説明

カメラハウジング

【課題】テレコンバータ、ワイドコンバータ等のコンバージョンレンズを、画質を低下させることなく良好に使用することができるカメラハウジングを提供する。
【解決手段】カメラハウジング10の窓ガラス22の内側に、レンズの画角に対応して開口部の大きさを変更可能なマスク部材38を配置する。撮影レンズ28のみ使用した通常使用形態から、撮影レンズ28にテレコンバータ34を装着したテレ使用形態に変更すると、マスク部材38の開口部を開口部39から開口部39Aに小さくする必要があるため、ネジをガイドとしてマスク板を45度方向に互いに近づく方向に移動させ、開口部39から開口部39Aに変更する。この後、ネジを前面板に締結し、ネジのヘッドによってマスク板を前面板に押圧し固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテレビカメラを収納するカメラハウジングに係り、特にテレコンバータ、ワイドコンバータ等のコンバージョンレンズが使用可能なカメラハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
屋外で使用されるテレビカメラは、特許文献1に開示されたカメラハウジングに収納されて保護されており、カメラハウジングの前面に設けられた窓ガラスを介して撮影を行う。また、このようなカメラハウジングは、通常、リモコン式の雲台装置に搭載されている。この雲台装置をオペレータが遠隔操作することによって、カメラハウジングがパン方向、チルト方向に移動され、撮影位置が変更される。
【0003】
一方、焦点距離の短い撮影レンズを備えたカメラにおいて、その撮影レンズを交換することなく、焦点距離をテレ側に拡大して撮影したり、ワイド側に拡大して撮影したりする際に、焦点距離をテレ側に拡大するテレコンバータ、又は焦点距離をワイド側に拡大するワイドコンバータを撮影レンズの前面側に装着して使用する一例が特許文献2等に開示されている。
【特許文献1】特開2005−128375号公報
【特許文献2】特開2004−295004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたカメラハウジングは、収納される撮影レンズがカメラハウジングと対をなしており、すなわち、テレ側を主として撮影するカメラハウジングには、テレ側のみ網羅する焦点距離を有する撮影レンズが収納され、同様に、ワイド側を主として撮影するカメラハウジングには、ワイド側のみ網羅する焦点距離を有する撮影レンズが収納されて使用される。これは、焦点距離の短い小型で廉価な撮影レンズを備えたカメラハウジングを提供するという理由からである。
【0005】
このようなカメラハウジングにおいて、どうしてもワイド側に焦点距離を拡大して撮影したい、また、テレ側に焦点距離を拡大して撮影したいという場合には、特許文献2に開示されたワイドコンバータ、テレコンバータをその撮影レンズの前面側に装着することが考えられる。
【0006】
しかしながら、従来のカメラハウジングは、ワイドコンバータやテレコンバータを使用可能な構造にはそもそも構成されていない。また、ワイドコンバータ、テレコンバータをカメラハウジングの撮影レンズに装着したとしても、コンバータに応じてレンズの撮影画角が異なり、特にテレコンバータを装着した場合には、撮影範囲外の有害な光線が撮影レンズに入り込み、これがゴーストの発生原因になって画質が低下するという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、テレコンバータ、ワイドコンバータ等のコンバージョンレンズを、画質を低下させることなく良好に使用することができるカメラハウジングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、カメラが収納されるとともに、該カメラの撮影レンズに対向した前端部に撮影光を撮影レンズに入射させる窓部が形成されたカメラハウジングにおいて、前記撮影レンズの前面側には、該撮影レンズの焦点距離を変更するコンバージョンレンズが設けられ、前記カメラハウジングの前記窓部には、前記コンバージョンレンズの撮影画角に対応させて不要な撮影光を遮光するマスク部材が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、カメラハウジングに収納された撮影レンズの前面側にテレコンバータ、又はワイドコンバータ等のコンバージョンレンズを装着した場合には、そのコンバージョンレンズの撮影画角に対応させて不要な撮影光を遮光するマスク部材をカメラハウジングの窓に設ける。すなわち、テレコンバータを撮影レンズに装着した場合には、不要な撮影光がマスク部材によって遮光されるので撮影レンズに入射せず、また、ワイドコンバータを撮影レンズに装着した場合には、必要な撮影光がマスク部材にケラレることなく撮影レンズに入射する。これにより、焦点距離の短い小型で廉価な撮影レンズを備えたカメラハウジングであっても、テレコンバータ、ワイドコンバータ等のコンバージョンレンズを、画質を低下させることなく良好に使用することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記マスク部材は、必要な撮影光を前記撮影レンズに入射させるための開口部の大きさが、前記コンバージョンレンズの撮影画角に対応させて変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
コンバージョンレンズの種類に応じたマスク部材を複数揃えておくのではなく、請求項2に記載の発明の如く、開口部の大きさが変更可能な一つのマスク部材をカメラハウジングの窓部に予め取り付けておき、撮影レンズに装着されるコンバージョンレンズの撮影画角に対応させて、マスク部材の開口部の大きさを変更することが好ましい。
【0012】
すなわち、撮影レンズにテレコンバータが装着されると、マスク部材の開口部の大きさを、そのテレコンバータの撮影画角に対応させて小さくし、不要な撮影光が撮影レンズに入射するのを防止する。また、撮影レンズにワイドコンバータが装着されると、マスク部材の開口部の大きさを、そのワイドコンバータの撮影画角に対応させて大きくし、必要な撮影光がマスク部材にケラレることを防止する。この観点から、カメラハウジングの窓の大きさは、ワイドコンバータの撮影画角よりも大きく形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るカメラハウジングによれば、カメラハウジングに収納された撮影レンズの前面側にテレコンバータ、又はワイドコンバータ等のコンバージョンレンズを装着した場合には、そのコンバージョンレンズの撮影画角に対応させて不要な撮影光を遮光するマスク部材をカメラハウジングの窓に設けたので、テレコンバータ、ワイドコンバータ等のコンバージョンレンズを、画質を低下させることなく良好に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下添付図面に従って、本発明に係るカメラハウジングの好ましい実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係るカメラハウジング10が雲台装置12に搭載された外観斜視図である。このカメラハウジング10は、長尺の角筒形状に形成され、その側面が、雲台装置12の本体14から側方に延設されたチルト軸(不図示)に片持ち支持されている。このチルト軸は、本体14に内蔵されたチルトモータ(不図示)によって回転駆動され、これによってカメラハウジング10がチルト方向に動作される。また、本体14は、不図示の据付台上に立設されたパン軸16に支持される。このパン軸16を中心軸として本体14が内蔵のパンモータによって回転駆動されることにより、カメラハウジング10がパン方向に動作される。
【0016】
雲台装置12は、専用回線又は公衆回線等の通信回線17を介して雲台コントローラ18に接続されている。この雲台コントローラ18をオペレータが遠隔操作することによって、前記チルトモータ、パンモータが駆動され、カメラハウジング10がパン・チルト動作することにより撮影位置が変更される。
【0017】
カメラハウジング10の前端部には、前面板20が取り付けられており、この前面板20の中央部は矩形状に開口され、この開口に透明の窓ガラス(窓部)22が嵌め込まれている。また、前面板20には、窓ガラス22の表面に付着した水滴等を除去するブレード24を備えたワイパ装置26が設けられている。このワイパ装置26のON/OFFも雲台コントローラ18によって遠隔操作される。
【0018】
図2〜図4は、カメラハウジング10の内部構造を模式的に示した断面図であり、図2は、撮影レンズ28を備えたカメラ30(この撮影レンズ28とカメラ30とによってテレビカメラを構成している)とバランス調整用の所定質量を有するバランサ32とが収納されたカメラハウジング10が示され、図3は、撮影レンズ28の前面側にテレコンバータ34が装着されたカメラハウジング10が示され、図4は、撮影レンズ28の前面側にワイドコンバータ36が装着されたカメラハウジング10がそれぞれ示されている。また、これらの図において、窓ガラス22の内側にはマスク部材38が設けられている。
【0019】
図2〜図4に示すように、カメラ30とバランサ32とは、カメラハウジング10の底部に沿って敷設されたテーブル40に載置されるとともに、テーブル40に形成されたスリット42に沿って摺動自在に載置されている。スリット42は、カメラ30の撮影光軸Pと平行に形成されている。したがって、カメラ30は、図2の如く撮影レンズ28を伴って、また、図3の如く撮影レンズ28とテレコンバータ34を伴って、更に、図4の如く撮影レンズ28とワイドコンバータ36を伴って撮影光軸P方向に前後移動される。また、バランサ32は、カメラ30と独立して撮影光軸P方向に前後移動される。そして、カメラ30は、スリット42に挿通されたボルト44によってテーブル40の所定の位置に固定され、バランサ32は、チルト軸の軸心Aを中心とする反時計回り方向の回転モーメントを、自身の質量による時計回り方向の回転モーメントによって相殺する位置に、スリット42に挿通されたボルト46によってテーブル40に固定される。
【0020】
すなわち、図2においては、撮影レンズ28とカメラ30とによる質量によってチルト軸の軸心Aを中心に反時計回り方向の回転モーメントが発生し、この回転モーメントを相殺する位置Bにバランサ32が固定される。同様に、図3においては、撮影レンズ28とカメラ30とテレコンバータ34とによる質量によってチルト軸の軸心Aを中心に反時計回り方向の回転モーメントが発生し、この回転モーメントを相殺する位置Cにバランサ32が固定される。また同様に、図4においては、撮影レンズ28とカメラ30とワイドコンバータ36とによる質量によってチルト軸の軸心Aを中心に反時計回り方向の回転モーメントが発生し、この回転モーメントを相殺する位置Dにバランサ32が固定される。このような位置にバランサ32を固定することによって、カメラハウジング10をチルト動作する際に、チルトモータにかかる負荷を最小限に抑えることができ、これによって、小容量のチルトモータを適用でき消費電力を節減できる。
【0021】
したがって、実施の形態のカメラハウジング10によれば、テレコンバータ34、ワイドコンバータ36を撮影レンズ28に装着しても、バランサ32によってチルト軸の軸心Aを中心とする質量バランスを取ることができるので、チルト動作を円滑に行うことができる。
【0022】
なお、バランサ32の固定位置は、回転モーメントによる質量バランスを確認しながら作業者が手作業にて実施するが、バランサ32の水平方向送り装置を設けて電動で実施するようにしてもよい。また、バランサ32の摺動機構はスリット42に限定されるものではなく、テーブル40に多数の孔を光軸P方向に開設し、これらの孔を利用してボルト等により所定の位置に固定するようにしてもよい。
【0023】
図5〜図7は、マスク部材38の開口部39、39A、39Bの大きさをそれぞれ変更したときの状態が示されている。すなわち、図5に示したマスク部材38の開口部39は、撮影レンズ28のみ使用する図2の通常使用形態に対応した大きさである。要するに開口部39は、撮影レンズ28の撮影画角に対応させて、撮影レンズ28に有害な光を入射させず、かつ、必要な撮影光がケラレない大きさに設定されている。また、図6に示したマスク部材38の開口部39Aは、撮影レンズ28にテレコンバータ34を装着して使用する図3のテレ使用形態に対応した大きさであり、テレコンバータ34の画角に対応させて、撮影レンズ28に有害な光を入射させず、かつ、必要な撮影光がケラレない大きさに設定されている。更に、図7に示したマスク部材38の開口部39Bは、撮影レンズ28にワイドコンバータ36を装着して使用する図4のワイド使用形態に対応した大きさであり、ワイドコンバータ36の画角に対応させて、撮影レンズ28に有害な光を入射させず、必要な撮影光がケラレない大きさに設定されている。
【0024】
これにより、実施の形態のカメラハウジング10によれば、マスク部材38を設けることによってテレコンバータ34、ワイドコンバータ36等のコンバージョンレンズを、画質を低下させることなく良好に使用することができる。
【0025】
次に、マスク部材38の構造について説明する。
【0026】
このマスク部材38は、L字形状の一対のマスク板50、52から構成されている。マスク板50、52は上下に対向して組み合わされ、これらのマスク板50、52が図5〜図7において右斜め下方向、及び左斜め上方向に45度の角度をもって互いに近づく方向、又は遠ざかる方向に移動されることにより、開口部39、39A、39Bの大きさが変更される。
【0027】
上記マスク板50、52の移動をガイドするため、マスク板50の三隅には前記45度の角度をもって長孔50a、50b、50cが形成され、同様にマスク板52の三角にも前記45度の角度をもって長孔52a、52b、52cが形成されている。そして、長孔50aと長孔52aとが重ねられ、長孔50cと長孔52cとが重ねられ、これらの重ねられた長孔にネジ54a、54cが挿入されるとともに、長孔50bにネジ54bが挿入され、長孔52bにネジ54dが挿入されている。これらのネジ54a〜54dは、図8に示すように、カメラハウジング10の前面板20の裏面側に窓ガラス22の四隅を囲むように植設されている。
【0028】
したがって、図2の撮影レンズ28のみ使用した通常使用形態から、撮影レンズ28にテレコンバータ34を装着した図3のテレ使用形態に変更すると、マスク部材38の開口部を図5の開口部39から図6の開口部39Aに小さくする必要があるため、ネジ54a〜54dをガイドとしてマスク板50、52を45度方向に互いに近づく方向に移動させ、開口部39を開口部39Aに変更する。この後、ネジ54a〜54dを前面板20に締結し、ネジ54a〜54dのヘッドによってマスク板50、52を前面板20に押圧し固定する。これにより、カメラハウジング10のテレ使用形態時に、マスク板50、52がずれて開口部39Aの大きさが変わることはない。
【0029】
また、図2の撮影レンズ28のみ使用した通常使用形態から、撮影レンズ28にワイドコンバータ36を装着した図4のワイド使用形態に変更すると、マスク部材38の開口部を図5の開口部39から図7の開口部39Bに大きくする必要があるため、ネジ54a〜54dをガイドとしてマスク板50、52を45度方向に互いに離れる方向に移動させ、開口部39を開口部39Bに変更する。この後、ネジ54a〜54dを前面板20に締結し、ネジ54a〜54dのヘッドによってマスク板50、52を前面板20に押圧し固定する。これにより、カメラハウジング10のワイド使用形態時に、マスク板50、52がずれて開口部39Bの大きさが変わることはない。したがって、上記構成のマスク部材38によれば、開口部の大きさを開口部39、39A、39Bに容易に変更することができる。
【0030】
なお、カメラハウジング10の窓ガラス22の大きさは、マスク部材38の開口部39Bをカバーできるように、開口部39Bよりも大きめに形成されている。また、図2ではマスク部材38と撮影レンズ28とを離間して示し、図3ではテレコンバータ34とマスク部材38とを離間して示し、図4ではワイドコンバータ36とマスク部材38とを離間して示したが、これらを離間させず例えば図8に示したように接近、又は接触させて設けることが、有害光の入射を防止する観点から好ましい。更に、実施の形態ではテレコンバータ34、ワイドコンバータ36を撮影レンズ28に装着する形態を説明したが、画面のアスペクト比を例えば、16:9から4:3に切り替えたときに変化する画像サイズを本来のサイズに変換するためのレシオコンバータ、また、ワイド端のみで使用でき、ワイド端をより広角にするワイドアタッチメント、同じくワイド端のみで使用でき、ワイド端をより広角にするとともに魚眼効果を与えるフィッシュアイアタッチメントを撮影レンズ28の前面側に装着した際も、画角を調整するためのマスク部材38を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態に係るカメラハウジングが雲台装置に搭載された外観斜視図
【図2】図1に示したカメラハウジングの内部構造を示した模式図
【図3】撮影レンズの前面側にテレコンバータが装着されたカメラハウジングの内部構造図
【図4】撮影レンズの前面側にワイドコンバータが装着されたカメラハウジングの内部構造図
【図5】撮影レンズのみに対応したマスク部材の開口部の大きさを示した説明図
【図6】撮影レンズにテレコンバータを装着した際のマスク部材の開口部の大きさを示した説明図
【図7】撮影レンズにワイドコンバータを装着した際のマスク部材の開口部の大きさを示した説明図
【図8】カメラハウジングを含むマスク部材の縦断面図
【符号の説明】
【0032】
10…カメラハウジング、12…雲台装置、14…本体、16…パン軸、18…雲台コントローラ、22…窓ガラス、28…撮影レンズ、30…カメラ、32…バランサ、34…テレコンバータ、36…ワイドコンバータ、38…マスク部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラが収納されるとともに、該カメラの撮影レンズに対向した前端部に撮影光を撮影レンズに入射させる窓部が形成されたカメラハウジングにおいて、
前記撮影レンズの前面側には、該撮影レンズの焦点距離を変更するコンバージョンレンズが設けられ、
前記カメラハウジングの前記窓部には、前記コンバージョンレンズの撮影画角に対応させて不要な撮影光を遮光するマスク部材が設けられていることを特徴とするカメラハウジング。
【請求項2】
前記マスク部材は、必要な撮影光を前記撮影レンズに入射させるための開口部の大きさが、前記コンバージョンレンズの撮影画角に対応させて変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラハウジング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−36973(P2009−36973A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200871(P2007−200871)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】