説明

カートリッジおよびカートリッジを有する遠心分離器

遠心分離器に挿入される血液バッグ(35)を収容するためのカートリッジ(1)は、血液成分の分離に使用される。上記カートリッジ(1)は、径方向内側に配置された血液バッグ区画(5)を、径方向外側に配置されるとともにフィルタ(31)用の固定具(29)が設けられた生成物区画(7)から分離する仕切り壁(3)と、上記血液バッグ区画(5)から上記フィルタ(31)の上記固定具(29)を経由して上記生成物区画(7)へと通じる生成物移送経路(36)と、を備える。上記血液バッグ区画(5)から延びる上記生成物移送経路(36)は、上記フィルタ(31)用の上記固定具(29)に、径方向外側下から通じている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液を各成分に分離するために遠心分離器で用いることを特に目的とするカートリッジと、かかるカートリッジを有する遠心分離器と、に関する。
【背景技術】
【0002】
輸血医学において、いわゆる血液成分療法は90年代初頭以来確立されている。これにより患者には、全血の保存血液の代わりにそれぞれが必要とする血液成分のみが投与される。個々の血液成分を別々に投与することによって、1つの保存血液を平均で1.8人の患者に最適に役立てることが可能になる。
【0003】
基本的な血液成分は以下の通りである。
赤血球濃厚液における赤血球。この成分は、極度に失血した後に酸素供給を維持するために輸血される。
血小板濃厚液における血小板。この成分は、血液凝固障害(血友病)の場合に投与される。
血漿。この成分は、血液の凝固障害および欠乏の場合に投与される。それとは別に、血漿は、数多くの薬剤製造の基本的な成分である。
【0004】
血液の個別成分への分離は細胞分離として定義され、遠心分離器内で血液を処理することによって行われることが知られている。遠心分離によって、血液の個別成分が分離され、さらに使用するために個々の容器に充填することができる。
【0005】
かかる遠心分離器は、例えば特許文献1により知られている。この技術状況によると、遠心分離器のロータにあるハブの周りには、複数のカートリッジが配置される。このカートリッジは、血液バッグが直立位置で遠心分離されるように、ロータにしっかりと保持される。カートリッジはその内部に、全血を含んだ血液バッグと、血漿および赤血球濃厚液を収集する生成物バッグと、をそれぞれ収容するための収容装置を備える。個々の成分を分離した後に生成物の流れが継続して再び混じり合うのを防ぐために、カートリッジには、個々のチューブをクランプする様々なクランプ手段が設けられる。分離完了後、バッグをカートリッジから取り外す前に、バッグの個別の接続チューブは適切な手段で封止されなければならない。その後にカートリッジのクランプを開いてバッグを取り外すことができ、そのカートリッジにて新しいバッグのセットを収容する準備をすることができる。
【0006】
血漿または赤血球を分離し抜き出した後には、「バフィーコート」と呼ばれる混合物が血液バッグ内に残る。この「バフィーコート」は主に血小板と、白血球および赤血球からなる。この「バフィーコート」から血小板を得るには、バフィーコートを添加液で希釈し、次いでその希釈された「バフィーコート」を再度、遠心分離によって各成分に分離する。
【0007】
特許文献2により、上記目的のためのシステムおよび方法がすでに知られている。この文献には、「バフィーコート」と添加溶液の混合物を含んだ環状のバッグが単一のチャンバに挿入される遠心分離器が開示されている。この場合、遠心分離操作によって血液成分が分離され、分離された成分はチューブ管路を経由し、ハブの領域に設けられたフィルタを通過して、やはりハブの領域に設けられた収集容器へと移送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1351772B1号
【特許文献2】国際公開第03/089027号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、収量がより良好である細胞分離を可能にするとともに、より経済的な細胞分離を可能にする改良型のカートリッジと、かかるカートリッジを有する遠心分離器と、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、請求項1に記載のカートリッジと、請求項13に記載の遠心分離器とによって達成される。本発明の有利な実施形態は従属請求項に従って実現される。
【0011】
本発明によるカートリッジは、血液バッグを収容するためのものであり、血液成分を分離するための遠心分離器の用途のために提供され、径方向内側に配置された血液バッグ区画を径方向外側に配置された生成物区画から分離するための仕切り壁を備える。該生成物区画にはフィルタ用の固定具が設けられる。生成物移送経路は、上記血液バッグ区画から上記フィルタ用固定具を経由して上記生成物区画へと通じる。上記生成物移送経路は、上記血液バッグ区画から延び、上記フィルタ用固定具に径方向外側下から入ってくるように規定される。
【0012】
本発明に従って生成物移送経路を規定するとともにフィルタを配置することよって、チューブを通して意図せずに移送された赤血球が、遠心力により、フィルタの外側表面と下部表面に集まるようになる。したがって、赤血球がさらに移送されて生成物バッグ内に入る可能性がなくなる。
【0013】
上記固定具は外壁を含むと有利であり、外壁は上記仕切り壁の径方向外側に配置され、上記生成物移送経路に沿って延びるチューブを案内する案内手段を備える。上記案内手段は、上記固定具の外壁のスロットとして設けることができると好ましい。
【0014】
上記生成物移送経路は、上記フィルタ用の固定具から、上記仕切り壁の上方に形成された陥凹部を経由して、上記生成物バッグ区画へ至ると有利である。
【0015】
詳細には、上記血液バッグ区画はカバーを備えることができ、さらに、上記生成物移送経路は上記カバーにある陥凹部によって規定される。この陥凹部は、チューブおよび/またはチューブ・クランプを保持するように設けられる。
【0016】
上記生成物移送経路は、上記フィルタ用の固定具から、上記カバーに形成された第2の陥凹部を経由して、上記生成物バッグ区画へ至ることができる。少なくとも1つの光センサを、上記陥凹部のうちの1つおよび/または上記第2の陥凹部のうちの1つに設けることができる。特に、上記第2のセンサにより、細胞分離の収量を最適化することが可能になる。
【0017】
「注意」信号が上記第1のセンサから出力された後、上記第2のセンサで正確な測定行うために、上記生成物の移送速度を低下させることができる。上記チューブ内の所定の生成物組成に基づいて、移送を終了するための最終的な信号が、上記チューブ・クランプを閉じるための信号と共に出力される。
【0018】
上記第2の陥凹部は、例えば、上記第1の陥凹部に対して基本的に鏡像的形態で形成することができる。
【0019】
上記カートリッジの上記カバーには、チューブ・クランプを作動させる作動手段を設けることができる。上記チューブ・クランプは、上記陥凹部のうちの1つまたは上記第2の陥凹部のうちの1つに収容される。詳細には、上記陥凹部のうちの1つにチューブ・クランプを1つ設け、上記第2の陥凹部のうちの1つにチューブ・クランプを1つ設けることができる。上記チューブ・クランプ用の作動手段を用いることによって、細胞分離プロセスの意図的かつ正確な終了が可能になる一方、不要な血液成分が上記生成物バッグに入ることが防止される。
【0020】
上記カートリッジのカバーは、上記仕切り壁に、第1の箇所で着脱式に連結し、第2の箇所で旋回式に連結できる。上記カバーを側方に干渉しないように旋回させると、そのカバーの下方に設けられた血液バッグ区画に自在にアクセス可能になる。これによって、血液バッグ区画の血液バッグを迅速に交換することが可能になる。上記カバーと上記仕切り壁を旋回式に連結することによって、上記血液バッグおよび1つまたは複数の接続チューブを容易に位置決めすることが可能になる。したがって、上記チューブおよび上記バッグが迅速に最適に固定される。
【0021】
カートリッジはさらに収集タンクを備えることができ、収集タンクは径方向外側に配置されて、生成物区画と血液バッグ区画の一部分とを取り囲むことができる。収集タンクとそれが一部分を取り囲むカートリッジを扱い易くするために、収集タンクの内部に操作具が設けられることが有利である。この操作具は、例えば指穴や取っ手の形で設けることができる。
【0022】
上記のカートリッジは、血液成分を分離するために遠心分離器で用いることを目的として提供される。この遠心分離器は、ハブとそのハブの周りを回転するロータを備える。このロータは、システム・ボックスとしても説明した、カートリッジの収容に使用される収容ボックスがハブの周りに設けられていると有利である。ただし、1つのカートリッジのみを収容する遠心分離器を使用することも可能である。収容ボックスに連結されたロック要素を操作することによって、収容ボックス、ひいては遠心分離器から各カートリッジを自在に取り外すことができる。こういった収容ボックスは、ロータに着脱式に連結することができる。
【0023】
こうすることによって、分離された血液成分を含んだカートリッジを、まだ分離が済んでいない血液成分を含んだ新しいカートリッジと迅速に交換することが可能になり、細胞分離の生成物収量がよくなり、機器の利用を最適にすることが可能になる。
【0024】
ロック要素は、作動していない状態ではロック位置にすることができる。したがって、カートリッジをロータの収容ボックスに挿入するとすぐにロックが行われる。ロック要素はさらに、ハブまたは収容ボックスの領域に設けることができる。
【0025】
さらに、ロック要素は、カートリッジに割り当てられる支持部に設けることもできる。したがって、この場合、カートリッジは上記支持部と収容ボックスの一方の壁の間に収容され、上向きの1方向にのみ移動させることができる。この移動は、ロック要素を操作することによってのみ可能になる。これによって、遠心分離運転を行うために、カートリッジを収容ボックス内へ確実に位置決めすることが可能になる。
【0026】
カートリッジを保持するために、作動していない状態のロック要素を、仕切り壁とは反対側に位置するカバーの側部表面と係合することができる。カートリッジの上向きの移動を妨げるために、突出部がロック要素に形成される。
【0027】
上記支持部はさらに、収容ボックスとカートリッジの間の導電接続を可能にするための接触パッドを備える。この接触パッドは、複数の電気接点で構成することができる。
【0028】
上記支持部には、カバーの下区画内に径方向に移動可能であるように押圧要素を設けることができる。これは、血液バッグから分離された成分をチューブ内に押圧するよう働き、その分離された成分はチューブを通って、さらにフィルタ、生成物バッグへと移送される。
【0029】
血液バッグからの管路の第1の区画は、上向きかつ径方向内向きに延びることができると有利である。血液成分が互いに分離される前に液体がチューブへ漏れると望ましくないが、このような事態が生じなくなる。
【0030】
本発明によるカートリッジおよび遠心分離器は、全血から細胞および血漿を分離するのに適している一方で、既知の遠心分離操作後に残る「バフィーコート」から、細胞を取り出すためにも提供される。
【0031】
このために、複数の血液バッグからの「バフィーコート」が、新しい血液バッグに添加液を加えて収集され、混合される。この新しい血液バッグは、本発明による血液バッグに対応する。新しい血液バッグは、チューブおよび/またはフィルタ、特に、白血球のフィルタ処理のために提供されるフィルタを装備できると有利である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明によるカートリッジの上面図である。
【図2】上記カートリッジの斜視図である。
【図3】上記カートリッジの対称中心線に沿った断面斜視図である。
【図4】図4を補足する上記カートリッジの断面斜視図である。
【図5】上記カートリッジの他の断面斜視図である。
【図6】上記カートリッジのカバーの下部表面の図である。
【図7】収容ボックスの斜視図である。
【図8a】細胞分離が見られる上記カートリッジの断面図である。
【図8b】細胞分離が見られる上記カートリッジの断面図である。
【図8c】細胞分離が見られる上記カートリッジの断面図である。
【図9】フィルタを通る血液生成物の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明の実施形態について、図を用いて説明する。
【0034】
本発明の一実施形態について、図1〜9を用いて説明する。
【0035】
カートリッジ1は、基本的に、仕切り壁3およびカバー9からなる。仕切り壁は、血液バッグ区画5と、生成物バッグ区画7と、を画成する。遠心分離器のロータのシステム・ボックス89にカートリッジ1が挿入されると、血液バッグ区画5は仕切り壁3の径方向内側に配置され、生成物バッグ区画7は仕切り壁3の径方向外側に配置される。本発明による収容ボックス89は、システム・ボックス89として設計されている。
【0036】
血液バッグ区画5の上方には、カバー9が設けられる。カバー9は基本的に矩形の形状を有し、閉じた状態において、その長手方向壁の一方が仕切り壁3と接触する。カバーは、あるコーナ点では仕切り壁に旋回式に取付けられ、第2のコーナ点ではボルト10で仕切り壁3と係合する。カバーを開くには、ボルト10に圧力をかけてから、カバーを側方に旋回させる。これによって、血液バッグ区画5は自在にアクセス可能になり、血液バッグ35を入れることができる。
【0037】
この簡易な旋回機構を用いることによって、カバー9を閉じるときに、かなり容易にチューブ36および血液バッグ35を所望の位置に保持することができ、カバー9を閉じることによって、その所定の位置に固定することができる。
【0038】
カバー9を閉じた後は、カバー9の上部表面に形成された陥凹部15、19に、チューブ36を挿入することができる。陥凹部15には、第1の光センサ25が設けられる。
【0039】
血液バッグに付属するとともに、チューブ(例えば「ハルキー・ロバーツ(Halkey Roberts)」社製のものなど)に配設される、閉じた状態のチューブ・クランプ34は、カバー9の上部表面に形成された陥凹部17に収容される。
【0040】
チューブ36の、血液バッグ35に対して遠い方の端部は、生成物バッグ区画7に達し、そこで固定具29に保持された白血球フィルタ31に連結される。チューブ36は、白血球フィルタ31に径方向外側下から挿入される。フィルタ31およびチューブ36の挿入は、固定具29の外壁71にあるスロット73により可能となる。フィルタを固定具に挿入する際には、チューブ36がフィルタ31に径方向外側を通って下から通じるように、フィルタ31に連結されたチューブ36をスロット73を介して上から下へと移動させることができる。
【0041】
フィルタ31の後ろで、チューブ36は、陥凹部15、17、19に対して略鏡像的に配置されるとともにカバー9に設けられた第2の陥凹部75、79、81、83を介して、生成物バッグ33に至る。生成物バッグ33は、固定具29の径方向外側に配置されている。
【0042】
陥凹部81には、第2のチューブ・クランプ34が設けられる。陥凹部79には、第2の光センサ85が配置される。
【0043】
カバー9の内側では、クランプ34を作動させるための作動手段としての2本のロッド21、23がカバーを通って延び、それぞれの一方の端部は仕切り壁3とは反対側に位置するカバー9の側部表面8からわずかに突出し、もう一方の端部はクランプ34を収容する陥凹部17の領域に配置されるようになっている。側部表面8から突出している一方の端部に圧力をかけることによって、クランプ34を開閉することができる。この実施形態によると、チューブ・クランプ34は、空圧でだけでなく個別に操作することもできる。
【0044】
カートリッジ1の装入後、カートリッジ1を遠心分離器のロータのシステム・ボックス89に挿入することができる。その完了後、仕切り壁3とは反対側に位置するカバー9の側部表面8が、遠心分離器のハブの領域に設けられた、システム・ボックス89の支持部57上に載置される。さらに、支持部57のところには、径方向外側に突出部56を有するロッド形のロック要素55が設けられる。カートリッジ1を挿入することによりカバー9の側部表面8が摺動して突出部56を覆い、ロック要素55を径方向内向きに移動させて、側部表面8が突出部56の下へ配置されるようにするとともに、ロック要素55のばねが元の位置に跳ね戻ることによってカートリッジ1の上向きの移動を妨げるようにする。これで、カートリッジ1はシステム・ボックス89の外壁と支持部の間に確実に位置決めされる。
【0045】
この実施形態によると、それぞれカートリッジ1を1つ有する6個のシステム・ボックス89のための遠心分離器のロータが設計される。遠心分離器は、全てのカートリッジ1が挿入された後で始動される。所望の血液成分の分離は遠心力によって行われる。血液バッグ35内には添加液によって希釈された「バフィーコート」が入っており、より軽い成分が径方向内側に留まるとともに、より重い成分、すなわち赤血球は外側に集まる。
【0046】
所望の血液成分(この実施形態によると、血小板である)を高品質に、すなわち他の血液細胞の混合物を含むことなしに血液バッグから移送するために、この成分分離の後に、既知の圧力パッド61によってわずかな圧力が血液バッグにかけられる。これにより、クランプ34が開いた後、血小板濃度の高い液が、上向きかつ径方向内向きに延びるチューブ36を上昇し始める。血小板濃度の高い液は、径方向外側下から入ってくるチューブ36を経由して、白血球フィルタ31内に導かれる。
【0047】
白血球フィルタ31において、不要な白血球、すなわち白血球が除去される。チューブ36がフィルタ31を含む本発明による配置によって、遠心力に対抗して濾過が行われる。したがって、意図せずに送られた赤血球などのより重い血液成分は、径方向外側に配置されたフィルタの前置チャンバにトラップされる。
【0048】
白血球フィルタ31を通過した後、血小板濃度の高い液は、チューブ36を介して生成物バッグ33へと流れ続け、そこで収集される。生成物バッグ33は、生成物の最終的な保存バッグとしてすでに形成されていると好ましい。全体的なプロセスは、図8a〜8cに略図で示されている。
【0049】
フィルタ内に存在する可能性のある空気を取り除くために、生成物移送の初めは所定量の流速が低く保たれる。これにより、確実かつ完全にフィルタを血液生成物で充填することができる。この所定量の移送の後、圧力パッドの適切な制御によって、特定の第2の量を送るための移送速度を上昇させる。この第2の量が移送される間、赤血球が血液生成物(ここでは、血小板濃厚液)を汚染する恐れはほとんど存在しない。それにもかかわらず赤血球が混入した場合、わずかに混入した赤血球は、チューブが径方向外側下からフィルタ内に送られ、遠心力が作用していることから、フィルタの下側および外側の領域に集められる。
【0050】
第2の量の移送完了後、第1の光センサが作動し、チューブ36内の血液生成物の流速が低減される。
【0051】
第1の光センサ25は、血小板濃度の高い液で赤血球の所定の割合を検出すると、流速を再び低下させる信号を出力する。さらに、フィルタ31の後ろに配置された第2の光センサ85が作動する。
【0052】
この段階中、第2の光センサ85が血液生成物内における赤血球の所定の割合を検出し、細胞分離プロセスを終了させるための信号を出力するまでは、やはりかなりの赤血球がフィルタ31に入って通過する可能性がある。上記プロセス終了信号により、ロッド23が作動することによってチューブ・クランプ34が閉じられる結果、フィルタ内の赤血球は生成物バッグ内の血小板濃厚液から確実に切り離される。ロッドの操作は、システム・ボックス89内に設けられた作動機構によって行われる。
【0053】
第2の光センサ85によって終了する代わりに、第2の光センサ85の作動後一定時間が経過した後に、細胞分離プロセスを終了してもよい。
【0054】
この実施形態では、計6個のカートリッジが遠心分離器に設けられる。カートリッジ1における圧力パッド61による細胞分離プロセスと、チューブ・クランプ34の開閉と、2つの光センサ25、85によるプロセス制御からなる上記の制御により、残りのシステム・ボックス89のカートリッジで連続した細胞分離を行うことが可能になる。これは、上記のプロセス制御が、カートリッジとシステム・ボックスの組合せごとに個別に動作するためである。
【0055】
制御信号およびその他の電気信号を伝送するために、個別の接点59の形をした電気接点パッドが、システム・ボックス89の支持部57に設けられる。カバー9の下部表面には接点59に割り当てられる接触表面27が設けられ、カートリッジ1がシステム・ボックスに挿入されたときに接触表面27が接点59と接触する。このため、接点59にはばねが取付けられている。
【0056】
扱いを容易にする一方、バッグ33、35、チューブ36またはフィルタ31の損傷により血液成分が漏れた場合のために、カートリッジ1は径方向内向きの方向から収集タンク87に挿入される。損傷があった場合には、システム・ボックス89またはロータ自体の汚染が少しで済むように、漏れた血液成分は収集タンクに大部分収集される。これによれば、システム・ボックス89をロータから簡単に取り外すことができる。
【0057】
細胞分離が終了した後、ロック要素55にわずかな圧力をかけて径方向内側に移動させることによって、各カートリッジ1が取り外される。
【0058】
それと同時に、カートリッジ1を収集タンク87の指穴88のところでつかみ、遠心分離器のシステム・ボックス89から上向きに持ち上げ、新たに装入する新しいカートリッジ1とすぐに置き換える。その後の細胞分離中に、この交換したカートリッジ1から血液バッグ35および生成物バッグ33が取り外され、再装入することができる。
【0059】
遠心分離器に挿入する、血液バッグ(35)を収容するためのカートリッジ(1)は、血液成分の分離に使用される。上記カートリッジ(1)は、径方向内側に配置された血液バッグ区画(5)を、径方向外側に配置されるとともにフィルタ(31)用の固定具(29)が設けられた生成物区画(7)から分離する仕切り壁(3)と、上記血液バッグ区画(5)から上記フィルタ(31)の上記固定具(29)を経由して上記生成物区画(7)へと通じる生成物移送経路(36)と、を備える。上記血液バッグ区画(5)から延びる上記生成物移送経路(36)は、上記フィルタ(31)用の上記固定具(29)に、径方向外側下から通じている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液バッグ(35)を収容するとともに血液成分を分離するための遠心分離器に挿入されるカートリッジ(1)において、
径方向内側に配置された血液バッグ区画(5)を、径方向外側に配置されるとともにフィルタ(31)用の固定具(29)が設けられた生成物区画(7)から分離する仕切り壁(3)と、
前記血液バッグ区画(5)から、前記フィルタ(31)の前記固定具(29)を経由して、前記生成物区画(7)へと通じる生成物移送経路(36)と、を備え、
前記血液バッグ区画(5)から延びる前記生成物移送経路(36)が、前記フィルタ(31)用の前記固定具(29)に径方向外側下から通じていることを特徴とするカートリッジ(1)。
【請求項2】
前記固定具(29)が、前記生成物移送経路に沿って延びるチューブ(36)を案内するとともに前記仕切り壁(3)の径方向外側に配置される案内手段(73)を有する外壁(71)を備える、請求項1に記載のカートリッジ(1)。
【請求項3】
前記案内手段(73)が、前記固定具(29)の前記外壁(71)のスロット(73)として設けられる、請求項2に記載のカートリッジ(1)。
【請求項4】
前記生成物移送経路が、前記フィルタ(31)用の前記固定具(29)から、前記仕切り壁(3)の上方に設けられた陥凹部(75)を経由して、前記生成物バッグ区画(7)へと通じる、請求項1〜3に記載のカートリッジ(1)。
【請求項5】
前記血液バッグ区画(5)がカバー(9)を備え、前記生成物移送経路が前記カバー(9)の陥凹部(15、17、19)によってさらに規定され、前記陥凹部(15、17、19)が、チューブ(36)および/またはチューブ・クランプ(34)を保持するように設けられる、請求項1〜4に記載のカートリッジ(1)。
【請求項6】
前記生成物移送経路が、前記フィルタ用の前記固定具(29)から、前記カバー(9)に設けられた第2の陥凹部(79、81、83)を経由して、前記生成物バッグ区画(7)へと通じる、請求項5に記載のカートリッジ(1)。
【請求項7】
少なくとも1つの光センサが、前記陥凹部(15、17、19)のうちの1つに、および/または前記第2の陥凹部(79、81、83)のうちの1つに設けられる、請求項5および6に記載のカートリッジ(1)。
【請求項8】
前記第2の陥凹部(79、81、83)が、前記第1の陥凹部(15、17、19)に対して略鏡像的に配置される、請求項6または7に記載のカートリッジ(1)。
【請求項9】
前記陥凹部(15、17、19)および/または前記第2の陥凹部(79、81、83)のうちの1つに保持されたチューブ・クランプ(34)を作動させる作動手段(21、23)が前記カバー(9)に設けられる、請求項5〜8に記載のカートリッジ(1)。
【請求項10】
前記カバー(9)は前記仕切り壁(3)に対して第1の箇所で着脱式に連結されるとともに第2の箇所で旋回式に連結され、前記カバー(9)の下方に設けられた血液バッグ区画(5)は前記カバー(9)を側方に干渉しないように旋回させることにより自在にアクセス可能である、請求項5〜9のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項11】
径方向外側に配置された収集タンク(87)が設けられ、前記タンクが前記生成物区画(7)と前記血液バッグ区画(5)の一部分とを取り囲む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項12】
前記収集タンク(87)が、前記タンクおよび前記カートリッジを操作するための操作手段(88)を備える、請求項11に記載のカートリッジ。
【請求項13】
ハブ(51)の周りを回転するロータと、
前記ロータに保持されて前記ハブの周りに部分的に配置された、血液バッグ(35)を収容するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の少なくとも1つのカートリッジ(1)と、を備える、血液成分を分離するための遠心分離器であって、
前記ロータに連結されて前記カートリッジ(1)に割り当てられたロック要素(55)を操作すると、前記ロータから前記カートリッジ(1)を自在に取り外しできることを特徴とする、遠心分離器。
【請求項14】
カートリッジ(1)を収容するための少なくとも1つの収容ボックス(89)が前記ロータに設けられる、請求項13に記載の遠心分離器。
【請求項15】
前記収容ボックス(89)が前記ロータに着脱式に連結され、前記ロック要素(55)が前記収容ボックスに設けられる、請求項14に記載の遠心分離器。
【請求項16】
前記カートリッジ(1)が、径方向外側に配置された収集タンク(87)に収容され、前記収集タンク(87)と一緒に前記ロータに挿入/取り外しできる、請求項13〜15のいずれか一項に記載の遠心分離器。
【請求項17】
前記ロック要素(55)が前記ロータの前記ハブ(51)に配置される、請求項13〜16のいずれか一項に記載の遠心分離器。
【請求項18】
前記ロック要素(55)が、前記カートリッジ(1)に割り当てられた支持部(57)に設けられる、請求項13〜17のいずれか一項に記載の遠心分離器。
【請求項19】
前記ロック要素(55)が作動していない状態で前記仕切り壁(3)とは反対側に位置する前記カバー(9)の側部表面(8)と係合し、前記ロック要素(55)上の突出部(56)が前記カートリッジ(1)の上向きの移動を妨げる、請求項13〜18のいずれか一項に記載の遠心分離器。
【請求項20】
前記支持部(57)および/または前記収容ボックス(89)が、前記ロータと前記カートリッジ(1)の間に導電性の接続を確立するための接触パッド(59)を備える、請求項18または19に記載の遠心分離器。
【請求項21】
前記接触パッドが、複数の電気接点(59)からなる、請求項20に記載の遠心分離器。
【請求項22】
前記ロータの前記ハブ(51)の領域に、前記カートリッジに設けられた前記作動手段(21、23)を作動させるための作動機構が設けられる、請求項13〜21のいずれか一項に記載の遠心分離器。
【請求項23】
前記作動機構の動作が、空圧、電気、または油圧で行われる、請求項22に記載の遠心分離器。
【請求項24】
径方向外向きに移動させることができる押圧要素(61)が、血液バッグ(35)に圧力を加えるために前記ハブ(51)の領域に設けられる、請求項13〜23のいずれか一項に記載の遠心分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−528739(P2010−528739A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510786(P2010−510786)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056923
【国際公開番号】WO2008/148808
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(509334480)テルモ ヨーロッパ エヌ ヴイ (5)
【出願人】(508291836)アンドレアス ヘティック ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー (9)
【Fターム(参考)】