説明

カードデバイス

【課題】無線LANの使用帯域で所望のアンテナ感度を満足するカードデバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】移動通信端末に装着される無線通信用のカードデバイスであって、カードデバイスの表面20aに形成された送受信用の無給電アンテナ素子41と、カードデバイスの裏面20bに形成された送受信用の給電アンテナ素子42とを有し、無給電アンテナ素子41と給電アンテナ素子42はカードデバイスのカード基板40を挟んで重なる形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信端末に装着される無線通信用のカードデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の移動通信端末では、近距離のデータ転送用として赤外線送受信、Bluetooth(登録商標)等の無線機能を搭載することが一般化している。更に、中距離のデータ転送用として無線LANの機能を移動通信端末に追加搭載することが要望されている。
【0003】
無線LANの機能を追加搭載する場合、例えばマイクロSDカード等のカードデバイスにアンテナを含む無線LANの回路ブロックを搭載して無線LANカードとし、この無線LANカードを移動通信端末に装着することで実現される。
【0004】
なお、給電伝送路に給電導電パターンが接続されると共に、接地用導電部に接地導電パターンが接続された逆F形状アンテナパターンを基板の表面に励振素子として形成し、また、基板の裏面に形成された接地用導電部に接地導電パターンが接続された逆L形状アンテナパターンを基板の裏面に無給電アンテナ素子として形成する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、基板の表面に形成された給電伝送路に給電導電パターンが接続されると共に、同じく基板の表面に形成された接地用導電部に接地導電パターンが接続された逆F形状アンテナパターンを励振素子として形成する技術が知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−326521号公報
【特許文献2】特開2002−76735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図9にアンテナを含む無線LANの回路ブロックを搭載するマイクロSDカードの一例の平面図を示す。マイクロSDカード1のサイズは、11mm×16mmであり、そのうち、ハッチングで示すアンテナを搭載する領域2は、11mm×5mmである。
【0008】
無線LAN規格であるIEEE802.11b/gで規定される無線LANは周波数2.4GHz帯を使用する。図10(A)に示す基本的なアンテナである1/4波長モノポールアンテナを構成しようとすると、アンテナ素子の全長が30mmとなり、許容されるアンテナ搭載領域を超えてしまう。また、モノポールアンテナを基に低背化を目的とした逆L型アンテナや逆F型アンテナも略同等のサイズとなる。
【0009】
低背かつ小型化を目的とするアンテナとして、図10(B)に示すミアンダラインアンテナがある。これは、モノポールアンテナをクランク状に曲げて構成したアンテナであり、同じ高さのモノポールアンテナと比較するとミアンダラインアンテナは線路長を長く取ることができ、低い共振点を得ることができる。
【0010】
マイクロSDカードにおけるアンテナ搭載領域にて線路長を確保できるアンテナとしてミアンダラインアンテナを採用した場合、2.4GHz帯の無線LANで使用する周波数帯は周波数2412〜2484MHzであり、この周波数帯域において、VSWR(電圧定在波比)が3.0以下を満たすことが実用上必須である。
【0011】
しかし、ミアンダラインアンテナ周囲の状況、例えば樹脂や金属の接近等によりミアンダラインアンテナの共振点のずれが生じると、周波数2412〜2484MHzでVSWR=3.0以下を満足できない場合があるという問題があった
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、無線LANの使用帯域で所望のアンテナ感度を満足するカードデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施態様によるカードデバイスは、
移動通信端末に装着される無線通信用のカードデバイスであって、
前記カードデバイスの表面(20a)に形成された送受信用の無給電アンテナ素子(41)と、
前記カードデバイスの裏面(20b)に形成された送受信用の給電アンテナ素子(42)と、を有し、
前記無給電アンテナ素子(41)と前記給電アンテナ素子(42)は前記カードデバイスのカード基板(40)を挟んで重なる形状である。
【0013】
好ましくは、前記無給電アンテナ素子(41)及び前記給電アンテナ素子(42)それぞれは、ミアンダラインアンテナである。
【0014】
好ましくは、前記無給電アンテナ素子(41)及び前記給電アンテナ素子(42)で送受信する信号帯域は2.4GHz帯である。
【0015】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、無線LANの使用帯域で所望のアンテナ感度を満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の移動通信端末と無線LANカードの平面図である。
【図2】移動通信端末と無線LANカードの概略構成図である。
【図3】無線LANカードのブロック構成図である。
【図4】本発明の無線LANカードの一実施形態の平面図である。
【図5】本発明の無線LANカードの一実施形態の背面図である。
【図6】本発明の無線LANカードの一実施形態の断面図である。
【図7】ミアンダラインアンテナの周波数−VSWR特性である。
【図8】無線LANカードにおける回路配置を示す図である。
【図9】マイクロSDカードの一例の平面図である。
【図10】1/4波長モノポールアンテナとミアンダラインアンテナを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0019】
<移動通信端末と無線LANカードの平面図>
図1は、本発明の移動通信端末と無線LANカードの平面図を示す。図1(A)は移動通信端末の一実施形態の平面図を示す。ここでは、移動通信端末10の裏面カバーを外した状態を示している。移動通信端末10内の例えば電池パック11の近傍にカードデバイス用コネクタ12が配設されている。このカードデバイス用コネクタ12にはカードデバイスとしての無線LANカード(図1(B))が矢印方向に挿入されて装着される。無線LANカードは着脱自在である。
【0020】
また、移動通信端末10内にはBluetooth(登録商標)用として周波数2.4GHz帯のアンテナ13が配設されている。なお、移動通信端末10内にはアンテナ13の他にも、移動通信用のアンテナや地上デジタル放送のワンセグ用アンテナ等が配設されている。
【0021】
図1(B)はカードデバイスとしての無線LANカードの一実施形態の平面図を示す。ここでは、無線LANカード20としてマイクロSDカードを使用している。無線LANカード20には、マイクロSDカード標準の8個の端子21の他に、2個の端子22a,22bが設けられている。端子21は1個の電源端子と、1個の接地端子と、4個のデータ端子と、1個のクロック端子と、1個のコマンド端子であり、端子22aは接地端子、22bはアンテナ端子である。また、無線LANカード20内には無線LAN用として周波数2.4GHz帯のアンテナ23が配設されている。
【0022】
なお、無線LAN規格であるIEEE802.11b/gで規定される無線LANは周波数2.4GHz帯を使用し、Bluetooth(登録商標)においても無線LANと同一の周波数2.4GHz帯を使用している。
【0023】
図2は、移動通信端末と無線LANカードの概略構成図を示す。図2において、無線LANカード20内において、アンテナ23とアンテナ端子22bはRFスイッチ24に接続され、また、RFスイッチ24は無線LAN処理部25に接続されている。RFスイッチ24は無線LAN処理部25からの制御により、アンテナ23とアンテナ端子22bのいずれか一方を無線LAN処理部25に接続する。
【0024】
無線LANカード20のアンテナ端子22bは移動通信端末10のRFスイッチ14の端子aに接続されている。RFスイッチ14の端子bにはブルートゥース処理部15が接続され、RFスイッチ14の端子cにはアンテナ13が接続されている。
【0025】
移動通信端末10全体を制御する制御部16は、ユーザがブルートゥース使用モードを選択するとRFスイッチ14の端子b,c間を接続してアンテナ13をブルートゥース処理部15に接続する。また、制御部16はユーザが無線LAN使用モードを選択するとRFスイッチ14の端子a,c間を接続してアンテナ13を無線LANカード20のアンテナ端子22bを介してRFスイッチ24に接続する。なお、無線LAN処理部25は端子21を介して移動通信端末10の制御部16と接続されている。
【0026】
ところで、無線LANカード20としては、アンテナ端子22b,RFスイッチ24を持たずアンテナ23と無線LAN処理部25を直接接続する構成であっても良い。この場合、移動通信端末10ではアンテナ13とブルートゥース処理部15を直接接続する構成であっても良いし、アンテナ13,RFスイッチ14,ブルートゥース処理部15を削除した構成であっても良い。
【0027】
<無線LANカードの構成>
図3は、無線LANカードのブロック構成図を示す。図3において、無線LAN処理部25はマイクロプロセッサを含んでおり、このマイクロプロセッサがメモリとして使用するEEPROM31が接続されている。また、無線LAN処理部25には発振回路32からクロックが供給される。無線LAN処理部25は端子21を介して移動通信端末10の制御部16から無線LAN使用モードを指示されると、送受信信号のRF(高周波)信号処理、ベースバンド処理、MAC処理等を実行する。また、無線LAN処理部25はRFスイッチ24の切り替え制御を行う。
【0028】
端子21を介して移動通信端末10の制御部16等から供給される送信データは無線LAN処理部25においてMAC処理、ベースバンド処理、RF信号処理を行われて送信信号とされ、帯域フィルタ(BPF)33で帯域制限されて増幅回路34に供給される。増幅回路34で増幅された送信信号は低域フィルタ(LPF)35で不要周波数成分を除去されてRFスイッチ24に供給され、RFスイッチ24が選択するアンテナ23又はアンテナ13のいずれか一方から送信される。
【0029】
なお、移動通信端末10のアンテナ13が接続される端子22bとRFスイッチ24との間にはマッチング回路36が設けられている。マッチング回路36は、例えば端子22bとRFスイッチ24との間に直列接続された2つのキャパシタと、2つのキャパシタの接続点と接地間に接続されたインダクタを有し、RFスイッチ14とRFスイッチ24間のインピーダンスマッチングを行う。
【0030】
また、アンテナ13又はアンテナ23のいずれか一方で受信された信号がRFスイッチ24で選択され、帯域フィルタ37で帯域制限されて無線LAN処理部25に供給される。受信信号は無線LAN処理部25においてRF信号処理、ベースバンド処理、MAC処理を行われ、端子21から移動通信端末10の制御部16等に供給される。
【0031】
<無線LANカードのアンテナ>
図4は本発明の無線LANカードの一実施形態の平面図を示し、図5は本発明の無線LANカードの一実施形態の背面図を示し、図6は本発明の無線LANカードの一実施形態のVI−VI線に沿う断面図を示す。ここでは、無線LANカード20の端子21,22a,22bを設けた面を無線LANカード20の表面20aとし、その反対面を裏面20bとする。
【0032】
図4及び図6において、無線LANカード20の表面20aには、複数の端子21が配置された辺20cと対向する辺20dに沿って、無給電アンテナ素子であるミアンダラインアンテナ41が設けられている。ミアンダラインアンテナ41は表面20aに金属等の導電体をクランク状に曲げた形状に塗布して形成され、ミアンダラインアンテナ41は縦幅D1(例えば4mm)×横幅W1(例えば8.5mm)の領域に形成されている。ミアンダラインアンテナ41の一端41aはRFスイッチ24に直接接続されていない。
【0033】
図5及び図6において、無線LANカード20の裏面20bには、給電アンテナ素子であるミアンダラインアンテナ42が設けられている。ミアンダラインアンテナ42は裏面20bに金属等の導電体をクランク状に曲げた形状に塗布して形成され、ミアンダラインアンテナ42は縦幅D1(例えば4mm)×横幅W1(例えば8.5mm)の領域に形成されている。ミアンダラインアンテナ42は無線LANカード20のカード基板40を挟んでミアンダラインアンテナ41と重なる略同一形状とされている。ただし、ミアンダラインアンテナ42の一端42aは給電点43を介してRFスイッチ24に直接接続されている。
【0034】
絶縁体であるカード基板40の厚さは例えば0.2mm程度であり、ミアンダラインアンテナ41,42は略重なる形状であるため、高周波的にはミアンダラインアンテナ41とミアンダラインアンテナ42は静電結合される。この静電結合されるミアンダラインアンテナ41,42によってアンテナ23が構成されている。
【0035】
ここで、給電アンテナ素子であるミアンダラインアンテナ42は図7に実線Iで示すように、周波数F2(例えば2430MHz)〜F4(例えば2490MHz)の間でVSWRが3.0以下となる。また、無給電アンテナ素子であるミアンダラインアンテナ41はミアンダラインアンテナ42に静電結合されるため、ミアンダラインアンテナ41の共振点はミアンダラインアンテナ42の共振点の周波数より低くなる。このため、ミアンダラインアンテナ41は図7に実線IIで示すように、周波数F1(例えば2410MHz)〜F3(例えば2470MHz)の間でVSWRが3.0以下となる。
【0036】
このため、アンテナ23としては、実線Iと実線IIを合成した周波数−VSWR特性となり、広帯域のアンテナとなって周波数F1〜F4の間でVSWRが3.0以下となる。この結果、ミアンダラインアンテナ42の周囲の樹脂や金属の接近等によりミアンダラインアンテナ42の共振点のずれが生じたとしても、周波数2412〜2484MHzでVSWR=3.0以下を満足することができる。
【0037】
また、無線LANカード20の表面20aと裏面20bに同一形状のミアンダラインアンテナ41,42を重なるように形成しているため、無線LANカード20におけるアンテナ23の構成に必要な面積はアンテナ1つ分の面積で済み、アンテナ配置の自由度が向上する。
【0038】
なお、無線LANカード20の表面20aに給電アンテナ素子であるミアンダラインアンテナ42を設け、無線LANカード20の裏面20bに無給電アンテナ素子であるミアンダラインアンテナ41を設ける構成としても良い。この場合、ミアンダラインアンテナ41の給電点43とRFスイッチ24との間はカード基板を貫通するスルーホールで接続する。
【0039】
なお、上記実施形態ではミアンダラインアンテナ42とミアンダラインアンテナ41は重なる形状とされているが、ミアンダラインアンテナ41の他端41bを短縮又は延長してミアンダラインアンテナ41の周波数・VSWR特性を調整することも可能である。
【0040】
<無線LANカードの回路配置>
図8は、無線LANカード20における回路配置を示す。無線LANカード20の裏面20bのアンテナ搭載領域50にはミアンダラインアンテナ42が形成される。このミアンダラインアンテナ42が形成される側の辺20dと対向する辺20cに沿って無線LAN−IC51が配設される。無線LAN−IC51は無線LAN処理部25を半導体集積化したものである。
【0041】
アンテナ搭載領域50と無線LAN−IC51との間における図中左方にはRFスイッチ24が配置され、RFスイッチ24からアンテナ搭載領域50の給電点43に接続する配線52が設けられている。また、RFスイッチ24から図中下方に延びる配線53がマッチング回路36に接続され、マッチング回路36内にカード基板40を貫通するスルーホール(図示せず)が設けられ、マッチング回路36と無線LANカード20の表面20aのアンテナ端子22bが接続されている。
【0042】
アンテナ搭載領域50と無線LAN−IC51との間における図中中央から右方には、送信回路部55と受信回路部56が配設されている。送信回路部55は帯域フィルタ33と増幅回路34と低域フィルタ35を有し、無線LAN−IC51と帯域フィルタ33の間を配線57で接続し、帯域フィルタ33と増幅回路34の間を配線58で接続し、増幅回路34と低域フィルタ35の間を配線59で接続し、低域フィルタ35とRFスイッチ24の間を配線60で接続している。
【0043】
受信回路部56は帯域フィルタ37を有し、無線LAN−IC51と帯域フィルタ37の間を配線61で接続し、帯域フィルタ37とRFスイッチ24の間を配線62で接続している。また、無線LAN−IC51とRFスイッチ24の間は切り替え制御用の配線63で接続されている。
【0044】
なお、図1(A)に示す移動通信端末10にカードデバイス用コネクタ12の他に、一点鎖線で示すカードデバイス用コネクタ17を増設し、このカードデバイス用コネクタ17にマイクロSDメモリを装着するようにしてもよく、上記実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0045】
10 移動通信端末
11 電池パック
12 カードデバイス用コネクタ
13,23 アンテナ
14,24 RFスイッチ
20 無線LANカード
21,22a,22b 端子
25 無線LAN処理部
31 EEPROM
32 発振回路
33,37 帯域フィルタ
34 増幅回路
35 低域フィルタ
36 マッチング回路
40 カード基板
41,42 ミアンダラインアンテナ
43 給電点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信端末に装着される無線通信用のカードデバイスであって、
前記カードデバイスの表面に形成された送受信用の無給電アンテナ素子と、
前記カードデバイスの裏面に形成された送受信用の給電アンテナ素子と、
を有し、
前記無給電アンテナ素子と前記給電アンテナ素子は前記カードデバイスのカード基板を挟んで重なる形状であることを特徴とするカードデバイス。
【請求項2】
請求項1記載のカードデバイスにおいて、
前記無給電アンテナ素子及び前記給電アンテナ素子それぞれは、ミアンダラインアンテナであることを特徴とする移動通信端末。
【請求項3】
請求項2記載のカードデバイスにおいて、
前記無給電アンテナ素子及び前記給電アンテナ素子で送受信する信号帯域は2.4GHz帯であることを特徴とするカードデバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−119949(P2011−119949A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274975(P2009−274975)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】