説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】カメラ用羽根駆動装置で、羽根部材が衝撃力等で勝手に移動するのを防止する。
【解決手段】開口部10aを有する基板10、駆動ピン51cを有し基板上の第1回転中心C1回りに回動するロータ51を含む駆動源50、駆動ピンが挿入される長孔40bを有し基板上の第2回転中心C2回りに回動して開口部の閉鎖位置と開放位置の間を移動する羽根部材40を備え、駆動ピン51cは、第1回転中心C1と第2回転中心C2とを結ぶ領域を横切って往復動するように形成され、長孔40bは、羽根部材が閉鎖位置又は開放位置に位置するとき、その中心線L1に垂直でかつ駆動ピンを通る法線L2と第1回転中心及び第2回転中心を通る直線L3との交点Pが、第1回転中心C1上又は第2回転中心C2からみて第1回転中心C1の外側に位置するように形成される。これによれば、羽根部材が閉鎖位置又は開放位置にあるとき、衝撃力等で勝手に移動するのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ等の開口部に配置されたバリア羽根、シャッタ羽根、あるいは絞り羽根等の羽根部材を駆動して位置決めするカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカメラ用羽根駆動装置としては、開口部を有する基板、基板に対して回動自在に支持され開口部を開閉する少なくとも一枚のシャッタ羽根、シャッタ羽根を閉鎖位置と開放位置にそれぞれ位置決めするべく地板に設けられたストッパ、シャッタ羽根に形成された長孔に挿入される駆動ピンを有するロータを含む電磁駆動源、基板に揺動自在に支持されシャッタ羽根と逆向きに回転するように地板に支持されると共に駆動ピンに連結されたバランス板等を備え、カメラに衝撃が加わったときには、バランス板の存在によって、シャッタ羽根が暴走するのを抑制するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このカメラ用羽根駆動装置においては、本来の開閉動作とは関係のないバランス板を設けているため、部品点数が増え、又、バランス板が慣性質量を有するものであるが故に重量の増加を招き、装置の大型化、高コスト化、重量増加等を招く。
【0003】
また、他のカメラ用羽根駆動装置としては、開口部を有する基板、基板に対して回動自在に支持され開口部を開閉する一対のバリア羽根、一対のバリア羽根を開放位置に位置決めするべく地板に設けられたストッパ、一対のバリア羽根を連動させて開閉させるリンク部材、リンク部材を駆動する駆動ピンを有するロータを含む電磁駆動源等を備え、ストッパを磁石及び強磁性体の一方により形成し、一対のバリア羽根の少なくともストッパと当接する領域を磁石及び強磁性体の他方により形成して吸着部とし、落下等による衝撃力を受けても、バリア羽根が勝手に移動するのを防止するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、このカメラ用羽根駆動装置においては、バリア羽根を保持する手段として磁気的吸引力を使用しているため、衝撃力が大きい場合はバリア羽根が勝手に移動する虞があり、大きな衝撃力に耐えるようにするには磁石を大きくする必要があり、磁石を大きくすると、磁石の磁気的吸引力に逆らってバリア羽根を駆動する際の駆動力を大きくしなければならず、駆動源の大型化を招く。
【0004】
【特許文献1】特開2007−033602号公報
【特許文献2】特開2006−284641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡略化、装置の小型化、軽量化、低コスト化等を図りつつ、落下等による衝撃力が加わっても、羽根部材を開口部の閉鎖位置又は開放位置から勝手に移動するのを防止することができるカメラ用羽根駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカメラ用羽根駆動装置は、開口部を有する基板と、駆動ピンを有すると共に基板上の第1回転中心回りに回動するロータを含む駆動源と、駆動ピンが挿入される長孔を有すると共に基板上の第2回転中心回りに回動し開口部を閉鎖する閉鎖位置と開口部を開放する開放位置との間を移動する羽根部材とを備えたカメラ用羽根駆動装置であって、上記駆動ピンは、第1回転中心と第2回転中心とを結ぶ領域を横切って往復動するように形成され、上記長孔は、羽根部材が閉鎖位置又は開放位置に位置するとき、その中心線に垂直でかつ駆動ピンを通る法線と第1回転中心及び第2回転中心を通る直線との交点が、第1回転中心上又は第2回転中心からみて第1回転中心の外側に位置するように形成されている、ことを特徴としている。
この構成によれば、羽根部材が開口部を閉鎖する閉鎖位置又は開口部を開放する開放位置にあるとき、外部からの衝撃力等により、羽根部材が逆向きに移動しようとしても、羽根部材の長孔(の法線)と駆動ピンの移動方向(回転方向)のなす圧力角が大きく、羽根部材(の長孔)が駆動ピンを押す力はロータを回転させることができず、羽根部材を所定の停止位置(閉鎖位置又は開放位置)に保持することができる。したがって、この装置がデジタルカメラ等に搭載された状態で落下等による衝撃力を受けても、羽根部材は勝手に移動することなく所定位置に保持されて所期の状態を確保することができる。
また、羽根部材の長孔及びその回転中心(第2回転中心)、ロータの回転中心(第1回転中心)、駆動ピンの作動領域を規定するだけであるため、構造を簡略化でき、装置を小型化、低コスト化、従来に比べて軽量化することができる。
【0007】
上記構成において、基板は、交点が第1回転中心の外側に位置するとき、駆動ピンを当接させるストッパを有する、構成を採用することができる。
この構成によれば、羽根部材が閉鎖位置又は開放位置にあるとき、外部から衝撃力が加わって羽根部材が逆向きに移動しようとしても、駆動ピンがストッパに当接するため、羽根部材の移動を確実に防止することができる。
【0008】
上記構成において、基板は、羽根部材が閉鎖位置又は開放位置からさらに過移動するのを規制するべく羽根部材を当接させる補助ストッパを有する、構成を採用することができる。
この構成によれば、羽根部材が閉鎖位置又は開放位置にあるとき、外部から加わる力により、羽根部材が閉鎖位置又は開放位置からさらに過移動する向きに移動させられるとき、羽根部材が補助ストッパに当接してその過移動が規制されるため、羽根部材の破損、駆動ピン(及びロータ)の破損等を防止することができる。
【0009】
上記構成において、駆動ピンの作動範囲は、第1回転中心及び第2回転中心を通る直線により略二等分されるように形成されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、駆動ピンの作動範囲を広く設定しつつ、羽根部材を閉鎖位置又は開放位置に確実に移動させることができる。
【0010】
上記構成において、羽根部材の長孔は、その中心線が第2回転中心(羽根部材の回転中心)を通るように形成されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、ロータの回転中心(第1回転中心)及び羽根部材の回転中心(第2回転中心)を通る直線に対して、駆動ピンの作動範囲を線対称的に設定する(二等分する)配置構成を容易に確保することができる。
【発明の効果】
【0011】
上記構成をなすカメラ用羽根駆動装置によれば、構造の簡略化、低コスト化、装置の小型化、軽量化等を達成しつつ、この装置がデジタルカメラ等に搭載された状態で落下等による衝撃力を受けても、羽根部材を開口部の閉鎖位置又は開放位置に確実に保持することができ、誤作動を生じない高精度な開閉動作を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1ないし図8は、本発明に係るカメラ用羽根駆動装置の一実施形態を示すものであり、図1は装置の分解斜視図、図2は装置の平面図、図3は装置の断面図、図4は駆動ピンの作動範囲を示す平面図、図5ないし図8は装置に含まれる羽根部材(長孔)及びロータ(駆動ピン)の関係を示す平面図である。尚、図5ないし図8においては、便宜上、カバーが省略されている。
【0013】
この装置は、図1及び図2に示すように、略矩形の開口部10aを基板としての地板10、地板10に連結される補助地板20、地板10に連結されるカバー30、地板10により回動自在に支持される羽根部材としてのバリア羽根40、バリア羽根40を開閉駆動する駆動ピン51cを有するロータ51,ヨーク52,ボビン53,及び励磁用のコイル54を含む駆動源50等を備えている。
【0014】
地板10は、図1ないし図3に示すように、輪郭が略矩形をなすように樹脂材料により形成されて、略矩形の開口部10a、バリア羽根40を摺動させる平坦面10b、ロータ51の回転軸51aを回動自在に支持する円形の軸受孔10c、バリア羽根40を揺動自在に支持する円柱状の支軸10d、扇状の貫通孔の両端縁により画定されて駆動ピン51cを当接させる閉じ側のストッパ10e及び開き側のストッパ10f、バリア羽根40を当接させる円柱状の補助ストッパ10g,10h、駆動源50を収容する収容凹部10i等を備えている。
【0015】
軸受孔10cは、図1及び図2に示すように、ロータ51の回転軸51aを受け入れて、ロータ51の回転中心としての第1回転中心C1を画定している。
支軸10dは、図1及び図2に示すように、バリア羽根40の円孔40aに挿入されて、バリア羽根40の回転中心としての第2回転中心C2を画定している。
閉じ側のストッパ10eは、図6に示すように、駆動ピン51cを当接させて停止させることで、バリア羽根40を開口部10aの閉鎖位置に位置決めするように形成されている。
開き側のストッパ10fは、図8に示すように、駆動ピン51cを当接させて停止させることで、バリア羽根40を開口部10aの開放位置に位置決めするように形成されている。
補助ストッパ10gは、図6に示すように、バリア羽根40が閉鎖位置にある状態からさらに(開口部10aから離れる向きに)過移動させられる外力を受けるとき、バリア羽根40を当接させてその移動を規制するように形成されている。
補助ストッパ10hは、図8に示すように、バリア羽根40が開放位置にある状態からさらに(開口部10aから離れる向きに)過移動させられる外力を受けるとき、バリア羽根40を当接させてその移動を規制するように形成されている。
収容凹部10iは、図3に示すように、駆動源50のヨーク52を補助地板20と協働して位置決めしつつ保持するように形成されている。
【0016】
補助地板20は、図1及び図3に示すように、ロータ51の回転軸51aを回動自在に支持する円形の軸受孔20a、駆動源50のボビン53及びコイル54を通す矩形孔20b等を備えている。そして、補助地板20は、ネジ(不図示)等を用いて地板10に連結されることで、地板10と協働して、ロータ51を回動自在に支持し、ヨーク52を所定位置に位置決め固定するようになっている。
カバー30は、図1ないし図3に示すように、地板10の開口部10aと同一形状に形成された開口部30a、支軸10dを嵌合させる嵌合孔30b、補助ストッパ10g,10hをそれぞれ嵌合させる嵌合孔30c,30d、駆動ピン51cの移動を許容する円弧状孔30e等を備えている。そして、カバー30は、ネジ(不図示)等を用いて地板10に連結されることで、バリア羽根40を覆うようになっている。
【0017】
駆動源50は、図1ないし図3に示すように、ロータ51、2つのヨーク52、それぞれのヨーク52に嵌合されたボビン53、ボビン53に巻回された励磁用のコイル54等を備えている。
ロータ51は、第1回転中心C1と同軸上に中心線をもつ回転軸51a、外周面を周方向に分割するようにN極及びS極に着磁された円柱状の着磁部51b、回転軸51aから径方向に偏倚した位置に一体的に形成された円柱状の駆動ピン51cを備えている。ここで、ロータ51は、回転軸51a、着磁部51b、及び駆動ピン51cを画定するように一つの材料により形成され、その後、全体が着磁されてもよい。
ヨーク52は、図2に示すように、それぞれ略U字状に屈曲して形成され、その両端部においてロータ51(着磁部51b)の外周面に対向する磁極部52a,52bを画定している。そして、コイル54への通電方向を切り替えることにより、ロータ51が、一方向及び他方向に回転するようになっている。
【0018】
ここで、駆動ピン51cの作動範囲は、図2及び図4に示すように、ロータ51の第1回転中心C1とバリア羽根40の第2回転中心C2とを結ぶ(直線L3)領域を横切って往復動するように形成されている。
具体的には、駆動ピン51cの作動範囲(作動角θ)は、図4に示すように、直線L3から時計回りに所定角度θ/2回転すると閉じ側のストッパ10eに当接して停止し、一方、直線L3から反時計回りに所定角度θ/2回転すると開き側のストッパ10fに当接して停止するように、すなわち、第1回転中心C1及び第2回転中心C2を通る直線L3により、略二等分されるように形成されている。
これによれば、駆動ピン51cの作動範囲(作動角θ)を広く設定することができ、バリア羽根40を、開口部10aを完全に閉鎖する閉鎖位置と開口部10aを完全に開放する開放位置に移動させることができる。
【0019】
バリア羽根40は、図1及び図2に示すように、支軸10dが嵌合される円孔40a、駆動ピン51cが挿入される長孔40b等を備えている。そして、バリア羽根40は、円孔40aに支軸10dが嵌合されると共に長孔40bに駆動ピン51cが挿入され、ロータ51(の駆動ピン51c)が所定の作動範囲を往復動することにより、地板10の平坦面10bに沿って往復動するように形成されている。すなわち、バリア羽根40は、基板10上の第2回転中心C2回りに回動し、開口部10aを閉鎖する閉鎖位置と開口部10aを開放する開放位置との間を移動するようになっている。
長孔40bは、その中心線L1が第2回転中心C2(円孔40aの中心)を通るように形成されている。これによれば、ロータ51の回転中心(第1回転中心C1)及びバリア羽根40の回転中心(第2回転中心C2)を通る直線L3に対して、前述のように、駆動ピン51cの作動範囲(作動角θ)を線対称的に設定する(二等分する)配置構成を、容易に確保することができる。
【0020】
ここで、バリア羽根40の長孔40b、バリア羽根40の回転中心(第2回転中心C2)、ロータ51の駆動ピン51c、ロータ51の回転中心(第1回転中心C1)の相互関係は、図5ないし図8に示すように、バリア羽根40の長孔40bの中心線L1、その中心線L1に垂直でかつ駆動ピン51cを通る法線L2、ロータ51の第1回転中心C1及びバリア羽根40の第2回転中心C2を通る直線L3を用いて、以下のように規定されている。
【0021】
すなわち、図5に示すように、駆動ピン51cがストッパ10eに当接しないで作動範囲の途中の位置にあり、バリア羽根40が開口部10aを閉鎖する閉鎖位置に位置するとき、長孔40bは、法線L2と直線L3との交点Pが第1回転中心C1上に位置するように形成されている。
この状態においては、長孔40bの法線L2と駆動ピン51cの移動方向(駆動ピン51cを通る円周の接線方向)とがなす圧力角が最も大きく(90度)なり、衝撃力等の外力Fにより、バリア羽根40が移動しようとしても、圧力角が大きい故に、駆動ピン51cが移動不可能であり、バリア羽根40は移動することができず、閉鎖位置にそのまま保持されることになる。
尚、この状態においては、駆動ピン51cからバリア羽根40に対しては駆動力が伝達されるため、駆動ピン51cが移動することで、バリア羽根40も移動する。
【0022】
また、図6に示すように、駆動ピン51cがストッパ10eに当接して作動範囲の一方の移動端位置にあり、バリア羽根40が開口部10aを閉鎖する閉鎖位置に位置するとき、長孔40bは、法線L2と直線L3との交点Pが第2回転中心C2からみて第1回転中心C1の外側に位置する、すなわち、第1回転中心C1と第2回転中心C2との間から逸脱して第1回転中心C1に対して第2回転中心C2の反対側に位置するように形成されている。
この状態においては、長孔40bの法線L2と駆動ピン51cの移動方向(駆動ピン51cを通る円周の接線方向)とがなす圧力角は図5に示す状態よりも小さく、衝撃力等の外力Fにより、バリア羽根40が開き側に移動しようとして、長孔40bが駆動ピン51cを閉じ側に移動させるカム作用を及ぼすものの、駆動ピン51cは既に閉じ側のストッパ10eに当接して移動不可能であるため、バリア羽根40は移動することができず、閉鎖位置にそのまま保持されることになる。
【0023】
また、図7に示すように、駆動ピン51cがストッパ10eに当接しないで作動範囲の途中の位置にあり、バリア羽根40が開口部10aを開放する開放位置に位置するとき、長孔40bは、法線L2と直線L3との交点Pが第1回転中心C1上に位置するように形成されている。
また、この状態においては、長孔40bの法線L2と駆動ピン51cの移動方向(駆動ピン51cを通る円周の接線方向)とがなす圧力角が最も大きく(90度)なり、衝撃力等の外力Fにより、バリア羽根40が移動しようとしても、圧力角が大きい故に、駆動ピン51cが移動不可能であり、バリア羽根40は移動することができず、開放位置にそのまま保持されることになる。
尚、この状態においては、駆動ピン51cからバリア羽根40に対しては駆動力が伝達されるため、駆動ピン51cが移動することで、バリア羽根40も移動する。
【0024】
さらに、図8に示すように、駆動ピン51cがストッパ10fに当接して作動範囲の他方の移動端位置にあり、バリア羽根40が開口部10aを開放する開放位置に位置するとき、長孔40bは、法線L2と直線L3との交点Pが第2回転中心C2からみて第1回転中心C1の外側に位置する、すなわち、第1回転中心C1と第2回転中心C2との間から逸脱して第1回転中心C1に対して第2回転中心C2の反対側に位置するように形成されている。
この状態においては、長孔40bの法線L2と駆動ピン51cの移動方向(駆動ピン51cを通る円周の接線方向)とがなす圧力角は図7に示す状態よりも小さく、衝撃力等の外力Fにより、バリア羽根40が閉じ側に移動しようとして、長孔40bが駆動ピン51cを開き側に移動させるカム作用を及ぼすものの、駆動ピン51cは既に開き側のストッパ10fに当接して移動不可能であるため、バリア羽根40は移動することができず、開放位置にそのまま保持されることになる。
【0025】
次に、この装置がデジタルカメラに搭載された場合の動作について、図6及び図8を参照しつつ説明する。
先ず、デジタルカメラが撮影されない収納状態では、図6に示すように、バリア羽根40は開口部10aを閉鎖する閉鎖位置に位置付けられおり、内部のレンズ光学系を保護した状態にある。尚、駆動源50は、非通電の状態で磁気的吸引力によるディテントトルクを発生して、駆動ピン51cが移動しないように規制し、バリア羽根50をこの閉鎖位置に保持している。
【0026】
この閉鎖状態において、デジタルカメラの落下等により衝撃力Fを受けると、バリア羽根50が開き側に移動しようとするが、その長孔40bのカム作用は駆動ピン51cを閉じ側のストッパ10eに向けて押し付けることになり、バリア羽根40の移動が規制されて、バリア羽根40はそのまま閉鎖位置に保持される。
また、この閉鎖状態において、外部から加わる力により、バリア羽根40がこの閉鎖位置からさらに過移動する向きに(開口部10aからさらに離れる向きに)移動させられるとき、バリア羽根40は、補助ストッパ10gに当接してその過移動が規制されるため、バリア羽根40の破損、駆動ピン51c(及びロータ51)の破損等を防止することができる。
【0027】
この閉鎖状態から、操作者が撮影待機の状態にするためのスイッチを入れると、駆動源50が起動して駆動ピン51cが所定角度(作動角θ)だけ回転し、バリア羽根40は、図8に示すように、開口部10aを開放した開放位置に移動する。
そして、駆動源50が非通電とされると、磁気的吸引力によるディテントトルクを発生して、駆動ピン51cが移動しないように規制し、バリア羽根50をこの開放位置に保持する。
【0028】
この開放状態において、デジタルカメラの落下等により衝撃力Fを受けると、バリア羽根50が閉じ側に移動しようとするが、その長孔40bのカム作用は駆動ピン51cを開き側のストッパ10fに向けて押し付けることになり、バリア羽根40の移動が規制されて、バリア羽根40はそのまま開放位置に保持される。
また、この開放状態において、外部から加わる力により、バリア羽根40がこの開放位置からさらに過移動する向きに(開口部10aからさらに離れる向きに)移動させられるとき、バリア羽根40は、補助ストッパ10hに当接してその過移動が規制されるため、バリア羽根40の破損、駆動ピン51c(及びロータ51)の破損等を防止することができる。
【0029】
以上述べたように、この装置においては、駆動ピン51cが第1回転中心C1と第2回転中心C2とを結ぶ領域を横切って往復動するように形成され、バリア羽根40の長孔40bが、バリア羽根40が閉鎖位置又は開放位置に位置するとき、その中心線L1に垂直でかつ駆動ピン51cを通る法線L2と第1回転中心C1及び第2回転中心C2を通る直線L3との交点Pが、第1回転中心C1上又は第2回転中心C2からみて第1回転中心C1の外側に位置するように形成されているため、バリア羽根40が開口部10aを閉鎖する閉鎖位置又は開口部10aを開放する開放位置にある状態で外部から衝撃力等を受けて、バリア羽根40が逆向きに移動しようとしても、バリア羽根40の長孔40b(の法線L2)と駆動ピン51cの移動方向(回転方向)のなす圧力角が大きく又長孔40bが駆動ピン51cをストッパ10e,10fに押し付けるカム作用を及ぼすため、バリア羽根40(の長孔40b)が駆動ピン51cを押す力はロータ51を回転させることができず、バリア羽根40を所定の停止位置(閉鎖位置又は開放位置)において保持することができる。
【0030】
したがって、この装置がデジタルカメラ等に搭載された状態で落下等による衝撃力を受けても、バリア羽根40は勝手に移動することなく所定位置に保持されて所期の状態を確保することができる。また、バリア羽根40の長孔40b及びその回転中心(第2回転中心C2)、ロータ51の回転中心(第1回転中心C1)、駆動ピン51cの作動範囲(作動角θ)を規定するだけであるため、構造を簡略化でき、装置を小型化、低コスト化、従来に比べて軽量化することができる。
【0031】
図9及び図10は、本発明に係るカメラ用羽根駆動装置の他の実施形態を示すものであり、前述のバリア羽根40の長孔の向きを変更した以外は、前述の実施形態と同一であるため、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
すなわち、この実施形態において、バリア羽根40´は、図9及び図10に示すように、円孔40a、長孔40b´を備えている。そして、長孔40b´は、その中心線L1がバリア羽根40´の回転中心(第2回転中心C2)を通らない捩れの位置に形成されている。
【0032】
この実施形態に係る装置においても、図9及び図10に示すように、前述実施形態と同様に、駆動ピン51cが第1回転中心C1と第2回転中心C2とを結ぶ領域を横切って往復動するように形成され、バリア羽根40´の長孔40b´が、バリア羽根40´が閉鎖位置又は開放位置に位置するとき、その中心線L1に垂直でかつ駆動ピン51cを通る法線L2と第1回転中心C1及び第2回転中心C2を通る直線L3との交点Pが、第2回転中心C2からみて第1回転中心C1の外側に位置するように形成されているため、バリア羽根40´が開口部10aを閉鎖する閉鎖位置又は開口部10aを開放する開放位置にある状態で外部から衝撃力等を受けて、バリア羽根40´が逆向きに移動しようとしても、バリア羽根40´の長孔40b´(の法線L2)と駆動ピン51cの移動方向(回転方向)のなす圧力角が大きく又長孔40b´が駆動ピン51cをストッパ10e,10fに押し付けるカム作用を及ぼすため、バリア羽根40´(の長孔40b´)が駆動ピン51cを押す力はロータ51を回転させることができず、バリア羽根40を所定の停止位置(閉鎖位置又は開放位置)において保持することができる。
【0033】
したがって、この装置がデジタルカメラ等に搭載された状態で落下等による衝撃力を受けても、バリア羽根40´は勝手に移動することなく所定位置に保持されて所期の状態を確保することができる。また、バリア羽根40´の長孔40b´及びその回転中心(第2回転中心C2)、ロータ51の回転中心(第1回転中心C1)、駆動ピン51cの作動範囲(作動角θ)を規定するだけであるため、構造を簡略化でき、装置を小型化、低コスト化、従来に比べて軽量化することができる。
【0034】
上記実施形態においては、羽根部材として、バリア羽根40,40´を示したが、これに限定されるものではなく、シャッタ羽根、絞り羽根、さらには、NDフィルタ羽根、赤外光カットフィルタ羽根等を備える構成において、本発明を採用してもよい。
上記実施形態においては、この装置がデジタルカメラに搭載された場合について説明したが、これに限定されるものではなく、銀塩フィルム式のカメラ、その他のカメラ等においても、本発明を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上述べたように、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、構造の簡略化、低コスト化、装置の小型化、軽量化等を達成しつつ、羽根部材を開口部の閉鎖位置又は開放位置に確実に保持することができ、誤作動を生じない高精度な開閉動作を得ることができるため、携帯用の小型のデジタルカメラ等に搭載されるのは勿論のこと、外部から衝撃力等を受けて羽根部材の誤作動の虞があるカメラであれば、携帯型に限らず、固定型のカメラにも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のカメラ用羽根駆動装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示すカメラ用羽根駆動装置の平面図である。
【図3】図1に示すカメラ用羽根駆動装置の断面図である。
【図4】図1に示すカメラ用羽根駆動装置に含まれる駆動ピンの作動範囲を説明する平面図である。
【図5】図1に示すカメラ用羽根駆動装置において、カバーを除いた状態で、駆動ピンが作動範囲の途中に位置しかつバリア羽根が開口部を閉鎖する閉鎖位置にある状態を示す平面図である。
【図6】図1に示すカメラ用羽根駆動装置において、カバーを除いた状態で、駆動ピンが作動範囲の一方の移動端位置にありかつバリア羽根が開口部を閉鎖する閉鎖位置にある状態を示す平面図である。
【図7】図1に示すカメラ用羽根駆動装置において、カバーを除いた状態で、駆動ピンが作動範囲の途中に位置しかつバリア羽根が開口部を開放する開放位置にある状態を示す平面図である。
【図8】図1に示すカメラ用羽根駆動装置において、カバーを除いた状態で、駆動ピンが作動範囲の他方の移動端位置にありかつバリア羽根が開口部を開放する開放位置にある状態を示す平面図である。
【図9】本発明に係るカメラ用羽根駆動装置の他の実施形態を示すものであり、カバーを除いた状態で、駆動ピンが作動範囲の一方の移動端位置にありかつバリア羽根が開口部を閉鎖する閉鎖位置にある状態を示す平面図である。
【図10】図9に示すカメラ用羽根駆動装置において、カバーを除いた状態で、駆動ピンが作動範囲の他方の移動端位置にありかつバリア羽根が開口部を開放する開放位置にある状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0037】
C1 第1回転中心(ロータの回転中心)
C2 第2回転中心(羽根部材の回転中心)
L1 長孔の中心線
L2 中心線に垂直でかつ駆動ピンを通る法線
L3 第1回転中心及び第2回転中心を通る直線
θ 駆動ピンの作動角(作動範囲)
P 法線と直線との交点
10 地板(基板)
10a 開口部
10b 平坦面
10c 軸受孔
10d 支軸
10e 閉じ側のストッパ
10f 開き側のストッパ
10g,10h 補助ストッパ
10i 収容凹部
20 補助地板(基板)
20a 軸受孔
20b 矩形孔
30 カバー
30a 開口部
30b,30c,30d 嵌合孔
30e 円弧状孔
40,40´ バリア羽根(羽根部材)
40a 円孔
40b,40b´ 長孔
50 駆動源
51 ロータ
51a 回転軸
51b 着磁部
51c 駆動ピン
52 ヨーク
52a,52b 磁極部
53 ボビン
54 励磁用のコイル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する基板と、駆動ピンを有すると共に前記基板上の第1回転中心回りに回動するロータを含む駆動源と、前記駆動ピンが挿入される長孔を有すると共に前記基板上の第2回転中心回りに回動し前記開口部を閉鎖する閉鎖位置と前記開口部を開放する開放位置との間を移動する羽根部材と、を備えたカメラ用羽根駆動装置であって、
前記駆動ピンは、前記第1回転中心と前記第2回転中心とを結ぶ領域を横切って往復動するように形成され、
前記長孔は、前記羽根部材が前記閉鎖位置又は開放位置に位置するとき、その中心線に垂直でかつ前記駆動ピンを通る法線と前記第1回転中心及び第2回転中心を通る直線との交点が、前記第1回転中心上又は前記第2回転中心からみて前記第1回転中心の外側に位置するように形成されている、
ことを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記基板は、前記交点が前記第1回転中心の外側に位置するとき、前記駆動ピンを当接させるストッパを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記基板は、前記羽根部材が前記閉鎖位置又は開放位置からさらに過移動するのを規制するべく前記羽根部材を当接させる補助ストッパを有する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記駆動ピンの作動範囲は、前記第1回転中心及び第2回転中心を通る直線により略二等分されるように形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
前記長孔は、その中心線が前記第2回転中心を通るように形成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一つに記載のカメラ用羽根駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−271098(P2009−271098A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118616(P2008−118616)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】