説明

カプセル型野菜栽培装置

【課題】植物の栽培が可能な省スペース設計で、植物を昼夜を問わず育成管理できる栽培装置とする。
【解決手段】所定の直径を持った周壁12のある円筒形のリング11と、リング11の周壁12の両端二箇所にて外周を一周する外周型ラック13と、外周型ラック13の内側で且つ周壁12の両端並びに外周にリング11の回転を補助するための複数の補助ローラ14と、植物を栽培する略直方体の栽培床20が入るようにリング11の内周を円周に直交し区切り、リング11の中心に向う複数の仕切り板15と、リング11の複数の仕切り板15間に配置し固定される栽培床20と、リング11の中心軸状に配置される複数の照明部30と、を備え、リング11の中心軸上に、リング11の奥行きと略同等の長さの導管31を配置し、導管31にリング11の内周を照射できる複数の照明部30を放射状に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全な野菜を省スペースで定期的に収穫できるカプセル型野菜栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、土壌を使用せず水のみで植物を栽培する水耕栽培が盛んに行われている。この水耕栽培は、閉じられた環境であるビニールハウスや室内で植物の栽培を行うことを中心としている。ビニールハウスでの水耕栽培時には、季節や天候による日照時間の変動が植物の成長に影響を与えるため、生育期間にバラツキを生じる。一方、室内での水耕栽培時は、室内の照明時間が日照時間に代わるため生育期間のバラツキを少なくしている。ただ、どちらの水耕栽培であっても、水耕栽培の栽培床を一面に並べた場合には、広域なスペースが必要性となり、栽培場所の限定を伴うこととなってしまう。
【0003】
これに対して省スペースで植物の栽培を行える装置として、図9に示すような野菜の種を蒔く栽培多孔板906が円周壁に載置された回転胴901を支持ローラ903にて回転させる栽培装置900が開発されている(特許文献1参照)。この栽培装置900は、回転胴901の中心部分に円筒形の散水管911を配置し、その散水管911には多数の散水ノズル912が取り付けられ、ここから散水する構造となっている。この散水ノズル912は、回転胴901が回転すると共に複数の栽培多孔板906に散水している。これにより、複数の栽培多孔板906に種蒔きされた野菜は、十分に水分を吸収し発芽する。
【0004】
しかしながら、この装置は葉菜の発芽のみを目的としたものであって、発芽した葉菜類の育成には不適である。すなわち、発芽した葉菜を生育させる場合には光合成を必要とするところ、栽培多孔板900は回転胴901により回転しているため、葉菜に照射される日光の向きが時々刻々と変化してしまい、正常な葉菜の育成には適さない。これは、植物の葉菜が光に対して直進性を持ち合わせて成長するため、回転する複数の栽培多孔板906で発芽した植物は、光の照射方向が一定しないことが要因としてあげられる。そのため、正常な植物の葉菜を育てるためには、発芽した時点で別の場所へ植え替える必要性が生じ、手間がかかるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平04−14924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のこのような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、植物の栽培が可能な省スペース設計で、植物を昼夜を問わず育成管理できるカプセル型野菜栽培装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
以上の目的を達成するため、本発明の第1の側面に係るカプセル型野菜栽培装置によれば、人工の照明により植物の成長を促進させるカプセル型野菜栽培装置であって、所定の直径を持った周壁12のある円筒形のリング11と、前記リング11の前記周壁12の両端二箇所にて外周を一周する外周型ラック13と、前記外周型ラック13の内側で且つ前記周壁12の両端並びに外周に前記リング11の回転を補助するための複数の補助ローラ14と、植物を栽培する略直方体の栽培床20が入るように前記リング11の内周を円周に直交し区切り、前記リング11の中心に向う複数の仕切り板15と、前記リング11の複数の前記仕切り板15間に配置し固定される前記栽培床20と、前記リング11の中心軸状に配置される複数の照明部30と、を備え、前記リング11の中心軸上に、前記リング11の奥行きと略同等の長さの導管31を配置し、前記導管31に前記リング11の内周を照射できる前記複数の照明部30を放射状に備えることができる。
これにより、リングに載置し固定された栽培床は、照明の光を十分に且つ均一に照射されることができ、栽培床の全ての植物へ光合成を促進させることができる。さらに、栽培床に栽培される植物は、四六時中照明を照射されることにより、育成を早期化させることができる。
【0008】
また、本発明の第2の側面に係るカプセル型野菜栽培装置によれば、前記リング11の下端部に液肥等の水分を貯めておく貯水槽18を備えており、前記リング11が前記外周型ラック13へ連動されるピニオン(小歯車)29及び駆動モータ25の動力により一日に一回以上回転し、前記貯水槽18を通過した前記栽培床20に給水を可能とすることができる。
これにより、栽培床が貯水槽の液肥等の水分を十分に含ませることができ、植物への栄養素の供給を確実に実行することができる。
【0009】
さらに、本発明の第3の側面に係るカプセル型野菜栽培装置によれば、前記リング11、前記照明部30、前記貯水槽18、複数の歯車及び駆動モータ25を一体的に密閉する外壁19を有する栽培箱10を有することができる。
これにより、外部からの日照の照射による育成方向のランダム化や、害虫等の問題点を解消することができる。
【0010】
さらにまた、本発明の第4の側面に係るカプセル型野菜栽培装置によれば、前記栽培箱10の一部に開閉可能な扉35を設け、前記扉35を開いた時点で前記リング11の前記外周型ラック13に連動されたピニオン(小歯車)29を開放するクラッチレバー36を設け、前記リング11を回転自在とすることにより、前記栽培床20の出し入れ及び前記貯水槽18への吸水を可能とすることができる。
これにより、ユーザによりリングを自在に回転させることができるため、リングに載置された栽培床へ植物の植え付け及び収穫が可能で、さらに貯水槽への液肥等の水分を補給することが容易に実行することを可能とすることができる。
【0011】
さらにまた、本発明の第5の側面に係るカプセル型野菜栽培装置によれば、前記栽培箱10の下部に別の空間形成された空調箱40を装着し、前記空調箱40の内部に空気清浄機能付きエアコン41を設置し、さらに、前記照明部30を設けている前記導管31の外周にエアー突出孔33を複数放射状に設け、前記空気清浄機能付きエアコン41の吹き出し空気を断熱配管32を経由し前記エアー突出孔33より前記栽培箱10の空調を行うことができる。
これにより、外気との接触による温度不調整が解消でき、植物に見合った温度にコントロールすることが可能となる。ここで、栽培箱の外壁を断熱材で形成することにより、栽培箱内部の温度変動が少なくなり、空気清浄機能付きエアコンの作動状況を最小限に抑えることができる。
【0012】
さらにまた、本発明の第6の側面に係るカプセル型野菜栽培装置によれば、前記栽培箱10の空気の排出口34を前記空調箱40に設けており、さらに、前記空調箱40には、外気との通気口44を設け、前記通気口44にはフィルタ43を介して外気との通気を可能とし、前記通気口44を閉鎖させることにより、前記空調箱40と前記栽培箱10内の空気の循環のみとすることができる。
これにより、外気汚染等による植物への影響を最小限に抑えることができ、放射能汚染等からも通気口を閉鎖させることにより空気を内部循環型にすることで外気の影響を最小限に抑えることができる。
【0013】
さらにまた、本発明の第7の側面に係るカプセル型野菜栽培装置によれば、前記栽培箱10の前記照明部30をLED30Aとすることができる。
これにより、植物の光合成に適した赤色光及び青色光の比率調整が可能で、LEDは供給される電力を他の発光体より減少させることができ省エネ化することができる。さらに、LEDは発光による温度上昇が少ないため、植物の近くからの照射が可能で、さらに栽培箱内部の温度をコントロールすることが容易となる。
【0014】
さらにまた、本発明の第8の側面に係るカプセル型野菜栽培装置によれば、前記空調箱40の下部の四隅に車輪45を設けることができる。
これにより、カプセル型野菜栽培装置を自由な場所へ移動可能で、配置スペースを限定されることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係るカプセル型野菜栽培装置の斜視図である。
【図2】実施の形態に係るカプセル型野菜栽培装置の前壁面を取り外した状態の正面図である。
【図3】実施の形態に係るカプセル型野菜栽培装置の正面中央での側面断面図である。
【図4】導管の構成を示す拡大斜視図である。
【図5】リングと仕切り板の構成を示す一部の拡大斜視図である。
【図6】カプセル型野菜栽培装置に載置される栽培床の展開斜視図である。
【図7】その他の実施の形態に係るカプセル型野菜栽培装置の斜視図である。
【図8】その他の実施の形態に係るカプセル型野菜栽培装置の前壁面を取り外した状態の正面図である。
【図9】従来の栽培装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのカプセル型野菜栽培装置を例示するものであって、本発明はカプセル型野菜栽培装置を以下のものに特定しない。さらに、本明細書においては、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施の形態)
【0017】
ここで図1〜図6に基づいて、実施の形態に係るカプセル型野菜栽培装置100について説明する。まず図1は、実施の形態に係るカプセル型野菜栽培装置の斜視図をしている。このカプセル型野菜栽培装置100は、栽培箱10、空調箱40及び車輪45を有している。この栽培箱10の内部には、植物を栽培する装置を内蔵している。さらに栽培箱10には、断熱材を用いた外壁19にて覆われており、外壁19の一部に扉35を観音扉状の右扉35Aと左扉35Bを設けている。これにより扉35は、栽培箱10の内部で栽培される植物の植え付け及び収穫を容易にできる大きさに開放できるように設けられている。
【0018】
さらに、栽培箱10の下部には、栽培箱10の空調を行うための機械を配置させた空調箱40を固定している。さらにまた、栽培箱10と空調箱40は、空調箱40の底部の四箇所に移動用の車輪45を取り付けている。この車輪45は、二個が固定式車輪45Aで、残りの二個が回転式車輪45Bが取り付けられている。このように、栽培箱10、空調箱40及び車輪45の構成でカプセル型野菜栽培装置100を形成している。これにより、カプセル型野菜栽培装置100は、配置場所に限定されることなく、配置可能な場所へ自由に移動させることができる。
(栽培箱10)
【0019】
図2は、カプセル型野菜栽培装置100の前壁面を取り外した状態の正面図を示している。まず、この実施例での栽培箱10の外壁19は、ドーム状を断面とした形状で、厚みを数cmとした断熱材で成型されている。この実施の形態に係る栽培箱10は、水平の外寸幅を約200cmとしている。この栽培箱10の内部には、所定の直径を有した周壁12のある円筒形のリング11を配置している。このリング11の周壁12の両端二箇所にリング11を周回する外周型ラック13を取り付けてある。さらに、リング11の内周には、内周を12等分するよう、仕切り板15が固定されている。この仕切り板15は、所定の高さと長さを有した長方形の板をリング11の奥行き方向で内周の内壁に垂直になるよう配置している。さらにまた、仕切り板15と仕切り板15の中間位置で、周壁12の両外周型ラック13の内側の二箇所に、補助ローラ14を固定している。この実施例では、リング11の周壁12に手前と奥に合わせて24個の補助ローラが取り付けられている。これにより、リング11は、栽培箱10の内周に補助ローラ14が接する動作となり、回転可能としている。
【0020】
さらに、リング11の内周には、各々の仕切り板15の間に、栽培床20が設置されている。この栽培床20は、植物を栽培する培地を有しており、リング11の中心方向を向くように設置される。これにより、栽培床20で栽培されている植物は、リング11の中心方向へ成長するよう配置されている。
(照明部30)
【0021】
そのために、リング11の中心部分には、奥の外壁19に対し垂直に導管31が配置されている。その導管31は、周囲に複数の照明部30と複数のエアー突出孔33を設けている。この複数の照明部30は、リング11の内周を光が照射するように導管31の外周に対し垂直で放射状に配置されている。これにより、複数の照明部30の照射光は、リング11の内周に配置されている栽培床20の植物による光合成に最適な光を満遍なく照射させることができる。これは、植物の生態系として、光源に向かって伸長する元来全ての植物が持っている本能を利用することにより、栽培床20に栽培された植物の成長方向をリング11の中心方向へ成長させることができる。これにより、限られた空間を有効利用でき、さらには省スペース化を実現することができる。
【0022】
これら植物への光照射は、蛍光灯やLED等の照明が利用できるが、LEDの利用の方が、植物の光合成に対する光の波長を調整することができるため好ましい。この光合成に利用される光の波長は、赤色光(波長660nm近辺)や青色光(波長450nm付近)がもっともクロロフィル(葉緑素)を作り出すのに有効である。また、赤色光と青色光の照射比率が10:1又は5:1程度の照度が適切で、LEDを用いることにより赤色LEDと青色LEDとの配置配分を決めることにより植物にあった光合成を行うことができる。ただ、赤色LEDや青色LEDに限定される物ではなく、その他の色のLEDや白色LEDを選択することも可能である。また、LEDに限定せずLDの利用も可能である。
【0023】
また、低電圧の直流電源で発光させるLEDを利用することで電力配線は、配置にも苦慮することなくでき、LED自信の消費電力も数mAから数十mAと小さいため電力配線そのものの線径を小さくすることができる。さらに、LEDは、発光に際する発熱が小さいために、植物に近接させて配置させることができる。これにより、スペースの有効利用と安全性を確保することができる。
【0024】
さらに、植物は常に光の吸収をしているものではなく、間欠的に吸収を行っているため、発光のON/OFFを実行することにより植物の成長速度を2から3割早めることが可能である。これに対しLEDは、発光のON/OFFが瞬時に行うことができるため、間欠発光を実行することができる。この間欠発光を行うことで、LEDの消費電力も省エネ化することが可能である。
(エアー突出孔33)
【0025】
一方、複数のエアー突出孔33は、後述する空気清浄機能付きエアコン41の吹き出し空気を、リング11の内周側に向けて放射状に噴出する孔を設けている。これにより、栽培箱10内の温度環境は、植物に適した温度に調整することができる。
(複数の歯車)
【0026】
リング11の周壁12に設けた外周型ラック13は、リング11全体を一日一回以上の頻度で一回転させるために、駆動モータ25に連動した複数の歯車により回転運動が伝達される。その方法は、まず駆動モータ25の動力をモータ側歯車26により減速歯車27の大輪減速歯車27Aに伝達される。減速歯車27には、大輪減速歯車27Aと小輪減速歯車27Bが一体形成されている。次に、大輪減速歯車27Aの回転は、小輪減速歯車27Bに連結されたタイミングベルト28を経由し伝達歯車(図示せず)に伝達される。伝達歯車は、二箇所のピニオン(小歯車)29が一本の軸の両端に配置され、その軸上でピニオン(小歯車)29間に配置され一体形成されている。この二箇所のピニオン(小歯車)29が、外周型ラック13に連結され、駆動モータ25の動力が伝達される。これにより、ピニオン(小歯車)29に連動された外周型ラック13は、駆動モータ25の駆動により一日一回以上の頻度で一回転を実行することができる。
【0027】
ここで、外周型ラック13は、ピニオン(小歯車)29からの動力を確実に伝達されるために、ピニオン(小歯車)29と回転ローラ37に挟み込まれた状態に配置される。このピニオン(小歯車)29と回転ローラ37は、固定金具38で連結されている。さらに固定金具38には、ピニオン(小歯車)29の配置を調整可能な調整穴39を設けられている。この調整穴39は、外周型ラック13とピニオン(小歯車)29とを連結させたり、連結を解除する目的のために設けられている。この連結の解除は、リング11を回転自在にすることを目的としている。この外周型ラック13とピニオン(小歯車)29は、クラッチレバー36により連結と連結解除を切り替えることができる。ただ、このクラッチレバー36の動作は、扉35の開閉に連動させることもできる。これにより、栽培箱10の植え付けや収穫時にリング11を可動自在にすることで、栽培床20の出し入れを容易に実施することができる。
(貯水槽18)
【0028】
さらにリング11の下端部には、リング11の補助ローラ14を稼働させる台としての役目を含んだ貯水槽18を有している。この貯水槽18は、リング11に載置されている複数の栽培床20が回転により最下端に来た時点で、栽培床20が貯めてある液肥を含む水分に浸り吸収するように構成されている。貯水槽18は、船型の形状をしており船尾と船首に相当する部分を補助ローラ14が稼働できるように壁を形成している。これにより、リング11は、駆動モータ25による回転または手動による回転をスムーズに稼働することができる。
【0029】
さらにまた、貯水槽18は、船底に当たる箇所に液肥を含む水分を貯めておくことができるように成型されている。このような貯水槽18には、荷重に対する強度と水漏れ防止更に耐腐食性が必要となるため、FRP(繊維強化プラスチック)やステンレス等の構造とすることが好ましい。また、リング11は、貯水槽18の水分に触れるため腐食等に強いステンレス製の鋼材を使用することが好ましい。さらにまた、リング11を稼働させる外周型ラック13も、水分からの耐腐食性及びピニオン(小歯車)29との接触による耐久性を考慮したFRP等の使用が好ましい。
【0030】
この貯水槽18への吸水は、この実施の形態では栽培箱10の扉35を開けて注入する仕様としているが、これに限るものではなく、貯水槽18へフロート等の水位計を設け、給水配管を設けることにより自動給水させることもできる。これにより、貯水槽18は、常に満水状態を保つことができる。
(空調箱40)
【0031】
次に栽培箱10の下部に配置された空調箱40は、内部に空気清浄機能付きエアコン41と照明用のLED電源42が設置されている。さらに、空調箱40の側面には、通気口44とフィルタ43を設けており、通気口44は開閉を自由にできるような構造としている。さらにまた、栽培箱10と空調箱40には、空気清浄機能付きエアコン41の吹き出し空気を栽培箱10へ送風する断熱配管32と栽培箱10の空調を排出できる排出口34を有している。これにより、外気との空気交換は、通気口44に配置されているフィルタ43を経由し、空調箱40及び栽培箱10の中の空調調節が行われる。ここで用いるフィルタ43をHEPAフィルタ等とすることで外気の病原菌感染等から、植物への感染を軽減させることもできる。さらに、放射能汚染等の時に通気口を遮断することができるため、空調箱40及び栽培箱10の内部の空気のみの循環形式とすることで、植物への汚染を軽減させることもできる。
【0032】
この断熱配管32には、LED電源42の電力配線も栽培箱10内の導管31に設置した複数のLED30Aまで挿入されている。この配線に関しては、電力配線を細くすることができるため複数の配線を同時に導管31へ配線することを容易に行うことができる。
【0033】
空調箱40の下端部には、四隅に車輪45を設けている。この車輪45は、二個が固定式車輪45Aを利用し、さらに残りの二個が回転式車輪45Bを利用している。これにより、カプセル型野菜栽培装置100は、設置場所に拘ることなく自由に位置移動が可能としている。
【0034】
図3は、実施の形態に係るカプセル型野菜栽培装置の正面中央の縦側面断面図を示している。この図のカプセル型野菜栽培装置100は、空調箱40の右側壁より栽培箱10の右側壁である外壁19の中を断熱配管32が配置されている。この断熱配管32の中には、空気清浄機能付きエアコン41の吹き出し空気を送る空気配管とLED電源42からの低電圧の電力配線が共に配置されている。この断熱配管32は、栽培箱10の中央の高さまで配管され、栽培箱10の中の導管31へ空気配管と電力配線を挿入している。空気配管より供給される吹き出し空気は、導管31の複数のエアー突出孔33から栽培箱10内部へ放射状に放出される。また、電力配線は、導管31に配置されている複数の照明部30であるLED30Aへ各々供給される。これにより、栽培箱10内の栽培床20へは、LED30Aからの光の照射が可能となる。
【0035】
この栽培箱10内の上下には、リング11に一体化された外周型ラック13と補助ローラ14を図示しておりそのリング11には栽培床20が設置されている。さらに、図の下側のリング11と設置された栽培床20は、貯水槽18の中の貯水液18Aに入水した状態となっている。これにより、栽培床20の中の培地には、十分な水分を吸収させることができる。
【0036】
図4は、導管31の構成を示した拡大斜視図である。この導管31は、外周に複数の照明部30であるLED30Aと複数のエアー突出孔33が設けられている。この導管31の左端は、閉塞された形状となっている。また、導管31の右端は、断熱配管32が接続されその他の部分を閉塞している。これにより、右端の断熱配管32より送風された空気清浄機能付きエアコン41の吹き出し空気の全てが、エアー突出孔33より放射状に栽培箱10の中へ放出される状態となる。またこの導管31の内部には、複数のLED30Aへの電力配線が配置されている。
【0037】
図5は、リング11と仕切り板15の構成を示す拡大斜視図である。リング11に対し垂直に仕切り板15が固定されており、仕切り板15と仕切り板15の間のリング11には、浸水口17を有している。さらに、仕切り板15と仕切り板15の間の中央で、且つリング11の両端には、リング11を回転させる補助ローラ14が設置されている。
【0038】
仕切り板15は、略長方形で図のように左側上部に突出片15Aを有し、その突出片15Aに二箇所の床固定孔15Bを有している。さらに、仕切り板15の右側上部には、栽培床20を保持するための床保持板16を設置している。床保持板16は、略三角形状の床天壁16Aと直角となる略長方形の床側壁16Bで構成されている。これにより、仕切り板15の間に配置される栽培床20は、床側壁16Bで奥への配置を固定され、さらに床天壁16Aにてリング11の中央への移動を制限される。
【0039】
図6は、カプセル型野菜栽培装置に載置される栽培床20の展開斜視図である。栽培床20は、植物の培地としての栽培マット21と栽培マット21を保持するマット保持網22を有し、さらにこの二点を挿入する容器としてマット容器23で構成される。マット容器23は、底面に水が浸透できる程度のメッシュ状の容器底面23Aを有すると共に、栽培マット21とマット保持網22を共に固定するマット固定金具23Bを左右の両端上部に設けている。さらに、マット容器23は、栽培床20をリング11に配置した際に、仕切り板15の床固定孔15Bに連結される栽培床固定部23Cを左側面の上部の両サイドにに段違いで取り付けられている。この栽培床固定部23Cは、横スライドできるスライドバーを持つスライド錠とし、仕切り板15の床固定孔15Bに固定する時点でスライドバーが飛び出す構造となっている。これにより、リング11の仕切り板15間に配置された栽培床20は、床保持板16と床固定孔15Bに連結された栽培床固定部23Cにより確実に固定される。
【0040】
栽培マット21は、水分の吸収が可能で植物の栽培に適している高分子吸収体の利用が可能である。さらに栽培マット21は、土壌に分解可能な高分子吸収体を利用することが好ましい。マット保持網22に関しては、植物の幹が通る程度の大きめの網状とすることが望ましい。
【0041】
図7及び図8は、その他の実施の形態に係るカプセル型野菜栽培装置を示している。まず図7は、その他のカプセル型野菜栽培装置200の斜視図である。カプセル型野菜栽培装置200は、図1におけるカプセル型野菜栽培装置100の栽培箱10を、90度傾けた形状の栽培箱50としている。この栽培箱50の下端部で右端に栽培箱50の横幅の約半分の空調箱51と移動用の車輪45を固定する車輪固定部52を有している。これにより、空調箱51を小さくできるため、軽量化を図ることができる。
【0042】
また、図8は、その他のカプセル型野菜栽培装置の前壁面を取り外した状態の正面図である。ここで、カプセル型野菜栽培装置100との違いは、駆動モータ25及びその他の複数の歯車を栽培箱50の右上部に配置している。これにより、栽培箱50は、空間スペースの有効利用を図ることができる。さらに、栽培箱50は、リング11の荷重の分散を可能とすることができる補助壁53を有している。
【符号の説明】
【0043】
100、200…カプセル型野菜栽培装置
10…栽培箱
11…リング
12…周壁
13…外周型ラック
14…補助ローラ
15…仕切り板
15A…突出片
15B…床固定孔
16…床保持板
16A…床天壁
16B…床側壁
17…浸水口
18…貯水槽
18A…貯水液
19…外壁
20…栽培床
21…栽培マット
22…マット保持網
23…マット容器
23A…容器底面
23B…マット固定金具
23C…栽培床固定部
25…駆動モータ
26…モータ側歯車
27…減速歯車
27A…大輪減速歯車
27B…小輪減速歯車
28…タイミングベルト
29…ピニオン(小歯車)
30…照明部
30A…LED
31…導管
32…断熱配管
33…エアー突出孔
34…排出口
35…扉
35A…右扉
35B…左扉
36…クラッチレバー
37…回転ローラ
38…固定金具
39…調整穴
40…空調箱
41…空気清浄機能付きエアコン
42…LED電源
43…フィルタ
44…通気口
45…車輪
45A…固定式車輪
45B…回転式車輪
50…栽培箱
51…空調箱
52…車輪固定部
53…補助壁
900…栽培装置
901…回転胴
903…支持ローラ
906…栽培多孔板
911…散水管
912…散水ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工の照明により植物の成長を促進させるカプセル型野菜栽培装置であって、
所定の直径を持った周壁(12)のある円筒形のリング(11)と、
前記リング(11)の前記周壁(12)の両端二箇所にて外周を一周する外周型ラック(13)と、
前記外周型ラック(13)の内側で且つ前記周壁(12)の両端並びに外周に前記リング(11)の回転を補助するための複数の補助ローラ(14)と、
植物を栽培する略直方体の栽培床(20)が入るように前記リング(11)の内周を円周に直交し区切り、前記リング(11)の中心に向う複数の仕切り板(15)と、
前記リング(11)の複数の前記仕切り板(15)間に配置し固定される前記栽培床(20)と、
前記リング(11)の中心軸状に配置される複数の照明部(30)と、
を備え、
前記リング(11)の中心軸上に、前記リング(11)の奥行きと略同等の長さの導管(31)を配置し、
前記導管(31)に前記リング(11)の内周を照射できる前記複数の照明部(30)を放射状に備えていることを特徴とするカプセル型野菜栽培装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカプセル型野菜栽培装置であって、さらに、
前記リング(11)の下端部に液肥等の水分を貯めておく貯水槽(18)を備えており、
前記リング(11)が前記外周型ラック(13)へ連動されるピニオン(小歯車)(29)及び駆動モータ(25)の動力により一日に一回以上回転し、
前記貯水槽(18)を通過した前記栽培床(20)に給水を可能とすることを特徴とするカプセル型野菜栽培装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカプセル型野菜栽培装置であって、さらに、
前記リング(11)、前記照明部(30)、前記貯水槽(18)、複数の歯車及び駆動モータ(25)を一体的に密閉する外壁(19)を有する栽培箱(10)を有することを特徴とするカプセル型野菜栽培装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載のカプセル型野菜栽培装置であって、
前記栽培箱(10)の一部に開閉可能な扉(35)を設け、
前記扉(35)を開いた時点で前記リング(11)の前記外周型ラック(13)に連動されたピニオン(小歯車)(29)を開放するクラッチレバー(36)を設け、
前記リング(11)を回転自在とすることにより、前記栽培床(20)の出し入れ及び前記貯水槽(18)への吸水を可能とすることを特徴とするカプセル型野菜栽培装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載のカプセル型野菜栽培装置であって、
前記栽培箱(10)の下部に別の空間形成された空調箱(40)を装着し、
前記空調箱(40)の内部に空気清浄機能付きエアコン(41)を設置し、さらに、
前記照明部(30)を設けている前記導管(31)の外周にエアー突出孔(33)を複数放射状に設け、
前記空気清浄機能付きエアコン(41)の吹き出し空気を断熱配管(32)を経由し前記エアー突出孔(33)より前記栽培箱(10)の空調を行うことを特徴とするカプセル型野菜栽培装置。
【請求項6】
請求項5に記載のカプセル型野菜栽培装置であって、
前記栽培箱(10)の空気の排出口(34)を前記空調箱(40)に設けており、さらに、
前記空調箱(40)には、外気との通気口(44)を設け、
前記通気口(44)にはフィルタ(43)を介して外気との通気を可能とし、
前記通気口(44)を閉鎖させることにより、前記空調箱(40)と前記栽培箱(10)内の空気の循環のみとすることを特徴とするカプセル型野菜栽培装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一に記載のカプセル型野菜栽培装置であって、
前記栽培箱(10)の前記照明部(30)をLED(30A)とすることを特徴とするカプセル型野菜栽培装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一に記載のカプセル型野菜栽培装置であって、
前記空調箱(40)の下部の四隅に車輪(45)を設けることを特徴とするカプセル型野菜栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−51928(P2013−51928A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192758(P2011−192758)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【特許番号】特許第4880082号(P4880082)
【特許公報発行日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(311013085)
【Fターム(参考)】