説明

カラーフィルタ製造工程における現像排水の処理方法

【課題】 カラーフィルタ現像排水を良好な凝集ろ過性及び運転安定性で処理することのできるカラーフィルタ現像排水の処理方法を提供する。
【解決手段】 カラーフィルタ製造工程における現像排水の処理方法であって、該現像排水を50℃以上に加温する加温工程と、該現像排水のpHを7以下に調整するpH調整工程と、を有し、該現像排水を加温及びpH調整した状態で固液分離することを特徴とする、現像排水の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ製造工程における現像排水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラーフィルタの製造において、顔料を分散したレジストのフォトリソグラフィーによるパターン形成法、すなわちカラーレジスト法が知られている。
そして、カラーフィルタ製造工程におけるカラーレジストの現像において、顔料、アルカリ可溶性樹脂(アルカリ可溶性ポリマー)、光重合成分(モノマー)及び光重合開始剤、分散剤、溶剤等を含むカラーレジスト液が一般的に用いられている。
例えば、ブラックマトリックス(BM)を基板上に形成後、このカラーレジスト液(例えば赤色系)を、BM形成した基板上に塗布し膜を形成する工程;フォトマスクを介してパターン露光してUV硬化する露光工程;現像液にてカラーレジストの不要な部分を除去した後、ベークにて硬化させる現像・ベーク工程という膜形成・露光・現像・ベーク工程を行い、更に他の色系のカラーレジスト液を用いてこの工程を繰り返し行い、最終的にRGB3色を形成し、スパッタリング法にて透明導電(ITO)膜を形成して、カラーフィルタを作製するのが一般的である(例えば、非特許文献1参照)。
なお、BMにはガラス基板にクロム蒸着をおこなってエッチングによりパターン形成する方法の他、カラーレジストと同様に黒色顔料を用いたレジスト液でのフォトリソグラフィーによるBMパターンを形成する方法がある。更に、色分解フィルタにはRGB3色の他、色域拡大での高性能化を図るRGBY4色のもの等も実用化されており、CMY系等の色分解フィルタもある。
いずれの場合であっても、これらの現像工程のときに、未露光部分のカラーレジスト(未硬化のカラーレジスト)が、高濃度のノニオン性界面活性剤とアルカリ成分が主体と成る現像液によって、洗い流される。すなわち、このときに未硬化のカラーレジストと現像液を主として含むカラーフィルタ現像排水が発生することとなる。
【0003】
ところで、従来のカラーフィルタ現像排水の処理方法としては、例えば、凝集沈殿法や活性炭法が挙げられる。
また、フォトリソグラフィー法における基板の洗浄後の、テトラアルキルアンモニウム及び少量のフォトレジストを含む洗浄排水をpH5以上かつ9未満の条件下で、逆浸透膜装置に加圧供給する方法が提案されている(特許文献4)。
また、フォトレジスト含有排水のpHを酸性に調整してから、フォトレジストの凝集沈殿に適するようにpHをアルカリ性次いで中性に調整してフォトレジストを凝集沈殿させ、膜処理を行う方法が提案されている(特許文献5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−128518号公報
【特許文献2】特開2010−102346号公報
【特許文献3】特開2008−246372号公報
【特許文献4】特開2001−276824号公報
【特許文献5】特開2006−255668号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】最先端カラーフィルターのプロセス技術とケミカルス,監修:市村國宏,株式会社シーエムシー出版,2006年4月1日第二版発行,p1〜300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カラーフィルタの現像排水中には、カラーレジスト由来の顔料や種々の化合物、及び現像液由来の界面活性剤が多く含まれている。そのため、この現像排水中には顔料による着色(色度、濁度、見た目)や界面活性剤及びカラーレジストに由来する有機物が非常に高い濃度で存在する。
このカラーフィルタの現像排水の放流や回収を目的に、これらの濃度を低減するためには、凝集沈殿処理による着色成分や活性炭処理による有機物除去が行われる。
しかしながら、顔料の分散性が非常に高いため、凝集沈殿処理が困難である(後述の実施例〔表6〕参照)。また、界面活性剤の濃度が高いため活性炭の消費量が激しい。これらにより、経済性が圧迫され運転安定性も悪いという課題がある。
また、逆浸透膜やNF膜等の膜ろ過法では上記の顔料処理や界面活性剤処理が不十分な状態では、膜の閉塞が生じるため、安定な運転の実現はできない。
【0007】
よって、本発明は、カラーフィルタ現像排水から良好にカラーレジストと界面活性剤を分離除去し、運転の安定性と経済性を改善可能な処理を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭利検討した結果、カラーフィルタ現像排水を特定の温度以上に加温した状態でかつpH7以下に調整した状態で固液分離すれば、分離後の処理水中のカラーレジストを低減できるのみならず、処理前のカラーフィルタ現像排水に含まれていた界面活性剤やアルカリ可溶性ポリマーの低減もできることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、カラーフィルタ製造工程における現像排水の処理方法であって、該現像排水を50℃以上に加温する加温工程と、該現像排水のpHを7以下に調整するpH調整工程と、を有し、該現像排水を加温及びpH調整した状態で固液分離することを特徴とする、現像排水の処理方法を提供するものである。
【0010】
前記加温工程において前記現像排水を60〜100℃に加温すること及び/又は前記pH調整工程において前記現像排水のpHを2〜6の酸性にするのが好適である。
凝集剤を併用するのが好適である。
前記固液分離後の加温処理水の熱を回収して前記加温工程における現像排水の加温に再利用するのが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カラーフィルタ現像排水を良好な凝集ろ過性及び運転安定性で処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のカラーフィルタ現像排水の処理方法を示すフローチャート1及び2である。
【図2】本発明のカラーフィルタ現像排水の処理方法を示すフローチャート3及び4である。
【図3】本発明のカラーフィルタ現像排水の処理方法を示すフローチャート5及び6である。
【図4】本発明のカラーフィルタ現像排水の処理方法を示すフローチャート7である。
【図5】カラーフィルタ現像排水をpH調整及び加温状態にしたものである。
【図6】pH調整に対するカラーフィルタ現像排水の状態を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0014】
本発明のカラーフィルタ製造工程における現像排水(以下、「カラーフィルタ現像排水」又は「現像排水」という)の処理方法は、カラーフィルタ現像排水を50℃以上に加温する加温工程と、カラーフィルタ現像排水のpHを7以下に調整するpH調整工程と、を有し、加温及びpH調整した状態で固液分離するものである。これによって、カラーレジストや界面活性剤等が低減した処理水を得ることが可能となる。
このとき、前記加温工程と前記pH調整工程(以下、「酸性化処理工程」ともいう)との順序は、特に限定されず、何れが先であってもよく、また同時であってもよい。例えば、加温工程次いでpH調整工程;pH調整工程次いで加温工程;pH調整及び加温工程等が挙げられる。なお、これらの工程以外に適宜他の工程が含まれていてもよく、またこれらの工程の間に他の工程が含まれていてもよい。
【0015】
前記加温工程は、カラーフィルタ現像排水を50℃以上に加熱する。
後記〔実施例〕に示すように、50℃未満の場合には、酸処理を行っても、カラーレジストと界面活性剤(特に、ノニオン性界面活性剤)とが共沈殿せず、これらを十分に低減することができない。これに対し、50℃以上であれば、これらの共沈殿が可能となるので好適である。
この現像排水の加熱温度は、50〜100℃とするのが好ましく、60〜99℃とするのがより好ましく、70〜95℃とするのが更に好ましく、特に80〜85℃とするのが、経済性と性能安定化の点で、更に好ましい。
このときの加温時間は、特に限定されないが、1分程度以上とするのが好ましいが、排水の性状によっては数秒(3〜10秒)程度の配管内反応でもよい。そして、現像排水を加温した後は、固液分離するまで加温状態を維持するのが、凝集ろ過性及び運転安定性を高める上で、好適である。
【0016】
前記加熱工程における加熱手段としては、特に限定されず、例えば、熱交換器、加熱器等の加熱装置を適宜単独で又は組み合わせて用いて行えばよい。
このときの加熱方法は、特に限定されず、現像排水を、直接的に及び/又は間接的に加熱すればよい。例えば、現像排水に、直接スチーム(飽和水蒸気、過熱蒸気等)を混入させること;現像排水内に直接ヒーターを配置すること;現像排水を熱交換器に通過させること;現像排水が通過する配管内に直接スチームを混入させること;現像排水が通過する配管の外部を加温すること;現像排水を電磁誘導加熱すること等が挙げられる。なお、現像排水から沈殿物が生じやすいように適宜撹拌してもよい。
【0017】
前記現像排水を加温する際に、固液分離後の処理水からの熱を回収し再利用するのが、低コスト化を図ることが可能となり、更に処理水の冷却も同時にできるので好適である。そして、熱交換後の加熱された現像排水を、必要に応じて、更に加熱して上述の特定の加温温度にしてもよい。この熱交換工程の一例として、加熱状態の処理水を熱交換系に通過させ、この処理水から熱を回収し、処理水を冷却すると共に回収した熱を現像排水の加熱に再利用すること等が挙げられる。
【0018】
なお、加温処理した後固液分離工程に至るまでの現像排水の温度は、上述の特定の加温温度の範囲内とするのが、好適である。このときの加温温度は、性能安定性の面から、75〜90℃とするのが好適である。
【0019】
前記pH調整工程(酸性化処理工程)は、カラーフィルタ現像排水を酸性方向に調整して、pH7以下に調整する。pHが8以上のアルカリ領域の場合には、前述の加温工程を行っても、カラーレジストと界面活性剤(特にノニオン性界面活性剤)とが共沈殿せず、これらを十分に低減することができない。このpHの範囲は、酸性領域、より1〜7未満とするのが好ましく、1〜6とするのが更に好ましく、2〜6とするのがより更に好ましく、特に4〜5.5とするのが更に好ましい。
この酸性化処理に使用する酸は、特に限定されず、硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、リン酸等の有機酸から選ばれる1種又は2種以上のものであればよい。なお、適宜水酸化ナトリウム等のアルカリにて上述の範囲内になるようにpHを調整してもよい。
このときのpH調整の処理時間は、特に限定されないが、性能安定化のためには3分程度以上とするのが好ましく、現像排水を酸性化した後は、固液分離するまで酸性状態を維持するのが、凝集ろ過性及び運転安定性を高める上で、好適である。
【0020】
この酸性化処理手段としては、特に限定されず、バッチ式や連続式等が挙げられる。また、現像排水と酸とが反応し易いように混合するため、例えば、現像排水の通過する配管に酸が混入するように配管を接続して設けること;現像排水と酸とが混合しやすいように撹拌装置を設けること;プールした現像排水に酸を添加し撹拌する装置を有する反応系を設けること;pHが安定化するように二段階以上のpH調整を行う等が挙げられる。
【0021】
なお、酸性化処理した後固液分離工程に至るまでの現像排水のpHは、上述の如き特定のpH範囲(pH7以下)内にするのが好適である。このときのpHは、薬剤添加量の軽減の点から、4〜5.5とするのが好ましい。
【0022】
前記固液分離工程において現像排水から濃縮水及び処理水に固液分離する際には、加温及びpH調整した状態で行う。この状態とは、上述の如き特定の温度範囲内かつ特定のpH範囲内に調整していることをいう。
ここで、濃縮水とは、カラーレジスト及び界面活性剤の沈殿物等が濃縮された水をいい、処理水とは、これら不要物質が低減した水をいう。
なお、固液分離手段は、特に限定されず、膜分離、ろ過器、遠心分離、加圧浮上分離、沈降分離等が挙げられる。
【0023】
また、固液分離工程にて、pH及び温度以外に水質基準を満たし、カラーレジスト等が低減された処理水は、pH及び温度調整後、放流することが可能となる。水質基準を満たさない場合或いは更に有害物質等を除去する場合には、適宜更に他の処理工程を行えばよい。
例えば、放流前の処理水が加温状態にある場合には、冷却するのが好適である。冷却手段としては、例えば、放冷でもよいが、加温工程で熱する現像排液と熱交換ができるように熱を回収し再利用する、熱交換系を設けて冷却するのが好適である。
また、放流前の処理水が酸性状態にある場合には、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ金属塩や水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属塩等のアルカリにて水質基準に満たすpH領域、例えば中性付近に調整するのが好適である。
【0024】
本発明のカラーフィルタ現像排水の処理の最終目的に応じて、紫外線照射、オゾン処理、生物処理(例えば活性汚泥法)、凝集沈殿又は浮上処理、逆浸透膜処理、活性炭処理、イオン交換処理、電気脱塩処理、吸着剤処理等を併用してもよい。
【0025】
更に、本発明の現像排水の処理工程において、上述の現像排水に凝集剤を添加するのが好適である。例えば、凝集剤や凝結剤等を任意成分として併用することが挙げられる。更に、必要に応じて、殺菌剤、消臭剤、消泡剤、防食剤等を添加してもよい。
【0026】
前記凝集剤を併用することにより、本発明の効果が増大するので好適である。
前記凝集剤を添加する時期は、上述の工程の何れでもよく、工程と工程との間や、工程の前後でもよい。一例として、前記加温工程や前記pH調整工程の前でも後でもよく、調整中でもよい。
【0027】
前記凝集剤は、特に限定されず、無機及び/又は有機の凝集剤の何れを使用してもよい。
前記無機凝集剤としては、例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム塩;塩化第二鉄、硫酸第一鉄等の鉄塩等が挙げられる。これらは単独で又は組み合わせて使用してもよい。
また、無機凝集剤の添加量にも特に制限はなく、前記現像排水の性状に応じて調整すればよいが、前記現像排水に対して概ねアルミニウム又は鉄換算で、1〜500mg/Lが好適である。
また、前記有機凝集剤としては、高分子有機凝集剤が好適であり、高分子有機凝集剤を用いることにより凝集ブロックが大きくなるため処理効率が高くなる場合が多くなるので望ましい。この高分子有機凝集剤の種類には、特に限定はなく、水処理で通常使用されるものであればよい。この高分子有機凝集剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミドの共重合物、及びそれらのアルカリ金属塩等のアニオン系高分子凝集剤;ポリ(メタ)アクリルアミド等ノニオン系高分子凝集剤等が挙げられる。
また、有機凝集剤の添加量にも特に制限はなく、被処理水の性状において調整すればよいが、被処理水に対して、概ね固形で0.01〜10mg/Lが好適である。
【0028】
前記凝集剤、好ましくは有機凝集剤を併用するのが好適である。この有機凝集剤としては、特に限定はなく、例えばポリエチレンイミン、エチレンジアミンエピクロルヒドリン重縮合物、ポリアルキレンポリアミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドやジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの四級アンモニウム塩を構成モノマーとする重合体等;通常水処理で使用されるカチオン系有機系ポリマー等が挙げられる。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。
また、有機凝集剤の添加量にも特に制限はなく、現像排水の性状に応じて調整すればよいが、現像排水に対して概ね固形分で0.01〜10mg/Lが好適である。
【0029】
ここで、前記カラーフィルタ製造工程における現像排水とは、カラーフィルタの製造工程において使用される、顔料、アルカリ可溶性樹脂(アルカリ可溶性ポリマー)、光重合成分(硬化性モノマー)、光重合開始剤(開始剤)、界面活性剤及び溶剤、並びに現像液等を含むものである。この現像排水には、硬化レジスト成分等も含まれることがある。なお、カラーレジスト液に使用する溶剤は、レジストの塗布及び現像処理前のプリベーク工程でその大半が蒸発するのが一般的である。
具体的な一例として、カラーフィルタ製造装置やカラーフィルタ製造ライン、カラーフィルタ製造工程に用いる現像装置やそのライン等からの排水が挙げられる。
例えば、顔料分散法(好適にはカラーレジストを用いたフォトリソグラフィー法)によるカラーフィルタ現像排水には、カラーレジスト液の成分や現像液を主として含む排液が挙げられる。具体的には、カラーレジストを塗布した後、未露光部分を、ノニオン性界面活性剤を主成分とする界面活性剤及びアルカリ成分をそれぞれ高濃度で含む現像液で洗い流した現像剥離排水等が含まれる。
【0030】
通常のカラーフィルタ現像排水の水質としては、アルカリ成分(NaOH、KOH等)が高濃度であるのが一般的である。界面活性剤として、非イオン性が主体として含まれており、その他カチオン性、アニオン性、両性が必要に応じて含まれているのが一般的である。この界面活性剤の例示としては、主に現像液に用いられる界面活性剤であって、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチレン化フェニルエーテル等を挙げることができる。金属類としては、銅、ニッケル、亜鉛等が有機化合物として含まれているのが一般的である。
なお、カラーフィルタ現像排水の一般的な水質として、例えば表1に示すものが挙げられる。
【0031】
【表1】



【0032】
カラーレジスト液の成分は、顔料成分(主に有機顔料)が、アルカリ可溶性ポリマー(バインダー樹脂若しくはこれに高分子分散剤を混合したもの)と親和性を持つように設計されている。更に、これらに加えて、このカラーレジスト液の成分は、分散剤(アニオン性分散ポリマー等)、硬化性ポリマー(顔料を固定化するオリゴマーやポリマー及び開始剤)、溶媒としての溶剤等から構成されている。
このカラーレジスト液は、公知の手法(例えば非特許文献1参照)にて得ることができる。一例として、顔料、分散剤及び溶剤を配合し、顔料を粉砕して小さな粒子にする工程と、それに、アルカリ可溶性ポリマー、モノマー及び開始剤等の感光成分を混合してレジスト液を作製する工程にて、得ることができる。
なお、カラーレジスト液中の各成分の配合量(質量%)は、所望とするカラーフィルタによって適宜変更されているが、一般的な配合量は、顔料2〜8質量%、アルカリ可溶性ポリマー3〜7質量%、分散剤0.5〜3質量%、モノマー2〜6質量%、開始剤0.1〜4質量%、溶剤70〜85質量%(残分)である(例えば非特許文献1参照)。
【0033】
顔料の成分としては、カラーフィルタ製造工程にて一般的に用いられているものであれば特に限定されず、代表的には黒色顔料と有彩色顔料が用いられ、これらは適宜有機顔料及び無機顔料から選ばれる。
前記黒色顔料は、主に樹脂ブラックマトリックスに用いられ、カーボンブラック、アニリンブラック、アントラキノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、チタンブラック等が挙げられる。黒色顔料の粒径は、200nm以下、より3〜100nmが好ましい。
前記有彩色顔料は、例えばRGB系フィルターの赤色(R)・緑色(G)・青色(B)、CMY系フィルターの藍色(C)・紅色(M)・黄色(Y)の主色顔料として用いられ、必要に応じて目的色度への補正のための副顔料としても用いられる。これらには有機顔料が多用され、代表的な顔料成分としては、例えば、アゾレーキ系、不溶性アゾ系、縮合アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、アントラキノン系、ペリノン系、チオインジゴ系、ぺリレン系等が挙げられ、各色とも1種又は2種以上のものが選ばれる。
例えば、赤(R)色の主色顔料としては、ジケトピロロピロール(PR254)、アントラキノン(PR177)等が、緑(G)色の主色顔料としては、塩素化銅フタロシアニン(PG7)や臭素化亜鉛フタロシアニン(PG58)等が、青(B)色の主色顔料としては、ε型銅フタロシアニン(PB15:6)等が挙げられる他、イソインドリン(PY139)、ニッケルコンプレックス(PY150)等の黄色顔料;ジオキサジン(PV23)等の紫色顔料等の副顔料等が挙げられる。
この有機顔料の粒径は、100nm以下、より10〜60nmが好ましい。
【0034】
分散剤としては、カラーフィルタ製造工程にて一般的に用いられているものであれば特に限定されず、顔料粒径を0.1μm以下に制御でき、分散安定化できるものが一般的に用いられている。
前記分散剤としては、例えば、アニオン系分散剤、カチオン系分散剤、非イオン性分散剤等が挙げられ、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系;ポリエチレングリコールジエステル系;ソルビタン脂肪酸エステル系;脂肪酸変性ポリエステル系;三級アミン変性ポリウレタン系;(低・高分子)活性顔料誘導体等から選ばれる1種又は2種以上のものが挙げられる。
より具体的には、以下のものから選ばれる1種又は2種以上のものが挙げられる。
前記アニオン系分散剤としては、例えば、スチレン・無水マレイン酸共重合物、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース、オレフィン・無水マレイン酸共重合物、ポリスチレンスルホン酸塩、アクリルアミド・アクリル酸共重合物、アルギン酸ソーダ等が挙げられる。
また、前記非イオン系分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンブロック(プルロニック型分散剤)、ポリマーデンプン等が挙げられる。
また、前記カチオン系分散剤としては、例えば、ポリエチレンイミン、アミノアルキル(メタ)アクリレート共重合物、ポリビニルイミダソリン、サトキンサン(キトサン)、ポリアルキレンポリアミン、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0035】
アルカリ可溶性ポリマーとしては、カラーフィルタ製造工程にて一般的に用いられているものであれば特に限定されず、カラーレジスト中の顔料粒子の結合や現像されたレジスト膜の基板への固着するものであればよい。
前記アルカリ可溶性ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル等の共重合アクリル系、ポリイミド系、カルド系等が挙げられる。通常、(メタ)アクリル酸或いは(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体が基本構造となり、(メタ)アクリル酸等に(メタ)アクリル酸エステル等を共重合したカルボキシ基含有アクリル樹脂を用いるのが好適である。
この具体的な例示として、(メタ)アクリル酸/ベンジル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジル(メタ)アクリレート/スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸/メチル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/メチル(メタ)アクリレート/スチレン共重合体等から選ばれる1種又は2種以上のものが挙げられる。
また、この分子量は5,000〜100,000であるのが好適であり、この樹脂の酸価60〜150mgKOH/gであるのが好適である。
【0036】
硬化性モノマー(紫外線露光により開始剤が分解することで重合しポリマー(樹脂)化するもの)は、カラーフィルタ製造工程にて一般的に用いられているものであれば特に限定されない。
前記硬化性モノマーは、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸エステル系、メタアクリル酸エステル系、ポリアクリル酸系、ノボラック型フェノールエポキシ樹脂系、ノボラック型クレゾールエポキシ樹脂系、多官能ポリエステルアクリレート系、ポリイミド系、ポリビニルアルコール系、多官能ポリオールアクリレート系、多官能ウレタンアクリレート系等から選ばれる1種又は2種以上のものが挙げられ、このうち多官能基を持つモノマーを用いるのが好適である。
【0037】
開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、イミダゾール系、オキシム系等から選ばれる1種又は2種以上の化合物が挙げられる。
この具体的な例示として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−4〔(メチルチオ)フェニル〕−2−モンフォソノプロトリン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリフェニル)−ブタノン−1等から選ばれる1種又は2種以上のものが挙げられる。
また、シランカップリング剤等を増感剤や密着助剤として含有させてもよい。
【0038】
溶剤としては、カラーフィルタ製造工程にて一般的に用いられているものであれば特に限定されず、代表的な溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、メチル3−メトキシプロピオネート(MMP)、乳酸エチル(EL)、n−ブチルアセテート(NBA)、エチル3−エトキシプロピオネート(EEP)等が挙げられる。その他の溶剤としては、ジエチレンジメチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ベンジルアルコール等が挙げられる。なお、これら溶剤は、レジストの塗布及び現像処理前のプリベーク工程でその大半が蒸発するのが、一般的である。
【0039】
また、現像液は、現像工程にて、カラーレジストの不要な部分(未硬化カラーレジスト成分)を除去又は基板上を洗浄するためのアルカリ性水溶液(pH8〜14、好ましくはpH10〜13)であり、カラーフィルタ製造工程にて一般的に用いられているものであれば特に限定されない。
現像液は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属塩;炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属塩;水酸化テトラアンモニウム、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等のアミン類等から選ばれる1種以上の無機及び/又は有機のアルカリ成分、適宜消泡剤や界面活性剤等を含む水溶液である。この界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチレン化フェニルエーテル等を挙げることができる。
【0040】
本発明のカラーフィルタ現像排水の処理方法の実施形態について、図1〜4(フロー1〜7)を参照して、以下に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0041】
<フロー1>
現像排水(20〜30℃)が、熱交換系(熱交換)に移送され、加温(好ましくは60〜75℃程度)される。加温された現像排水は、更に必要に応じて加熱系(加熱)にて50℃以上(好ましくは70〜95℃、より好ましくは80〜85℃)に加温される。このとき加熱系において、現像排水に水蒸気(100℃程度)を噴霧混入して現像排水を加温してもよい。更に、加温された現像排水は、酸を添加されながら反応系(反応)にて特定の中性〜酸性領域(pH7以下、好ましくはpH7未満、より好ましくは1〜6、更に好ましくは2〜6)になるように調整される。このとき反応系は、50℃以上(好ましくは70〜95℃、より好ましくは80〜85℃)に維持されている。ここでの反応は、反応器内でも反応管内でもよい。そして、特定の加温及び中性〜酸性(好適には酸性)の状態の現像排水は、固液分離系にてカラーレジスト及び界面活性剤等の沈殿物を含む濃縮水と、これらが低減した処理水とに分離される。濃縮水は濃縮液貯留に移送される。
処理水は50℃以上の温度(好適には70〜95℃、特に80〜85℃)有しているため、熱交換系に移送され、そこで熱を回収されて冷却されると共にそこに移送された現像排水に熱を再利用して現像排水を加温する。
また、熱交換系を配設しない場合や固液分離から加熱処理水が移送されていない場合には、加熱系にて移送された現像排水を加熱する。このため、熱交換系を加熱器の前に配置し、処理水の熱を再利用することが望ましい。
【0042】
<フロー2>
上述したフロー1と重複する部分については適宜省略する。
現像排水は、酸を添加されながら反応系に移送される。反応系にて特定の中性〜酸性領域になるように調整される。このように中性〜酸性領域となった現像排水は、熱交換系次いで加熱系にて50℃以上に加温される。そして、加温及び中性〜酸性の状態の現像排水は固液分離系にて、沈殿物を含む濃縮水と処理水とに固液分離される。処理水は50℃以上の温度有しているため、熱交換系に移送され、そこで、冷却されると共に現像排水を加温する。
【0043】
<フロー3>
上述したフロー1と重複する部分については適宜省略する。
現像排水は、熱交換系、加熱系、反応系を経て、特定の加温及び中性〜酸性状態で固液分離1にて固液分離され沈殿物を含む濃縮水1と処理水1とに分離される。この処理水1は50℃以上の温度を有しているため、熱交換系に移送され、そこで、冷却されると共に現像排水を加温する。また、固液分離1にて濃縮された沈殿物を含む濃縮水1を、更に特定の加温状態に維持するため温度ロス分を蒸気で再加温し、中性〜酸性状態にしたまま、固液分離2にて更に固液分離し、カラーレジスト及び界面活性剤等の沈殿物を含む濃縮水2と処理水2とに分離する。この処理水2は加温されているため、熱変換のために使用してもよい。また、一例として、処理水1に処理水2を合流させて熱交換系に移送してもよい。
【0044】
<フロー4>
上述したフロー1と重複する部分については適宜省略する。
現像排水は、熱交換系、加熱系、反応系を経る。固液分離前に凝集剤を添加する。凝集剤を含む特定の加温及び酸性状態の現像排水は、固液分離系にて固液分離されて沈殿物を含む濃縮水と処理水とに分離される。
【0045】
<フロー5>
上述したフロー1と重複する部分については適宜省略する。
現像排水は、熱交換系、加熱系、反応系、更に固液分離系を経て、沈殿物を含む濃縮水と処理水とに分離される。この濃縮水に凝集剤を添加し、カラーレジスト及び界面活性剤等を含む沈殿物を回収する。このとき、濃縮液は、特定の加温及び中性〜酸性の状態でもよく、また除去したい物質に応じて、適宜温度やpHを調整してもよい。例えば、重金属類除去の場合には、アルカリ領域に調整する。
【0046】
<フロー6>
上述したフロー1と重複する部分については適宜省略する。
現像排水は、熱交換系、加熱系、反応系、更に固液分離を経て、沈殿物を含む濃縮水と処理水とに分離される。この濃縮水に蒸気を添加し、濃縮水を特定の加温及び中性〜酸性の状態として、カラーレジスト及び界面活性剤等を含む沈殿物を回収する。
【0047】
<フロー7>
上述したフロー1と重複する部分については適宜省略する。
現像排水は、熱交換系、加熱系、反応系、更に固液分離を経て、沈殿物を含む濃縮水と処理水1とに分離される。処理水1は、更に生物処理システムを経て、最終的に処理水2として放流される。この生物処理システムには、生物処理(活性汚泥法)、凝集・沈殿系、ろ過系、活性炭系が配置されている。また、この生物処理システムには、処理水1の他、スクラバー排水や洗浄排水等を移送し、処理してもよい。
また、処理水1は、上述したフロー2〜6のものでもよく、本発明の処理方法にて処理されたものであればよい。また、処理水2に逆浸透膜を適用して水回収してもよい。
【0048】
樹脂の分子量については、高温GPC装置にて測定すればよい。
樹脂の酸価については、「JIS K 2501-2003石油製品及び潤滑油-中和価試験方法」等に基づいて行えばよい。
試料をキシレンとジメチルホルムアミド(1+1)を混合した滴定溶剤に溶かし、電位差滴定法により0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液で滴定し、滴定曲線上の変曲点を終点とする。 水酸化カリウム溶液の終点までの滴定量から、酸価を算出する。
【0049】
水質の測定については、公知の測定法(JIS、下水試験方法、上水試験方法)にて行えばよいが、例えば、以下の測定法が挙げられる。
電気伝導率:JIS−K−0102.13、pH:JIS−K−0102.12.1、TOC:JIS−K−0102.22.1、濁度:JIS−K−0101.9.2、界面活性剤:JIS−K−0102.30.2.1、金属類:JIS−K−0102にて、これらの測定を行う。
MFF値については、5A濾紙(アドバンテック社製)を用いて濾過し、次いでミリポアフィルタ(孔径:0.45μm,日本ミリポア社製)を用いて濾過し、濾紙による濾過時間及びフィルタによる濾過時間(濾過開始〜500mL濾過時間:T1,500mL濾過時間〜1000mL濾過時間:T2)を測定する。このフィルタによる濾過時間から、Micro Filter Function(MFF)値(T2/T1)を算出する。MFF値は0.45μmの膜を閉塞させる物質の有無を示す指標である。
【実施例】
【0050】
以下に具体的な実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
〔凝集試験〕
カラーフィルタ排水原水(「原水」ともいう)500mLを入れた500mL容ビーカーを加温ヒーター付きスターラー台にセットし、以下の操作で試験を実施した。
【0052】
〔実施例1〜3及び比較例1〜3〕
実施例1
セット後、150rpmにて撹拌し、硫酸を添加してpH5に調整し、80℃まで加温し、80℃で3分程度保持後、加温状態の溶液(pH5及び80℃程度)を、No5Aろ紙(アドバンテック)にてろ過し、室温程度まで放冷したろ液のTOCと濁度を測定した。
【0053】
本凝集試験の「カラーフィルタ排水原水」としては、カラーレジストを塗布した後、未露光部分を、ノニオン性界面活性剤を主成分とする界面活性剤及びアルカリ成分をそれぞれ高濃度で含む現像液で洗い流した現像剥離排水を使用した。
この原水水質は、表2に示すとおりであった。
【0054】
【表2】



【0055】
実施例2
pH7に調整した以外は、上記実施例1と同様にして行った。
実施例3
pH7に調整後、更にNaSOが0.4mol/Lになるように塩類を添加した以外は、実施例1と同様にして行った。
比較例1
pH12調整にした以外は、上記実施例1と同様にして行った。
比較例2
pH5に調整後、40℃まで加温し、40℃で3分間保持後、40℃程度の加温状態の溶液をろ過した以外は、実施例1と同様にして行った。
比較例3
pHを5に調整後、加温を行わず、その溶液を濾過した以外は、実施例1と同様にして行なった。
【0056】
実施例1〜3及び比較例1〜3の結果を表3に示す。
【0057】
【表3】



【0058】
〔比較例4〜7〕
また、原水のpHを5、7、9及び11.5にそれぞれ調整した後、加温を行わず、その溶液を濾過した以外は、実施例1と同様にして行なった(それぞれ比較例4〜7)。
【0059】
【表4】



【0060】
〔実施例4〜6、及び比較例8〜11〕
実施例4
原水のpHを3に調整した以外は、実施例1と同様にして行った。
実施例5
実施例1と同様にして行った。
実施例6
pH5に調整後、60℃まで加温し、60℃で3分間保持後、60℃程度の加温状態の溶液をろ過した以外は、実施例1と同様にして行った。
比較例8
pH5に調整後、80℃に加温し、3分間維持後、更に25℃に冷却し、この冷却したものをろ過した以外は、実施例1と同様にして行った。
比較例9
原水のpHを7に調整後、80℃に加温し、3分間維持後、25℃に冷却し、この冷却したものをろ過した以外は、実施例1と同様にして行った。
比較例10
原水のpHを12に調整した以外は、実施例1と同様にして行った。
比較例11
原水のpHを12に調整後、80℃に加温し、3分間維持後、25℃に冷却し、この冷却したものをろ過した以外は、実施例1と同様にして行った。
実施例4〜6及び比較例8〜11の結果を表5に示す。
【0061】
【表5】



【0062】
〔比較例12〕
実施例1のカラーフィルタ排水原水に、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(P−DADMAC;分子量75万)の有機凝集剤を添加し、25℃、pH12で、150rpm90秒撹拌後、フロック径及び上澄み濁度(NTU)を測定した。この結果を表6に示す。
【0063】
【表6】



【0064】
以上のように、カラーフィルタの現像排水に対して、凝集剤添加による凝集ろ過のみ(表6参照)、pH調整のみ(図6参照)、加熱のみ(表5、比較例10及び11参照)ではカラーレジスト(濁度)や界面活性剤(TOC、COD)の低減ができなかった。
なお、図6に示すようにpH調整のみでは、着色は全く変化せず、濁質の性状はMFF値が1.1以下であることから、濁質は分散状態にあることとなる。
一方で、カラーフィルタの現像排水に対して、pH7以下に調整した状態かつ加温することにより、顔料(カラーレジスト)及び界面活性剤の不溶解物が生成し、加温状態で分離処理することによって、顔料と界面活性剤の両方を除去できることを確認できた(図5、及び実施例1参照)。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、上述の如く、カラーフィルタ現像排水を加温及び中性・酸性状態で処理することで、該現像排水中のカラーレジストのみならず、界面活性剤を良好に低減することが可能となるので、カラーフィルタ現像排水を良好な凝集ろ過性及び運転安定性で処理することができる。言い換えるなら、凝集の安定化及び放流のCOD値の安定化という運転の安定性が良好となる。また、加温熱を回収し再利用することも可能なので、運転安定性や経済面でも望ましい。しかも、CODの除去効率が高く、排水放流処理、又は排水回収処理としての高度処理を行うに経済面で大きく現状を改善することができる。更に、生物反応槽容量の削減、凝集剤や活性炭の使用量の低減等も可能であるので、排水処理の低コスト化が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーフィルタ製造工程における現像排水の処理方法であって、
該現像排水を50℃以上に加温する加温工程と、
該現像排水のpHを7以下に調整するpH調整工程と、を有し、
該現像排水を加温及びpH調整した状態で固液分離することを特徴とする、現像排水の処理方法。
【請求項2】
前記加温工程において前記現像排水を60〜100℃に加温すること及び/又は前記pH調整工程において前記現像排水のpHを2〜6の酸性にすることを特徴とする請求項1記載の現像排水の処理方法。
【請求項3】
凝集剤を併用することを特徴とする請求項1又は2記載の現像排水の処理方法。
【請求項4】
前記固液分離後の加温処理水の熱を回収して前記加温工程における現像排水の加温に再利用することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の現像排水の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−154994(P2012−154994A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11841(P2011−11841)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】