説明

カード用コネクタ

【課題】ハウジング内の限られたスペースを有効に活用し、適切にカードの挿着を検出すること。
【解決手段】カードを装着可能なハウジング2と、カードの挿着を検出する検出スイッチ19とを備えたカード用コネクタにおいて、検出スイッチ19は、第1固定接点部193aと第2固定接点部193bとからなる固定接点部19と、第1固定接点部193aと常時接触する第1接点部192bと、カードの挿入に伴い駆動するときに第2固定接点部193bと接触する第2接点部193cとからなる可動接点ばね192と、カードとの当接により回動して可動接点ばね192を回動させるレバー191とからなり、第2固定接点部193bは、第1固定接点部193aよりもカード挿入方向の奥側に配置されると共に、第1固定接点部193aが形成される平面よりもレバー191の回動方向の外側の位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関し、特に、カードの挿着を検出するカード検出スイッチを備えたカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジングの側壁部近傍に回動可能に軸支された駆動部材を備え、この駆動部材をカードの挿入に伴って当該カードの幅方向に回動させることで、この駆動部材に取り付けた可動接点ばねと、ハウジングの側壁部に設けた一対の固定接点とを電気的に接続してカードの挿着を検出するカード検出スイッチを備えるカード用コネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、近年、このようなカード用コネクタに装着されるSDカード等のカードは小型化されている。一方、このようなカードに対して各種データの記録等を行う電子機器も小型化されている。このため、このような電子機器に搭載され、カードを装着するカード用コネクタにおいても、更なる小型化が要請されている。
【特許文献1】特開2005−134978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように駆動部材を回動させ、これに取り付けた可動接点ばねと、ハウジングの側壁部に設けた一対の固定接点とを電気的に接続するようなカード検出スイッチにおいては、カードの寸法の小型化に伴って、可動接点ばねの寸法や、一対の固定接点間の距離を縮小することに限界がある。これらを縮小する場合には、可動接点ばねの付勢力を確保することができなくなる事態や、駆動部材の回動に伴ってカードの挿着を検出することができなくなる事態を引き起こし、カード検出スイッチ本来の機能を喪失してしまうためである。
【0005】
従って、このような小型化が要請されるカード用コネクタに実装されるカード検出スイッチにおいては、ハウジング内の限られたスペースを有効に活用し、適切にカードの挿着を検出することが要請される。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、ハウジング内の限られたスペースを有効に活用し、適切にカードの挿着を検出することができるカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカード用コネクタは、カードを装着可能な装着部を有するハウジングと、前記装着部に対する前記カードの挿着を検出する検出手段とを備え、前記検出手段は、第1固定接点部と第2固定接点部とからなる固定接点部と、前記第1固定接点部と常時接触する第1接点部と、前記カードの挿入に伴い駆動するときに前記第2固定接点部と接触する第2接点部とからなる可動接点部材と、前記可動接点部材が設けられ、前記カードの挿入口側で軸支されて前記カードとの当接により回動して前記可動接点部材を回動させる駆動部材とからなり、前記第2固定接点部は、前記第1固定接点部よりも前記カード挿入方向の奥側に配置されると共に、前記第1固定接点部が形成される平面よりも前記駆動部材の回動方向の外側の位置に配置されることを特徴とする。
【0008】
上記カード用コネクタによれば、第2固定接点部は、第1固定接点部よりもカード挿入方向の奥側に配置されると共に、第1固定接点部が形成される平面よりも駆動部材の回動方向の外側の位置に配置されることから、可動接点部材の第2接点部を第1接点部よりも鋭角に固定接点部側に延出させることにより、第2接点部が鈍角に延出する場合と比べてカード挿入方向側に第2接点部の摺動領域を確保することができるので、ハウジング内の限られたスペースを有効に活用し、適切にカードの挿着を検出することが可能となる。
【0009】
上記カード用コネクタにおいては、前記固定接点部は、前記ハウジングに設けられ、前記第1固定接点部が設けられた前記ハウジングの第1面と前記第2固定接点部が設けられた第2面との間には段差が設けられ、前記可動接点部材は、捻りコイルばねからなり、前記第2接点部が前記第1接点部よりも前記固定接点部が設けられた前記ハウジングに対して鋭角に延出することが好ましい。この場合には、第2接点部を第1接点部よりも固定接点部が設けられたハウジングに向けて鋭角に延出させたことから、第2接点部が鈍角に延出する場合と比べてカード挿入方向側に第2接点部の摺動領域を確保することができるので、ハウジング内の限られたスペースを有効に活用し、適切にカードの挿着を検出することが可能となる。また、ハウジングにおける第1面と第2面との間に段差を設けたことから、簡単な構成により第1固定接点部が形成される第1面よりも駆動部材の回動方向の外側の位置に第2固定接点を精度良く配置することが可能となる。
【0010】
特に、上記カード用コネクタにおいて、前記固定接点部は、前記ハウジングの側壁に設けられていることが好ましい。この場合には、固定接点部がハウジングの側壁に設けられていることから、コネクタにおける厚さ方向の構成を簡素化することができるので、コネクタの厚さ寸法を薄型化することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第2固定接点部は、第1固定接点部よりもカード挿入方向の奥側に配置されると共に、第1固定接点部が形成される平面よりも駆動部材の回動方向の外側の位置に配置されることから、可動接点部材の第2接点部を第1接点部よりも鋭角に固定接点部側に延出させることにより、第2接点部が鈍角に延出する場合と比べてカード挿入方向側に第2接点部の摺動領域を確保することができるので、ハウジング内の限られたスペースを有効に活用し、適切にカードの挿着を検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係るカード用コネクタ(以下、「コネクタ」という)は、2種類のカードを交差する方向で同時に装着するものである。例えば、本実施の形態に係るコネクタは、携帯電話機等に搭載され、マイクロSDカードなどのメモリカード、並びに、SIMカードなどの契約者情報を記録したICカードを装着するものである。特に、本発明に係るコネクタは、このように装着される2種類のカードのうち、一方のカード(後述する第1カードA)の挿着を適切に検出するものである。なお、本実施の形態に係るコネクタで挿着が検出されるカードの種類については特に限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0013】
図1及び図2は、本実施の形態に係るコネクタ1と、コネクタ1に装着される第1及び第2カードとを示す斜視図である。図1においては、第1及び第2カードが装着される前の状態を示し、図2においては、第1及び第2カードが装着された後の状態を示している。なお、以下においては、適宜、図1に示す紙面上方側を「コネクタ1の前方側」又は単に「前方側」と呼び、同図に示す紙面下方側を「コネクタ1の後方側」又は単に「後方側」と呼ぶものとする。また、図1に示す紙面右方側を「コネクタ1の右方側」又は単に「右方側」と呼び、同図に示す紙面左方側を「コネクタ1の左方側」又は単に「左方側」と呼ぶものとする。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態に係るコネクタ1は、第1カードA及び第2カードBが装着されるハウジング2と、ハウジング2の上面に取り付けられる第1カバー部材3と、ハウジング2の下面に取り付けられる第2カバー部材4とを備えて構成される。これらの第1カバー部材3及び第2カバー部材4が取り付けられた状態において、コネクタ1には、後方側に開口した第1カード挿入口5が形成される一方、左方側に開口した第2カード挿入口6が形成されている。なお、第1カード挿入口5は、コネクタ1の後面における上方側部分に形成される一方、第2カード挿入口6は、コネクタ1の左方側側面における下方側部分に形成されている。
【0015】
後述するように、ハウジング2における第1カード挿入口5の前方側内部には、第1カードAが装着される装着部としての第1装着部7が形成され、第2カード挿入口6の右方側内部には、第2カードBが装着される第2装着部8が形成される。第1カードAは、図2に示すように、第1カード挿入口5から第1装着部7に対してコネクタ1の前方側に向けて装着される。一方、第2カードBは、図2に示すように、第2カード挿入口6から第2装着部8に対してコネクタ1の右方側に向けて装着される。このように装着された状態において、コネクタ1の内部では第1カードAと第2カードBとが上下に重なって配置されている。
【0016】
この場合において、第1カードAは、図1に示すように、接触パッドA1を下面に配置した状態でコネクタ1に装着され、後述する第1装着部7の下方領域に設けられた第1コンタクト端子14が接触パッドA1に接触するものとなっている。一方、第2カードBは、図1に示すように、接触パッドB1を上面に配置した状態でコネクタ1に装着され、後述する第2装着部8の上方領域に設けられた第2コンタクト端子15が接触パッドB1に接触するものとなっている。
【0017】
図3は、本実施の形態に係るコネクタ1の分解斜視図である。図4及び図5は、本実施の形態に係るコネクタ1のハウジング2の斜視図及び上面図である。なお、図3〜図5においては、いずれも第1カードA及び第2カードBが装着されていない状態(初期状態)について示している。
【0018】
第1カバー部材3及び第2カバー部材4は、例えば、金属製の板材料に打ち抜き加工を施すと共に、曲げ加工を施すことにより形成される。図3に示すように、第1カバー部材3は、それぞれ前方側及び後方側の端面から下方側に延出する一対の係合部31、並びに、側方側の端面から下方側に延出する一対の係合部32を備え、これらの係合部31、係合部32で後述するハウジング2の係合片101、111、121及び131を収容することでハウジング2に固定される。一方、第2カバー部材4は、それぞれ前方側及び後方側の端面から上方側に延出する一対の係合部41、並びに、右方側の端面から上方側に延出する一対の係合部42を備え、これらの係合部41、係合部42で後述するハウジング2の係合片102、112及び122を収容することでハウジング2に固定される。これらの第1カバー部材3及び第2カバー部材4は、それぞれ後述する第1装着部7及び第2装着部8を覆うようにハウジング2に固定される。
【0019】
第1カバー部材3の上面における右方側の所定位置には、後述する係合ピン18を下方側に付勢する付勢片33と、後述するスライダ16が所定位置まで移動した場合にその上面に接触して荷重を与える付勢片34とが形成されている。また、第1カバー部材3の上面における左方側の所定位置には、ハウジング2の所定箇所に接触して第1カバー部材3の位置決めを行う位置決め部35が形成されている。なお、これらの付勢片33及び付勢片34、並びに、位置決め部35は、第1カバー部材3の一部を切り起こして形成されている。
【0020】
第1カバー部材3の右方側の端面の所定位置には、下方側に延出する一対の接続部材36が設けられている。これらの接続部材36は、第2カバー部材4の右方側の側面の所定位置に上方側に延出して設けられた接続部材43に対応する位置に配置され、第1カバー部材3と第2カバー部材4とを電気的に接続するものである。第2カバー部材4は、グランド接続されており、この第2カバー部材4に対して第1カバー部材3を電気的に接続することにより、外来ノイズに対する耐性を確保するものとなっている。
【0021】
ハウジング2は、合成樹脂材料などの絶縁材料を成型して形成され、図3に示すように、概して偏平な形状を有している。ハウジング2には、その上面に第1カードAが装着される第1装着部7が形成される一方、その下面に第2カードBが装着される第2装着部8が形成されている(第2装着部8については図3に不図示)。第1装着部7と第2装着部8との間には、これらを仕切る仕切り壁9が配設されている。また、ハウジング2には、その前面を構成する前壁部10と、その後面を構成する後壁部11と、その右方側の側面を構成する側壁部12と、その左方側の側面を構成する側壁部13とが設けられている。なお、後壁部11は第1側面を構成し、左方側の側壁部13は第2側面を構成し、前壁部10は第3側面を構成し、右方側の側壁部12は第4側面を構成する。
【0022】
これらの前壁部10の所定位置には、上述した第1カバー部材3に設けられた係合部31と係合する係合片101と、第2カバー部材4に設けられた係合部41と係合する係合片102とが設けられている(図3に不図示、図5参照)。同様に、後壁部11の所定位置には、第1カバー部材3の係合部31と係合する係合片111と、第2カバー部材4の係合部41と係合する係合片112とが設けられている。また、側壁部12の所定位置には、第1カバー部材3の係合部32と係合する係合片121と、第2カバー部材4の係合部42と係合する係合片122とが設けられている。同様に、側壁部13の所定位置には、第1カバー部材3の係合部32と係合する係合片131が設けられている(図3に不図示、図5参照)。
【0023】
図4及び図5に示すように、仕切り壁9の前方側端部近傍には、第1カードA用の複数の第1コンタクト端子14がコネクタ1の左右方向に並べて設けられている。これらの第1コンタクト端子14は、仕切り壁9に対向して配置されている。また、これらの第1コンタクト端子14の外部接続部141は、コネクタ1の前壁部10から前方に導出されている。例えば、これらの第1コンタクト端子14は、成型されたハウジング2に対して上方側から取り付けられる。
【0024】
仕切り壁9の所定位置には、コネクタ1の前後方向に並べて複数の開口部91、92が形成されている。これらの開口部91、92に対応する位置に第2カードB用の複数の第2コンタクト端子15が設けられている。これらの第2コンタクト端子15は、仕切り壁9に対向して配置されている。また、これらの第2コンタクト端子15の外部接続部151は、コネクタ1の左方側の側壁部13から左方側に導出されている。例えば、これらの第2コンタクト端子15は、ハウジング2に対してインサート成形される。これらの第2コンタクト端子15のうち、最も前方側に配置される第2コンタクト端子15は、図5に示すように、開口部91、92において、第1コンタクト端子14と直接的に対向するものとなっている。
【0025】
ハウジング2の内部における右方側の側壁部12の近傍には、第1カードAの挿入及び排出動作に伴ってコネクタ1の前後方向にスライド移動可能なスライドダ16と、このスライダ16を第1カードAの排出方向側に付勢する付勢ばね17と、スライダ16の上面に形成されたカム溝161と係合し、付勢ばね17の付勢力に抗してスライダ16を所定の位置に保持する係合ピン18とが配設されている。
【0026】
スライダ16は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成型して形成され、その後方側部分の上面にカム溝161が形成されると共に、コネクタ1に挿入される第1カードAの側面に形成された凹部A2(図1参照)と係合する突出部162aを有する板ばね162が埋め込まれている。カム溝161は、図5に示すように、概してハート形状を有するハート型カム161aと、このハート型カム161aの左方側に配置される第1ガイド溝161b、右方側に配置される第2ガイド溝161c、並びに、第1及び第2ガイド溝161b、161cに連結され、係合ピン18の一端を係止する係止部を有する凹み溝161dで構成される。なお、カム溝161には、係合ピン18を一定方向に案内すべく、その内底面に所定の段差部が形成されている。
【0027】
係合ピン18は、前方側の一端がこのように構成されたカム溝161に係合する一方、後方側の一端がハウジング2の後壁部11に形成された保持穴113に回動自在に保持されている。係合ピン18の前方側の一端は、コネクタ1に対する第1カードAの挿入動作に伴って第1ガイド溝161b、凹み溝161d及び第2ガイド溝161cに沿って案内され、コネクタ1に装着された状態においては、凹み溝161dの係止部に係止されるものとなっている。なお、係合ピン18には、上述した第1カバー部材3の付勢片33による付勢力が加わっており、その付勢力によりカム溝161側に押し付けられた状態とされている。
【0028】
ハウジング2の内部における左方側の側壁部13の近傍には、第1カードAの挿着状態を検出する検出手段としてのカード検出スイッチ(以下、単に「検出スイッチ」という)19が配設されている。検出スイッチ19は、第1カードAと接触して回動する駆動部材としてのレバー191と、このレバー191に保持される可動接点ばね192と、側壁部13の前方側端部近傍に設けられ、可動接点ばね192が離接する第1固定接点193a、第2固定接点193bとから構成される。レバー191は、その後方側(第1カード挿入口側)の端部近傍においてハウジング2に設けられた軸部21に回動可能に軸支されており、その一部を第1カードAの挿入経路上に突出させている。
【0029】
ここで、本実施の形態に係るコネクタ1が有する検出スイッチ19の構成について説明する。図6は、本実施の形態に係るコネクタ1が有する検出スイッチ19の周辺の拡大図である。なお、図6においては、第1カードAがコネクタ1に挿入されていない状態について示している。図7は、本実施の形態に係るコネクタ1が有する検出スイッチ19のレバー191及び可動接点ばね192の構成を説明するための図である。なお、図7(a)及び(b)は、それぞれレバー191及び可動接点ばね192の上面図及び下面図を示し、図7(c)は、図7(a)の左方側から見たレバー191及び可動接点ばね192の側面図を示している。
【0030】
レバー191は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成型して形成され、図7(a)に示すように、ハウジング2の軸部21を収容する開口部191aと、第1カードAの前方側端部近傍と当接する当接部191bとを有している。また、レバー191は、図7(b)に示すように、可動接点ばね192を保持する軸部191cと、この軸部191cに保持された可動接点ばね192を収納する収納部191dとを有している。さらに、レバー191は、コネクタ1の前方側端部に、ハウジング2の内壁と当接してレバー191の一定位置以上の回動を規制する規制片191eを有している。図6に示すように、レバー191は、軸部21を開口部191aに収容した状態で可動接点ばね192の付勢力により第1カードAの挿入経路側に付勢された状態で取り付けられ、当接部191bをその挿入経路上に突出させている。この場合におけるレバー191の位置決めは規制片191eにより行われる。
【0031】
可動接点ばね192は、図7(b)に示すように、捻りコイルばねで構成され、レバー191の軸部191cに保持される捻れ部192aと、この捻れ部192aからコネクタ1の後方側に延出する第1接点部192bと、捻れ部192aからコネクタ1の前方側に延出する第2接点部192cとを有している。なお、第1接点部192b及び第2接点部192cは、略同一の長さを有すると共に、それらの先端部近傍において折り曲げられており、これらの折曲部でそれぞれ第1固定接点部193a、第2固定接点部193bに接触するものとなっている。
【0032】
また、レバー191に保持された状態において、第2接点部192cは、図7(a)、(b)に示すように、第1接点部192bよりもハウジング2の側壁部13側に向かって鋭角に延出し、その折曲部が第1接点部192bの折曲部よりもレバー191から離れた位置(コネクタ1の左方側の位置)に配置されるように構成されている(図7(c)参照)。すなわち、第2接点部192cの折曲部は、第1接点部192bの折曲部よりも遠い側壁部13の内壁面まで到達にできるように構成されている。
【0033】
ここで、これらの可動接点ばね192の第1接点部192b、第2接点部192cが接触するハウジング2の側壁部13の構成について説明する。図6に示すように、側壁部13の内壁面には、第1面132aと、第2面132bと、これらを接続する傾斜面132cとが設けられている。第2面132bは、第1面132aよりもコネクタ1の前方側(奥側)に配置されると共に、第1面132aよりもコネクタ1の外側(左方側)の位置に配置されている。傾斜面132cは、コネクタ1の前方側に向けて、コネクタ1の外側(左方側)に傾斜し、第1面132aと第2面132bとを接続している。すなわち、側壁部13の内壁面には、前方側に向けて内部空間が広がる段差が形成されている。このように側壁部13に配置された第1面132aに第1固定接点部193aが設けられる一方、第2面132bに第2固定接点193bが設けられている。
【0034】
なお、軸部21は、側壁部13における第1固定接点部193aから一定距離空けて後方側の位置に形成された凹部133に一部が配置されるように設けられている。レバー191は、図6に示すように、開口部191aでこの軸部21を収容するように取り付けられる。この場合において、可動接点ばね192における第1接点部192bは、第1固定接点193aに常時接触するように配置されている。一方、第2接点部192cは、第1カードAが挿入されていない状態において、第2固定接点部193bよりも後方側の第2面132bに接触するように配置されている。このとき、第2接点部192cは、第2固定接点部193bに接触していない状態となっている。
【0035】
上述したように、可動接点ばね192において、第2接点部192cは、第1接点部192bよりもハウジング2の側壁部13側に向かって鋭角に延出し、その折曲部が第1接点部192bよりもコネクタ1の左方側の位置に配置されている。しかしながら、第2接点部192cは、第1面132aよりも側方側に内部空間が広く設けられた第2面132bに対応する位置に配置されていることから、可動接点ばね192がこのような構成を有する場合においても、適切にハウジング2の内部に配置できるものとなっている。
【0036】
次に、本実施の形態に係るコネクタ1に対して第1カードAが装着された状態について説明する。図8は、本実施の形態に係るコネクタ1のハウジング2の上面図である。図8においては、コネクタ1に第1カードAが装着された状態(ロック状態)について示している。なお、図8においては、第1カバー部材3を省略している。
【0037】
コネクタ1に第1カードAが挿入されると、その過程で第1カードAの右方側の前端部がスライダ16に当接すると共に、スライダ16に埋め込まれた板ばね162の突出部162aが第1カードAの凹部A2に係合した状態となり、スライダ16が第1カードAと一緒にスライド移動するものとなる。そして、所定位置まで第1カードAが押し込まれると、係合ピン18は、スライダ16のスライド移動に伴い、そのカム溝161内を案内され、その前方側端部が凹み溝161dの係止部に係止された状態(ロック状態)とされる。
【0038】
また、第1カードAが挿入される過程でその左方側の前端部は、レバー191の当接部191bに当接し、レバー191の前方側端部を、軸部21を回動支点として反時計回転方向に回動させる。この場合、レバー191の前方側部分は、可動接点ばね192の付勢力に抗してハウジング2の側壁部13に接近していく。この場合において、可動接点ばね192の第1接点部192b及び第2接点部192cは、側壁部13に押し付けられ、互いに離間するように押し広げられていくこととなる。そして、第1接点部192bが第1固定接点部193aに接触する一方、第2接点部192cが第2固定接点部193bに接触した状態となると、検出スイッチ19においては、コネクタ1に対する第1カードAの挿着を検出するものとなっている。
【0039】
ここで、本実施の形態に係るコネクタ1に対して第1カードAが装着された場合における検出スイッチ19の状態について説明する。図9は、本実施の形態に係るコネクタ1が有する検出スイッチ19の周辺の拡大図である。なお、図9においては、第1カードAがコネクタ1に装着された状態について示している。
【0040】
第1カードAの挿入に伴ってレバー191が回動すると、上述したように、検出スイッチ19においては、可動接点ばね192の第1接点部192b及び第2接点部192cが互いに離間するように押し広げられた状態となる。この場合、可動接点ばね192においては、図9に示すように、第1接点部192bが第1固定接点193a上を僅かに後方側に摺動する一方、第2接点部192cが側壁部13の第2固定接点部193bの後方側の内壁面から第2固定接点部193bに到達するまで前方側に大きく摺動するものとなっている。これは、第2接点部192cを、第1接点部192bよりもハウジング2の側壁部13側に向かって鋭角に延出させ、レバー191の回動に伴って発生する駆動力を第1接点部192bよりも受け易くしたためである。
【0041】
本実施の形態に係るコネクタ1においては、このように第2接点部192cを第1接点部192bよりもハウジング2の側壁部13側に向かって鋭角に延出させ、その折曲部を第1接点部192bの折曲部よりも外側(左方側)に配置する一方、ハウジング2の側壁部13の内壁面に段差を設けて第2接点部192cを収容している。そして、第1カードAの挿入に伴ってレバー191が回動する際、第1接点部192bを僅かに摺動させる一方、第2接点部192cを大きく摺動させることにより、レバー191の回動量に応じた第2接点部192cの摺動量を増加させている。これにより、第2接点部192cの摺動領域に対応するための前壁部10までの距離を短縮することができるので、ハウジング2における前後方向の寸法を小さくすることが可能となる。
【0042】
ここで、本実施の形態に係るコネクタ1で得られる効果を説明するために、検出スイッチ19の周辺の構造を一部変形した形態のコネクタ100について説明する。図10〜図13は、本実施の形態に係るコネクタ1が有する検出スイッチ19の周辺の一部を変形したコネクタ100の上面図である。なお、図10〜図13においては、第1カバー部材3を省略している。
【0043】
図10〜図13においては、可動接点ばね192が接触する側壁部13に段差を設けていない態様について示している。特に、図10及び図11においては、本実施の形態に係るコネクタ1が有するハウジング2の前後方向の寸法L1と同一寸法のハウジング2を有する場合について示している(図5参照)。この場合において、軸部21及びレバー191の位置は、本実施の形態に係るコネクタ1と同一である。一方、図12及び図13においては、本実施の形態に係るコネクタ1が有するハウジング2の前後方向の寸法L1よりも前後方向に長い寸法L2のハウジング2を有する場合について示している(図5参照)。
【0044】
なお、図10〜図13に示すコネクタ100においては、側壁部13に段差が設けられていないため、可動接点ばね192における第1接点部192bと、第2接点部192cとが略同一の角度をもって側壁部13側に延出する点で本実施の形態に係るコネクタ1と相違する。また、ハウジング2の前後方向の寸法の相違から、図10に示すコネクタ100においては、可動接点ばね192における第1接点部192bが第1カードAの挿入に伴って第1固定接点部193aと離接する構成を有する点で本実施の形態に係るコネクタ1と相違する。
【0045】
図10に示すように、ハウジング2が本実施の形態に係るコネクタ1が有するハウジング2の前後方向の寸法L1と同一寸法を有するコネクタ100においては、可動接点ばね192における第1接点部192bと、第2接点部192cとが略同一の角度をもって側壁部13側に延出することから、当該第2接点部192cが、本実施の形態に係るコネクタ1の第2接点部192cよりもコネクタ1の前方側の位置で側壁部13の内壁に接触している。
【0046】
この場合、本実施の形態に係るコネクタ1に比べ、第2接点部192cの摺動領域を確保することができないことから、レバー191が第1カードAの挿入に伴って回動すると、第2接点部192cは、図11に示すように、ハウジング2の前壁部10の内壁面に接触する。この場合には、第2接点部192cが破損する事態を引き起こし、検出スイッチ19において適切に第1カードAの挿着を検出することができなくなる。なお、図11においては、説明の便宜上、前壁部10の内壁面に接触した第2接点部192cの一部を省略している。
【0047】
一方、図12に示すように、ハウジング2が本実施の形態に係るコネクタ1が有するハウジング2の前後方向の寸法L1よりも長い寸法L2を有するコネクタ100においては、第1カードAの挿入に応じてレバー191が回動する場合においても、図13に示すように、第2接点部192cと、前壁部10の内壁面とを接触させることなく可動接点ばね192を押し広げることが可能となる。しかしながら、この場合には、ハウジング2の小型化を図ることができず、結果としてコネクタ1を小型化することが困難となる。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態に係るコネクタ1においては、ハウジング2の側壁部13において、第2固定接点部193bを、第1固定接点部193aよりも前方側(カード挿入方向の奥側)に配置すると共に、第1固定接点部193aが形成される平面(第1面132a)よりもレバー191の回動方向の外側の位置に配置する一方、可動接点ばね192の第2接点部192cを第1接点部192bよりも鋭角に側壁部13側に延出させている。これにより、第2接点部192cが鈍角に延出する場合(例えば、図10、図12に示す場合)と比べてカード挿入方向側に第2接点部192cの摺動領域を確保することができるので、ハウジング2内の限られたスペースを有効に活用し、適切に第1カードAの挿着を検出することが可能となる。
【0049】
特に、本実施の形態に係るコネクタ1においては、固定接点部193をハウジング2に設け、第1固定接点部193aが設けられた第1面132aと、第2固定接点部193bが設けられた第2面132bとの間に段差を設けていることから、簡単な構成により第1固定接点部193aが形成される第1面132aよりもレバー191の回動方向の外側の位置に第2固定接点193bを精度良く配置することが可能となる。
【0050】
また、本実施の形態に係るコネクタ1においては、固定接点部193をハウジング2の側壁部13に設けられていることから、コネクタ1における厚さ方向の構成を簡素化することができるので、コネクタ1の厚さ寸法を薄型化することが可能となる。
【0051】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0052】
例えば、上記実施の形態においては、固定接点部193をハウジング2の側壁部13に設ける場合について説明しているが、固定接点部193が設けられるハウジング2の位置については適宜変更が可能である。例えば、ハウジング2の底面部に段差を設け、その第1面に第1固定接点部193aを設ける一方、第2面に第2固定接点部193bを設けるようにしても良い。このようにハウジング2に固定接点部193を設けた場合においては、コネクタ1の厚さ寸法の薄型化を除き、上記実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施の形態に係るコネクタと、コネクタに装着される第1及び第2カードとを示す斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係るコネクタと、コネクタに装着される第1及び第2カードとを示す斜視図である。
【図3】上記実施の形態に係るコネクタの分解斜視図である。
【図4】上記実施の形態に係るコネクタのハウジングの斜視図である。
【図5】上記実施の形態に係るコネクタのハウジングの上面図である。
【図6】上記実施の形態に係るコネクタが有する検出スイッチの周辺の拡大図である。
【図7】上記実施の形態に係るコネクタが有する検出スイッチのレバー及び可動接点ばねの構成を説明するための図である。
【図8】上記実施の形態に係るコネクタのハウジングの上面図である。
【図9】上記実施の形態に係るコネクタが有する検出スイッチの周辺の拡大図である。
【図10】上記実施の形態に係るコネクタが有する検出スイッチの周辺の一部を変形したコネクタの上面図である。
【図11】上記実施の形態に係るコネクタが有する検出スイッチの周辺の一部を変形したコネクタの上面図である。
【図12】上記実施の形態に係るコネクタが有する検出スイッチの周辺の一部を変形したコネクタの上面図である。
【図13】上記実施の形態に係るコネクタが有する検出スイッチの周辺の一部を変形したコネクタの上面図である。
【符号の説明】
【0054】
A 第1カード
A1 接触パッド
B 第2カード
B1 接触パッド
1、100 カード用コネクタ(コネクタ)
2 ハウジング
21 軸部
3 第1カバー部材
31 付勢部
32 開口部
33 枠形状部
33a 係合部
36 接続部材
4 第2カバー部材
43 接続部材
5 第1カード挿入口
6 第2カード挿入口
7 第1装着部
8 第2装着部
9 仕切り壁
91、92 開口部
10 前壁部
11 後壁部
12、13 側壁部
132a 第1面
132b 第2面
132c 傾斜面
14 第1コンタクト端子
141 外部接続部
15 第2コンタクト端子
151 外部接続部
152 接点部
153 凹部
16 スライダ
161 カム溝
161a ハート形カム
161b 第1ガイド溝
161c 第2ガイド溝
161d 凹み溝
17 付勢ばね
18 係合ピン
19 検出スイッチ(カード検出スイッチ)
191 レバー
191a 開口部
191b 当接部
191c 軸部
191d 収納部
191e 規制片
192 可動接点ばね
192a 捻れ部
192b 第1接点部
192c 第2接点部
193 固定接点部
193a 第1固定接点部
193b 第2固定接点部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードを装着可能な装着部を有するハウジングと、前記装着部に対する前記カードの挿着を検出する検出手段とを備え、
前記検出手段は、第1固定接点部と第2固定接点部とからなる固定接点部と、前記第1固定接点部と常時接触する第1接点部と、前記カードの挿入に伴い駆動するときに前記第2固定接点部と接触する第2接点部とからなる可動接点部材と、前記可動接点部材が設けられ、前記カードの挿入口側で軸支されて前記カードとの当接により回動して前記可動接点部材を回動させる駆動部材とからなり、
前記第2固定接点部は、前記第1固定接点部よりも前記カード挿入方向の奥側に配置されると共に、前記第1固定接点部が形成される平面よりも前記駆動部材の回動方向の外側の位置に配置されることを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
前記固定接点部は、前記ハウジングに設けられ、前記第1固定接点部が設けられた前記ハウジングの第1面と前記第2固定接点部が設けられた第2面との間には段差が設けられ、
前記可動接点部材は、捻りコイルばねからなり、前記第2接点部が前記第1接点部よりも前記固定接点部が設けられた前記ハウジングに向けて鋭角に延出することを特徴とする請求項1記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記固定接点部は、前記ハウジングの側壁に設けられていることを特徴とする請求項2記載のカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−277632(P2009−277632A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130754(P2008−130754)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】