説明

カラーフィルタ用マゼンタ色着色組成物、およびそれを用いたカラー撮像管素子に装着されるカラーフィルタ

【課題】分散安定性、特に保存安定性が高い、カラーフィルター用マゼンダ色着色組成物を提供する。
【解決手段】透明樹脂、その前駆体またはそれらの混合物からなる顔料担体と、キナクリドン系マゼンタ色顔料と、一般式(1)で表されるキナクリドン系顔料分散剤とを含有するカラーフィルタ用マゼンタ色着色組成物、およびカラー撮像管素子に装着されるカラーフィルタ。


(式中、Xは、SO2、COまたはCH2を表す。mおよびnは、それぞれ独立に1〜4の整数を表す。R1およびR2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のアルキル基、もしくはR1とR2とで一体となって、更に窒素、酸素またはイオウ原子を含んでもよいヘテロ環を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C−MOS、CCDなどに代表されるカラー撮像素子に装着されるカラーフィルタ、およびその製造に用いられるマゼンタ色着色組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CCDなどのカラー撮像素子は、その受光素子上に、マゼンタ、シアン、エローの加法混合の捕色のフィルタセグメントを具備するカラーフィルタを配設して、色分解するのが一般的である。
近年、CCDなどのカラー撮像素子に装着されるカラーフィルタには、撮像素子の小型化および高画素化による1画素当たりの面積の減少により、薄膜化させるために高濃度化が求められてきた。これを実施するために、一般的には、顔料含有量を増やした着色組成物を用いてカラーフィルタを製造するのだが、高濃度化につれ分散性が悪くなるため、着色組成物の保存不安定や特にチキソ由来により、塗布面内が均一の膜厚でなくなる。また、2種以上の顔料を混合しチキソ性を改善しても、分光特性を満足しない等の不具合がある。
【0003】
カラーフィルタの高濃度薄膜化、色分離性の向上、画素を形成する際の塗布均一性など、カラーフィルタに対する色特性の要求が高まっている状況下においては、従来から採用されている顔料の単純な高濃度化では、その対応が困難になってきている。
【特許文献1】特開平09-046716号公報
【特許文献2】特開2006-098684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、分散安定性に優れ、特に保存安定性が高い、カラー撮像管素子に装着されるカラーフィルタ用マゼンタ色着色組成物の提供を目的とする。
また、本発明は、膜厚が均一で濃度が高いマゼンタ色フィルタセグメントを具備する、カラー撮像管素子に装着されるカラーフィルタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のカラー撮像管素子に装着されるカラーフィルタ用マゼンタ色着色組成物は、透明樹脂、その前駆体またはそれらの混合物からなる顔料担体と、キナクリドン系マゼンタ色顔料と、一般式(1)で表されるキナクリドン系顔料分散剤とを含有することを特徴とする。
【化1】

(式中、Xは、SO2、COまたはCH2を表す。mおよびnは、それぞれ独立に1〜4の整数を表す。R1およびR2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のアルキル基、もしくはR1とR2とで一体となって、更に窒素、酸素またはイオウ原子を含んでもよいヘテロ環を表す。)
【0006】
本発明のマゼンタ色着色組成物において、キナクリドン系マゼンタ色顔料としては、C.I. Pigment Red 122、C.I. Pigment Red 192、C.I. Pigment Red 202、C.I. Pigment Red 207、C.I. Pigment Red 209、C.I. Pigment Violet19から選ばれる少なくとも1種の顔料を用いることが好ましい。
また、本発明のカラー撮像管素子に装着されるカラーフィルタは、少なくとも1つのマゼンタ色フィルタセグメント、少なくとも1つのシアン色フィルタセグメント、および少なくとも1つのエロー色フィルタセグメントを具備するカラーフィルタであって、前記マゼンタ色フィルタセグメントが、前記マゼンタ色着色組成物を用いて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のマゼンタ色着色組成物に含有されるキナクリドン系顔料分散剤は、分散安定性に優れ、該顔料分散剤を含有するマゼンタ色着色組成物は、特に塗布均一性、保存安定性等が高い。
そのため、本発明のマゼンタ色着色組成物を用いることにより、均一なマゼンタ色フィルタセグメントを具備する、カラー撮像管素子に装着されるカラーフィルタを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
まず、本発明のマゼンタ色着色組成物について説明する。
本発明のマゼンタ色着色組成物は、透明樹脂、その前駆体またはそれらの混合物からなる顔料担体と、キナクリドン系マゼンタ色顔料と、上記一般式(1)で表されるキナクリドン系顔料分散剤とを含有するものである。
キナクリドン系マゼンタ色顔料としては、一般に市販されているキナクリドン系のマゼンタ色有機顔料を単独でまたは2種類以上混合して用いることができ、染料、天然色素、無機顔料を併用することができる。キナクリドン系マゼンタ色顔料は、ソルトミリング、アシッドペースティング等により微細化したものであってもよい。
【0009】
キナクリドン系マゼンタ色顔料は、キナクリドン系以外のマゼンタ色顔料と比較して、熱、光、溶剤等に対する耐性に優れ、顔料の置かれる環境の違いによる色や構造変化がほぼない点や、顔料自体が安価で作製できる点、さらに顔料生産等の工程が安定している点の全てに置いて優れている。特に、カラーインデックスナンバーが、C.I. Pigment Red 122、C.I. Pigment Red 192、C.I. Pigment Red 202、C.I. Pigment Red 207、C.I. Pigment Red 209、C.I. Pigment Violet 19の顔料は、顔料を透過する光の波長の範囲と顔料が吸収する光の波長の範囲が、マゼンタ色、シアン色、エロー色のフィルタセグメントからなるカラー撮像素子に装着されるカラーフィルタとして最適であり、これらのうち少なくとも1種の顔料を使用することが好ましい。
【0010】
上記一般式(1)で表されるキナクリドン系顔料分散剤は、キナクリドン系顔料に特定の塩基性置換基が導入された化合物であり、該顔料分散剤を用いることにより、キナクリドン系マゼンタ色顔料を顔料担体に良好に分散できるようになり、塗布均一性、保存安定性等に優れたマゼンタ色着色組成物を作製することが可能となる。その理由は大きく2つあり、1つめは上記一般式(1)で表されるキナクリドン系顔料分散剤はキナクリドン系マゼンタ色顔料との相性が良い点であり、2つめは上記一般式(1)で表されるキナクリドン系顔料分散剤は、キナクリドン系マゼンタ色顔料を顔料担体に分散する際に顔料分散剤同士で凝集することがない点である。
【0011】
1つめのキナクリドン系マゼンタ色顔料との相性が良い点について詳細に説明すると、本発明に用いられる顔料と顔料分散剤の母体は、いずれもキナクリドンで同じであり、顔料と顔料分散剤の母体が同じ場合には、顔料分散剤が顔料に効率的に吸着して、分散安定性に優れた分散体を作製できるようになる。顔料と顔料分散剤の母体が同じでない場合には、顔料分散剤が顔料に効率的に吸着せず、顔料と顔料分散剤が個々に存在してしまい、分散安定性に優れた分散体にならない。
2つめの顔料を顔料担体に分散する際に顔料分散剤同士で凝集することがない点について詳細に説明すると、顔料分散剤が有する置換基の種類によって顔料分散剤同士が凝集する場合があるが、上記一般式(1)で表されるキナクリドン系顔料分散剤は、その構造中に含まれる置換基が顔料分散剤同士の凝集を引き起こさず、優れた分散剤である。
【0012】
本発明のマゼンタ色着色組成物において、キナクリドン系マゼンタ色顔料と一般式(1)で表されるキナクリドン系顔料分散剤とは、通常重量比で50:50〜99:1、好ましくは60:40〜95:5、より好ましくは70:30〜95:5、さらに好ましくは85:15〜95:5の割合で含有される。一般式(1)で表されるキナクリドン系顔料分散剤の量が上記範囲よりも少なければ、顔料の分散安定化効果が充分に発揮されず、逆に上記範囲よりも多ければ、フィルタセグメントの色相が好ましくないほど変化する可能性が生じ、また製造コスト面でも問題となる。
また、本発明のマゼンタ色着色組成物において、キナクリドン系マゼンタ色顔料と一般式(1)で表されるキナクリドン系顔料分散剤とは、着色組成物の不揮発分重量を基準(100重量%)として、合計して7〜10重量%、好ましくは8〜9重量%の量で用いることができる。
【0013】
本発明のマゼンタ色着色組成物は、さらに樹脂型分散剤を含有することが好ましい。樹脂型分散剤は、顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、顔料担体と相溶性のある部位とを有し、顔料に吸着して顔料の顔料担体への分散を安定化する働きをするものである。樹脂型分散剤としては、ポリウレタン、ポリアクリレートなどのポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ低級アルキレンイミンと遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩等が用いられる。また、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物、燐酸エステル等も用いられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。樹脂分散剤は、着色組成物の不揮発分重量を基準(100重量%)として、1〜30重量%、好ましくは5〜15重量%の量で用いることができる。
【0014】
顔料担体は、上述したように、透明樹脂、その前駆体またはそれらの混合物により構成される。透明樹脂は、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の樹脂である。透明樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および感光性樹脂が含まれ、その前駆体には、放射線照射により硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーが含まれ、これらを単独でまたは2種以上混合して用いることができる。顔料担体は、着色組成物の不揮発分重量を基準(100重量%)として、20〜70重量%、好ましくは30〜55重量%の量で用いることができる。
【0015】
熱可塑性樹脂としては、例えば、 ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0016】
感光性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する高分子に、イソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の光架橋性基を該高分子に導入した樹脂が用いられる。また、スチレン−無水マレイン酸共重合物やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも用いられる。
【0017】
モノマーおよびオリゴマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0018】
本発明のマゼンタ色着色組成物には、該組成物を紫外線照射により硬化するときには、光重合開始剤等が添加される。
光重合開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤等が用いられる。光重合開始剤は、着色組成物の不揮発分重量を基準(100重量%)として、5〜30重量%、好ましくは5〜15重量%の量で用いることができる。
【0019】
上記光重合開始剤は、単独あるいは2種以上混合して用いるが、増感剤として、α−アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等の化合物を併用することもできる。増感剤は、光重合開始剤の重量を基準(100重量%)として、0.1〜30重量%の量で用いることができる。
【0020】
本発明のマゼンタ色着色組成物は、顔料担体溶液中にキナクリドン系マゼンタ色顔料を分散させる方法や、水または有機溶媒中にキナクリドン系マゼンタ色顔料を分散して顔料分散液を作製したのち顔料担体溶液と混合する方法などにより製造される。顔料の分散方法には特に制限はないが、ビーズミル、サンドミル、ボールミル、3本ロールミル、2本ロールミル等を用いる方法が好ましい。なお、マゼンタ色顔料と一般式(1)で表されるキナクリドン系顔料分散剤は、別々に顔料担体溶液に分散したのち混合することもできるが、マゼンタ色顔料の分散性を向上するためには、マゼンタ色顔料を分散する際に一般式(1)で表されるキナクリドン系顔料分散剤を添加することが好ましい。
マゼンタ色顔料を顔料担体中に分散する際には、適宜、界面活性剤、他の色素誘導体等の分散助剤を用いることができる。
【0021】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
他の色素誘導体とは、有機色素に置換基を導入した化合物である。有機色素には、一般に色素とは呼ばれていないナフタレン系、アントラキノン系等の淡黄色の芳香族多環化合物も含まれる。色素誘導体としては、特開昭63−305173号公報、特公昭57−15620号公報、特公昭59−40172号公報、特公昭63−17102号公報、特公平5−9469号公報等に記載されているものを使用できる。特に、塩基性基を有する色素誘導体および塩基性基を有するトリアジン誘導体は、顔料の分散効果が大きいため、好適に用いられる。
色素誘導体が有する塩基性基として具体的には、下記一般式(2)、(3)、(4)および(5)で表される置換基が挙げられる。
一般式(2)
【0023】
【化2】

一般式(3)
【0024】
【化3】

一般式(4)
【0025】
【化4】

一般式(5)
【0026】
【化5】

【0027】
〔式中、Xは、SO2、CO、CH2NHCOCH2、CH2または直接結合を表す。
nは、1〜10の整数を表す。
1、R2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜36のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜36のアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、またはR1 とR2 とで一体となって更に窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表す。
3は、置換されていてもよい炭素数1〜36のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜36のアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。
4、R5、R6、R7は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜36のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜36のアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。
【0028】
Yは、−NR8−Z−NR9−または直接結合を表す。
8、R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜36のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜36のアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表す。
Zは、置換されていてもよい炭素数1〜36のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数2〜36のアルケニレン基、または置換されていてもよいフェニレン基を表す。
Pは、一般式(6)で表される置換基または一般式(7)で表される置換基を表す。
Qは、水酸基、アルコキシル基、一般式(6)で表される置換基または一般式(7)で表される置換基を表す。なお、式(6)および式(7)において、R1〜R7およびnは、式(2)〜式(4)におけるR1〜R7およびnと同じである。
一般式(6)
【0029】
【化6】

一般式(7)
【0030】
【化7】

【0031】
塩基性基を有する色素誘導体を構成する有機色素としては、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、ジオキサジン系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素が挙げられる。また、先に例示した有機顔料でもよい。
【0032】
塩基性基を有する色素誘導体は、種々の合成経路で合成することができる。例えば、有機色素に、下記式(8)〜(11)で表される置換基を導入した後、該置換基と反応して一般式(2)〜(5)で表される置換基を形成するアミン成分、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N−メチルピペラジン、ジエチルアミンまたは4−[4−ヒドロキシ−6−[3−(ジブチルアミノ)プロピルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ]アニリン等を反応させることによって得られる。
【0033】
有機色素がアゾ系色素である場合は、一般式(2)〜(5)で表される置換基をあらかじめジアゾ成分またはカップリング成分に導入し、その後カップリング反応を行うことによって塩基性基を有するアゾ系顔料誘導体を製造することもできる。
式(8) −SO2Cl
式(9) −COCl
式(10)−CH2NHCOCH2Cl
式(11)−CH2Cl
【0034】
一般式(2)〜(5)で表される置換基を形成するために使用されるアミン成分としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N,N−エチルイソプロピルアミン、N,N−エチルプロピルアミン、N,N−メチルブチルアミン、N,N−メチルイソブチルアミン、N,N−ブチルエチルアミン、N,N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N,N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジーsec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N,N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、ジオクチルアミン、N,N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N,N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N,N−メチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチルーラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチルーヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニペコチン酸メチル、イソニペコチン酸エチル、2−ピペリジンエタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン等が挙げられる。
【0035】
他の色素誘導体としては、表1〜9に示すものを用いることができるが、これらに限定されるわけではない。色素誘導体は、単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

【0040】
【表5】

【0041】
【表6】

【0042】
【表7】

【0043】
【表8】

【0044】
マゼンタ色着色組成物には、ガラス基板等の透明基板上に乾燥膜厚が1〜2.5μmとなるように塗布してフィルタセグメントを形成することを容易にするために、溶剤を含有させることができる。溶剤としては、例えばシクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−n−アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられ、これらを単独でもしくは混合して用いる。
【0045】
マゼンタ色着色組成物は、グラビアオフセット用印刷インキ、水無しオフセット用印刷インキ、シルクスクリーン印刷用インキ、溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジスト材の形態で調製することができる。着色レジスト材は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂または感光性樹脂とモノマー、光重合開始剤を含有する組成物中に、キナクリドン系マゼンタ色顔料と、一般式(1)で表されるキナクリドン系顔料分散剤とを分散させたものである。
マゼンタ色着色組成物は、遠心分離、焼結フィルタ、メンブレンフィルタ等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、さらに好ましくは0.5μm以上の粒子および混入した塵の除去を行うことが好ましい。
【0046】
マゼンタ色着色組成物の分散安定性は、チキソインデックスを測定することにより評価することができる。チキソインデックスは、異なるずり速度でマゼンタ色着色組成物の粘度を測定し、低ずり速度の粘度結果を、高ずり速度の粘度結果で割った数値である。チキソインデックスの値が1であることが理想であり、顔料の凝集の程度がないと推定される。顔料は、できるだけ凝集していないことが好ましいため、チキソインデックスの値は1に近いほど好ましい。したがって、マゼンタ色着色組成物のチキソインデックスは、1.0以上1.4以下であることが好ましく、1.0以上1.2以下であることがより好ましい。
【0047】
次に、カラーフィルタについて説明する。
本発明のカラー撮像管素子に装着されるカラーフィルタは、透明基板または反射基板上に、Y(エロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の少なくとも3色のフィルタセグメントが形成されたものである。マゼンタ色フィルタセグメントは、印刷法またはフォトリソグラフィー法により、本発明のマゼンタ色着色組成物を用いて形成される。また、シアン色フィルタセグメントおよびエロー色フィルタセグメントは、透明樹脂、その前駆体またはそれらの混合物からなる顔料担体と、顔料と、必要に応じて顔料分散剤、光重合開始剤、溶剤等とを含有する公知の着色組成物を用いて、印刷法またはフォトリソグラフィー法により形成される。
【0048】
イエロー色フィルタセグメントを形成する着色組成物には、C.I. Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、139、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、198、213、214等の黄色顔料を用いることができる。
シアン色フィルタセグメントを形成する着色組成物には、C.I. Pigment Blue 15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、80等の顔料を用いることができる。
【0049】
透明基板としては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミナケイ酸塩ガラス、表面をシリカコートしたソーダライムガラスなどのガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂板が用いられる。
反射基板としては、シリコンや、前記の透明基板上にアルミニウム、銀、銀/銅/パラジウム合金薄膜などを形成したものが用いられる。
【0050】
印刷法による各色フィルタセグメントの形成は、上記各種の印刷インキとして調製した着色組成物の印刷と乾燥を繰り返すだけでパターン化ができるため、カラーフィルタの製造法としては、低コストで量産性に優れている。さらに、印刷技術の発展により高い寸法精度および平滑度を有する微細パターンの印刷を行うことができる。印刷を行うためには、印刷の版上にて、あるいはブランケット上にてインキが乾燥、固化しないような組成とすることが好ましい。また、印刷機上でのインキの流動性の制御も重要であり、分散剤や体質顔料によるインキ粘度の調整を行うこともできる。
【0051】
フォトリソグラフィー法により各色フィルタセグメントを形成する場合は、上記溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジスト材として調製した着色組成物を、透明基板上に、スプレーコートやスピンコート、スリットコート、ロールコート、ダイコート等の塗布方法により、乾燥膜厚が0.2〜5μmとなるように塗布する。必要により乾燥された膜には、この膜と接触あるいは非接触状態で設けられた所定のパターンを有するマスクを通して紫外線露光を行う。その後、溶剤またはアルカリ現像液に浸漬するか、もしくはスプレーなどにより現像液を噴霧して未硬化部を除去し所望のパターンを形成したのち、同様の操作を他色について繰り返してカラーフィルタを製造することができる。さらに、着色レジスト材の重合を促進するため、必要に応じて加熱を施すこともできる。フォトリソグラフィー法によれば、上記印刷法より精度の高いカラーフィルタが製造できる。
【0052】
現像に際しては、アルカリ現像液として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用され、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。
なお、紫外線露光感度を上げるために、上記着色レジスト材を塗布乾燥後、水溶性あるいはアルカリ可溶性樹脂、例えばポリビニルアルコールや水溶性アクリル樹脂等を塗布乾燥し酸素による重合阻害を防止する膜を形成した後、紫外線露光を行うこともできる。
【0053】
本発明のカラーフィルタは、上記方法の他に電着法、転写法などにより製造することができるが、本発明の着色組成物は、いずれの方法にも用いることができる。なお、電着法は、透明基板上に形成した透明導電膜を利用して、コロイド粒子の電気泳動により各色フィルタセグメントを透明導電膜の上に電着形成することでカラーフィルタを製造する方法である。
また、転写法は剥離性の転写ベースシートの表面に、あらかじめカラーフィルタ層を形成しておき、このカラーフィルタ層を所望の透明基板に転写させる方法である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例における「部」は、「重量部」を表す。まず、実施例および比較例で用いるキナクリドン系顔料分散剤およびアクリル樹脂溶液の調製法について記載する。
(キナクリドン系顔料分散剤Aの調製)
100部のクロルスルホン酸に、10部の無置換キナクリドンを10〜20℃で加え、40〜50℃で3時間攪拌して1000部の氷水に注入し、ろ過、水洗してキナクリドンのモノスルホン化物の水ケーキを得た。このクロルスルホン化物の水ケーキを300部の氷水に加えてリスラリーし、20部のN,N−ジエチルアミノプロプルアミンを加えて10℃以下で4時間攪拌し、ろ過、水洗した。ついでこの水ケーキを300部の0.5%炭酸ナトリウム水溶液に加え、1時間攪拌してろ過し、中性まで水洗し乾燥して16部の下記一般式(12)の構造を有するキナクリドン系顔料分散剤Aを得た。
【化8】

【0055】
(キナクリドン系顔料分散剤Bの調製)
キナクリドンの2,9−ジカルボン酸メチルエステルを濃硫酸中で加水分解して得たキナクリドン−2,9−ジカルボン酸10部を50部のクロルスルホン酸に加え、10〜20℃で3時間攪拌して1000部の氷水に注入し、ろ過、水洗してジカルボン酸クロライドの水ケーキを得た。この水ケーキを200部の水と100部のジオキサンからなる混合溶媒に加えてリスラリーし、20部のN,N−ジエチルアミノエチルアミンと5部の炭酸ナトリウムを加えて10〜20℃で3時間攪拌、ついで70〜80℃で1時間攪拌し、ろ過、水洗、乾燥して、18部の下記一般式(13)の構造を有するキナクリドン系顔料分散剤Bを得た。
【化9】

【0056】
(アクリル樹脂溶液の調製)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けて、シクロヘキサノン70.0部を仕込み、80℃に昇温し反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりn−ブチルメタクリレート13.3部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.6部、メタクリル酸4.3部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亜合成株式会社製「アロニックスM110」)7.4部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、固形分30%、重量平均分子量26000のアクリル樹脂の溶液を得た。
室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃で20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20%になるようにシクロヘキサノンを添加してアクリル樹脂溶液を調製した。
【0057】
[実施例1]
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで4時間分散した後、5μmのフィルタで濾過し、顔料分散体を作製した。
キナクリドン系マゼンタ色顔料 C.I. Pigment Red 122
(Clariant社製「ホスタパームピンクE」) 9.0部
キナクリドン系顔料分散剤A 1.0部
アクリル樹脂溶液 50.0部
シクロヘキサノン 40.0部
【0058】
ついで、得られた顔料分散体を含む下記に示す組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して、アルカリ現像型レジスト材を得た。
上記顔料分散体 60.0部
光重合開始剤 1.2部
(チバスペシャルティケミカルズ社製「イルガキュア907」)
トリメチロールプロパントリアクリレート 4.2部
(新中村化学株式会社製「NKエステルATMPT」)
増感剤(保土ヶ谷化学株式会社製「EAB−F」) 0.4部
アクリル樹脂溶液 11.0部
シクロヘキサノン 23.2部
【0059】
[実施例2]
キナクリドン系顔料分散剤Aをキナクリドン系顔料分散剤Bに変えた以外は、実施例1と同様にしてアルカリ現像型レジスト材を得た。
[比較例1]
キナクリドン系顔料分散剤Aを、表6に示すキナクリドン系色素誘導体A−40に変えた以外は、実施例1と同様にしてアルカリ現像型レジスト材を得た。
[比較例2]
キナクリドン系マゼンタ色顔料を、キサンテン系マゼンタ色顔料C.I. Pigment Red 81:1(BASF社製「Fanal Pink D 4830」)に変えた以外は、実施例1と同様にしてアルカリ現像型レジスト材を得た。
【0060】
得られたアルカリ現像型レジスト材の6rpmおよび60rpmにおける粘度、およびチキソインデックスを、E型粘度計(東機産業社製「R110」)を用いて測定した。
また、得られたアルカリ現像型レジスト材を40℃で7日静置前後の60rpmにおける粘度を、E型粘度計(東機産業社製「R110」)を用いて測定した。40℃で7日静置前後の粘度の変化量が1割未満を◎、1割以上2割未満を○、2割以上5割未満を△、5割以上を×として、保存安定性を評価した。
【0061】
さらに、得られたアルカリ現像型レジスト材を板厚0.7mmの360mm×465mmサイズの基板に平均膜厚が1.8μmになるようにスピンコートし、70℃で30分乾燥した後、中心部の膜厚(Aとする)と対角線上で中心から200mm部分の膜厚4点の平均値(Bとする)を測定し、下式により塗布均一性を評価した。
(A−B)×100/{(A+B)/2} [%]
上記の%が1%未満を◎、1%以上2%未満を○、2%以上5%未満を△、5%以上を×として、塗布均一性を評価した。
評価結果を表10に示す。
【0062】
【表10】

表10の結果より、実施例1、2で得られたレジスト材は、比較例1、2で得られたレジスト材に比べ、保存安定性、塗布均一性、すなわち分散安定性が非常に優れていた。
さらに、実施例1のレジスト材は、チキソインデックスの結果から、キナクリドン系分散剤がより凝集を引き起こし難い置換基を有していたと考えられ、実施例2よりもさらに優れていたといえる。
ついで、マゼンタ色フィルタセグメント、シアン色フィルタセグメント、およびエロー色フィルタセグメントを具備するカラーフィルタを作成するため、エロー色レジスト材およびシアン色レジスト材を下記の方法で作製した。
【0063】
(エロー色レジスト材)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径1mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで3時間分散した後、5μmのフィルタで濾過しエロー色顔料分散体を作製した。
得られたエロー色顔料分散体を用い、実施例1のアルカリ現像型レジスト材と同様にしてアルカリ現像型エロー色レジスト材を得た。
エロー色顔料C.I. Pigment Yellow 150 9.0部
(ランクセス社製「エローピグメント4GN−GT」)
表5に示す色素誘導体A−33 1.0部
アクリル樹脂溶液 50.0部
シクロヘキサノン 40.0部
【0064】
(シアン色レジスト材)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径1mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで3時間分散した後、5μmのフィルタで濾過しシアン色分散体を作製した。
実施例1のアルカリ現像型レジスト材と同様にしてアルカリ現像型シアン色レジスト材を得た。
シアン色顔料C.I. Pigment Blue 15:3 9.0部
(東洋インキ製造株式会社製「リオノールブルー FG7531」)
表8に示す色素誘導体A−48 1.0部
アクリル樹脂溶液 50.0部
シクロヘキサノン 40.0部
【0065】
ガラス基板に、スピンコートにより、C光源でx=0.348、y=0.196の色度になるように実施例1または比較例1で得られたマゼンタ色レジスト材を塗布した。乾燥後、露光機にてストライプ状のパターン露光をし、アルカリ現像液にて90秒間現像して、ストライプ形状のマゼンタ色フィルタセグメントを形成した。なお、アルカリ現像液としては、炭酸ナトリウム1.5重量% 炭酸水素ナトリウム0.5重量% 陰イオン系界面活性剤(花王社製「ペリレックスNBL」)8.0重量%および水90重量%からなるものを用いた。
次に、エロー色レジスト材を、C光源でx=0.388、y=0.459の色度になるような膜厚で塗布した。乾燥後、露光機にてマゼンタ色フィルタセグメントと隣接したストライプ状のパターン露光をし、ストライプ形状のエロー色フィルタセグメントを形成した。
【0066】
さらに、C光源でx=0.172、y=0.246の色度になるような膜厚となるように塗布し、マゼンタ色、エロー色のフィルタセグメントと隣接したストライプ形状のシアン色フィルタセグメントを形成した。
各色のフィルタセグメントの形状は良好であり、解像度も良好であった。最後に、得られたカラーフィルタをオーブン中で230℃にて30分加熱して残存する重合可能な官能基を完全に反応させ、透明基板上にマゼンタ色、エロー色、シアン色の3色のストライプ形状のフィルタセグメントを具備するカラーフィルタが得られた。
【0067】
実施例1で得られたマゼンタ色レジスト材を用いて作成されたカラーフィルタは、マゼンタ色フィルタセグメントの面内の色度バラつきがなく、カラー撮像素子用として優れていた。一方、比較例で得られたマゼンタ色レジスト材を用いて作成されたカラーフィルタは、マゼンタ色フィルタセグメントの面内の色度バラつきにより撮像感度が一定ではなくなり、不良となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂、その前駆体またはそれらの混合物からなる顔料担体と、キナクリドン系マゼンタ色顔料と、一般式(1)で表されるキナクリドン系顔料分散剤とを含有することを特徴とするカラー撮像管素子に装着されるカラーフィルタ用マゼンタ色着色組成物。
【化1】

(式中、Xは、SO2、COまたはCH2を表す。mおよびnは、それぞれ独立に1〜4の整数を表す。R1およびR2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のアルキル基、もしくはR1とR2とで一体となって、更に窒素、酸素またはイオウ原子を含んでもよいヘテロ環を表す。)
【請求項2】
キナクリドン系マゼンタ色顔料として、C.I. Pigment Red 122、C.I. Pigment Red 192、C.I. Pigment Red 202、C.I. Pigment Red 207、C.I. Pigment Red 209、C.I. Pigment Violet19から選ばれる少なくとも1種の顔料を含有することを特徴とする請求項1記載のカラー撮像管素子に装着されるカラーフィルタ用マゼンタ色着色組成物。
【請求項3】
少なくとも1つのマゼンタ色フィルタセグメント、少なくとも1つのシアン色フィルタセグメント、および少なくとも1つのエロー色フィルタセグメントを具備するカラーフィルタであって、前記マゼンタ色フィルタセグメントが、請求項1または2記載のマゼンタ色着色組成物を用いて形成されていることを特徴とするカラー撮像管素子に装着されるカラーフィルタ。

【公開番号】特開2008−38061(P2008−38061A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216341(P2006−216341)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】