説明

カプセル内視鏡システム

【課題】カプセル内視鏡内には光検知装置や光量記録装置や比較器等を組み込むことなく撮像装置において適正な露光値を得ることができるカプセル内視鏡システムを提供する。【解決手段】カプセル内視鏡1のイメージセンサ213が出力した画像信号は、送信アンテナ23bから送信され、体外ユニット30の受信アンテナ33aによって受信される。体外ユニット30の信号処理回路303は、受信された画像信号から輝度信号を抽出し、光量制御信号生成回路305は、抽出した輝度信号と目標値とを比較して、前者を後者に近づけるためのパラーメータを内容とする光量制御信号を生成する。この光量制御信号は、送信アンテナ33bから送信され、カプセル内視鏡1の受信アンテナ23aによって受信される。カプセル内視鏡1のコントローラは、この光量制御信号に応じて、ドライバ216に対して、発光ダイオード211に供給する電流値を変化させる指示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の体腔内に導入されたカプセル内視鏡が体腔内を撮影することによって得た画像信号を被検者の外部に設置された体外ユニットへ無線送信するカプセル内視鏡システムに、関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、被検者の消化管内部を観察するためのシステムとして、電子内視鏡システムがある。この電子内視鏡システムは、被検体の撮像を行う撮像装置がその先端に組み込まれている可撓管状の挿入部を有する電子内視鏡と、この電子内視鏡から出力される画像信号のプロセシングを行うためのプロセッサ装置と、プロセッサ装置によってプロセシングを施された画像信号に基づく画像を表示するモニタとを、備えている。このような電子内視鏡システムを用いて実際に被検者の消化管を観察する際には、電子内視鏡の挿入部を経口的に被検者の体腔(消化管)内に導入しなくてはならないが、被検者にとって、挿入部を構成する管が咽喉に差し込まれた状態は、多大なる苦痛を伴うものであって、耐え難いものであった。
【0003】
そこで、近年、電子内視鏡の挿入部を咽喉部に差し込まれることに因る被検者の苦痛を無くすために、被検者が嚥下することにより被検者の体腔内(消化管内)に導入されるカプセル内視鏡と、被検者の体外に配置される体外ユニットとからなるカプセル内視鏡システムが、開発されている。
【0004】
このカプセル内視鏡は、撮影に際して体腔内を照明するために、照明装置(発光ダイオード)を備えている。
【0005】
ところで、カプセル内視鏡に限らず、体腔内を撮影する内視鏡では、そのサイズ上の制約に因り、機械式のシャッタや絞りが撮像装置に組み込まれていない。そのため、適正な露光値を得るには、照明装置における照明光量を調整する手法がとられる。
【特許文献1】特表2004−535878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カプセル内視鏡内で自律的に露光調整(照明光調整)をする手法の一つとして、上記先行文献のように、カプセル内視鏡内に体壁から反射した光の量や強さを検出する光検知装置を組み込み、それから得られた光量を記録し、その値をある閾値と比較し、その値を越えるとカプセル内視鏡内の照明装置の光量制御を行うという手法がある。
【0007】
しかし、体腔内に導入するという使用方法故に小型軽量であることが重視されるカプセル内視鏡にとっては、これらの処理に必要とされる光検知装置や光量記録装置や比較器等を組み込むことによりカプセルサイズが大きくなる、もしくは実装が複雑になる等のデメリットがある。また、感染症対策として使い捨てのカプセル内視鏡に適用する際には、カプセル内視鏡内の構成・処理をできるだけ簡単にしてコストを下げる必要があり、この場合には上記処理をカプセル内視鏡内にて行うことが最適な手法であるとは言い難い。
【0008】
そこで、本発明の課題は、カプセル内視鏡内には、上記処理に必要な光検知装置や光量記録装置や比較器等を組み込む必要がなく、ただ、その照明装置の駆動回路をカプセル内視鏡の外部から制御するだけで、撮像装置において適正な露光値を得ることができるカプセル内視鏡システムを、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために案出された本発明のカプセル内視鏡システムは、被検者の体腔内に導入されたカプセル内視鏡が当該体腔内を撮像することによって得た画像信号を被検者の体外に設置された体外ユニットへ無線送信するカプセル内視鏡システムであって、前記カプセル内視鏡は、発光素子と、この発光素子に対して駆動電流を供給する駆動回路と、対物光学系と、この対物光学系によって形成された像を撮像することによって画像信号を出力する撮像素子と、この画像信号を無線送信する送信装置と、制御信号を受信する受信装置と、この受信装置によって受信された光量制御のための制御信号に応じて、前記駆動回路による前記発光素子に対する駆動電流の供給量を制御する制御回路とを備え、前記体外ユニットは、前記画像信号を受信する受信装置と、この受信装置によって受信された画像信号が示す輝度値と所定の目標値との差分に対応したパラメータを内容とする光量制御のための制御信号を生成する光量制御のための制御信号生成回路と、この光量制御のための制御信号を無線送信する送信装置とを備えることを、特徴とする。
【0010】
このように構成されると、カプセル内視鏡の対物光学系によって形成された像を撮像素子が撮像することによって得られた画像信号は、送信装置によって無線送信される。この画像信号を受信装置によって受信した体外ユニットでは、光量制御のための制御信号生成回路が、この画像信号が示す輝度値を抽出し、この輝度値と所定の目標値との差分に基づいて、前者を後者に近づけるためのパラメータを内容とする光量制御のための制御信号を生成し、送信装置がこの光量制御のための制御信号を無線送信する。この光量制御のための制御信号を受信装置によって受信したカプセル内視鏡では、制御回路が、この光量制御のための制御信号に応じて、駆動回路による発光素子に対する駆動電流の供給量を制御する。そのため、カプセル内視鏡には、光検知装置や光量記録装置や比較器等は必要がないので、カプセル内視鏡全体のサイズや重量を小さくすることができると共に、カプセル内の構成・処理を簡単にすることができる。
【0011】
一般的に、ビデオカメラ等においてCCDやCMOS等のイメージセンサーから得られた画像(画素)信号は、マトリックス回路等の複数段の画像処理回路を経て輝度信号と色差信号を抽出した後、NTSC等のビデオ信号に変換される。そこで、本発明において、体外ユニットにてビデオ信号を構築する過程で抽出された輝度信号に基づいて輝度値を取得しても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるカプセル内視鏡システムによると、カプセル内視鏡内には、光検知装置や光量記録装置や比較器等を組み込む必要がない。にも拘わらず、その照明装置の駆動回路をカプセル内視鏡の外部に配置された体外ユニットから制御することによって、撮像装置における適正な露光値を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【実施形態1】
【0014】
本発明の第1の実施形態であるカプセル内視鏡システムは、経口的に被検者の体腔内に導入されて体腔内を撮像するとともに、体腔内を撮像することによって得た画像信号を無線送信するカプセル内視鏡1(図1参照)と、このカプセル内視鏡1から送信された画像信号を受信するとともに、このカプセル内視鏡1に対して各種制御信号を送出するために被検者の体外に設置された体外ユニット2(図2参照)とから、構成されている。
【0015】
図1は、このカプセル内視鏡1の内部構成を表すためにその中心軸に沿った縦断面を示す断面図である。なお、以下の説明を簡単にするために、図1の左側を「前側」とし、図1の右側を「後側」と定義する。
【0016】
図1に示されるように、このカプセル内視鏡1は、各回路部品を収納する筒状のフレーム20と、このフレーム20内に収納される撮像ユニット21と、バッテリーケース22と、これら各部品をその内部に収納して液密に保護するためのカプセル10とからなる。
【0017】
カプセル10は、後端部が半球状に窄まった円筒状の胴部101と、胴部101の前端に液密に嵌め込まれた半球状の透明カバー102とからなる。従って、カプセル10は、全体として所謂カプセル型の形状を呈している。なお、透明カバー102は、撮像ユニット21の対物光学系212から被写体までの距離を適度に保つドームポートとしての役割を有する。
【0018】
バッテリーケース22は、フレーム20よりも僅かにその径が小さい有底円筒形状を有する絶縁体である。バッテリーケース22は、その内側の空間にバッテリー220を収納し、その開口端を撮像用基板210に向けて、フレーム20の内部に挿入されている。この状態では、フレーム20の内周面にバッテリーケース22の外周面が接する。また、このバッテリーケース22の後端面には、受信アンテナ23a(受信装置)及び送信アンテナ23b(送信装置)と、電源スイッチ回路24とが、実装されている。
【0019】
さらに、このバッテリーケース22内部の底面には、バッテリー220の陰極と接触するバネ状の電極である陰極接触部222が、実装されている。この陰極接触部222は、電源スイッチ回路24を介して、後述する各回路部品のグランド電極に導通している。これら各回路部品の電源電極は、夫々、各回路パターンを通じて、夫々、撮像用基板210上の回路パターン(並びに、フレーム20上の回路パターン及びバッテリーケース22上の回路パターン)を通じて、バッテリー220の陽極に導通している。
【0020】
フレーム20は、円筒形の回路板であり、その内部において撮像ユニット21及びバッテリーケース22を保持する。また、このフレーム20の内周面には、バッテリーケース22に形成された配線と後述する撮像用基板210上の配線とを中継するための回路パターンが、プリントされている。
【0021】
撮像ユニット21は、体腔内の像を撮像するユニットであり、対物光学系212,鏡筒202,撮像用基板210,及び、この撮像用基板210に実装された発光ダイオード211,イメージセンサ213,LEDドライバ214,変復調回路216,コントローラ215等の回路部品から、構成されている。
【0022】
鏡筒202は対物光学系212及び発光ダイオード211をフレーム20内に保持するための枠であり、フレーム20よりも僅かにその半径が小さい円柱形状を有している。この鏡筒202は、その前端面がフレーム20の前縁から若干凹むように、フレーム20内に固定されている。この鏡筒202には、その中心軸に沿って対物レンズ用保持孔202aが貫通しており、この対物レンズ用保持孔202aを挟んで点対称な二箇所に夫々発光ダイオード用固定穴202bが穿たれている。鏡筒202上の対物レンズ用保持孔202aには対物光学系212を構成する複数のレンズが、また、各発光ダイオード用固定穴202bには、夫々発光ダイオード211が、嵌め込まれる。
【0023】
発光素子としての各発光ダイオード211としては、白色光を発光する高輝度タイプの発光ダイオードが用いられている。そして、各発光ダイオード211は、鏡筒202の発光ダイオード用固定穴202b内を引き通されたリード線2111を通じて撮像用基板210に接続されており、このリード線2111を通じて撮像用基板210から供給された駆動電流によって発光する。
【0024】
対物光学系212は、体腔内の像を結ぶための光学系であって、その光軸が透明カバー102の中心軸と同軸となるように、鏡筒202の対物レンズ用保持孔202a内に固定されている。
【0025】
撮像素子としてのイメージセンサ213は、対物光学系212によってその撮像面上に結ばれた像をRGBの各原色毎に光電変換するCCD等の撮像素子であり、対物光学系212によって形成された体腔内の像を画像信号に変換する。
【0026】
撮像用基板210は、フレーム20よりも僅かにその径が小さく扁平な円柱形状を有し、鏡筒202の後端面に同軸に接着されている。従って、フレーム20の内部に撮像ユニット21が保持された状態では、フレーム20の内周面に、この撮像用基板210の外周面が接する。撮像用基板210における鏡筒202に接着された面の中央にはイメージセンサ213が実装されており、鏡筒202の各発光ダイオード用固定穴202bと重なる位置には、夫々、発光ダイオード211に繋がるリード線2111が接続されている。この撮像用基板210上には、これら発光ダイオード211及びイメージセンサ213,LEDドライバ214,変復調回路216,コントローラ215等の各種回路部品が実装されている。
【0027】
各LEDドライバ214(以下、本明細書中では「ドライバ214」と記載する)は、バッテリー220からの電源に基づいて各発光ダイオード211に駆動電流を供給する回路であり、その駆動電流の電流値又は電圧値若しくは、パルスワイズモジュレーションにおける単位時間中の駆動電流供給時間を変化させることによって、各発光ダイオード211に単位時間中に供給する電力量を増減する。
【0028】
コントローラ215は、このカプセル内視鏡1全体を制御する回路であり、特に、体外ユニット2から受信した光量制御のための制御信号に基づいて、各ドライバ214に対して単位時間中に供給する電力量を変化させる制御を行う。なお、これらカプセル内視鏡1の電源は、バッテリー220の代わりに、電磁波を通じて外部から供給されても良い。
【0029】
図3は、カプセル内視鏡1の内部回路を示すブロック図である。この図3に示されるように、変復調回路216は、受信アンテナ23aに接続された受信ブロック216aと、送信アンテナ23bに接続された送信ブロック216bとから、構成されている。また、受信ブロック216aには、受信アンプ216a1と復調回路216a2とが設けられており、送信ブロック216bには、変調回路216b1と送信アンプ216b2とが設けられている。
【0030】
図3において、受信アンテナ23aによって受信された信号(後述する光量制御のための制御信号等の各種制御信号を搬送波上に変調した信号)は、受信ブロック216a中の受信アンプ216a1に入力される。この受信アンプ216a1は、入力信号を増幅して、同じく受信ブロック216a中の復調回路216a2に入力する。この復調回路216a2は、搬送波上に変調されている各種制御信号を復調し、復調した各種制御信号を制御回路としてのコントローラ215に入力する。
【0031】
このコントローラ215は、入力した制御信号に応じた各種制御を実行する。その制御のうちの一つが、後述した光量制御のための制御信号に基づいた照明光量制御である。即ち、この光量制御のための制御信号の内容は、各発光ダイオード211の発光光量を単位量だけ増加又は減少させることを内容とするパラメータ,若しくは、各発光ダイオード211の発光光量を直接指定するパラメータである。そして、コントローラ215は、光量制御のための制御信号の内容が前者のパラメータである場合には、ドライバ214に対して、各発光ダイオード211に対して単位時間中に供給する電力量を上記光量制御のための制御信号の内容に応じて単位量だけ増加又は減少させる指示を行う。また、コントローラ215は、光量制御のための制御信号が後者のパラメータである場合には、ドライバ214に対して、各発光ダイオード211対して単位時間中に供給する電力量を上記光量制御のための制御信号の内容に対応した値に変化させる指示を行う。
【0032】
駆動回路としてのドライバ214は、コントローラ215からの指示に応じた電流値の駆動電流を、発光ダイオード211に供給する。このとき、ドライバ214は、コントローラ215からの指示が単位量だけ駆動電流を増加又は減少させる旨であれば、それまでに発光ダイオード211に対して供給していた駆動電流を単位量だけ増加又は減少させる。また、ドライバ214は、コントローラ215からの指示が駆動電流の電流値を具体的値に変化させる旨であれば、発光ダイオード211に対して供給する駆動電流の電流値を指示された値に変化させる。
【0033】
このようにして供給された駆動電流によって発光ダイオード211が発光した照明光によって照らされた被検物からの反射光が対物光学系212によって形成した当該被検物の像は、イメージセンサ213によって撮像され、画像信号に変換される。この画像信号は、送信ブロック216bの変調回路216b1に入力される。この変調回路216b1は、受信した映像信号を、所定の搬送波によって変調する。このようにして変調された信号は、送信アンプ216b2によって増幅された後に、送信アンテナ23bを通じて送信される。
【0034】
図2(A)及び(B)は、夫々、体外ユニット2の正面図及び背面図である。これらの図に示されたように、体外ユニット2は、被検者がその上半身に着込むベストの形態を有している。そして、その表面における腹部及びその周辺に重なる位置には、多数個の小型の受信アンテナ33aが分散して取り付けられている。また、その表面における胸部に重なる位置には、受信モジュール30,メモリ31及びバッテリー32が取り付けられている。他方、その背面には、一個の送信アンテナ33bが取り付けられている。この送信アンテナ33bとしては、カプセル内視鏡1が消化管のどこに在っても信号を受信できるように、指向性の広いものが用いられる。一方、受信アンテナ33aとしては、カプセル内視鏡1からの信号の受信状況に応じてその位置が算出できるように、信号を受信できる範囲が狭いものが、腹部全体と重なる範囲に、多数分散配置されている。
【0035】
図4は、受信モジュール30の内部構成を示すブロック図である。この図4に示されるように、この受信モジュール30は、各受信アンテナ33aに接続された受信アンプ301,この受信アンプ301に接続された復調回路302,この復調回路302に接続された信号処理回路303,この信号処理回路303に夫々接続された情報圧縮回路304及び光量制御信号生成回路305,この光量制御信号生成回路305に接続された変調回路306,及び、この変調回路306に接続された送信アンプ307から、構成されている。
【0036】
何れかの受信アンテナ33aによって受信された信号(画像信号を搬送波上に変調した信号)は、受信アンプ301によって増幅されて、復調回路302に入力される。この復調回路302は、搬送波上に変調されている画像信号を復調し、復調した画像信号(即ち、RGBの各原色毎の輝度分布を示す信号)を信号処理回路303に入力する。
【0037】
この信号処理回路303は、入力した画像信号を構成するRGB各色毎の画像信号に対してRGB−YCCマトリックス演算を実行することによって、画像信号を、輝度信号と色差信号とに分離する。そして、分離された輝度信号及び色差信号に基づいてビデオ信号を生成して情報圧縮回路304に入力するとともに、輝度信号のみを光量制御信号生成回路305に入力する。
【0038】
情報圧縮回路304は、入力されたビデオ信号に対してMPEG等の圧縮処理を施すことによって圧縮して、メモリ31に格納する。
【0039】
一方、光量制御信号生成回路305は、信号処理回路303から入力した輝度信号に基づいて、映像信号の各フレーム全体における輝度の平均値,若しくは、予めフレーム中のある一部分を特定範囲として設定し、各フレームのその特定範囲部分における輝度の平均値を算出する。そして、光量制御信号生成回路305は、このようにして算出した輝度平均値を、適正な露出が得られるものとして予め設定しておいた目標値と比較し、後者に対する前者の差分(差分=画像信号が示す輝度−所定の目標値)を算出する。そして、光量制御信号生成回路305は、この差分だけ平均輝度値を上昇又は下降させるために必要な発光光量を計算して、この発光光量に相当するパラメータ(差分に対応したパラメータ,画像信号が示す輝度値と所定の目標値との差分を打ち消すに必要な発光光量に相当するパラメータ)を、光量制御信号として変調回路306に入力する。若しくは、光量制御信号生成回路305は、算出した差分が正の値であれば発光光量を単位量だけ減少させる旨のパラメータ(差分に対応したパラメータ,所定の目標値に対する画像信号が示す輝度値の差分が正であることを示すパラメータ)を、算出した差分が負の値であれば発光光量を単位量だけ増加させる旨のパラメータ(差分に対応したパラメータ,所定の目標値に対する画像信号が示す輝度値の差分が負であることを示すパラメータ)を、光量制御のための制御信号として変調回路306に入力する。
【0040】
変調回路306は、光量制御信号生成回路305によって入力された光量制御のための制御信号を、所定の搬送波によって変調する。このようにして変調された信号は、送信アンプ307によって増幅された後に、送信アンテナ33bを通じて送信される。
【0041】
以上のように構成された本実施形態のカプセル内視鏡システムを用いて被検者の消化管内を撮影する際における各部の動作は、以下の通りとなる。まず、電源スイッチ回路24を起動することによって各回路に電源が投入されたカプセル内視鏡1を、体外ユニット2を装着した被検者が嚥下して、胃の中に導入する。このとき、コントローラ215は、電源が投入された時点では、ドライバ214に対して、所定の初期値にて駆動電流を発光ダイオード211に供給する指示を行う。この指示に応じてドライバ214は、初期値の駆動電流を発光ダイオード211に供給することによって、この発光ダイオード211が発光する。このように発光ダイオード211から発光された照明光によって照明された体腔内をイメージセンサ213が撮像して、撮像によって得られた画像信号を送信ブロック216bに入力する。すると、画像信号は、変調回路216b1によって変調され、送信アンプ216b2によって増幅されて、送信アンテナ23bから送信される。
【0042】
カプセル内視鏡1が、体外ユニット2の何れかの受信アンテナ33aの受信エリア(即ち、胃の内部)に入ると、この画像信号は、その受信アンテナ33aによって受信されて、受信アンプ301によって増幅され、復調回路302によって復調され、信号処理回路303によってビデオ信号に変換され、情報圧縮回路304によって圧縮され、メモリ31に格納される。同時に、信号処理回路303によって、この画像信号から輝度信号のみが抽出されて、光量制御信号生成回路305に入力される。この光量制御信号生成回路305は、画像信号を構成する各フレームについてそのフレーム全体の輝度平均値又は予めフレーム中のある一部分を特定範囲として設定し、各フレームのその特定範囲部分の輝度平均値を算出して、上述した内容の光量制御のための制御信号を生成する。この光量制御のための制御信号は、変調回路306によって変調され、送信アンプ307によって増幅されて、送信アンテナ33bから送信される。この送信アンテナ33bからの信号を受信できるエリアは、各受信アンテナ33aの受信エリアを含んでいるので、何れかの受信アンテナ33aの受信エリア内に存在するカプセル内視鏡1の受信アンテナ23aによって光量制御のための制御信号が受信される。
【0043】
この光量制御のための制御信号は、受信アンプ216a1によって増幅され、復調回路216a2によって復調され、コントローラ215に入力される。コントローラ215は、この光量制御のための制御信号に基づいて、上述したようにして、ドライバ214に対して発光ダイオード211に供給している駆動電流を増加又は減少させる指示(又は、発光ダイオード211に対して単位時間中の駆動電流を供給する期間の長さを増加又は減少させる指示)を行う。
【0044】
以上のようなカプセル内視鏡1と体外ユニット2との間における無線通信を経由したフィードバック制御を繰り返すことにより、光量制御信号生成回路305において算出される平均輝度値は、目標値とほぼ一致するようになる。即ち、イメージセンサ213において適正露光が得られるように、発光ダイオード211からの照明光の発光量が自動調整される。
【0045】
その後、カプセル内視鏡1が撮影する対象が反射率の低い部位となったり、反射率の高い部位となったとしても、上述したフィードバック制御によって、イメージセンサ213は常に適正露光を得ることができる。
【0046】
以上のような撮像を継続することによって、メモリ31内には、撮像によって得られたビデオ信号が蓄積される。そして、カプセル内視鏡1が目的とする部位を通過した後、若しくは、カプセル内視鏡1が動作を停止した後に、メモリ31からビデオ信号を読み出して、このビデオ信号に基づく動画をモニタ上に表示させることによって、医師が、診断を行うことができる。
【0047】
以上に説明した本実施形態によると、被検者の体腔内(消化管内)に導入されるカプセル内視鏡1の内部には、適正露光が得るための発光ダイオードの発光量を自律的に計算するための光検知装置や光量記録装置や比較器等が不要となるので、カプセル内視鏡1全体のサイズ及び重量を小さくすることができる。
【実施形態2】
【0048】
本発明の第2の実施形態によるカプセル内視鏡システムは、上述した第1実施形態のものと比較して、受信モジュール30の光量制御信号生成回路305が光量制御のための制御信号を生成するプロセスが異なる。即ち、上述した第1実施形態では、光量制御信号生成回路305が信号処理回路303から受け取った平均輝度値と比較する参照値は幅を持たない一つの値であったが、下限値と上限値との間に所定の幅を持った値であっても良いとするのが、本第2実施形態である。
【0049】
以下、本第2実施形態による受信モジュール30内での制御の流れを、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0050】
図4に示すように、受信アンテナ33a,受信アンプ301及び復調回路302を通じて、新規の画像信号のフレームを受信すると(S1)、信号処理回路303は、上述した第1実施形態の場合と同様に当該フレームから輝度信号を抽出して、光量制御信号生成回路305に入力する(S2)。
【0051】
光量制御信号生成回路305は、信号処理回路303から入力した輝度信号に基づいて、映像信号の各フレーム全体における輝度の平均値,若しくは、予めフレーム中のある一部分を特定範囲として設定し、各フレームのその特定範囲部分における輝度の平均値を算出する。そして、光量制御信号生成回路305は、このようにして算出した輝度平均値を、先ず、目標値の下限値と比較する(S3)。そして、輝度平均値が下限値を下回っている場合には、発光光量を単位量だけ増加させる旨のパラメータ(若しくは、差分に対応したパラメータ,所定の目標値に対する画像信号が示す輝度値の差分が負であることを示すパラメータ)を生成し(S4)、生成したパラメータを、光量制御のための制御信号として変調回路306に入力する(S7)。
【0052】
一方、輝度平均値が下限値以上である場合には、光量制御信号生成回路305は、次に、輝度平均値を、目標値の上限値と比較する(S5)。そして、輝度平均値が上限値を上回っている場合には、発光光量を単位量だけ減少させる旨のパラメータ(若しくは、差分に対応したパラメータ,所定の目標値に対する画像信号が示す輝度値の差分が正であることを示すパラメータ)を生成し(S6)、生成したパラメータを、光量制御のための制御信号として変調回路306に入力する(S7)。
【0053】
他方、輝度平均値が上限値以下である場合には、照明光量が適正であるため、光量制御信号生成回路305は、何等、光量制御のための制御信号を生成しない。
【0054】
本第2実施形態におけるその他の構成及び作用は、上述した第1実施形態のものと同じであるので、その説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態であるカプセル内視鏡の縦断面図
【図2】体外ユニットの正面図(A)及び背面図(B)
【図3】カプセル内視鏡の内部回路を示すブロック図
【図4】体外ユニットの内部回路を示すブロック図
【図5】本発明の第2実施形態における対外ユニットの動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0056】
1 カプセル内視鏡
2 体外ユニット
23a 受信アンテナ
23b 送信アンテナ
30 受信モジュール
33a 受信アンテナ
33b 送信アンテナ
211 発光ダイオード
213 イメージセンサ
214 LEDドライバ
215 コントローラ
216 変復調回路
216a 受信ブロック
216b 送信ブロック
302 復調回路
303 信号処理回路
305 光量制御信号生成回路
306 変調回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の体腔内に導入されたカプセル内視鏡が当該体腔内を撮像することによって得た画像信号を被検者の体外に設置された体外ユニットへ無線送信するカプセル内視鏡システムであって、
前記カプセル内視鏡は、
発光素子と、
この発光素子に対して電力を供給する駆動回路と、
対物光学系と、
この対物光学系によって形成された像を撮像することによって画像信号を出力する撮像素子と、
この画像信号を無線送信する送信装置と、
制御信号を受信する受信装置と、
この受信装置によって受信された光量制御のための制御信号に応じて、前記駆動回路が前記発光素子に対して供給する単位時間当たりの電力量を制御する制御回路とを備え、
前記体外ユニットは、
前記画像信号を受信する受信装置と、
この受信装置によって受信された画像信号が示す輝度値と所定の目標値との差分に対応したパラメータを内容とする光量制御のための制御信号を生成する光量制御のための制御信号生成回路と、
この光量制御のための制御信号を無線送信する送信装置とを備える
ことを特徴とするカプセル内視鏡システム。
【請求項2】
前記光量制御のための制御信号は、前記画像信号が示す輝度値と前記所定の目標値との差分を打ち消すに必要な発光光量に相当するパラメータを内容とし、
前記制御回路は、前記駆動回路が前記発光素子に供給する単位時間当たりの電力量が、前記発光光量に対応した単位時間当たりの電力量となるように制御する
ことを特徴とする請求項1記載のカプセル内視鏡システム。
【請求項3】
前記光量制御のための制御信号は、前記所定の目標値に対する前記画像信号が示す輝度値の差分が正であるか負であるかを示すパラメータを内容とし、
前記制御回路は、前記差分が正であれば前記駆動回路が前記発光素子に供給する単位時間当たりの電力量を減少させる一方前記差分が負であれば前記駆動回路が前記発光素子に供給する単位時間当たりの電力量を増加させるように前記駆動回路を制御する
ことを特徴とする請求項1記載のカプセル内視鏡システム。
【請求項4】
前記所定の目標値は所定の下限値と上限値との間で一定の幅を持った値であり、前記光量制御のための制御信号は、前記画像信号が示す輝度値が前記下限値よりも低ければ両者の差分が負であることを示し、前記画像信号が示す輝度値が前記上限値よりも高ければ両者の差分が正であることを示し、
前記制御回路は、前記光量制御のための制御信号が前記差分が負であることを示している場合には前記駆動回路が前記発光素子に供給する電力を増加させる一方、前記光量制御のための制御信号が前記差分が正であることを示している場合には前記駆動回路が前記発光素子に供給する電力を減少させるように前記駆動回路を制御する
ことを特徴とする請求項1記載のカプセル内視鏡システム 。
【請求項5】
前記光量制御のための制御信号は、前記画像信号が示す輝度値と前記所定の目標値との差分を打ち消すに必要な発光光量に相当するパラメータを内容とし、
前記制御回路は、前記駆動回路が前記発光素子に対して単位時間中に電力を供給する供給期間を、前記発光光量に対応した供給期間となるように制御する
ことを特徴とする請求項1記載のカプセル内視鏡システム。
【請求項6】
前記光量制御のための制御信号は、前記所定の目標値に対する前記画像信号が示す輝度値の差分が正であるか負であるかを示すパラメータを内容とし、
前記制御回路は、前記差分が正であれば前記駆動回路が前記発光素子に対して単位時間中に電力を供給する供給期間を減少させる一方前記差分が負であれば前記駆動回路が前記発光素子に対して単位時間中に電力を供給する供給期間を増加させるように前記駆動回路を制御する
ことを特徴とする請求項1記載のカプセル内視鏡システム。
【請求項7】
前記所定の目標値は所定の下限値と上限値との間で一定の幅を持った値であり、前記光量制御のための制御信号は、前記画像信号が示す輝度値が前記下限値よりも低ければ両者の差分が負がであることを示し、前記画像信号が示す輝度値が前記上限値よりも高ければ両者の差分が正であることを示し、
前記制御回路は、前記光量制御のための制御信号が前記差分が負であることを示している場合には前記駆動回路が前記発光素子に供給する単位時間中に電力を供給する供給期間を増加させる、一方、前記上限値との差分が正であることを示している場合には前記駆動回路が前記発光素子に供給する単位時間中に電力を供給する供給期間を減少させるように前記駆動回路を制御する
ことを特徴とする請求項1記載のカプセル内視鏡システム 。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−305322(P2006−305322A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62552(P2006−62552)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】