説明

カリウムアイオノマーの多層構造体

本発明は、表面抵抗率の小さいカリウムアイオノマーからなる層(X)を含む少なくとも2層以上の多層構造体であって、少なくとも一方の表面層にLLDPEのような表面抵抗率の大きい高分子材料からなる層(Y)を設け、層(Y)の帯電減衰特性を良好にした積層体である。層(X)を中間層あるいは他方の表面層とするこのような2層又は3層以上の多層構造体は、滑り性、耐磨耗性、防汚性等に優れており、フイルム、シート、容器などの包装材料として特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電減衰性、滑り性、耐磨耗性等に優れたカリウムアイオノマー層を少なくとも一つ有する多層構造体に関する。とくには、成形材料、例えば包装材料として好適な加工性、機械的特性、防汚性に優れた多層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の包装フイルムの分野においては、オレフィン系重合体が広く使用されており、中でもヒートシール性良好なところからエチレン系重合体が多用されている。フイルム加工においては、優れた滑り性が要求され、またフイルムの性能上は耐傷性に優れることが要求されているが、汎用のエチレン系重合体においてこれら両者の性能を備えているものはなかった。例えば各種密度のポリエチレンはスリップ剤を配合することによって滑り性を確保しているが、耐傷性については満足すべき性能を示さない。また汎用のアイオノマーは耐傷性に優れるものの滑り性については不充分である。
【0003】
また一般に高分子材料からなる成形品は帯電し易く、保管、輸送、使用の各段階において空気中の塵埃が付着し、表面が汚染されることが多い。成形品が粉体の包装袋などである場合は、内容物が袋内面に付着して外観を損ね、商品価値を低下させることがある。このような塵埃や粉体の付着を防止するために、従来、種々の帯電防止処方が提案され、実用化されてきた。
【0004】
一般に採用されている帯電防止処方として、帯電防止剤を練りこむ方法や帯電防止剤又は帯電防止性重合体を塗布する方法があるが、それぞれに欠点を有していることも知られている。例えば、前者の方法では、帯電防止剤のブリードにより包装内容物を汚染することがあり、あるいは帯電防止効果が経時的に低下するという問題点があった。また後者の方法では、一般に塗布膜の耐水性が悪く、塗布膜が損傷したり、あるいは吸水によってべとつきが生じるなどの欠点が指摘されていた。
【0005】
帯電防止剤や帯電防止性重合体を塗布する方法の前述のような欠点を改良する目的で、帯電防止性重合体層を表面層に出さず、その上にさらに他の重合体層を設ける試みもすでになされている。例えば、特公平2−28919号公報によれば、プラスチックフイルムに、イオン性導電性樹脂層を設け、さらにその表面に体積抵抗が1×1013Ω・cm以下で、厚さ10μm以下の耐水性プラスチック層を設けた帯電防止プラスチックフイルムが提案されている。この提案では、使用できる材料も限定されており、種々の性状を有する積層フイルムを得ることが難しい。
【0006】
また特開昭61−44646号公報には、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアルカリ金属塩やアミン塩を中間層とする帯電防汚性多層構造体が開示されている。さらに特開平10−193495号公報には、前記公報技術の低湿度下における非帯電性の改良のために、熱可塑性樹脂、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー及びポリヒドロキシ化合物からなる組成物を中間層とする防塵性多層構造体が提案されている。そして前記公報技術に係る多層構造体においては非帯電性が不充分であるとする比較例が提示されている。
【0007】
【特許文献1】特公平2−28919号公報
【特許文献2】特開昭61−44646号公報
【特許文献3】特開平10−193495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らはかかる現状に鑑み、とくに包装材料として好適なヒートシール性、防汚性、滑り性、耐傷性等に優れた素材を得るべく検討を行った。その結果、特定の層構成を有する多層構造体がこのような諸性質に優れていることを見出すに至った。またその後の検討において、表面層としての高分子材料を適当に選択することにより、上記後者の提案におけるようなポリヒドロキシ化合物を配合せずとも優れた防塵性能を有する多層構造体を得ることが可能であることを見出すに至った。
【0009】
したがって本発明の目的は、防汚性、滑り性、耐傷性等に優れ、塵埃や粉体などの静電付着を回避することが可能な防汚性多層構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー又は該カリウムアイオノマーと熱可塑性重合体との混合物を含む層(層X)と表面抵抗率1×1014Ω以上の高分子材料を含む層(層Y)を含む少なくとも2層以上の層を含む多層構造体であって、少なくとも一方の表面層は、23℃、50%相対湿度の雰囲気下で測定した印加電圧+5000Vにおける10%減衰時間が20秒以下であることを特徴とする多層構造体に関する。
【0011】
本発明の好ましい態様は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー又は該カリウムアイオノマーと熱可塑性重合体との混合物を含む層(X)を含む少なくとも2層以上の多層構造体であって、少なくとも一方の表面層(Y)が表面抵抗率1×1014Ω以上の高分子材料から構成され、表面層(Y)は、23℃、50%相対湿度の雰囲気下で測定した印加電圧+5000Vにおける10%減衰時間が20秒以下である多層構造体である。
【0012】
この好適態様においては、上記層(X)が他の表面層を占め、両表面層が23℃、50%相対湿度の雰囲気下で測定した印加電圧+5000Vにおける10%減衰時間が20秒以下である多層構造体が好ましい。このような多層構造体は、包装用フイルムもしくはシート、装飾用または自動車用の外装もしくは内装用途、中空容器などに好適であり、中でも滑り摩擦係数が1以下のものが好ましい。このような多層構造体はまた、袋体や多層容器などにも好適に使用できる。
【0013】
上記好適態様においてはまた、少なくとも3層以上の積層構成からなり、(a)上記層(X)が中間層を占め、表面層(Y)と異なる他の表面層(Z)も表面抵抗率1×1014Ω以上の高分子材料から構成され、(b)表面層(Y)が23℃、50%相対湿度の雰囲気下で測定した印加電圧+5000Vにおける10%減衰時間が20秒以下であると共に、(c)該表面層(Z)も23℃、50%相対湿度の雰囲気下で測定した印加電圧+5000Vにおける10%減衰時間が20秒以下となる多層構造体が好ましい。このような多層構造体もまた、フイルム、シート、袋体、多層容器などとして有用である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、帯電減衰性に優れ、帯電による塵埃や粉体の付着を防止することが可能な防汚性に優れた多層構造体を提供される。また、滑り性、耐傷性に優れた多層構造体が提供される。
本発明により、フイルム、テープ、シート、チューブ、管、袋体、多層容器(例えばブロー成形による容器)、ロッド、各種射出成形品、各種ブロー成形品などの形で使用できる、とくに包装材料として好適に使用できる多層構造体が提供される。
本発明により、外表面が滑り性、耐傷性、防汚性に優れると共に、内表面はヒートシール性、静電付着防止性に優れた包装材料とすることができる、カリウムアイオノマー層(X)を外層とするような袋体あるいは多層容器が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の多層構造体における一方の表面層あるいは中間層をなす層(X)は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー又は該カリウムアイオノマーと熱可塑性重合体との混合物を含む。層(X)の表面抵抗率には限定されないが、好ましくは表面抵抗率が1×1012Ω以下、一層好ましくは1×1011Ω以下、さらに好ましくは1×1010Ω以下の層である。層(X)を構成するカリウムアイオノマーにおいて、ベースポリマーとなるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸,さらに任意に他の極性モノマーを共重合して得られるものである。
【0016】
ここに不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどを例示することができるが、とくにアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また共重合成分となりうる他の極性モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル,アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素などであり,とくに不飽和カルボン酸エステルは好適な共重合成分である。
【0017】
このようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸、任意に他の極性モノマーを、高温,高圧下でラジカル共重合することによって得ることができる。
【0018】
カリウムアイオノマーの、ベースポリマーとなるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の酸含量が少なすぎたり、あるいはカリウムアイオノマーの中和度が小さすぎる場合は、表面層(Y)の印加電圧+5000Vにおける10%減衰時間が所望の値となるような優れた防汚性を有する多層構造体を得ることが容易でない。そのため、不飽和カルボン酸含量が10〜30重量%、好ましくは10〜25重量%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムイオンによる中和度が60%以上(60〜100%)、好ましくは70%以上(70〜100%)のカリウムアイオノマーを1種又は2種以上使用するのが好ましい。本発明においては、防汚性能の優れた多層構造体を得るために、平均酸含量の異なる2種以上のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーを使用することが望ましい。例えば、平均酸含量が10〜30重量%、好ましくは10〜20重量%である2種以上の共重合体であって、最高酸含量と最低酸含量のものの酸含量差が1重量%以上、好ましくは2〜20重量%異なるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムイオンによる中和度が60%以上、好ましくは70%以上の混合アイオノマーである。より具体的には、不飽和カルボン酸含量が1〜10重量%、好ましくは2〜10重量%、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが1〜600g/10分、好ましくは10〜500g/10分のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(A−1)と、不飽和カルボン酸含量が11〜25重量%、好ましくは13〜23重量%、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが1〜600g/10分、好ましくは10〜500g/10分のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(A−2)とからなり、平均不飽和カルボン酸含量が10〜30重量%、好ましくは10〜20重量%、190℃、2160g荷重における平均メルトフローレートが1〜300g/10分、好ましくは10〜200g/10分、一層好ましくは20〜150g/10分の混合共重合体成分の上記中和度を有する混合アイオノマーがとくに好適である。上記混合共重合体成分としてはまた、共重合体(A−1)と共重合体(A−2)の混合割合が、(A−1)5〜80重量部、好ましくは10〜70重量部に対し、(A−2)95〜20重量部、好ましくは90〜30重量部とするのが好ましい。
【0019】
カリウムアイオノマーのベースポリマーとなる上記のようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体には、すでに述べたような他の極性モノマーが例えば40重量%以下程度含まれていてもよいが、層(X)を表面層として使用する場合には、あまり多量に共重合されていると滑り性や耐傷性に悪影響を及ぼすようになるので、極性モノマー含量が30重量%以下、好ましくは15重量%以下の割合で共重合されたものを使用すべきである。
【0020】
カリウムアイオノマーとしてはまた、加工性や耐傷性、あるいは他成分を配合する場合には他成分との混和性等を考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.1〜100g/10分、とくに0.2〜50g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0021】
本発明の多層構造体においては、一方の表面層あるいは中間層に上記カリウムアイオノマーが使用される。このような層(X)は、カリウムアイオノマーのみで構成されていてもよいが、多層構造体の帯電防止性能、滑り性及び耐傷性を大きく損なわない範囲において、他の熱可塑性重合体を配合することができる。このような熱可塑性重合体としては、表面層(Y)として使用可能な後記する高分子材料の中から選択することができる。これらの中では、オレフィン系重合体、とくにエチレン単独重合体、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンの共重合体、エチレンと酢酸ビニルや不飽和カルボン酸エステルなどの不飽和エステルとの共重合体などから選択されるエチレン系重合体の使用が好ましい。このようなエチレン系重合体としては必ずしもバージン品を使用する必要はなく、例えば表面層としてエチレン系重合体を使用する場合において、成形時に発生するオフスペック品や耳などの成形屑をリサイクル使用してもよい。熱可塑性重合体の適当な配合量は、カリウムアイオノマー層(X)全体の95重量%以下、好ましくは90重量%以下、とくに好ましくは60重量%以下となるような割合が望ましい。すなわちカリウムアイオノマーが、層(X)全体の5重量%以上、好ましくは10重量%以上、とくに好ましくは40重量%以上とするのが望ましい。
【0022】
カリウムアイオノマー層(X)にはまた、非帯電性を向上させるためにアルコール性水酸基を2個以上有するポリヒドロキシ化合物を配合することもできる。具体的には各種分子量のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、グリセリン,ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトールのような多価アルコール及びこれらのエチレンオキシド付加物、多価アミンとアルキレンオキシドの付加物などを例示することができる。ポリヒドロキシ化合物の有効な配合割合は、層(X)の機械的特性を損なわない範囲、例えば15重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、もっとも好ましくは0.1重量%未満程度とするのが好ましい。
【0023】
本発明の多層構造体においては、一方の表面層(Y)に表面抵抗率1×1014Ω以上の高分子材料(層(X)と同じ樹脂または樹脂組成物は除く)が使用される。尚、本発明における高分子材料の表面抵抗率は、23℃、50%相対湿度の雰囲気下で測定されるものである。このような高分子材料は、その単味の成形品における表面抵抗率が1×1014Ω以上を示すものであり、具体的には、エチレンの単独重合体又はエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体、たとえば高圧法ポリエチレン、中・高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、とくに密度が940kg/m以下の直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレンと極性モノマーとの共重合体、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸などとの共重合体又はそのNa、Li、Zn、MgもしくはCaなどのアイオノマー、エチレンと1種又は2種以上の不飽和カルボン酸エステル、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸ジメチルなどとの共重合体、エチレンと上記のような不飽和カルボン酸と不飽和カルボン酸エステルの共重合体又はそのNa、Li、Zn、MgもしくはCaなどのアイオノマー、エチレンと一酸化炭素と任意に不飽和カルボン酸エステルや酢酸ビニルとの共重合体、ポリオレフィン系エラストマーの如きオレフィン系重合体、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレンやABS樹脂のようなゴム強化スチレン系樹脂のようなスチレン系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマーのようなポリエステル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、あるいはこれら2種以上の混合物などを例示することができる。
【0024】
このような高分子材料の中では、ヒートシール性良好なオレフィン系重合体、とりわけエチレンの単独重合体、エチレンと炭素数3以上、好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンの共重合体、例えば直鎖低密度ポリエチレン、エチレンと極性モノマーの共重合体などを使用するのが好ましい。とくに亜鉛アイオノマー及びメタロセン触媒によって製造されるエチレン系重合体から選ばれるものを使用するときには、ヒートシール性が優れると共に、層(X)にポリヒドロキシ化合物を共存させなくても優れた防汚性を有する表面層(Y)を有する多層構造体が容易に得られるので好ましい。
【0025】
上記亜鉛アイオノマーは、任意に他の極性モノマーを共重合されていてもよいエチレン・不飽和カルボン酸共重合体を、亜鉛で部分的に中和したものであり、他の金属イオンが共存したものであってもよい。
【0026】
ここに不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどを例示することができるが、とくにアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また共重合成分となりうる他の極性モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素などであり、とくに不飽和カルボン酸エステルは好適な共重合成分である。
【0027】
亜鉛アイオノマーのベースポリマーとしてのエチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、不飽和カルボン酸含量が1〜25重量%、とくに5〜20重量%程度のものが好ましく、また任意に共重合されていてもよい極性モノマー含量は例えば40重量%以下、好ましくは30重量%以下の割合である。また亜鉛アイオノマーとしては、中和度が10〜90%、とくに15〜80%程度のものが好ましい。さらに加工性及び実用物性を考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分、とくに0.2〜50g/10分のものの使用が好ましい。
【0028】
表面層(Y)を構成する高分子材料として好適なメタロセン触媒の存在下で製造されたエチレン系重合体は、エチレンの単独重合体又はエチレンと炭素数3以上、好ましくは3〜12のα−オレフィンの共重合体であって、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも1個以上有する、周期律表IVB族の遷移金属、好ましくはジルコニウムの化合物からなる触媒成分と有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分、必要により各種添加成分から形成される触媒の存在下に、エチレンを重合又は共重合することによって製造されるものである。
【0029】
上記エチレン共重合体における炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテンなどを例示することができるが、とくに炭素数3〜12程度のα−オレフィンの共重合体が好ましく使用される。
【0030】
メタロセン触媒の存在下で製造される上記エチレンの重合体又は共重合体としては、共重合体のα−オレフィン含量に応じ種々の密度のものが使用可能であるが、一般には密度が870〜970kg/m程度、とくに890〜950kg/m、とりわけ900〜940kg/mのエチレン共重合体を使用することが好ましい。また加工性及び実用物性を考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分、とくに0.2〜50g/10分のものの使用が好ましい。
【0031】
本発明の多層構造体は、上記カリウムアイオノマー層(X)と表面抵抗率が1×1014以上の高分子材料から構成される層(Y)を含む少なくとも2層からなるものであり、層(X)と層(Y)をそれぞれ表面層とする2層構成のものであってもよいが、この場合少なくとも両表面層の間に他の熱可塑性重合体層や接着層を設けることができる。本発明の多層構造体はまた層(Y)を表面層、層(X)を中間層とする3層以上の構成のものであってもよい。この場合、層(Y)以外の表面層(Z)として、層(Y)と同様に表面抵抗率が1×1014以上の高分子材料(層(X)と同じような樹脂または樹脂組成物は含まない)から構成させることができる。この場合においても、層(Y)と層(X)の間、あるいは層(X)と層(Z)の間に他の熱可塑性重合体層や接着層を設けることができる。このような熱可塑性樹脂重合体層として、層(Y)を構成するものとして例示した高分子材料から形成される層を挙げることができるが、多層構造体製造の際に生じるオフスペック品や耳などの成形廃品などを回収して使用する回収層であってもよい。このような回収層の材料は、基本的にいずれか一方の表面層材料、中間層材料あるいはこれらの混合物と同等であり、表面層あるいは中間層の少なくとも一方と相容性が優れているので各層間の接着性の向上に寄与することが期待される。
【0032】
また上記目的に使用できる接着層としては、層間接着強度を改善するものであればいかなるものでもよく、表面層材料として例示したような熱可塑性重合体から選択してもよく、またホットメルト型接着剤や塗布型接着剤であってもよい。工業的には熱可塑性重合体やそれに粘着付与剤等を配合した組成物から選択される押出コーティング可能な接着剤を使用するのが好ましい。
【0033】
本発明における好ましい態様の一つは、層(X)/中間層/層(Y)の3層構造からなり、第一の表面層(X)がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー層、中間層が直鎖状低密度ポリエチレン層あるいは直鎖状低密度ポリエチレン100重量部に対してエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーを100重量部以下、好ましくは50重量部以下含有せしめた混合物層、他の表面層(Y)が直鎖状低密度ポリエチレン層よりなる積層構造である。この直鎖状低密度ポリエチレンの密度は通常940kg/m以下である。上記中間層及び他の表面層のものとしては、とくにメタロセン触媒の存在下で製造されたエチレン系重合体が好ましい。また各層の厚み比は、第一の表面層(X)が10〜90、中間層が0〜60、他の表面層(Y)が10〜90となる割合であることが好ましい。
【0034】
本発明において他の好ましい態様は、外層(X)/中間層/内層(Y)の3層構造からなり、外層(X)がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー層(非発泡層又は発泡層)、中間層がエチレン・酢酸ビニル共重合体等のエチレン・不飽和エステル共重合体層、内層(Y)が低、中、高密度ポリエチレン、メタロセン系エチレン重合体などのエチレン単独重合体又はエチレンとα−オレフィンの共重合体からなる層よりなる積層構造である。この積層構造よりなるブロー成形による多層ボトル(容器)は、防汚性、滑り性、耐傷性に優れるだけではなく、表面反射光沢が小さく、曇り度が高い絹布状の外観を有する意匠性に優れたボトルとなる。
【0035】
本発明において好ましい他の態様は、外層(Y)/中間層(X)/内層(Z)又は外層(Z)/中間層(X)/内層(Y)の3層構造からなり、外層(Y)及び内層(Z)(又は外層(Z)及び内層(Y))が低、中、高密度ポリエチレン等のポリエチレンあるいはエチレン・酢酸ビニル共重合体等のエチレン・不飽和エステル共重合体であり、中間層(X)がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー層よりなる積層構造である。この積層構造よりなるブロー成形による多層ブローボトル(容器)は、防汚性、滑り性、耐傷性等に優れている。
【0036】
本発明の多層構造体は、各層を好ましくは押出コーティングや共押出しあるいはブロー成形により積層することにより製造することができる。全体の層厚みは任意であるが、例えば10〜3000μm、とくに20〜1000μm程度の厚みとなるようにするのがよい。本発明の多層構造体においては、少なくともいずれか一方の表面層が23℃、50%相対湿度の雰囲気下で測定した印加電圧+5000Vにおける10%減衰時間(+500Vに減衰するまでの時間)が20秒以下、好ましくは10秒以下、一層好ましくは1秒以下とするものである。層(X)及び層(Y)がそれぞれ表面層を形成する場合において、層(X)のみが上記減衰特性を有し、層(Y)の上記減衰時間が20秒を越えても差し支えない。しかしながらこの場合においても、層(Y)も上記減衰時間が20秒以下、好ましくは10秒以下、一層好ましくは1秒以下とするのが好ましい。そのためにはカリウムアイオノマー層(X)の厚みを5μm以上、好ましくは10μm以上とし、また表面層(Y)側の厚みを、表面層の厚みあるいは回収層や接着層を設ける場合は表面層とこれら層との総厚みとしては500μm以下、とくに300μm以下とするのが好ましい。同様に層(X)を中間層とし、他方の表面層(Z)を設ける場合には、層(Y)が上記減衰時間が20秒以下であれば、層(Z)における上記減衰時間が20秒を越えても差し支えないが、好ましくは層(Z)においても上記減衰時間が20秒以下、好ましくは10秒以下、一層好ましくは1秒以下とするのが好ましい。そのためには表面層(Z)側の厚みを、表面層の厚みあるいは回収層や接着層を設ける場合は表面層とこれら層との総厚みとしては500μm以下、とくに300μm以下とするのが好ましい。また実用的な性能を考慮すると、カリウムアイオノマー層厚みに対する他の層の総厚みの厚み比率を、0.1〜100、とくに0.5〜50の範囲とするのが好ましい。
【0037】
本発明の多層構造体の各層には必要に応じ、各種添加剤を配合することができる。このような添加剤の例として、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、滑剤、ブロッキング防止剤、無機充填剤、発泡剤、発泡助剤などを例示することができる。とくに層(X)を外層とする多層ボトルにおいて、層(X)に発泡剤を配合して発泡させた多層ボトルは、絹布状の外観を有する意匠性に優れたボトルとなる。このような多層ボトルは、層(X)を形成する前記カリウムアイオノマー100重量部当り、アゾジカルボアミド、ジニトロソペンタメチレンジアミン、スルフォニルヒドラジッド、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウムのような有機又は無機系の化学発泡剤を0.1〜10重量部程度配合しておき、ブロー成形時に発泡させることによって得ることができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例において使用した原料及び得られた多層構造体の性能評価方法を以下に示す。
【0039】
1.使用原料
[高分子材料]
表1のものを使用した。
【0040】
【表1】


【0041】
[カリウムアイオノマー]
表2のベースポリマーを原料とする表3記載のカリウムアイオノマーを使用した。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
23℃、50%相対湿度雰囲気に24時間放置した多層構造体試験片を木綿布で10回擦った直後、タバコ1本分の灰を載せて試験片を反転させたときの灰の残り具合で判定した。
◎:灰が全く残らない
○:灰が僅かに残る
△:灰がまばらに残る
×:灰がほぼ全面に残る
【0045】
(1−3)電位測定
40℃、80%相対湿度雰囲気に24時間放置した多層容器の表面を、静電気測定器(SV−511、日本スタテック(株)製)にて測定
【0046】
(1−4)削り節付着
40℃、80%相対湿度雰囲気に24時間放置した多層容器の表面を木綿布で10回擦った後、かつお節を容器に接近させ、その付着度合いを観察した。
○:全く付かない
△:多少付着する
×:直ちに付着する
【0047】
(2)滑り性能
(2−1)滑り摩擦係数(傾斜角法)
基盤面に、測定する多層構造体又は厚紙を置き、基盤と接する荷重の下面に測定する多層構造体を貼り、基盤を傾斜させて荷重が滑り出す時点の角度から滑り摩擦係数を算出した。
【0048】
(3)耐傷付き性能
(3−1)学振式磨耗
綿帆布10号を用い、荷重430g、接触面積224m、往復速度60回/分、往復回数100回の条件で、多層構造体表面に傷つき処理を行った後、表面の削られた面積の割合を顕微鏡(35倍、観察幅2mm)写真を用いて測定することにより判定した。
◎:削られた部分5%未満
○:削られた部分5%以上25%未満
△:削られた部分25%以上50%未満
×:削られた部分50%以上
【0049】
[実施例1]
多層キャストフイルム成形機を用い、MPE−2を第1層(表面層)、KI0−2を第2層(中間層)、MPE−2を第3層(表面層)とし、各層の厚み構成が表4に記載の多層フイルムを作成した。この積層構成の第1層から第2層界面までの厚みと第2層自身の厚みとの比(層厚み比)は0.75であった。得られた多層フイルムの第1層表面の評価結果を表4に示す。
【0050】
[実施例2]
第1層MPE−2と第2層KI0−2、及び第2層KI0−2と第3層MPE−2の間に接着層として三井化学(株)製接着性ポリオレフィン、商品名アドマーNF528(MFR2.2g/10分を用い、各層の厚み比を表4に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして多層フイルムを作成した。第1層の厚みと上部接着層の厚みの合計と、第2層の厚みとの層厚み比、及び第1層表面の非帯電性能の評価結果を表4に示す。
【0051】
[実施例3]
第1層と第3層をMPE−2からMPE−1に変更し、各層の厚みを表4記載の通りに変更した以外は実施例2と同様にして多層フイルムを作成した。層厚み比及び第1層表面の非帯電性能の評価結果を表4に示す。
【0052】
[実施例4〜5]
HM−1を第1層、EVA−1とKI0−1のメルトブレンド(重量比80/20)を第2層、EVA−2を第3層とし、各層の厚みを表4記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして多層フイルムを作成した。層厚み比及び第1層表面の非帯電性能の評価結果を表4に示す。
【0053】
[比較例1]
多層キャストフイルム成形機を用い、各層をMPE−2とすることによりMPE−2の単層フイルム(厚み50μm)を作成した。得られた単層フイルムの表面の非帯電性能は、表4に示すように全く不充分なものであった。
【0054】
[比較例2]
第2層をKI0−2からHM−2に変更したい以外は全て実施例3と同様にして多層フイルムを作成した。得られた多層フイルムの第1層表面の非帯電性能は、表4に示すように全く不充分なものであった。
【0055】
【表4】


【0056】
[実施例6〜10、比較例3]
多層ブロー成形機を用い、表5に示すような層構成で、各層厚みが0.5mm、内容積が100mlの3層容器を製造した。この3層容器の外層表面の評価結果を表5に併記する。
【0057】
【表5】

【0058】
[実施例11]
多層キャストフイルム成形機を用い、KIO−2を第1層(表面層)、MPEー1を第2層(表面層)、接着層として三井化学(株)製接着性ポリオレフィン、商品名アドマーNF528(LLDPEベース無水マレイン酸変性体、MFR2.2g/10分)を用い、各層の厚み構成が表6に記載の多層フイルムを作成した。この積層構成の第2層から第1層界面までの厚みと第1層自身の厚みとの比(層厚み比)は1.5であった。得られた多層フイルムの第1層表面と第2層表面の評価結果を表6に示す。
【0059】
[実施例12]
第1層のKIO−2をKIO−5に変更した以外は実施例11と同様にして多層フイルムを作成した。得られた多層フイルムの層厚み比、及び第1層表面と第2層表面の非帯電性能の評価結果を表6に示す。
【0060】
[実施例13]
第2層のMPE−1からEVA−2に変更し、接着層を用いないで、各層の厚みを表6記載の通りに変更した以外は実施例11と同様にして多層フイルムを作成した。得られた多層フイルムの層厚み比、及び第1層表面と第2層表面の非帯電性能の評価結果を表6に示す。
【0061】
[比較例4]
第1層のKIO−2をHM2−に変更し、各層の厚みを表7記載の通りに変更した以外は実施例11と同様にして多層フイルムを作成した。得られた多層フイルムの第1層、第2層表面の非帯電性能と第1層表面の滑り性は、表6に示すように全く不充分なものであった。
【0062】
[比較例5]
各層をMPE−1とすることによりMPE−1の単層フイルム(厚み40μm)を作成した。得られた単層フイルムの非帯電性能、滑り性、耐磨耗性は、表6に示すように全く不充分なものであった。
【0063】
【表6】

【0064】
[実施例14]
多層ブロー成形機を用い、表7に示す層構成で各層厚みが0.5mm、内容積が100mlの3層容器を製造した。この多層容器の表面反射光沢グロス(JIS Z8741準拠)は0.5%、曇り度ヘイズ(JIS K6714準拠)は65%、曲げ剛性(JISK7106準拠)は147MPaであった。またその非帯電性能の評価結果を表7に示した。
【0065】
[実施例15〜17、比較例6]
表7の層構成とした以外は、実施例14と同様にして3層容器を作成した。その非帯電性能の評価結果を表7に示す。
【0066】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、帯電減衰性に優れ、帯電による塵埃や粉体の付着を防止することが可能な防汚性に優れた多層構造体を提供することができる。また、滑り性、耐傷性に優れた多層構造体を提供することができる。このような多層構造体は、例えばフイルム、テープ、シート、チューブ、管、袋体、多層容器(例えばブロー成形による容器)、ロッド、各種射出成形品、各種ブロー成形品などの形で使用することができる。とくに包装材料としての使用が好適であり、カリウムアイオノマー層(X)を外層とするような袋体あるいは多層容器は、外表面が滑り性、耐傷性、防汚性に優れると共に、内表面はヒートシール性、静電付着防止性に優れた包装材料とすることができる。とりわけカリウムアイオノマー層(X)を外層とするような多層容器は、外表面が滑り性、耐傷性、防汚性に優れると共に、表面反射光沢が小さく、曇り度が高い絹布状の外観を有する意匠性に優れたボトルとなる。またカリウムアイオノマー層(X)を内層とする袋体又は多層容器は、外表面の防汚性と、内表面が耐内容物傷付き性、滑り性、ヒートシール性に優れた包装材料とすることができる。さらにカリウムアイオノマー層(X)を中間層とし、上記減衰特性を有する表面層(Y)が外表面にある成形品は防汚性に優れており、表面汚れを回避することができる。また粉体材料の包装材料として使用し、上記減衰特性を有する表面層(Y)が内面層となるような使用方法においては、粉体の包装材料への静電付着がなく、商品価値を損ねることはない。またカリウムアイオノマー層を中間層とする本発明の多層構造体よりなる多層ブロー容器は、外表面が滑り性、耐傷性、防汚性に優れる。
【0068】
本発明の多層構造体は包装材料の他に、ダイシングテープ基材やバックグラインドフイルムなどの半導体用粘着テープ又はフイルム、マーキングフイルム、ICキャリアテープ、電子部品テーピングテープのような電気・電子材料、食品包装材料、衛生材料、プロテクトフイルム(例えばガラス、プラスチック又は金属性のボード、レンズ用ガードフイルム又はテープ)、鋼線被覆材料、クリーンルームカーテン、壁紙、マット、床材、フレコン内袋、コンテナー、靴、バッテリーセパレーター、透湿フイルム、防汚フイルム、防塵フイルム、PVC代替フイルム、各種化粧品、洗剤、シャンプー、リンス等のチューブやボトルなどの用途に用いることができる。
本発明の多層構造体は、表面層の片面あるいは両面に粘着層を設けて使用することができる。このような粘着層として、ゴム系、アクリル系、シリコン系などの粘着層を挙げることができる。本発明の多層構造体はまた、その表面減衰特性、その他特性を生かすため、他の種々の基材等、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレンなどの二軸延伸フイルム又はシート等の基材、あるいはアクリル樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂やポリスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリアセタール等の板状成形品を含む材料に積層して使用することができる。このような防汚性の表皮材として使用する場合、層(Y)、層(X)、層(Z)等が上記基材に当接するようにして積層されるかあるいは粘着層を介して積層される。かかる目的に使用される基材としてはまた、各種プラスチック材料、紙、木材、金属などのフイルム、シート、発泡体、織布、不織布などの1層または多層の材料などを使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1. エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーまたは該カリウムアイオノマーと熱可塑性重合体との混合物を含む層(X)と表面抵抗率1×1014Ω以上の高分子材料を含む層(Y)を含む少なくとも2層以上の層を含む多層構造体であって、少なくとも一方の表面層は、23℃、50%相対湿度の雰囲気下で測定した印加電圧+5000Vにおける10%減衰時間が20秒以下であることを特徴とする多層構造体。
【請求項2】
一方の表面層が層(Y)からなる請求の範囲第1項に記載の多層構造体。
【請求項3】
一方の表面層が層(X)からなり、他の表面層が層(Y)からなり、層(X)で構成される表面層が、23℃、50%相対湿度の雰囲気下で測定した印加電圧+5000Vにおける10%減衰時間が20秒以下であり、層(Y)が、23℃、50%相対湿度の雰囲気下で測定した印加電圧+5000Vにおける10%減衰時間が20秒以上である請求の範囲第2項に記載の多層構造体。
【請求項4】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーまたは該カリウムアイオノマーと熱可塑性重合体との混合物を含む層(X)を含む少なくとも2層を含む多層構造体であって、少なくとも一方の表面層(Y)が表面抵抗率1×1014Ω以上の高分子材料から構成され、表面層(Y)は、23℃、50%相対湿度の雰囲気下で測定した印加電圧+5000Vにおける10%減衰時間が20秒以下であることを特徴とする多層構造体。
【請求項5】
他の表面層が層(X)からなる請求の範囲第4項に記載の多層構造体。
【請求項6】
他方の表面層(X)が、23℃、50%相対湿度の雰囲気下で測定した印加電圧+5000Vにおける10%減衰時間が20秒以下であることを特徴とする請求の範囲第5項に記載の多層構造体
【請求項7】
3層以上からなり、層(X)が中間層であり、他方の表面層(Z)が、表面抵抗率1×1014Ω以上の高分子材料からから構成されていることを特徴とする請求の範囲第4項に記載の多層構造体。
【請求項8】
表面層(Z)が、23℃、50%相対湿度の雰囲気下で測定した印加電圧+5000Vにおける10%減衰時間が20秒以下であることを特徴とする請求の範囲第7項に記載の多層構造体。
【請求項9】
カリウムアイオノマーが、不飽和カルボン酸含量が10〜30重量%のエチレン・不飽和カルボン酸のカリウムイオンによる中和度が60%以上のアイオノマーである請求の範囲第1〜8項のいずれかに記載の多層構造体。
【請求項10】
カリウムアイオノマーが、不飽和カルボン酸含量が異なる2種以上のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の混合アイオノマーであって、該エチレン・不飽和カルボン酸共重合体の平均酸含量が10〜20重量%であり、最高酸含量のものと最低酸含量のものとの酸含量差が2〜20重量%である請求の範囲第9項に記載の多層構造体。
【請求項11】
カリウムアイオノマーが、不飽和カルボン酸含量が1〜10重量%、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが1〜600g/10分のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(A−1)と、不飽和カルボン酸含量が11〜25重量%、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが1〜600g/10分のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(A−2)とからなり、平均不飽和カルボン酸含量が10〜30重量%、190℃、2160g荷重における平均メルトフローレートが1〜300g/10分の混合共重合体組成物の混合アイオノマーであり、その中和度が60%以上のものである請求の範囲第10項に記載の多層構造体。
【請求項12】
前記混合共重合体組成物が、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(A−1)5〜80重量部とエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(A−2)95〜20重量部の混合割合で調製されたものである請求の範囲第11項に記載の多層構造体。
【請求項13】
層(X)において、カリウムアイオノマーに対して、15重量%以下の割合でポリヒドロキシ化合物が配合されていることを特徴とする請求の範囲第9〜12項のいずれかに記載の多層構造体。
【請求項14】
層(X)において、カリウムアイオノマーに対して、ポリヒドロキシ化合物が0.1重量%未満の割合で配合されていることを特徴とする請求の範囲第9〜12項のいずれかに記載の多層構造体。
【請求項15】
層(X)中の熱可塑性重合体が、オレフィン系重合体である請求の範囲第1または4項に記載の多層構造体。
【請求項16】
層(Y)中の高分子材料が、オレフィン系重合体である請求の範囲第1または4項に記載の多層構造体。
【請求項17】
オレフィン系重合体が、直鎖低密度ポリエチレンまたは亜鉛アイオノマーである請求の範囲第16項に記載の多層構造体。
【請求項18】
直鎖低密度ポリエチレンが、メタロセン触媒の共存下で製造されたエチレン重合体または共重合体である請求の範囲第17項に記載の多層構造体。
【請求項19】
層(Z)における高分子材料が、オレフィン系重合体である請求の範囲第7項に記載の多層構造体。
【請求項20】
オレフィン系重合体が、直鎖低密度ポリエチレンまたは亜鉛アイオノマーである請求の範囲第9項に記載の多層構造体。
【請求項21】
直鎖低密度ポリエチレンが、メタロセン触媒の共存下で製造されたエチレン共重合体である請求の範囲第20項に記載の多層構造体。
【請求項22】
多層構造体が以下の3層構成である請求の範囲第4項に記載の多層構造体:(a)エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーを含む層、(b)直鎖状低密度ポリエチレンまたはその100重量部に100重量部以下のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーを配合した混合物を含む層、および(c)直鎖状低密度ポリエチレンを含む層。
【請求項23】
多層構造体が以下の3層構成である請求の範囲第7項に記載の多層構造体:(a)ポリエチレンまたはエチレン・不飽和エステル共重合体を含む層、(b)エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーまたは該カリウムアイオノマーと熱可塑性重合体との混合物を含む層、および(c)ポリエチレンまたはエチレン・不飽和エステル共重合体を含む層。
【請求項24】
層(X)と層(Y)の間に、接着層及び/または回収樹脂層が設けられてなる請求の範囲第4項に記載の多層構造体。
【請求項25】
以下の3層構成である請求の範囲第3または4項に記載の多層構造体:(a)エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーの発泡または非発泡の層、(b)エチレン・不飽和エステル共重合体を含む層、および(c)ポリエチレンを含む層。
【請求項26】
層(X)と層(Z)の間に、接着層及び/または回収樹脂層が設けられてなる請求の範囲第7項に記載の多層構造体。
【請求項27】
層(X)の厚みに対するその他の層の総厚みの比率が、0.1〜100の範囲にある請求の範囲第1〜26項のいずれかにに記載の多層構造体。
【請求項28】
請求の範囲第1〜27項のいずれかに記載の多層構造体からなるシートまたはフイルム。
【請求項29】
滑り摩擦係数が1.0以下である請求の範囲第28項に記載のシートまたはフイルム。
【請求項30】
包装用に使用される請求の範囲第28項に記載のシートまたはフイルム。
【請求項31】
請求の範囲第1〜27項のいずれかに記載の多層構造体からなる袋体または多層容器。
【請求項32】
ブロー成形で得られたものである請求の範囲第31項に記載の多層容器。
【請求項33】
層(X)が、最内層または最外層である請求の範囲第31項に記載の袋体または多層容器。
【請求項34】
請求の範囲第1〜27項のいずれかに記載の多層構造体により構成された床材。

【公表番号】特表2006−513056(P2006−513056A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564443(P2004−564443)
【出願日】平成14年12月27日(2002.12.27)
【国際出願番号】PCT/JP2002/013816
【国際公開番号】WO2004/060668
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】