説明

カレンダ装置

【課題】材料を混練する領域に配置される部材に対して混練された材料が付着することを防止しつつ、材料の混練を促進させるカレンダ装置を提供する。
【解決手段】材料の混練及び成型を行うカレンダ装置1であって、複数のカレンダロール2a、2b、2c、2dを備えると共に、カレンダロール同士2a、2bに挟まれた領域Rにおいて材料Aの混練を促進する混練促進手段3と、該混練促進手段3の温度調節を行う温調手段4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカレンダロールを備えると共に、カレンダロール同士に挟まれた領域において材料の混練及び成型を行うカレンダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック等の材料からシートを製造する場合には、供給された材料を加熱状態で混練しながら成型するカレンダ装置が用いられる。
このようなカレンダ装置は、複数のカレンダロールを備えており、カレンダロール同士に挟まれた領域のうち比較的広い領域であるバンク領域において材料の混練を行い、カレンダロール同士に挟まれた領域のうち狭い領域において材料をシート状に成型する。
【0003】
また、材料の混練が十分でない場合には、材料の中に巻き込まれた空気が抜け出さずに、最終製品であるシートにいわゆるエアマークが形成される。
このため、カレンダ装置は、多くのカレンダロールを備えることによって多くのバンク領域を備えており、材料の混練を複数箇所で順次行うことによって、材料が十分に混練されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−262855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カレンダ装置は、様々な材料の成型に用いることができる。このため、シートの仕様変更によって、既設のカレンダ装置において扱う材料が変化する場合がある。このような材料の変化によって、場合によっては材料のさらなる混練が必要となる場合がある。
材料のさらなる混練が必要とされる場合には、カレンダロールを増設することによってバンク領域を増加する方法が考えられるが、カレンダ装置の構造上、カレンダロールを増設することは容易ではない。
【0006】
一方で、工場の敷地等の制約からカレンダ装置の設置スペースを広く確保できない場合もあり、このような場合においても材料の十分な混練を行える数のカレンダロールを設置することができない場合もある。
【0007】
このような問題を解決するために、上記バンク領域に、バンク領域を各カレンダロール側に2分するくさび型部材を設置し、バンク領域における材料の混練を促進させる場合がある。
しかしながら、材料はバンク領域において加熱状態で混練されている。このため、バンク領域にくさび型部材等の他の部材を配置した場合には、材料は、当該部材と接触して冷やされて粘性が増加することによって、くさび型部材等の他の部材に付着する。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、カレンダ装置において、材料を混練する領域に配置される部材に対して混練された材料が付着することを防止しつつ、材料の混練を促進させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0010】
第1の発明は、複数のカレンダロールを備えると共に、カレンダロール同士に挟まれた領域において材料の混練及び成型を行うカレンダ装置であって、上記カレンダロール同士に挟まれた領域のうち上記材料の混練を行う混練領域に配置されると共に上記材料の混練を促進する混練促進手段と、該混練促進手段の温度調節を行う温調手段とを備えるという構成を採用する。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記混練促進手段が、上記混練領域の上記材料を混練に伴って上記カレンダロールの軸方向に移動させる案内手段を備えるという構成を採用する。
【0012】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記案内手段が、上記カレンダロールの周面と対向する上記混練促進手段の対向面に形成されると共に上記軸方向に傾斜された複数の溝であるという構成を採用する。
【0013】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記混練促進手段を移動することによって、上記混練促進手段と上記カレンダロールとのギャップ距離を調節可能なギャップ距離調節手段を備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、温調手段によって、混練領域に配置された混練促進手段の温度が調節可能とされている。
このため、例えば混練促進手段をカレンダロールと同じ温度に調節することによって、材料が混練促進手段に付着することを防止することができる。
したがって、本発明によれば、材料を混練する領域に配置される部材に対して混練された材料が付着することを防止しつつ、材料の混練を促進させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態におけるカレンダ装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるカレンダ装置が備えるくさび型部材を含む拡大図であり、カレンダロールの軸方向から見た図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるカレンダ装置が備えるくさび型部材の側面図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるカレンダ装置が備えるくさび型部材を含む拡大図であり、カレンダロールの軸方向と直交する方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係るカレンダ装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
図1は、本実施形態のカレンダ装置1の概略構成を模式的に示す図である。この図に示すように、本実施形態のカレンダ装置1は、4つ(複数)のカレンダロール2(2a〜2d)と、くさび型部材3(混練促進手段)と、温度調節部4(温調手段)と、昇降装置5(ギャップ距離調節手段)とを備えている。
【0018】
カレンダロール2は、カレンダロール2同士の間の領域Rにおいて供給される材料を混練すると共に成型するものである。
本実施形態のカレンダ装置1においては4つのカレンダロール2a〜2dが逆L字状に配列されている。
【0019】
本実施形態のカレンダ装置1は、カレンダロール2aとカレンダロール2bとの間の領域R、カレンダロール2bとカレンダロール2cとの間の領域R、及びカレンダロール2cとカレンダロール2dとの間の領域Rを有している。そして、不図示のモータ等によって、カレンダロール2が回転駆動されている状態で、これらの領域Rに順次材料Aが供給され、この供給された材料Aが混練されながら成型されてシートBとして排出される。
【0020】
より詳細には、各領域Rは、図2の拡大図(カレンダロール2の軸方向から見た図)に示すように、最もカレンダロール2同士が近接された領域を含む幅狭領域であって混練された材料Aを圧延して成型する圧延領域R1と、該圧延領域R1よりも材料Aの流れ方向の上流側に位置する幅広領域であって材料Aの混練を行う混練領域R2とによって構成されている。
【0021】
また、本実施形態のカレンダ装置1においては、カレンダロール2が中空に形成されており、カレンダロール2の内部に温調用油を供給することによってカレンダロール2の温度調節が可能とされている。
【0022】
くさび型部材3は、カレンダロール2aとカレンダロール2bとの間に形成された領域Rの混練領域R2に配置されて、混練領域R2における材料Aの混練を促進させるものであり、図2に示すように、各カレンダロール2の周面に対向する曲面3a(対向面)を有するくさび型形状を有している。
なお、曲面3aは、材料Aの流れ方向(圧延領域R1に向かう方向)に進むに連れて、曲面3aとカレンダロール2の周面とのギャップ距離が小さくなるように湾曲されている。このように曲面3aが湾曲されることによって、材料Aの混練がより促進される。
【0023】
さらに、くさび型部材3の斜視図である図3に示すように、くさび型部材3の曲面3aには、カレンダロール2の軸方向に傾斜された複数の溝3b(案内手段)が形成されている。
これらの溝3bは、混練領域R2における材料Aの混練に伴って材料Aをカレンダロール2の軸方向に移動させるものであり、これによって材料Aの混練を促進するものである。
【0024】
また、くさび型部材3の内部には、当該くさび型部材3の温度調節を行うための温調用油が流れるための流路が形成されている。
そして、くさび型部材3は、例えばカレンダロール2と同一の材質によって形成されることによって、曲面3aの材料Aに対する表面特性が、同一温度環境においてカレンダロール2の周面と同じ表面特性となるように構成されている。
【0025】
温度調節部4は、カレンダロール2及びくさび型部材3に対して温調用油を供給することによってカレンダロール2とくさび型部材3の温度調節を行うものである。
なお、温度調節部4は、例えば、材料Aの温度を直接あるいは間接的に計測する温度センサを備え、該温度センサの計測結果に応じてカレンダロール2とくさび型部材3の温度調節を行う。
また、温度調節部4は、図4(カレンダロール2の軸方向と直交する方向から見た図)に示すように、くさび型部材3に対してフレキシブルホース4aで接続されている。このため、くさび型部材3の移動が可能とされている。
【0026】
昇降装置5は、くさび型部材3を昇降させることによって、くさび型部材3とカレンダロール2の周面とのギャップ距離を調節可能とするものであり、図4に示すように、上方からくさび型部材3と接続されている。
この昇降装置5としては、例えば、油圧シリンダやモータ等を備える構成を採用することができる。
【0027】
次に、このように構成された本実施形態のカレンダ装置1の動作について説明する。
【0028】
まずカレンダロール2同士に挟まれた領域Rに材料Aが供給される前に、温度調節部4によって、カレンダロール2が材料Aの混練及び成型に適した温度(例えば200℃程度)に加温される。
【0029】
さらに、本実施形態のカレンダ装置1においては、温度調節部4によって、カレンダロール2に加え、くさび型部材3を材料Aの付着が防止可能な温度まで加温する。
例えば、くさび型部材3が、曲面3aの材料Aに対する表面特性が同一温度環境においてカレンダロール2の周面と同じ表面特性となるように構成されている場合には、材料Aの冷却を防止することによってカレンダロール2と同様にくさび型部材3への材料Aの付着を防止することができる。したがって、このような構成を採用する場合には、温度調節部4によってくさび型部材3をカレンダロール2と同一の温度まで加温することによって、くさび型部材3への材料Aの付着を防止することができる。
【0030】
そして、上述のように、カレンダロール2及びくさび型部材3が加温されると、カレンダロール2aとカレンダロール2bとの間に形成された領域Rに材料Aが供給される。
材料Aは、カレンダロール2aとカレンダロール2bとの間に形成された領域Rのうち混練領域R2において混練された後、圧延領域R1にて圧延されて成型され、その後上記領域Rから排出される。
ここで、本実施形態のカレンダ装置1においては、くさび型部材3が、カレンダロール2と同様に加温されている。このため、カレンダロール2aとカレンダロール2bとの間に形成された領域Rにおいて、材料Aがくさび型部材3に付着することを防止することが可能となる。
【0031】
そして、カレンダロール2aとカレンダロール2bとの間に形成された領域Rから排出された材料Aは、カレンダロール2bとカレンダロール2cとの間に形成された領域R、カレンダロール2cとカレンダロール2dとの間に形成された領域Rとに順次供給され、混練及び成型された後、シートBとしてカレンダ装置1から排出される。
【0032】
以上のような本実施形態のカレンダ装置1によれば、温度調節部4によって、混練領域R2に配置されたくさび型部材3の温度が調節可能とされている。
このため、例えばくさび型部材3をカレンダロール2と同じ温度に調節することによって、材料Aがくさび型部材3に付着することを防止することができる。
したがって、本実施形態のカレンダ装置1によれば、混練領域R2に配置されるくさび型部材3に対して混練された材料Aが付着することを防止しつつ、くさび型部材3によって材料Aの混練を促進させることが可能となる。
【0033】
また、本実施形態のカレンダ装置1においては、くさび型部材3の曲面3aには、カレンダロール2の軸方向に傾斜された複数の溝3bが形成されている。このため溝3bによって、材料Aが混練に伴って材料Aをカレンダロール2の軸方向に移動される。したがって、材料Aの混練を促進させることが可能となる。
【0034】
また、本実施形態のカレンダ装置1は、くさび型部材3とカレンダロール2とのギャップ距離を調節可能な昇降装置4を備えている。このため、くさび型部材3とカレンダロール2とのギャップ距離を任意の距離に調節することが可能となり、材料Aの混練により適したギャップ距離となるようにくさび型部材3とカレンダロール2との位置関係を合わせることが可能となる。
【0035】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0036】
例えば、上記実施形態においては、本発明における混練促進手段がくさび型部材3である構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、混練促進手段が、必ずしもくさび型を有している必要はない。
【0037】
また、上記実施形態においては、くさび型部材3がカレンダロール2aとカレンダロール2bとの間に形成された領域Rの混練領域R2に配置された構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他の混練領域R2にくさび型部材3を配置しても良い。
【0038】
また、上記実施形態においては、温度調節部4が、カレンダロール2とくさび型部材3との両方の温度調節を行う構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、くさび型部材3のみの温度調節を行う温度調節部を別途設ける構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0039】
1……カレンダ装置、2(2a〜2d)……カレンダロール、3……くさび型部材(混練促進手段)、3a……曲面(対向面)、3b……溝、4……温度調節部(温調手段)、5……昇降装置(ギャップ距離調節手段)、R……カレンダロール同士に挟まれた領域、R1……圧延領域、R2……混練領域、A……材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカレンダロールを備えると共に、カレンダロール同士に挟まれた領域において材料の混練及び成型を行うカレンダ装置であって、
前記カレンダロール同士に挟まれた領域のうち前記材料の混練を行う混練領域に配置されると共に前記材料の混練を促進する混練促進手段と、
該混練促進手段の温度調節を行う温調手段と
を備えることを特徴とするカレンダ装置。
【請求項2】
前記混練促進手段は、前記混練領域の前記材料を混練に伴って前記カレンダロールの軸方向に移動させる案内手段を備えることを特徴とする請求項1記載のカレンダ装置。
【請求項3】
前記案内手段は、前記カレンダロールの周面と対向する前記混練促進手段の対向面に形成されると共に前記軸方向に傾斜された複数の溝であることを特徴とする請求項1または2記載のカレンダ装置。
【請求項4】
前記混練促進手段を移動することによって、前記混練促進手段と前記カレンダロールとのギャップ距離を調節可能なギャップ距離調節手段を備えることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のカレンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−194802(P2010−194802A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40782(P2009−40782)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(000198329)株式会社IHI機械システム (27)
【Fターム(参考)】