説明

カーテンエアバッグ装置

【課題】展開挙動を安定させ、収納位置の下側に存在するピラーガーニッシュに干渉することを防ぎながら膨張展開可能なカーテンエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】巻回されたロール体194、ロール体に対する車室の内側位置に形成された折返し(第1折返し190)、上端近傍に設けられた穴を有するクッション部130と、車室の側面側から車室へ下降して突出するガイド片164を有し、展開途中のクッション部に干渉してクッション部を車室の内側方向へ導くブラケット部160と、クッション部の姿勢を保持する姿勢保持部170と、を備え、姿勢保持部は、ロール体の上側を包囲してロール体の姿勢を保持し、折返しの芯となって折返しの位置を保持する折返し保持要素174と、折返し保持要素とブラケット部との車内内側の間隙である開口172と、折返し保持要素の外面から突出しクッション部の穴を掛止する掛止片182とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側面衝突時やロールオーバ(横転)時に、乗員保護を目的として車両室内の側面部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両が側面衝突からロールオーバに移行しても乗員の頭部を保護可能なカーテンエアバッグは、主にドア上方のルーフヘッドトリムの内側のルーフサイドレール等に取り付けられている。通常、カーテンエアバッグは、限られた収納スペースに取り付け可能にするため、ロール状等に畳まれた状態で取り付けられている。
【0003】
カーテンエアバッグは、乗員の頭部や上半身が衝突する可能性のある領域をすべてカバーするよう、車室の側面部に沿って展開する必要がある。通常、車室の側面部には、ルーフサイドレール等を支える柱の役割を果たす複数のピラーが存在している。各ピラーは、車室側がピラーガーニッシュ(内装材)で覆われていて、ピラーガーニッシュと各ピラーとの間には間隙が形成されている。そのため、ルーフサイドレールに取り付けられたカーテンエアバッグが下方に向けて膨張展開すると、上記の間隙に引っかかり、展開が遅れたり阻害されたりするおそれがある。
【0004】
例えば特許文献1には、ルーフサイドレールに沿って配設され、ロール折りで折り畳まれた本体部、本体部の車両上方に位置する折返しを有するエアバッグ袋体と、ピラーガーニッシュの車両上方に配置され、エアバッグ袋体の展開方向を車室内側方向に規制可能なジャンプ台と、エアバッグ袋体がジャンプ台に対して相対的に回転することを抑制する回転抑制手段と、を有する頭部保護エアバッグ装置が開示されている。特許文献1では、エアバッグ袋体の展開方向がジャンプ台により車室内側方向に規制され、折返しの展開によって本体部が車室へ送り出されるとしている。また、エアバッグ袋体が展開する際には、回転抑制手段としての張出し部材によってジャンプ台に対する回転が抑制されるため、エアバッグ袋体の展開方向(展開挙動)を安定化させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−279944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の頭部保護エアバッグ装置では、折返し部の上方縁部は張出し部材に固定されているものの、本体部は張出し部材またはジャンプ台に固定されていない。この構成では、エアバッグ袋体に折返し部を形成して車両へ取り付けても、エアバッグ取付時に作業者がエアバッグ袋体に不適切に力を加えたり、走行中の振動が生じたりすることが原因で、エアバッグ袋体が弛み、折返し部の位置が変わってしまうおそれがある。折返し部は、膨張展開時にその折りを解消しようとする展開挙動を発生させる目的で、一定の位置に配置されることが想定されているものである。そのため、折返し部の位置が変わるとエアバッグ袋体全体の展開挙動も変わってしまう。したがって特許文献1のような技術では、エアバッグ袋体の展開挙動を安定化できないおそれがある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、展開挙動を安定させ、収納位置の下側に存在するピラーガーニッシュに干渉することを防ぎながら膨張展開可能なカーテンエアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかるカーテンエアバッグ装置の代表的な構成は、車室の側面上方に収納されるカーテンエアバッグ装置において、エアバッグが下端から上端に向かって巻回されたロール体、ロール体に続いてロール体に対する車室の内側位置において下方から上方へ形成された折返し、および、折返しに続いて上端近傍に設けられた穴を有するクッション部と、車室の側面側から車室の内側へ下降しながら突出するガイド片を有し、展開途中のクッション部にガイド片の上面で干渉してクッション部を車室の内側方向へ導くブラケット部と、ブラケット部に取り付けられ、クッション部の姿勢を保持する姿勢保持部と、を備え、姿勢保持部は、ロール体の上側を包囲してロール体の姿勢を保持するとともに折返しの芯となって折返しの位置を保持する折返し保持要素と、折返し保持要素とブラケット部との車内内側の間隙である開口と、折返し保持要素の外面から突出し、クッション部の穴を掛止する掛止片と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、姿勢保持部の掛止片がクッション部の穴を掛止するため、クッション部の折返し周辺は下方に弛むことがない。したがって、カーテンエアバッグ装置の取付時にクッション部に力が加わったり、走行中に振動が加えられたりしても、折返しの芯となっている折返し保持要素から折返しがずれることを防止できる。
【0010】
また上記構成によれば、折返しの位置の移動を防止できるので、ガスが供給される際に折返しを解消しようとするクッション部の展開挙動が安定し、ロール体はブラケット部に予定通り接触することが可能となる。このブラケット部による誘導によって、ロール体の展開挙動はピラーガーニッシュ側(車外方向)ではなくルーフヘッドトリム側(車室の内側方向)へ向けられる。そして膨張するロール体からの圧力によって、ルーフヘッドトリムが押しのけられて、クッション部は下方へ膨張展開する。このようにクッション部は、その収納位置の下側かつ車外方向に存在するピラーガーニッシュに干渉することなく膨張展開することが可能となる。
【0011】
上記姿勢保持部は、ガイド片の上面に接し姿勢保持部自体をガイド片に固定する底面要素と、開口を拡大可能に連結する第1ヒンジ部と、をさらに有し、第1ヒンジ部には、開口が縮小する方向への折返し保持要素の変形を防止するストッパが設けられているとよい。
【0012】
上記構成によれば、開口は膨張するロール体からの圧力を受けて拡大するため、収納状態からのクッション部の膨張展開が円滑になる。また、折返し保持要素は開口が縮小する方向(内側)へは変形しないため、折返し保持要素に外側から圧力が加えられても、折返し保持要素は変形せず、折返しの位置の移動を防止できる。
【0013】
上記姿勢保持部は、開口に差し渡されるようにして折返し保持要素の先端を支持することで、開口が縮小する方向への折返し保持要素の変形を防止する支持要素と、支持要素と底面要素との間に設けられ、支持要素を車室の内側へ傾倒可能にする第2ヒンジ部と、をさらに有してもよい。
【0014】
上記構成によれば、支持要素によって、折返し保持要素の開口が縮小する方向への変形をより確実に防止できる。また第2ヒンジ部によって支持要素は車室の内側へ傾倒可能であるため、開口に差し渡されていても、支持要素が開口からのロール体の膨張展開を阻害してしまうことは防止できる。
【0015】
上記折返し保持要素は、掛止片近傍まで切り込まれたスリットによって、複数の舌片に分離されていて、複数の舌片には、他の舌片より長い長舌片が含まれ、長舌片には、姿勢保持部の内側に向かって延出される小舌片が形成され、長舌片は折返しより上端側のクッション部の上側を包囲していて、他の舌片を芯とする折返しは、長舌片および小舌片で挟まれてもよい。
【0016】
上記構成によれば、折返しは、谷折り側に芯となる舌片が配置され、山折り側は長舌片および小舌片によって挟まれるため、より確実に形成時の位置に保持可能である。
【0017】
上記クッション部は、クッション部の上端から突出するタブをさらに備え、穴はタブ上に設けられているとよい。タブによって、クッション部の穴を姿勢保持部の掛止片へ掛止させやすくなるため、作業性が向上する。
【0018】
上記ブラケット部および姿勢保持部は、ピラー位置上方の車室の側面に設置されるとよい。上述した構成であれば、クッション部の収納位置の下側に存在するピラーガーニッシュに干渉させることなくクッション部を膨張展開させることが可能である。
【0019】
上記ロール体と車室の側面との距離は、ロール体と車室の天面に設けられるルーフヘッドトリムとの距離より長いとよい。収納状態のロール体は、車室の側面から離れ、ルーフヘッドトリムの近くに位置することで、膨張展開の開始直後にルーフヘッドトリムから露出することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、展開挙動を安定させ、収納位置の下側に存在するピラーガーニッシュに干渉することなく膨張展開可能なカーテンエアバッグ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかるカーテンエアバッグ装置の第1実施形態の収納位置を例示する図である。
【図2】図1の展開状態のクッション部を例示する図である。
【図3】図1の収納状態のカーテンエアバッグ装置を例示する図である。
【図4】図3のカーテンエアバッグ装置の領域Aの分解図である。
【図5】クッション部のロール体と折返しの形成を説明する図である。
【図6】図3の姿勢保持部の外観を例示する図である。
【図7】図1(a)のC−C断面におけるクッション部の展開挙動を例示する図である。
【図8】本発明にかかるカーテンエアバッグ装置の第2実施形態を例示する図である。
【図9】図8の姿勢保持部を備えるカーテンエアバッグ装置の膨張展開を説明する図である。
【図10】本発明にかかるカーテンエアバッグ装置の第3実施形態を例示する図である。
【図11】図10の姿勢保持部へのクッション部の取付を説明する図である。
【図12】図10の姿勢保持部を備えるカーテンエアバッグ装置の膨張展開を説明する図である。
【図13】本発明にかかる姿勢保持部の他の形態を例示する図である。
【図14】本発明にかかるクッション部の他の形態の姿勢を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明にかかるカーテンエアバッグ装置の第1実施形態の収納位置を例示する図である。図1(a)は本実施形態にかかるカーテンエアバッグ装置(以下、「エアバッグ100」と記載する)の非展開時、図1(b)はエアバッグ100の展開時をそれぞれ例示する。以下すべての実施形態を、図1のように車両102の右側面用のカーテンエアバッグ装置として説明するが、左側面用のカーテンエアバッグ装置も同様の対称な構造を有する。
【0024】
エアバッグ100は、図1(a)のように、車両室内の側面部上方のルーフサイドレール110に取り付けられて収納される。通常、車両室内の側面部には複数のピラーが存在している。これらは車両102の前方から、フロントピラー(Aピラー104)、センターピラー(Bピラー106)、リアピラー(Cピラー108)と呼ばれる。各ピラーの車両室内側はピラーガーニッシュで覆われていて、車内の美観を向上させている。
【0025】
エアバッグ100はクッション部130を備え、これは、図1(a)のように、車両前後方向に延びていて、下端から上端に向かって巻回された状態で収納されている。クッション部130は、例えば、その表面を構成する基布を表裏で縫製したり、OPW(One-Piece Woven)を用いて紡織したりすることにより袋状に形成される。
【0026】
エアバッグ100はシリンダ型インフレータ(インフレータ114)も備えている。インフレータ114はクッション部130上端の所定位置からクッション部内へガスを供給する。車両102に側面衝突時やロールオーバ(横転)等が発生すると、まず車両102に備えられたセンサ(図示省略)による衝撃の感知に起因して、インフレータ114へ発火信号が発信される。次に、インフレータ114の火薬が燃焼し、発生したガスがクッション部130へ供給される。
【0027】
クッション部130は、インフレータ114からガスが供給されると、図1(b)に例示するように、車室の側面(サイドウインド112等)に沿うように下方へ膨張展開し、乗員の保護を行う。かかるクッション部130によれば、前部座席および後部座席の乗員の保護が可能である。
【0028】
図2は、図1の展開状態のクッション部130を例示する図である。図2は、クッション部130を車室の内側から見た状態で例示している。
【0029】
クッション部130は、車両102の衝突時や横転時に膨張する膨張領域132と、膨張せず、膨張領域を区画する非膨張領域134(図中ハッチングで示す)と、を備えている。
【0030】
膨張領域132には、メインダクト136と、複数のチャンバ138とが設けられている。メインダクト136は、クッション部130の上部に略水平に配設されていて、インフレータ114からガス受給孔139を介して車両前後方向へ流入したガスを、車両前後方向にわたって設けられている複数のチャンバ138へ分流させる。複数のチャンバ138は、衝突時等の非常事態時において乗員と直接接触する部分である。複数のチャンバ138によって、乗員は、車両側面への激突や、車外への飛び出し等から保護される。
【0031】
クッション部130の上縁には、固定部材として取付タブ140a、140bと、後述する姿勢保持部170へ掛止される掛止タブ150とが設けられている。
【0032】
取付タブ140a、140bは、クッション部130を車両102に固定する際に使用する帯状の部材である。取付タブ140a、140bには、車両102への締結用のボルトを通すボルト穴142が設けられている。取付タブとしては複数の取付タブ140aと、取付タブ140aよりも長い取付タブ140bとが設けられている。
【0033】
取付タブ140bは、クッション部130の領域Aに設けられる。クッション部130の領域Aは、収納状態においてBピラー106の上方のルーフサイドレール110に位置する部分である(図1(a)参照)。通常、Bピラー106には後述するBピラーガーニッシュ116が備えられる。Bピラー106の領域は、その左右のサイドウインド112よりも車室の内側へ突出している。そのためエアバッグ100は、領域Aにブラケット部160(図3)を設置している。ブラケット部160上の領域Aでは、それ以外の領域と比べてルーフサイドレール110からクッション部130までの距離が離れるため、上記のように取付タブ140bは他の取付タブ140aよりも長い構成となっている。
【0034】
各取付タブ140a、140bには、固定用金具144が取り付けられる。各取付タブ140a、140bのボルト穴142には、固定用金具144の角形ボルト穴146が重ねられる。角柱のボルトをこの角形ボルト穴146に通してルーフサイドレール110に締結することで、クッション部130が車両102に固定される。
【0035】
掛止タブ150は、領域Aに設けられる、穴152を有する帯状の部材である。穴152は、クッション部130の上端近傍に設けられていて、クッション部130を後述する姿勢保持部170の掛止片182に引っ掛けて掛止させる作用を有している。掛止タブ150がクッション部130の上端から突出しているため、穴152を掛止片182へ掛止させる作業は掛止タブ150を把持しながら容易に行うことができる。このように、掛止タブ150は、クッション部130を姿勢保持部170へ掛止させる際の作業性を向上させる機能を担っている。なお、掛止タブ150を省略して、穴152のみをクッション部の上端近傍に設けてもよい。
【0036】
(収納状態のクッション部の姿勢)
図3は図1の収納状態のカーテンエアバッグ装置を例示する図である。図4は図3のカーテンエアバッグ装置の領域Aの分解図である。以下、各図面を参照しながら収納状態のクッション部130の姿勢について説明する。
【0037】
図3(a)は図1(a)のエアバッグ100を車室の内側から見た拡大図である。クッション部130には、その車室の内側に第1折返し190が形成されている。第1折返し190は、膨張展開の直後にその折りを解消しようとする車室の内側方向へ向かう展開挙動を発生させるための折返しである。
【0038】
図3(b)は、図1(a)および図3(a)の領域Aの拡大図である。領域Aには、クッション部130の展開挙動を車室の内側へ導くブラケット部160と、クッション部130に収納状態の姿勢を保持させる姿勢保持部170とが備えられている。
【0039】
図3(c)は図3(b)のB−B断面図であって、エアバッグ100を車室後方からみた状態を例示している。姿勢保持部170は、収納状態のクッション部130の周囲を略筒状に包囲してその姿勢を保持し、保持された姿勢のクッション部130をブラケット部160のガイド片164の上面に固定する作用を有している。
【0040】
図4に例示するように、本実施形態にかかるクッション部130は、上端から順に、第1折返し190と、第2折返し192と、ロール体194と、が形成された姿勢で収納される。
【0041】
ブラケット部160は、クッション部130の下側に位置して、下方へ展開するクッション部130に干渉してクッション部130を車室の内側へ導く部材である。ブラケット部160は、剛性の高い金属製であり、クッション部130がガスの供給により急激に膨張展開しても、その展開挙動を車室の内側へ好適に導くことができる。
【0042】
ブラケット部160は、車室の側面に沿ってこれに固定される縦壁部162と、車室の側面側から車室の内側へ下降しながら突出するガイド片164とに大別される。
【0043】
縦壁部162にはボルト穴166が設けられていて、ボルトを利用して車室の側面(ルーフサイドレール110)に固定することができる。また、縦壁部162には、そこからさらに車室の内側へ上昇しながら突出する張出し部168が設けられていて、クッション部130の車室の側面上方への膨張展開を防止している。
【0044】
ガイド片164は、その上面で展開途中のクッション部130と干渉してクッション部130の展開挙動を車室の内側方向へ導く作用を有している。またガイド片164は、後述するBピラー106とBピラーガーニッシュとの間の間隙E1を塞ぐ蓋として機能している。ガイド片164には、姿勢保持部170を取り付けるための取付穴169が設けられている。
【0045】
図5は、クッション部130のロール体194と折返し(第1折返し190、第2折返し192)の形成を説明する図である。図5は図4の車両右側面用のクッション部130を車両後方から概略的に図示している。
【0046】
図5(a)に例示するように、まずクッション部130には下端から上端に向かって巻回されてロール体194が形成される。ロール体194を形成するための巻回は、ロール体194が、クッション部130の巻回されていない部分に対して車室の側面側に位置するように行う。すなわち、車両後方からみてロール体194は半時計周りに巻回される。
【0047】
次に、図5(b)に例示するように、ロール体194を、クッション部130の巻回されていない部分に対して、車室側(車室の内側)へ折返して第2折返し192を形成する。第2折返し192は、膨張展開時のロール体194の巻回の解消を、クッション部130に対する車室の側面側で発生させるための折返しである。
【0048】
そして、図5(c)に例示するように、ロール体194と第2折返し192とをともに、クッション部130の巻回されていない部分に対して、車室の側面側へ折返して第1折返し190を形成する。これにより、ロール体194に続いた第1折返し190が、ロール体194に対する車室の内側に形成される。なおロール体194に対する車室の内側とは、ロール体194における車室の幅方向の中心に近い側を意味している。第1折返し190は、膨張展開の直後にその折りを解消しようとする展開挙動を発生させ、ロール体194を車室の内側方向へ付勢する作用を有している。これらのようにロール体194と第2折返し192および第1折返し190とを形成することで、クッション部130は図4に例示した収納状態の姿勢となる。
【0049】
図6は図3の姿勢保持部170の外観を例示する図である。図6(a)に例示するように、姿勢保持部170は樹脂製であって、適度な柔軟性を有している。そのため姿勢保持部170は、エアバッグ100の収納時にはクッション部130をブラケット部160上に確実に固定し、展開時には適度に湾曲してクッション部130の膨張を妨げることなくこれを解放することができる。
【0050】
姿勢保持部170における車内内側には開口172が設けられている。開口172は、折返し保持要素174と底面要素176(またはブラケット部160のガイド片164の上面)との間隙である(図3(c)参照)。クッション部130は開口172から車室の内側方向への膨張展開が可能となっている。
【0051】
図6に例示する折返し保持要素174は、図3(c)に例示するように、クッション部130のロール体194の上側を包囲してクッション部130の姿勢を保持するとともに、クッション部130の第1折返し190の芯となって第1折返しを保持する部分である。折返し保持要素174は、クッション部130のロール体194の上側に沿うように湾曲している。折返し保持要素174は開口172の上限を形成していて、折返し保持要素174の下面は底面要素176とともに、開口172を除いてロール体194の周囲を筒状に包囲している。
【0052】
底面要素176は、姿勢保持部170の底面を構成していて、ブラケット部160のガイド片164の上面に接して固定される。底面要素176は、開口172の下限を形成していて、上述したように折返し保持要素174とともにロール体194を包囲している。
【0053】
図6(c)に例示するように、固定部184は底面要素176の底面に設けられている。固定部184が、ブラケット部160のガイド片164に設けられた取付穴169に差し込まれることで、姿勢保持部170はガイド片164の上面に固定される(図4参照)。固定部184および取付穴169の位置を変更することで、姿勢保持部170の固定位置を変更することが可能である。例えば、後述するルーフヘッドトリム118に近接して固定することで、クッション部130は膨張展開の開始直後にルーフヘッドトリム118から露出することが可能となる。
【0054】
固定部184には、かえし186が設けられているため、ガイド片164に固定された姿勢保持部170は、膨張展開するクッション部130から荷重を受けても、ガイド片164から引き抜かれることを防止できる。
【0055】
図6(a)に例示するように、第1ヒンジ部178は、折返し保持要素174と底面要素176との間に設けられている。第1ヒンジ部178は、折返し保持要素174と底面要素176とを、開口172を拡大可能に連結している。第1ヒンジ部178を設けることによって、開口172は膨張するロール体194からの圧力によって拡大可能である。したがって、収納状態からのクッション部130の膨張展開が円滑になる。
【0056】
ストッパ180は、第1ヒンジ部178の長尺方向に沿って設けられた肉厚の部分である。ストッパ180同士が干渉するため、第1ヒンジ部178は開口172を縮小させる方向へは可動できない。換言すると、ストッパ180は、図3(c)に例示するように姿勢保持部170がブラケット部160上に固定された状態において、折返し保持要素174が開口172を縮小させる方向へ変形することを防止している。したがって、折返し保持要素174に外側から圧力が加えられても、第1折返し190の位置の移動を防止できる。
【0057】
図6(b)に例示するように、掛止片182は、折返し保持要素174における車室の側面側の外面から折り返し保持要素174の先端に対して反対側へ向けて突出している。掛止片182には、クッション部130の掛止タブ150に設けられた穴152が車室の内側方向から掛けられて掛止される。
【0058】
図4に例示するように、収納状態の姿勢のクッション部130を姿勢保持部170へ取り付けるには、まずクッション部130の上端から突出した掛止タブ150の穴152を、姿勢保持部170の掛止片182へ引っ掛けて掛止させる。そして、第1折返し190の谷折りとなる側に、姿勢保持部170の折返し保持要素174が位置するようにして、第2折返し192とロール体194とを、折返し保持要素174と底面要素176との間に把持させる。これにより、図3(c)に例示するように、クッション部130は第1折返し190がロール体194に対する車室の内側に位置した状態の姿勢となり、その姿勢が姿勢保持部170に保持される。
【0059】
なお図3(a)に例示するように、収納状態のクッション部130の姿勢は、クッション部130を周回し、またはクッション部130とブラケット部160とを周回するテープ196によっても保持されている。テープ196は、クッション部130の膨張に応じて破断可能であり、クッション部130の収納時にはその姿勢を保持させ、展開時には破断してクッション部130を開放する。
【0060】
上記構成では、姿勢保持部170に掛止片182を設け、クッション部130の掛止タブ150に穴152を設け、これらを掛止させてクッション部130の第1折返し190周辺の下方への弛みを防止している。さらに第1折返し190から続くロール体194を折返し保持要素174の下面と底面要素176とによって把持させている。したがって、エアバッグ100の取付時に作業者がクッション部130に不適切に力を加えたり、走行中の振動がクッション部130に加えられたりしても、第1折返し190の位置は第1折返し190の芯となっている折返し保持要素174からずれない。第1折返し190の位置が変わらないため、ガスが供給される際に第1折返し190を解消しようとするクッション部130の展開挙動は安定し、ロール体194はブラケット部160へ予定通り接触する。このように、掛止片182と穴152との掛止によって、折返し保持要素174の折返し保持機能を強化し、クッション部130の展開挙動を安定させている点が本実施形態の特徴である。
【0061】
(クッション部の展開挙動)
図7を参照して、本実施形態にかかるクッション部130の収納状態からの膨張展開を説明する。図7は、図1(a)のC−C断面におけるクッション部130の展開挙動を例示する図である。
【0062】
図7(a)は収納状態におけるクッション部130を例示している。図7(a)に例示するように、エアバッグ100の車外方向にはBピラー106が存在していて、さらにBピラーガーニッシュ116によって間隙E1が形成されている。
【0063】
本実施形態にかかるエアバッグ100では、Bピラー106位置の上方には、間隙E1を塞ぐブラケット部160が設けられている。さらに、第1折返し190が形成されたクッション部130と、第1折返し190が形成されたクッション部130の姿勢を保持し、ブラケット部160上に固定する姿勢保持部170が設けられている。
【0064】
姿勢保持部170はブラケット部160のガイド片164の上面において、車室の天面に設けられるルーフヘッドトリム118に近接しつつも、ルーフヘッドトリム118との間に間隙E3を確保して固定されている。このとき、姿勢保持部170と車室の側面との距離(間隙E4)は間隙E3より長くなっている。すなわち、収納状態のロール体194は、車室の側面から離れ、よりルーフヘッドトリム118の近くに位置している。このため、ロール体194は、その膨張展開の開始直後に迅速にルーフヘッドトリム118から露出することができる。また間隙E3を確保することで、開口172の拡大と第1折返し190の膨張展開とがルーフヘッドトリム118によって阻害されないようにしている。
【0065】
図7(b)に例示するように、インフレータ114からガスが供給されると、ガスはまず第1折返し190に流れ込む。そして、膨張展開を開始するロール体194からの圧力によって、第1ヒンジ部178を介して開口172が拡大してロール体194が姿勢保持部170から開放され、膨張展開が進行する。膨張展開するクッション部130からの圧力によって、ルーフヘッドトリム118が押しのけられて、Bピラーガーニッシュ116とルーフヘッドトリム118との間に間隙E2が発生する。
【0066】
クッション部130の膨張展開は、ブラケット部160の車室の内側へ下方しながら突出するガイド片164に接触して、車室の内側方向(ルーフヘッドトリム118方向)へ導かれる。間隙E1はブラケット部160のガイド片164が塞いでいるため、膨張展開するクッション部130がBピラーガーニッシュ116へ引っ掛かることはない。なお、姿勢保持部170が存在するガイド片164の領域では、姿勢保持部170がガイド片164の端部近傍に固定されているため、展開途中のクッション部130はガイド片164に直接は接触しない。しかし、姿勢保持部170が存在しないガイド片164の領域では、その上面で展開途中のクッション部130と接触し、クッション部130を車室の内側方向へ導いている。
【0067】
上述したように本実施形態にかかるクッション部130は、第1折返し190がロール体194に対する車室の内側に位置する姿勢で収納されている。第1折返し190を解消しようとする展開挙動によって、ロール体194は開口172側(車室の内側、すなわちルーフヘッドトトリム118側)へ向かって付勢される。このように、第1折返し190を解消しようとする展開挙動によって、ロール体194は円滑に姿勢保持部170から開放され、ルーフヘッドトリム118に向けて膨張展開する。また、ロール体154の展開挙動がルーフヘッドトリム118側へ向かうため、ブラケット部160が受けるロール体194の膨張展開による負荷が減る。したがって、ブラケット部160が変形して間隙E1を塞ぎきれなくなったり、周囲のガーニッシュに接触して破損させたりすることが防止できる。
【0068】
図7(c)に例示するように、クッション部130は、間隙E2へ膨張展開することができる。つまり、間隙E1を乗り越えて膨張展開することができる。そしてクッション部130は、Bピラーガーニッシュ116に干渉することなく、下方へ膨張展開することができる。
【0069】
図7(d)に例示するように、本実施形態にかかるクッション部130には第2折返し192が設けられているため、第1折返し190がロール体194に対する車室の内側に位置していても、膨張展開時のロール体194の巻回の解消は、膨張展開したクッション部130に対する車室の側面側で行われる。したがって、よりサイドウインド112に沿って膨張展開することができる。
【0070】
上記構成によって、エアバッグ100ではクッション部130が、姿勢保持部170によって車室の内側方向へ展開するよう導かれている。これによって、クッション部130のBピラーガーニッシュ116への引っ掛かりを防止している。
【0071】
(第2実施形態)
図8は、本発明にかかるカーテンエアバッグ装置の第2実施形態を例示する図である。本実施形態にかかるカーテンエアバッグ装置(以下、「エアバッグ200」と記載する)は姿勢保持部が第1実施形態と異なっていて、他の要素は共通である。以下では本実施形態にかかる姿勢保持部270についてのみ説明し、第1実施形態と機能および構成が同様の要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
図8(a)に例示するように、姿勢保持部270の特徴は、折返し保持要素174の変形を防止する支持要素272と、支持要素272を傾倒可能にする第2ヒンジ部274を有することである。
【0073】
図8(b)に例示するように、支持要素272は、底面要素176の端部に折返し保持要素174の先端へ向かって立設されている。支持要素272は、開口172に差し渡されるようにして折返し保持要素174の先端に当接してこれを支持することで、開口172が縮小する方向への折返し保持要素174の変形をより確実に防止する。支持要素272の端部は、折返し保持要素174の外側(車室の内側)の端部276と、折返し保持要素174の内側の端部278との二又に分かれている。端部278は端部276よりも短い構成となっているため、支持要素272は折返し保持要素174に当接した状態からでも車室の内側へ傾倒しやすい構成となっている。このように、支持要素272によって、折返し保持要素174の折返し保持機能をさらに強化し、クッション部130の展開挙動を安定させている点が本実施形態の特徴である。
【0074】
第2ヒンジ部274は、支持要素272と底面要素176との間に設けられ、支持要素272を車室の内側へ傾倒可能にしている。第2ヒンジ部274が設けられることで、支持要素272は膨張するロール体194からの圧力を受けて車室の内側へ傾倒し、開口172を開放することができる。第2ヒンジ部274によって、支持要素272は、開口172に差し渡されつつも、開口172から車室の内側へ向かうロール体194の膨張展開を阻害することを防止できる。
【0075】
(クッション部の展開挙動)
図9は、図8の姿勢保持部270を備えるカーテンエアバッグ装置の膨張展開を説明する図である。図9は、第1実施形態における図7に対応する図である。
【0076】
図9(a)に例示するように、本実施形態では、折返し保持要素174における開口172を縮小する方向への変形が支持要素272によって防止されている。またクッション部130の第1折返し190は、支持要素272と折返し保持要素174とによって挟まれている。これらによって、第1折返し190は形成時の位置からずれることはない。このようにエアバッグ200のクッション部130は、第1折返し190を形成した姿勢がより確実に保持されている。
【0077】
図9(b)に例示するように、インフレータ114からガスが供給されると、ガスはまず第1折返し190へ流れ込む。第1折返し190が膨張すると、支持要素272の端部が折返し保持要素174の先端から外れる。また、膨張展開を開始するロール194からの圧力によって、第1ヒンジ部178を介して開口172が拡大するとともに、第2ヒンジ部274を介して支持要素272が車室の内側方向へ傾倒する。そして、開口172から膨張展開するクッション部130の圧力によって、ルーフヘッドトリム118が押しのけられて、Bピラーガーニッシュ116とルーフヘッドトリム118との間に間隙E2が発生する。
【0078】
図9(c)に例示するように、クッション部130は、間隙E1を乗り越えて間隙E2へ膨張展開することができる。
【0079】
上記構成によって、エアバッグ200ではクッション部130が、姿勢保持部270によって車室の内側方向へ展開するよう導かれている。これによってクッション部130のBピラーガーニッシュ116への引っ掛かりを防止している。
【0080】
(第3実施形態)
図10は、本発明にかかるカーテンエアバッグ装置の第3実施形態を例示する図である。本実施形態にかかるカーテンエアバッグ装置(以下、「エアバッグ300」と記載する)は姿勢保持部が第1または第2実施形態と異なっていて、他の要素は共通である。以下では本実施形態にかかる姿勢保持部370についてのみ説明し、第1または第2実施形態と機能および構成が同様の要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
図10(a)に例示するように、本実施形態にかかる姿勢保持部370の特徴は、折返し保持要素が複数の舌片に分離されている点である。
【0082】
図10(b)に例示するように、姿勢保持部370には、他の実施形態において折返し保持要素となる部分に、開口172から掛止片182近傍まで切り込まれたスリット372が設けられている。本実施形態では、スリット372は2本設けられていて、折返し保持要素は3つの舌片に分離されている。
【0083】
図10(a)に例示するように、3つの舌片のうちの中央の舌片は、他の舌片374より長い構成(長舌片376)となっている。
【0084】
長舌片376の端部には、略コの字状に打ち抜かれることによって、小舌片378が設けられている。小舌片378は、図10(c)に例示するように、姿勢保持部370の内側に向かって延出し、かつ他の舌片374と対向するように傾倒している。
【0085】
なお、上記構成では、舌片は3つに分離され、中央の舌片が長舌片376であるとした。しかし、舌片の数および構成はこれに限るものではない。例えば、掛止片182が姿勢保持部の左右どちらかに偏って設けられている場合には、舌片を2つに分離して、掛止片182の存在するほうの舌片を長舌片としてもよい。
【0086】
図11は、図10の姿勢保持部370へのクッション部130の取付を説明する図である。
【0087】
図11(a)に例示するように、ロール体194と第2折返し192および第1折返し190が形成されたクッション部130を姿勢保持部370に取り付けるには、まず掛止タブ150の穴152に、長舌片376を挿入させる。
【0088】
次に、図11(b)に例示するように、穴152が掛止片182を通過するまで長舌片376に沿って掛止タブ150を移動させる。このとき、長舌片376はクッション部130の上側を包囲し、他の舌片374はクッション部130の下方に位置している。
【0089】
そして、図11(c)に例示するように、穴152を掛止片182に掛止させ、第1折返し190の谷折りとなる側に、舌片134が第1折返し190の芯となるように位置させる。本実施形態では、第1折返し190の山折りとなる側は、長舌片376と小舌片378とによって挟まれる。そして、第2折返し192とロール体194とを、舌片374と底面要素176との間に把持させる。これにより、クッション部130は第1折返し190がロール体194に対する車室の内側に位置した状態の姿勢となり、その姿勢が姿勢保持部370によって保持される。このように、折返し保持要素を、第1折返し190の芯となる舌片134と、第1折返し190の山折り側を挟む長舌片376および小舌片378とに分離させ、折返し保持要素としての折返し保持機能をさらに強化し、クッション部130の展開挙動を安定させている点が本実施形態の特徴である。
【0090】
(クッション部の展開挙動)
図12は、図10の姿勢保持部370を備えるカーテンエアバッグ装置の膨張展開を説明する図である。図12は、第1実施形態における図7に対応する図である。
【0091】
図12(a)に例示するように、収納状態のエアバッグ300のクッション部130は、第1折返し190の芯となる舌片134と、第1折返し190の山折り側を挟む長舌片376および小舌片378とによって第1折返し190を形成した姿勢がより確実に保持可能である。
【0092】
図12(b)に例示するように、インフレータ114からガスが供給されると、ガスはまず第1折返し190へ流れ込む。第1折返し190が膨張すると、その圧力を受けて長舌片376が上方へ押し上げられて、小舌片378が第1折返し190から外れる。また、膨張展開を開始するロール194からの圧力によって、第1ヒンジ部178を介して開口172が拡大する。そして、開口172から膨張展開するクッション部130の圧力によって、ルーフヘッドトリム118が押しのけられて、Bピラーガーニッシュ116とルーフヘッドトリム118との間に間隙E2が発生する。
【0093】
図12(c)に例示するように、クッション部130は、間隙E1を乗り越えて間隙E2へ膨張展開することができる。
【0094】
上記構成によって、エアバッグ300ではクッション部130のBピラーガーニッシュ116への引っ掛かりを防止している。そしてクッション部130は、姿勢保持部370によって車室の内側方向へ展開するよう導かれている。
【0095】
(その他の形態)
図13は、本発明にかかる姿勢保持部の他の形態を例示する図である。上記の第1〜3実施形態の姿勢保持部では、固定部184は底面要素176の底面に設けられ、ブラケット部160のガイド片164の取付穴169へ取り付けられるとして記載した。しかし、図13に例示する姿勢保持部470のように、第1ヒンジ部178からブラケット部160の縦壁部162まで延長した底面要素476を設け、固定部484を延長した底面要素476の端部に設けてもよい。この構成によっても、姿勢保持部470はブラケット部160のガイド片164の上面に固定することが可能である。なお、このとき固定部484を差し込むための取付穴をブラケット部160の縦壁部162に設けるとよい。
【0096】
図14は、本発明にかかるクッション部の他の形態の姿勢を例示する図である。上記の第1〜3実施形態の姿勢保持部では、クッション部130には上端から順に、第1折返し190と、第2折返し192と、ロール体194と、が形成された姿勢で収納されるとして記載した。本発明にかかるクッション部では、第1折返し190がロール体194に対する車室の内側に位置することで、クッション部を姿勢保持部から解放させやすくし、ルーフヘッドトリム118を押しのけやすくしている。そのため、図14に例示するクッション部530のように、第2折返し192を省略した姿勢で収納することも可能である。第2折返し192は、膨張展開時のロール体194の巻回の解消を、クッション部に対する車室の側面側に発生させて、クッション部をよりサイドウインド112に沿って膨張展開させるためのものである。しかし、第2折返し192を省略したとしても、クッション部の膨張展開がサイドウインド112から離れるわけではない。
【0097】
なお、上記の各実施形態においては、姿勢保持部はブラケット部上に固定されるとして記載した。しかし、ブラケット部が必要ない箇所、例えばピラー位置以外や、ピラー位置であってもピラーガーニッシュに干渉するおそれがない場合は、姿勢保持部を直接車両側面に固定することも可能である。この構成によっても、クッション部の収納時の姿勢を保持することが可能である。
【0098】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0099】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0100】
また、上記実施形態においては本発明にかかるカーテンエアバッグを自動車に適用した例を説明したが、自動車以外にも航空機や船舶などに適用することも可能であり、同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、車両の側面衝突時やロールオーバ(横転)時に、乗員保護を目的として車両室内の側面部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
100、200、300、 …エアバッグ、102 …車両、104 …Aピラー、106 …Bピラー、108 …Cピラー、110 …ルーフサイドレール、112 …サイドウインド、114 …インフレータ、116 …ピラーガーニッシュ、118 …ルーフヘッドトリム、130、530 …クッション部、132 …膨張領域、134 …非膨張領域、136 …メインダクト、138 …チャンバ、139 …ガス受給孔、140a …取付タブ、140b …取付タブ、142 …ボルト穴、144 …固定用金具、146 …角形ボルト穴、150 …掛止タブ、152 …穴、160 …ブラケット部、162 …縦壁部、164 …ガイド片、166 …ボルト穴、168 …張出し部、169 …取付穴、170、270、370、470 …姿勢保持部、172 …開口、174 …折返し保持要素、176、476 …底面要素、178 …第1ヒンジ部、180 …ストッパ、182 …掛止片、184、484 …固定部、186 …かえし、190 …第1折返し、192 …第2折返し、194 …ロール体、196 …テープ、272 …支持要素、274 …第2ヒンジ部、276 …端部、278 …端部、370 …姿勢保持部、374 …舌片、376 …長舌片、378 …小舌片、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の側面上方に収納されるカーテンエアバッグ装置において、
エアバッグが下端から上端に向かって巻回されたロール体、該ロール体に続いて該ロール体に対する車室の内側位置において下方から上方へ形成された折返し、および、該折返しに続いて上端近傍に設けられた穴を有するクッション部と、
車室の側面側から車室の内側へ突出するガイド片を有し、展開途中の前記クッション部に該ガイド片の上面で干渉して該クッション部を車室の内側方向へ導くブラケット部と、
前記ブラケット部に取り付けられ、前記クッション部の姿勢を保持する姿勢保持部と、
を備え、
前記姿勢保持部は、
前記ロール体の上側を包囲して該ロール体の姿勢を保持するとともに前記折返しの芯となって該折返しの位置を保持する折返し保持要素と、
前記折返し保持要素と前記ブラケット部との車内内側の間隙である開口と、
前記折返し保持要素の外面から突出し、前記クッション部の前記穴を掛止する掛止片と、
を有することを特徴とするカーテンエアバッグ装置。
【請求項2】
前記姿勢保持部は、
前記ガイド片の上面に接し前記姿勢保持部自体をガイド片に固定する底面要素と、
前記開口を拡大可能に連結する第1ヒンジ部と、
をさらに有し、
前記第1ヒンジ部には、前記開口が縮小する方向への前記折返し保持要素の変形を防止するストッパが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項3】
前記姿勢保持部は、
前記開口に差し渡されるようにして前記折返し保持要素の先端を支持することで、該開口が縮小する方向への該折返し保持要素の変形を防止する支持要素と、
前記支持要素と前記底面要素との間に設けられ、該支持要素を車室の内側へ傾倒可能にする第2ヒンジ部と、
をさらに有することを特徴とする請求項2に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項4】
前記折返し保持要素は、前記掛止片近傍まで切り込まれたスリットによって、複数の舌片に分離されていて、
前記複数の舌片には、他の舌片より長い長舌片が含まれ、
前記長舌片には、前記姿勢保持部の内側に向かって延出される小舌片が形成され、
前記長舌片は前記折返しより上端側の前記クッション部の上側を包囲していて、前記他の舌片を芯とする前記折返しは、前記長舌片および小舌片で挟まれることを特徴とする請求項3に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項5】
前記クッション部は、該クッション部の上端から突出するタブをさらに備え、
前記穴は前記タブ上に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項6】
前記ブラケット部および前記姿勢保持部は、ピラー位置上方の車室の側面に設置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項7】
前記ロール体と車室の側面との距離は、該ロール体と車室の天面に設けられるルーフヘッドトリムとの距離より長いことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のカーテンエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−102102(P2011−102102A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258445(P2009−258445)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【復代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
【Fターム(参考)】