説明

カルバゾリルモノマー及びポリマー

本発明は次の式Iの化合物を提供する。式中、RはH又はアルキルであり、R1、R2及びR4は各々独立にC1−C20脂肪族基、C3−C20芳香族基又はC3−C20脂環式基であり、R3及びR5は各々独立に水素、C1−C20脂肪族基、C3−C20芳香族基又はC3−C20脂環式基であり、a、b及びdは各々独立に0又は1〜3の整数である。本発明はまた、式Iの化合物から誘導されたポリマーを提供し、ポリマーはポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリエーテルケトン又はポリエーテルスルホンなどであり得る。本発明の化合物及びポリマーは発光デバイスに用いる。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、二官能性であるカルバゾール単位を含む化合物に関する。本発明はまた、カルバゾール単位を含むモノマー(単量体)及びそれに由来するポリマー(重合体)、デンドリマー及びハイパーブランチ材料に関する。
【背景技術】
【0002】
バイアス電圧が印加されると発光する薄膜材料を利用する有機発光デバイス(OLED=organic light emitting device)は、1形態のフラットパネルディスプレイ技術として益々普及すると予想される。その理由は、OLEDが、携帯電話、個人用情報機器(PDA)、コンピュータディスプレイ、車両用情報ディスプレイ、テレビモニター、並びに一般照明用の光源など様々な用途に使用できる可能性があるからである。明るい色、広い視野角、速い動画像ビデオとの相性、広い温度範囲、薄く順応性の形状、少ない必要電力、そして低コストな製造方法の可能性などから、OLEDは将来陰極線管(CRT)や液晶ディスプレイ(LCD)に代わる技術とみなされている。発光効率が高いことから、OLEDは、ある種の用途では白熱電球に、またおそらくは蛍光管に取って代わる可能性ももっているとみなされている。
【0003】
フルカラーOLEDを開発する取り組みとして、ホスト分子から発光性のゲスト分子へエネルギー移動する方法がある。これを実現するには、ホストの三重項エネルギー状態がゲスト分子より高くなければならない。カルバゾール誘導体が、金属含有発光性ゲスト分子の存在下でホスト分子として良好に機能する徴候を示している。この場合ポリ(N−ビニルカルバゾール)がしばしば用いられる。しかし、ポリ(N−ビニルカルバゾール)を用いるデバイスの量子効率はまだ60〜80%程度の範囲にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0008172号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/031891号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6023371号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Perea et al, “Polysubstituted N-Arylcarbazoles as Discotic Molecules”, Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. e" \t "#top" 365, July 2001, pp. 695 - 702
【非特許文献2】Kobayashi et al, “Novel Blue Light Emitting Poly(N-arylcarbazol-2,7-ylene) Homopolymers: Syntheses and Properties”, Macromolecules, 2006, 39(26), pp 9102-9111
【非特許文献3】Promarak et al, “Synthesis and properties of stable amorphous hole-transporting molecules for electroluminescent devices”, Tetrahedron Letters, 47(50), 11 December 2006, pp.8949-8952
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、当業界では、分子が赤、緑及び青色発光性錯体のホストとなる可能性を維持しながら、デバイス量子効率の改良されたOLEDを開発することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様では、本発明は次の式Iの化合物を提供する。
【0008】
【化1】

式中、RはH又はアルキルであり、
1、R2及びR4は各々独立にC1−C20脂肪族基、C3−C20芳香族基又はC3−C20脂環式基であり、R3及びR5は各々独立に水素、C1−C20脂肪族基、C3−C20芳香族基又はC3−C20脂環式基であり、
a、b及びdは各々独立に0又は1〜3の整数である。
【0009】
別の態様では、本発明は次の式IIで表される構造単位を含むポリマーを提供する。
【0010】
【化2】

式中、R1、R2及びR4は各々独立にC1−C20脂肪族基、C3−C20芳香族基又はC3−C20脂環式基であり、R3及びR5は各々独立に水素、C1−C20脂肪族基、C3−C20芳香族基又はC3−C20脂環式基であり、
a、b及びdは各々独立に0又は1〜3の整数である。
【0011】
他の態様では、本発明は、少なくとも1つの電極、少なくとも1つの正孔注入層、及び少なくとも1つの発光層を備え、前記発光層が式IIで表される構造単位を含むポリマーを含有する、発光デバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の上記その他の特徴、態様及び効果を一層良く理解できるように、以下に添付の図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。図面において、同じ符号は同一部品を示す。
【図1】実施例6のポリマーを含有するデバイス(点線)及びポリスチレンを含有するデバイス(実線)の時間分解フォトルミネセンススペクトルを示す図である。
【図2】ポリ(N−ビニルカルバゾール)を含有するデバイス(点線)及びポリスチレンを含有するデバイス(実線)の時間分解フォトルミネセンススペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の態様では、本発明は式Iのカルバゾール単位を含む化合物を提供する。式Iの化合物は一般にカルバゾール化合物とみなすことができる。場合によっては、3,6位は酸化カップリング反応を受けやすく、これらの位置の1つ又は2つ以上を保護するのが有利なこともある。ある実施形態では、R3及びR5は水素であるので、カルバゾール単位の3及び6位は保護されていない。別の実施形態では、R3及びR5はt−ブチル基であり、他の実施形態では、R3及びR5はトリアルキルシリル及びトリアリールシリル基であり、またさらに他の実施形態で、R3及びR5はジフェニルホスフィンオキシド又はジフェニルホスフィンスルフィドである。カルバゾールを3及び6位で置換するのに様々な他の基も使用でき、そのような基として、メチル、エチル、メトキシ、トリル、メチルシクロヘキシル及びハロメチルが挙げられるが、これらに限らない。特定の態様では、本発明は、式Iにおいてb及びdが0であるモノマー(単量体)、即ち次式のモノマーを提供する。
【0014】
【化3】

本発明は、次式で表される芳香族基でN−置換されたカルバゾール化合物を提供する。
【0015】
【化4】

式中、R、R1及びaは上記と同様である。芳香族基は、相当する芳香族のハロゲン化物をカルバゾールに反応させることによりカルバゾール単位に結合させることができる。この反応では高収率で目的物を得ることができる。反応は、不活性溶媒中、所望に応じて触媒の存在下で行うことができる。
【0016】
第1の態様では、本発明は式IにおいてRがアルキル基の化合物を提供する。1実施形態では、Rがメチル基であり、a、b及びdがすべて0であり、アルコキシ基が3及び5位に存在する。得られる化合物は次式で表される9−(3,5−ジメトキシフェニル)カルバゾールである。
【0017】
【化5】

別の態様では、本発明は式IにおいてRがアルキル基の化合物を提供する。1実施形態では、Rがメチル基であり、a、b及びdがすべて0であり、アルコキシ基が2及び5位に存在する。得られる化合物は次式で表される9−(2,5−ジメトキシフェニル)カルバゾールである。
【0018】
【化6】

別の態様では、本発明は式IにおいてRが水素であるモノマーを提供し、得られる化合物はヒドロキシ官能基を2つ含む化合物である。ヒドロキシル基はフェニル環のどの位置に存在していてもよく、例えばカルバゾール単位の位置に対して3及び5位又はオルト及びメタ位に存在していてもよい。特定な例で、Rが水素であり、a、b及びdがすべて0である場合、化合物は次式で表される9−(3,5−ジヒドロキシフェニル)カルバゾールである。
【0019】
【化7】

他の態様では、本発明は式IにおいてRが水素であるモノマーを提供し、得られる化合物はヒドロキシ官能基を2つ含む化合物である。ヒドロキシル基はフェニル環のどの位置に存在していてもよく、例えばカルバゾール単位の位置に対して2及び5位又はオルト及びメタ位に存在していてもよい。特定な例で、Rが水素であり、a、b及びdがすべて0である場合、化合物は次式で表される9−(2,5−ジヒドロキシフェニル)カルバゾールである。
【0020】
【化8】

本発明の化合物は、有機発光デバイスにおいて正孔輸送層に用いるのに特に適切である。1実施形態では、本発明は、本質的に前記化合物からなる正孔輸送層を含む有機発光デバイスを提供する。別の実施形態では、本発明は、前記化合物を有機発光デバイスの正孔輸送層の構成成分として含有する有機発光デバイスを提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は式IIで表される構造単位を有するポリマー(重合体)を提供する。ポリマーは、式Iのモノマー1種以上をコモノマー1種以上と共重合することにより製造され、こうしてポリカーボネート、コポリカーボネート、ポリアリーレート、コポリアリーレート、コポリエステルカーボネート、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、及びこれらの組合せをランダム、ブロックもしくはグラフトコポリマー、又はデンドリマーもしくはハイパーブランチ材料の形態で得る。
【0022】
したがって、ある実施形態では、式Iのモノマーをホスゲンと、又はホスゲン及びビスフェノールと、又はジアリールカーボネート又はビスハロホルメートと共重合してポリカーボネートを製造することができる。ポリカーボネートを形成するモノマーの例には、ジフェニルカーボネート、ビス(メチルサリチル)カーボネート、ビスフェノールAビスクロロホルメート、レゾルシノールビスクロロホルメート及びこれらの組合せがある。例えば、ホスゲン及びビスフェノールAとの共重合により、式IIで表される構造単位に加えて、次式:
【0023】
【化9】

で表される構造単位を含むポリマーを得る。したがって、特定の実施形態では、得られるポリマーは次式で表される構造単位を含有する。
【0024】
【化10】

例えば、式IのモノマーをビスフェノールA及びジフェニルカーボネートと、少量の塩基性触媒、例えば水酸化ナトリウムの存在下で、約150〜300℃の範囲の温度及び減圧下で反応させることができる。
【0025】
他の実施形態では、式Iのモノマーをカルボキシレートエステル、カルボン酸無水物又はカルボン酸ハライドと共重合してポリエステルを生成することができる。ポリエステルの形成に用いることのできるコモノマーの例には、テレフタロイルクロリド、無水テレフタル酸、ナフトール酸二無水物、無水コハク酸、ジメチルオキサレート及びこれらの組合せがある。
【0026】
他の実施形態では、式Iのモノマーを1種以上のジハロアリールスルホンモノマーと共重合してポリエーテルスルホンを生成することができる。ジハロアリールスルホン類には、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、4,4’−ビス((4−クロロフェニル)スルホニル)−1,1−ビフェニル及びこれらの組合せがある。
【0027】
他の実施形態では、式Iのモノマーを1種以上のジハロアリールモノマーと共重合してポリエーテルを生成することができる。ジハロアリールモノマーの例には、1,6−ジクロロベンゼン、4,4’−ジクロロビフェニル、4,4’−ジクロロジフェニルスルフィド、1,6−ジフルオロベンゼン、4,4’−ジフルオロビフェニル、4,4’−ジフルオロジフェニルスルフィド及びこれらの組合せがある。例えば、式IのモノマーをデカフルオロビフェニルとN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で、炭酸カリウムなどの塩基の存在下約100〜約250℃の温度で共重合することができる。
【0028】
他の実施形態では、式Iのモノマーをジハロベンゾフェノンモノマーと共重合してポリエーテルケトンを生成することができる。他のジハロベンゾフェノンモノマーには、1,4−ビス(4’−クロロベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4’−フルオロベンゾイル)ベンゼン、1−(4’−クロロベンゾイル−4−(4”−フルオロベンゾイル)ベンゼン及びこれらの組合せがある。例えば、式IのモノマーをビスフェノールAの二ナトリウム塩とともに4,4’−ジクロロベンゾフェノンと、o−ジクロロベンゼン中、約100〜約250℃の温度、ヘキサエチルグアニジニウムクロリドなどの相間移動触媒の存在下で反応させることができる。
【0029】
別の実施形態では、式Iのモノマーをビス(4−クロロフタルイミド)などのビス(ハロフタルイミド)と共重合してポリエーテルイミドを得ることができる。他のビス(ハロフタルイミド)類には、1,3−ビス[N−(4−フルオロフタルイミド)]ベンゼン、1,4−ビス[N−(4−フルオロフタルイミド)]ベンゼン、1,3−ビス[N−(3−フルオロフタルイミド)]ベンゼン、1,4−ビス[N−(3−フルオロフタルイミド)]ベンゼン、4,4’−ビス[N−(4−フルオロフタルイミド)]フェニルエーテル、4,4’−ビス[N−(3−フルオロフタルイミド)]フェニルエーテル、4,4’−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]フェニルエーテル、4,4’−ビス[N−(3−クロロフタルイミド)]フェニルエーテル、1,3−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼン、1,4−ビス[N−(4−クロロフタルイミド)]ベンゼン、1,3−ビス[N−(3−クロロフタルイミド)]ベンゼン、1,4−ビス[N−(3−クロロフタルイミド)]ベンゼン、1−[N−(4−クロロフタルイミド)]−3−[N−(3−クロロフタルイミド)]ベンゼン、1−[N−(4−クロロフタルイミド)]−4−[N−(3−クロロフタルイミド)]ベンゼン及びこれらの組合せがある。
【0030】
本発明により提供されるポリマー組成物の製造に有用な反応条件として、極性溶剤及び適当な強度の塩基を用いることが挙げられる。溶剤の例には、クロロホルム、塩化メチレン、o−ジクロロベンゼン、ベラトロール、アニソールなど及びこれらの組合せがある。塩基の例には、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど及びこれらの組合せがある。重合反応を行うのに、適当な触媒を用いてもよい。
【0031】
ある実施形態では、重合反応を、室温から選択した溶剤の沸点近くまでの適当な温度で行うことができる。また重合は大気圧、減圧又は過圧いずれで行ってもよい。重合反応は、適当な分子量のポリマーを得るのに必要な時間行う。ポリマーの分子量は、粘度測定、光散乱、浸透圧法など当業者に周知の方法で測定する。ポリマーの分子量は、代表的には、数平均分子量Mn又は重量平均分子量Mwで表示される。平均分子量を求める特に有用な方法はゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)であり、これから数平均及び重量平均分子量両方を得ることができる。ある実施形態では、30000g/モル超のMwのポリマーが望ましく、他の実施形態では、50000g/モル超のMwのポリマーが望ましく、さらに他の実施形態では、80000g/モル超のMwのポリマーが望ましい。
【0032】
重合反応は、適当な単官能性反応物質(当業界で「末端封止剤」もしくは「連鎖停止剤」と言うこともある)を添加することにより制御することができる。連鎖停止剤はポリマーの分子量を制限する作用をなす。適当なフェノール系連鎖停止剤には、フェノール及びp−クミルフェノールなどがある。適当な芳香族ハライド連鎖停止剤には、4−クロロフェニルフェニルスルホン、4−フルオロフェニルフェニルスルホン及び4−クロロフェニルフェニルケトンなどがある。
【0033】
本発明が提供するポリマーは、発光電気化学セル、受光器、光導電セル、光スイッチ、ディスプレイデバイスなどを含む多種多様な用途に用いることができる。したがって、1つの態様では、本発明は、少なくとも1つの電極、少なくとも1つの正孔注入層、及び少なくとも1つの発光層を備え、前記発光層が式IIで表される構造単位を含むポリマーを含有する、発光デバイスを提供する。
【0034】
本発明のポリマー組成物は、有機発光デバイスの電気活性層に用いるのに特に適切である。1実施形態では、本発明は、本質的に前記ポリマー組成物からなる電気活性層を含む有機発光デバイスを提供する。別の実施形態では、本発明は、前記ポリマー組成物を有機発光デバイスの電気活性層の構成成分として含有する有機発光デバイスを提供する。1実施形態では、本発明は、前記ポリマー組成物を有機発光デバイスの発光電気活性層の構成成分として含有する有機発光デバイスを提供する。
【0035】
有機発光デバイスは代表的には多数の層を含み、このような層には、最も簡単な場合、アノード層、対応するカソード層及びこれらのアノードとカソード間に配置された有機エレクトロルミネセント(EL)層が含まれる。電圧バイアスを両電極間にかけると、電子がカソードからEL層中に注入され、一方電子がEL層から取り出される(「正孔」がアノードからEL層に「注入」される)。発光が起こるのは、EL層内で正孔と電子が結合して一重項又は三重項励起子(エキシトン)を形成する際で、そして一重項励起子が放射失活により環境にエネルギーを移動するにつれて発光が起こる。
【0036】
アノード、カソード及び発光材料以外に有機発光デバイス内に存在しうる他の構成要素には、正孔注入層、電子注入層及び電子輸送層がある。電子輸送層がカソードと接触している必要はなく、多くの場合、電子輸送層は効率よい正孔輸送手段ではなく、したがって正孔がカソードに向かって移動するのを阻止する役目を果たす。電子輸送層を有する有機発光デバイスの作動中、電子輸送層内に存在する電荷キャリヤ(即ち、正孔及び電子)の大部分は電子であり、発光は電子輸送層内に存在する正孔と電子の再結合によって起こりうる。有機発光デバイス内に存在しうる他の構成要素には、正孔輸送層、正孔輸送兼発光層及び電子輸送兼発光層がある。
【0037】
式Iの化合物は三重項エネルギー状態を有し、この状態は、高効率なデバイスをもたらすので、有機発光デバイス(OLED)などの用途に有用である。さらに、これらの化合物の三重項エネルギーは十分に高く、デバイスに用いるゲスト色素の三重項エネルギーより大きく、したがってホスト分子として作用しうる。本発明の化合物は、有機発光デバイスにおいて正孔輸送層に用いるのに特に適切である。1実施形態では、本発明は、前記化合物を有機発光デバイスの正孔輸送層の構成成分として含有する有機発光デバイスを提供する。
【0038】
有機エレクトロルミネセント(EL)層は、デバイスの作動時に、電子及び正孔両方を有意な濃度で含有し、励起子形成及び発光にふさわしい位置を提供する、有機発光デバイス内の層である。正孔注入層は、アノードからOLEDの内部層への正孔の注入を促進する、アノードと接触した層であり、電子注入層は、カソードからOLED内への電子の注入を促進する、カソードと接触した層であり、そして電子輸送層は、カソードから電荷再結合位置への電子の伝導を容易にする層である。電子輸送層はカソードと接触している必要はなく、多くの場合、電子輸送層は効率よい正孔輸送手段ではなく、したがって正孔がカソードに向かって移動するのを阻止する役目を果たす。電子輸送層を有する有機発光デバイスの作動中、電子輸送層内に存在する電荷キャリヤ(即ち、正孔及び電子)の大部分は電子であり、発光は電子輸送層内に存在する正孔と電子の再結合によって起こりうる。正孔輸送層は、OLEDの作動中に、アノードから電荷再結合位置への正孔の伝導を容易にする層であり、アノードと接触している必要はない。正孔輸送兼発光層は、OLEDの作動中に、電荷再結合位置への正孔の伝導を容易にする層であり、その層において、電荷キャリヤの大部分が正孔であり、発光は残留電子との再結合を介してだけでなく、デバイス内のどこかの電荷再結合区域からのエネルギーの移動を介しても生起する。電子輸送兼発光層は、OLEDの作動中に、電荷再結合位置への電子の伝導を容易にする層であり、その層において、電荷キャリヤの大部分が電子であり、発光は残留正孔との再結合を介してだけでなく、デバイス内のどこかの電荷再結合区域からのエネルギーの移動を介しても生起する。
【0039】
アノードとして用いるのに適当な材料には、四点プローブ法で測定して、バルク導電率が約100Ω/□以上である材料がある。インジウム錫オキサイド(ITO)がアノードとしてよく用いられるが、それは光透過に対してほぼ透明であり、電気活性な有機層から発せられた光が抜け出るのを容易にするからである。アノード層として用いることのできる他の材料には、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、インジウム亜鉛オキサイド、亜鉛インジウム錫オキサイド、酸化アンチモン及びこれらの混合物がある。
【0040】
カソードとして用いるのに適当な材料には、負の電荷キャリヤ(電子)をOLEDの内部層に注入することができる0価の金属がある。カソード20として用いるのに適当な種々の0価の金属には、K、Li、Na、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、Au、In、Sn、Zn、Zr、Sc、Y、ランタノイド系列の元素、これらの合金及びこれらの混合物が挙げられる。カソード層として用いるのに適当な合金には、Ag−Mg、Al−Li、In−Mg、Al−Ca及びAl−Au合金がある。非合金層状構造、例えばカルシウムなどの金属もしくはLiFなどの金属フッ化物の薄い層をアルミニウム、銀などの0価金属の比較的厚い層で覆った構造もカソードに用いることができる。特に、カソードを単一の0価金属、中でもアルミニウム金属で構成することができる。
【0041】
本発明の発光デバイスは、正孔注入層に式IIのポリマーを含有する。本ポリマーは、H.C.Stark社から登録商標BAYTRONにて市販されているポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びAir Products社から市販されているチエノ[3,4b]チオフェン(TT)モノマーに由来するポリマーなどの従来から用いられている材料の代わりに、或いはそれに加えて用いることができる。特に、本ポリマーをPEDOTとブレンドして正孔注入層を形成することができる。
【0042】
正孔輸送層に用いるのに適当な材料には、米国特許第6023371号に開示されているような、1,1−ビス((ジ−4−トリルアミノ)フェニル)シクロヘキサン、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−(1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル)−4,4’−ジアミン、テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン、フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン、p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン、トリフェニルアミン、1−フェニル−3−(p−(ジエチルアミノ)スチリル)−5−(p−(ジエチルアミノ)フェニル)ピラゾリン、1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、銅フタロシアニン、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリアニリン、ポリビニルカルバゾール、トリアリールジアミン、テトラフェニルジアミン、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、及びポリチオフェンが挙げられる。
【0043】
電子輸送層として用いるのに適当な材料には、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,1−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2−(4−ビスフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール、1,3,4−オキサジアゾール含有ポリマー、1,3,4−トリアゾール含有ポリマー、キノキサリン含有ポリマー及びシアノPPVが挙げられる。
【0044】
発光層に用いるのに適当な材料には、エレクトロルミネセント(EL)ポリマー、例えばポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)及びその共重合体、例えばF8−TFBがある。
【0045】
一態様では、式IIの構造単位を含むポリマーが正孔捕集層の一部を形成し、別の態様では、式IIの構造単位を含むポリマーが正孔注入層の一部を形成することができる。したがって、一態様では、本発明は、式IIの構造単位を含むポリマーを含有するより効率の良い有機発光デバイスを提供する。
[定義]
ここで用いる用語「芳香族基」は、1つ以上の芳香族部を含む、1価以上の原子の配列をいう。1つ以上の芳香族部を含む1価以上の原子の配列は、ヘテロ原子例えば窒素、硫黄、セレン、ケイ素及び酸素を含んでも、炭素と水素だけで構成されてもよい。ここで用いる用語「芳香族基」は、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニレン及びビフェニル基を含むが、これらに限らない。上述のように、芳香族基は1つ以上の芳香族部を含む。芳香族部は、常に4n+2個の「非局在化」電子を有する環状構造(nは1以上の整数を示す)であり、例えばフェニル基(n=1)、チエニル基(n=1)、フラニル基(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル基(n=2)、アントラセニル基(n=3)などがある。芳香族基は、非芳香族成分を含んでもよい。例えば、ベンジル基は、フェニル環(芳香族部)及びメチレン基(非芳香族成分)を含む芳香族基である。同様に、テトラヒドロナフチル基は、芳香族部(C63)が非芳香族成分−(CH24−に縮合した芳香族基である。便宜上、用語「芳香族基」は、広い範囲の官能基、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ハロ芳香族基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えばエステル、アミドなどのカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などを包含するものと定義する。例えば、4−メチルフェニル基はメチル基を有するC7芳香族基であり、この場合のメチル基はアルキル基に属する官能基である。同様に、2−ニトロフェニル基はニトロ基を有するC6芳香族基であり、この場合のニトロ基は官能基である。芳香族基としては、ハロゲン化芳香族基、例えば4−トリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−フェニ−1−イルオキシ)(即ち−OPhC(CF3)2PhO−)、4−クロロメチルフェニ−1−イル、3−トリフルオロビニル−2−チエニル、3−トリクロロメチルフェニ−1−イル(即ち3−CCl3Ph−)、4−(3−ブロモプロパ−1−イル)フェニ−1−イル(即ち4−BrCH2CH2CH2Ph−)などが挙げられる。芳香族基のさらなる例としては、4−アリルオキシフェニ−1−オキシ、4−アミノフェニ−1−イル(即ち4−H2NPh−)、3−アミノカルボニルフェニ−1−イル(即ちNH2COPh−)、4−ベンゾイルフェニ−1−イル、ジシアノメチリデンビス(4−フェニ−1−イルオキシ)(即ち−OPhC(CN)2PhO−)、3−メチルフェニ−1−イル、メチレンビス(4−フェニ−1−イルオキシ)(即ち−OPhCH2PhO−)、2−エチルフェニ−1−イル、フェニルエテニル、3−ホルミル−2−チエニル、2−ヘキシル−5−フラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(4−フェニ−1−イルオキシ)(即ち−OPh(CH2)6PhO−)、4−ヒドロキシメチルフェニ−1−イル(即ち4−HOCH2Ph−)、4−メルカプトメチルフェニ−1−イル(即ち4−HSCH2Ph−)、4−メチルチオフェニ−1−イル(即ち4−CH3SPh−)、3−メトキシフェニ−1−イル、2−メトキシカルボニルフェニ−1−イルオキシ(例えばメチルサリチル)、2−ニトロメチルフェニ−1−イル(即ち2−NO2CH2Ph)、3−トリメチルシリルフェニ−1−イル、4−t−ブチルジメチルシリルフェニ−1−イル、4−ビニルフェニ−1−イル、ビニリデンビス(フェニル)などが挙げられる。用語「C3−C10芳香族基」は、炭素原子数が3以上10以下の芳香族基を含む。芳香族基1−イミダゾリル(C3H2N2−)はC3芳香族基の代表例である。ベンジル基(C7H7−)はC7芳香族基の代表例である。
【0046】
ここで用いる用語「脂環式基」は、環状であるが芳香族でない原子の配列を含む1価以上の基をいう。ここで定義する「脂環式基」は芳香族部を含まない。「脂環式基」は1つ以上の非環状成分を含んでもよい。例えば、シクロヘキシルメチル基(C6H11CH2−)は、シクロヘキシル環(環状であるが芳香族でない原子の配列)及びメチレン基(非環状成分)を含む脂環式基である。脂環式基は、ヘテロ原子例えば窒素、硫黄、セレン、ケイ素及び酸素を含んでも、炭素と水素だけで構成されてもよい。便宜上、用語「脂環式基」は、広い範囲の官能基、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えばエステル、アミドなどのカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などを包含するものと定義する。例えば、4−メチルシクロペンタ−1−イル基はメチル基を有するC6脂環式基であり、この場合のメチル基はアルキル基に属する官能基である。同様に、2−ニトロシクロブタ−1−イル基はニトロ基を有するC4脂環式基であり、この場合のニトロ基は官能基である。脂環式基は1つ以上のハロゲン原子を含んでもよく、含まれるハロゲン原子は同じでも異なってもよい。ハロゲン原子には、例えばフッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1つ以上のハロゲン原子を有する脂環式基には、2−トリフルオロメチルシクロヘキサ−1−イル、4−ブロモジフルオロメチルシクロオクタ−1−イル、2−クロロジフルオロメチルシクロヘキサ−1−イル、ヘキサフルオロイソプロピリデン−2,2−ビス(シクロヘキサ−4−イル)(即ち−C6H10C(CF3)2C6H10−)、2−クロロメチルシクロヘキサ−1−イル、3−ジフルオロメチレンシクロヘキサ−1−イル、4−トリクロロメチルシクロヘキサ−1−イルオキシ、4−ブロモジクロロメチルシクロヘキサ−1−イルチオ、2−ブロモエチルシクロペンタ−1−イル、2−ブロモプロピルシクロヘキサ−1−イルオキシ(即ちCH3CHBrCH2610O−)などがある。脂環式基のさらなる例としては、4−アリルオキシシクロヘキサ−1−イル、4−アミノシクロヘキサ−1−イル(即ちH2NC6H10−)、4−アミノカルボニルシクロペンタ−1−イル(即ちNH2COC5H8−)、4−アセチルオキシシクロヘキサ−1−イル、2,2−ジシアノイソプロピリデンビス(シクロヘキサ−4−イルオキシ)(即ち−OC6H10C(CN)2C6H10O−)、3−メチルシクロヘキサ−1−イル、メチレンビス(シクロヘキサ−4−イルオキシ)(即ち−OC6H10CH2C6H10O−)、1−エチルシクロブタ−1−イル、シクロプロピルエテニル、3−ホルミル−2−テトラヒドロフラニル、2−ヘキシル−5−テトラヒドロフラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(シクロヘキサ−4−イルオキシ)(即ち−OC6H10(CH2)6C6H10O−)、4−ヒドロキシメチルシクロヘキサ−1−イル(即ち4−HOCH2C6H10−)、4−メルカプトメチルシクロヘキサ−1−イル(即ち4−HSCH2C6H10−)、4−メチルチオシクロヘキサ−1−イル(即ち4−CH3SC6H10−)、4−メトキシシクロヘキサ−1−イル、2−メトキシカルボニルシクロヘキサ−1−イルオキシ(2−CH3OCOC6H10O−)、4−ニトロメチルシクロヘキサ−1−イル(即ちNO2CH2C6H10−)、3−トリメチルシリルシクロヘキサ−1−イル、2−t−ブチルジメチルシリルシクロペンタ−1−イル、4−トリメトキシシリルエチルシクロヘキサ−1−イル(例えば(CH3O)3SiCH2CH2C6H10−)、4−ビニルシクロヘキセン−1−イル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)などが挙げられる。用語「C3−C10脂環式基」は、炭素原子数が3以上10以下の脂環式基を含む。脂環式基2−テトラヒドロフラニル(C4H7O−)はC4脂環式基の代表例である。シクロヘキシルメチル基(C6H11CH2−)はC7脂環式基の代表例である。
【0047】
ここで用いる用語「脂肪族基」は、環状でない原子の直鎖状又は枝分れ状配列を含む、1価以上の有機基をいう。脂肪族基は1つ以上の炭素原子を含むと定義される。脂肪族基を構成する原子の配列はヘテロ原子例えば窒素、硫黄、ケイ素、セレン及び酸素を含んでも、炭素と水素だけで構成されてもよい。便宜上、用語「脂肪族基」は、「環状でない原子の直鎖状又は枝分れ状配列」の一部として、広い範囲の官能基、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えばエステル、アミドなどのカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などで置換された有機基を包含すると定義する。例えば、4−メチルペンタ−1−イル基はメチル基を有するC6脂肪族基であり、この場合のメチル基はアルキル基に属する官能基である。同様に、4−ニトロブタ−1−イル基はニトロ基を有するC4脂肪族基であり、この場合のニトロ基は官能基である。脂肪族基は1つ以上のハロゲン原子を含むハロアルキル基でもよく、含まれるハロゲン原子は同じでも異なってもよい。ハロゲン原子には、例えばフッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1つ以上のハロゲン原子を有する脂肪族基には、アルキルハライド類、具体的にはトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2−ブロモトリメチレン(例えば−CH2CHBrCH2−)などが挙げられる。脂肪族基のさらなる例としては、アリル、アミノカルボニル(即ち−CONH2)、カルボニル、2,2−ジシアノイソプロピリデン(即ち−CH2C(CN)2CH2−)、メチル(即ち−CH3)、メチレン(即ち−CH2−)、エチル、エチレン、ホルミル(即ち−CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(即ち−CH2OH)、メルカプトメチル(即ち−CH2SH)、メチルチオ(即ち−SCH3)、メチルチオメチル(即ち−CH2SCH3)、メトキシ、メトキシカルボニル(即ちCH3OCO−)、ニトロメチル(即ち−CH2NO2)、チオカルボニル、トリメチルシリル(即ち(CH33Si−)、t−ブチルジメチルシリル、3−トリメトキシシリルプロピル(即ち(CH3O)3SiCH2CH2CH2−)、ビニル、ビニリデンなどが挙げられる。さらに例えば、C1−C10脂肪族基は、炭素原子数が1以上10以下の脂肪族基を含む。メチル基(即ちCH3−)はC1脂肪族基の代表例である。デシル基(即ちCH3(CH29−)はC10脂肪族基の代表例である。
【0048】
本明細書に記載する数値は、低い値から高い値まで1単位ずつの増分で増加するすべての値を含む。但し、任意の低い値と任意の高い値とは2単位以上離れている。例えば、ある成分の量、又は温度、圧力、時間などのプロセス変数の値が、例えば1〜90、好ましくは20〜80、より好ましくは30〜70であると記載する場合、15〜85、22〜68、43〜51、30〜32などの値が本明細書に明確に列挙されていると考える。1未満の値については、1単位が適宜0.0001、0.001、0.01もしくは0.1であるとみなす。これらは意図していることの例にすぎず、最小値と最大値の間の数値のすべての可能な組合せが同様に本明細書に明確に記載されているとみなすべきである。
【実施例】
【0049】
[薬品及び試薬]
薬品及び試薬はすべてAldrich社から入手した。フラッシュクロマトグラフィは、Fisher Scientific社(100〜200メッシュ)又はAldrich社(60〜350メッシュ)製シリカゲルを用いて、Isco社製シリカゲル充填カラムにて行った。薄層クロマトグラフィは市販のプレコートガラスプレート(Analtech、GF、250μm)にて行った。
【0050】
[共通の方法]
分子量は、Polymer Laboratories製サイズ排除カラム(PLgel 5μm MIXED−C、300×7.5mm、40℃保持)を取り付けたPerkin Elmer社シリーズ200GPCにて、3.6体積%イソプロパノール含有クロロホルムを移動相として用いて、ポリスチレン標準にて測定した。NMRスペクトルはBruker400又はBruker Advance500分光計で測定した。
【0051】
[合成]
N−(1,3−レゾルシノール)カルバゾール及びN−ヒドロキノンカルバゾールの合成を、スキーム1に示す通りの2工程プロセス、即ちブロモジメトキシベンゼンをカルバゾールに添加した後、メトキシ基を脱保護してジヒドロキシ化合物を得るプロセスで行った。N−アリール化は、Pd又はCuIを触媒として使用する方法により行うことができる。重縮合は典型的な方法により行った。
【0052】
【化11】

実施例1
化合物1:9−(3,5−ジメトキシフェニル)−カルバゾールの合成
三口丸底フラスコに、ブロモ−3,5−ジメトキシベンゼン(1.54g、7.1mmol)、カルバゾール(1.186g、7.1mmol)、リン酸カリウム(3g、14.2mmol)及びヨウ化銅(0.14g、0.7mmol)を仕込んだ。ジオキサン(40mL)を反応フラスコに添加した後、反応フラスコを排気し、アルゴンで置換した。アルゴンを多量に流しながらジメチルエチレンジアミン(0.14g、1.6mmol)を反応フラスコに加えた。その後反応混合物をアルゴン中95℃に48時間加熱した。反応をTLCで追跡した。反応終了後、溶液を室温まで冷却し、10mLのH2Oを添加した。反応混合物を塩化メチレンで抽出し、有機相と水性相とを分離した。有機相をさらに100mLの水で2回、100mLのブラインで1回洗い、Na2SO4で乾燥した。溶剤を真空下で除去し、粗生成物を得た。CH2Cl2に粗生成物を溶解し、ヘキサンを添加し有色残留物を析出させた。溶液を濾過して有色残留物を除去した。母液を濃縮して、目的物を1.0g(46.5%)の淡黄色油状物として得た。
【0053】
1H NMR (CDCl3): d 7.98 (d, 2H), 7.35 (d, 2H), 7.23 (d, 2H), 7.11 (t, 2H), 6.6 (s, 2H), 6.43 (s, 1H), 3.65 (s, 6H)
EI-MS: 303(M+)
実施例2
化合物2:9−(3,5−ヒドロキシフェニル)−カルバゾールの合成
撹拌子を入れた500mL丸底フラスコ中の200mLの無水CH2Cl2に、31.3g(103mmol)の化合物1を添加した。溶液をドライアイス−アセトン浴中で冷却した。三臭化ホウ素(180mmol、CH2Cl2中1M溶液180mL)をシリンジから溶液に滴下した。フラスコをさらにドライアイス浴中で冷却し、一晩室温で平衡化させた。反応終了後、溶液をデカンテーションして、100mLの氷水(撹拌しながら)に注いだ。30分間の加水分解の後、有機層を200mLのCH2Cl2で2回抽出した。有機層を200mLの冷水で2回洗い、過剰なBBr3を中和した。溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、回転エバポレータを用いて溶剤を蒸発させ、粗生成物を得た。THF/ヘキサンからの再結晶により12.74g(44.98%)の生成物を得、これを次の重合反応に用いた。
【0054】
1H NMR (CDCl3): d 8.15 (d, 2H), 7.52 (d, 2H), 7. 44 (t, 2H), 7.32 (t, 2H), 6.66 (s, 2H), 6.47 (s, 1H)
実施例3
化合物3:9−(2,5−ジメトキシフェニル)−カルバゾールの合成
反応原料の1つとしてブロモ−2,5−ジメトキシベンゼンを用いた以外は、実施例1と同様な方法で合成を行った。
【0055】
実施例4
化合物4:9−(2,5−ヒドロキシフェニル)−カルバゾールの合成
出発材料として化合物3を用いた以外は、実施例2と同様な方法で合成を行った。
【0056】
実施例5
化合物2とテレフタロイルジクロリドとの重合
窒素雰囲気下、磁気撹拌子を入れた乾燥丸底フラスコに、化合物2(0.3969g、1.441mmol)、1,4−テレフタロイルジクロリド(0.2956g、1.456mmol)及び4mLの無水CHCl3を仕込んだ。得られた白濁溶液を氷塩浴に15分間入れた後、シリンジを用いて0.533mLの乾燥トリエチルアミンを添加した。溶液は直ぐに透明になった。かきまぜながら、混合物を0〜5℃に1時間保ち、放置して室温までもどし、さらに1時間かきまぜた。その後0.0032gのクミルフェノールを添加した。次に混合物を5mLのCH2Cl2で希釈し、1回ずつ等容量のHCl(1N)と水で洗った。溶液を40mLのメタノールから析出させた。ポリマーを集め、10mLのCH2Cl2に再溶解し、この溶液を沸騰している100mLの脱イオン水にゆっくり添加した。固形分を再び集め、空気乾燥し、4mLの新鮮なCH2Cl2に再溶解し、メタノールから再析出させた。得られた0.3747gのポリマーを80℃の真空オーブンにて一晩乾燥した。GPC分析により、ポリマーは重量平均分子量Mw=4241、分散度PDI=1.61であった。
【0057】
実施例6
化合物2とビスフェノールA−ビスクロロホルメートとの重合
窒素雰囲気下、磁気撹拌子を入れた乾燥反応容器に、化合物2(0.2750g、1mmol)、BPA−ビスクロロホルメート(0.353g、1mmol)及び4mLの乾燥CH2Cl2を仕込んだ。得られた白濁溶液を氷塩浴に15分間入れた後、0.37mLの乾燥トリエチルアミンを加えた。溶液は直ぐに透明になった。かきまぜながら、混合物を0〜5℃に1時間保ち、放置して室温までもどし、さらに一晩かきまぜた。次に混合物を10mLのCH2Cl2で希釈し、15mLの10%NaHCO3を添加し、混合物を10分間かきまぜてから、分液ロートに移した。水性相を捨て、有機相を順次等容量のHCl(1N)で1回と水で2回洗った。溶液を40mLのメタノールから析出させた。ポリマーを集め、10mLのCH2Cl2に再溶解し、この溶液を沸騰している1000mLの脱イオン水にゆっくり添加した。固形分を再び集め、空気乾燥し、12mLの新鮮なCH2Cl2に再溶解し、再度メタノールから析出させた。得られた0.26gのポリマーを80℃の真空オーブンにて一晩乾燥した。GPC分析により、ポリマーは重量平均分子量Mw=7362、分散度PDI=1.68であった。
【0058】
実施例7
化合物2とジフルオロジフェニルスルホンとの重合
7mLのDMAc及び4mLのトルエンを仕込んだ50mLの3口丸底フラスコに化合物2(0.5506g、20mmol)及びK2CO3(0.4146g)を入れた。反応フラスコに縦型撹拌機及びディーン・スターク・トラップを取り付けた。トルエンを除去するために反応混合物を130°Cに加熱した。トルエンをすべて除去したら、ジフルオロジフェニルスルホン(0.5085g、20mmol)を4mLのトルエンとともに添加した。トルエンの蒸留を続けた。トルエンをすべて除去したら、反応温度を150°Cまで上昇させた。4時間後、反応を停止し、反応混合物をメタノール(1:10体積比)から析出させた。粉末を集め、10mLのCHCl3に再溶解し、メタノールから析出させた。110mgの粉末が得られた。GPC分析により、ポリマーは重量平均分子量Mw=4103、分散度PDI=1.26であった。
【0059】
[減衰寿命測定の一般的な手順]
冷却R928光増倍管を取り付けたEdinburgh CD920分光計を用いて、三重項励起状態の寿命を測定した。代表的な手順では、サンプルを真空デュワーに入れ、次いで4×10-5トルまで減圧した。次にサンプルをパルス式ダイオードレーザー(クラスHIB、390〜420nm、最大パワー5mW)を用いて394nmで光励起した。時間分解発光スペクトルを470nmで測定した。実施例に用いたポリスチレン(PS)は、Mw18700を有するGPC基準品であり、Aldrich社から入手し、そのまま使用した。Mw約1100000を有するポリ(9−ビニルカルバゾール)(PVK)は、Aldrich社から入手した。ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N、C2]イリジウム(III)(FIrpic)はAmerican Dye Sources社(カナダ国ケベック州所在)から入手した。
サンプル調製:この実験のサンプルは次のように調製した。
【0060】
実施例8
1wt%のFIrpicをPS中に含有する混合物を、FIrpicの0.5wt%THF溶液(10mgのFIrpicを2mLのTHFに溶解)0.020mLをPSの1wt%THF溶液1.0mLと混合することにより調製した。薄膜サンプル[PS:FIrpic]はこの溶液を清浄化した石英基板上にスピンコートすることにより得た。
【0061】
実施例9
1wt%のFIrpicを実施例6のポリマー中に含有する混合物を、FIrpicの0.5wt%THF溶液(10mgのFIrpicを1mLのTHFに溶解)0.020mLを62−90の1wt%THF溶液(10mgの62−90を1mLのTHFに溶解)1.0mLと混合することにより調製した。薄膜サンプルはこの溶液を清浄化した石英基板上にスピンコートすることにより得た。
【0062】
比較例1
1wt%のFIrpicをポリ(N−ビニルカルバゾール)中に含有する混合物を、FIrpicの0.5wt%THF溶液(10mgのFIrpicを1mLのTHFに溶解)0.020mLをPVKの1wt%THF溶液1.0mLと混合することにより調製した。薄膜サンプルはこの溶液を清浄化した石英基板上にスピンコートすることにより得た。
【0063】
図1は、実施例6のコポリカーボネートを含有するデバイス及びポリスチレンを含有するデバイスの時間分解フォトルミネセンス(PL)スペクトルを示す。リン光色素FIrpicは、実施例6のコポリカーボネート(点線)に分散させた場合、絶縁性ポリスチレン(実線)に対して、匹敵する三重項減衰プロファイル(減衰寿命と同義)を有し、これは色素FIrpicからホストポリマーへの逆エネルギー移動がないことを示唆している。したがって、本発明のポリマーは、青色リン光OLEDにおいてFIrpic用のホスト材料として適当である。図2は、ポリ(N−ビニルカルバゾール)を含有するデバイス及びポリスチレンを含有するデバイスの時間分解フォトルミネセンス(PL)スペクトルを示す。ポリ(N−ビニルカルバゾール)を含有するデバイス(点線)のスペクトルは、ポリスチレンを含有するデバイス(実線)よりも、かなり速い減衰プロファイル示し、FIrpicからポリ(N−ビニルカルバゾール)への逆エネルギー移動があることを示唆している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式Iの化合物。
【化1】

式中、RはH又はアルキルであり、R1、R2及びR4は各々独立にC1−C20脂肪族基、C3−C20芳香族基又はC3−C20脂環式基であり、R3及びR5は各々独立に水素、C1−C20脂肪族基、C3−C20芳香族基又はC3−C20脂環式基であり、a、b及びdは各々独立に0又は1〜3の整数である。
【請求項2】
3及びR5が各々独立にトリアリールシリル、トリアルキルシリル、t−ブチル、ジフェニルホスフィンオキシド及びジフェニルホスフィンスルフィドからなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
3及びR5が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
Rが水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
Rがメチルである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
次式で表される、請求項1記載の化合物。
【化2】

【請求項7】
次式で表される、請求項1記載の化合物。
【化3】

【請求項8】
次式で表される、請求項1記載の化合物。
【化4】

式中、R3及びR5は各々独立に水素、トリフェニルシリル、t−ブチル、ジフェニルホスフィンオキシド及びジフェニルホスフィンスルフィドからなる群から選択される。
【請求項9】
次式で表される、請求項1記載の化合物。
【化5】

式中、R3及びR5は水素、トリフェニルシリル、t−ブチル、ジフェニルホスフィンオキシド及びジフェニルホスフィンスルフィドからなる群から選択される。
【請求項10】
次の式IIで表される構造単位を含むポリマー。
【化6】

式中、R1、R2及びR4は各々独立にC1−C20脂肪族基、C3−C20芳香族基又はC3−C20脂環式基であり、R3及びR5は各々独立に水素、C1−C20脂肪族基、C3−C20芳香族基又はC3−C20脂環式基であり、a、b及びdは各々独立に0又は1〜3の整数である。
【請求項11】
ポリエステルである、請求項10記載のポリマー。
【請求項12】
ポリエーテルである、請求項10記載のポリマー。
【請求項13】
ポリカーボネートである、請求項10記載のポリマー。
【請求項14】
ポリエステルカーボネートである、請求項10記載のポリマー。
【請求項15】
ポリエーテルイミドである、請求項10記載のポリマー。
【請求項16】
ポリアリールエーテルケトンである、請求項10記載のポリマー。
【請求項17】
ポリアリールエーテルスルホンである、請求項10記載のポリマー。
【請求項18】
3及びR5が各々独立にトリアリールシリル、トリアルキルシリル、t−ブチル、ジフェニルホスフィンオキシド及びジフェニルホスフィンスルフィドからなる群から選択される、請求項10記載のポリマー。
【請求項19】
3及びR5が水素である、請求項10記載のポリマー。
【化6】

【請求項20】
次式で表される構造単位を含む、請求項10記載のポリマー。
【化7】

式中、R3及びR5が各々独立に水素、トリフェニルシリル、t−ブチル、ジフェニルホスフィンオキシド及びジフェニルホスフィンスルフィドからなる群から選択される。
【請求項21】
次式で表される構造単位を含む、請求項10記載のポリマー。
【化8】

式中、R3及びR5は各々独立に水素、トリフェニルシリル、t−ブチル、ジフェニルホスフィンオキシド及びジフェニルホスフィンスルフィドからなる群から選択される。
【請求項22】
さらに、次式で表される構造単位を含む、請求項10記載のポリマー。
【化9】

【請求項23】
さらに、次式で表される構造単位を含む、請求項10記載のポリマー。
【化10】

【請求項24】
さらに、次式で表される構造単位を含む、請求項10記載のポリマー。
【化11】

【請求項25】
少なくとも1つの電極、
少なくとも1つの正孔注入層、及び
少なくとも1つの発光層を備え、
前記発光層が次の式IIで表される構造単位を含むポリマーを含有する、発光デバイス。
【化12】

式中、R1、R2及びR4は各々独立にC1−C20脂肪族基、C3−C20芳香族基又はC3−C20脂環式基であり、R3及びR5は各々独立に水素、C1−C20脂肪族基、C3−C20芳香族基又はC3−C20脂環式基であり、a、b及びdは各々独立に0又は1〜3の整数である。
【請求項26】
前記ポリマーがポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリアリールエーテルスルホン及びポリエステルカーボネートからなる群から選択される、請求項25記載の発光デバイス。
【請求項27】
3及びR5が各々独立にトリフェニルシリル、t−ブチル、ジフェニルホスフィンオキシド及びジフェニルホスフィンスルフィドからなる群から選択される、請求項25記載の発光デバイス。
【請求項28】
a、b及びdが0である、請求項25記載の発光デバイス。
【請求項29】
前記ポリマーが次式で表される構造単位を含む、請求項25記載の発光デバイス。
【化13】

式中、R3及びR5が各々独立に水素、トリフェニルシリル、t−ブチル、ジフェニルホスフィンオキシド及びジフェニルホスフィンスルフィドからなる群から選択される。
【請求項30】
前記ポリマー、ハイパーブランチ材料又はデンドリマーが次式で表される構造単位を含む、請求項25記載の発光デバイス。
【化14】

式中、R3及びR5は各々独立に水素、トリフェニルシリル、t−ブチル、ジフェニルホスフィンオキシド及びジフェニルホスフィンスルフィドからなる群から選択される。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2010−512330(P2010−512330A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540383(P2009−540383)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/085495
【国際公開番号】WO2008/073694
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】