説明

カルボン酸ビニルエステルの製造方法

本発明は、レニウム、マンガン、タングステン、モリブデン、クロム及び鉄のカルボニル錯体、ハロゲン化物及び酸化物及びレニウム金属から選択される触媒の存在下で、≦300℃の温度で、カルボン酸をアルキン化合物と反応させることによるカルボン酸ビニルエステルの製造方法に関する。この方法により、所望のビニルエステルが高い収率で得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸をアルキンと反応させることによるカルボン酸ビニルエステルの製造方法に関する。
【0002】
相応するカルボン酸ビニルエステルを製造するために、カルボン酸をアルキンに付加することは、以前から公知である。好適な触媒として、特に亜鉛塩、例えば反応に関与するカルボン酸の亜鉛塩が使用される(例えばUS 2,066,075、US 3,455,998及びUS 3,607,915参照)。
【0003】
亜鉛塩は僅かな選択性及び安定性のみを有するので、他の触媒を使用することが試みられた。従って、US 5,430,179は、ホスフィン配位子を有する、反応媒体中に溶解性のルテニウム錯体の使用を記載している。EP 512 656 Aは、不活性の多孔性担体上に塗布されたルテニウム触媒の存在下で、ブレンステッド酸とアセチレン性不飽和化合物とを反応させることにより、ブレンステッド酸、例えばカルボン酸のビニル誘導体を製造する方法を記載している。J. Org. Chem. 2004, 69, 57825784には、触媒としてRe(CO)5Brの使用下で、末端アルキンと酢酸又は安息香酸との反応が記載されている。その際、特に溶剤としてのn−ヘプタン及びトルエン中で、高い選択率でアンチ・マルコニコフ付加物(anti-MarkovnikovAddukt)が得られることを示している。オルガノメタリックス(Organometallics)2000, 19, 170-183中には、触媒として[Re(CO)5(H2O)]BF4の使用下で、アミノアルキン化合物の分子内ヒドロアミノ化が記載されている。しかしながら、これは、僅かな収率でしか得られない。
【0004】
従来技術の方法では、ビニルエステルの収率が不満足であることが共通している。
【0005】
従って、本発明の根底をなす課題は、高い収率で進行するカルボン酸ビニルエステルの製造方法を提供することである。
【0006】
更に、前記方法は熱的に不安定なカルボン酸及びカルボン酸ビニルエステルをも分解しない温度で、実施可能であるべきである。
【0007】
最後に、前記方法は、触媒にかかる経費を制限するために、僅かな触媒量を用いて実施可能であるべきである。
【0008】
意外にも、触媒としてレニウム、マンガン、タングステン、モリブデン、クロム、鉄のカルボニル錯体、ハロゲン化物又は酸化物又はレニウム金属を使用する場合に、前記課題は解決されることが見出された。
【0009】
従って、本発明の主題は、式I:
【化1】

[式中、
a) R1は、H又は−COO−CH=CH−R2を表し、かつnは1を表すか、又は
b) R1は、C1〜C20−アルキル、C2〜C20−アルケニル、C3〜C7−シクロアルキルを表し、かつnは1、2、3又は4を表し、その際、R1は、場合により1、2又は3個の基により置換され、前記基は互いに無関係に、フェニル、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C4−アルコキシ、アミノ、モノ−C1〜C4−アルキルアミノ、ジ−C1〜C4−アルキルアミノ、−OCOR3、−COOR3、−CONR45、−NR4COR5、−OCONR45又は−NR4COOR5の中から選択されるか、又は
c) R1は、アリールを表し、かつnは1、2、3、4、5又は6を表し、その際、アリールは場合により1、2又は3個の基で置換されていてもよく、前記基は互いに無関係に、C1〜C4−アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C4−アルコキシ、アミノ、モノ−C1〜C4−アルキルアミノ、ジ−C1〜C4−アルキルアミノ、−OCOR3、−COOR3、−CONR45、−NR4COR5、−OCONR45又は−NR4COOR5の中から選択されるか、又は
d) R1は、6〜9又は7〜9個の炭素原子を有するビシクロアルキル又は6〜9又は7〜9個の炭素原子及び1又は2個の炭素−炭素二重結合を有するビシクロアルケニルを表し、かつnは1又は2を表し、その際、ビシクロアルキル基は1、2、3、4、5又は6個の基で置換されていてもよく、前記基は互いに無関係にハロゲン又はC1〜C4−アルキルの中から選択されるか、又は
e) R1は、5員又は6員の複素環式基を表し、前記複素環式基は1又は2個のヘテロ原子を有し、前記ヘテロ原子は互いに無関係にN、O及びSの中から選択され、かつnは1、2又は3を表し、その際、前記複素環式基は1又は2個の基で置換されていてもよく、前記基は互いに無関係にハロゲン又はC1〜C4−アルキルの中から選択され;
2は、H、C1〜C8−アルキル、フェニル−C1〜C4−アルキル、場合により1又は2個のC1〜C4−アルキル基で置換されているフェニル、又はC3〜C7−シクロアルキルを表し;
3は、C1〜C4−アルキルを表し;
4及びR5は、同じ又は異なることができ、H又はC1〜C4−アルキルを表す]のカルボン酸ビニルエステルを製造するために、
式II
【化2】

[式中、R1は、H、−COOH又は上記b)又はc)に記載された意味を表し、かつnは上記の意味を有する]の化合物を、式III
【化3】

[式中、R2は、上記の意味を有する]の化合物と、レニウム、マンガン、タングステン、モリブデン、クロム及び鉄のカルボニル錯体、酸化物及びハロゲン化物及びレニウム金属の中から選択される触媒の存在で、≦300℃の温度で反応させることを有する、式Iのカルボン酸ビニルエステルの製造方法である。
【0010】
本発明の有利な実施態様は、式I
【化4】

[式中、
a) R1は、H又は−COO−CH=CH−R2を表し、かつnは1を表すか、又は
b) R1は、C1〜C20−アルキル、C2〜C20−アルケニル又はC3〜C7−シクロアルキルを表し、かつnは1、2、3又は4、特に1、2又は3を表し、その際、R1は、場合により1又は2個の基により置換され、前記基は互いに無関係に、フェニル、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C4−アルコキシ、アミノ、モノ−C1〜C4−アルキルアミノ、ジ−C1〜C4−アルキルアミノ、−OCOR3、−COOR3、−CONR45、−NR4COR5、−OCONR45又は−NR4COOR5の中から選択されるか、又は
c) R1は、アリールを表し、かつnは1、2、3、4、5又は6を表し、その際、アリールは場合により1、2又は3個の基で置換されていてもよく、前記基は互いに無関係に、C1〜C4−アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C4−アルコキシ、アミノ、モノ−C1〜C4−アルキルアミノ、ジ−C1〜C4−アルキルアミノ、−OCOR3、−COOR3、−CONR45、−NR4COR5、−OCONR45又は−NR4COOR5の中から選択されるか、又は
2は、H、C1〜C8−アルキル、フェニル−C1〜C4−アルキル、場合により1又は2個のC1〜C4−アルキル基で置換されているフェニル、又はC3〜C7−シクロアルキルを表し;
3は、C1〜C4−アルキルを表し;
4及びR5は、同じ又は異なることができ、H又はC1〜C4−アルキルを表す]のカルボン酸ビニルエステル化合物を製造するために、
式II
【化5】

[式中、R1は、H、−COOH又は上記b)又はc)に記載された意味を表し、かつnは上記の意味を有する]の化合物を、式III
【化6】

[式中、R2は、上記の意味を有する]の化合物と、レニウム、マンガン、タングステン、モリブデン、クロム及び鉄のカルボニル錯体、酸化物及びハロゲン化物の中から選択される触媒の存在で、≦300℃、有利に≦260℃、特に≦230℃の温度で反応させることを有する、式Iのカルボン酸ビニルエステル化合物の製造方法である。
【0011】
更に有利な実施態様の場合に本発明は、式I
【化7】

[式中、
a) R1は、H又は−COO−CH=CH−R2を表し、かつnは1を表すか、又は
b) R1は、C1〜C20−アルキル、C2〜C20−アルケニル又はC3〜C7−シクロアルキルを表し、かつnは1、2、3又は4、特に1,2又は3を表し、その際、R1は、場合により1又は2個の基により置換され、前記基は互いに無関係に、フェニル、ハロゲン及びC1〜C4−アルコキシの中から選択されるか、又は
c) R1は、アリールを表し、かつnは1、2、3、4、5又は6を表し、その際、アリールは場合により1、2又は3個の基で置換されていてもよく、前記基は互いに無関係に、C1〜C4−アルキル、ハロゲン及びC1〜C4−アルコキシの中から選択され、
2は、H、C1〜C8−アルキル、フェニル−C1〜C4−アルキル、場合により1又は2個のC1〜C4−アルキル基で置換されているフェニル、又はC3〜C7−シクロアルキルを表す]のカルボン酸ビニルエステル化合物を製造するために、
式II
【化8】

[式中、R1は、H、−COOH又は上記b)又はc)に記載された意味を表し、かつnは上記の意味を有する]の化合物を、式III
【化9】

[式中、R2は、上記の意味を有する]の化合物と、レニウム、マンガン、タングステン、モリブデン、クロム及び鉄のカルボニル錯体の中から選択される触媒の存在で、≦300℃、有利に≦260℃、特に≦230℃の温度で反応させることによる、式Iのカルボン酸ビニルエステル化合物の製造方法に関する。
【0012】
アルキル基は、前記炭素数を有する直鎖又は分岐鎖状のアルキル基である。このようなアルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、n−ドデシルなどである。
【0013】
2〜C20−アルケニル基の例は、ビニル、1−又は2−プロペニル、ブテン−1−イル、ブテン−2−イル及びイソブテニルである。
【0014】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を表す。
【0015】
3〜C7−シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘプチル及び特にシクロペンチル及びシクロヘキシルである。
【0016】
ビシクロアルキル基の例は、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[2.1.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン及びビシクロ[2.3.2]ノナンである。
【0017】
ビシクロアルケニル基の例は、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン、ビシクロ[2.2.2]オクテン及びビシクロ[2.3.2]ノネンである。
【0018】
複素環式基は、芳香族又は飽和又は不飽和の非芳香族複素環式基を表す。芳香族複素環式基の例は、ピリジル、ピリミジル、トリアジニル、ピロリル、フリル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル又はチアジルである。飽和複素環式基の例は、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、モルホリニル又はピペラジニルである。
【0019】
アリールは、有利にフェニル又はナフチルを表す。
【0020】
1が前記したb)の意味である場合、nは、特に1又は2を表す。
【0021】
1が前記したc)の意味である場合、nは、特に1、2又は3を表す。
【0022】
触媒として、レニウム、マンガン、タングステン、モリブデン、クロム及び鉄のカルボニル錯体、酸化物又はハロゲン化物が使用される。この場合、カルボニル錯体とは、配位子として少なくとも1個のカルボニル基を有する化合物であると解釈される。その他の配位位置には、例えば下記のような他の配位子を配置していてもよい。酸化物及びハロゲン化物とは、1個以上の配位位置及び/又は原子価がC1〜C8−アルキル基により占められている化合物並びにオキシハロゲン化物であるとも解釈される。この例は、CH3ReO3、ReO3Cl又はReOCl4である。
【0023】
触媒は、全ての酸化数で存在していてよく、カルボニル錯体の場合に、触媒は、特に0又は1の酸化数で存在する。有利な触媒は、レニウム、マンガン又はモリブデンの、特にレニウムのカルボニル錯体、酸化物又はハロゲン化物であり、その際、レニウム又はマンガンのカルボニル錯体は特に適している。
【0024】
前記した金属のカルボニル錯体は、特に効果的である。1個以上のカルボニル基を、適当な配位子、例えばH2O、ハロゲン、特に塩素又は臭素、ホスフィン配位子、例えばトリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、ジフェニルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノプロパン、ジフェニルホスフィノブタン、ジフェニルホスフィノフェロセン等、アミン配位子、例えばNH3、エチレンジアミン等、アルコール配位子、例えばフェノール、メタノール、エタノール等、チオ配位子、例えばメチルメルカプタン又はチオフェノールにより置き換えることができる。適当なカルボニル錯体−触媒の例は、Mn2(CO)10、Fe(CO)5、Fe2(CO)9、Mo(CO)6、W(CO)6及びCr(CO)6である。
【0025】
レニウム触媒は、特に適当であることが判明した。この例は、Re2(CO)10、Re(CO)5Cl、Re(CO)5Br、ReBr(CO)3(CH3CN)2、ReCp(CO)3、Re(ペンタ−メチル−Cp)(CO)3、ReCl(CO)3(CH3CN)2、ReBr(CO)3(THF)2、ReCp2、ReCl(CO)3(THF)2、Re2(ペンタ−メチル−Cp)2(CO)3、Re2(ペンタ−メチル−Cp)24、Re(ペンタ−メチル−Cp)OCl(Cp = シクロペンタジエン、THE = テトラヒドロフラン)、Re27、Re、ReCl3、ReBr3及びReCH33である。特に有利な触媒は、Re2(CO)10である。
【0026】
この反応は、均一又は不均一液相で行うことができる。均一液相が望ましい場合には、所定の反応条件下で反応媒体中に溶解性であるか、又は反応の間に溶解する触媒を使用する。このような触媒は、特に、ここに挙げられた金属のカルボニル錯体である。不均一系触媒は、これらの金属のハロゲン化物及び酸化物並びにレニウム金属である。不均一系触媒は、直接、例えば粉末形で、又は担体上に設けて使用することができる。適当な担体は、炭素粉末、ゼオライト、酸化アルミニウム、酸化ケイ素などである。
【0027】
一般的に、触媒を、式IIの化合物当量に対して、それぞれ0.000005〜1Mol%,有利に0.000005〜0.5 Mol%,有利に0.00001〜0.1Mol%、特に0.00005〜0.05 Mol%、 0.0001 〜0.05 Mol%、0.0005〜0.01 Mol%又は0.001〜0.01 Mol%の量で使用する。「当量」の記載は、この場合、式IIIの化合物と反応することができる式IIのカルボキシル基に関する。
【0028】
適当な式IIの出発化合物は、脂肪族モノカルボン酸である。このようなカルボン酸の例は、ギ酸、酢酸、ハロゲン化されたカルボン酸、例えばクロロ酢酸又はトリフルオロ酢酸、プロピオン酸、アミノカルボン酸、例えばアラニン、乳酸又は酪酸、ヒドロキシカルボン酸、例えばヒドロキシ酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、2−メチルプロピオン酸、2−メチル酪酸、3−メチル酪酸、2―メチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸、式:R67C(CH3)COOH[式中、R6及びR7は、互いに無関係にC1〜C4−アルキルを表す]の第三級カルボン酸、例えばピバル酸、2,2−ジメチル酪酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、2,2−ジメチルオクタン酸(Versaticsaeuren 6, 7, 8, 9, 10)、ネオノナン酸、ネオデカン酸、ネオトリデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、シクロヘキサンモノ−及びシクロヘキサンポリカルボン酸、例えばシクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸又はフェニル酢酸である。
【0029】
適当な式IIの出発化合物は、脂肪族ポリカルボン酸、特にジカルボン酸及びC1〜C4−アルカノールで部分エステル化された及びアンモニア、C1〜C4−モノアルキルアミン又はジ−C1〜C4−アルキルアミンで部分アミド化されたポリカルボン酸の誘導体である。脂肪族ポリカルボン酸の例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アガリシン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルタミン酸、マレイン酸及びフマル酸であり、その際、アジピン酸の使用は特に有利である。
【0030】
適当な式IIの出発化合物は、
【化10】

のような二環式モノカルボン酸及びジカルボン酸でもある。
【0031】
適当な式IIの出発化合物は、複素環式モノ−及びポリカルボン酸及びC1〜C4−アルカノールで部分エステル化され、かつアンモニア、C1〜C4−モノアルキルアミン又はジ−C1〜C4−アルキルアミンで部分アミド化されたポリカルボン酸の誘導体でもある。この例は、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸又は4−ピリジンカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、例えば2,3−及び2,4−ピリジンジカルボン酸、フラン−2−カルボン酸、フラン−3−カルボン酸、チオフェン−2−カルボン酸、チオフェン−3−カルボン酸又はプロリンである。
【0032】
適当な式IIの出発化合物は、更に、芳香族モノカルボン酸及びポリカルボン酸及びC1〜C4−アルカノールで部分エステル化され、かつアンモニア、C1〜C4−モノアルキルアミン又はジ−C1〜C4−アルキルアミンで部分アミド化されたポリカルボン酸の誘導体である。このようなカルボン酸の例は、安息香酸、2−、3−又は4−メチル安息香酸、サリチル酸、2−、3−又は4−アミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸、フタル酸、イソフタル酸又はテレフタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゼンペンタカルボン酸及びベンゼンヘキサカルボン酸及びC1〜C4−アルカノールで部分エステル化されたポリカルボン酸の誘導体である。
【0033】
式II及びIIIの出発化合物は、市販で得られるか又は公知の方法により製造される。前記の二環式カルボン酸は、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン又はシクロヘプタジエンとアクリル酸、マレイン酸又はフマル酸とのディールス−アルダー反応及び場合による飽和モノ−及びジカルボン酸への水素化によって得られる。
【0034】
適当な式IIIの出発化合物は、例えばアセチレン、プロピン、1−ブチン、1−ペンチン、1−ヘキシン及びフェニルアセチレンであり、その際アセチレンは特に有利に使用される。
【0035】
式IIの化合物対式IIIの化合物の量比は、広い範囲で選択可能である。しかしながら、一般に、式IIの化合物に対して式IIIの化合物を過剰量で、特に0.1〜20Mol%の過剰量で使用する。
【0036】
一般に、反応は、適当な不活性溶剤中で実施される。適用される温度で式IIの化合物が液状である場合、溶剤はなくてもよい。適当な不活性溶剤は、脂肪族及び芳香族炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカリン、パラフィン油、トルエン、キシレン等、エーテル、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン又はジフェニルエーテル、塩素化された炭化水素、例えば塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン又はクロロベンゼン、エステル、例えば酢酸エチル、酢酸n―ブチル又はブチロラクトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン又はポリエチレングリコール又はそれらの混合物である。反応は、選択した反応温度で液状である場合、溶剤としての式Iの化合物中で実施することもできる。
【0037】
反応温度は、広い範囲で自由に選択することができる。反応温度は、一般に、出発化合物又は生成物が分解することなしに迅速な反応が行われるように選択される。反応温度は、合理的に≦300℃、有利に≦260℃、より有利に≦250℃及び特に≦230℃である。一般に、温度は、70〜300℃、80〜280℃、特に100〜260℃、100〜250℃、100〜230℃、100〜210℃又は110〜200℃、有利に120〜180℃、130〜170℃、140〜170℃及び特に150〜170℃の範囲である。
【0038】
反応は、通常、圧力下で実施され、その際、特に有利に1〜30bar(絶対)、有利に2〜20bar及び特に5〜25bar又は10〜20barに調節される。圧力は、例えば、式IIIの使用する化合物を用いて及び/又は不活性ガス、例えば窒素を用いて調節することができる。反応時間は、一般に、0.5〜72時間、特に1〜48時間の範囲である。
【0039】
場合により、反応に必要な添加物、例えば、酢酸亜鉛、リチウム塩、例えばLiCl、ルイス酸、例えばBF3など、ルイス塩基、例えばトリエチルアミン、ピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エンなど、COにおいて触媒と反応し、それにより遊離配位位置を生じうる物質、例えばトリエチルアミノ−N−オキシドを添加することもできる。
【0040】
反応は、不連続法、連続法又は半バッチ法で実施することができる。後処理を、通常の方法で、有利に所望のカルボン酸ビニルエステルの留去により行う。触媒は、塔底中に残留し、場合により再利用することができる。有利に、反応及び後処理、特に精留を、重合防止剤の存在下で実施することができる。重合防止剤として、例えばヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ニトロソ化合物、例えばイソアクリルニトレート、ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソ−シクロヘキシルヒドロキシルアミン、メチレンブルー、フェノチアジン、タンニン酸又はジフェニルアミンを使用することができる。重合防止剤は、全バッチに対してそれぞれ、一般に1〜10000ppm、特に100〜1000ppmの量で使用する。
【0041】
反応は、選択的に進行し、すなわち、式IIの化合物中のビニル化可能な他の基、例えばOH又はNH2の存在下でも、カルボキシル基のみがビニル化される。1つ以上のカルボキシル基の他にビニル化可能な他の基を含有する式IIの化合物を使用する場合、有利に70〜160℃の範囲の反応温度及び/又は0.5〜12時間の範囲の反応時間を選択する。
【0042】
本発明の有利な実施態様は、R1がH、C1〜C6−アルキル、C3〜C7−シクロアルキル又はフェニルを表し、その際アルキル基はb)で前記したように、かつフェニル基はc)で前記したように置換されていてよく、かつnが1を表す式IIの化合物と、アセチレンとの反応である。
【0043】
更に有利な実施態様は、R1がCO2Hを表し、nが1を表すか、又はR1がC1〜C20−アルキル、特にC1〜C4−アルキルを表し、その際R1はb)で前記したように置換されていてよく、nが2を表す式IIの化合物と、アセチレンとの反応である。有利に、この反応を、70〜220℃、好ましくは130〜220℃、特に好ましくは140〜180℃又は150〜170℃の範囲の温度で実施する。触媒を、当量のジカルボン酸に対して、特に0.00001〜0.1Mol%、特に0.0001〜0.01Mol%の量で使用する。アジピン酸とアセチレンとの反応は、特に有利である。
【0044】
他の有利な実施態様は、R1がフェニルを表し、これはc)で前記したように置換されていてよく、nが2、3、4、5又は6、特に2又は3を表す式IIの化合物と、アセチレンとの反応である。有利に、この反応を、140〜230℃、特に150〜200℃の範囲の温度で実施する。触媒を、当量のポリカルボン酸に対して、有利に0.00001〜0.1Mol%、特に0.0001〜0.01Mol%の量で使用する。
【0045】
本発明の主題は、式I
【化11】

[式中、R1は、アリールを表し、かつnは2、3、4、5又は6を表し、その際、アリールは場合により1、2又は3個の基で置換されていてもよく、前記基は互いに無関係に、C1〜C4−アルキル、ハロゲン、C1〜C4−アルコキシ、アミノ、モノ−C1〜C4−アルキルアミノ、ジ−C1〜C4−アルキルアミノ、−OCOR3、−COOR3、−CONR45、−NR4COR5、−OCONR45又は−NR4COOR5の中から選択されるか、又はR1は、C3〜C7−シクロアルキルを表し、かつnは2又は3を表し;かつR2はH、C1〜C8−アルキル、フェニル−C1〜C4−アルキル、場合により1又は3個のC1〜C4−アルキル基で置換されているフェニル又はC3〜C7−シクロアルキルを表す]の化合物でもある。
【0046】
特に、フタル酸−、テレフタル酸−及びイソフタル酸ジビニルエステル並びにシクロヘキサン−1,2−ジビニルエステル、シクロヘキサン−1,3−ジビニルエステル及びシクロヘキサン−1,4−ジビニルエステル、ピリジン−2−カルボン酸ビニルエステル、ピリジン−3−カルボン酸ビニルエステル及びピリジン−4−カルボン酸ビニルエステル並びにニコチン酸ビニルエステルの製造が有利である。
【0047】
本発明の目的は、R1が6〜9個の炭素原子を有するビシクロアルキル又は6〜9個の炭素原子及び1又は2個の炭素−炭素−二重結合を有するビシクロアルケニルを表し、かつnは1又は2を表すか、又はR1が5員又は6員のヘテロアルキルを表し、前記ヘテロアルキルは1又は2個のヘテロ原子を有し、前記ヘテロ原子は互いに無関係にN、O及びSの中から選択され、その際nは1、2又は3を表し;かつR2がH、C1〜C8−アルキル、フェニル−C1〜C4−アルキル、場合により1又は2個のC1〜C4−アルキル基で置換されているフェニル又はC3〜C7−シクロアルキルを表す式Iの化合物でもある。
【0048】
本発明の方法により得られるビニルエステルは、熱的に又は高エネルギー放射線により硬化することができる材料中で使用するのに適している。この材料は、被覆材料、例えば塗料、印刷インキ又は接着剤中で又は塗料、印刷インキ又は接着剤として、印刷版として、成形体として、フォトレジストを製造するため、ステレオリソグラフィー中で又は注型材料として、例えば工学レンズのための注型材料として使用ことができる。被覆のための基材は、例えば、繊維、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木、紙又は厚紙であってよい。式Iの化合物は、ラジカル及びカチオン重合において架橋剤として使用可能である。これは、有利に、UV硬化性塗料中で、例えば反応性希釈剤として使用される。
【0049】
次の実施例は本発明を詳説するが、本発明を限定するものではない。GC分析(GC:ガスクロマトグラフィー)は、カルボワックス(ポリエチレングリコール)フィルム、例えばJ & W Scientific社のDBワックスを備えた毛管カラムで行った。
【0050】
実施例
実施例1
安息香酸36.0g(295mmol)、Re2(CO)10 0.25g(0.38mmol)及びトルエン78.0gからなる混合物を、140℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で6hビニル化した。GC分析により測定した収率は99%であった。
【0051】
実施例2
アジピン酸8.0g(55mmol)、Re(CO)5Cl 0.10g(0.28mmol)及びトルエン17.3gからなる混合物を、140℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で6hビニル化した。GC分析により測定した収率は96%であった。
【0052】
実施例3
アジピン酸8.0g(55mmol)、Re(CO)5Br 0.10g(0.25mmol)及びトルエン17.3gからなる混合物を、140℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で6hビニル化した。GC分析により測定した収率は95%であった。
【0053】
実施例4
アジピン酸36.0g(247mmol)、Re2(CO)10 0.10g(0.15mmol)及びトルエン78.0gからなる混合物を、140℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で6hビニル化した。GC分析により測定した収率は98%であった。
【0054】
実施例5
アジピン酸300.0g(2.045mol)、Re2(CO)10 1.00g(1.50mmol)及びトルエン700.0gからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で6hビニル化した。重合防止剤の存在下で反応混合物を蒸留によって後処理することにより、カルボン酸のジビニルエステルが87%の収率で生じた。
【0055】
実施例6
アジピン酸100.0g(681.6mmol)及びRe2(CO)10 0.50g(0.75mmol)からなる混合物を、溶剤なしに、200℃で2h加熱した。160℃に冷却後に、混合物を160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で6hビニル化し、その際にアジピン酸ジビニルエステルが得られた。
【0056】
実施例7
テレフタル酸8.0g(48mmol)、Re2(CO)10 0.10g(0.15mmol)及びトルエン17.3gからなる混合物を、140℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で6hビニル化した。テレフタル酸ジビニルエステルが得られ、これはGCMS分析により検出することができた。
【0057】
実施例8
フマル酸30.0g(295mmol)、Re2(CO)10 0.5g(0.77mmol)及びトルエン90mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で8hビニル化した。フマル酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0058】
実施例9
フタル酸30.0g(181mmol)、Re2(CO)10 0.5g(0.77mmol)及びトルエン90mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で12hビニル化した。フタル酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0059】
実施例10
イソフタル酸30.0g(181mmol)、Re2(CO)10 0.5g(0.77mmol)及びトルエン90mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で20hビニル化した。イソフタル酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0060】
実施例11
4−メトキシ安息香酸30.0g(197mmol)、Re2(CO)10 0.5g(0.77mmol)及びトルエン90mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で18hビニル化した。4−メトキシ安息香酸ビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0061】
実施例12
ピバル酸30.0g(326mmol)、Re2(CO)10 0.5g(0.77mmol)及びトルエン90mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で7hビニル化した。ピバル酸ビニルエステルが、GCMS―及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0062】
実施例13
クロトン酸30.0g(348mmol)、Re2(CO)10 0.5g(0.77mmol)及びトルエン90mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で6hビニル化した。クロトン酸ビニルエステルが、GCMS―及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0063】
実施例14:
4−ジメチルアミノ安息香酸30.0g(184mmol)、Re2(CO)10 0.5g(0.77mmol)及びトルエン90mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で6hビニル化した。4−ジメチルアミノ安息香酸ビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0064】
実施例15:
4−クロロ安息香酸30.0g(192mmol)、Re2(CO)10 0.5g(0.77mmol)及びトルエン90mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で20hビニル化した。4−クロロ安息香酸ビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0065】
実施例16:
アクリル酸30.0g(417mmol)、Re2(CO)10 0.5g(0.77mmol)及びトルエン90mlからなる混合物を、140℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で17hビニル化した。アクリル酸ビニルエステルが、GCMS―及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0066】
実施例17:
4−ブロム安息香酸30.0g(149mmol)、Re2(CO)10 0.5g(0.77mmol)及びトルエン90mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で4hビニル化した。4−ブロム安息香酸ビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0067】
実施例18
メタクリル酸30.0g(348mmol)、Re2(CO)10 0.5g(0.77mmol)及びトルエン90mlからなる混合物を、140℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で13hビニル化した。メタクリル酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0068】
実施例19
テレフタル酸40.0g(241mmol)、Re2(CO)10 0.5g(0.77mmol)及びトルエン90mlからなる混合物を、175℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で2hビニル化した。テレフタル酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0069】
実施例20
ヘキサン酸40.0g(345mmol)、Re2(CO)10 0.5g(0.77mmol)及びトルエン90mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で1hビニル化した。ヘキサン酸ビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0070】
実施例21:
シクロヘキサン酸40.0g(313mmol)、Re2(CO)10 0.5g(0.77mmol)及びトルエン90mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で3.5hビニル化した。シクロヘキサン酸ビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0071】
実施例22:
アジピン酸36.5g(253mmol)、Re2(CO)10 0.08g(0.12mmol)及びキシレン100mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で24hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0072】
実施例23
アジピン酸36.5g(253mmol)、Re2(CO)10 0.08g(0.12mmol)及びジオキサン100mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で2hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0073】
実施例24
アジピン酸36.5g(253mmol)、Re2(CO)10 0.08g(0.12mmol)及びTHF100mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で1hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0074】
実施例25
アジピン酸36.5g(253mmol)、Re2(CO)10 0.08g(0.12mmol)及びNMP100mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で2.5hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0075】
実施例26
アジピン酸36.5g(253mmol)、Re2(CO)10 0.08g(0.12mmol)及びジフェニルエーテル100mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で2hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0076】
実施例27
アジピン酸6.5g(253mmol)、Re2(CO)10 0.08g(0.12mmol)及びデカリン100mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で10hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0077】
実施例28
アジピン酸36.5g(253mmol)、Re2(CO)10 0.08g(0.12mmol)及びパラフィン油100mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で12hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0078】
実施例29
アジピン酸36.5g(253mmol)、Re2(CO)10 0.08g(0.12mmol)及びアセトニトリル100mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で12hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0079】
実施例30
アジピン酸36.5g(253mmol)、Re2(CO)10 0.08g(0.12mmol)及びブチロラクトン100mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で26hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0080】
実施例31
アジピン酸36.5g(253mmol)、Re2(CO)10 0.08g(0.12mmol)及びアジピン酸ジビニルエステル100mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で24hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0081】
実施例32
アジピン酸36.5g(253mmol)、Re27 0.5g(1.03mmol)及びトルエン90mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で6hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0082】
実施例33
アジピン酸8.0g(56mmol)、レニウム粉末0.10g(0.54mmol)及びトルエン20mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で6hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GC分析により検出することができた。
【0083】
実施例34
アジピン酸36.5g(253mmol)、ReCl3 0.073g(0.25mmol)及びトルエン100mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で30hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0084】
実施例35
アジピン酸36.5g(253mmol)、ReCH33 0.062g(0.25mmol)及びトルエン100mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で30hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0085】
実施例36
アジピン酸36.5g(253mmol)、SiO2/Al23上のRe27 5.0g(Re3%、0.8mmol)及びトルエン100mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で5hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0086】
実施例37
アジピン酸18.25g(127mmol)、Re2(CO)10 0.021g(0.03mmol)及びアジピン酸ジビニルエステル60mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び7barのアセチレン圧で9.5hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0087】
実施例38
アジピン酸18.25g(127mmol)、Re2(CO)10 0.021g(0.03mmol)及びアジピン酸ジビニルエステル60mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び4barのアセチレン圧で8hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0088】
実施例39
アジピン酸18.25g(127mmol)、Re2(CO)10 0.021g(0.03mmol)及びアジピン酸ジビニルエステル60mlからなる混合物を、160℃で、1barの窒素圧及び3barのアセチレン圧で11hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0089】
実施例40
シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸40.0g(181mmol)、Re2(CO)10 0.05g(0.08mmol)及びジオキサン90mlからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で5hビニル化した。シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸ジビニルエステルが、GCMS−及びGC分析により主生成物として検出することができた。
【0090】
実施例41
アジピン酸8.0g(55mmol)、Mn2(CO)10 1.33g(3.4mmol)及びジオキサン20mlからなる混合物を、140℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で6hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GC分析により検出することができた。
【0091】
実施例42
アジピン酸12.0g(82mmol)、Mo2(CO)6 2.00g(7.6mmol)及びトルエン30mlからなる混合物を、150℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で6.5hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GC分析により検出することができた。
【0092】
実施例43
アジピン酸8.0g(55mmol)、Fe(CO)5 1.33g(6.8mmol)及びトルエン20mlからなる混合物を、140℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で6.0hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GC分析により検出することができた。
【0093】
実施例44
ブタンテトラカルボン酸40.0g(171mmol)、Re2(CO)10 50mg(0.08mmol)及びキシレン(異性体混合物)80gからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で14.0hビニル化した。ブタンテトラカルボン酸テトラビニルエステルが、MS分析により検出することができた。
【0094】
実施例45
ノルボルネンジカルボン酸10.0g(55mmol)、Re2(CO)10 50mg(0.08mmol)及びキシレン(異性体混合物)80gからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で4.0hビニル化した。ノルボルネン酸ジビニルエステルが、GC分析により検出することができた。
【0095】
実施例46
1,4,5,6,7,7−ヘキサクロロ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸(ヘット(Het)酸)15.0g(46mmol)、Re2(CO)10 50mg(0.08mmol)及びキシレン(異性体混合物)15gからなる混合物を、160℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で6.0hビニル化した。ヘット酸ジビニルエステルが、GCMS分析により検出することができた。
【0096】
実施例47
アジピン酸45.0g(308mmol)、Re2(CO)10 100mg(0.153mmol)及びキシレン(異性体混合物)105gからなる混合物を、200℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で9hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GC分析により主生成物として検出することができた。
【0097】
実施例48
アジピン酸7.5g(51mmol)、Re2(CO)10 100mg(0.153mmol)及びキシレン(異性体混合物)142.5gからなる混合物を、240℃で、2barの窒素圧及び18barのアセチレン圧で9hビニル化した。アジピン酸ジビニルエステルが、GC分析により主生成物として検出することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
a) R1は、H又は−COO−CH=CH−R2を表し、かつnは1を表すか、
b) R1は、C1〜C20−アルキル、C2〜C20−アルケニル又はC3〜C7−シクロアルキルを表し、かつnは1、2、3又は4を表し、その際、R1は、場合により1、2又は3個の基により置換され、前記基は互いに無関係に、フェニル、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C4−アルコキシ、アミノ、モノ−C1〜C4−アルキルアミノ、ジ−C1〜C4−アルキルアミノ、−OCOR3、−COOR3、−CONR45、−NR4COR5、−OCONR45又は−NR4COOR5の中から選択されるか、又は
c) R1は、アリールを表し、かつnは1、2、3、4、5又は6を表し、その際、アリールは場合により1、2又は3個の基で置換されていてもよく、前記基は互に無関係に、C1〜C4−アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C4−アルコキシ、アミノ、モノ−C1〜C4−アルキルアミノ、ジ−C1〜C4−アルキルアミノ、−OCOR3、−COOR3、−CONR45、−NR4COR5、−OCONR45又は−NR4COOR5の中から選択されるか、又は
d) R1は、7〜9個の炭素原子を有するビシクロアルキル又は7〜9個の炭素原子及び1又は2個の炭素−炭素二重結合を有するビシクロアルケニルを表し、かつnは1又は2を表し、その際、ビシクロアルキル基は1、2、3、4、5又は6個の基で置換されていてもよく、前記基は互いに無関係にハロゲン又はC1〜C4−アルキルの中から選択されるか、又は
e) R1は、5員又は6員の複素環式基を表し、前記複素環式基は1又は2個のヘテロ原子を有し、前記ヘテロ原子は互いに無関係にN、O及びSの中から選択され、かつnは1、2又は3を表し、その際、前記複素環式基は1又は2個の基で置換されていてもよく、前記基は互いに無関係にハロゲン又はC1〜C4−アルキルの中から選択される;
2は、H、C1〜C8−アルキル、フェニル−C1〜C4−アルキル、場合により1又は2個のC1〜C4−アルキル基で置換されているフェニル、又はC3〜C7−シクロアルキルを表し;
3は、C1〜C4−アルキルを表し;
4及びR5は、同じ又は異なることができ、H又はC1〜C4−アルキルを表す]のカルボン酸ビニルエステル化合物を製造するために、
式II
【化2】

[式中、R1は、H、−COOH又は上記b)又はc)に記載された意味を表し、かつnは上記の意味を有する]の化合物を、式III
【化3】

[式中、R2は、上記の意味を有する]の化合物と、レニウム、マンガン、タングステン、モリブデン、クロム及び鉄のカルボニル錯体、酸化物及びハロゲン化物及びレニウム金属の中から選択される触媒の存在で、≦300℃の温度で反応させることを有する、式Iのカルボン酸ビニルエステル化合物の製造方法。
【請求項2】
触媒を、レニウム、マンガン及びモリブデンのカルボニル錯体、酸化物及びハロゲン化物から選択する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
触媒として、Re2(CO)10を使用する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
触媒を、式IIの化合物の当量に対して0.000005〜1Mol%の範囲の量で使用する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
式IIIの化合物を、アセチレン、プロピン、1−ブチン、1−ペンチン、1−ヘキシン及びフェニルアセチレンから選択する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
式IIの化合物として、脂肪族モノカルボン酸を使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
脂肪族モノカルボン酸を、酢酸、フェニル酢酸、プロピオン酸、アラニン、酪酸、ヒドロキシ酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、2−メチルプロピオン酸、2−メチル酪酸、3−メチル酪酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸、ピバル酸、2,2−ジメチル酪酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、2,2−ジメチルオクタン酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸、ネオトリデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、シクロヘキサンカルボン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びケイ皮酸から選択する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
式IIの化合物として、脂肪族ポリカルボン酸を使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
脂肪族ポリカルボン酸を、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アガリシン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルタミン酸、マレイン酸及びフマル酸から選択する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
式IIの化合物としてアジピン酸を使用する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
式IIの化合物として、環式脂肪族モノカルボン酸又はジカルボン酸を使用する、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
式IIの化合物として、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸又はシクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸を使用する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
式IIの化合物として、二環式又は複素環式モノカルボン酸又はジカルボン酸を使用する、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
式IIの化合物として式:
【化4】

の化合物を使用する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
式IIの化合物として、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、フラン−2−カルボン酸、フラン−3−カルボン酸、チオフェン−2−カルボン酸、チオフェン−3−カルボン酸又はプロリンを使用する、請求項13記載の方法。
【請求項16】
反応を、70〜260℃の範囲の温度で実施する、請求項8から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
触媒を、式IIの化合物の当量に対して0.000001〜0.0025Mol%の範囲の量で使用する、請求項8から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
式IIの化合物として、芳香族モノカルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸を使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
式IIの化合物として、安息香酸、2−、3−又は4−メチル安息香酸、サリチル酸、2−、3−又は4−アミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゼンペンタカルボン酸又はベンゼンヘキサカルボン酸を使用する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
反応を、140〜230℃の範囲の温度で実施する、請求項18又は19記載の方法。
【請求項21】
式IIIの化合物を、式IIの化合物の当量に対して0.1〜20Mol%過剰で使用する、請求項1から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
式IIIの化合物として、アセチレンを使用する、請求項1から21までのいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
式I:
【化5】

[式中、R1は、アリールを表し、かつnは2、3、4、5又は6を表し、その際、アリールは場合により1、2又は3個の基で置換されていてもよく、前記基は互いに無関係に、C1〜C4−アルキル、ハロゲン、C1〜C4−アルコキシ、アミノ、モノ−C1〜C4−アルキルアミノ、ジ−C1〜C4−アルキルアミノ、−OCOR3、−COOR3、−CONR45、−NR4COR5、−OCONR45又は−NR4COOR5の中から選択されるか、又はR1は、C3〜C7−シクロアルキルを表し、nは2又は3を表し、かつR2は、H、C1〜C8−アルキル、フェニル−C1〜C4−アルキル、場合により1又は2個のC1〜C4−アルキル基で置換されているフェニル、又はC3〜C7−シクロアルキルを表す]のカルボン酸ビニルエステル。
【請求項24】
2はHを表す、請求項22記載の式Iのカルボン酸ビニルエステル。
【請求項25】
シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジビニルエステル、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸ジビニルエステル又はシクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸ジビニルエステルである、請求項24記載のジカルボン酸ビニルエステル。
【請求項26】
シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸ジビニルエステルである、請求項25記載のカルボン酸ビニルエステル。
【請求項27】
ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸テトラビニルエステル。
【請求項28】
式I:
【化6】

[式中、R1は6〜9個の炭素原子を有するビシクロアルキル又は6〜9個の炭素原子及び1又は2個の炭素−炭素−二重結合を有するビシクロアルケニル表し、かつnは1又は2を表すか、又はR1は5又は6員の複素環式基を表し、前記複素環式基は1又は2個のヘテロ原子を有し、前記ヘテロ原子は互いに無関係にN、O及びSの中から選択され、かつnは1、2又は3を表し;かつR2はH、C1〜C8−アルキル、フェニル−C1〜C4−アルキル、場合により1又は2個のC1〜C4−アルキル基で置換されているフェニル、又はC3〜C7−シクロアルキルを表す]のカルボン酸ビニルエステル。
【請求項29】
架橋剤又は反応性希釈剤としての、請求項23から28までのいずれか1項記載のカルボン酸ビニルエステルの使用。

【公表番号】特表2009−516723(P2009−516723A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541740(P2008−541740)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068756
【国際公開番号】WO2007/060176
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】