説明

カルボニルパーフルオロポリエーテルを調製する方法

式T−O−(R−T’(式中、T、T’は末端基であり、z=0または1であり、Rは、(CFO)、−(CF(CF)O)−、−(CFCFO)−、−(CFCF(CF)O)−、−(CF(CF)CFO)−、−(CFCFCFO)−、−(CFCFCFCFO)−、−(CF−CFZ−O−(ここで、jは0〜3の整数であり、Zは、上で報告されたフルオロオキシアルキレン単位から選択される1〜20個の反復単位を含むフルオロオキシアルキレン鎖である)から選択される1個以上のフルオロオキシアルキレン反復単位を含有するパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン鎖である)のパーフルオロポリエーテルを調製する方法であって、黒鉛状材料上に担持された第VIII族の1種以上の金属を含む触媒の存在下で気体状水素を用いることによる、上で定義された反復単位の1種以上を含む過酸化物パーフルオロポリエーテルの還元を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化物パーフルオロポリエーテルから出発するパーフルオロポリエーテル(PFPE)を調製する方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、過酸化物パーフルオロポリエーテルから出発する、カルボニルパーフルオロポリエーテル(PFPE)、好ましくは−COX末端基(X=F、CF)を有するパーフルオロポリエーテル(PFPE)を調製する方法に関する。
【0003】
より詳しくは、本発明は、水素および担持触媒の存在下での過酸化物パーフルオロポリエーテル中の過酸化物−O−O−結合の含有率の低減を含む方法であって、改善された生産性と組み合わせて95.0%より高い、好ましくは99.0%より高い、より好ましくは99.9%より高い転化率を有する方法に関する。
【0004】
なおより詳しくは、本発明は、過酸化物パーフルオロポリエーテルの転化率が95.0%より高い、好ましくは99.0%より高い、より好ましくは99.9%より高い時間として定義された改善された持続時間、一般におよそ少なくとも50時間、好ましくは100時間超、より好ましくは200時間超を有する触媒の使用を含む方法に関する。
【背景技術】
【0005】
プロトン性溶媒中での例えばKIヨウ化物またはヨウ素/SO混合物による化学還元によって過酸化物パーフルオロポリエーテルから出発するカルボニルパーフルオロポリエーテルを調製する方法は先行技術において公知である。しかし、これらの方法は複雑で、高価であり、激しい環境影響を伴う。実際に、これらの方法は、プロトン性溶媒の顕著な量の使用および数工程、例えば、分離および洗浄を必要とする。更に、前記化学還元によって、エステル官能基を有するPFPEは得られ、カルボニル末端基−COXを有するPFPE(Xは上で定義された通りである)は得られず、末端基のこの種類は逐次官能化反応のために好ましい。例えば、高い転化率でカルボキシル官能基を有する誘導体を得るために、エステルの代わりに−COF末端基を有する対応するPFPEを用いることがより適する。更に、(特許文献1)に記載された化学還元プロセスは、その激しい環境影響のゆえにもはや使用できないCFC−113を用いている(モントリオール議定書およびモントリオール議定書の逐次修正を参照されたい)。
【0006】
記載された欠点を克服するために、第VIII族の担持金属から形成された触媒の存在下で水素による過酸化物パーフルオロポリエーテルの還元によって−COX基(X=F、CF)を末端にもつカルボニルパーフルオロポリエーテルを調製する方法が提案されてきた。例えば、(特許文献1)には、炭素上に担持されたPdの存在下でのHによる操作による過酸化物パーフルオロポリエーテルの不連続還元が記載されている。
【0007】
(特許文献2)には、第II族および第III族の金属のフッ化物、特にCaF上に担持された第VIII族の金属、例えばPdの存在下での気体状水素による操作による過酸化物パーフルオロポリエーテルの不連続法における還元が記載されている。これらの触媒は(特許文献1)に記載された触媒と比べてより長い持続時間を示す((特許文献2)の比較例を参照されたい)。更に、この特許出願において報告された実施例は不連続法で行われている。この特許出願の記載において、報告された触媒を連続法においても使用できることが記載されている。出願人によって行われた試験は、連続法において用いられたこれらの触媒、例えば、Pd/CaFが約20時間の限定的な持続時間を示すことを示した。実際、より長い時間にわたり触媒を用いることにより、未反応過酸化物をなお含有する生成物が得られ、その上、転化率は非常に低い。こうして得られた生成物は、残留過酸化物の還元の更なる工程を必要とする。これは、所望の生成物の生産性を顕著に低下させる。更に、連続法においてこの種の触媒を用いることにより、経時に漸進的に減少する転化率は、示された約20時間後に観察される。更に、転化率が時間による変動も受けることが観察されており、これは、プロセス制御の顕著な困難さおよび生成物品質の非再現性を示唆する。これらの現象は欠点を意味し、なぜなら、これらの現象がプロセスの生産能力および生成物品質の一定性の低下を避けるために、調製したての触媒の使用を必要とするからである。とにかく、工業的な観点から、そのように限定された時間にわたってしか触媒活性を有しない触媒は連続法において使用することができない。
【0008】
従って、以下の特性の組み合わせを有する、−COX末端基(ここで、X=F、CF)を有するカルボニルパーフルオロポリエーテル(PFPE)を調製するための連続法を有する必要性が感じられる。
− 所望の生成物における、過酸化物パーフルオロポリエーテルの95.0%より高い、好ましくは99.0%より高い、より好ましくは99.9%より高い転化率;
− 過酸化物−O−O−結合の量が、一般に500ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは20ppm未満、なおより好ましくは2ppm未満の量であるパーフルオロポリエーテルを得るように経時に変動しない過酸化物結合の転化率;
− 一般に少なくとも50時間、好ましくは100時間超、より好ましくは200時間超の改善された持続時間を有する触媒を用いることによる高い生産性。ここで、持続時間は、過酸化物パーフルオロポリエーテルの少なくとも95.0%より高い転化率が起きる時間を意味する。
【0009】
ここで、以後に記載される方法を用いることにより、上で挙げた先行技術の欠点を回避することが可能であることが予期せぬことに且つ意外なことに見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,847,978号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0024,153号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、

T−O−(R−T’ (I)
〔式中、
T、T’は末端基であり、z=0または1であり;Rは、(CFO)、(CF(CF)O)、(CFCFO)、−(CFCF(CF)O)−、−(CF(CF)CFO)−、−(CFCFCFO)、(CFCFCFCFO)、−(CF−CFZ−O−(ここで、jは0〜3の整数であり、Zは、前述のフルオロオキシアルキレン単位から選択される1〜20個の反復単位を含むフルオロオキシアルキレン鎖である)から選択される1個以上のフルオロオキシアルキレン反復単位を含有する(パー)フルオロ(ポリ)オキシアルキレン鎖である〕
のパーフルオロポリエーテルを調製する方法であって、
黒鉛状材料上に担持された第VIII族の1種以上の金属を含む触媒の存在下で気体状水素を用いることによる、フルオロオキシアルキレン反復単位(CFO)、(CF(CF)O)、(CFCFO)、−(CFCF(CF)O)−、−(CF(CF)CFO)−、−(CFCFCFO)、(CFCFCFCFO)、−(CF−CFZ−O−(式中、j、Zは上で定義された通りである)の1種以上を含む過酸化物パーフルオロポリエーテルの還元を含む方法である。
【0012】
好ましくは、本発明の方法は、
200〜8,000の範囲内の数平均分子量を有する式
T−O−(R−T’ (I)
(式中、
Tは、官能性末端基−CFCOF、−CF(CF)COF、−CFCFCOF、−CFCFCFCOF、−CFC(O)CF、−COFから選択され;
T’=T、またはT’は、非官能性(中性)末端基−CF、−CFCF、−C、−Cから選択され、1個のフッ素原子を1個の塩素原子または水素原子によって置換することが可能であり;
z、Rは上で定義された通りである)
のパーフルオロポリエーテルを調製することを可能にし、
黒鉛状材料上に担持された第VIII族の1種以上の金属を含む触媒の存在下で気体状水素を用いることによる、過酸化物−O−O−結合を有し且つ上で定義されたフルオロオキシアルキレン反復単位の1種以上を含み且つT、T’に関して上で挙げられた末端基から選択される末端基を有し且つ過酸化物パーフルオロポリエーテル100グラム当たり活性酸素グラムとして定義される0.02%〜4.5%の間、好ましくは0.2%〜4.0%、より好ましくは0.5%〜4.0%の酸化力(PO)を有するパーフルオロポリエーテルの液相における還元を含む。
【0013】
酸化力(PO)は、過酸化物パーフルオロポリエーテル中の過酸化物−O−O−結合の含有率の指数を表す。
【0014】
プロセス温度は、一般に20℃〜200℃、好ましくは50℃〜160℃、より好ましくは90℃〜150℃の範囲内である。
【0015】
圧力は、好ましくは1〜50気圧の間、より好ましくは1〜10気圧の間である。
【0016】
化合物(I)は、200〜5,000、より好ましくは200〜3,500の数平均分子量を有する。
【0017】
上述した方法により得ることができる生成物の例には、
z=0に対しては、
1.FCO−CFOCF−COF
2.CFC(O)−CFOCF−C(O)CF
3.CFC(O)−CFOCF−COF
4.FCO−O−COF
5.FCO−OCF−COF
6.FCO−CF(CF)OCF(CF)−COF
7.FCO−CF(CF)OCF−COF
8.FCO−CF(CF)OCF−C(O)CF
9.FCO−CFOCFCF−COF
10.CF−CFOCF−COF
11.CF−O−COF
12.CF−CFO−COF
13.CF−OCF−COF
14.CF−OCF(CF)−COF
z=1に対しては、
15.FCO−CFOCFCFOCF−COF
16.FCO−CFO(CFCFO)CF−COF
17.FCO−CFO(CFCFO)CF−COF
18.FCO−CFO(CFCFO)CF−COF
19.FCO−CFO(CFCFO)CF−COF
20.FCO−CFO(CFCFO)CF−COF
21.FCO−CFO(CFCFO)CF−COF
22.FCO−CFOCFOCF−COF
23.FCO−CFO(CFO)CF−COF
24.FCO−CFO(CFO)CF−COF
25.FCO−CFO(CFO)CF−COF
26.FCO−CFO(CFO)CF−COF
27.FCO−CFO(CFO)CF−COF
28.FCO−CFOCFCFOCFOCFCFOCF−COF
29.FCO−CFOCFOCFOCFCFOCF−COF
30.FCO−CFOCFCFOCFOCFCFOCFCFOCF−COF
31.FCO−CFOCFOCFOCFCFOCFCFOCF−COF
32.FCO−CFOCFCFOCFOCFOCFCFOCF−COF
33.FCO−CFOCFOCFCFOCFOCFCFOCF−COF
34.FCO−CFOCFOCFOCFOCFCFOCF−COF
35.FCO−CFOCFOCFOCFCFOCFOCF−COF
36.FCO−CFOCFCFOCFOCFCFOCFCFOCFCFOCF−COF
37.FCO−CFOCFCFOCFCFOCFOCFCFOCFCFOCF−COF
38.FCO−CFOCFOCFOCFCFOCFCFOCFCFOCF−COF
39.FCO−CFOCFOCFCFOCFOCFCFOCFCFOCF−COF
40.FCO−CFOCFOCFCFOCFCFOCFOCFCFOCF−COF
41.FCO−CFOCFCFOCFOCFOCFCFOCFCFOCF−COF
42.FCO−CFOCFCFOCFOCFCFOCFOCFCFOCF−COF
43.FCO−CFOCFOCFOCFOCFCFOCFCFOCF−COF
44.FCO−CFOCFOCFOCFCFOCFOCFCFOCF−COF
45.FCO−CFOCFOCFOCFCFOCFCFOCFOCF−COF
46.FCO−CFOCFOCFCFOCFOCFOCFCFOCF−COF
47.FCO−CFOCFOCFCFOCFOCFCFOCFOCF−COF
48.FCO−CFOCFCFOCFOCFOCFOCFCFOCF−COF
49.FCO−CFOCFOCFOCFOCFOCFCFOCF−COF
50.FCO−CFOCFOCFOCFOCFCFOCFOCF−COF
51.FCO−CFOCFOCFOCFCFOCFOCFOCF−COF
52.FCO−CFOCFOCFCFOCF−COF
53.FCO−CFOCFOCFCFOCFCFOCF−COF
54.FCO−CFOCFOCFCFOCFCFOCFCFOCF−COF
55.FCO−CFOCFOCFCFOCFCFOCFCFOCFCFOCF−COF
56.FCO−CFOCFOCFCFOCFCFOCFCFOCFCFOCFCFOCF−COF
57.FCO−CFOCFOCFCFOCFOCF−COF
58.FCO−CFOCFOCFCFOCFCFOCFOCF−COF
59.FCO−CFOCFOCFCFOCFCFOCFCFOCFOCF−COF
60.FCO−CFOCFOCFCFOCFCFOCFCFOCFCFOCFOCF−COF
61.FCO−CFOCFOCFCFOCFCFOCFCFOCFCFOCFCFOCFOCF−COF
62.FCO−CFOCOCF−COF
63.FCO−CFO(CO)CF−COF
64.FCO−CFO(CO)CF−COF
65.FCO−CFO(CO)CF−COF
66.FCO−CFO(CO)CF−COF
67.FCO−CF(CF)OCOCF(CF)−COF
68.FCO−CF(CF)O(CO)CF(CF)−COF
69.FCO−CF(CF)O(CO)CF(CF)−COF
70.FCO−CF(CF)O(CO)CF(CF)−COF
71.FCO−CF(CF)O(CO)CF(CF)−COF
72.FCO−CFOCOCFCFOCOCF−COF
73.FCO−CFOCOCFCFOCOCFCFOCOCF−COF
74.FCO−CFOCOCFCFOCOCFCFOCOCFCFOCOCF−COF
75.FCO−CF(CF)OCFCFOCF(CF)−COF
76.FCO−CF(CF)OCFCFOCOCFCFOCF(CF)−COF
77.FCO−CF(CF)OCFCFOCOCFCFOCOCFCFOCF(CF)−COF
78.CF−OCFCFOCF−COF
79.CF−O(CFCFO)CF−COF
80.CF−O(CFCFO)CF−COF
81.CF−O(CFCFO)CF−COF
82.CF−O(CFCFO)CF−COF
83.CF−O(CFCFO)CF−COF
84.CF−OCFOCF−COF
85.CF−O(CFO)CF−COF
86.CF−O(CFO)CF−COF
87.C−OCOCF−COF
88.C−O(CO)CF−COF
89.C−O(CO)CF−COF
90.C−O(CO)CF−COF
91.C−O(CO)CF−COF
92.CF−OCOCF(CF)−COF
93.CF−O(CO)CF(CF)−COF
94.CF−O(CO)CF(CF)−COF
95.CF−O(CO)CF(CF)−COF
96.CF−O(CO)CF(CF)−COF
【0018】
より好ましくは、上述した方法は、

A−O−(CFXO)(CFO)(CO)(CFCFCFCFO)(O)−B (II)
(式中、
A、Bは互いに同じかまたは異なり、T、T’のために上で定義された基から選択され;
=F、CFであり;
過酸化物(II)の数平均分子量が300〜150,000の間であるようにa、b、c、d、h指数は零を含めた整数であり、h指数は上で定義された範囲内のPOを有するように零とは異なる整数であり、(CO)が線状単位または分岐単位であることが可能である)
の過酸化物パーフルオロポリエーテルから出発して、

T−O−(R−T’ (I)
(式中、
T、T’は、互いに同じかまたは異なり、上で定義された末端基から選択され、但し、非官能性末端基が、好ましくは末端基TおよびT’の合計を基準にして10%モル未満、より好ましくは5%未満、なおより好ましくは3%未満であることを条件とし;
z、Rおよび前記数平均分子量は上で定義された通りである)
のカルボニルパーフルオロポリエーテルを得ることを可能にする。
【0019】
過酸化物POが2より高い時、制御できない発熱の問題を回避するために、過酸化物POを適切な溶媒、例えば、その反応から得られたのと同じ生成物(I)で希釈することが好ましい。使用可能な溶媒の他の類の例は、フルオロカーボン、パーフルオロカーボン、パーフルオロ(ポリ)エーテル、ヒドロフルオロ(ポリ)エーテルである。
【0020】
式(I)の好ましい化合物は、z=1を有するとともに、単位(CFXO)(X=F、CF)、(CFCFO)、(CO)、(CFCFCFCFO)(単位(CO)は線状または分岐であることが可能である)から選択される少なくとも1種の単位を含有する化合物である。10%未満の非官能性末端基の含有率を有する式(I)の化合物は、より好ましい。
【0021】
式(I)の生成物において、Rは、好ましくは以下の構造から選択される。
a) −(CFO)(CFCFO)(CFCFCFO)(CFCFCFCFO)
(式中、
指数m、n、p、qは数平均分子量が上で示された通りであるようになる、零を含めた整数であり;好ましくは、nが零とは異なる場合、m/nは0.1〜10の間(極値を含む)であり;(m+n)が零とは異なる場合、(p+q)/(m+n)は0〜0.2の間(極値を含む)である)
b) −(CFCF(CF)O)(CFCFO)(CFO)(CF(CF)O)
(式中、
r、s、t、uは数平均分子量が上で定義された通りであるようになる、零を含めた整数であり;sが零とは異なる時、r/sは0.1〜10の間(極値を含む)であり;(r+s)が零とは異なる場合、(t+u)/(r+s)は0.01〜0.5の間(極値を含む)である)
c) −(CFCF(CF)O)(CFO)(CF(CF)O)
(式中、e、f、gは数平均分子量が上で定義された通りであるようになる、零を含めた整数であり;eが零とは異なる場合、(f+g)/eは0.01〜0.5の間(極値を含む)である)。
【0022】
過酸化物PFPEは、例えば、米国特許第3,442,942号明細書、米国特許第3,650,928号明細書、米国特許第3,665,041号明細書において記載された内容に準拠して、酸素の存在下でテトラフルオロエチレン(TFE)および/またはヘキサフルオロプロペン(HFP)(互いに混合しても)の光支援重合によって調製することが可能である。
【0023】
単位−(CF−CFZ−O−を含有する過酸化物PEPEは、例えば、米国特許第5,114,092号明細書に記載された内容に準拠して、溶媒の存在下で且つ50℃より高くない温度で操作することにより、式CF=CFOXa(式中、Xaは互いに同じかまたは異なる1種以上の基(R’O)R”であり、m=0〜6であり、R’は、基−CF−、−CFCF、−CFCF(CF)−から選択され、R”は、C〜C10線状パーフルオロアルキル、またはC〜C10分岐パーフルオロアルキルもしくはC〜C10環式パーフルオロアルキルから選択される)の1種以上の(パー)フルオロアルキルビニルエーテルの重合(酸素およびUVの存在下での)によって、調製することが可能である。この同じプロセスをTFEおよび/またはHFPの存在下で行うことも可能である。更に、例えば、EP1,454,938、EP1,524,287を参照されたい。
【0024】
式(II)の過酸化物パーフルオロポリエーテルは、一般に液体である。好ましくは、過酸化物パーフルオロポリエーテルは以下の類から選択される。
(1) Xo−O(CFCFO)r1(CFO)s1(O)t1−Xo’
(式中、
XoおよびXo’は互いに同じかまたは異なり、−CFCl、−CFCFCl、−CF、−CFCF、−CFCOF、−COFであり;
r1、s1、t1は数平均分子量が上で定義された通りとなる、好ましくは500〜100,000の間となる整数であり;r1/s1は0.1〜10の間であり、s1は零とは異なり;t1はPOが上で定義された範囲内となる整数である)
(上述した過酸化物パーフルオロポリエーテルは、米国特許第3,715,378号明細書、米国特許第4,451,646号明細書、米国特許第5,258,110号明細書、米国特許第5,744,651号明細書の教示に従うことにより、テトラフルオロエチレンの酸素重合によって調製することが可能である)
(2) X3−O(CFCFO)r2(CFO)s2(CF(CF)O)u2(CFCF(CF)O)v2(O)t2−X3’
(式中、
X3およびX3’は互いに同じかまたは異なり、−CFCl、−CFCFCl、−CFCF、−CF、−C、−CF(CF)COF、−COF、−CFCOF、−CFC(O)CFであり;
r2、s2、t2、u2、v2は数平均分子量が上で定義された通りとなる、好ましくは700〜80,000の間となる、零を含めた整数であり;t2はPOが上で定義された範囲内となる数である)
(上述した過酸化物パーフルオロポリエーテルは、米国特許第5,000,830号明細書および米国特許第3,847,978号明細書の教示に従うことにより、テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロプロペンの酸素重合によって調製することが可能である)
(3) X2−O(CFCFO)r3(CFO)s3(CF(CFCFO)k3(O)t3−X2’
(式中、X2およびX2’は互いに同じかまたは異なり、−CFCOF、−COFであり;
w=1または2であり;
r3、s3、t3、k3は数平均分子量が700〜100,000の間、好ましくは700〜80,000の間となる整数であり;r3/s3は0.2〜10の間であり、k3/(r3+s3)は0.05未満であり、t3はPOが上で定義された通りとなる数である)
(上述した過酸化物パーフルオロポリエーテルは、米国特許出願公開第2005/192,413号明細書の教示に従うことにより調製することが可能である)。
【0025】
10%未満の非官能性末端基量を有する式(I)の化合物を得たい場合、高い分子量および高いPO、例えば、20,000より高い分子量および1より高いPOを有する類1)または2)の過酸化物パーフルオロポリエーテルを用いることが好ましい。
【0026】
類3)の過酸化物パーフルオロポリエーテルを用いる場合、式(I)の得られた化合物は、出発過酸化物の分子量およびPOに無関係に官能性末端基のみを有する。
【0027】
本発明の方法において、式(I)の上述した生成物に加えて、HFおよび例えば、COF、COF−COF、CFCOCOFなどの幾つかの非エーテルカルボニル化合物も得られ、それらを集め、その後、分離して、更なる使用のために回収する。
【0028】
気体状水素は、フィードされた過酸化物のモルを基準にして化学量論量で連続的にフィードされる。通常約10%の僅かな化学量論水素過剰で操作することも可能である。
【0029】
触媒の第VIII族の金属として、Pd、Pt、Rh、Ru、Ir、Osおよびそれらの混合物を挙げることが可能である。Pd、Ptは好ましく、Pdはより好ましい。
【0030】
担体上の金属濃度は、触媒の全重量を基準にして0.1重量%〜10重量%の間、好ましくは1重量%〜5重量%の間である。
【0031】
本発明の触媒に用いられる担体は黒鉛状炭素を含む黒鉛状材料である。黒鉛状炭素とは、黒鉛の同素体形態をとる炭素を含有するすべての炭素種を意味する。担体中の結晶質黒鉛構造はX線回折法によって検出することが可能である。黒鉛状担体は、一般に0.1〜1,000m/gの間、好ましくは1〜500m/g、より好ましくは10〜350m/gの表面積を有する。10〜50m/gの間、50〜100m/g、100〜350m/g、または350〜500m/gの間、500〜800m/g、800〜1,000m/gの表面積値も用いることが可能である。本発明の触媒は、ペレットまたは微細粉末の形態で用いることが可能である。ペレットの粒度分布は1〜5mmの範囲である。粉末の粒度分布は、一般に0.5〜300マイクロメートルの間、好ましくは1〜200マイクロメートル、より好ましくは10〜100マイクロメートルを含む。
【0032】
前述した通り、本発明の触媒は担体として黒鉛状炭素を含む。触媒は、黒鉛状炭素が必須成分として存在する限り他の担体も含有することが可能である。好ましくは、黒鉛状炭素、より好ましくは黒鉛から形成された担体が用いられる。この場合、触媒量は、過酸化物パーフルオロポリエーテルを基準にして0.001重量%〜10重量%の間、好ましくは0.01重量%〜5重量%である。担体が黒鉛状炭素に加えて他の担体も含む場合、その用いられた量はより多い。
【0033】
黒鉛状材料上に担持された第VIII族の金属は従来技術において公知であり、黒鉛状材料の高い導電特性のために、燃料電池のための電極を製造するために一般に用いられる。
【0034】
本発明の方法は、過酸化物および水素を連続的にフィードし、その後、例えば、連続水素流れ下で反応中に形成されたHFを除去することにより好ましくは連続法において行われる。
【0035】
本出願人は、上で定義された触媒が、過酸化物パーフルオロポリエーテル中の過酸化物−O−O−結合の量を低下させることができ、経時で変動がなく且つ一定の非常に高い転化率が得られることを意外なことに且つ予想外に見出した。実際、一般に500ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは20ppm未満、なおより好ましくは2ppm未満の量でしか過酸化物結合を含まない生成物が得られる。従って、上で定義された触媒は、連続法において有利に用いることが可能である。
【0036】
更に、本発明の方法において用いられる触媒が、所望のカルボニル生成物中の過酸化物パーフルオロポリエーテルの95.0%より高い、好ましくは99.0%より高い、より好ましくは99.9%より高い転化率が起きる時間として本明細書で意味する少なくとも50時間、好ましくは100時間超、より好ましくは200時間超の長い持続時間を示すことが見出された。従って、本発明の方法において用いられる触媒は頻繁な取り替えを必要とせず、従って、高い生産性およびプロセスコストの削減を確実にする。
【0037】
本発明の方法は、すべての過酸化物および触媒を反応器に初めにフィードし、水素を連続的にフィードすることにより、不連続法においても有利に行うことが可能である。実際、不連続法においても、上述した触媒、例えば、黒鉛上に担持されたPdが、CaF上に担持されたPdまたは炭素上に担持されたPdと比べて過酸化物結合の還元においてより活性であることが本出願人によって意外なことに且つ予想外に見出された(条件が同じであり、すべての過酸化物を還元するために必要な時間が本発明の触媒に関してより短い結果を生じる実施例を参照されたい)。
【0038】
本発明の幾つかの例示的であるが、限定的でない実施例が後に続く。
【実施例】
【0039】
キャラクタリゼーション
POの決定
生成物、過酸化物パーフルオロポリエーテル、および最終生成物の100グラム当たりの活性酸素グラムとして定義される酸化力(PO)は、不活性フッ素化溶媒(H−Galden ZT85)に溶解させたサンプルの既知量を、ヨウ化ナトリウムのアルコール溶液と反応させ、前記反応から放出されたヨウ素をチオ硫酸ナトリウムの既知の滴定量を有する溶液で電位差滴定することにより決定される。
【0040】
ppmで表現されるPO値はパーセント値の分量であり、生成物1kgに含まれる活性酸素のmgを示す。
【0041】
本方法はPO2ppmの感度限界を有する。
【0042】
分子量および構造の決定
数平均分子量、末端基の含有量およびPFPE構造は、NMR19F分光分析(Varian XL200分光光度計)によって決定される。
【0043】
転化率
転化率は還元される過酸化物−O−O−結合の百分率を意味する。転化率は、生成した生成物のPO(ppm)とフィードした過酸化物のPOとの間のパーセント比の100への補数として計算される。
【0044】
触媒のキャラクタリゼーション
本発明の触媒および比較例の触媒は微細粉末の形態で用いられ、表1に記載された特徴を有する。
【0045】
【表1】

【0046】
例1〜5:連続法
実施例1
電気抵抗加熱、過酸化物混合物と水素の連続フィードシステム、および反応混合物の連続抽出のための1個のフィルターを備えた500mlのAISI316攪拌機付き反応器内に、3重量%のPdを含有する0.36gの触媒(I)を導入する。(米国特許第3,715,378号明細書および米国特許第4,451,646号明細書の教示に従うことにより)テトラフルオロエチレンの光化学酸化によって予め得られた400gの過酸化物パーフルオロポリエーテルを同じ反応器内に導入する。過酸化物PFPEは式
A−O−(CFO)(CFCFO)(O)−B (II)
を有する。
式中、b/a=2.4であり;AおよびBは互いに同じかまたは異なり、鎖末端基−CF(49モル%)、−CFCOF(51モル%)である。式(II)のPFPEは、37,500の数平均分子量および1.48%に等しいPOを有する。
【0047】
混合物を窒素流れ下で130℃で加熱し、4気圧で圧力を維持する。その後、水素を10Nl/hの流れで導入し、1時間後に過酸化物PFPEを200g/hの流速でポンプによってフィードする。
【0048】
10%でKOHを用いるアルカリスクラバーに、HFを主に含有する流出ガスのベントを移送する。
【0049】
生成物のサンプルを適切なバブリング用の(bubbling)入口によって周期的に抜き取り、サンプルに関して酸化力を決定する。分析されたすべてのサンプルは、PO零(PO<2ppm)を有する結果となる。従って、連続運転から62時間後、良好な過酸化物転化率の結果を考慮して試験を中止する。産出した生成物のPO(ppm)とフィードされた過酸化物との間のパーセント比の100%に対する補数として過酸化物転化率を計算する。
【0050】
NMR19Fによって決定された、得られた生成物の構造は、式
T−O−(CFO)(CFCFO)−T’
(式中、m/n=2.4である)
に対応する。
TおよびT’は互いに同じかまたは異なり、鎖末端基−CF(1.2モル%)、−CFCOF(98.8モル%)であり、数平均分子量は1,080に等しい。この実施例において得られた結果を表2にまとめている。
【0051】
実施例2
実施例1において用いられた手順を繰り返すことにより、触媒重量を基準にして1.5重量%のパラジウムを含有する2.0gの触媒(II)Pd/黒鉛の存在下で実施例1において調製された過酸化物パーフルオロポリエーテルの過酸化物結合の還元反応を検討した。試験を合計で232時間にわたって行った。この時間中に、転化率は常に良好に見えたが、なぜなら、抜き取りそして分析されたすべてのサンプルがPO<2ppmを示したからである。得られた結果を表2にまとめている。
【0052】
例3(比較)
実施例1において用いた手順を繰り返すことにより、触媒重量を基準にして1.5重量%のパラジウムを含有する5gの触媒(III)Pd/フッ化カルシウムの存在下で実施例1において調製した過酸化物パーフルオロポリエーテルの過酸化物結合の還元反応を検討した。
【0053】
連続した転化率変動のゆえに合計で20時間の運転後に試験を中止する。実際、この時間中、触媒活性は非常に低く見え、実施例2の触媒量より多い触媒量を用いたとしても転化率は一般に95%より低く、且つ一定でなかった。得られた結果を表2にまとめている。
【0054】
例4(比較)
過酸化物PFPE流速を100g/hに下げ、触媒重量を基準にして1.5重量%のパラジウムを含有する5gの触媒(III)パラジウム/フッ化カルシウムを用いることにより例3を繰り返した。
【0055】
試験を108時間にわたり行い、その後、中止した。転化率が95%より低くなり始めたからである(漸進的な転化率低下)。
【0056】
初めの16時間において、触媒は、零POを有する生成物を得ることを可能にする。その後、転化率は変動し、漸進的に低下し、零POを有する生成物が時々得られる。得られた結果を表2にまとめている。
【0057】
例5(比較)
実施例1において用いた手順を繰り返すことにより、触媒重量を基準にして5重量%のパラジウムを含有するCarbon Engelhard上のPdの触媒(IV)2gのの存在下で実施例1において調製した過酸化物パーフルオロポリエーテルの過酸化物結合の還元反応を検討した。出発過酸化物に特有のものである高い粘度のゆえにフィルターを通して生成物を抽出するのが困難なために5時間後に試験を中止する。実際、それに先立つ時間において、排出された生成物のPOは非常に高く、フィードされたPFPEのPOに類似しており、それによって迅速な触媒の被毒を示した。得られた結果を表2にまとめている。
【0058】
表2で報告したデータは、担体上のPd濃度(1.5%)が等しくて、表面積が似ている(触媒(II)および(III))けれども、CaF上に担持されたPd(触媒(III)が、約2倍量の触媒(5g対2g)を用いてさえも時間において変動するとともに本発明の触媒(II)のそれより遙かに低い過酸化物(PO)還元活性を示すことを示している。例3(比較)と比べた実施例2を参照されたい。
【0059】
更に、接触時間を長くするために100g/h(比較例4参照)に過酸化物流速を半減することによってさえ、比較触媒(III)は、反応の初めの16時間においてのみ良好な還元活性を示している。前記の期間の後に、実際に、活性の変動および低下が観察されており、緩慢且つ漸進的な触媒の被毒を示している。実施例2を例4(比較)と比べなければならない。
【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
例6〜13:不連続法
実施例6
米国特許第3,715,378号明細書および米国特許第4,451,646号明細書の教示に従うことにより、式
A−O−(CFO)(CFCFO)(O)−B (II)
の過酸化物PFPEを調製する。
上記式中、
b/a=2.3であり;
A、Bは互いに同じかまたは異なり、鎖末端基−CF(50モル%)、−CFCOF(50モル%)である。過酸化物は46,800の数平均分子量および1.28%のPOを有する。
【0063】
この過酸化物パーフルオロポリエーテル120gおよび触媒(I)(黒鉛上に担持されたPd)0.05gをフッ素化ポリマー製の250ml反応器に導入する。反応器を恒温浴によって加熱し、1,000回転/分で保たれた磁石によって攪拌を確保する。温度測定のためのゾンデおよびサンプルを抜き取るためのバブリング用の入口と合わせて、大気圧で水素および窒素の流入を可能にするバブリング用の入口を反応器に装備する。
【0064】
10%でKOH500mLを含有する、酸ガスのためのアルカリスクラバーにHFを主に含有する流出ガスのベントを移送する。
【0065】
混合物を窒素流れ下で加熱し、温度が130℃に到達した時、窒素流れを中止し、1Nl/hの水素をフィードする。
【0066】
適切なバブリング用の入口から規則的な間隔でサンプルを抜き取ることにより反応を確認する。反応が終わる時、(2.5時間後)水素流れを中断し、反応器を窒素流れ下で室温に冷却させる。反応物を排出し、その後、生成物をPTFEフィルターでの濾過によって回収する。
【0067】
NMR19Fによって分析された生成物は、式
T−O−(CFO)(CFCFO)−T’
を有する。
上記式中、m/n=2.3であり;TおよびT’は互いに同じかまたは異なり、鎖末端基−CF(1.3モル%)、−CFCOF(98.7モル%)であり、数平均分子量は1,270に等しい。この実施例において得られた結果を表3にまとめている。
【0068】
実施例7
実施例6において用いたのと同じ装置内に、実施例6において調製した過酸化物パーフルオロポリエーテル119gおよび触媒重量を基準にして1.5重量%のパラジウムを含有する0.11gの触媒(II)Pd/黒鉛を導入する。実施例6の同じ手順に従うことにより、130℃で維持された反応器に1Nl/hの水素をフィードする。抜き取りサンプルのPOを分析することにより反応を確認する。
【0069】
4時間後、生成物はPO<2ppmを有し、試験を中止する。この実施例において得られた結果を表3にまとめている。
【0070】
例8(比較)
実施例6において用いた手順を繰り返すことにより、触媒重量を基準にして1.5重量%のパラジウムを含有する0.11gの触媒(III)(Pd/フッ化カルシウム)の存在下で実施例6において調製した過酸化物パーフルオロポリエーテル120gの過酸化物結合の還元反応を検討する。反応から4.5時間後、生成物はPO<2ppmを有する。得られた結果を表3にまとめている。
【0071】
例9(比較)
実施例6において用いた手順を繰り返すことにより、触媒重量を基準にして5重量%のパラジウムを含有する0.04gの触媒(IV)(Pd/炭素)の存在下で実施例6において調製した過酸化物パーフルオロポリエーテル118gの過酸化物結合の還元反応を検討する。反応から5.5時間後、生成物はPO<2ppmを有する。得られた結果を表3にまとめている。
【0072】
実施例10
実施例6において用いた手順を繰り返すことにより、触媒重量を基準にして1.5重量%のパラジウムを含有する0.59gの触媒(II)(Pd/黒鉛)の存在下で実施例6において調製した過酸化物パーフルオロポリエーテル121gの過酸化物結合の還元反応を検討する。反応から3時間後、生成物はPO<2ppmを有する。得られた結果を表3にまとめている。
【0073】
例11(比較)
実施例6において用いた手順を繰り返すことにより、触媒重量を基準にして1.5重量%のパラジウムを含有する0.60gの触媒(III)(Pd/フッ化カルシウム)の存在下で実施例6において調製した過酸化物パーフルオロポリエーテル120gの過酸化物結合の還元反応を検討する。触媒およびPdの量は、実施例10の量に実質的に等しい。反応から4時間後、生成物はPO<2ppmを有する。得られた結果を表3にまとめている。
【0074】
例12(比較)
実施例6において用いた手順を繰り返すことにより、触媒重量を基準にして5重量%のパラジウムを含有する0.18gの触媒(IV)(Pd/炭素)の存在下で実施例6において調製した過酸化物パーフルオロポリエーテル120gの過酸化物結合の還元反応を検討する。反応から4時間後、生成物はPO<2ppmを有する。得られた結果を表3にまとめている。
【0075】
実施例13
実施例6において用いた手順を繰り返すことにより、触媒重量を基準にして3重量%のパラジウムを含有する0.01gの触媒(I)(Pd/黒鉛)の存在下で実施例6において調製した過酸化物パーフルオロポリエーテル120gの過酸化物結合の還元反応を検討する。反応から4.5時間後、生成物はPO<2ppmを有する。得られた結果を表3にまとめている。
【0076】
【表4】

【0077】
表3のデータは、POすなわち過酸化物の量が等しくて、パラジウム量が実質的に等しいけれども、本発明の触媒が、従来技術の触媒(III)、(IV)と比べてより少ない時間で過酸化物PFPEを完全に還元することを示している。例8および9と比べた実施例6、7および例11および12と比べた実施例10を参照されたい。更に、例8のデータと比べた実施例13のデータは、CaF上に担持されたPdの速度と類似した速度であるが、Pd量の約1/5のみを用いて過酸化物を還元することが可能であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

T−O−(R−T’ (I)
(式中、
T、T’は末端基であり、z=0または1であり;Rは、(CFO)、(CF(CF)O)、(CFCFO)、−(CFCF(CF)O)−、−(CF(CF)CFO)−、−(CFCFCFO)、(CFCFCFCFO)、−(CF−CFZ−O−(ここで、jは0〜3の整数であり、Zは、前記のフルオロオキシアルキレン単位から選択される1〜20個の反復単位を含むフルオロオキシアルキレン鎖である)から選択される1個以上のフルオロオキシアルキレン反復単位を含有する(パー)フルオロ(ポリ)オキシアルキレン鎖である)のパーフルオロポリエーテルを調製する方法であって、
黒鉛状材料上に担持された第VIII族の1種以上の金属を含む触媒の存在下で気体状水素を用いることによる、フルオロオキシアルキレン反復単位(CFO)、(CF(CF)O)、(CFCFO)、−(CFCF(CF)O)−、−(CF(CF)CFO)−、−(CFCFCFO)、(CFCFCFCFO)、−(CF−CFZ−O−(式中、j、Zは上で定義された通りである)の1種以上を含む過酸化物パーフルオロポリエーテルの還元を含む方法。
【請求項2】

T−O−(R−T’ (I)
のパーフルオロポリエーテルが200〜8,000の間の数平均分子量を有し;Tが、−CFCOF、−CF(CF)COF、−CFCFCOF、−CFCFCFCOF、−CFC(O)CF、−COFから選択される官能性末端基であり;T’=T、またはT’が非官能性末端基−CF、−CFCF、−C、−Cから選択され、1個のフッ素原子を1個の塩素原子または水素原子によって置換することが可能であり;
z、Rが請求項1において定義された通りであり;
前記パーフルオロポリエーテルが、単位(CFO)、(CF(CF)O)、(CFCFO)、(CO)、(CFCFCFCFO)の1種以上を含み、過酸化物−O−O−結合を有し、前記末端基が、T、T’のために示された末端基から選択され、過酸化物パーフルオロポリエーテル100グラム当たり活性酸素グラムとして定義された0.02%〜4.5%の間、好ましくは0.2%〜4.0%の間、より好ましくは0.5%〜4.0%の間の酸化力(PO)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記温度が、20℃〜200℃、好ましくは50℃〜160℃、より好ましくは90℃〜150℃の範囲内である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物(I)が、200〜5,000の間、より好ましくは200〜3,500の間の数平均分子量を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】

A−O−(CFX1O)(CFCFO)(CO)(CFCFCFCFO)(O)−B (II)
(式中、
A、Bは互いに同じかまたは異なり、T、T’のために上で定義された基から選択され;
X1=F、CFであり;
a、b、c、d、h指数は、過酸化物PFPEの数平均分子量が300〜150,000の間となる、零を含めた整数であり、h指数は、上で定義された範囲内のPOを有するように零とは異なる整数である)
の過酸化物パーフルオロポリエーテルから出発して、式
T−O−(R−T’ (I)
(式中、T、T’は互いに同じかまたは異なり、上で定義された末端基から選択され、但し、非官能性末端基が、末端基TおよびT’の合計を基準にして好ましくは10%モル未満、より好ましくは5%未満、なおより好ましくは3%未満であることを条件とし;
z、Rおよび前記数平均分子量は上で定義された通りである)
のカルボニルパーフルオロポリエーテルを調製する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
過酸化物POが2より高い場合、前記過酸化物パーフルオロポリエーテルが、適する溶媒、好ましくは式(I)の同じ反応生成物、またはフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、パーフルオロ(ポリ)エーテル、ヒドロフルオロ(ポリ)エーテルから選択される溶媒で希釈される請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
式(I)の化合物がz=1を有する化合物である請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
式(I)の化合物が10%未満の非官能性末端基の含有率を有する化合物である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式(I)の化合物において、Rが、以下の構造:
a) −(CFO)(CFCFO)(CFCFCFO)(CFCFCFCFO)
(式中、
m、n、p、q指数は数平均分子量が上で示された通りとなる、零を含めた整数であり;好ましくは、nが零とは異なる場合、m/nは0.1〜10の間(極値を含む)であり;(m+n)が零とは異なる場合、(p+q)/(m+n)は0〜0.2の間(極値を含む)である)
b) −(CFCF(CF)O)(CFCFO)(CFO)(CF(CF)O)
(式中、
r、s、t、uは、数平均分子量が上で定義された通りとなる、零を含めた整数であり;sが零とは異なる場合、r/sは0.1〜10の間(極値を含む)であり;(r+s)が零とは異なる場合、(t+u)/(r+s)は0.01〜0.5の間(極値を含む)である)
c) −(CFCF(CF)O)(CFO)(CF(CF)O)
(式中、e、f、gは、数平均分子量が上で定義された通りとなる、零を含めた整数であり;eが零とは異なる場合、(f+g)/eは0.01〜0.5の間(極値を含む)である)
から選択される請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記過酸化物パーフルオロポリエーテルが、以下の類:
(1) Xo−O(CFCFO)r1(CFO)s1(O)t1−Xo’
(式中、
XoおよびXo’は互いに同じかまたは異なり、−CFCl、−CFCFCl、−CF、−CFCF、−CFCOF、−COFであり;
r1、s1、t1は、数平均分子量が上で定義された通りとなる、好ましくは500〜100,000の間となる整数であり;r1/s1は0.1〜10の間であり、s1は零とは異なり;t1はPOが上で定義された範囲内となる整数である)
(2) X3−O(CFCFO)r2(CFO)s2(CF(CF)O)u2(CFCF(CF)O)v2(O)t2−X3’
(式中、
X3およびX3’は互いに同じかまたは異なり、−CFCl、−CFCFCl、−CFCF、−CF、−C、−CF(CF)COF、−COF、−CFCOF、−CFC(O)CFであり;
r2、s2、t2、u2、v2は、数平均分子量が上で定義された通りとなる、好ましくは700〜80,000の間となる、零を含めた整数であり;t2はPOが上で定義された範囲内となる数である)
(3) X2−O(CFCFO)r3(CFO)s3(CF(CFCFO)k3(O)t3−X2’
(式中、X2およびX2’は互いに同じかまたは異なり、−CFCOF、−COFであり;w=1または2であり;
r3、s3、t3、k3は、数平均分子量が700〜100,000の間、好ましくは700〜80,000の間となる整数であり;r3/s3は0.2〜10の間であり、k3/(r3+s3)は0.05未満であり;t3はPOが上で定義された通りとなる数である)
から選択される請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
過酸化物パーフルオロポリエーテルが、高分子量と高PO、好ましくは20,000より高い分子量と1より高いPOを有する類1)または類2)の間で選択される場合、式(I)の化合物が10%未満の非官能性末端基の量を有する請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
過酸化物パーフルオロポリエーテルが類3)の過酸化物パーフルオロポリエーテルである場合、式(I)の化合物が官能性末端基のみを有する請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
フィードされた過酸化物モルを基準にして化学量論量で、または約10%の僅かな化学量論過剰で気体状水素を連続的にフィードする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
触媒の第VIII族の金属が、Pd、Pt、Rh、Ru、Ir、Osおよびそれらの混合物、好ましくはPd、Pt、より好ましくはPdである請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
担体上の金属濃度が、全触媒重量を基準にして一般に0.1重量%〜10重量%の間、好ましくは1重量%〜5重量%の間である請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
触媒中で用いられる担体が、黒鉛状炭素、好ましくは黒鉛を本質的に含む黒鉛状材料である請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記担体が0.1〜1,000m/gの間、好ましくは1〜500m/g、より好ましくは10〜350m/gの表面積を有する請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
触媒量が過酸化物パーフルオロポリエーテルを基準にして0.001重量%〜10重量の間、好ましくは0.01重量%〜5重量%の間である請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
連続法で行われる請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
不連続法で行われる請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−523617(P2010−523617A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502499(P2010−502499)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/054230
【国際公開番号】WO2008/122639
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(508305960)ソルヴェイ・ソレクシス・エッセ・ピ・ア (53)
【Fターム(参考)】