説明

カラー裏面照射型撮像素子

【課題】撮像面に凹凸が存在する場合であっても、カラーフィルタ及びマイクロレンズの損傷を避けるとともに、画素間のクロストークを低減することが可能なカラー裏面照射型撮像素子を提供する。
【解決手段】p型半導体層21、22にn型半導体層23が積層されてなる光電変換部29を含み、p型半導体層21、22側に撮像面20aを有する裏面照射型撮像素子20と、裏面照射型撮像素子20の各画素に対応して配置される複数のカラーフィルタ42、及び、複数のカラーフィルタ42を透過した被写体光を各画素に集光する複数のマイクロレンズ43が形成された透光性基板41と、を備え、マイクロレンズ43は凸曲面状の出射面を備えており、凸曲面状の出射面の頂点と撮像面20aとの間に、撮像面20aにおける凹凸の影響を受けずに画素間のクロストークを低減するための間隔が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー裏面照射型撮像素子に係り、特に、超高速撮影装置に適用可能なカラー裏面照射型撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体技術の進展により、画素周辺記録型撮像素子のような機能的撮像素子が提案されている。図11は、従来の表面照射型の機能的撮像素子において、画素が配置される領域(以下、画素エリアと記す)の一部を模式的に示す概念図である。画素エリア71内には、複数の画素72(図中には6個だけ示している)が配置されている。画素72内には、光電変換部73の他に、メモリ、ADC回路などで構成される機能的回路74が配置されており、この機能的回路74が1画素の面積の大半(例えば、80%以上)を占有している。
【0003】
また、近年、1秒間に100万フレームの画像を撮影可能な超高速撮影装置が提案されている。撮影速度が速くなるほどフレーム間隔は短くなり、1フレーム当たりの光量が少なくなるので、超高速撮影装置に適用される撮像素子には非常に高い感度が要求される。このため、被写体光を受光する撮像面の面積を大きくすることが重要となるが、上述の表面照射型の機能的撮像素子は開口率が低いという問題を有している。
【0004】
そこで、機能的回路が形成されていない裏面から被写体光を受光する裏面照射型の撮像素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたような裏面照射型撮像素子においては、機能的回路に妨害されることなく被写体光が光電変換部に到達するため、理論的な開口率を100%にすることが可能であり、高感度化や撮影速度の高速化を図る上で有利である。
【0005】
なお、特許文献1に開示された裏面照射型撮像素子は、裏面側の撮像面上に反射防止膜を介してカラーフィルタ及びマイクロレンズを設けた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−77498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたような裏面照射型撮像素子の撮像面には、エッチング残りや、エッチング不均一性による若干の突起が数ミクロンレベルで生じている場合がある。また、裏面照射型撮像素子をチップキャリアに実装する際に、バンプボンディングなどによって撮像面に隆起やうねりなどの凹凸が生じる可能性もある。さらに、このように撮像面の平坦性が低い場合には、撮像面上に形成されるカラーフィルタ及びマイクロレンズに損傷が生じやすいという問題がある。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、撮像面に凹凸が存在する場合であっても、カラーフィルタ及びマイクロレンズの損傷を避けるとともに、画素間のクロストークを低減することが可能なカラー裏面照射型撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のカラー裏面照射型撮像素子は、p型半導体層にn型半導体層が積層されてなる光電変換部を含み、前記p型半導体層側に撮像面を有する裏面照射型撮像素子と、前記裏面照射型撮像素子の各画素に対応して配置される複数のカラーフィルタ、及び、該複数のカラーフィルタを透過した被写体光を前記各画素に集光する複数のマイクロレンズが形成された透光性基板と、を備え、前記マイクロレンズは前記カラーフィルタを透過した被写体光を出射する凸曲面状の出射面を備えており、前記凸曲面状の出射面の頂点と前記裏面照射型撮像素子の前記撮像面との間に、前記撮像面における凹凸の影響を受けずに前記画素間のクロストークを低減するための間隔が設けられている構成を有している。
【0010】
この構成により、本発明のカラー裏面照射型撮像素子は、撮像面に凹凸が存在する場合であっても、カラーフィルタ及びマイクロレンズの損傷を避けるとともに、画素間のクロストークを低減することができる。
【0011】
また、本発明のカラー裏面照射型撮像素子は、前記撮像面の周辺領域に前記間隔を設けるためのスペーサを備える構成を有していても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、裏面照射型撮像素子と、カラーフィルタ及びマイクロレンズが形成された透光性基板と、を組み合わせることにより、撮像面に凹凸が存在する場合であっても、カラーフィルタ及びマイクロレンズの損傷を避けるとともに、画素間のクロストークを低減することが可能なカラー裏面照射型撮像素子を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るカラー裏面照射型撮像素子の構成を示す断面模式図
【図2】本発明に係るカラー裏面照射型撮像素子の要部の構成を示す断面模式図
【図3】カラーフィルタの構成例を示す上面図
【図4】カラーフィルタから撮像面までの間隔に対する集光率の変化を示したグラフ
【図5】チップキャリアへの実装後の裏面照射型撮像素子の表面状態を示す断面模式図
【図6】マイクロレンズを使用した場合と使用しない場合の光学シミュレーション結果を示す図
【図7】マイクロレンズの頂点から撮像面までの間隔に対する集光率の変化を示したグラフ
【図8】本発明に係るカラー裏面照射型撮像素子の製造方法を示す工程図
【図9】本発明に係るカラー裏面照射型撮像素子の製造方法を示す工程図
【図10】カラーフィルタ基板の形状の一例を示す断面模式図
【図11】従来の撮像装置の画素エリアの一部を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るカラー裏面照射型撮像素子の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各図面上の各構成の寸法比は、実際の寸法比と必ずしも一致していない。
【0015】
図1は、本発明に係るカラー裏面照射型撮像素子10の構成を示す断面模式図である。また、図2は、図1に示したカラー裏面照射型撮像素子10の要部の構成を示す断面模式図である。
【0016】
図1、図2に示すように、カラー裏面照射型撮像素子10は、被写体光を受光して被写体を撮像する裏面照射型撮像素子20と、被写体光を裏面照射型撮像素子20の撮像面(裏面)20aに集光するカラーフィルタ基板40と、カラーフィルタ基板40と裏面照射型撮像素子20の撮像面20aとの間に空隙を設けるためのスペーサ50と、を備える。カラーフィルタ基板40と被写体(不図示)との間には、撮影用レンズを含む前段光学系(不図示)が配置されている。なお、図1、図2において、裏面照射型撮像素子20の裏面と表面とをそれぞれ符号20a及び20bを付して示している。
【0017】
裏面照射型撮像素子20は、p+半導体層21と、p−半導体層22と、n−半導体層23と、n+半導体層からなる電荷集積領域としての信号集積部24と、pウェル25と、絶縁層26と、集積ゲート電極27と、転送ゲート電極28と、を含む。p−半導体層22及びn−半導体層23の積層体は、光電変換部としての受光部29を構成する。p−半導体層22のn−半導体層23に接する面と反対側の面は、裏面照射型撮像素子20の撮像面(裏面)20aであり、光入射面となる。
【0018】
ここで、図2に示すように、裏面照射型撮像素子20の1つの画素は、1つのpウェル25と1つの信号集積部24を含んでなる。図面が煩雑になるのを避けるために、図1には、6つのpウェル25と5つの信号集積部24を示しているが、実際にはpウェル25と信号集積部24の数は等しく、画素は平面視でマトリクス状に配列される。
【0019】
信号集積部24は、n−半導体層23の内部に、例えば、イオン注入を行うことにより形成される。信号集積部24は、受光部29内で生成された電荷(電子−正孔対)のうち、電子を蓄積するための半導体領域として機能する。
【0020】
pウェル25は、n−半導体層23の内部の信号集積部24に隣接する領域に形成されている。pウェル25の不純物濃度は、幅方向における端部よりも中央部の方が高くなるように設定される。このようにpウェル25の不純物濃度に幅方向の分布を形成することにより、n−半導体層23とpウェル25との界面近傍において、pウェル25の中央部から端部(信号集積部24に近い側)に向けて電子を誘導するための電場を生じさせることができる。
【0021】
なお、pウェル25の一部には、CCDメモリを含む機能的回路30が形成される。ここで言う機能的回路30とは、受光部29で得られた画素毎の信号電荷の蓄積、転送、増幅、読み出し、A/D変換、隣接画素間での演算などを行う機能を持った回路のことを指している。本実施形態では、機能的回路30として蓄積機能を持った回路を例示している。
【0022】
絶縁層26は、例えば、酸化シリコン(SiO2)からなり、p−半導体層22及びn−半導体層23の積層体の被写体光が入射する側と反対側の面に形成される。
【0023】
集積ゲート電極27は、信号集積部24に対向するように絶縁層26の内部に形成される。信号集積部24に電子を集積するときには、集積ゲート電極27には所定の正の電圧が印加される。また、信号集積部24に集積した電子をpウェル25内の機能的回路30に転送する際には、集積ゲート電極27には所定の負の電圧が印加される。
【0024】
転送ゲート電極28は、pウェル25に対向するように絶縁層26の内部に形成される。転送ゲート電極28は、機能的回路30に対応した複数の個別電極からなっており、各個別電極には独立に電圧が印加できるようになっている。
【0025】
集積ゲート電極27及び転送ゲート電極28は、例えば、ポリシリコンによって構成される。なお、集積ゲート電極27と転送ゲート電極28は、互いに異なる材料によって構成されても良い。
【0026】
絶縁層26内には、集積ゲート電極27及び転送ゲート電極28に電圧を印加するために必要な金属配線(不図示)やその他の金属配線(不図示)が形成されている。
【0027】
カラーフィルタ基板40は、図1に示すように、透光性基板41と、透光性基板41の光出射面側に形成された複数のカラーフィルタ42と、複数のカラーフィルタ42の光出射面側に形成された透光性樹脂からなる複数のマイクロレンズ43と、を含む。
【0028】
透光性基板41の材料としては、光学的平面に研磨できるものが好ましく、また、裏面照射型撮像素子20の材質と近い線膨張係数を有するものが好ましい。例えば、裏面照射型撮像素子20の材質がSiの場合、透光性基板41の材料としては、KzFS4(線膨張係数:49×10-7)、K−ZnSF8(線膨張係数:60×10-7)等が好ましい。
【0029】
マイクロレンズ43は、例えば、窒化シリコン、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂からなる。また、マイクロレンズ43は、被写体光の入射側が平面、被写体光の出射側が凸曲面状となる形状を有しており、カラーフィルタ42を透過した被写体光を対応する裏面照射型撮像素子20の画素に集光するようになっている。
【0030】
図3は、カラーフィルタ42の構成例を示す上面図である。カラーフィルタ42としては、裏面照射型撮像素子20の各画素に対応して、R、G及びBの各原色のフィルタが正方格子状に配置されたベイヤ配列のフィルタ(図3(a))、または、補色(グリーン、マゼンタ、イエロー、シアンの4色)が正方格子状に配置された色差順次配列のフィルタ(図3(b))などを用いることができる。
【0031】
また、スペーサ50は、マイクロレンズ43の凸曲面状の出射面の頂点と裏面照射型撮像素子20の撮像面20aとの間に、所定間隔を設けてカラーフィルタ基板40を保持するようになっている。スペーサ50は、例えば紫外線硬化型または熱硬化型の樹脂によって、裏面照射型撮像素子20の撮像面20a上の周辺領域において固定されるようになっている。
【0032】
以下では、本発明に係るカラー裏面照射型撮像素子10におけるマイクロレンズ43と空隙の役割について説明する。図4は、カラー裏面照射型撮像素子10からマイクロレンズ43を除いた構成において、カラーフィルタ42から撮像面20aまでの間隔Dをパラメータとして集光率の変化を示したグラフである。ここでの集光率とは、裏面照射型撮像素子20の1つの画素に対応するp−半導体層22の領域に入射した被写体光が、受光部29内で光電変換され、同一の画素に対応する信号集積部24で電子として蓄積される割合を表すものである。
【0033】
図4から分かるように、集光率は間隔Dが増すほど線形に低下していき、集光しなかった光は画素間のクロストークに寄与することになる。このグラフによれば、カラーフィルタ42から撮像面20aまでの間隔Dを0にすれば、集光率は確実に100%となり、好適である。
【0034】
しかしながら、裏面照射型撮像素子20の撮像面20aには、エッチング残りや、エッチング不均一性による若干の突起が数ミクロンレベルで生じている場合がある。また、裏面照射型撮像素子20をチップキャリアに実装する際に、バンプボンディングなどによって撮像面20aに隆起やうねりなどの凹凸が生じる可能性もある。
【0035】
図5は、チップキャリアに実装後の裏面照射型撮像素子20の表面状態を示す断面模式図である。裏面照射型撮像素子20は、その表面20bが充填樹脂62を介してチップキャリア61と対向するように配置される。また、裏面照射型撮像素子20内の金属配線(不図示)とチップキャリア61の電極パッド(不図示)は、バンプ63によるフリップチップボンディングや、ワイヤボンディング等の手法を用いて電気的に接続される。
【0036】
図5に示した突起64、隆起65、及びうねりなどを避けるためには、裏面照射型撮像素子20の撮像面20aとカラーフィルタ42との間の間隔Dを零よりも大としなければならない。ここで、間隔Dは、撮像面20aとカラーフィルタ42との厚さ方向の最大距離、言い換えれば、撮像面20a内の突起64、隆起65、及びうねりが生じていない平坦面を基準としたカラーフィルタ42までの距離であるとする。
【0037】
また、撮像面20aに上記のような凹凸が生じている場合、主として樹脂で形成されたカラーフィルタ42の損傷を防ぐためにも間隔Dの存在は重要である。間隔Dを零よりも大とする場合、既に図4に示したように集光率は低下し、その分画素間のクロストークが増えるが、これを避けるためにマイクロレンズ43による集光効果を利用する。
【0038】
通常、表面照射型撮像素子用のマイクロレンズは、開口率の低い撮像面に集光するために用いられ、優れた集光性能が要求される。一方、本実施形態における裏面照射型撮像素子20の開口率は100%であるため、本来ならばマイクロレンズ43を用いて集光させる必要はない。
【0039】
従って、本実施形態におけるマイクロレンズ43の役割としては、画素間のクロストーク抑止性能が重要となる。このクロストーク抑止性能はマイクロレンズ43の材料となる透光性樹脂の屈折率と、マイクロレンズ厚みtと、主に濡れ性によって決まるマイクロレンズ端部の接触角に依存するマイクロレンズ形状によって決まり、この抑止性能によって撮像面20aとマイクロレンズ43の頂点間に許容される間隔dの範囲が決定される。なお、間隔dは、撮像面20aとマイクロレンズ43の頂点との厚さ方向の最大距離、言い換えれば、撮像面20a内の突起64、隆起65、及びうねりが生じていない平坦面を基準としたマイクロレンズ43の頂点までの距離であるとする。
【0040】
図6は、カラーフィルタ基板40がマイクロレンズ43を備える場合と備えない場合の光学シミュレーション結果を示す図である。ここでは、レンズの材料である透光性樹脂の屈折率を1.6、マイクロレンズ厚みtを2.25μm、マイクロレンズ端部の接触角を52.6°であるとしている。また、撮像面20aから間隔Dだけ上方に離れた位置に、カラーフィルタ42を模した同形の正方形のアパーチャを想定し、そのアパーチャに前段光学系により集光された光が入射する場合をシミュレーションしている。より具体的には、被写体とカラーフィルタ基板40との間に配置される撮影用レンズを含む前段光学系(不図示)のF値を1.4、カラーフィルタ42と裏面照射型撮像素子20の撮像面20aとの間隔Dを10μm、1画素を1辺が46.8μmの正方形としている。
【0041】
図6(a)は、カラーフィルタ基板40がマイクロレンズ43を備えていない場合の光学シミュレーション結果である。図6(a)の左図は2つの画素をクローズアップして示しており、各画素の端部でクロストークが生じている様子が分かる。図6(a)の右図は、F値が1.4の前段光学系から出射された光が1つのカラーフィルタ42を通過し、撮像面20aに投影された像を示している。撮像面20aの1つの画素に集光した光の割合は93.520%であり、該1つの画素に集光しなかった光、即ちクロストークに寄与する光の割合は6.48%であった。
【0042】
図6(b)は、カラーフィルタ基板40がマイクロレンズ43を備えている場合の光学シミュレーション結果である。ここで、マイクロレンズ厚みtは2.25μm、間隔dは7.75μmである。図6(b)の左図に示すように、図6(a)のシミュレーション結果と比較して画素端部でのクロストークが抑止されている様子が分かる。また、図6(b)の右図は、F値が1.4の前段光学系から出射された光が1つのカラーフィルタ42を通過し、撮像面20aに投影された像を示している。1つの画素に集光した光の割合は96.77%、クロストーク分は3.23%となり、クロストーク分がマイクロレンズなしの状態と比較して約1/2に低下した。
【0043】
このマイクロレンズ43の集光率によってクロストークを抑止できる間隔dの範囲が決定される。図7は、マイクロレンズ43の頂点と撮像面20aとの間隔dをパラメータとして集光率の変化を示したグラフである。間隔dが0〜15μm程度であれば、集光率はほぼ一定であり、クロストークも良好に抑止されることが分かる。
【0044】
つまり、撮像面20aからマイクロレンズ43の頂点までの上記間隔dが15μm以内であるとともに、撮像面20a内の突起、隆起、及びうねりの高さが、撮像面20aの平坦面(最低面)から15μm以内であれば、撮像面20aの凹凸の影響は吸収され、クロストークが好適に抑止される。
【0045】
以下、カラー裏面照射型撮像素子10の製造方法を図8、図9を参照しながら説明する。
まず、図8(a)に示すように、p+型の半導体基板として、不純物濃度の高いシリコン基板200(例えば、ボロンのドーピング濃度が1×1018cm-3以上)を準備する。
【0046】
次に、気相成長によるエピタキシャル成長法により、シリコン基板200上にp−型のシリコン層(p−半導体層22)をエピタキシャル成長させる。さらに、p−半導体層22上に、リン等の不純物を含むシリコン層(n−半導体層23)をエピタキシャル成長させる。このようにして、シリコン基板200上に気相成長法によるエピタキシャル成長されたp−半導体層22、n−半導体層23を含む半導体ウェハを作製する。
【0047】
次に、図8(b)に示すように、n−半導体層23の一部の領域に、例えば、ヒ素をイオン注入することにより信号集積部24を形成する。また、信号集積部24に隣接する領域に、例えば、ボロンの熱拡散によりpウェル25(機能的回路30を内部に含む)を形成する。さらに、信号集積部24及びpウェル25が形成されたn−半導体層23の上に、CVD法によって絶縁層26を形成するとともに、集積ゲート電極27、転送ゲート電極28、及び金属配線(不図示)を形成する。
【0048】
次に、図8(c)に示すように、シリコン基板200を250μm程度まで機械的切削により薄片化する。
次に、図8(d)に示すように、ダイシングにより半導体ウェハを個別のチップに分離した後に、チップの表面、端面、及び裏面側の周囲500μm幅の範囲をワックス201で被覆する。
【0049】
次に、図9(e)に示すように、ワックス201をエッチングマスクとして用いて、エッチングレートが半導体ウェハの抵抗率に依存する性質を利用して、シリコン基板200の薄片化を行う。この化学エッチングには、フッ酸、硝酸、酢酸を1:3:8で混合したエッチング液によるフッ硝酸選択エッチングと呼ばれる手法を用いる。
【0050】
図9(e)には、p−半導体層22の中央部の面が露出するまでエッチングを行った例を示しているが、p−半導体層22の中央部付近のシリコン基板200(21)を数μm程度残してエッチングを終了しても良い。エッチング終了後、ワックス201を除去して、画素エリアを裏面とする周囲500μm幅のリムを持った額縁状の裏面照射型撮像素子20を完成させる。
【0051】
次に、カラーフィルタ基板40の製造工程について説明する。図9(f)に示すように、透光性基板41上にカラーレジストを塗布して露光、現像によりパターニングしてカラーフィルタ42を形成する。
【0052】
次に、図9(g)に示すように、カラーフィルタ42上に、マイクロレンズ43用の感光性・透光性樹脂を塗布し、露光、現像、高温リフローにより、マイクロレンズ43を形成する。
【0053】
次に、図9(h)に示すように、裏面照射型撮像素子20と、カラーフィルタ基板40との位置合わせを行う。このとき、裏面照射型撮像素子20とカラーフィルタ基板40を向かい合わせた状態で保持する必要があるが、例えば、真空チャックつきの透光性基板で作製した保持冶具202などを使用してカラーフィルタ基板40を保持するのが好適である。
【0054】
そして、カラーフィルタ42の透過特性に応じたR、GもしくはBの単色の平行光源(不図示)から出射される平行光を保持冶具202側からカラーフィルタ基板40を介して裏面照射型撮像素子20に入射させる。平行光が裏面照射型撮像素子20に入射している状態で裏面照射型撮像素子20を駆動させ、その出力画像を参照しながらカラーフィルタ基板40を微小移動させ、位置合わせを行うのが好適である。位置合わせには微小移動の可能な6軸駆動のステージを用いるのが好ましい。
【0055】
位置合わせが終了した後、カラーフィルタ42及びマイクロレンズ43を損傷させないために、カラーフィルタ基板40の画素エリアの外周にスペーサ50を形成しておくことが好適である(図1参照)。このスペーサ50の高さは、先に述べたマイクロレンズ43の頂点と撮像面20aとの間隔dがクロストークを抑止できる高さとする。
【0056】
なお、裏面照射型撮像素子20のレイアウトにも依存するが、カラーフィルタ基板40の画素エリアに対応する部位(カラーフィルタ42とマイクロレンズ43が形成されている部位)以外の周辺部分は極力少なくしなければならない場合がある。この場合、カラーフィルタ基板40を画素エリアと同程度のサイズに加工することになるが、カラーフィルタ基板40の厚みと前段光学系のF値の関係によって周囲にケラレが生じることがある。
【0057】
図10は、例えば、前段光学系がF値の低い縮小光学系である場合のカラーフィルタ基板40の形状の一例を示す断面模式図である。図10に示すように、カラーフィルタ基板40を切削する際には、カラーフィルタ基板40の厚みと前段光学系のF値に応じたマージンMを設けることが好適である。
【0058】
以上説明したように、本発明に係るカラー裏面照射型撮像素子は、撮像面に凹凸が存在する場合であっても、カラーフィルタ及びマイクロレンズの損傷を避けるとともに、画素間のクロストークを低減することができる。
【0059】
なお、通常の撮像素子においては、個々のチップに分離される前に、フォトリソグラフィーの手法でカラーフィルタが撮像面上に形成される。一方、個々のチップに分離された後に裏面処理が施された裏面照射型撮像素子、あるいは、既にパッケージ化されているモノクロの裏面照射型撮像素子に直接カラーフィルタを形成することは難しい。しかしながら、本実施形態におけるカラーフィルタ基板を上記の撮像素子に適用することにより、通常のフォトリソグラフィーの工程ではカラーフィルタを形成できない撮像素子を単板カラー化することが可能となる。また、このようにして単板カラー化された撮像素子も本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るカラー裏面照射型撮像素子は、撮像面に凹凸が存在する場合であっても、カラーフィルタ及びマイクロレンズの損傷を避けるとともに、画素間のクロストークを低減することができるという効果を有し、超高速撮影装置に適用可能なカラー裏面照射型撮像素子等として有用である。
【符号の説明】
【0061】
10 カラー裏面照射型撮像素子
20 裏面照射型撮像素子
20a 裏面(撮像面)
20b 表面
21 p+半導体層(p型半導体層)
22 p−半導体層(p型半導体層)
23 n−半導体層(n型半導体層)
24 信号集積部
25 pウェル
26 絶縁層
27 集積ゲート電極
28 転送ゲート電極
29 受光部(光電変換部)
30 機能的回路
40 カラーフィルタ基板
41 透光性基板
42 カラーフィルタ
43 マイクロレンズ
50 スペーサ
61 チップキャリア
62 充填樹脂
63 バンプ
64 突起
65 隆起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型半導体層にn型半導体層が積層されてなる光電変換部を含み、前記p型半導体層側に撮像面を有する裏面照射型撮像素子と、
前記裏面照射型撮像素子の各画素に対応して配置される複数のカラーフィルタ、及び、該複数のカラーフィルタを透過した被写体光を前記各画素に集光する複数のマイクロレンズが形成された透光性基板と、を備え、
前記マイクロレンズは前記カラーフィルタを透過した被写体光を出射する凸曲面状の出射面を備えており、前記凸曲面状の出射面の頂点と前記裏面照射型撮像素子の前記撮像面との間に、前記撮像面における凹凸の影響を受けずに前記画素間のクロストークを低減するための間隔が設けられていることを特徴とするカラー裏面照射型撮像素子。
【請求項2】
前記撮像面の周辺領域に前記間隔を設けるためのスペーサを備える請求項1に記載のカラー裏面照射型撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−4724(P2013−4724A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134151(P2011−134151)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)
【Fターム(参考)】