説明

カードコネクタの取付構造

【課題】カード排出用ボタンと筐体とが干渉しないように容易にカードコネクタの位置決めをすることを課題とする。
【解決手段】カードコネクタの取付構造は、カード排出用ボタン101を備えたカードコネクタ100を、カード排出用ボタン101が出没する第2開口部1002bを備えた第2筐体1002内に収容される基板50に装着する。カードコネクタの取付構造は、カードコネクタ100に設けられ、首部120aとこの首部102aの先端側に連設された係合部120bとを備えたピン部材120を備える。さらに、基板50に設けられ、ピン部材120が挿入される挿入部121aが設けられたスタッド部材121と、を備える。ピン部材120の首部120aの径は、ピン部材120がスタッド部材121に遊嵌されるように挿入部121aの内径よりも小径である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードコネクタの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ(パソコン)等の電子機器に装着されて用いられるカードが知られている。カードは、パソコンの機能を拡張することができる。このようなカードは、内部にIntegrated Circuit(IC)を備えたICカードであり、情報の書き込みや、読み出しを行うことができる。このようなICカードは、例えば、Personal Computer Memory Card International Association(PCMCIA)カードや、EXPRESSカード等、種々のカードが知られている。また、Local Area Network(LAN)カードのような通信に用いられるカードも知られている。
【0003】
これらのカードは、基板上に設けられたコネクタ部に接続された状態で使用される。カードをコネクタ部に接続するために、電子装置内に配置される基板上には、カードコネクタが設けられる。カードコネクタには、カード排出用ボタンが設けられることがある。
【0004】
従来、このようなカードコネクタを基板に取り付けるためのカードコネクタの取付構造やICカードのスライドガイド取付装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−227078号公報
【特許文献2】実開平3−41361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カードコネクタは、電子装置の外皮となる筐体内に収容される基板に取り付けられる。カードコネクタが、カード排出用ボタンを備えている場合、そのカード排出用ボタンは、前記筐体から出没する。従来のカードコネクタは、はんだ付けや、ネジ止めによって基板へ取り付けられる。このため、カードコネクタは、基板への取り付け時のガタつきや、他の関連する部品の仕上がり公差の蓄積により搭載位置にズレが生じることがある。このズレが大きくなると、カード排出用ボタンが筐体と干渉してしまう。この干渉度合いが大きくなると、カード排出用ボタンが動作することができず、カードの排出不良が生じる。製品の組み立て現場では、このようなカード排出用ボタンと筐体との干渉を解消する調整作業が行われ、製品は、その調整作業後、出荷される。
【0007】
前記従来のカードコネクタの取付構造やICカードのスライドガイド取付装置は、電子機器の筐体とボタンとの干渉を回避することについては、格別考慮されていない。
【0008】
そこで、本明細書開示のカードコネクタの取付構造は、カード排出用ボタンと筐体とが干渉しないように容易にカードコネクタを位置決めできることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書開示のカードコネクタの取付構造は、カード排出用ボタンを備えたカードコネクタを、前記カード排出用ボタンが出没する開口部を備えた筐体内に収容される基板に装着するカードコネクタの取付構造であって、前記カードコネクタに設けられ、首部と当該首部の先端側に連設された係合部とを備えたピン部材と、前記基板に設けられ、前記ピン部材が挿入される挿入部が設けられたスタッド部材と、を備えている。そして、前記ピン部材の前記首部の径は、前記ピン部材が前記スタッド部材に遊嵌されるように前記挿入部の内径よりも小径である。
【0010】
ピン部材がスタッド部材に対し遊嵌されることにより、カードコネクタを微小な動きが許容される浮遊状態(フローティング状態)で仮止めすることができる。このような仮止め状態とした後であれば、カード排出用ボタンと筐体とが干渉しないように最終的な位置決めを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本明細書開示のカードコネクタの取付構造によれば、カード排出用ボタンと筐体とが干渉しないように容易に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、パソコンの斜視図である。
【図2】図2は、カード挿入用の第1開口部周辺の拡大図である。
【図3】図3は、カード排出用ボタンが第2筐体内に収納され、カードが第1開口部に挿入された状態の説明図である。
【図4】図4は、カード排出用ボタンが第2筐体から突出した状態の説明図である。
【図5】図5は、カード排出用ボタンが第2筐体内に押し込まれ、カードが第2筐体から排出された状態の説明図である。
【図6】図6は、カード排出用ボタンが第2筐体内に収納された状態のカードコネクタの説明図である。
【図7】図7は、カード排出用ボタンを案内するためにベースモールドに設けられたカム溝の説明図である。
【図8】図8(A)はカードを排出する機構の一部を分解した状態で示した説明図であり、図8(B)はカードを排出する機構の一部を組み立てた状態で示した説明図である。
【図9】図9は、カードが第2筐体内に挿入され、カード排出用ボタンが第2筐体から突出した状態のカードコネクタの説明図である。
【図10】図10は、カード排出用ボタンが第2筐体内に押し込まれ、カードが第2筐体から排出されるときのカードコネクタの説明図である。
【図11】図11(A)〜(H)は、カード排出用ボタンの一連の動きを示す説明図である。
【図12】図12は、比較例のカードコネクタの取付構造により、カードコネクタを基板に取り付ける様子を示す図であり、図12(A)は上方から見た図、図12(B)は側方から見た図である。
【図13】図13は、比較例のカードコネクタの取付構造により、カードコネクタが基板へ取り付けられた状態を示す図であり、図13(A)は上方から見た図、図13(B)は側方から見た図である。
【図14】図14は、実施例のカードコネクタの取付構造によりカードコネクタを基板に取り付ける様子を示す図であり、図14(A)は上方から見た図、図14(B)は側方から見た図である。
【図15】図15は、実施例のカードコネクタの取付構造により、カードコネクタが基板へ取り付けられた状態を示す図であり、図15(A)は上方から見た図、図15(B)は側方から見た図である。
【図16】図16は、実施例のスタッド部材の説明図であり、図16(A)は上方から見た図、図16(B)は側方から見た図である。
【図17】図17は、ピン部材がスタッド部材と対向した状態を示す説明図である。
【図18】図18は、ピン部材の先端部がスタッド部材に挿入され始めた状態を示す説明図である。
【図19】図19は、ピン部材のスタッド部材への挿入が完了した状態を示す説明図である。
【図20】図20は、他の実施例のピン部材がスタッド部材と対向した状態を示す説明図である。
【図21】図21は、他の実施例のピン部材の先端部がスタッド部材に挿入され始めた状態を示す説明図である。
【図22】図22は、他の実施例のピン部材がスタッド部材への挿入が完了した状態を示す説明図である。
【図23】図23は、さらに他の実施例のピン部材の側面図である。
【図24】図24は、さらに他の実施例のピン部材の側面図である。
【図25】図25(A)は、さらに他の実施例のピン部材の正面図であり、図25(B)は側面図である。
【図26】図26は、突起部によりカードコネクタの動きを規制した様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。ただし、図面中、各部の寸法、比率等は、実際のものと完全に一致するようには図示されていない場合がある。また、図面によっては細部が省略されている場合もある。
【実施例】
【0014】
図1は、図6に示すように本実施例のカードコネクタの取付構造によりカードコネクタ100が取り付けられた基板50を備えたパソコン1000の斜視図である。パソコン1000は、いわゆるノート型であり、ディスプレイが設けられた第1筐体1001と、キーボードが配置された第2筐体1002とを備えている。基板50は、第2筐体1002に収納される。第2筐体1002は、天板1003を備えている。天板1003は、脱着可能である。図2は、第2筐体1002に設けられたカード挿入用の第1開口部1002a周辺の拡大図である。第2筐体1002には、第1開口部1002aに隣接して第2開口部1002bが設けられている。この第2開口部1002bからはカード排出用ボタン(以下、単に「ボタン」という)101が露出する。ボタン101は、カードコネクタ100に設けられている。
【0015】
第1開口部1002aには、カードの一例であるEXPRESSカード(以下、単に、「カード」という)10が挿入される。カード10は、第1開口部1002aに差し込まれ、そのまま押し込まれることによって第2筐体1002内に収納される。そして、第2筐体1002内に収納されたカード10は、ボタン101の操作により第2筐体1002から排出される。図3は、ボタン101が第2筐体内に収納され、カード10が第1開口部1002aに挿入された状態の説明図である。カード10を挿入した状態でパソコン1000の操作を行う場合は、ボタン101は、図3に示すように第2筐体1002内に収納された状態となる。
【0016】
第1開口部1002aに挿入されたカード10は、ボタン101を操作することによって第1開口部1002aから排出される。ボタン101を押す動作が二回行われることによりカード10は排出される。図4は、図3に示す状態からボタン101が一回押され、ボタン101が第2筐体1002から突出した状態を示している。そして、突出したボタン101が再度押し込まれると、図5に示すようにカード10が第2筐体1002から排出される。
このように、カード10の第2筐体1002からの排出にボタン101の操作が必要となる場合、ボタン101と第2開口部1002bとの間には適切なクリアランスが確保されることが求められる。
【0017】
次に、上記のようなボタン101を備えるカードコネクタ100及びボタン101によるカード排出機構について、図6乃至図11を参照しつつさらに詳細に説明する。カードコネクタ100は、基板50上に取り付けられる。カードコネクタ100の基板50への取り付けについては、後に詳述する。
【0018】
カードコネクタ100は、ガイド部102を備えている。ガイド部102は平滑な板状部102aとその両側に設けられたレール状の案内部材102bを備えている。カード10は、案内部材102bにガイドされつつ、板状部102a上をスライド移動する。また、図6乃至図8では省略されているが、カードコネクタ100は、図14(B)や図26に示すようにコネクタ部103を備えている。コネクタ部103は、カード10と接触して導通するピン部分であり、基板50に半田付けされている。
【0019】
カードコネクタ100は、図6に示すように、ガイド部102の側方に延設されたフランジ部104を備えている。フランジ部4は、ガイド部102の両側にそれぞれ設けられている。フランジ部4は、カードコネクタ100の基板50への取り付けに用いられる。
【0020】
カードコネクタ100は、ガイド部102の後端側、すなわち、ガイド部102の第2筐体1002の内側に位置する側にアーム部材105を備えている。アーム部材105は、突起105aを備えている。このアーム部材105は、突起105aをカード10の後端部に当接させてカード10を第2筐体1002内から掻き出すためのものである。
【0021】
アーム部材105は、回転軸部材106によってガイド部102に回転自在に取り付けられている。突起105aは、アーム部材105の一端側に設けられており、アーム部材105の他端側にはプッシュロッド107が取り付けられている。カードコネクタ100には、プッシュロッド107が配置される側の案内部材の外側にベースモールド109が設けられている。図7は、ベースモールド109の側面図である。図7に示すようにベースモールド109には、カム溝109aが設けられている。カム溝109aは、いわゆるハートカム溝と称されるタイプの形状を有している。カム溝109aは、ベースモールド109のほぼ中央部に位置する中央通路と109a1、この中央通路109a1から上方後端側へ延びる上側通路109a2と、中央通路109a1から下方後端側へ延びる下側通路109a3と、下側通路109a3から直線的に前方に延びる前方通路109a4を備えている。
【0022】
図8(A)はカードを排出する機構の一部を分解した状態で示した説明図であり、図8(B)はカードを排出する機構の一部を組み立てた状態で示した説明図である。ボタン101は、内壁部101aを備えている。内壁部101aには、係合穴101a1が設けられている。この係合穴101a1には、ピン部材111が取り付けられる。ピン部材111は、図8(A)に示すように一端側に第1係合部111aを備え、他端側に第2係合部111bを備えている。そして、図8(B)に示すように第1係合部111aがボタン101に設けられた係合穴101a1に係合され、第2係合部111bがベースモールド109に設けられたカム溝109aに係合される。第2係合部111bは、カード排出時にプッシュロッド107に当接して、プッシュロッド107を押し込む機能も担う。このようなボタン101とベースモールド109は、案内部材102bに設けられたカバー部材108内に収納されている。
カバー部材108とボタン101との間には、スプリング110が装着されている。スプリング110は、ボタン101が第2筐体1002内へ押し込まれた状態のときに伸張状態となるように装着されている。
【0023】
図9は、カード10が第2筐体1002内に挿入され、ボタン101が第2筐体1002から突出した状態のカードコネクタ100を示している。また、図10は、ボタン101が第2筐体1002内に押し込まれ、カード10が第2筐体1002から排出されるときのカードコネクタ100を示している。このような動作がされるときの、ボタン101の動きを図11(A)〜(H)を参照しつつ説明する。
【0024】
まず、図11(A)は、カード10が第2筐体1002に設けられた第1開口部1002aに挿入されておらず、ボタン101が第2開口部1002bに収納された状態を示している。この状態のとき、第2係合部111bは、中央通路109a1に位置している。図11(A)では、省略されているが、カバー部材108とボタン101との間に装着されたスプリング110は、伸張した状態となっている。
【0025】
次に、図11(B)は、カード10が第1開口部1002aに挿入された状態を示している。カード10が挿入されることにより、カード101の後端部が突起105aに接触してアーム部材105を回転させる。アーム部材105が回転すると、アーム部材105に取り付けられたプッシュロッド107が図中の矢印の方向に移動する。
【0026】
図11(C)は、カード10を排出するための第一回目のボタン101の押し込み操作が行われている状態を示している。ボタン101が押し込まれると、中央通路109a1に位置していた第2係合部111bが、上側通路109a2側へ移動する。このとき、スプリング110は、さらに伸張する。
【0027】
図11(D)は、スプリング110の張力によって前方(図面中、右側)にボタン101が引っ張られる状態を示している。ボタン101が引っ張られることにより、上側通路109a2に移動している第2係合部111bがそのまま上側通路109a2に沿って前方に移動する。
【0028】
図11(E)は、第2係合部111bが上側通路109a2を移動して、前方通路109a4の端部まで移動した状態を示している。第2係合部111bがこのような状態となることにより、ボタン101は、第2筐体1002から最も露出した状態となる。ボタン101がこの状態となれば、カード10を排出するための第一回目の押し込み操作が完了する。この図11(E)に示す状態が、図9に示す状態と対応している。
【0029】
図11(F)は、図11(E)に示す状態から、カード10を排出するために第二回目のボタン101の押し込み操作が行われる様子を示している。ボタン101が押し込まれると、これに伴って第2係合部111bが前方通路109a4から下側通路109a3の後端側(図中左側)へ向かって移動を開始する。このとき、第2係合部111bがプッシュロッド107に当接し、プッシュロッド107を押し込む。
【0030】
図11(G)は、第二回目のボタン101の押し込み操作が完了し、第2係合部111bが下端通路109a3の端部まで移動した状態を示している。プッシュロッド107が押し込まれると、図9中に示す矢印のように力が伝達される。これにより、アーム部材105が回転し、図10に示すように突起105aがカード10の後端部を押す。そして、カード10が第2筐体1002から排出される。
【0031】
図11(H)は、ボタン101の操作が完了し、ボタン101が元の位置に復帰した状態を示している。すなわち、ボタンの101の操作者がボタン101から指を離し、スプリング110の張力によりボタン101が元の位置に復帰下状態を示している。これにより、第2係合部111bは、中央通路109a1に復帰する。なお、図面には表れていないが、下側通路109a3には、第2係合部111bが前方通路109a4へ戻ることを規制する突起が設けられている。このため、ボタン101が元の位置に復帰する際に、第2係合部111bの前方通路109a4への移動が妨げられる。この結果、第2係合部111bは、中央通路109a1側へ移動し、元の位置に戻る。
【0032】
以上説明したように、カード10を第2筐体1002内から排出する際に、ボタン101が操作される。このようなカードの排出機構は、一例であるが、ボタン101と第2開口部1002bとの間には適切なクリアランスが確保されることが求められる。
【0033】
以下、ボタン101と第2開口部1002bとの間の適切なクリアランスを確保するためのカードコネクタ100の基板50への取り付けにつき、比較例と対比しつつ詳述する。比較例は、カードコネクタ200を基板50へ取り付けるものとする。カードコネクタ200において、実施例のカードコネクタ100と共通する構成要素については同一の参照番号を付すものとする。
【0034】
まず、図12、図13を参照しつつ、比較例のカードコネクタの取付構造について説明する。図12は、比較例のカードコネクタの取付構造により、カードコネクタ200を基板50に取り付ける様子を示す図であり、図12(A)は上方から見た図、図12(B)は側方から見た図である。また、図13は、比較例のカードコネクタの取付構造により、カードコネクタ200が基板50へ取り付けられた状態を示す図であり、図13(A)は上方から見た図、図13(B)は側方から見た図である。カードコネクタ200は、図12(A)に示すように、ガイド部102の板状部102aに内蔵ナット部230を備えている。内蔵ナット部230は、板状部102aの後端側の左右二カ所に設けられている。ガイド部102にフランジ部4が設けられている点は、カードコネクタ100と共通である。ただし、フランジ部4には、ネジ穴104aが設けられている。一方、基板50には、図12(B)に示すように貫通孔50aが設けられている。このようなカードコネクタ200は、ネジ231を用いて基板50に取り付けられる。すなわち、図13(B)に示すように、ネジ231が基板50の下側から貫通孔50aに貫通し、内蔵ナット部230、ネジ穴104aへそれぞれ螺合する。ネジ231は、合計で四カ所に締めつけられることになる。このとき、ネジ231の締め込みのバランスが崩れてしまうと、カードコネクタ200の取り付け位置がずれてしまう。また、工作精度に起因する各部品の寸法バラツキの蓄積によってもカードコネクタ200の取り付け位置がずれることがある。
【0035】
次に、本実施例のカードコネクタの取付構造について説明する。図14は、実施例のカードコネクタの取付構造によりカードコネクタ100を基板50に取り付ける様子を示す図であり、図14(A)は上方から見た図、図14(B)は側方から見た図である。図15は、実施例のカードコネクタの取付構造により、カードコネクタ100が基板50へ取り付けられた状態を示す図であり、図15(A)は上方から見た図、図15(B)は側方から見た図である。図16は、実施例のスタッド部材121の説明図であり、図16(A)は上方から見た図、図16(B)は側方から見た図である。図17はピン部材120がスタッド部材121と対向した状態を示す説明図である。図18は、ピン部材120の係合部(先端部)120bがスタッド部材121に挿入され始めた状態を示す説明図である。図19は、ピン部材120のスタッド部材121への挿入が完了した状態を示す説明図である。
【0036】
カードコネクタ100は、ピン部材120を備えている。ピン部材120は、板状部102aの後端側の左右二カ所と、板状部102aの側方に設けられた二カ所のフランジ部104の合計四カ所に設けられている。ピン部材120は、フランジ部104以外、例えば、板状部102aの下面側に設けることもできるが、フランジ部104に設けることが好ましい。ピン部材120をフランジ部に設けることにより、ピン部材120を後述するスタッド部材121へ挿入する際の目視作業が容易になる。ピン部材120は、図17に示すように、首部120aと、この首部120aの先端側に連設された係合部120bを備えている。係合部120bの先端側は、テーパ状に成形されている。
【0037】
一方、基板50には、比較例における貫通孔50aに代えて、スタッド部材121を装着するための貫通孔50bが設けられている。貫通孔50bは、ピン部材120に対応させて四カ所設けられている。
【0038】
スタッド部材121は、図16(A)に示すように、ピン部材120が挿入される筒状の挿入部121bと、この筒状の挿入部121bの側方へ延設されたアーム部121aを備えている。また、挿入部121bの先端部には、縮径部121b1が設けられている。縮径部121b1には、切欠121cが設けられている。この切欠121cにより、縮径部121b1に柔軟性が付与され、係合部120bの挿通を容易にしている。
【0039】
このようなスタッド部材121は、図16(B)に示すように、筒状の挿入部121bを基板50の貫通孔50bに挿入し、アーム部121aを基板50の上面に当接させる。そして、アーム部121aを基板50に半田付けすることによってスタッド部材121が基板50に取り付けられる。スタッド部材121は、他の電子部品と同様に、基板50上に自動的に搭載され、リフロー半田付けが可能である。
【0040】
ここで、スタッド部材121の挿入部121bと、ピン部材120の首部121aとの寸法関係について説明する。図17に示すように、首部120aの径をD1とし、挿入部121bの内径、より具体的には、縮径部121b1の内径をR1とする。首部120aの径D1は、ピン部材120がスタッド部材121に遊嵌されるように挿入部121bの内径R1よりも小径である。係合部120bの径は挿入部121bの内径R1よりも若干大きくなっている。
【0041】
このような寸法を有するピン部材120は、図18に示すようにスタッド部材121の挿入部121bに押し込まれる。このとき、ピン部材120の係合部120bの先端側がテーパ状に成形され、また、縮径部121b1に切欠121cが設けられているので、ピン部材120は、容易に挿入部121bに挿入することができる。
【0042】
挿入部121bに挿入されたピン部材120は、その径D1が挿入部の内径R1よりも小径となっていることから、スタッド部材121に遊嵌された状態となる。これにより、カードコネクタ100は、直交する二方向、具体的には、カード10の挿抜方向(X方向)と、この挿抜方向に直交する方向(Y方向)に位置調整可能な状態で基板50に取り付けられる。これにより、カードコネクタ100は、いわゆるフローティング状態となり、微小な位置調整が可能となる。
【0043】
なお、半田付け等により基板50側にピン部材120を設け、カードコネクタ側にスタッド部材121を設けることによってカードコネクタ100を位置調整可能な状態とすることもできる。この場合のスタッド部材121の挿入部121bと、ピン部材120の首部121aとの寸法関係は、本実施例の場合と同様である。
【0044】
ピン部材はスタッド部材121に挿入された状態のときに遊嵌される状態となるものであれば、どのような形状であってもよい。
【0045】
例えば、図20乃至図22に示すようなピン部材130とすることもできる。図20は、他の実施例のピン部材130がスタッド部材121と対向した状態を示す説明図である。図21は、他の実施例のピン部材130の係合部(先端部)130bがスタッド部材121に挿入され始めた状態を示す説明図である。図22は、他の実施例のピン部材130がスタッド部材121への挿入が完了した状態を示す説明図である。図17乃至図19に示すピン部材120の係合部120aは、先端側のみがテーパ状に成形されている。図20に示すピン部材130は、首部130aと、この首部130aの先端側に連設された係合部130bを備えている。この点は、ピン部材120と共通する。また、スタッド部材121の挿入部121bと、ピン部材130の首部131aとの寸法関係も、ピン部材120の場合と共通する。すなわち、図21に示すように、首部130aの径をD1とし、挿入部121bの内径、より具体的には、縮径部121b1の内径をR1とする。そして、首部130aの径D1は、ピン部材130がスタッド部材121に遊嵌されるように挿入部121bの内径R1よりも小径である。
【0046】
ピン部材130が備える係合部130bは、先端側のテーパ部130b1と基端側のテーパ部130b2を備えている点で、ピン部材120と相違する。この基端側のテーパ部130b2は、ピン部材130の基端側に向かうに従って小径となっている。このようなテーパ部130b2を備えることにより、カードコネクタ100の基板50からの取り外しが容易となる。
【0047】
さらに、図23に示すようなピン部材140とすることもできる。図23に示すピン部材140は、四つの部分に分割された割りピン形状を有している。各部分の先端部には、テーパ状に成形された係合部140aが設けられている。係合部140aより基端側が首部に相当する。四つの部分は窄まりながらスタッド部材121の挿入部121bに挿入される。ピン部材140の係合部140aよりも基端側の径は挿入部121bの内径よりも小径であり、また、四つの部分が窄まることができるので、ピン部材140は、容易にスタッド部材121に遊嵌される。これにより、カードコネクタ100は、直交する二方向、具体的には、カード10の挿抜方向(X方向)と、この挿抜方向に直交する方向(Y方向)に位置調整可能な状態で基板50に取り付けられる。これにより、カードコネクタ100は、いわゆるフローティング状態となり、微小な位置調整が可能となる。
【0048】
さらに、図24に示すようなピン部材150とすることもできる。図24に示すピン部材150は、二つの部分に分割された割りピン形状を有している。各部分の先端部には、テーパ状に成形された係合部150aが設けられている。係合部150aより基端側が首部に相当する。二つの部分は窄まりながらスタッド部材121の挿入部121bに挿入される。ピン部材150の係合部150aよりも基端側の径は挿入部121bの内径よりも小径であり、また、二つの部分が窄まることができるので、ピン部材150は、容易にスタッド部材121に遊嵌される。これにより、カードコネクタ100は、直交する二方向、具体的には、カード10の挿抜方向(X方向)と、この挿抜方向に直交する方向(Y方向)に位置調整可能な状態で基板50に取り付けられる。これにより、カードコネクタ100は、いわゆるフローティング状態となり、微小な位置調整が可能となる。
【0049】
また、図25(A)、図25(B)に示すようなピン部材150とすることもできる。図25(A)は、ピン部材160の正面図であり、図25(B)は側面図である。ピン部材160は、二枚の板体が対向配置されている。そして、それぞれの板体の外側に位置する面に係合部160aが設けられている。係合部160aよりも基端側が首部に相当する。図25(A)、図25(B)に示す係合部の形状は、矩形であるが、なだらかに隆起する突起であってもよい。ピン部材160の二枚の板体は、その間隔が狭まりながらスタッド部材121の挿入部に121bに挿入される。二枚の板体の間隔、幅、厚みは、挿入部121bに挿入された状態で挿入部121bの内壁との間に隙間ができ、ピン部材160がスタッド部材121に遊嵌されるように設定されている。これにより、カードコネクタ100は、直交する二方向、具体的には、カード10の挿抜方向(X方向)と、この挿抜方向に直交する方向(Y方向)に位置調整可能な状態で基板50に取り付けられる。これにより、カードコネクタ100は、いわゆるフローティング状態となり、微小な位置調整が可能となる。
【0050】
以上のようなピン部材120(140,150,160)をスタッド部材121に挿入して遊嵌状態とした後は、基板50を第2筐体1002に設置する。そして、第2筐体1002に天板1003を設置する。天板1003の下面側、すなわち、基板50と対向する側には、図26に示すようなL字状の突起部122が設けられている。この突起部122は、基板50が第2筐体1002に収容された状態でカードコネクタ100に当接し、カードコネクタ100の直交する二方向(X方向及びY方向)の動きを規制する。
【0051】
突起部122は、X方向に延びる部分とY方向に延びる部分を備えたL字状をなしている。このような突起部122は、天板1003がカードコネクタ100の後端角部に当接する。これにより、カードコネクタ100の動きが規制され、カードコネクタ100の最終的な位置決めが行われる。Z方向(上下方向)については、カードコネクタ100が、天板1003により上から軽く押さえつけられる状態となることで位置決めが行われ、ガタつきも解消される。
【0052】
天板1003は、第2筐体1002の一部をなすものであり、天板1003と第2開口部1002bとの位置関係は、規定の範囲内に納めることが容易である。第2開口部1002bとこのような関係にある天板1003に突起部122を設けることにより、突起部122によって最終的な位置決めがされるボタン101と第2開口部1002bとの適切な位置関係が確保される。
【0053】
これにより、ボタン101の動作が阻害されなくなる。基板50の組み立て時にボタン101と第2開口部1002bとの干渉を回避するための作業の煩わしさから開放される。また、調整作業に伴う基板50や第2筐体1002の破損や歪みの発生のおそれが低減する。
【0054】
また、カードコネクタ100は、ピン部材120をスタッド部材121へ押し込むだけで基板50に装着されるので、ネジの締め込み作業から開放される。
【0055】
また、複数のネジを用いてカードコネクタ100を基板50に取り付ける場合は、複数のネジの締め込み量を調整する作業が必要となる。これに対し、本明細書開示のカードコネクタの取付構造によれば、ピン部材120をスタッド部材121へ押し込み、あとは、突起部122を備えた天板1003を装着するだけで最終的な位置決めが行われる。すなわち、カード排出用ボタンと筐体とが干渉しないように容易に位置決めすることができる。
【0056】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
10…EXPRESSカード
100…カードコネクタ
101…カード排出用ボタン
104…フランジ部
105…アーム部材
106…回転軸部
107…プッシュロッド
108…カバー部材
109…ベースモールド
110…スプリング
111…カムピン
120、140、150、160…ピン部材
120a…首部
120b…係合部
121…スタッド部
121a…挿入部
1000…パソコン
1001…第1筐体
1002…第2筐体
1002a…第1開口部
1002b…第2開口部
1003…天板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード排出用ボタンを備えたカードコネクタを、前記カード排出用ボタンが出没する開口部を備えた筐体内に収容される基板に装着するカードコネクタの取付構造であって、
前記カードコネクタに設けられ、首部と当該首部の先端側に連設された係合部とを備えたピン部材と、
前記基板に設けられ、前記ピン部材が挿入される挿入部が設けられたスタッド部材と、を備え、
前記ピン部材の前記首部の径は、前記ピン部材が前記スタッド部材に遊嵌されるように前記挿入部の内径よりも小径であることを特徴としたカードコネクタの取付構造。
【請求項2】
前記筐体に設けられ、前記基板が前記筐体に収容された状態で前記カードコネクタに当接し、当該カードコネクタの直交する二方向の動きを規制する突起部をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のカードコネクタの取付構造。
【請求項3】
前記ピン部材は、前記カードコネクタの側方に延設されたフランジ部に設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載のカードコネクタの取付構造。
【請求項4】
前記ピン部材は、複数の部分に分割された割りピン形状を有することを特徴とした請求項1乃至3のいずれか一項記載のカードコネクタの取付構造。
【請求項5】
前記係合部は、ピン部材の基端側に向かうに従って小径となるテーパ部を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載のカードコネクタの取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2011−146308(P2011−146308A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7304(P2010−7304)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】