易く、毛細血管の構築がなされ、刺入部において皮下組織とカテーテルやカニューレとの癒着が頑強で良好なカフ部材を得ることができる。
【0081】
このような多孔性三次元網状構造部を構成する熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポシキ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂並びにそれらの誘導体の1種又は2種以上が例示できるが、好ましくはポリウレタン樹脂であり、中でもセグメント化ポリウレタン樹脂が好適である。
【0082】
セグメント化ポリウレタン樹脂は、ポリオール、ジイソシアネート及び鎖延長剤の3成分から合成され、いわゆるハードセグメント部分とソフトセグメント部分を分子内に有するブロックポリマー構造によるエラストマー特性を有するため、このようなセグメント化ポリウレタン樹脂を使用した場合に得られる弾性特性は、患者やカテーテル又はカニューレが動いた場合や、消毒作業時等に刺入部周辺の皮膚を動かした場合に皮下組織とカフ部材の界面に生じる応力を減衰させる効果が期待できる。
【0083】
本発明のカフ部材には、上記特定の多孔性三次元網状構造を形成した層を第1の層とし、この第1の層に更に異なる構造の第2の層を積層することも可能である。この第2の層としては、繊維集合体や可撓性フィルム、更には、第1の層の多孔性三次元網状構造とは平均孔径や見掛け密度が異なる多孔性三次元網状構造層が使用可能である。
【0084】
不織布又は織布の有孔性としては100〜5,000cc/cm/minの範囲のものであれば可撓性、皮下組織との縫合強度など点で好ましい。なお、この有孔性は、JIS L 1004により測定される値で、通気性や通気量ということもある。
【0085】
繊維集合体としては、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂並びにこれらの誘導体よりなる群から選択される1種又は2種以上からなる合成樹脂製であっても良く、また、フィブロイン、キチン、キトサン及びセルロース並びにこれらの誘導体から選択される1種又は2種以上のような天然物由来の繊維からなるものも使用可能である。合成繊維と天然物由来の繊維とを併用したものであっても良い。
【0086】
また、可撓性フィルムとしては、熱可塑性樹脂フィルム、具体的には、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポシキ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂並びにこれらの誘導体よりなる群から選択される1種又は2種以上よりなるフィルムが例示でき、好ましくは、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル、フッ素樹脂及びシリコン樹脂よりなる群から選択される1種又は2種以上よりなるフィルムである。
【0087】
可撓性フィルムとしては中実フィルムのみならず多孔膜や発泡体も使用可能である。中実の可撓性フィルムと積層した場合には、細菌バリア性が大きく、感染管理に有利なカフ部材が得られる。
【0088】
平均孔径や見掛け密度が第1の層の多孔性三次元網状構造とは異なる多孔性三次元網状構造を第2の層とする場合、この多孔性三次元網状構造としては、平均孔径0.1〜200μmで見掛け密度0.01〜1.0g/cm程度の多孔性三次元網状構造を用いることができる。
【0089】
これらの第2の層を多孔性三次元網状構造層に積層する方法としては、該第2の層が繊維集合体、可撓性フィルム、第1の層の多孔性三次元網状構造とは平均孔径や見掛け密度が異なる多孔性三次元網状構造層の場合には、粘着剤を使用して接着する方法、特にホットメルト不織布を第1の層と第2の層との間に挟みこんで積層し、加熱下で圧着する方法などが挙げられる。このようなホットメルト不織布としては、例えば、日東紡社製PA1001のようなポリアミド型熱粘着シートなどが使用可能である。他にも、溶剤を使用して接触表面の表層部を溶解して接着する方法、熱によって表層部を溶融して接着する方法、超音波や高周波を利用する方法などが例示できる。また、第1の層の製造時に、ポリマードープと繊維集合体や可撓性フィルムを積層して成形するなど、連続的に積層形成することができる。
【0090】
なお、第2の層としては、繊維集合体、可撓性フィルム、多孔性三次元網状構造層が2層以上設けられていても良く、また、第2の層を介して第1の層の多孔性三次元網状構造層が積層された3層構造であっても良い。
【0091】
本発明のカフ部材の多孔性三次元網状構造部には、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプII、コラーゲンタイプIII、コラーゲンタイプIV、アテロ型コラーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ケラタン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸B、エラスチン、ヘパラン硫酸、ラミニン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、オステオネクチン、エンタクチン、ヒドロキシエチルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合体、ヒドロキシエチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合体、アルギン酸、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド及びポリビニルピロリドンよりなる群から選択される1種又は2種以上が保持されていても良く、更に血小板由来増殖因子、上皮増殖因子、形質転換増殖因子α、インスリン様増殖因子、インスリン様増殖因子結合蛋白、肝細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、アンジオポイエチン、神経増殖因子、脳由来神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、形質転換増殖因子β、潜在型形質転換増殖因子β、アクチビン、骨形質タンパク、繊維芽細胞増殖因子、腫瘍増殖因子β、二倍体繊維芽細胞増殖因子、ヘパリン結合性上皮増殖因子様増殖因子、シュワノーマ由来増殖因子、アンフィレグリン、ベーターセルリン、エピグレリン、リンホトキシン、エリスロエポイエチン、腫瘍壊死因子α、インターロイキン−1β、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−17、インターフェロン、抗ウイルス剤、抗菌剤及び抗生物質よりなる群から選択される1種又は2種以上が保持されていても良く、更に、胚性幹細胞(分化されていても良い。)、血管内皮細胞、中胚葉性細胞、平滑筋細胞、末梢血管細胞、及び中皮細胞よりなる群から選択される1種又は2種以上の細胞が接着されていても良い。
【0092】
また、本発明のカフ部材は、その多孔性三次元網状構造層を構築する熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる骨格自体にも微細な孔を設けることが可能である。このような微細孔は、骨格表面を平滑な表面でなく複雑な凹凸のある表面とし、コラーゲンや細胞増殖因子などの保持にも有効であり、結果として細胞の生着性を上げることが可能である。ただし、この場合の微細孔は、本発明でいう多孔性三次元網状構造層の平均孔径の計算の概念へ導入されるものではない。
【0093】
以下に、本発明のカフ部材を構成する熱可塑性ポリウレタン樹脂よりなる多孔性三次元網状構造体の製造方法の一例を挙げるが、本発明のカフ部材の製造方法は何ら以下の方法に限定されるものではない。
【0094】
熱可塑性ポリウレタン樹脂よりなる多孔性三次元網状構造体を製造するには、まず、ポリウレタン樹脂と、孔形成剤としての後述の水溶性高分子化合物と、ポリウレタン樹脂の良溶媒である有機溶媒とを混合してポリマードープを製造する。具体的には、ポリウレタン樹脂を有機溶媒に混合して均一溶液とした後、この溶液中に水溶性高分子化合物を混合分散させる。有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、テトラヒドロフランなどがあるが、熱可塑性ポリウレタン樹脂を溶解することができればこの限りではなく、また、有機溶媒を減量するか又は使用せずに熱の作用でポリウレタン樹脂を融解し、ここに孔形成剤を混合することも可能である。
【0095】
孔形成剤としての水溶性高分子化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどが挙げられるが、熱可塑性樹脂と均質に分散してポリマードープを形成するものであればこの限りではない。また、熱可塑性樹脂の種類によっては、水溶性高分子化合物でなく、フタル酸エステル、パラフィンなどの親油性化合物や塩化リチウム、炭酸カルシウムなどの無機塩類を使用することも可能である。また、高分子用の結晶核剤などを利用して凝固時の二次粒子の生成、即ち、多孔体の骨格形成を助長することも可能である。
【0096】
熱可塑性ポリウレタン樹脂、有機溶媒及び水溶性高分子化合物などより製造されたポリマードープは、次いで熱可塑性ポリウレタン樹脂の貧溶媒を含有する凝固浴中に浸漬し、凝固浴中に有機溶媒及び水溶性高分子化合物を抽出除去する。このように有機溶媒及び水溶性高分子化合物の一部又は全部を除去することにより、ポリウレタン樹脂からなる多孔性三次元網状構造材料を得ることができる。ここで用いる貧溶媒としては、水、低級アルコール、低炭素数のケトン類などが例示できる。凝固したポリウレタン樹脂は、最終的には、水などで洗浄して残留する有機溶媒や孔形成剤を除去すれば良い。
【0097】
第8図(a)は、本発明のさらに別の実施の形態に係るカフ部材2D及びカフ部材ユニット1Dを示す断面図、第8図(b)はこのカフ部材ユニット1Dの生体への留置状態を示す断面図である。
【0098】
この実施の形態では、カフ部材2Dは、上記第1のカフ部材2に対し、さらに生分解性ポリマーよりなるフォーム体9を設けたものである。
【0099】
この実施の形態では、このフォーム体9はフランジ部3の下面の全体からフランジ部3の外周縁を回り込みフランジ部3の上面のうち凸条3tの外周側の領域まで覆っている。さらに、このフォーム体9は、筒状部4の外周面の全体と下端面を覆っている。
【0100】
このようにフランジ部3及び筒状部4の生体と接触する外面を生分解性ポリマーからなるフォーム体で覆ってあるカフ部材ユニット1Dを生体に留置した場合、まずこのフォーム体に生体組織が入りこみ、生着して、患者の体内でのカフ部材ユニットの物理的な安定を図ることができる。このカフ部材ユニットを使用した短期間の治療が終了した場合、生分解性ポリマーよりなるフォーム体9の部分には生体組織は生着しているものの、フォーム体で覆われたフランジ部3や筒状部4には組織が行き届かないので、生分解性ポリマーを体内に残しつつ、カフ部材ユニットの本体部分を取り外すことができるので、きわめて簡便に取り外すことができる。
【0101】
体内に残った生分解性ポリマー部分は後々に生分解されていくので、生体への影響も少なくてすむ。
【0102】
従って、このカフ部材ユニット1Dは、生体留置後6ヶ月〜3年程度の短〜中期で生体から取り外す場合に用いるのに好適である。
【0103】
なお、このカフ部材ユニット1Dを長期にわたって生体に使用した場合、生分解性ポリマーの略全体が生分解されて消失するが、その場合には、フォーム体を有しない第1図〜第6図のカフ部材と同様に、生体に装着された状態が維持される。
【0104】
上記の生分解性ポリマーよりなるフォーム体9は、フランジ部3及び筒状部4よりなるカフ部材に対し外嵌めして装着することができる。嵌着後、必要に応じ糸などによってフォーム体9を留め付けてもよい。
【0105】
フォーム体9は接着、粘着、熱圧着などの手法によってカフ部材と一体化されてもよい。
【0106】
生分解性ポリマーとしては、3−ヒドロキシアルコン酸(このアルコン酸の炭素数は好ましくは4〜16程度)のホモポリマーまたはコポリマーで、分子量は1万〜100万程度のもの、具体的には3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0107】
生分解性ポリマーは、その他、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリアミドなどが挙げられる。
【0108】
生分解性ポリマーのフォーム体は、カフ部材2と同様の平均孔径、見掛け密度の3次元網状構造のものであることが好ましく、その製造方法はカフ部材2と同様である。フォーム体の厚さは0.5〜10mm程度が好適である。
【0109】
上記実施の形態では、フランジ部3と筒状部4の外面の略全体を覆うようにフォーム体9を設けているが、筒状部4の外面にのみフォーム体9を設けてもよく、筒状部4の外面とフランジ部3の下面とにのみフォーム体9を設けてもよい。フォーム体9は、上記実施の形態よりも広い範囲を覆うように設けられてもよく、例えばさらにパッド5もフォーム体9で覆われてもよい。
【0110】
上記以外のカフ部材にもフォーム体9を設けてもよく、例えば凸条3tの無いカフ部材の生体接触部の少なくとも一部にフォーム体を設けてもよい。また、前記第7図の筒状部のみからなるカフ部材8の外周面にフォーム体9を設けてもよい。
【実施例】
【0111】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0112】
なお、実施例では第1、2図に示される形状のカフ材を作成してヤギ移植実験を行った結果を説明する。また、動物実験に関しては国際標準規格に従って倫理面に配慮し、適切に行った。
【0113】
(実施例1)
<多孔体の成型>
熱可塑性ポリウレタン樹脂(日本ミラクトラン社製、ミラクトランE980PNAT)をN−メチル−2−ピロリジノン(関東化学社製、ペプチド合成用試薬、NMP)にディゾルバー(約2,000rpm)を使用して室温下で溶解して12.5%溶液(重量/重量)を得た。このNMP溶液約1.0kgをプラネタリーミキサー(井上製作所製、2.0L仕込み、PLM−2型)に秤量して入れ、ポリウレタン樹脂の半分重量相当のメチルセルロース(関東化学社製、試薬、50cpグレード)を添加し、60℃で120分間攪拌した。攪拌を継続したまま10分間20mmHg(2.7kPa)まで減圧して脱泡する操作を加え、ポリマードープを得た。
【0114】
別に、厚み3mmで内側の140mm×140mm部分を打抜いた150mm×150mmのテフロン製の四角枠を二枚重ね、これらの間に150mm×150mm角の化学実験用濾紙(東洋濾紙社製、定量分析用、2番)を挟み固定した。ここに前記ポリマードープを流延し、ガラス棒にて液切りした後、150mm×150mm角の化学実験用濾紙(東洋濾紙社製、定量分析用、2番)を乗せて固定した。これを還流状態にあるメタノール中へ投入して72時間還流を継続して上下両面の化学実験用濾紙面からNMP溶媒を抽出除去することでポリウレタン樹脂を凝固させた。なお、メタノールは還流状態を維持したまま、20分間隔で新液と交換した。
【0115】
72時間後、テフロン枠から固化したポリウレタン樹脂を取り出し、日本薬局方精製水中で72時間洗浄することによりメチルセルロース、メタノール及び残留するNMPを抽出除去した。これを、室温下で24時間減圧(20mmHg)乾燥させて、熱可塑性ポリウレタン樹脂製の多孔性三次元網状構造材料を得た。
【0116】
得られた多孔性三次元網状構造材料について、下記方法により平均孔径及び見掛け密度の測定を行った。なお、試料の切断は両刃カミソリ(フェザー社製、ハイステンレス)を使用して室温下で行った。
【0117】
[平均孔径の測定]
両刃カミソリで切断した試料の平面(切断面)を電子顕微鏡(トプコン社製、SM200)にて撮影した写真(代表例を図6に示す)を使用して、同一平面上の個々の孔を三次元網状構造の骨格から包囲された図形として画像処理(画像処理装置はニレコ社のLUZEX APを使用し、画像取り込みCCDカメラはソニー株式会社のLE N50を使用した。)し、個々の図形の面積を測定した。これを真円面積とし、対応する円の直径を求め孔径とした。ただし、多孔体形成時の相分離の効果によって、多孔体の骨格部分に穿孔されている微細孔は無視して同一平面上の連通孔のみを測定した。同時に、測定した全孔において孔径分布を測定した。更にこの孔径分布測定結果から、孔径10〜300μm孔の寄与率を計測した結果、多孔質構造体の平均孔径は286.1μm、孔径150〜400μm孔の寄与率は87.6%と測定された。
【0118】
[見掛け密度の測定]
多孔質構造体を約10mm×10mm×3mmの直方体に両刃カミソリで切断し、投影機(Nikon,V−12)にて測定して得た寸法より体積を求め、その重量を体積で除した値から見かけ密度を求めた結果、0.118±0.006g/cmであった。
【0119】
<カフ部材への成型>
前記多孔性構造体をトムソン打ち抜き刃で図1の3のフランジ部の形状に打ち抜いた(長直径は120mm、短直径は70mm)。次に、前記の同様の手法で熱可塑性ポリウレタン樹脂を筒状の多孔性三次元網状構造材料(内径7.7mm、外径13.5mm、長さ50mm)へ成型した(図1の4の筒状部)。続いて、熱可塑性ポリウレタン樹脂を定法のヒートプレス加工によって2.0mm厚みの鏡面シートへ成型し、トムソン打ち抜き刃によって図1の5(パッド)の形状(長直径は100mm、短直径は50mm)に打ち抜いた。
【0120】
このパッド表面にTHF(関東化学、試薬、特級)を塗布し、ここに多孔性三次元網状構造材料からなるフランジ部を重ね合わせ、荷重1.0kg/cmで圧着させて中央部へ穴(図1の符号5a及び3a)を開けた。
【0121】
ここにチューブ(図1の符号6、内径5.0mm、外径7.7mm)を通して固定し、さらにフランジ部(図1の符号3)の下面においてチューブ(図1の符号6)を包むように筒状部(図1の符号4)を装着して固定することにより本発明のカフ部材ユニットを得た。
【0122】
検体には成ヤギ(雌、体重54kg)を用い、剃毛された左側胸部より腹部表皮を試験部位とした。手術時、検体は左側臥位にて、通常手技を用い速やかに気管内挿管を行い、イソフルレンによる全身麻酔下にて維持された。胸腹部周囲表皮をイソジン消毒後、表皮を約100mm切開し、実施例1で作成し、エチレンオキサイトガス滅菌を施した、本発明のカフ部材ユニットを埋め込み(パッド5から約10mm幅で全周に渡ってはみ出しているカフ部材2の外周部分を表皮の下側へ埋込むようにして)、凸条3tの外周部分を切開された表皮の末端部分と合わせるようにして皮下組織を縫合して固定した。
【0123】
術後から1週間は縫合部位を酸性水にて1日2回の消毒を行った。検体は自由給水とし、飼料としてヘイキューブを一日5回、適量(約1kg)を給仕した。術後1週間を経過した後は一切の消毒を行うことなく、かつ、抗生物質を投与することなく感染所見などを認めることなく順調に経過した。術後1ヶ月後及び2ヶ月後に、全身麻酔下にて先に埋め込まれた試験片および周囲の組織を摘出した。
【0124】
試験片と周囲の組織は密に生着し、互いの剥離は困難であった。また周囲に感染、炎症等の所見は認められなかった。
【0125】
フランジ部3の凸条3tの外周側の側面と表皮が接着して安定しており、図2で説明されている通り、カフ部材ユニットのフランジ部3の外周縁が皮下組織と癒着することによって、表皮がチューブ6と皮下組織の接触部位まで到達することすらなく、ダウングロース現象が完全に抑制されていることが分かる。
【0126】
さらに摘出された試料片は10%中性緩衝ホルマリンにて速やかに固定され、常法にてHE染色標本を作成し、光学顕微鏡にて観察した。組織学的所見としては、本発明のカフ部材ユニットのフランジ部3及び筒状部4を構成する多孔性三次元網状構造層には、周囲組織より伸展した線維芽細胞、マクロファージおよび膠原線維などの細胞外基質を主体とする肉芽組織が浸潤し、多くの血管新生が確認された。また、1ヶ月と2ヶ月の剖検によってこれら浸潤組織は経時性に成熟した結合組織へ形成されていくのが認められた。
【0127】
以上により、本発明のカフ部材ユニットは、そのフランジ部3及び筒状部4へ生体細胞が浸潤することにより器質化し、創傷部を外界と隔絶し、治癒機転における細菌感染等の増悪因子を防御することが示唆された。
【0128】
(比較例)
本発明のカフ部材ユニットからパッド5とフランジ部3を取り除き、チューブ6(内径2.0mm、外径3.0mm)へ筒状部4を装着したのみで実施例2と同様の手法で筒状部4の上末端が表皮から2mm程度露出するように成ヤギへ移植した。1ヶ月後に実施例2と同様にして試験片および周囲の組織を摘出した。皮下組織の深部においては、試験片と周囲の組織は密に生着し、互いの剥離は困難であったが、表皮に近い部分ではほとんど生着しておらず容易に剥離できた。表皮に近い部分では周囲に感染、炎症等の所見が確認され、さらに図7に示されるようにチューブ6に沿ってダウングロース現象が起こっていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】実施の形態に係るカフ部材ユニットの構成図である。
【図2】図1のカフ部材ユニットの使用例を示す断面図である。
【図3】別の実施の形態に係るカフ部材ユニットの構成図である。
【図4】さらに別の実施の形態に係るカフ部材ユニットの構成図である。
【図5】さらに別の実施の形態に係るカフ部材ユニットの構成図である。
【図6】さらに別の実施の形態に係るカフ部材ユニットの構成図である。
【図7】比較例の説明図である。
【図8】さらに別の実施の形態に係るカフ部材ユニットの構成図である。
【符号の説明】
【0130】
1、1’、1A、1B,1C,1D カフ部材ユニット
2,2Dカフ部材
3 フランジ部
3t 凸条
4 筒状部
5 パッド
6、6A、6B チューブ
7 接着剤
9 生分解性ポリマーよりなるフォーム体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の外面に重なるフランジ部と、
該フランジ部の一方の面から立設された筒状部と、該フランジ部の他方の面に突設されており、該フランジ部の外周縁と内周縁との間を周回している凸条と、
を有するカフ部材であって、
熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂よりなる基材樹脂で形成された、平均孔径10〜500μmで、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmの、連通性のある多孔性三次元網状構造部を有することを特徴とするカフ部材。
【請求項2】
請求項1において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径が100〜500μmで、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmであることを特徴とするカフ部材。
【請求項3】
請求項2において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径が200〜500μmで、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmであることを特徴とするカフ部材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該多孔性三次元網状構造の見掛け密度が0.05〜0.3g/cmであることを特徴とするカフ部材。
【請求項5】
請求項4において、該多孔性三次元網状構造の見掛け密度が0.05〜0.2g/cmであることを特徴とするカフ部材。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径10〜300μmの孔の寄与率が10%以上であることを特徴とするカフ部材。
【請求項7】
請求項6において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径10〜300μmの孔の寄与率が20%以上であることを特徴とするカフ部材。
【請求項8】
請求項7において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径10〜300μmの孔の寄与率が30%以上であることを特徴とするカフ部材。
【請求項9】
請求項8において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径10〜300μmの孔の寄与率が40%以上であることを特徴とするカフ部材。
【請求項10】
請求項9において、該多孔性三次元網状構造の平均孔径における孔径10〜300μmの孔の寄与率が50%以上であることを特徴とするカフ部材。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項において、該多孔性三次元網状構造部の厚みが0.2〜500mmであることを特徴とするカフ部材。
【請求項12】
請求項11において、該多孔性三次元網状構造部の厚みが0.2〜100mmであることを特徴とするカフ部材。
【請求項13】
請求項12において、該多孔性三次元網状構造部の厚みが0.2〜50mmであることを特徴とするカフ部材。
【請求項14】
請求項13において、該多孔性三次元網状構造部の厚みが0.2〜10mmであることを特徴とするカフ部材。
【請求項15】
請求項14において、該多孔性三次元網状構造部の厚みが0.2〜5mmであることを特徴とするカフ部材。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項において、該基材樹脂が、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポシキ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂並びにこれらの誘導体よりなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とするカフ部材。
【請求項17】
請求項16において、該基材樹脂がポリウレタン樹脂であることを特徴とするカフ部材。
【請求項18】
請求項17において、該ポリウレタン樹脂がセグメント化ポリウレタン樹脂であることを特徴とするカフ部材。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれか1項において、該凸条部分にのみ硬化性化合物を含浸させてあることを特徴とするカフ部材。
【請求項20】
請求項19において、該硬化性化合物がキチン、キトサン及びケラチンよりなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とするカフ部材。
【請求項21】
請求項1ないし20のいずれか1項において、該フランジ部の外周縁と凸条との距離が1〜100mmであることを特徴とするカフ部材。
【請求項22】
請求項1ないし21のいずれか1項において、該多孔性三次元網状構造部に、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプII、コラーゲンタイプIII、コラーゲンタイプIV、アテロ型コラーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ケラタン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸B、エラスチン、ヘパラン硫酸、ラミニン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、オステオネクチン、エンタクチン、ヒドロキシエチルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合体、ヒドロキシエチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合体、アルギン酸、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド及びポリビニルピロリドンよりなる群から選択される1種又は2種以上が保持されていることを特徴とするカフ部材。
【請求項23】
請求項22において、該多孔性三次元網状構造部に更に血小板由来増殖因子、上皮増殖因子、形質転換増殖因子α、インスリン様増殖因子、インスリン様増殖因子結合蛋白、肝細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、アンジオポイエチン、神経増殖因子、脳由来神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、形質転換増殖因子β、潜在型形質転換増殖因子β、アクチビン、骨形質タンパク、繊維芽細胞増殖因子、腫瘍増殖因子β、二倍体繊維芽細胞増殖因子、ヘパリン結合性上皮増殖因子様増殖因子、シュワノーマ由来増殖因子、アンフィレグリン、ベーターセルリン、エピグレリン、リンホトキシン、エリスロエポイエチン、腫瘍壊死因子α、インターロイキン−1β、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−17、インターフェロン、抗ウイルス剤、抗菌剤及び抗生物質よりなる群から選択される1種又は2種以上が保持されていることを特徴とするカフ部材。
【請求項24】
請求項23において、該多孔性三次元網状構造部に細胞が接着されていることを特徴とするカフ部材。
【請求項25】
請求項24において、該細胞が体性肝細胞、造血肝細胞、胚性幹細胞、血管内皮細胞、中胚葉性細胞、平滑筋細胞、末梢血管細胞、繊維芽細胞及び中皮細胞よりなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とするカフ部材。
【請求項26】
請求項25において、該体性肝細胞、造血肝細胞又は胚性幹細胞が分化されたものであることを特徴とするカフ部材。
【請求項27】
請求項1ないし26のいずれか1項において、少なくとも前記フランジ部の一方の面の一部を覆う生分解性ポリマーよりなるフォーム体を備えたことを特徴とするカフ部材。
【請求項28】
生体の外面に重なるフランジ部と、
該フランジ部の一方の面から立設された筒状部と、を有するカフ部材であって、少なくとも前記フランジ部の一方の面の一部を覆う生分解性ポリマーよりなるフォーム体を備えたことを特徴とするカフ部材。
【請求項29】
筒状部を有するカフ部材であって、該筒状部の外周面の一部を覆う生分解性ポリマーよりなるフォーム体を備えたことを特徴とするカフ部材。
【請求項30】
生体接触面の少なくとも一部を覆う生分解性ポリマーよりなるフォーム体を備えたことを特徴とするカフ部材。
【請求項31】
請求項1ないし27のいずれか1項に記載のカフ部材と、
該カフ部材の前記フランジ部の他方の面の前記凸条よりも内側領域に重なる高分子材料製パッドと
を備えてなることを特徴とするカフ部材ユニット。
【請求項32】
請求項31において、生体に対する流体の供給又は排出用のチューブが、該パッドと、カフ部材のフランジ部及び筒状部を貫通して挿通されていることを特徴とするカフ部材ユニット。
【請求項33】
請求項32において、該チューブと該パッドとの界面が密封されていることを特徴とするカフ部材ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−98116(P2007−98116A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203446(P2006−203446)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(591108880)国立循環器病センター総長 (159)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】