説明

カメラ

【課題】測光素子からの画像データを複数の機能に用いる場合に、機能ごとに演算負荷を適正化すること。
【解決手段】カメラは、被写体像を撮像して、所定の画素数の画像データを出力する測光素子13と、撮影条件の設定に関連する機能のうちの少なくとも二つの機能を実行可能な実行部64、65、69と、該画像データを、複数の画素を含み、且つ該機能ごとに異なるサイズのブロックに区分した画像データに変換する変換部51、52、54と、を備え、実行部64、65、69は、該ブロックに区分された画像データを用いて該機能を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
光学ファインダへ導かれた光を、ファインダ光軸から外れた位置に配した測光センサで測光する一眼レフ電子カメラが知られている(特許文献1参照)。この一眼レフ電子カメラでは、測光センサからの出力信号が、露出演算や顔検出などの複数の機能に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−59326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測光センサの画素数を従来よりも増やして顔検出機能の向上を図ろうとした場合、露出演算機能では演算負荷が大きくなり過ぎるなどの問題が生じる。従来技術では、このように測光センサからの出力データを複数の機能に用いる場合に、機能ごとに演算負荷を適正化することについては考慮されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるカメラは、被写体像を撮像して、所定の画素数の画像データを出力する測光素子と、画像データを用いて、撮影条件の設定に関連する機能のうちの少なくとも二つの機能を実行可能な実行部と、該画像データを、複数の画素を含み、且つ該機能ごとに異なるサイズのブロックに区分した画像データに変換する変換部と、を備え、実行部は、該ブロックに区分された画像データを用いて該機能を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、測光素子からの画像データを複数の機能に用いる場合に、機能ごとに演算負荷を適正化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施の形態による一眼レフ電子カメラの構成を説明する図である。
【図2】電子カメラの要部構成を説明するブロック図である。
【図3】測光センサの正面図である。
【図4】露出演算用のブロック化を説明する図である。
【図5】被写体追尾用のブロック化を説明する図である。
【図6】顔検出用のブロック化を説明する図である。
【図7】(a)は測光センサからの間引き読み出しを説明する図であり、(b)はTTL調光演算用のブロック化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態による一眼レフ電子カメラの構成を説明する図である。図1において、カメラ本体4に対して着脱可能な交換レンズ1が装着されている。
【0009】
被写体からの光は、撮像レンズ2および絞り3を介してカメラ本体4へ入射される。カメラ本体4に入射した被写体光は、シャッタレリーズ前は図1に例示したミラーダウン状態にある一部半透過のクイックリターンミラー(以下メインミラーと呼ぶ)5で上方のファインダ部へ向けて折り曲げられ、ファインダスクリーン6へ向けて進行する。また、メインミラー5を透過した一部の被写体光は、サブミラー14によって下方へ折り曲げられ、焦点検出センサ15へ導かれる。
【0010】
ファインダスクリーン6へ入射された被写体光束は、撮像レンズ2によって拡散面6aに結像する。ファインダスクリーン6で拡散された光束はさらに、ファインダ光学系の光軸22に沿ってペンタプリズム8へ入射される。ペンタプリズム8は、拡散された被写体光を接眼レンズ9へ導く。撮影者は、接眼部10から接眼レンズ9を通してファインダによる被写体像を観察する。
【0011】
また、ファインダスクリーン6で拡散された光束の一部は、ファインダ光学系の光軸22から傾いた測光光学系光軸23の方向へ進み、三角プリズム11の反射面11aで上方へ折り曲げられる。この光束は測光レンズ12を介して測光センサ13の受光面に再結像する。
【0012】
シャッタレリーズ後は、メインミラー5が上方へ回動し(ミラーアップ状態となり)、全ての被写体光は開駆動されるメカニカルシャッター16を介して撮像素子17へ導かれ、その撮像面上に被写体像を結像する。撮像素子17は、撮像面上に結像されている被写体像を撮像し、被写体像に応じた光電変換信号を出力する。撮像が終了するとメカニカルシャッター16が閉駆動され、メインミラー5がミラーダウン状態へ戻る。
【0013】
上述した電子カメラにおいて、測光センサ13は、画素に対応する複数の光電変換素子を備えたCMOSイメージセンサなどによって構成される。光電変換素子は、光の強さに応じた信号電荷を蓄積する。測光センサ13の受光面には画素位置に対応させてベイヤー配列されたカラーフィルタ13aが設けられており、測光センサ13の出力信号から色情報が得られるよう構成されている。
【0014】
図2は、電子カメラの要部構成を説明するブロック図である。本実施形態の電子カメラでは、測光センサ13からの出力信号が、露出演算機能の他、顔検出機能、被写体追尾機能、およびTTL(through the lens)調光演算機能などの複数の機能に用いられる。
【0015】
測光センサ13は、制御部31の指示に応じて、光の強さに応じた信号電荷を蓄積する蓄積動作を行う。測光センサ13は、蓄積動作により得られた信号を演算部32へ出力する。演算部32は、制御部31の制御のもと、測光センサ13からの出力信号に基づいて、露出演算、TTL調光演算、顔検出処理、および被写体追尾処理などを行う。なお、演算部32の構成について、詳しくは後述する。
【0016】
電子カメラは、不図示のレリーズボタンが半押し操作されると、測光センサ13の蓄積動作と、測光センサ13からの出力信号に基づく露出演算とを繰り返し行う。また、測光センサ13からの出力信号に基づいて顔検出処理や被写体追尾処理などを行う。AF(Auto Focus)制御部33は、制御部31の制御のもと、たとえば顔検出処理により得られる顔の位置、または被写体追尾処理により得られる被写体の位置において焦点検出を行う。そして、焦点検出結果に基づいて撮像レンズ2のフォーカスレンズを駆動させ、合焦動作を行う。
【0017】
レリーズボタンが全押し操作されると、電子カメラは撮影制御を行う。このとき露出制御部34は、制御部31の制御のもと、直前の露出演算結果に基づいて絞り3およびメカニカルシャッター16を制御する。
【0018】
また、電子カメラは、被写体に撮影補助光を照射する照明装置35の発光が許可されている場合にレリーズボタンが全押し操作されると、TTL調光動作を行った後、撮影制御を行う。TTL調光動作では、照明装置35の予備発光に合わせて測光センサ13の蓄積動作を行い、該蓄積動作により得られた信号に基づいてTTL調光演算を行う。照明制御部36は、制御部31の制御のもと、TTL調光演算結果に基づいて照明装置35の本発光量を制御する。
【0019】
−ブロック化処理−
本実施形態では、測光センサ13からの出力信号を、各機能(露出演算機能、被写体追尾機能、顔検出機能、およびTTL調光演算機能)ごとに異なるサイズのブロックに区分するブロック化処理に特徴を有するので、以下の説明はこのブロック化処理を中心に行う。
【0020】
図3は、測光センサ13の一部の構成を示す正面図である。測光センサ13は、マトリクス状に配列された複数の画素(光電変換素子)40を備えており、画素数はたとえば約10万画素である。各画素40にはそれぞれ赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタのいずれかが設けられており、ベイヤー配列を形成している。
【0021】
測光センサ13の出力信号は、演算部32(図2)の露出演算用ブロック化部51、被写体追尾用ブロック化部52、顔検出用ブロック化部53、TTL調光演算用ブロック化部54、および光学的黒画素出力演算部55にそれぞれ入力される。各ブロック化部への入力およびそれに伴うブロック化処理は、同時に行う事が可能である。また測光センサの状況に応じて、特定のブロック化部への入力およびそれに伴うブロック化処理をON/OFFする事も可能である。たとえば、被写体輝度が暗いため、露出演算用の測光センサ露光と、被写体追尾や顔検出用の測光センサ露光とを別に行う必要がない場合には、露出演算用のブロック化処理、被写体追尾用のブロック化処理および顔検出用のブロック化処理を同時に行う。一方、被写体輝度が明るい場合には、露出演算用の測光センサ露光と被写体追尾および顔検出用の測光センサ露光とを分けてそれぞれ最適な測光センサ制御を行い、露出演算用の測光センサ露光時には、露出演算用のブロック化処理のみを行い、被写体追尾用のブロック化処理および顔検出用のブロック化処理を行わないようにする。また、TTL調光のためのモニタ測光時には、TTL調光演算用のブロック化処理のみを行い、他のブロック化処理を行わないようにする。これにより各機能に対し、必要十分なブロック化処理を同時に高速で行う事ができる。
【0022】
図4は、露出演算用のブロック化を説明する図である。露出演算用ブロック化部51は、測光センサ13において、隣接するa×a個の画素40をまとめて1つの露出演算用ブロック41とし、露出演算用ブロック41に含まれる画素40ごとの出力信号を合成加算する。図4のように、露出演算用ブロック41の形状は正方形とし、露出演算用ブロック41に含まれる水平方向と垂直方向の画素数(a個)は同一とする。
【0023】
図5は、被写体追尾用のブロック化を説明する図である。被写体追尾用ブロック化部52は、測光センサ13において、隣接するb×b個の画素40をまとめて1つの被写体追尾用ブロック42とし、被写体追尾用ブロック42に含まれる画素40ごとの出力信号を合成加算する。なお、被写体追尾用ブロック42のサイズは、露出演算用ブロック41のサイズよりも小さく設定されている(すなわちb<a)。また、図5のように、被写体追尾用ブロック42の形状は正方形とし、被写体追尾用ブロック42に含まれる水平方向と垂直方向の画素数(b個)は同一とする。
【0024】
図6は、顔検出用のブロック化を説明する図である。顔検出用ブロック化部53は、測光センサ13における1つの画素40を1つの顔検出用ブロック43として扱い、顔検出用ブロック43からの出力信号(すなわち各画素40からの出力信号)を顔検出用データとする。すなわち顔検出用ブロック43のサイズは、各画素40のサイズと同じなので、露出演算用ブロック41および被写体追尾用ブロック42のいずれのサイズよりも小さい。
【0025】
このように本実施形態では、測光センサ13から出力される所定画素数の画像データを、機能ごとに適したサイズのブロックに区分する。たとえば顔検出機能では、顔の位置検出の精度が求められるため、顔検出用ブロック43のサイズを画素40と同程度のサイズとする。すなわち、顔検出用ブロック43の数を、測光センサ13の画素数と同じとする。
【0026】
また、被写体追尾機能では、追尾対象候補の移動位置検出の精度と演算負荷とを考慮し、被写体追尾用ブロック42のサイズを顔検出用ブロック43より大きく且つ露出演算用ブロック41より小さくする。すなわち、被写体追尾用ブロック42の数を、測光センサ13の画素数よりも少なく、且つ露出演算用ブロック41の数よりも多くする。
【0027】
さらに、露出演算機能では、位置精度よりも信号レベルの精度が求められるため、露出演算用ブロック41のサイズを被写体追尾用ブロック42および顔検出用ブロック43のいずれのサイズより大きくする。すなわち、露出演算用ブロック41の数を、測光センサ13の画素数および被写体追尾用ブロック42の数のいずれよりも少なくする。これにより、露出演算機能の演算負荷を低減する。また、露出演算用ブロック41に含まれる複数の画素40からの出力信号を合成加算することにより、ランダムノイズ成分の影響を軽減することができ、露出演算の精度を向上することができる。さらに、露出演算用ブロック41に含まれる複数の画素40からの出力信号を合成加算して露出演算用ブロック41ごとの信号レベルを示すビット幅を大きくすることで、露出演算においてビット幅の大きいデータを扱うことができ、露出演算の精度を向上することができる。
【0028】
TTL調光動作時には、測光センサ13から所定数の水平方向の画素列(水平ライン)ごとに信号を読み出す動作、いわゆる間引き読み出しが行われる。図7(a)は、この間引き読み出しを説明する図である。図7(a)において、斜線が描かれた画素40は、出力信号を読み出さない画素を示し、斜線が描かれていない画素40は、出力信号を読み出す画素を示す。なお、図7では、図示の都合上、測光センサ13の一部を抜き出して図示している。図7(a)に示すように、測光センサ13からはc列につきd列ずつ信号が読み出される。本実施形態は、このように間引き読み出しを行うことで、読み出し時間を短縮できるよう構成されている。測光センサ13から間引き読み出しされた信号は、TTL調光演算用ブロック化部54(図2)に入力される。
【0029】
図7(b)は、TTL調光演算用のブロック化を説明する図である。TTL調光演算用ブロック化部54は、測光センサ13の間引き読み出しされる領域において、隣接するd×e個の画素40をまとめて1つのTTL調光演算用ブロック44とし、TTL調光演算用ブロック44に含まれる画素40ごとの出力信号を合成加算する。なお、TTL調光演算用ブロック44の垂直方向の画素数は、間引き読み出しするd列に対応してd個とする。また、本実施形態では、TTL調光演算用ブロック44を横長の矩形状とし、TTL調光演算用ブロック44の垂直方向の画素数よりも水平方向の画素数を多くする(すなわちd<e)。
【0030】
−オフセット除去処理−
また、測光センサ13には、有効画素の他に光学的黒画素(オプティカルブラック)と呼ばれる暗電流補正用の遮光画素が該有効画素周辺に設けられている。電荷蓄積型の光電変換素子では、光が入射しない状態でも熱の影響などで出力電圧(ノイズ)が発生し暗電流が流れる。そこで、有効画素の出力信号から光学的黒画素の出力信号を減じることによって暗電流の影響を除去するオフセット除去処理を行う。
【0031】
本実施形態では、オフセット除去処理を上述したブロック化処理後に行う。具体的には、測光センサ13の光学的黒画素からの出力信号を、光学的黒画素出力演算部55(図2)に入力する。光学的黒画素出力演算部55は、複数の光学的黒画素からの出力信号の加算値を算出する。光学的黒画素出力演算部55は、該加算値に露出演算用ブロック41のサイズに応じた数を乗算した値を、露出演算用の黒レベルとして露出演算用のオフセット除去処理部56に入力する。たとえば、黒画素出力加算値を(n)画素加算相当の値として算出した場合を説明する。露出演算ブロック41には画素40が(a×a)個含まれるため、この場合、露出演算用の黒レベルは該加算値に(a×a÷n)を乗算した値となる。
【0032】
同様に、光学的黒画素出力演算部55は、上記加算値に被写体追尾用ブロック42のサイズに応じた数を乗算した値を、被写体追尾用の黒レベルとして被写体追尾用のオフセット除去処理部57に入力する。また、光学的黒画素出力演算部55は、上記加算値に、顔検出用ブロック43のサイズ、すなわち1画素あたりになるように係数(1÷n)を乗算した値を顔検出用の黒レベルとして顔検出用のオフセット除去処理部58に入力する。さらに、光学的黒画素出力演算部55は、上記加算値にTTL調光演算用ブロック44のサイズに応じた数を乗算した値を、TTL調光演算用の黒レベルとしてTTL調光演算用のオフセット除去処理部59に入力する。
【0033】
露出演算用のオフセット除去処理部56は、露出演算用ブロック化部51から入力される露出演算用ブロック41ごとの出力信号に対し、上記オフセット除去処理を行う。先に露出演算に含まれる画素40の出力信号を加算(ブロック化)することにより、ランダムノイズ成分の影響を軽減することができる。そしてランダムノイズ成分によるばらつきを軽減した後で、光学的黒画素出力演算部55から入力された露出演算用の黒レベルを、露出演算用ブロック41ごとの出力信号から減じることによって、黒レベル近傍の精度を改善する。また上記ブロック化により、オフセット除去処理においてビット幅の大きいデータを扱うことができるので、オフセット除去処理の後にブロック化する場合と比較してオフセット除去処理の精度が向上する。
【0034】
同様に、被写体追尾用のオフセット除去処理部57は、被写体追尾用ブロック化部52から入力される被写体追尾用ブロック42ごとの出力信号に対し、上記オフセット除去処理を行う。ランダムノイズ成分によるばらつきを軽減した後の被写体追尾用ブロック42ごとの出力信号から、光学的黒画素出力演算部55から入力された被写体追尾用の黒レベルを減じることによって、黒レベル近傍の精度を改善する。
【0035】
また、顔検出用のオフセット除去処理部58は、顔検出用ブロック化部53から入力される画素40(顔検出用ブロック43)ごとの出力信号に対し、上記オフセット除去処理を行う。画素40ごとの出力信号から、光学的黒画素出力演算部55から入力された顔検出用の黒レベルを減じることによって、黒レベル近傍の精度を改善する。
【0036】
さらに、TTL調光演算用のオフセット除去処理部59は、TTL調光演算用ブロック化部54から入力されるTTL調光演算用ブロック44ごとの信号に対し、上記オフセット除去処理を行う。ランダムノイズ成分によるばらつきを軽減した後のTTL調光演算用ブロック44ごとの出力信号から、光学的黒画素出力演算部55から入力されたTTL調光演算用の黒レベルを減じることによって、黒レベル近傍の精度を改善する。
【0037】
−周辺減光補正処理−
また図1に例示した測光光学系では、測光センサ13の受光面において、いわゆる口径蝕やコサイン4乗則による周辺光量落ちが発生するため、公知の周辺減光補正処理を行う。
【0038】
本実施形態では、周辺減光補正処理についても上述したブロック化処理後に行う。オフセット除去処理部56から出力された露出演算用ブロック41ごとの信号は、輝度合成部60に入力されて露出演算用ブロック41ごとの輝度信号に変換されたあと、露出演算用の周辺減光補正処理部61に入力される。周辺減光補正処理部61は、露出演算用ブロック41ごとの輝度信号に対して周辺減光補正処理を行う。露出演算機能では、信号レベルの精度が求められるので、ここでは精度の高い周辺減光補正処理を行う。
【0039】
オフセット除去処理部57から出力された被写体追尾用ブロック42ごとの信号は、被写体追尾用の周辺減光補正処理部62に入力される。周辺減光補正処理部62は、被写体追尾用ブロック42ごとの信号に対して周辺減光補正処理を行う。なお、ここでは補正度合いが弱い周辺減光補正処理を行う。
【0040】
オフセット除去処理部58から出力された画素40ごとの信号は、顔検出用の周辺減光補正処理部63に入力される。周辺減光補正処理部63は、画素40ごとの信号に対して周辺減光補正処理を行う。なお、ここでは補正度合いが弱い周辺減光補正処理を行う。
【0041】
なお、本実施形態では、TTL調光演算用ブロック44ごとの輝度信号に対して周辺減光補正処理を行わず、TTL調光動作時の処理時間を短縮する。
【0042】
−露出演算−
周辺減光補正処理部61から出力された露出演算用ブロック41ごとの輝度信号は、露出演算部64に入力される。露出演算部64は、周辺減光補正処理後の露出演算用ブロック41ごとの輝度信号に基づいて公知の露出演算を行う。
【0043】
−被写体追尾処理−
周辺減光補正処理部62から出力された被写体追尾用ブロック42ごとの信号は、被写体追尾処理部65に入力される。被写体追尾処理部65は、被写体追尾処理用ブロック42ごとのRGB信号に基づいて公知の被写体追尾処理を行う。被写体追尾処理では、たとえば後述する顔検出処理によって検出された顔を追尾対象候補として、その位置を検出する。
【0044】
−顔検出処理−
周辺減光補正処理部63から出力された画素40ごとの信号は、画素補間・ガンマ補正処理部66に入力される。画素補間・ガンマ補正処理部66は、画素40ごとの信号に対して公知の画素補間処理を行って画素40ごとのRGB信号を生成し、画素40ごとのRGB信号に対し公知のガンマ補正処理を行う。画素補間・ガンマ補正処理後の画素40ごとのRGB信号は、顔検出処理部67に入力される。顔検出処理部67は、画素40ごとのRGB信号に基づいて公知の顔検出処理を行う。
【0045】
−TTL調光演算−
オフセット除去処理部59から出力されたTTL調光演算用ブロック44ごとの信号は、輝度合成部68に入力されてTTL調光演算用ブロック44ごとの輝度信号に変換されたあと、TTL調光演算部69に入力される。TTL調光演算部69は、TTL調光演算ブロック44ごとの輝度信号に基づいて公知のTTL調光演算を行う。
【0046】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)電子カメラは、被写体像を撮像して、所定の画素数の画像データを出力する測光センサ13と、撮影条件の設定に関連する機能(露出演算機能、被写体追尾機能、およびTTL調光演算機能)を実行する露出演算部64、被写体追尾処理部65、TTL調光演算部69と、前記画像データを、複数の画素を含み、且つ前記機能ごとに異なるサイズのブロックに区分した画像データに変換する露出演算用ブロック化部51、被写体追尾用ブロック化部52、TTL調光演算用ブロック化部54とを備え、露出演算部64、被写体追尾処理部65、TTL調光演算部69は、前記ブロックに区分された画像データを用いて前記機能を実行するように構成したので、測光センサ13からの画像データを複数の機能に用いる場合に、機能ごとに適した分解能の画像データを用いることができるので、機能ごとに演算負荷を適正化できる。
【0047】
(2)上記(1)のカメラにおいて、被写体像を撮像して、撮影用の画像データを出力する撮像素子17と、撮影用光路上に位置する第1状態(ミラーダウン状態)と撮影用光路外に位置する第2状態(ミラーアップ状態)とを切り替え、第1状態の場合に測光センサ13に被写体光を導き、第2状態の場合に撮像素子17に被写体光を導くメインミラー5と、をさらに備えるように構成したので、一眼レフ電子カメラの測光センサにおいて、画素数を増やした場合にも、機能ごとに演算負荷を適正化できる。
【0048】
(3)上記(1)または(2)のカメラにおいて、露出演算用ブロック化部51、被写体追尾用ブロック化部52、TTL調光演算用ブロック化部54は、前記ブロックに含まれる複数の画素の出力信号を加算することにより、前記画像データを前記ブロックに区分するように構成したので、ランダムノイズを低減した画像データを用いて各機能を実行できる。
【0049】
(4)上記(1)〜(3)のカメラにおいて、露出演算用ブロック化部51は、測光センサ13からの画像データを、露出演算機能に対応する第1サイズのブロック(露出演算用ブロック41)に区分した第1画像データに変換し、被写体追尾用ブロック化部52は、測光センサ13からの画像データを、被写体追尾機能に対応し、且つ第1サイズと異なる第2サイズのブロック(被写体追尾用ブロック42)に区分した第2画像データに変換し、TTL調光演算用ブロック化部54は、測光センサ13からの画像データを、TTL調光演算機能に対応し、且つ第1サイズおよび第2サイズと異なる第3サイズのブロック(TTL調光演算用ブロック44)に区分した第3画像データに変換し、露出演算部64は、第1画像データを用いて露出演算機能を実行し、被写体追尾処理部65は、第2画像データを用いて被写体追尾機能を実行し、TTL調光演算部69は、第3画像データを用いてTTL調光演算機能を実行するように構成したので、露出演算機能、被写体追尾機能およびTTL調光演算機能の分解能を適正化できる。
【0050】
(5)上記(1)〜(4)のカメラにおいて、顔検出処理部67は、測光センサ13から出力された所定の画素数の画像データを用いて顔検出機能を実行するように構成したので、測光センサ13の画素数に応じて精度よく顔位置を検出できる。
【0051】
(6)上記(4)のカメラにおいて、露出演算用ブロック化部51は、被写体追尾機能に対応する第2サイズのブロック(被写体追尾用ブロック42)と比較して、露出演算機能に対応する第1サイズのブロック(露出演算用ブロック41)を大きくするように構成したので、露出演算機能および被写体追尾機能の精度を適切としながらも演算負荷を低減できる。
【0052】
(7)上記(4)のカメラにおいて、TTL調光演算用ブロック化部54は、測光センサ13の画素列においてm列おきにn列ずつ画像データを読み出し、TTL調光機能に対応する第3サイズのブロック(TTL調光演算用ブロック44)の一辺の長さを前記n列とし、該読み出した画像データを該第3サイズのブロック(TTL調光演算用ブロック44)に区分して第3画像データ(TTL調光演算機能に用いる画像データ)に変換するように構成したので、測光センサ13からの画像データの読み出し時間を短縮でき、且つTTL調光演算機能の精度を適切としながらも演算負荷を低減できる。
【0053】
(8)上記(4)または(6)のカメラにおいて、露出演算用ブロック化部51、被写体追尾用ブロック化部52は、露出演算機能に対応する第1サイズのブロック(露出演算用ブロック41)の形状、および被写体追尾機能に対応する第2サイズのブロック(被写体追尾用ブロック42)の形状を正方形とするように構成したので、水平方向と垂直方向とを同じ分解能で処理することができる。
【0054】
(9)上記(7)のカメラにおいて、TTL調光演算用ブロック化部54は、TTL調光機能に対応する第3サイズのブロック(TTL調光演算用ブロック44)の形状を長さが前記n列である一辺よりも他辺が長い矩形状とするように構成したので、TTL調光演算機能において、間引き読み出ししない水平方向も間引き読み出しする垂直方向と同様に分解能を減らして演算負荷を低減できる。
【0055】
(10)上記(1)〜(9)のカメラにおいて、オフセット除去処理部56〜59は、前記ブロックに区分された画像データに対してオフセット除去処理を行うように構成したので、画素ごとの出力信号に対してオフセット除去処理を行う場合と比較して、演算負荷を低減することができる。
【0056】
(11)上記(1)〜(10)のカメラにおいて、周辺減光補正処理部60〜62は、前記ブロックに区分された画像データに対して周辺減光補正処理を行うように構成したので、画素ごとの出力信号に対して周辺減光補正処理を行う場合と比較して、演算負荷を低減することができる。
【0057】
(変形例1)
上述した実施の形態では、露出演算用ブロック41および被写体追尾用ブロック42の水平方向の画素数と垂直方向の画素数とを同一にしたが、異ならせてもよい。該画素数は、各処理における位置精度と演算負荷とを考慮して定めればよい。
【0058】
(変形例2)
上述した実施の形態では、顔検出用ブロック43のサイズを画素40のサイズと同一にしたが、異ならせてもよい。たとえば、顔検出処理のスピードが求められる場合には、隣接するf×f個の画素40からの出力信号をまとめて1つの顔検出用ブロック43とするブロック化処理を行うようにしてもよい。また、顔検出用ブロック43の水平方向の画素数と垂直方向の画素数は、同一にしてもよいし、異ならせてもよい。該画素数は、顔検出処理における位置精度と演算負荷とを考慮して定めればよい。
【0059】
(変形例3)
上述した実施の形態では、ブロックに区分された画像データを用いて露出演算機能、被写体追尾機能、およびTTL調光演算機能の3つの機能を実行するようにしたが、撮影条件の設定に関連する機能であれば、この他の機能を、当該画像データを用いて実行してもよいし、またこれらの機能のうち少なくとも2つを行えばよい。
【0060】
以上の説明はあくまで一例であり、上記の実施形態の構成に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0061】
2…撮像レンズ
5…メインミラー
13…測光センサ
17…撮像素子
31…制御部
51…露出演算用ブロック化部
52…被写体追尾用ブロック化部
53…顔検出用ブロック化部
54…TTL調光演算用ブロック化部
56〜59…オフセット除去処理部
61〜63…周辺減光補正処理部
64…露出演算部
65…被写体追尾処理部
67…顔検出処理部
69…TTL調光演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を撮像して、所定の画素数の画像データを出力する測光素子と、
前記画像データを用いて、撮影条件の設定に関連する機能のうちの少なくとも二つの機能を実行可能な実行部と、
前記画像データを、複数の画素を含み、且つ前記機能ごとに異なるサイズのブロックに区分した画像データに変換する変換部と、
を備え、
前記実行部は、前記ブロックに区分された画像データを用いて前記機能を実行することを特徴とするカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラにおいて、
被写体像を撮像して、撮影用の画像データを出力する撮像素子と、
撮影用光路上に位置する第1状態と前記撮影用光路外に位置する第2状態とを切り替え、前記第1状態の場合に前記測光素子に被写体光を導き、前記第2状態の場合に前記撮像素子に被写体光を導くミラーと、
をさらに備えることを特徴とするカメラ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカメラにおいて、
前記変換部は、前記ブロックに含まれる複数の画素の出力信号を加算することにより、前記画像データを前記ブロックに区分することを特徴とするカメラ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のカメラにおいて、
前記変換部は、前記測光素子から出力された前記画像データの、前記ブロックに区分した画像データへの変換を、前記測光素子の外部で行うことを特徴とするカメラ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のカメラにおいて、
前記変換部は、前記機能ごとの前記ブロックに区分した画像データへの変換を、前記少なくとも二つの機能において同時に行うことを特徴とするカメラ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のカメラにおいて、
前記実行部は、露出演算機能、被写体追尾機能、およびTTL(through the lens)調光演算機能のうちの少なくとも二つの機能を実行可能であることを特徴とするカメラ。
【請求項7】
請求項6に記載のカメラにおいて、
前記変換部は、前記画像データを、前記露出演算機能に対応する第1サイズのブロックに区分した第1画像データと、前記被写体追尾機能に対応し、且つ前記第1サイズと異なる第2サイズのブロックに区分した第2画像データと、前記TTL調光演算機能に対応し、且つ前記第1サイズおよび第2サイズと異なる第3サイズのブロックに区分した第3画像データと、に変換し、
前記実行部は、前記第1画像データを用いて前記露出演算機能を実行し、前記第2画像データを用いて前記被写体追尾機能を実行し、前記第3画像データを用いて前記TTL調光演算機能を実行することを特徴とするカメラ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のカメラにおいて、
前記実行部は、前記所定の画素数の画像データを用いて顔検出機能を実行することを特徴とするカメラ。
【請求項9】
請求項7に記載のカメラにおいて、
前記変換部は、前記被写体追尾機能に対応する第2サイズのブロックと比較して、前記露出演算機能に対応する第1サイズのブロックを大きくすることを特徴とするカメラ。
【請求項10】
請求項7に記載のカメラにおいて、
前記変換部は、前記測光素子の画素列においてm列おきにn列ずつ画像データを読み出し、前記TTL調光演算機能に対応する第3サイズのブロックの一辺の長さを前記n列とし、該読み出した画像データを該第3サイズのブロックに区分して前記第3画像データに変換することを特徴とするカメラ。
【請求項11】
請求項7または9に記載のカメラにおいて、
前記変換部は、前記露出演算機能に対応する第1サイズのブロックの形状、および前記被写体追尾機能に対応する第2サイズのブロックの形状を正方形とすることを特徴とするカメラ。
【請求項12】
請求項10に記載のカメラにおいて、
前記変換部は、前記TTL調光演算機能に対応する第3サイズのブロックの形状を、長さが前記n列である一辺よりも他辺が長い矩形状とすることを特徴とするカメラ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のカメラにおいて、
前記実行部は、前記ブロックに区分された画像データに対してオフセット除去処理を行うことを特徴とするカメラ。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のカメラにおいて、
前記演算部は、前記ブロックに区分された画像データに対して周辺減光補正処理を行うことを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−44995(P2013−44995A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183516(P2011−183516)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】