説明

カラー立体表示装置

【課題】アパーチャーを有する拡散層を用いる場合に、光の利用効率が悪く映像が暗くなる点、レンチキュラーレンズからなるスクリーンに投映する際に、各色の指向性をなくすための調整が面倒で、しかも完全には無くせず、色斑の発生が懸念される点や、投映される画像とレンチキュラーレンズの各レンズとの位置合わせを、その都度、厳密に行わなければならない点等を解消する。
【解決手段】カラー立体表示装置は、表示パネル2と、レンチキュラーレンズシート3とが対向して配置され、レンチキュラーレンズシート3よりも観察側に、観察側の断面が鋸歯状のプリズム面を有するプリズムシート9が配置され、プリズム面が、プリズムシート9の屈折率よりも低い屈折率を有する平坦化層10で埋められて平坦化され、プリズムシート9及び平坦化層10の少なくとも1つは、屈折率が可変な材料で構成されているものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ等の任意の表示パネルとレンチキュラーレンズシートとを組み合わせてなるカラー立体表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テレビジョンやコンピュータの表示装置としては、平面的な映像を表示し得るものが使用されていることが多いが、映像を立体表示にすれば、臨場感が増したり、事物の立体的配置が分かりやすくなり利点が生じ得る。
例えば、特許文献1には、レンチキュラーレンズを用いたレンチキュラ方式又はバリア方式の立体映像表示装置が記載されている。
【0003】
図6は、従来、液晶表示装置等において立体表示を試みた例を示す図で、下面側に色分けして示した符号2を有する部分は、液晶表示装置を構成する三原色の区域の最小単位であるピクセルの集合体である表示パネル(あるいは、符号2は、カラーフィルタの各色の区域とみなしてもよい。)を示し、表示パネル2の各区域R、G、およびBの各々から、強度がコントロールされた、赤色、緑色、および青色の光が出光し、出光した光は、レンチキュラーレンズ11の各レンズにより屈折して集光し、レンチキュラーレンズ11の集光部に対応して上部に設けられた拡散層12の開孔部12aを通った後、上面側のレンチキュラーレンズ11’により、適宜な方向に向かって収束される。
【0004】
表示パネル2には、向かって左側より、三原色R、G、およびBのピクセルを単位とする左眼用画像(「左」で表示)、および右目用画像(「右」で表示)のペアが形成されており、このペア毎に、1つの画素が設定されて、図では、水平方向に密に配列されている。下面側のレンチキュラーレンズ11の各レンズは、1つの画素を構成する左眼用画像と右眼用画像にそれぞれ対応して設けられており、各々の画像に対応する開孔部(アパーチャー)12aより透過する。開孔部12aより出た光は、左眼用画像と右眼用画像のペア毎に対応して設けられたレンチキュラーレンズ11’により屈折されることにより、左眼用画像が上方の向かって右側の方向に、右眼用画像が上方の向かって左側の方向に、それぞれ収束することにより、視差が生じ、左眼用画像と右眼用画像を同時に見ることにより、画像の立体感が得られるものである。なお、上記のように開孔部12aを有する拡散層12を用いる代わりに、表示パネル2からの光をレンチキュラーレンズ11’からなるスクリーンに投映する場合もある。
【0005】
しかし、上記の方式では、開孔部12aにより表示パネル2からの光を絞るために、光の利用効率が悪く、映像が暗くなる欠点が避けられない。また、R、G、およびBの三原色のピクセルで画素を構成しているので、これら三つのピクセル毎に、レンチキュラーレンズ11’の下面に集光させて、白色光とした後、指向性を無くさないと、各ピクセル毎に、収束する位置がずれる結果となり、観察側の位置によって、ある1つのピクセルのみが見え、単色の映像しか見えないことになる。この問題の解決のためには、拡散層12の両面のレンチキュラーレンズ11および11’を厳密に位置合わせして配置したものを、さらに、投映像との位置合わせをして配置する煩雑さがあり、いずれにおいても配置精度を向上させるための調整に手間がかかる上、指向性を完全に無くすことが困難であるために、色斑の発生も懸念される。また、スクリーンに投映する方式においても、投映される画像とレンチキュラーレンズの各レンズとの位置合わせを、その都度、厳密に行なわなければならない不便さがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−104212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明においては、開孔部12aを有する拡散層12を用いる場合に、光の利用効率が悪く、映像が暗くなる点、レンチキュラーレンズからなるスクリーンに投映する際に、三原色の各色の指向性を無くすための調整に手間がかかる上、指向性を完全に無くせずに、色斑の発生が懸念される点、およびレンチキュラーレンズからなるスクリーンに投映する際に、投映される画像とレンチキュラーレンズの各レンズとの位置合わせを、その都度、厳密に行なわなければならない点を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、従来、いずれも、三原色の三つのピクセルからなる左眼用画像と右眼用画像とを、レンチキュラーレンズの左右に対応させていたのに代えて、三原色の各々のピクセルを1つずつ、レンチキュラーレンズの左右に対応させることにより解決することができた。
【0009】
第1の発明は、ピクセルが一定ピッチで多数配列されて構成された表示パネルと、前記表示パネルに対向して配置され、レンチキュラーレンズがレンズの幅方向に多数並べられたレンズ面を有するレンチキュラーレンズシートと、前記レンチキュラーレンズシートよりも観察側に配置され、観察側の断面が鋸歯状のプリズム面を有するプリズムシートと、前記プリズム面を埋めて平坦化し、前記プリズムシートの屈折率よりも低い屈折率を有する平坦化層と、を備え、前記レンチキュラーレンズは、前記レンズの幅方向において、1つにつきn個(ただし、nは2〜20の自然数)の前記ピクセルからなる1つずつのピクセル群が対応するよう配列され、前記表示パネルは、隣接する3つの前記ピクセル群の各々を構成するn個のピクセルのうち、一方の側から数えた同番目のピクセルに、三原色のそれぞれが割り振られたピクセルの各組からなり、前記ピクセルの各組が、前記一方の側から数えた順に、前記レンチキュラーレンズシートのレンズ面側に設定されたn個の観察位置の各々に順に送られるべき画素を構成し、前記プリズムシート及び前記平坦化層の少なくとも1つは、屈折率が可変な材料で構成されていることを特徴とするカラー立体表示装置である。
第2の発明は、第1の発明において、前記屈折率が可変な材料は、液晶であることを特徴とするカラー立体表示装置である。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記レンチキュラーレンズシートのレンズ面が前記レンチキュラーレンズシートの屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層により埋められて平坦化されていることを特徴とするカラー立体表示装置である。
第4の発明は、第3の発明において、前記レンチキュラーレンズシート及び前記低屈折率層の少なくとも1つは、屈折率が可変な材料で構成されていることを特徴とするカラー立体表示装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1つのレンチキュラーレンズにn個のピクセルを対応させ、n個の観察位置に隣接するレンチキュラーレンズから、1画素を構成する三原色の光を送れるよう配置したので、調整の問題が生じたり、映像が暗くなったり、色斑が生じることが無いn眼式のカラー立体表示装置を提供することができる。
本発明によれば、レンチキュラーレンズシートよりもさらにプリズムシートを観察側に配置することにより、観察位置を上下左右にずらすことが可能なカラー立体表示装置を提供することができる。
本発明によれば、プリズムシートのプリズム面が低屈折率な平坦化層により埋められて平坦化されているので、傷付きや汚れを防止することが可能で、プリズムシートと低屈折率な平坦化層の組み合わせにより、観察位置を上下左右に変えることが可能なカラー立体表示装置を提供することができる。
本発明によれば、プリズムシート及びプリズム面を埋めて平坦化する平坦化層の少なくとも1つは、屈折率が可変な材料で構成されているので、プリズムシート、もしくは平坦化層を取り替えずに、観察位置を上下左右に変えることが可能なカラー立体表示装置を提供することができる。
本発明によれば、使用するレンチキュラーレンズのレンズ面が低屈折率層により埋められて平坦化されているので、傷付きや汚れを防止することが可能になるほか、レンチキュラーレンズおよび低屈折率層の各々の屈折率を変えることにより、観察位置の遠近を変えることが可能なカラー立体表示装置を提供することができる。
本発明によれば、レンチキュラーレンズシート及び低屈折率層の少なくとも1つは、屈折率が可変な材料で構成されているので、レンチキュラーレンズシート、もしくは低屈折率層を取り替えずに、観察位置を変えることが可能なカラー立体表示装置を提供することができる。
本発明によれば、距離L、設定した観察位置の数n、ピクセル幅wが特定の関係を規定することにより、2眼式を含む多眼式立体表示が有効におこなわれ得るカラー立体表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】カラー立体表示装置の例を示す図である。
【図2】別のカラー立体表示装置の例を示す図である。
【図3】多眼式のカラー立体表示装置の例を示す図である。
【図4】別の多眼式のカラー立体表示装置の例を示す図である。
【図5】さらに機能を付加したカラー立体表示装置の例を示す図である。
【図6】従来のカラー立体表示装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1(a)は、本発明を適用した、左右両眼で見たときに立体感を与えることが可能なカラー立体液晶表示装置のうち、カラーフィルタ2およびレンチキュラーレンズシート3を組み合わせて配置した部分を示す図である。図において、カラーフィルタ2は、図の向かって左側より、青色、赤色、および緑色(順に、B、R、およびGで表示)の各色の微小カラーフィルタが横方向にこの順で一定ピッチで繰返し配列され、および縦方向に一定ピッチで繰返し配列されたものである。なお、以降の図も含め、多数のレンチキュラーレンズ、および多数のピクセル(ここでは微小カラーフィルタ)のごく一部を描いてある。また、レンチキュラーレンズシート3は、レンチキュラーレンズがレンズの幅方向に一定ピッチで多数並べられたレンズ面を有するもので、図のものは、図面の奥側にレンズ面を有している。上記のカラーフィルタ2とレンチキュラーレンズシート3とは、レンチキュラーレンズ1つにつき、通常は微小カラーフィルタの2個からなる微小カラーフィルタ群2aが1つずつが対応するよう配置されている。
【0013】
カラー立体液晶表示装置は、例えば、図1(c)に示すように、下面側よりバックライト5、液晶層をガラス内面に透明電極を有する二枚の電極シートではさんだ液晶パネル4、カラーフィルタ2、およびレンチキュラーレンズ3が順に配置されたもので、液晶パネルの両電極間に電位をかけることにより、バックライト5からの白色光の透過量を制御し、カラーフィルタ2により、赤色、青色、および緑色の各色の光として上面側に出光させるものである。なお、表示装置には、CRT(ブラウン管)、プラズマディスプレイパネルのように、自身が発光するタイプのものもあるが、いずれにせよ、表示装置全体としては、観察側に赤色、青色、および緑色の光を出光させるものであるので、以降の説明で引用する場合も含め、図1(a)におけるカラーフィルタ2の図をもって、R、G、およびBのような三原色の各々の色を表示するピクセルが一定ピッチで配列された表示パネルを表す事とし、液晶、プラズマディスプレイ等の方式を問わない。また、R、G、もしくはBの文字で、しばしば、各々の色のピクセルを示すことがある。ここで、三原色としては、赤色、緑色、および青色からなる加色混合(加算混合)の場合の三色としたが、減色混合(減算混合)の場合の青色、赤色、および黄色からなる三色を用いることもあり得る。
【0014】
図1(b)に示すように、各レンチキュラーレンズの下部の表示パネル2の互いに隣接した3つのピクセル群2aの図中、向かって左側半分にあるピクセル、即ち、向かって左側から1番目のB、3番目のG、および5番目のR(図中、○で囲んである。)のように、1つおきに選択された3つのピクセル(図中、6Lで表示)から出光した光は、各々のピクセルの上部にあるレンチキュラーレンズ3により屈折されて左眼7Lで観察することができ、ピクセル群2aの右側半分にあるピクセル、即ち、上記で選択しされたピクセルの間、即ち、向かって左側から2番目のR、4番目のB、および6番目のGのように、1つおきに選択された3つのピクセル(図中、6Rで表示)から出光した光は、各々のピクセルの上部にあるレンチキュラーレンズ3により屈折されて右眼7Rで観察することができる。なお、以降において、特に断らなくても、右は図中の向かって右を、また、左は図中の向かって左を指すものとし、ただし、観察者は図の手前側を向いているものとするので、観察者の左眼が図中の向かって右側に、右眼が図中の向かって左にあるものとする。後述する多眼式の例においても、多数並んだ眼に関する左右は二眼の場合の左右と同様であり、多眼の観察者が図の手前側を向いているものとして、図の左右とは逆であるとする。従って、表示パネルの各ピクセル群2aの左側に三原色のそれぞれを割り振っておき、各ピクセル群2aの右側にも同様にすることにより、隣接したピクセルの左側のピクセルの3つからなる組で左眼7L用の画素を、また、隣接したピクセルの3つからなる組で右眼7R用の画素を構成することができる。即ち、両眼用としては6つの画素を使用することになる。
【0015】
上記のカラー立体液晶表示装置1においては、2ピクセル毎に1のレンチキュラーレンズを対応させることにより、ピクセルの光を、1つおきに左眼7Lもしくは右眼7Rに送ることができるので、図1の例では、右眼7Rでは、R、B、およびGのピクセル6Rが順に繰返したことによる映像を、また、左眼7Lでは、B、G、およびRのピクセル6Lが順に繰返したことによる映像を見ることができ、6R、および6Lで示した3ピクセル毎に1つの色が決まり、これら6R、もしくは6Lを構成するそれぞれのピクセルが左右の眼で解像されない限り、即ち、ピクセルが観察する距離に対して十分小さい限り、カラー立体液晶表示装置1全体としては、カラー立体映像を眺めることが可能になる。
【0016】
本発明のカラー立体表示装置1は、ピクセルの光を、1つおきに左眼7Lもしくは右眼7Rに送ることができる、次のような構成であってもい。図2は、カラーフィルタ2であり得る表示パネルとレンチキュラーレンズ3との組み合わせて配置した状態を示し、図において、表示パネル2は、図の左側より、R、R、G、G、B、B、・・・のように、同色のピクセルが二つずつ横方向に、この順で繰返し、および縦方向に一定ピッチで配列したものであり、上記のカラーフィルタ2とレンチキュラーレンズシート3とは、レンチキュラーレンズ1つにつき、ピクセル2個からなるピクセル群2aの1つずつが対応するよう配置されている。
【0017】
図2(b)に示すように、左側から1番目のレンチキュラーレンズの下部にある二つの赤色のピクセルR、Rからなるピクセル群2aのうち、左側のピクセルRから出光した光は、各々のピクセルの上部にあるレンチキュラーレンズにより屈折されて左眼7Lで観察することができ、同様に、左側から2番目のレンチキュラーレンズの下部にあるピクセル群2aの左側のピクセルGから出光した光、および、左側から3番目のレンチキュラーレンズの下部にあるピクセル群2aの左側のピクセルBから出光した光も、左眼7Lで観察することができる。また、各レンチキュラーレンズの下部のピクセル群2aの右側にあるR、G、およびBのピクセルから出光した光は、右眼7Rで観察することができる。従って、同色のピクセルが二つずつ並んだ微小色表区域群が配列した表示パネル2の各微小色表示群2aの左側から選んだR、G、およびBに左眼用の画素を、また、右側から選んだR、G、およびBに右眼用の画素を設定しておけば、これら両方の画素により、立体視の際の1画素が設定され、図1を引用して説明した例におけるのと同様に、カラー立体表示装置1全体として、カラー立体映像を眺めることが可能になる。
【0018】
本発明のカラー立体表示装置1は、上記の二例におけるように、2ピクセル毎に1つのレンチキュラーレンズを配置して、ピクセルの光を、1つおきに左眼もしくは右眼に送る構造としたので、単色やダブルトーンの表示を行なうこともでき、単色であれば、2ピクセル、ダブルトーンであれば4ピクセルを単位にして立体表示を行なうことができる。また、本発明の立体表示装置は、3以上の数nのピクセルに1つのレンチキュラーレンズを配置して、n眼式(多眼式)の立体表示を行なうこともできる。従って、上記の左右両眼で見る2眼式は、多眼式のうちの一例である。多眼式においても、2眼式と同様、単色表示やカラー表示があり得るが、本質的な相違はないので、以降の説明では、カラー立体表示の場合を説明する。なお、n眼式(多眼式)のnは、2以上の自然数であって、大きくできるが、ピクセルの数、製作精度、映像の明るさの観点から、実用上、20以下とすることが好ましい。
【0019】
図3は、6ピクセル毎に1つのレンチキュラーレンズを対応させて配置し、レンズ面側に等間隔に位置を設定した6つの観察用の眼で観察可能とする、6眼式の立体表示を行なわせる例を示す図で、表示パネル2は、左側から1番目のレンチキュラーレンズの下部に、左側からR、G、B、R、G、Bの順のピクセルからなる第1のピクセル群2aが配列しており、左側から2番目のレンチキュラーレンズの下部に、左側からG、B、R、G、B、Rの順のピクセルからなる第2のピクセル群2a、さらには、左側から3番目のレンチキュラーレンズの下部に、左側からB、R、G、B、R、Gの順のピクセルからなる第3のピクセル群2aが配列したもので、以降は、これら第1、第2、および第3のピクセル群の繰返しになる。
【0020】
このような表示パネル2の各々のピクセル群2aの、左側から1番目のピクセルから出た光のいずれもが、6つの観察用の眼のうち、「最も左」(図では向かって最も右)の観察用の眼に送られ、左側から2番目のピクセルから出た光のいずれもが、図中右側から2番目の観察用の眼に送られ、以降、同様に、それぞれのピクセル群2aにおける左側から数えた順番に応じた位置の観察用の眼に送られる。
【0021】
上記の各群において、向かって左側から数えて同じ順番(=同番目)であるピクセルは、例えば、撮影対象をカメラアングルを順次変えて撮影した画像の、同一カメラアングルに相当する画素を構成することができ、例えば、表示パネル2のピクセルの各々の群の、向かって左側から1番目のピクセルR、G、およびB(図3中、いずれも○で囲んだR、G、およびBを付したピクセル)を、撮影対象を最も左側から撮影した画像の画素を構成するものとして、出光した光を、観察用の眼のうち「最も左」(図では向かって最も右)のものに送るよう設定し、以降の2番目、3番目、…のピクセルについては、撮影した位置、および出光した光を送るべき観察用の眼を右側にずらしていくよう設定することにより、観察用の眼の位置により、カメラアングルの異なる画像を眺めることが可能になる。
【0022】
図3に示すように、表示パネル2のピクセル群2aの各々におけるピクセルの配列順を、第1のピクセル群でR、G、B、R、G、Bの順、第2のピクセル群でG、B、R、G、B、Rの順、および第3のピクセル群でB、R、G、B、R、Gの順のように、互いに異なる配列順としてある。この理由は、いずれのピクセル群も、同じピクセルの配列順、例えば、R、G、B、R、G、B、・・・の繰返しとすると、図3の例のように、6ピクセル毎に1つのレンチキュラーレンズを対応させて配置した場合、各ピクセル群の先頭のピクセルの色が同じになって、カラー表示ができなくなるのを避けるためである。1つのレンチキュラーレンズに対応させるピクセルの数が、3、6、9、12、…のような3の倍数のピクセル毎に配置した場合、各ピクセル群におけるピクセルの配列順を互いに異なるようにする必要があるが、1つのレンチキュラーレンズに対応するピクセルの数が、3の倍数以外である場合には、表示パネル2上の配列がR、G、B、R、G、B、・・・の繰返しであって差し支えない。
【0023】
ところで、多眼式のカラー立体表示装置においても、図2を引用して説明したように、1つのレンチキュラーレンズに対応する複数のピクセルを同色で構成することもできる。図4は、図3におけるのと同様、6眼式の立体表示を行なわせる例であるが、表示パネル2は、左側から1番目の第1のピクセル群2aの6つのピクセルをRで、2番目の第2のピクセル群2aの6つのピクセルを6つのGで、3番目の第3のピクセル群2aの6つのピクセルを6つのBで、それぞれ構成してある。
【0024】
このような表示パネル2の各々のピクセル群2aの、左側から1番目のピクセルR、G、およびBから出た光のいずれもが、6つの観察用の眼のうち、「最も左」(図では最も右)の観察用の眼に送られ、以下、同様に向かって左側から2番目のピクセルR、G、およびBから出た光のいずれもが、6眼のうち「左から2番目」(図では右から2番目)の観察用の眼に送られるというように、それぞれのピクセル群における位置に応じた位置の観察用の眼に送られる。
【0025】
この図4を引用して説明している例においては、1つのレンチキュラーレンズに対応する複数のピクセルを同色で構成したので、隣り合うレンチキュラーレンズに対応するピクセル群2aの同じ個所から選択されるピクセルどうしは、必ず色が異なり、先に述べたように、1つのレンチキュラーレンズに対応するピクセルの数が3の倍数であっても、各群の先頭のピクセルの色が同じになることはない。
【0026】
本発明のカラー立体表示装置においては、レンチキュラーレンズシート3としては、個々のレンチキュラーレンズの断面形状が円形、楕円形、もしくは放物線等の2次曲線の一部である通常のものを原則的に使用することができる。レンチキュラーレンズシート3のレンズ面を観察側に配置するときは、レンズ面に凹凸を有するため、傷付きや汚れを招く恐れもあるので、屈折率の低い樹脂でレンズ面の凹凸をならして平坦化することにより、これらの恐れを少なくすることを行なってもよい。
【0027】
図5に、レンチキュラーレンズシート3のレンズ面(図では上面)に低屈折率層8を被覆して、レンズ面の凹凸を埋め、上面を平坦化した例を示す。層9および10については後述する。このように、レンズ面を平坦化することにより、傷付きや汚れを防止する効果が生じる。ここで、レンチキュラーレンズシート3は相対的に高屈折率層であるとして、被覆した低屈折率層8との屈折率の差を大きくすると、眼7で図示してある観察位置をレンチキュラーレンズシート3に近づけることができ、屈折率の差を小さくすると、観察位置は遠ざかる。
【0028】
従って、レンチキュラーレンズ3、もしくは低屈折率層8のいずれかを変えることにより、同じレンズ形状であっても、低屈折率層8を合せたレンチキュラーレンズシートの焦点距離を変えることができ、例えば、低屈折率層8を合せたレンチキュラーレンズシートの焦点距離を充分長くすることにより、2眼式における左右の眼の視差を生じさせないようにして立体表示を通常の平面表示とすることもできる。レンチキュラーレンズシート3の少なくともレンチキュラーレンズ、もしくは低屈折率層8のいずれかを、屈折率が可変な液晶等の材料で構成して、低屈折率層8を合せたレンチキュラーレンズシートの焦点距離を可変としてもよい。屈折率が可変な液晶等を使用する場合、液晶に印加する電位の制御により焦点距離を変えることができるから、観察者との距離を検知して、観察者が立体画像を眺められるよう、焦点距離を調節することも可能である。
【0029】
本発明のカラー立体表示装置のサイズが大きくなるにつれ、カラー立体表示装置の周辺部では、中央部にくらべ、同じ観察位置からの角度差が大きくなるので、既に説明した例で言えば、レンチキュラーレンズ1ピッチあたり、表示パネルのピクセルの2つ分、もしくは6つ分を、寸法を合わせて配置しただけでは、周辺部において、レンチキュラーレンズとピクセルの光学的な対応が取れなくなることがあり得る。そこで、表示パネル2のピクセルとレンチキュラーレンズとの所定の寸法比よりも、レンチキュラーレンズのピッチを幾分小さくするか、レンチキュラーレンズの光軸を、周辺部に近づくほど、レンチキュラーレンズシート中央部の法線よりに傾けることが好ましい。
【0030】
本発明のカラー立体表示装置には、レンチキュラーレンズシート3の観察側に観察側の断面が鋸歯状のプリズム面を有するプリズムシート9が配置されていてもよく、このプリズムシート9により、観察位置をずらすことができ、図では点線で示す右の方(方向としては矢印方向)に光が送られることになる。プリズムシート9は、図で言えば上面に凹凸を有するので、レンチキュラーレンズシート3と同様、プリズム面に傷付きや汚れを招く恐れもあるので、プリズム面を別の層10でならして平坦化することにより、これらの恐れを少なくすることを行なってもよい(図5)。
【0031】
層9の屈折率は、層10の屈折率にくらべ、相対的に高いことが好ましく、両層の屈折率の差を大きくすると、観察位置を大きくずらすことができる。また、層9、もしくは層10のいずれかを、屈折率が可変な液晶等の材料で構成して、層9、および層10を合せたレンチキュラーレンズシートの焦点距離を可変としてもよい。
【0032】
本発明のカラー立体表示装置においては、必要に応じて、カラー立体表示装置の表面の諸性能を改善するための方策を講じることができる。例えば、それらの方策としては、反射防止性、表面硬度(ハードコートによる)、ぎらつき防止性、もしくは帯電防止性の付与を挙げることができる。これらの方策は、通常、平坦な面への塗付方式によって行なわれることが多いので、上記したような、レンチキュラーレンズシート3のレンズ面を埋めて平坦化したものや、最も観察側に設け得るプリズムシートの表面のプリズム面を埋めて平坦化したものに適用することが好ましい。
【0033】
本発明のカラー立体表示装置には、観察者の方向に、表示パネルからの光(映像光)が有効に向かうよう、種々の方策を講じてもよく、例えば、プリズム、リニアフレネルレンズ、サーキュラーフレネルレンズ、2次元凸レンズ、もしくは3次元凸レンズ等を適宜な位置に配置することが、これらの方策として挙げることができる。
【0034】
既に説明したように、本発明のカラー立体表示装置においては、三原色のピクセル1つずつからなる画素において、各ピクセルが解像されない限り、カラー立体表示装置1全体で、カラー立体映像を眺めることが可能になる。図1(b)に示すように、隣接し合う3つのピクセル群2aから、R、B、およびG、またはB、G、およびRが一つの画素として認知されるには、これらの6ピクセルの両端と眼とを結んだ線の観察位置における角度θが、視力が1.0である観察者の場合、角度で1分以内であれば、各ピクセルは解像されない。
【0035】
そこで、観察位置とレンチキュラーレンズシート3の表面との距離をL(単位;mm)、観察位置の数(=多眼式の眼の数)をn、ピクセル幅をwとすると、3×n個のピクセルの合計幅が1分以内なのであり、角度1分程度の微小角度θに関しては、tanθ=θであるから、次式が成り立つ。即ち、3×n×w<(L×π)/(60×180)である。仮にLを2,500mm(=2.5m)、5眼式(n=5)とすると、w<2500×π/(60×180×3×5)=0.0485となり、ピクセル1個当りの幅を48μm以下とすれば、この条件では解像されないので、カラー立体画像を眺めることが可能になる。
【0036】
あるいは、ピクセル1個当りの幅が決まっているときに、観察距離Lをどれくらい取る必要があるかの例を示すと、ピクセル幅;40μm、2眼式(n=2)の場合、L>3×2×0.04×60×180/π=825となり、825mm以上の観察距離を取れば、6ピクセル分の幅以下の解像性を有しないので、カラー立体画像を眺めることが可能になる。
【0037】
次に、幾つかの製造例を挙げて、より実際的な本発明のカラー立体表示装置を示す。
【0038】
(製造例1)表示パネルとしては、水平画素数;3,840、ピクセル数;11,520、および垂直画素数;2,400の液晶ディスプレイを用いた。各ピクセルのカラーフィルタの色は向かって左側より、R、G、およびBのこの順の繰返しとなっている。この表示パネルの水平方向の2ピクセル毎に1つのレンチキュラーレンズを対応させ、従って、レンチキュラーレンズの総数が5,760のレンチキュラーレンズシートをレンズ面が観察者側になるよう、表示パネルの前面に密着させた。これにより、左右両眼に高精細ディスプレイの水平解像度に相当する映像信号を送ることができた。右眼では、RBGに相当する信号、また、左眼では、GRBに相当する信号にそれぞれ基づく色が見え、全体として、カラー立体画像を眺めることができる。
【0039】
(製造例2)上記製造例1と同じ諸元の表示パネルを用い、表示パネルの水平方向の6ピクセル毎に1つのレンチキュラーレンズを対応させ、従って、レンチキュラーレンズの総数が1,920のレンチキュラーレンズシートをレンズ面が観察者側になるよう、表示パネルの前面に密着させた。これにより、水平解像度は、640(=3,840÷6)となり、通常のTV信号の解像度で、6眼式の立体視画像を表示することができた。ただし、各ピクセルのカラーフィルタの配列を、レンチキュラーレンズ毎に変え、向かって左側から1番目のレンチキュラーレンズに対応するピクセルのカラーフィルタの配列を、RGBRGB、2番目のレンチキュラーレンズに対応するピクセルのカラーフィルタの配列を、GBRGBR、3番目のレンチキュラーレンズに対応するピクセルのカラーフィルタの配列を、BRGBRGとして、6眼の各位置で、それぞれ、RGB、GBR、BRGに相当する色が見えるようにし、表示パネルを表示させるための信号も、このピクセルのカラーフィルタの配列に合うよう変更した。
【0040】
(製造例3)製造例2のように、表示パネルの水平方向の6ピクセル毎に1つのレンチキュラーレンズを対応させ、また、各レンチキュラーレンズに対応する6つのピクセルのカラーフィルタを同色とし、即ち、RRRRRR、GGGGGG、BBBBBBのようにして、以降は、この繰返しとした。これにより、水平解像度が製造例2のものと同じである、6眼式の立体視画像を表示することができた。
【0041】
(製造例4)上記製造例1と同じ諸元の表示パネルを用い、表示パネルの水平方向の5ピクセル毎に1つのレンチキュラーレンズを対応させ、従って、レンチキュラーレンズの総数が2,304のレンチキュラーレンズシートをレンズ面が観察者側になるよう、表示パネルの前面に密着させた。この場合は、製造例3のように各ピクセルのカラーフィルタの配列を変える必要はなく、向かって左側より、R、G、およびBのこの順の繰返しのままとした。この場合には、水平解像度は、768(=3,840÷5)となり、欧州、中東、豪州、および中国等の各国のTVに相当する水平解像度で、5眼式の立体視画像を表示することができた。
【0042】
(製造例5)使用した表示パネルのピクセルのサイズは、縦;150μm、横;50μmであり、また、使用したレンチキュラーレンズは、ピッチ;100μm、曲率;450μm、レンズ部分の屈折率;1.5である。この場合には、ディスプレイから約2m離れた位置で立体画像を眺めることができた。
【0043】
(製造例6)レンチキュラーレンズの曲率を100μmとし、レンチキュラーレンズシートの観察面側のレンズ面の凹凸を、屈折率が1.4の樹脂を用いて埋めることにより、表面を平坦化した。解像度としては、製造例1の場合と同じ立体画像を見ることができ、レンチキュラーレンズシートの観察側が平坦であるために、画像のコントラストが優れており、また、表面の屈折率が低いために、反射が減って、外部の照明や事物が表面に映って画像が見えにくくなることが低減できた。
【0044】
(製造例7)製造例2と同様に、ただし、レンチキュラーレンズシートのレンズ部分を屈折率が1.45〜1.6の間で可変である液晶で構成したので、立体画像を観察できる距離を調整することができた。
【0045】
(製造例8)製造例3と同様に、ただし、観察側にプリズムシートとプリズムシートのプリズム面を屈折率が可変である液晶で埋めて平坦化したものを用いたので、水平方向の観察位置を調整することができた。
【符号の説明】
【0046】
1 カラー立体表示装置(立体液晶ディスプレイ)
2 カラーフィルタ(表示パネル)
3 レンチキュラーレンズシート
4 液晶パネル
5 バックライト
6 左右各々の眼(観察位置)用の画素
7 眼(観察位置)
8、10 低屈折率層
9 プリズムシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピクセルが一定ピッチで多数配列されて構成された表示パネルと、
前記表示パネルに対向して配置され、レンチキュラーレンズがレンズの幅方向に多数並べられたレンズ面を有するレンチキュラーレンズシートと、
前記レンチキュラーレンズシートよりも観察側に配置され、観察側の断面が鋸歯状のプリズム面を有するプリズムシートと、
前記プリズム面を埋めて平坦化し、前記プリズムシートの屈折率よりも低い屈折率を有する平坦化層と、
を備え、
前記レンチキュラーレンズは、前記レンズの幅方向において、1つにつきn個(ただし、nは2〜20の自然数)の前記ピクセルからなる1つずつのピクセル群が対応するよう配列され、
前記表示パネルは、
隣接する3つの前記ピクセル群の各々を構成するn個のピクセルのうち、一方の側から数えた同番目のピクセルに、三原色のそれぞれが割り振られたピクセルの各組からなり、
前記ピクセルの各組が、前記一方の側から数えた順に、前記レンチキュラーレンズシートのレンズ面側に設定されたn個の観察位置の各々に順に送られるべき画素を構成し、
前記プリズムシート及び前記平坦化層の少なくとも1つは、屈折率が可変な材料で構成されていること
を特徴とするカラー立体表示装置。
【請求項2】
前記屈折率が可変な材料は、液晶であること
を特徴とする請求項1に記載のカラー立体表示装置。
【請求項3】
前記レンチキュラーレンズシートのレンズ面が前記レンチキュラーレンズシートの屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層により埋められて平坦化されていること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカラー立体表示装置。
【請求項4】
前記レンチキュラーレンズシート及び前記低屈折率層の少なくとも1つは、屈折率が可変な材料で構成されていること
を特徴とする請求項3に記載のカラー立体表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−181550(P2012−181550A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−121024(P2012−121024)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【分割の表示】特願2001−212926(P2001−212926)の分割
【原出願日】平成13年7月13日(2001.7.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】