説明

カラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物およびカラーフィルタ基板の再生方法

【課題】カラーフィルタ基板の製造工程で発生する不良基板からカラーレジストを効率よく除去することが可能なカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物、およびそれを用いたカラーフィルタ基板の再生方法を提供する。
【解決手段】(a)無機アルカリ水酸化物および/または第4級アンモニウム水酸化物、(b)アミン化合物、(c)有機溶剤、(d)有機酸およびその塩、(e)残量の水を含む組成とする。
無機アルカリ水酸化物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。
第4級アンモニウム水酸化物として、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、水酸化トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はTFT−LCD(薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ)等に使用されるカラーフィルタ基板の再生の際に用いられるレジスト剥離液組成物およびそれを用いたカラーフィルタ基板の再生方法に関し、より詳しくはカラーフィルタ基板の製造工程中に発生する不良基板を再生するために、カラーレジスト等を除去するためのレジスト剥離液組成物および該レジスト剥離液を用いたカラーフィルタ基板の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置は、近年、大型化、大画面化が急速に進められており、その画質についてもより高性能なものが求められており、これに伴い、このようなカラー液晶表示装置等の表示装置に用いられるカラーフィルタにも、大型化とともに高精度化および高信頼性への要求が大きくなり、これに対応するための製造条件や品質基準はますます厳しいものとなってきている。
【0003】
カラーフィルタ基板は、カラーレジストである赤(R)、緑(G)、青(B)パターンと、各画素間の漏れ光を遮断し、カラーコントラストの改善、外部光反射の抑制による視野性の向上、外部光による薄膜トランジスタ(TFT)の誤作動の防止などの役割を果たすブラックマトリクスと、液晶セルに電圧を印加する共通電極とによって構成されている。
なお、カラーフィルタ基板を作る工程は次の通りである。
【0004】
ガラス基板上にブラックマトリクスの材料であるCr/CrOx等の金属薄膜系または樹脂系の有機薄膜系を塗布し、パターンを形成する。ブラックマトリクスパターンを形成した後、色相実現のためのカラーレジストパターンを、フォトリソグラフィ法によって形成する。カラーレジストをガラス基板上に塗布して露光させ、光重合反応によってカラーレジストを硬化させる。露光が終わった後、カラーレジストは現像によって露光されていない部分が除去され、焼成過程を経る。その後、必要に応じて透明保護膜(オーバーコート膜)を形成、さらに透明導電膜(ITO:インジウム錫酸化物)を形成して、カラーフィルタ基板が完成する。
【0005】
カラーレジストの作製には顔料分散法が主に用いられる。一般にカラーレジストはフォトレジストのような感光組成物である光重合開始剤、多官能性モノマー、アクリル系バインダー樹脂などに色相を実現する有機顔料が分散されている。前記光重合開始剤は光を受けてラジカルを発生させる高感度化合物であり、多官能性モノマーはラジカルによって重合反応開始後、高分子形態で結合されて現像液に溶けない形態となる。アクリル系バインダー樹脂は、常温で液体状態の多官能性モノマーを現像液から保護する。アクリル系バインダー樹脂は、顔料分散の安定化および赤、緑、青パターンの耐熱性、耐光性、耐薬品性などの信頼性を左右する。
【0006】
前記カラーフィルタ基板の製造方法において、画質の向上と生産性の改善について様々な検討が行われているが、近年ますます高い信頼性、高精度が要求されてきているために、製品の検査も一層厳格になり、製品の不良率が高くなって、カラーフィルタの製造工程における歩留まりは低下しているのが現状である。
【0007】
カラーフィルタの製造工程における歩留まりを向上させるための手段としては、製品の不良原因になっている、ゴミ等の異物の混入による欠陥、ピンホールや欠け等による欠陥、レジストの塗布ムラによる欠陥などを改良するなどの方策が考えられる。しかしながら、製造工程を厳重に管理しても、各種欠陥の原因を完全に排除することは実際上不可能であり、このような管理体制を強化することは、必ずしも工業的に有利とはいえない。
【0008】
このため従来は、製造工程のある段階においては、修正が効かない欠陥の発生したカラーフィルタは不良基板として廃棄処分されていた。このことは環境上の観点からも経済性の観点からも問題があり、さらに上記したような性能要求基準の上昇もあって、今後益々廃棄品の量が増大することが予測され、問題がより顕著になる可能性が高い。
【0009】
このような観点から、近年、カラーフィルタの不良基板を再生して使用することが検討されている。
【0010】
その方法として、例えば、強酸や強アルカリを使用しないでカラーフィルタ基板を特定の研磨剤を用いて、研磨することによりカラーフィルタ基板を再生する方法が提案されている(特許文献1,特許文献2)。
しかしながら、この方法は研磨装置を必要とし、さらに特定の研磨剤を必要とするなど再生費用は高コストになるという問題点がある。
【0011】
また、カラーフィルタ基板についてまず表面研磨処理を行った後、有機アルカリ系剥離液による処理を行うことによりカラーフィルタ基板を再生する方法が提案されている(特許文献3)。
しかし、この方法には、煩雑な処理工程を必要とするなどの問題点がある。
【0012】
さらに、無機酸、特に濃硫酸または発煙硫酸を用いてカラーフィルタ基板の再生を行う方法も提案されている(特許文献4,特許文献5)。
しかしながら、この方法の場合、濃硫酸や発煙硫酸を高温で使用するため、作業者の安全性が問題になるばかりでなく、火災の危険性があり、取扱に細心な注意を要しなければならないという問題点がある。
【0013】
また、最初に塩化第二鉄水溶液に浸漬し、次に濃度が60〜98重量%の濃硫酸に浸漬し、さらにブラシ洗浄することによりカラーフィルタ基板の再生を行う方法も提案されている(特許文献6,特許文献7)。
しかしながら、この方法の場合、いずれの工程も長時間の浸漬時間を要するなどの問題点がある。
【0014】
また、塩酸水溶液または硫酸/過硫酸ナトリウム水溶液で処理を行った後、アルカリ性剥離液を使用することでカラーフィルタ基板の再生を行う方法も提案されている(特許文献8,特許文献9)。
この方法の場合も、処理時間が長くなるなどの問題点がある。
【0015】
さらに、無機アルカリ水酸化物、有機アルカリ水酸化物等を用いて、有機溶媒、界面活性剤等を添加した剥離液で、カラーフィルタの製造工程で発生する不良基板のカラーレジスト、ブラックマトリクスを含むオーバーコート材を除去してガラス基板として再使用するためのカラーレジスト剥離液組成物に関する提案もなされている(特許文献10〜13)。
しかしながら、特許文献10〜13で言及されているこれらのカラーレジスト剥離液ではカラーレジスト等を短時間で剥離、洗浄することは困難で、さらに強力な剥離性能を有する剥離液組成物が要求されているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2001−124913号公報
【特許文献2】特開2007−69339号公報
【特許文献3】特開平11−95019号公報
【特許文献4】特開平11−52123号公報
【特許文献5】特開2005−189679号公報
【特許文献6】特開2001−91731号公報
【特許文献7】特開2001−91730号公報
【特許文献8】特開平9−86969号公報
【特許文献9】特開2002−179438号公報
【特許文献10】特開2005−31682号公報
【特許文献11】特開2007−183577号公報
【特許文献12】特開2007−188080号公報
【特許文献13】特開2007−254555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は上述の課題を解決するためになされたものであり、TFT−LCD等に使用されるカラーフィルタ基板の製造工程で発生する不良基板からカラーレジストを効率よく除去することが可能なカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物および該レジスト剥離液を用いたカラーフィルタ基板の再生方法を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物は、
(a)無機アルカリ水酸化物および/または第4級アンモニウム水酸化物、
(b)アミン化合物、
(c)有機溶剤、
(d)有機酸およびその塩、
(e)残量の水
を含むことを特徴としている。
【0019】
本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物においては、前記無機アルカリ水酸化物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが望ましい。
【0020】
また、本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物においては、 前記第4級アンモニウム水酸化物として、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、および水酸化トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが望ましい。
【0021】
また、前記アミン化合物として、アルカノールアミン類および脂肪族ポリアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが望ましい。
【0022】
また、前記有機溶剤として、グリコール系溶剤、3価以上の多価アルコールのモノ、ジ、トリ、もしくはテトラアルキルエーテル系溶剤、窒素原子含有系溶剤、ラクトン系溶剤、ケトン系溶剤、環状エーテル系溶剤、環状アルコール系溶剤、および硫黄原子含有系溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが望ましい。
【0023】
また、前記有機酸およびその塩として、カルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸およびそれらの塩を用いることが望ましい。
【0024】
また、本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物は、カラーフィルタ基板上のカラーレジストを剥離する際に使用されるものであることを特徴としている。
【0025】
また、本発明のカラーフィルタ基板の再生方法は、本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物を用いて、カラーフィルタ基板上のカラーレジストを除去する工程を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物は、(a)無機アルカリ水酸化物および/または第4級アンモニウム水酸化物、(b)アミン化合物、(c)有機溶剤、(d)有機酸およびその塩、(e)残量の水を含むものであって、樹脂の剥離性に優れており、例えばTFT−LCD等に使用されるカラーフィルタ基板上のカラーレジスト、ブラックマトリクス等の樹脂を、短時間で効率よく剥離することができる。
なお、本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物は、特性改善のために微量添加物を添加することや、不可避の不純物を含有することを排除するものではない。
【0027】
また、本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物(以下、単に「レジスト剥離液組成物」ともいう)は、汚れを除去する能力に優れており、例えばTFT−LCD等に使用されるカラーフィルタ基板に付着した油分、指紋、樹脂、およびパーティクル等の汚れを効率よく除去することができる。
また、レジスト剥離液を用いた後も水リンスで十分でありカラーフィルタ基板の再生方法に関して優れた効果が認められる。
【0028】
また、本発明のカラーフィルタ基板の再生方法は、本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物を用いて、カラーフィルタ基板上のカラーレジストを除去する工程を備えているので、例えばTFT−LCD等に使用されるカラーフィルタ基板上のカラーレジストなどの樹脂を、短時間で剥離して、カラーフィルタ基板を効率よく再生することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明のレジスト剥離液組成物においては、前記(a)の無機アルカリ水酸化物または第4級アンモニウム水酸化物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の無機アルカリ水酸化物、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、水酸化トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム等からなる群より選択されるものを使用することが好ましい。
【0030】
また、本発明のレジスト剥離液組成物において、無機アルカリ水酸化物または第4級アンモニウム水酸化物の含有量はレジスト剥離液組成物全体に対して1〜30重量%の範囲とすることが好ましい。
無機アルカリ水酸化物または第4級アンモニウム水酸化物の含有量が1重量%未満である場合には、カラーレジストを構成する高分子材料への浸透力が低下して、カラーレジストを完全に除去することが難しくなり、30重量%を超える場合にはレジスト剥離液の層分離等の問題点が発生するため好ましくない。
【0031】
また、本発明のレジスト剥離液組成物において用いられる前記(b)のアミン化合物としては、アルカノールアミン類、脂肪族ポリアミン類等が好ましい例として挙げられる。
【0032】
アルカノールアミン類としては、例えばモノエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン、N−エチルイソプロパノールアミン、N−プロピルイソプロパノールアミン、2−アミノプロパン−1−オール、N−メチル−2−アミノ−プロパン−1−オール、N−エチル−2−アミノ−プロパン−1−オール、1−アミノプロパン−3−オール、N−メチル−1−アミノプロパン−3−オール、N−エチル−1−アミノプロパン−3−オール、1−アミノブタン−2−オール、N−メチル−1−アミノブタン−2−オール、N−エチル−1−アミノブタン−2−オール、2−アミノブタン−1−オール、N−メチル−2−アミノブタン−1−オール、N−エチル−2−アミノブタン−1−オール、3−アミノブタン−1−オール、N−メチル−3−アミノブタン−1−オール、N−エチル−3−アミノブタン−1−オール、1−アミノブタン−4−オール、N−メチル−1−アミノブタン−4−オール、N−エチル−1−アミノブタン−4−オール、1−アミノ−2−メチルプロパン−2−オール、2−アミノ−2−メチルプロパン−1−オール、1−アミノペンタン−4−オール、2−アミノ−4−メチルペンタン−1−オール、2−アミノヘキサン−1−オール、3−アミノヘプタン−4−オール、1−アミノオクタン−2−オール、5−アミノオクタン−4−オール、1−アミノプロパン−2,3−ジオール、2−アミノプロパン−1,3−ジオール、トリス(オキシメチル)アミノメタン、1,2−ジアミノプロパン−3−オール、1,3−ジアミノプロパン−2−オール、2−(2−アミノエトキシ)エタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種、またはこれらの2種以上の混合物を使用することが好ましい。
【0033】
また、ポリアミン類としては、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンからなる群より選ばれる少なくとも1種、またはこれらの2種以上の混合物を使用することが好ましい。
【0034】
また、本発明のレジスト剥離液組成物におけるアミン化合物は、カラーレジストを構成する高分子材料に浸透して、カラーレジストをガラス基板から分離する機能を果たす。そのため、前記アミン化合物の含有量はレジスト剥離液組成物全体に対して1〜30重量%の範囲とすることが好ましい。
上記アミン化合物の含有量が1重量%未満になるとカラーレジストへの浸透性が低くなってカラーレジストの剥離性が低下し、30重量%を超えると無機アルカリイオンまたは第4級アンモニウムイオンの活動性を阻害して性能の向上が期待できない。
【0035】
また、本発明のレジスト剥離液組成物における前記(c)の有機溶剤としては、グリコール系溶剤、3価以上の多価アルコールのモノ、ジ、トリ、もしくはテトラアルキルエーテル系溶剤、窒素原子含有系溶剤、ラクトン系溶剤、ケトン系溶剤、環状エーテル系溶剤、環状アルコール系溶剤、硫黄原子含有系溶剤等が好ましい例として挙げられる。
【0036】
上記グリコール系溶剤としては、好ましい例として、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−nヘエキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル等のモノアルキルエーテル系溶剤や、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルメチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶剤が挙げられる。
【0037】
また、上記3価以上の多価アルコールのモノ、ジ、トリもしくはテトラアルキルエーテル系溶剤としては、例えばグリセリンモノメチルエーテル、トリメチロールプロパンモノメエチルエーテル、ペンタエリスリトールジメチルエーテル等の溶剤が挙げられる。
【0038】
また、上記窒素原子含有系溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、2−ピロリドン等のピロリドン系溶剤、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド等のアミド系溶剤、N−メチル−2−オキサゾリジノン、3,5−ジメチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン系溶剤が挙げられる。
【0039】
また、上記ラクトン系溶剤としては、例えばγ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等の溶剤が挙げられる。
【0040】
さらに、上記ケトン系溶剤としては、例えばアセトン、ジエチルケトン、アセトフェノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
【0041】
また、上記環状エーテル系溶剤としては、例えばテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
【0042】
また、上記環状アルコール系溶剤としては、例えばベンジルアルコール、フェネチルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等の溶剤が挙げられる。
【0043】
さらに、上記硫黄原子含有溶剤としては、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、スルホラン等の溶剤が挙げられる。
【0044】
本発明のレジスト剥離液組成物において用いられる上述の有機溶剤は、カラーレジストに対する浸透力および溶解力に優れたものであり、カラーレジストの高分子に浸透して、膨潤現象を生じさせる機能を果たす。そして、その機能を十分に発揮させるためには、有機溶剤の含有量はのレジスト剥離液組成物全体に対して10〜50重量%の範囲とすることが好ましい。
上記有機溶剤の含有量が10重量%未満になるとカラーレジストを完全に除去することが難しくなり、50重量%を超えると無機アルカリイオンまたは第4級アンモニウムイオンとの混和性が悪化し、活動性を阻害して性能の向上を期待できなくなる。
【0045】
また、本発明のレジスト剥離液組成物において、上記(d)の有機酸およびその塩としては、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシ酢酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸およびそれらのアンモニウム塩もしくはアルカリ金属塩、およびこれらの混合物から選択されるものを使用することが好ましい。
【0046】
本発明のレジスト剥離液組成物において用いられる上記(d)の有機酸およびその塩は、カラーレジスト中の顔料、特に金属イオンを含有した顔料を錯化し、カラーレジスト剥離液中への分散を容易にする。そして、その機能を十分に発揮させるためには、上記有機酸およびその塩の含有量はレジスト剥離液組成物全体に対して、0.1〜10重量%の範囲とすることが好ましい。
上記有機酸およびその塩の含有量が0.1重量%未満になると、錯化作用が低下して顔料の捕捉が困難になり、顔料の剥離性が低下する。また、含有量が10重量%を超えると、添加量に見合う効果が得られないため好ましくない。
【0047】
次に、本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液の使用方法を以下に例示する。ただし、本発明はこの例に限定されるものではない。
【0048】
まず、カラーレジストが形成されたカラーフィルタ基板と本発明のレジスト剥離液と接触させることによりカラーレジストを剥離除去する。
カラーフィルタ基板とレジスト剥離液を接触させる方法としては、シャワー法、スプレー法、浸漬法、浸漬揺動法、超音波法およびこれらを組み合せた方法を用いることができる。
【0049】
本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物を用いて剥離を行う際の温度(剥離温度)は通常20〜80℃とすることが好ましく、剥離時間は通常0.5〜30分とすることが望ましい。
【0050】
カラーレジストを剥離した後は、通常、水によるリンスを行う。水によりリンスする方法としてはシャワー法、スプレー法、浸漬法、浸漬揺動法、超音波法およびこれらを組み合せた方法を用いることができる。
【0051】
また、本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物は、カラーフィルタ基板の製造ラインを構成する処理槽内に付着した、当該カラーレジスト用樹脂組成物からなる樹脂汚れを洗浄して除去する工程にも用いることができる。その場合、カラーレジスト用樹脂組成物からなる樹脂汚れが未硬化の場合はもちろん、半硬化状態になっている場合にも、それを容易に洗浄、除去することができる。
【0052】
さらに、本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液は、カラーフィルタ基板の製造装置内に付着したレジスト残渣を除去する工程にも有効に用いることができる。その場合、製造装置内を容易にかつ十分に洗浄することができる。
【0053】
そのほかにも、本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物は、カラーレジストを除去するための種々の用途に広く適用することができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例を示して、本発明の特徴を詳細に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
【0055】
[実施例1〜11および比較例1〜5の作製]
各成分(a)〜(e)を、表1および2に示した比率となるように秤取し、混合することにより、各組成を有する表1の実施例1〜11および表2の比較例1〜5のカラーフィルタ基板用再生レジスト剥離液を作製した。
【0056】
[カラーレジストの剥離試験]
カラーレジストが形成されたガラス基板を用意し、表1の実施例1〜11および表2の比較例1〜5のレジスト剥離液に、表1および2に示した温度条件および時間条件で浸漬した。
【0057】
なお、ここで剥離の対象としたカラーレジストは、光重合開始剤、多官能性モノマー、アクリル系バインダー樹脂などに、色相を実現する有機顔料を分散させたペーストをガラス基板上に塗布し、露光させることにより形成したものである。
ただし、本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物を用いて剥離することが可能なカラーレジストはこれに限られるものではない。
【0058】
そして、表1および2に示した各時間が経過するまでレジスト剥離液に浸漬した後、ガラス基板をレジスト剥離液から取り出して超純水でリンスし、窒素ガスで乾燥した後、走査電子顕微鏡によりカラーレジストが残留するか否かを観察した。
【0059】
そして、走査電子顕微鏡による観察により、カラーレジストの除去性能を下記の「◎」、「○」、「△」、「×」の基準に基づいて評価した。その結果を表1および2に示す。
◎:カラーレジストがガラス基板から完全に除去された場合
○:カラーレジストが少し残留するが、除去された割合が約90%以上である場合、
△:カラーレジストはある程度除去されるが、除去された割合が約50%以上、約90%未満である場合
×:カラーレジストの除去された割合が、約50%未満であるか、あるいはほとんど除去されなかった場合
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
表1および表2より、本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物を構成する成分である、(a)無機アルカリ水酸化物および/または第4級アンモニウム水酸化物、(b)アミン化合物、(c)有機溶剤、(d)有機酸およびその塩、(e)水、の各成分うちのいずれかの成分を含まない、比較例1〜5のレジスト剥離液組成物の場合、カラーレジストの剥離性能はいずれも△か×であり、十分に良好な剥離特性は得られないことが確認された。
【0063】
これに対し、上記(a)〜(e)の各成分を表1に示すような割合で配合した本発明の要件を備えたカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物を用いた場合、カラーレジストの剥離性能はいずれも◎か○で、十分に良好な剥離特性が得られることが確認された。
【0064】
上記実施例では、ガラス基板上のカラーレジストを除去する場合を例にとって説明したが、本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物を用いた場合、カラーレジストに限らず、カラーフィルタを構成するブラックマトリクス樹脂も、カラーレジストと同様に、効率よく剥離できることが確認されている。
【0065】
なお、本発明のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物を用いてカラーレジストを剥離する際の温度条件や時間条件は上記実施例に限定されるものではない。
【0066】
本発明は、さらにその他の点においても上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)無機アルカリ水酸化物および/または第4級アンモニウム水酸化物、
(b)アミン化合物、
(c)有機溶剤、
(d)有機酸およびその塩、
(e)残量の水
を含むことを特徴とするカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物。
【請求項2】
前記無機アルカリ水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であること
を特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物。
【請求項3】
前記第4級アンモニウム水酸化物が、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、および水酸化トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2記載のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物。
【請求項4】
前記アミン化合物が、アルカノールアミン類および脂肪族ポリアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物。
【請求項5】
前記有機溶剤が、グリコール系溶剤、3価以上の多価アルコールのモノ、ジ、トリ、もしくはテトラアルキルエーテル系溶剤、窒素原子含有系溶剤、ラクトン系溶剤、ケトン系溶剤、環状エーテル系溶剤、環状アルコール系溶剤、および硫黄原子含有系溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物。
【請求項6】
前記有機酸およびその塩は、カルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸およびそれらの塩であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物。
【請求項7】
カラーフィルタ基板上のカラーレジストを剥離する際に使用されるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のカラーフィルタ基板再生用レジスト剥離液組成物を用いて、カラーフィルタ基板上のカラーレジストを除去する工程を備えていることを特徴とするカラーフィルタ基板の再生方法。

【公開番号】特開2011−49301(P2011−49301A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195639(P2009−195639)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(596151168)林純薬工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】