説明

カード基材及びこのカード基材を有するICカード

【課題】利便性の良いカード基材及びこのカード基材を有するICカードを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明におけるICカードは、カード基材7の内部に設けられた複数のアンテナのうち、何れのアンテナの非接触通信機能を有効にするかを穴43、44(切削部)の位置を変えることによって容易に選択することができるため、顧客からの要望による仕様の変更などによって急遽、使用するアンテナを変更したい場合にも対応することができ利便性が良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカード基材及びこのカード基材を有するICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
コンビカードと呼ばれるICカードは、外部接続端子を利用して接触方式により外部通信を行うとともに、カード基材に埋め込まれたアンテナを利用して非接触方式で外部通信を行うことができることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−102423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ICカードが外部通信を行う際に使用される電波には様々な周波数帯が存在し、通信距離や扱う情報量など用途に応じて使い分けられている。また、ICカードのカード基材内部に設けられたアンテナは周波数帯によって異なり、複数の周波数帯で共用することが出来ない。そのため、顧客からの要望による仕様の変更などによって急遽、使用するアンテナを変更したい場合に対応することが出来ず、必ずしも利便性の良いものとは言えなかった。
【0005】
そこで、本発明は利便性の良いカード基材及びこのカード基材を有するICカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1記載のICカードは、凹部を有するカード基材、及び前記凹部に格納されるICモジュールから構成されるICカードにおいて、前記ICモジュールは、前記カード基材の内部に配設されたアンテナコイルと接続されることに基づいて外部装置と非接触通信を可能とする非接触通信用端子を有し、前記カード基材は、第1のアンテナ端子対を前記凹部の第1の位置に配置する第1のアンテナコイルと、第2のアンテナ端子対を前記凹部の第2の位置に配置する第2のアンテナコイルと、を有し、前記第1のアンテナ端子対が露出するように前記第1の位置に形成した切削部を導電材によって封入して接続した場合に前記第1のアンテナコイルと前記非接触通信用端子とを導通接続可能とし、又は前記第2のアンテナ端子対が露出するように前記第2の位置に形成した切削部を導電材によって封入して接続した場合に前記第2のアンテナコイルと前記非接触通信用端子とを接続可能とすることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3記載のカード基材は、カード基材の内部に配設されたアンテナコイルと接続されることに基づいて外部装置と非接触通信を可能とする非接触通信用端子を有するICモジュールを凹部に有するカード基材において、第1のアンテナ端子対を前記凹部の第1の位置に配する第1のアンテナコイルと、第2のアンテナ端子対を前記凹部の第2の位置に配する第2のアンテナコイルと、を有し、前記第1のアンテナ端子対が露出するように前記第1の位置に形成した切削部を導電材によって封入して接続した場合に前記第1のアンテナコイルと前記非接触通信用端子とを導通接続可能とし、又は前記第2のアンテナ端子対が露出するように前記第2の位置に形成した切削部を導電材によって封入して接続した場合に前記第2のアンテナコイルと前記非接触通信用端子とを接続可能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば利便性の良いカード基材及びこのカード基材を有するICカードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1に係るICカード100の外観を示す図。
【図2】本発明の実施の形態1に係るICカード100のB−Bにおける断面を示す図。
【図3】本発明の実施の形態1に係るICモジュール21のB−Bにおける断面を示す図。
【図4】本発明の実施の形態1に係るアンテナ基板31の外観を示す図。
【図5】本発明の実施の形態1に係るカード基材7の断面を示す図。
【図6】本発明の実施の形態1に係るミーリング工程の完了したカード基材7の断面を示す図。
【図7】本発明の実施の形態1に係るインプラント工程を説明する図。
【図8】本発明の実施の形態1に係るアンテナ8とICモジュール21との接続位置を示す図。
【図9】本発明の実施の形態1に係るICカード100におけるアンテナ8とICモジュール21との接続部分を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るICカード100の外観を示す図である。図2は、本発明の実施の形態1に係るICカード100のB−Bにおける断面を示す図である。図3は、本発明の実施の形態1に係るICモジュール21の断面を示す図である。図4は、本発明の実施の形態1に係るアンテナ基板31の外観を示す図である。図5は、本発明の実施の形態1に係るカード基材7の断面を示す図である。
【0012】
図1乃至図5を参照して本発明の実施の形態1に係るICカード100の構成について説明する。
【0013】
本発明の実施の形態1に係るICカード100は、カードリーダ・ライタ(外部装置)とのデータ通信を接触或いは非接触(無線)のどちらでも行うことができるコンビカードとして説明する。
【0014】
ICカード100は、図1、図2に示すようにアンテナ8(アンテナ8a:第1のアンテナコイル、アンテナ8b:第2のアンテナコイル)(以下、区別して説明する必要が無い限りアンテナ8とする。)を備えたカード基材7と、カード基材7に実装されるICモジュール21を有している。
【0015】
ICモジュール21は、図2、図3に示すように、ICモジュール基板3と、ICモジュール基板3に金ワイヤ5を用いてワイヤボンディングにより実装されるLSI2と、LSI2と反対側のICモジュール基板3に実装されるコンタクト部1と、アンテナ8との接続用のアンテナ接続端子4(非接触通信用端子)とにより構成されている。
【0016】
さらにICモジュール21は、封止樹脂6によりワイヤボンディングによる接続部が封止されている。
【0017】
コンタクト部1は、図1に示すように複数の端子1a〜1hによって構成されており、動作用の電源電圧(+5V)用のVCC端子1a、リセット信号用のRST端子1b、クロック信号用のCLK端子1c、接地用のGND端子1d、メモリ書込電源電圧用のVPP端子1e、データ入出力用のI/O端子1f、予備用端子1g、1hからなっている。
【0018】
図4に示すようにアンテナ基板31は、基材に厚さ約0.025mmのポリエチレンテレフタレート(以下、PETとする)を用い、その片面にアルミ箔をエッチングして形成したアンテナ8とICモジュール21を接続するアンテナ端子32、33(32a、33a:第1のアンテナ端子対、32b、33b:第2のアンテナ端子対)(以下、区別して説明する必要が無い限りアンテナ端子32、33とする。)を形成する。
【0019】
なお、本発明の実施の形態では、LSI2の実装方法をワイヤボンディング方式としたが、フリップチップ方式などの他の方式でも良い。
【0020】
図5に示すカード基材7は、アンテナ基板31の表と裏にPETシートやPVCシートを積層一体化したものである。
【0021】
続いて、図6乃至図9を参照して本発明の実施の形態1に係るICカード100の製造工程について説明する。図6は、本発明の実施の形態1に係るミーリング工程の完了したカード基材7の断面を示す図である。図7は、本発明の実施の形態1に係るインプラント工程を説明する図である。
【0022】
先ず、図6に示すようにカード基材7の所定の位置にICモジュール21を埋め込む穴41、42と弾性導電材10を装填する穴43、44を掘るための切削加工(以下、ミーリング加工とする)を行う。この後、図7に示すように弾性導電材10を穴43(43a、43b)(以下、区別して説明する必要が無い限り穴43とする))、穴44(44a、44b)(以下、区別して説明する必要が無い限り穴44とする))に注入して盛り上げて塗布して硬化させておき、インプラント工程でICモジュール21を埋め込むことによりICカード100は製造される。
【0023】
つまり、カード基材7にICモジュール21を埋め込むために、カード基材7にICモジュール21を格納する形状にエンドミルなどでミーリング加工を施すとともに、アンテナ端子32、33が露出するようにミーリング加工を行う。
【0024】
図6に示すようにICモジュール21を接着するための穴42と封止樹脂6によるLSIの封止部をおさめるための穴41がカード基材7の表面から凹状態(凹部)となっている。また、浅い接着穴42に弾性導電材10を装填し、アンテナ端子32、33を露出させるための穴43、44(切削部)が空けられている(ミーリング工程)。
【0025】
穴43a、44aはアンテナ8aとICモジュール21とを接続する場合にはアンテナ端子32a、33aが配される位置(第1の位置)に空けられる。一方、穴43、4443b、44bはアンテナ8bとICモジュール21とを接続する場合にはアンテナ端子32b、33bが配される位置(第2の位置)に空けられる
続いてミーリング加工を行った後、カード基材7のアンテナ端子32、33の露出部分に弾性導電材10を盛り上げて塗布して硬化させておき、接着シート9を仮接着したICモジュール21を穴43、44に弾性導電材10を装填したカードの装着用の穴41、42に落とし込み、加熱圧着して電気的・物理的に接続してICカード100を形成する。なお、ICモジュール21とカード基材7の固定は、アンテナ8以外の部分に接着シート9で接着する(インプラント工程)。
【0026】
なお、アンテナ8とICモジュール21は、ICモジュール21のカード基材7への接着時に弾性導電材10を圧縮するように固定し接続する。ここで、弾性導電材10は、例えばシリコンに導電材が含まれているものなどで構成される。
【0027】
図8にアンテナ8とICモジュール21との接続位置を示す。図8(a)は、アンテナ8aとICモジュール21とが、穴43a、44aを通してアンテナ端子32a、33aを介し接続された場合を示す。一方、図8(b)は、アンテナ8bとICモジュール21とが、穴43b、44bを通してアンテナ端子32b、33bを介し接続された場合を示している。
【0028】
図9は、本発明の実施の形態1に係るICカード100におけるアンテナ8とICモジュール21との接続部分を示す図である。
【0029】
ICモジュール21のアンテナ接続端子4がそれぞれ弾性導電材10を介してアンテナ端子32、33に接続され、かつLSI2とアンテナ接続端子4とが金ワイヤ5により接続されることにより、アンテナ8とLSI2とが接続される。
【0030】
図9(a)は、アンテナ8aとICモジュール21とが、穴43a、44aを通してアンテナ端子32a、33aを介し接続された場合を示す。一方、図9(b)は、アンテナ8bとICモジュール21とが、穴43b、44bを通してアンテナ端子32b、33bを介し接続された場合を示している。
【0031】
以上のように本実施の形態によれば、カード基材7の内部に設けられた複数のアンテナのうち、何れのアンテナの非接触通信機能を有効にするかを穴43、44(切削部)の位置を変えることによって容易に選択することができるため、顧客からの要望による仕様の変更などによって急遽、使用するアンテナを変更したい場合にも対応することができ利便性が良い。
【0032】
また、本実施の形態では、カード基材7内に設けられたアンテナ数が2つの場合を用いて説明したが、2つ以上であっても良いことは言うまでもない。
【0033】
また、本実施の形態では、コンビカードを例にとって説明したがコンビカードに限定されず、複数のアンテナを有するICカードであれば適用できるものとする。
【0034】
なお、本発明は上記の実施の形態に限られるものではなく、その趣旨を変えない範囲での変更は可能であって、封止樹脂6、カード基材7の材料などは任意である。
【符号の説明】
【0035】
1 コンタクト部
2 LSI
3 ICモジュール基板
4 アンテナ接続端子
5 金ワイヤ
6 封止樹脂
7 カード基材
8 アンテナ
9 接着シート
10 弾性導電材
21 ICモジュール
31 アンテナ基板
32、33 アンテナ端子
41〜44 穴
100 ICカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有するカード基材、及び前記凹部に格納されるICモジュールから構成されるICカードにおいて、
前記ICモジュールは、
前記カード基材の内部に配設されたアンテナコイルと接続されることに基づいて外部装置と非接触通信を可能とする非接触通信用端子を有し、
前記カード基材は、
第1のアンテナ端子対を前記凹部の第1の位置に配置する第1のアンテナコイルと、
第2のアンテナ端子対を前記凹部の第2の位置に配置する第2のアンテナコイルと、
を有し、
前記第1のアンテナ端子対が露出するように前記第1の位置に形成した切削部を導電材によって封入して接続した場合に前記第1のアンテナコイルと前記非接触通信用端子とを導通接続可能とし、又は前記第2のアンテナ端子対が露出するように前記第2の位置に形成した切削部を導電材によって封入して接続した場合に前記第2のアンテナコイルと前記非接触通信用端子とを接続可能とすることを特徴とするICカード。
【請求項2】
前記第1のアンテナコイルによる無線通信と前記第2のアンテナコイルによる無線通信の周波数帯が異なることを特徴とする請求項1記載のICカード。
【請求項3】
カード基材の内部に配設されたアンテナコイルと接続されることに基づいて外部装置と非接触通信を可能とする非接触通信用端子を有するICモジュールを凹部に有するカード基材において、
第1のアンテナ端子対を前記凹部の第1の位置に配する第1のアンテナコイルと、
第2のアンテナ端子対を前記凹部の第2の位置に配する第2のアンテナコイルと、
を有し、
前記第1のアンテナ端子対が露出するように前記第1の位置に形成した切削部を導電材によって封入して接続した場合に前記第1のアンテナコイルと前記非接触通信用端子とを導通接続可能とし、又は前記第2のアンテナ端子対が露出するように前記第2の位置に形成した切削部を導電材によって封入して接続した場合に前記第2のアンテナコイルと前記非接触通信用端子とを接続可能とすることを特徴とするカード基材。
【請求項4】
前記第1のアンテナコイルによる無線通信と前記第2のアンテナコイルによる無線通信の周波数帯が異なることを特徴とする請求項3記載のカード基材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−170525(P2011−170525A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32559(P2010−32559)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】