説明

カーボンナノチューブの作製装置および作製方法

【課題】 カーボンナノチューブ(CNT)を形成する基板としてガラス製の基板を用いることができ、煤などの不純物が混在せず、広い面積にわたって高い配向性を有するCNTを形成することができるCNTの作製装置および作製方法を提供する。
【解決手段】 本発明では、CNTを反応チャンバー2内で基板S上に形成させるCNTの作製装置1において、前記基板Sを保持する保持手段53と、この保持手段53に保持された前記基板Sに対面して設けたフィルタ6と、このフィルタ6を介して前記基板Sに対向して設けた励起手段52と、この励起手段52により高周波電力を印加して励起させる炭化水素ガスCGを前記反応チャンバー2内に供給する炭化水素ガス供給手段51と、を備え、前記フィルタ6は、前記CNTの形成に適する励起された炭化水素ガスCGを透過させることが可能であるカーボンナノチューブの作製装置1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを作製するための製造装置、およびカーボンナノチューブを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、炭素原子がsp2結合した六員環(六方格子)のネットワークを有する黒鉛シートが円筒状に閉じた構造を有する、直径数nm〜数十nmのチューブ状の炭素素材である。このカーボンナノチューブは、非常に安定した化学構造を有し、カーボンナノチューブを構成する六方格子の螺旋度(カイラリティ;chirality)によって良導体にも半導体にもなるなど、様々な特性を有することが確認されている。
このカーボンナノチューブは、細いというだけではなく、電気的特性、機械的特性、分子吸着性、熱伝達性に優れており、これらの特徴を活かして、現在では、フラットパネルディスプレイの電界放出型ディスプレイ(FED;Feild Emission Display)用のエミッタ(電子銃)として利用する研究や、電子デバイス、走査プローブ顕微鏡の探針、水素ガス吸蔵、あるいは医療分野での薬の体内輸送などに用いるナノカプセルや注射針などへの応用研究が盛んに行われている。
なお、前記したカーボンナノチューブを用いた応用研究の中でも、実用化が近いとされる電界放出型ディスプレイには、広い面積をもったガラス製の基板上に高い配向性を有するカーボンナノチューブを製造する技術の確立が必要である。
【0003】
このように応用研究がすすむとともに、カーボンナノチューブを大量に製造する方法の確立が強く望まれるようになった。かかる要望に応えるべく、カーボンナノチューブを大量に生産し得る製造方法として、アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学気相蒸着(CVD;Chemical Vapor Deposition)法やこれらに基づく種々の製造方法が開発されている。なお、レーザーアブレーション法やCVD法によって製造されたカーボンナノチューブは高い配向性を有することが知られている。
【0004】
アーク放電法(非特許文献1)とは、二つのグラファイト棒を数mmまで近づけて設置し、それぞれを強い直流電源に接続することで陰極と陽極の間で激しいアーク放電を起こさせて炭素クラスターを生じさせた後に室温まで冷却すると、陰極に、フラーレンや無定形炭素を含む煤などとともにカーボンナノチューブを製造する方法である(収率約30質量%)。なお、金属触媒がないときは多層カーボンナノチューブを製造することができ、コバルトやニッケル、鉄などの金属触媒をグラファイト棒に混ぜたコンポジットを用いたときは単層カーボンナノチューブを製造し得ることも知られている(非特許文献2および非特許文献3参照)。
【0005】
また、レーザーアブレーション法(非特許文献4参照)とは、炭素棒または炭素/金属コンポジット棒にパルスレーザーを照射して高温炭素蒸気を発生させ(レーザーアブレーション)、銅製の収集装置内でカーボンナノチューブを成長させる製造方法である(収率約70質量%)。この方法で製造したカーボンナノチューブは、直径1.2nmを中心にチューブ径分布が狭いのが特徴であり、レーザー光強度、希ガス圧力、電気炉温度などいくつかの物理パラメータを変更することによってカーボンナノチューブ物質などの制御を容易に行うことができる。
【0006】
また、CVD法とは、金属やガラスなどの基板を反応チャンバー内に入れ、基板を600〜1300℃に加熱しながら炭素の供給源となるメタンなどの炭化水素ガスを励起してプラズマとすることでこの炭化水素ガスを分解して炭素原子とする。そして、分解した炭素原子を基板に供給して基板上で再結合させることでカーボンナノチューブを析出(成長)させ、所望のカーボンナノチューブを製造する方法である(収率70質量%以上)。このようなCVD法としては、熱CVD法(特許文献1参照)、電界印加型プラズマCVD法(マイクロ波CVD法;特許文献2参照)、電子サイクロトロン共鳴プラズマを用いるCVD法(ECRプラズマCVD法;特許文献3参照)が知られている。
【0007】
前記熱CVD法の反応温度は700〜1300℃であり、前記マイクロ波CVD法の反応温度は800〜900℃であり、前記ECRプラズマCVD法の反応温度は500〜850℃である。このように、いずれのCVD法も前記アーク放電法やレーザーアブレーション法と比較して低い反応温度でカーボンナノチューブを製造することが可能である。
【特許文献1】特開2002−88591号公報
【特許文献2】特開2000−57934号公報
【特許文献3】特開2002−69643号公報
【非特許文献1】"Large-scale synthesis of carbon nanotubes", T W Ebbesen and P M Ajayan Nature, vol.358, 220 (1992)
【非特許文献2】"Single-shell carbon nanotubes of 1-nm diameter", S Iijima and T Ichihashi Nature, 363, 603 (1993)
【非特許文献3】"Cobalt-catalysed growth of carbon nanotubes with single-atomic-layer walls", D S Bethune, C H Kiang, M S DeVries, G Gorman, R Savoy and R Beyers, Nature, 363, 605 (1993)
【非特許文献4】"Crystalline Ropes of Metallic Carbon Nanotubes", Andreas Thess, Roland Lee, Pavel Nikolaev, Hongjie Dai, Pierre Petit, Jerome Robert, Chunhui Xu, Young Hee Lee, Seong Gon Kim, Andrew G. Rinzler, Daniel T. Colbert, Gustavo Scuseria, David Tomanek, John E. Fischer, Richard E. Smalley Science, 273, 483 (1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、アーク放電法でカーボンナノチューブを製造すると、無定形炭素やフラーレンを含む不純物となる煤が多く含まれてしまうために、反応チャンバー内の反応生成物を採取して精製することが必要になることに加え、収率が低く、また、配向性に乏しく、大量の生産には不向きであった。また、炭素棒と炭素棒とを近接させて反応させるという関係から、基板(ガラス製の基板)上に直接カーボンナノチューブを形成させることが難しかった。
【0009】
レーザーアブレーション法は、かかる方法を用いてカーボンナノチューブを製造する製造装置の構造が複雑であり、生産コストも高い。また、カーボンナノチューブを製造するための反応温度が1000℃以上と高いために、ガラス製の基板などに直接カーボンナノチューブを配置することは難しかった。
【0010】
熱CVD法では、反応温度が高すぎてしまうためにカーボンナノチューブを形成する基板としてガラス製の基板を用いることができない。
マイクロ波CVD法では、ガラス製の基板を用いるにはまだ反応温度が高すぎること、また、アーク放電によってカーボンナノチューブを作製するため励起フィールドが狭く、炭化水素ガスを励起してそのガラス製の基板上にカーボンナノチューブを形成することのできる面積は4cm2程度であった。
また、ECRプラズマCVD法では、反応温度が低いのでカーボンナノチューブを形成する基板としてガラス製の基板を用いることが可能であるものの、磁場をかけるための電子サイクロトロンを設置する必要があり、容易に大量生産を行うことは難しかった。また、電子サイクロトロンを設置するには設備投資費用がかかりすぎてしまうためにカーボンナノチューブ作製のコストが高くなってしまう。
【0011】
さらに、これら従来のカーボンナノチューブの製造方法では、煤などの不純物が混在した状態のカーボンナノチューブが形成されるものであったため、カーボンナノチューブの作製後に精製工程を必要とした。
【0012】
そこで本発明は、カーボンナノチューブを形成する基板としてガラス製の基板を用いることができ、煤などの不純物がほとんど付着・混在せず、広い面積にわたって高い配向性を有するカーボンナノチューブを作製することができるカーボンナノチューブの作製装置とカーボンナノチューブの作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、カーボンナノチューブを反応チャンバー内で基板上に形成させるカーボンナノチューブの作製装置において、前記基板を保持する保持手段と、この保持手段に保持された前記基板に対面して設けたフィルタと、このフィルタを介して前記基板に対向して設けた励起手段と、この励起手段により高周波電力を印加して励起させる炭化水素ガスを前記反応チャンバー内に供給する炭化水素ガス供給手段と、を備え、前記フィルタは、炭化水素ガスを透過させるカーボンナノチューブの作製装置として構成したものである。
【0014】
本発明のカーボンナノチューブの作製装置では、炭化水素ガス供給手段によって供給された炭化水素ガスを、励起手段によって励起した状態の炭化水素ガスとする。そして、励起手段によって励起された炭化水素ガスは、フィルタを介して、これと対面して保持手段に保持されている基板に供給される。フィルタは炭化水素ガスなどの気体を透過することができるが、励起された炭化水素ガスがフィルタを通過すると、励起された炭化水素ガスのうち、煤を形成しやすい活性種を減少または消滅させると考えられる。したがって、カーボンナノチューブの形成に適する活性種の濃度を高くすることができ、これを基板に接触させることにより、煤の混在の少ないカーボンナノチューブを形成することができると考えられる。また、基板と励起フィールドとの間にフィルタを設けたことにより、高周波電力で形成された励起フィールドは基板まで到達することが避けられる。
そして、本発明のカーボンナノチューブの作製装置では、カーボンナノチューブ形成手段で用いる励起手段として高周波電力を用い、さらに、原料として気体である炭化水素ガスを用いているので、広い領域で励起フィールドを発生させることが可能となる。その結果、励起した炭化水素ガスを広い面積の基板上に供給することができることとなり、広い面積のカーボンナノチューブを作製することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、前記フィルタが、通気性構造体であるカーボンナノチューブの作製装置として構成したものである。
また、請求項3に記載の発明は、前記フィルタが、メッシュ体であるカーボンナノチューブの作製装置として構成したものである。
【0016】
このように、本発明のカーボンナノチューブの作製装置においては、フィルタを好ましくは通気性構造体、特にメッシュ体としたことにより、効果的かつ効率的にカーボンナノチューブの形成に適する励起された炭化水素ガスを透過させて基板に接触させることが可能になった。
【0017】
請求項4に記載の発明は、フィルタを2枚以上設け、かつ、これらを基板と平行に配置したカーボンナノチューブの作製装置として構成したものである。
【0018】
このように、2枚以上のフィルタを平行に配置して用いると、カーボンナノチューブの形成に適した活性種と煤を形成しやすい活性種の選択性を高め、煤を形成しやすい活性種の透過を防ぐことが可能となるので、高純度のカーボンナノチューブを作製することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、孔径の異なる2枚以上のフィルタを基板と平行に配置し、かつ、基板側から順に孔径の小さいフィルタを配置したカーボンナノチューブの作製装置として構成したものである。
【0020】
このような構成とすれば、カーボンナノチューブの形成に適した活性種と煤を形成しやすい活性種の選択性をより高めることが可能となり、煤を形成しやすい活性種の透過を防ぐことができるので、高純度のカーボンナノチューブを作製することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、フィルタが、反応チャンバーと電気的に接続されているカーボンナノチューブの作製装置として構成したものである。
【0022】
このような構成とすれば、フィルタと反応チャンバーの電位が等しくなる。したがって、カーボンナノチューブの形成に適した活性種と煤を形成しやすい活性種を選択し、後者を減少させるフィルタの選択能が向上するので、高純度のカーボンナノチューブを作製することができる。すなわち、カーボンナノチューブの表面における煤の形成を減少させることができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、フィルタに電圧を印加する電圧印加装置を備えたカーボンナノチューブの作製装置として構成したものである。
【0024】
このような構成とすれば、フィルタに電界が発生し、さらに効率良く煤を形成しやすい活性種を減少または消滅させることができるようになり、さらに高純度のカーボンナノチューブを作製することが可能となる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、基板と、この基板に直近のフィルタとの間隔を、0mmを超え30mm以下で設けたカーボンナノチューブの作製装置として構成したものである。
【0026】
このように、本発明のカーボンナノチューブの作製装置においては、フィルタと基板との間隔を適正化することにより、励起した炭化水素ガスのうち、カーボンナノチューブの形成に適する活性種が基板表面に到達してカーボンナノチューブを形成するが、煤を形成しやすい活性種はフィルタ付近で減少または消滅して基板表面にはほとんど到達しないので煤の混在の少ないカーボンナノチューブを形成すると考えられる。
【0027】
請求項9に記載の発明は、前記保持手段が、前記基板を保持し、かつ、温度500〜800℃に加熱する加熱手段を備えたカーボンナノチューブの作製装置として構成したものである。
【0028】
このように、本発明のカーボンナノチューブの作製装置においては、保持手段に、基板を適切な温度範囲に加熱するための加熱手段を備えたので、基板上に良好な配向性と円筒構造を有するカーボンナノチューブを形成することができる。特に、かかる基板上に金属触媒層が形成されている場合、この温度範囲に加熱することで金属触媒層を活性化することができ、カーボンナノチューブの形成を助けることができる。したがって、これに励起された炭化水素ガスを接触させると、基板上に、より高い配向性と良好な円筒構造を有するカーボンナノチューブを形成することができる。
【0029】
請求項10に記載の発明は、前記基板上にさらに金属触媒層を形成する金属触媒層形成手段を設けるとともに、前記フィルタを可動とするためのフィルタ保持装置を介して設けたカーボンナノチューブの作製装置として構成したものである。
【0030】
このように、本発明のカーボンナノチューブの作製装置においては、金属触媒層形成手段をも備えた構成としており、一つの反応チャンバー内で基板上に金属触媒層を形成した後、かかる基板を外気に触れさせることなくカーボンナノチューブを作製することができる。したがって、金属触媒層が空気に曝されて酸化されることがなくなるので、カーボンナノチューブ形成手段によるカーボンナノチューブの形成を好適に行うことができる。また、前記フィルタは、フィルタを可動にするための保持装置を介して反応チャンバー内に設けられている。したがって、金属触媒層を形成する際にフィルタが高周波電極と基板との間に介在しないようにできるので、金属触媒層を均一で良好な状態に形成することができる。
【0031】
なお、本発明のカーボンナノチューブの作製装置においては、遷移金属元素をスパッタリングや真空蒸着などの手段によって基板上に金属触媒層を形成することが好ましい。
【0032】
それによって、金属触媒層を基板上に均一に薄膜状に形成することができる。この金属触媒層を形成することによって、高い配向性を有するカーボンナノチューブの形成をスムーズに行うことができるようになる。
【0033】
また、本発明のカーボンナノチューブ作製装置においては、金属触媒層を基板上に形成する際に、特定の形状を有するマスクを用いて、特定の形状から透過される形状の金属触媒層として構成することもできる。
【0034】
このようにすると、本発明のカーボンナノチューブの作製装置では、基板上に金属触媒層を形成するときに、特定の形状を有するマスクを用いて遷移金属元素の堆積を部分的に遮るので、そのマスクの形状から透過される特定の形状の金属触媒層を基板上に形成することができる。
【0035】
請求項11に記載の発明は、前記炭化水素ガスが、低級のアルカンのガス、低級のアルケンのガス、および低級のアルキンのガスのうち少なくとも一種を含んでいるカーボンナノチューブの作製装置として構成したものである。
【0036】
本発明のカーボンナノチューブの作製装置においては、これらの炭化水素ガスを励起手段で励起して分解することによって、カーボンナノチューブの原料である励起された炭化水素ガスを基板に供給することが可能となる。
【0037】
請求項12に記載の発明は、基板が、ガラス製の基板、セラミックス製の基板、シリコン製の基板、または、金属製の基板であるカーボンナノチューブの作製装置として構成したものである。
【0038】
請求項13に記載の発明は、カーボンナノチューブを基板上に形成させるカーボンナノチューブの作製方法において、高周波電力を印加して炭化水素ガスを励起し、励起された炭化水素ガスを前記基板に対面して設けたフィルタに透過させ、フィルタを透過させた炭化水素ガスを、カーボンナノチューブを形成するために500〜800℃に加熱された基板と接触させるカーボンナノチューブの作製方法として構成したものである。
【0039】
このように、本発明のカーボンナノチューブの作製方法においては、高周波電力の印加によって励起された炭化水素ガスがさらにフィルタを透過することで煤を形成しやすい励起された炭化水素ガスを減少または消滅させると考えられ、所定の温度範囲に加熱した基板と接触させることによって、良好な配向性と円筒構造を有するカーボンナノチューブを作製することができる。
【0040】
請求項14に記載の発明は、カーボンナノチューブを形成する基板上に遷移金属元素を含んでなる金属触媒層を形成して金属触媒層形成基板を得る金属触媒層形成工程と、前記金属触媒層形成基板を温度500〜800℃に加熱する加熱工程と、炭化水素ガスを反応チャンバー内に供給する炭化水素ガス供給工程と、前記炭化水素ガスに高周波電力を印加し、前記炭化水素ガスを励起する励起工程と、前記励起された炭化水素ガスを、前記金属触媒層形成基板に近接して配置したフィルタを透過させ、かつ、前記金属触媒層と接触させ、前記金属触媒層形成基板上にカーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブ形成工程と、を含んでなるカーボンナノチューブの作製方法として構成したものである。
【0041】
このように、本発明のカーボンナノチューブの作製方法においては、まず、金属触媒層形成工程によって遷移金属元素の金属触媒層を基板上に形成して金属触媒層形成基板を得ることができる。そして、加熱工程によって基板を所定の温度範囲に加熱して金属触媒層の活性化を行い、カーボンナノチューブの形成を助ける。その後、炭化水素ガス供給工程によって炭化水素ガスを供給し、励起工程で高周波電圧を印加することで炭化水素ガスを励起する。なお、このとき、当該励起工程では気体の炭化水素ガスを高周波電力によって励起させているので、励起フィールドを広くとることが可能である。さらに、カーボンナノチューブ形成工程では、フィルタを透過した励起された炭化水素ガスを金属触媒層形成基板上で活性化された金属触媒層と接触させることにより、当該基板上にカーボンナノチューブを好適に形成することができる。その上、高い配向性を有する良好なカーボンナノチューブを基板上に広い面積で形成することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明のカーボンナノチューブの作製装置によれば、カーボンナノチューブを形成する基板としてガラス製の基板を用いることが可能になり、煤などの不純物がほとんど混在せず、広い面積にわたって高い配向性を有するカーボンナノチューブを作製することができる。
本発明のカーボンナノチューブの作製方法によれば、カーボンナノチューブを形成する基板としてガラス製の基板を用いることが可能になり、煤などの不純物がほとんど混在せず、広い面積にわたって高い配向性を有するカーボンナノチューブをおだやかな反応条件で作製することができる。
また、本発明のカーボンナノチューブの作製装置およびカーボンナノチューブの作製方法によれば、高価な装置を用いなくても済むので、結果的に比較的安価にカーボンナノチューブを作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明のカーボンナノチューブの作製装置とカーボンナノチューブの作製方法について、図面を参照しつつ詳細に説明することとする。参照する図面において図1は、本発明に係るカーボンナノチューブの作製装置の一の実施の形態を示す概略説明図である。図2(a)は、シャドウマスクを用いて特定の形状の金属触媒層を形成することを説明する説明図であり、(b)は、特定の形状に形成した金属触媒層にカーボンナノチューブを形成した様子を説明する説明図である。図3は、本発明に係るカーボンナノチューブの作製装置の他の実施の形態を示す概略説明図である。図4は、本発明に係るカーボンナノチューブの作製方法の工程を示すフローチャートである。
【0044】
[1.カーボンナノチューブの作製装置]
図1に示すように、本発明において用いることのできる好適な構成のカーボンナノチューブの作製装置1は、一つの反応チャンバー2を有し、この中に、高周波電力を印加するための高周波電極3と、遷移金属を用いた金属触媒層形成手段4と、カーボンナノチューブの形成を行うカーボンナノチューブ形成手段5とを備えて構成されている。
また、このカーボンナノチューブ形成手段5は、炭化水素ガス供給手段51と、励起手段52と、基板Sの保持手段53とを有しており、さらに、基板Sと励起フィールドFとの間に、フィルタ6を設ける構成としている。なお、本発明においては、励起手段52によって炭化水素ガスCGが励起されている領域を「励起フィールドF」と呼ぶこととする。
【0045】
(反応チャンバー)
反応チャンバー2は、カーボンナノチューブCNTを作製する際に一旦減圧にしてほぼ真空状態とするために、気密性の高い密封可能な容器であることが好ましい。また、カーボンナノチューブCNTを作製する際の温度が高温となることから、反応チャンバー2を構成する主要な部品等は耐熱性の素材、例えば、金属製とするのが好ましい。
【0046】
また、この反応チャンバー2には、金属触媒層形成手段4で用いるAr(アルゴン)、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Kr(クリプトン)、Xe(キセノン)などの不活性ガスIGを導入するための導入管21と図示しないバルブを介して不活性ガスIGの圧縮ボンベ(不図示)が接続され、また、カーボンナノチューブ形成手段5で用いる炭化水素ガスCGを供給するための供給管51aと図示しないバルブを介して炭化水素ガスCGの圧縮ボンベ(不図示)がそれぞれ接続されている(炭化水素ガス供給手段51)。同様に、反応チャンバー2内の空気や種々のガスを排気するための排気管22と図示しないバルブを介して排気装置(不図示)が配設されている。
炭化水素ガスCGを供給するための炭化水素ガス供給手段51は、基板Sと対向する位置であって、高周波電極3に近い位置に設けるのが好ましく、それによって炭化水素ガスCGを効果的に励起させることができる。
【0047】
(高周波電極)
この高周波(RF;Radio Frequency)電極3は、金属触媒層形成手段4とカーボンナノチューブ形成手段5において高周波電力を印加するために共用されるものであり、それぞれの手段において不活性ガスIGや炭化水素ガスCGを励起するための励起手段52として機能する。
【0048】
なお、本発明における高周波電力とは、1〜100MHzの交流電力をいい、この範囲の交流電力であれば本発明のカーボンナノチューブの作製装置1に用いることができる。なお、特に限定されるものではないが、1〜50MHzの高周波電力をより好適に用いることができ、10〜30MHzの高周波電力をさらに好適に用いることができる。中でも、商用の製品として一般的に用いられている13.56MHzや27.12MHzの高周波電力を好適に用いることができる。高周波電力が前記の範囲内にあると、炭化水素ガスCGを容易かつ大面積にわたって励起することができる。
【0049】
金属触媒層形成手段4における高周波電極3は、低い気圧条件下、不活性ガスIG雰囲気中において、陰極と陽極間で高周波電力を印加することでグロー放電を生じさせて不活性ガスIGを励起させ、イオン化(正に帯電)することができる。遷移金属元素体91は、高周波電力が印加されることでセルフバイアスがかかって負に帯電し、陰極側となる。その結果、イオン化した不活性ガスIGは、陰極側となった金属触媒層7(図2参照)を形成するための遷移金属元素体91に衝突し、その際にはじき飛ばされた遷移金属元素体91の原子を陽極側に設置された基板S上に堆積させることで金属触媒層7として形成する。
【0050】
そして、カーボンナノチューブ形成手段5における高周波電極3は、低い気圧条件下、炭化水素ガスCG雰囲気中において、高周波電極3で高周波電力を印加することで炭化水素ガスCGを励起することができる(なお、前記したように、励起された炭化水素ガスCGが存在する領域を励起フィールドFという)。励起フィールドF内の励起された炭化水素ガスCGは、金属触媒層7が形成された金属触媒層形成基板Sm(図2参照)まで拡散することによって、金属触媒層7と接触し、カーボンナノチューブCNTを形成する。この際、基板S(金属触媒層形成基板Sm)は、励起フィールドFと近接しているのが好ましく、後記で説明するフィルタ6をこの基板Sに近接して設けるのがより好ましい。
【0051】
(フィルタ)
フィルタ6は、励起された炭化水素ガスCGを透過させることによって、寿命が短く煤を形成しやすい活性種である励起された炭化水素ガスCGを減少または消滅させる効果を有していると考えられる。その結果、寿命が長くカーボンナノチューブCNTの成長に寄与する活性種である励起された炭化水素ガスCGの濃度を高くして基板Sに供給することができる。なお、フィルタ6を基板Sと励起フィールドFとの間に設けることによって、高周波電力で形成された励起フィールドFが基板Sまで到達するのを避けることができる。これにより、カーボンナノチューブCNTと同時に形成されるアモルファスカーボンなどのカーボンナノチューブCNT以外の炭素成分(煤)の発生を抑制することができる。したがって、基板Sに煤がほとんど混在しないカーボンナノチューブCNTを形成することができる。
【0052】
フィルタ6は、通気性の構造体(通気性構造体)であることが好ましい。このようなフィルタ6とすれば、励起された炭化水素ガスCGを効率良く基板Sに供給することができる。
なお、このフィルタ6を導電性にすると、一般的に励起フィールドFを安定して発生させることができるので好適である。しかし、本発明において用いることのできるフィルタ6としては、これに限定されず、ガラスなどの絶縁体であっても励起フィールドFの作製条件を最適化することによって導電性のフィルタ6と同様にして用いることができる。
【0053】
このようなフィルタ6としては、金属製のメッシュ体が好ましく、具体的にはステンレス製の網体を例示することができる。メッシュ体の有する孔の大きさ(孔径)は、波長の長い高周波が透過しにくく、また励起した炭化水素ガスCGのうち、カーボンナノチューブCNTの形成に適した活性種を透過させ、その濃度を高めて基板Sへと供給できるものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは孔径(篩い目の開き寸法)0.5〜10mmの範囲で適宜選択することができる。この範囲内であれば、励起した炭化水素ガスCGのうち、煤を形成しやすい活性種が減少または消滅しやすくなって、結果的にカーボンナノチューブCNTの形成に適した活性種が高濃度で透過することになると考えられる。また、メッシュ体の孔径がこの範囲内であれば、たとえフィルタ6の表面に煤が付着した場合であっても基板Sへの励起した炭化水素ガスCGの供給を進めることができる。
【0054】
また、フィルタ6は、カーボンナノチューブCNTを形成するときに用いることのできる構成とするのが好ましい。このような構成としては、例えば、図1に示すリボルバー式第二回動装置(特許請求の範囲でいうところのフィルタ保持装置)82にフィルタ6を備えるのがよい。かかるリボルバー式第二回動装置82は、基板Sと励起フィールドFとの間において、フィルタ6をリボルバー式に回転させることによってカーボンナノチューブCNTを形成するときにのみ使用することができる。また、リボルバー式第二回動装置82を進退自在な構成とすれば、フィルタ6と基板Sとの間隔L(間隔Lについては後述する)を任意に変更することができる。
【0055】
また、フィルタ6は、図3に示すように、2枚以上を基板Sに対して平行に配置(フィルタ61,62)して用いると好適である。2枚以上のフィルタ61,62を基板Sに対して平行に配置して用いれば、励起された炭化水素ガスCGのうち、カーボンナノチューブCNTの形成に適した活性種の選択性を高めることができる(すなわち、活性種を効率良く基板Sに供給し、煤を形成しやすい活性種の透過を防ぐことができる)。その結果、良好なカーボンナノチューブCNTを形成することができる。なお、このフィルタ6は、基板Sに対して正確に平行に配置することを必要としない。すなわち、基板Sと、フィルタ61と、フィルタ62とが、それぞれ若干の角度(基板Sに対する傾斜角度10°以内)をもって、ほぼ平行となるように配置しても、励起された炭化水素ガスCGのうち、カーボンナノチューブCNTの形成に適した活性種の選択性を高めることができる。
【0056】
なお、2枚以上のフィルタ61とフィルタ62を用いた場合、基板Sに近いフィルタほど孔径(目)の小さいフィルタを用いるのが好ましい。基板Sに向かって段階的に孔径を小さくすることによって、カーボンナノチューブCNTの形成に適した活性種を効率良く基板Sに供給し、煤を形成しやすい活性種の透過を防ぐことができる。したがって、図3に示す構成のカーボンナノチューブの作製装置1であれば、フィルタ61よりも基板Sに近いフィルタ62の孔径を小さくするのがよい。なお、2枚以上配置されたフィルタ6の孔径の差(篩い目の開き寸法の差)が4mm以上あると、煤を形成しやすい活性種の透過をより好適に防ぐことができる。
【0057】
そして、1枚または2枚以上設けたフィルタ6(フィルタ61,62)は、反応チャンバー2と電気的に接続して、反応チャンバー2と電位を等しくするのが好ましい。反応チャンバー2と電位を等しくすることで、例えば、高周波電極3側に配置した1枚目のフィルタ61(図3参照)を通過した、煤を形成しやすい活性種などを、2枚目のフィルタ62で減少または消滅させることが可能となる。その結果、フィルタを1枚用いた場合に比べて、カーボンナノチューブCNTの表面における煤の形成を減少させることができる。また、煤の形成がほとんどない、高い配向性を有する高純度のカーボンナノチューブCNT作製の再現性を高めることができる。
【0058】
さらに、2枚以上設けたフィルタ6(フィルタ61,62)に、電圧印加装置100を用いてそれぞれ個別に電圧を印加するのがより好ましい。このようにすれば、2枚のフィルタ61,62間に電界が発生し、さらに効率良く煤を形成しやすい活性種を減少または消滅させることができるようになる。その結果、フィルタ6を1枚のみ用いた場合や、フィルタ61,62間に電圧を印加しない場合に比べて、カーボンナノチューブCNTの表面における煤の形成をより一層減少させることができる。また、煤の形成がほとんどない、高い配向性を有する高純度のカーボンナノチューブCNT作製の再現性をさらに高めることができる。なお、メッシュ状(網体)のフィルタ6を2枚以上設ける場合、それらの網目を揃えて設けることは必ずしも必要ではなく、平面視において網目が交差するように設けることもできる。
【0059】
このフィルタ6と基板Sとの間隔Lは任意であるが、0mmを超え、30mm以下の範囲が好ましい。間隔Lが前記の範囲内にあると励起した炭化水素ガスCGが十分に基板S表面に供給され、そして均一な長さで高配向状態にあるカーボンナノチューブCNTが形成されやすい。なお、2枚以上のフィルタ6を設けた場合は、基板Sの直近に設けられたフィルタ6と基板Sとの間隔Lが前記で示した範囲となるように設定するのが好ましい。
【0060】
このような構成とすると、煤などの不純物がほとんど混在せずに、高い配向性を有するカーボンナノチューブCNTを作製することができる。また、煤などの不純物がほとんど混在しないことからカーボンナノチューブCNTの形成後に精製する必要性は減少する。
なお、反応系の構成上、フィルタ6自体も負の電荷を帯び得る。したがって、供給される励起した炭化水素ガスによって、煤などの不純物が混在する状態ではあるが、フィルタ6にもカーボンナノチューブCNTが形成されることがある。
【0061】
(炭化水素ガス供給手段および励起手段(高周波電極))
本発明のカーボンナノチューブの作製装置1においては、炭化水素ガス供給手段51と励起手段52である高周波電極3とを近い位置(装置の構造や大きさによっても異なるが、概ね10cm程度)に設ける構造とすれば、効率良く炭化水素ガスCGを励起することができるので好適である。
また、本発明のカーボンナノチューブの作製装置1においては、この炭化水素ガス供給手段51と励起手段52である高周波電極3とを、後記で説明する基板Sの保持手段53と対向する位置に設ける構成とすることが好ましい。このような構成とすれば、炭化水素ガス供給手段51から供給される励起していない炭化水素ガスCGが基板Sと接触してしまうなどの不具合を抑制することができる。その結果、形成するカーボンナノチューブCNTの円筒構造に欠陥が生じにくくなり、良好な高い配向性を有するカーボンナノチューブCNTを形成することができる。
【0062】
カーボンナノチューブCNTを作製する条件として、基板Sの温度条件を500〜800℃とするのが好ましい。温度がこの範囲にあれば、金属触媒層7が活性化されているので、カーボンナノチューブCNTの成長が容易に進み、また、基板Sとしてガラス製のものを用いることができる。
【0063】
また、励起手段52による炭化水素ガスCGの励起を行う条件として、圧力条件を0.1〜10Paとするのが好ましく、0.1〜5Paとするのがより好ましく、0.5〜1Paとするのがさらに好ましい。圧力がこの範囲にあると、グロー放電を起こしやすく、炭化水素ガスCGを容易に励起させることができ、また、励起された炭化水素ガスCGの密度が適切であるので、カーボンナノチューブCNTの成長速度が速くなる。
【0064】
(保持手段)
保持手段53は、カーボンナノチューブCNTを作製するための基板Sを保持するものである。なお、この保持手段53には、金属触媒層7を活性化させるために、基板Sを加熱する加熱手段54を設けるのが好ましい。基板Sの温度を加熱手段54によって好ましくは500〜800℃とすることで、欠陥のない良好な円筒構造のカーボンナノチューブCNTを得ることができる。加熱手段54としては、基板Sの直近に配する赤外線ランプやハロゲンランプを好適に用いることができるがこれに限定されることはなく、基板Sを加熱することができるものであればどのようなものでもよい。
【0065】
また、この保持手段53は高周波電極3との距離を適宜変更できるよう、反応チャンバー2内で進退自在に構成するのが好ましい。このようにすれば、保持手段53を進退させることによってもフィルタ6との間隔Lを適宜変更することが可能となる。さらに、この保持手段53には、基板S上への金属触媒層7の形成およびカーボンナノチューブCNTの形成のムラをなくすために、基板Sを回転させるための回転手段(不図示)を備えることが好ましい。
【0066】
(金属触媒層形成手段)
金属触媒層形成手段4は、基板S上に金属触媒層7を形成して、基板Sを金属触媒層形成基板Smとする。基板S上に形成された金属触媒層7は、その上にカーボンナノチューブCNTを垂直方向に配向させる作用を有する。したがって、この金属触媒層7を用いることで高い配向性を有するカーボンナノチューブCNTを形成させることができる。
【0067】
本発明における金属触媒層7を形成する金属触媒層形成手段4としては、種々の方式によるスパッタリング法や真空蒸着法などが挙げられるが、高周波スパッタリング法を用いた金属触媒層形成手段4とすることが特に好ましい。高周波スパッタリング法を用いた金属触媒層形成手段4とすれば、金属触媒層形成手段4で用いる高周波電極3と、カーボンナノチューブ形成手段5で用いる高周波電極3とを共用することができ、カーボンナノチューブの作製装置1の構造を簡便なものとすることができる。
【0068】
金属触媒層形成手段4における高周波電極3は、低い気圧条件下、ほぼ不活性ガスIG雰囲気中で高周波電力を印加することによって、この高周波電極3の近傍で不活性ガスIGをイオン化(プラズマ)してトラップすることができる。すなわち、高周波電力を用いた放電を行うと、陰極と陽極が交互に入れ替わるので、移動速度の遅いプラズマは、いずれかの電極に加速されて到達する前に減速し、さらに反対方向の電極に加速される。この状態が高周波電力の印加中、継続して起こっており、イオン化した不活性ガスIGは、入れ替わる両電極の間にトラップされることになる。そして、励起フィールドFのイオン化した不活性ガスIGが遷移金属元素体91に衝突することによって飛び出した遷移金属元素を基板S上に堆積させて金属触媒層7を形成し、金属触媒層形成基板Smを作製する。
【0069】
ここで、高周波スパッタリング法を用いた金属触媒層形成手段4において、基板Sに金属触媒層7を形成するための遷移金属元素体91は、高周波電極3の近傍でリボルバー式第一回動装置81によって回転できる構成とすることが好ましい。そして、このリボルバー式第一回動装置81には、気相合成法用電極(高周波プラズマCVD用の電極)92を備えておくのが好ましい。カーボンナノチューブCNTを作製する一連の工程の中で、この遷移金属元素体91と気相合成法用電極92を回転させてその位置を入れ替えることで高周波電極3の位置はそのままに、容易に金属触媒層7の形成を行う手段や工程から、カーボンナノチューブCNTの形成を行う手段や工程に切り替えることが可能となる。
【0070】
なお、基板S上に形成する金属触媒層7としては、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)、Co(コバルト)などの遷移金属元素を1種のみの金属または2種以上の合金として用いることができる。
【0071】
また、基板S上に金属触媒層7を形成する際に、図2に示すように、特定の形状を有するマスク71を用いることで、この特定の形状から透過される形状に金属触媒層7を形成することができる。このようにすれば、任意の形状にカーボンナノチューブCNTを配して形成した基板S(カーボンナノチューブ形成基板Sc)を作製することができる。特定の形状を有するマスク71としては、シート状の遮蔽物に任意の径および密度をもって穿孔したマスクや、電子回路で形成される配線の形状に表裏面を貫通するスリットを形成したマスクなどを好適に用いることができる。なお、このような特定の形状は、フォトリソグラフィーや電子リソグラフィーの技術を用いることで好適に形成することができる。また、CRTディスプレイで用いられる蜂の巣状に細かい孔が多数穿孔された金属板(シャドウマスク)なども好適に用いることができる。さらに、金属触媒層7を基板S全面に形成後、リソグラフィー技術によって任意の形状に形成することも可能である。
なお、このマスク71は、フィルタ6が備えられているリボルバー式第二回動装置82に、このフィルタ6と重ならない位置に備えるのが好ましい。このようにすれば、リボルバー式にこれを回転させることで、任意のタイミングで任意の形状の金属触媒層7を形成することができる。
【0072】
(炭化水素ガス)
炭化水素ガスCGは、励起手段52によって励起されて分解されることで、カーボンナノチューブCNTの原料となるものである。本発明で用いることができる炭化水素ガスCGとしては、低級のアルカンのガス、低級のアルケンのガス、および低級のアルキンのガスのうち少なくとも一種である。すなわち、これらの中から適宜選択された1種の炭化水素ガス、またはこれら2種以上混合した炭化水素混合ガスを用いることができる。低級のアルカンのガスとしては、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、n−ブタンガスなどを用いることができる。また、低級のアルケンのガスとしては、エチレンガス、プロピレンガス、1−ブテンガス、2−ブテンガスなどを用いることができる。そして、低級のアルキンのガスとしては、アセチレンガス、プロピンガス、1−ブチンガス、2−ブチンガスなどを用いることができる。これらの中でも特にアセチレンガスやエチレンガスを好適に用いることができる。なお、これらの炭化水素ガスCGの希釈剤としてH2(水素)ガスやAr(アルゴン)ガスを用いることができる。
【0073】
(基板)
基板S上には、カーボンナノチューブCNTが形成される。本発明で用いることのできる基板Sとしては、ガラス製の基板、セラミックス製の基板、シリコン製の基板、または金属製の基板を用いることができる。なお、本発明においては、カーボンナノチューブCNTを形成するための反応温度が比較的低いので、従来では用いることのできなかったガラス製の基板Sを用いることができる。また、前記したように、これらの基板S上には金属触媒層7を形成するのが好ましい。
特に、ガラス製の基板Sやセラミックス製の基板Sにおいては、電子回路として使用するために、Al(アルミニウム)を積層した基板Sを使用することができる。
【0074】
[2.カーボンナノチューブの作製方法]
本発明に係るカーボンナノチューブの作製方法は、高周波電力を印加して炭化水素ガスCGを励起し、励起された炭化水素ガスCGをフィルタ6に透過させ、フィルタ6を透過させた炭化水素ガスCGを、カーボンナノチューブCNTを形成するために500〜800℃に加熱された基板Sと接触させることによってカーボンナノチューブCNTを基板S上に形成するものである。
より好適には、本発明に係るカーボンナノチューブの作製方法は、金属触媒層形成工程(ステップS1)と、加熱工程(ステップS2)と、炭化水素ガス供給工程(ステップS3)と、励起工程(ステップS4)と、カーボンナノチューブ形成工程(ステップS5)と、を含んでなる。
以下、図4のフローチャートと適宜図1〜図3を参照して、本発明に係るカーボンナノチューブの好適な作製方法について詳細に説明する。なお、各工程において用いる装置・手段・数値等については、既に説明しているので詳細な説明を省くこととする。
【0075】
(金属触媒層形成工程;ステップS1)
金属触媒層形成工程では、金属触媒層7を基板S上に形成する。
まず、カーボンナノチューブの作製装置1の保持手段53でカーボンナノチューブCNTを形成するための基板Sを保持し、反応チャンバー2内を減圧にして真空状態とする。これにより、反応チャンバー2内には酸素がほとんど存在しないので、基板Sへの金属触媒層7の形成時や形成後における金属触媒層7の酸化を防止することができる。これにより、金属触媒層7の触媒機能を高く維持することができるので、後の工程においてカーボンナノチューブCNTの形成を好適に行うことができる。
また、この気圧条件を保ちつつ、Ar、He、Ne、Kr、Xeなどの不活性ガスIGを導入し、反応チャンバー2内を不活性ガスIG雰囲気とする。この気圧条件とすることにより、グロー放電を起こしやすい状態とすることができる。
【0076】
そして、前記の状態で、遷移金属元素体91を介して高周波電極3に1〜100MHzの高周波電力を印加してグロー放電を起こしてスパッタリングを行うことで、金属触媒層7を基板S上に堆積させて金属触媒層形成基板Sm(図2参照)を得る。このとき、保持されている基板Sを回転させることによって、基板S上に均一に金属触媒層7を形成することができる。
なお、金属触媒層7を形成する際に特定の形状を有するマスク71を用いて、遷移金属元素体91から飛散して基板Sに到達する経路の一部を遮蔽することで、マスク71が有する特定の形状から透過される形状に金属触媒層7を形成することができる。
【0077】
(加熱工程;ステップS2)
そして、加熱工程によって金属触媒層形成基板Smを赤外線ランプ等によって500〜800℃に加熱する。このとき、フィルタ6を、保持手段53に保持されている金属触媒層形成基板Smと高周波電極3との間に配置し、金属触媒層形成基板Smとフィルタ6(またはフィルタ62)との間隔Lを、例えば5〜10mmなど、適宜の間隔に設定するのが好ましい。また、このとき保持手段53を進退させることで後の工程で説明する励起フィールドFとの距離を適宜変更することができる。
【0078】
(炭化水素ガス供給工程;ステップS3)
炭化水素ガス供給工程では、カーボンナノチューブCNTを形成する際の原料となる炭化水素ガスCGを反応チャンバー2内に供給し、反応チャンバー2内を炭化水素ガス雰囲気とする。炭化水素ガスCGの供給は、炭化水素ガスCGを供給するための供給管51aとバルブを介して炭化水素ガスCGの圧縮ボンベから供給される。なお、後記のカーボンナノチューブ形成工程でカーボンナノチューブCNTを形成している間は、常に炭化水素ガスCGの供給と反応チャンバー2内の排気を行って炭化水素ガスCGを所定の一定濃度に保つのがよい。この炭化水素ガスCGの濃度としては、例えば、希釈ガスに対して10%とするのがよい。
なお、不活性ガスIGは、金属触媒層7を形成した後から炭化水素ガスCG供給工程を行うまでのあいだに排気しておくのが好ましい。不活性ガスIGの排気は、排気管22とバルブを介して排気装置によって排気することができる。
【0079】
(励起工程;ステップS4)
励起工程では、0.1〜10Paの減圧条件と供給された炭化水素ガスCG雰囲気下、高周波電極3に1〜100MHzの高周波電力を印加することで炭化水素ガスCGを励起して分解し、励起された炭素原子および炭素分子を発生させる。なお、炭化水素ガスCGの励起を行う際は、高周波電極3近傍に設置された気相合成法用電極92を介して1〜100MHzの高周波電力を印加する。これにより、炭化水素ガスCGを分解し、励起された炭素原子および炭素分子を発生させ、励起フィールドFを形成することができる。
【0080】
(カーボンナノチューブ形成工程;ステップS5)
カーボンナノチューブ形成工程では、励起された炭化水素ガスCGを原料として一定時間反応させることでカーボンナノチューブCNTを形成する。金属触媒層形成基板Smに形成されている金属触媒層7は、カーボンナノチューブCNTの円筒構造の形成を促進する作用があるので、金属触媒層7が形成されている部分で優先的・選択的に円筒構造を形成することができる。そのため、金属触媒層7が形成されている部分において選択的に垂直方向に配向した高い配向性を有するカーボンナノチューブCNTが形成されたカーボンナノチューブ形成基板Sc(図2参照)を得ることができる。なお、反応時間は適宜設定し得るが、カーボンナノチューブCNTを十分成長させて形成するため、例えば、10分〜3時間とするのが好ましく、1〜2時間とするのがより好ましい。
ここで、金属触媒層形成基板Smとフィルタ6とを近接して設けていることから、高周波電力で形成された励起フィールドFは基板Sまで到達せず、さらに、フィルタ6を金属触媒層形成基板Smに近接して配置したことにより、これを通過する励起した炭化水素ガスCGのうち、煤を形成しやすい活性種を減少または消滅させることができると考えられるので、カーボンナノチューブCNTの成長に寄与し得る活性種の濃度を高くして基板Sに供給することができることとなり、煤がほとんど混在しないカーボンナノチューブCNTを形成することができる。
【0081】
そして、カーボンナノチューブCNT形成後、反応チャンバー2内の炭化水素ガスCGを排気し、500〜800℃に加熱されているカーボンナノチューブ形成基板Scを徐冷した後、反応チャンバー2内の気圧条件を大気圧に戻し、カーボンナノチューブ形成基板Scを取り出す。かかるカーボンナノチューブ形成基板Scには、煤がほとんど混在しない高い配向性を有するカーボンナノチューブCNTが形成されている。
【実施例】
【0082】
本発明に係るカーボンナノチューブの作製装置とカーボンナノチューブの作製方法を適用してカーボンナノチューブを作製した。以下、カーボンナノチューブの作製装置とカーボンナノチューブの作製方法の実施例について説明する。
【0083】
≪第1実施例≫
〔1.装置および材料〕
カーボンナノチューブを作製するための装置としては、エイコー・エンジニアリング社製高周波プラズマCVD装置ECN−500を改良して用いた(図1参照)。かかる装置は、一つの反応チャンバー内で基板上への金属触媒層の形成とカーボンナノチューブの形成を行うことができる。
カーボンナノチューブを形成する基板としては、コーニングガラス社製のコーニングガラスを用いた。
金属触媒層を形成するための遷移金属としては鉄((株)ニラコ製)を用いた。
フィルタとしては、(株)ニラコ製のステンレス製メッシュ(孔径1mm、製品No.758030)を用いた。
また、不活性ガスとしてはArガスを用い、炭化水素ガスとしては、アセチレンガスを用い、炭化水素ガスの希釈剤としては、H2ガスを用いた(いずれも純度99.99%、日本酸素(株)製)。
【0084】
〔2.カーボンナノチューブ作製〕
(1)金属触媒層の形成
コーニングガラスへの金属触媒層の形成は、高周波プラズマCVD装置ECN−500によって高周波スパッタリング法を用いて行った。高周波スパッタリング法の条件としては、気圧条件:0.7Pa、温度条件:20℃、反応時間:30分、コーニングガラスの加熱温度:20℃であった。その結果、コーニングガラス上に厚さ10nm以下の鉄触媒膜を形成することができた。
【0085】
(2)カーボンナノチューブの形成
次に、厚さ10nmの鉄触媒膜を形成したコーニングガラスの上部(図1では下側)5mmのところにステンレス製メッシュを配置し、真空排気後、かかるコーニングガラスを550℃に加熱した。その後、アセチレンガス1sccmとH2ガス9sccmを反応チャンバー内に供給した。そして、印加した高周波電力:100W、温度条件:550℃、気圧条件:5Pa、反応時間1時間の条件でアセチレンガスを励起しつつカーボンナノチューブの作製を行った。
【0086】
〔3.結果〕
前記(2)に示す条件でカーボンナノチューブの形成を行った結果を図5に示す。図5は、≪第1実施例≫における実施例Aに係るカーボンナノチューブの走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
図5に示すように、実施例Aに係るカーボンナノチューブのSEM像から、金属触媒層を形成したコーニングガラス上には、5〜6μm程度の長さで垂直方向へ、かつ、高い配向性を有するカーボンナノチューブが形成されていた。また、作製したカーボンナノチューブの上に煤の付着や混在はほとんど認められなかった。さらに、このカーボンナノチューブの核発生密度は1200本/μm2であった。この核発生密度は、基板にSi(シリコン)を用いた場合と同じ値である。
【0087】
これに対し、鉄触媒膜を形成したコーニングガラスの上部にステンレス製メッシュを配置しない方法によって作製されたカーボンナノチューブのSEM像を参考例として図6に示す。
図6のSEM像で示す参考例のカーボンナノチューブの上には煤が厚く付着していることが分かる。なお、参考例に係るカーボンナノチューブの作製は、フィルタを用いていない以外は第1実施例と同じ条件で行った。
【0088】
また、実施例Aによって作製したカーボンナノチューブの透過電子顕微鏡(TEM)観察の結果(不図示)、実施例Aによって作製したカーボンナノチューブは外径6nm、内径3nm程度であることが分かった。さらに、電子線解析の結果(不図示)から、第1実施例によって作製したカーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブであることが分かった。
【0089】
≪第2実施例≫
≪第2実施例≫では、孔径の異なるフィルタを2枚用いた実施例B、および、フィルタを1枚用いた実施例Cに係るカーボンナノチューブを作製した。
〔1.装置および材料〕
カーボンナノチューブを作製するための装置としては、≪第1実施例≫と同様、エイコー・エンジニアリング社製高周波プラズマCVD装置ECN−500を改良して用いた(図3参照)。
第1のフィルタとしては、5メッシュ(1インチ(1インチ≒2.54センチメートル)当たり5孔)のステンレス製メッシュを用い、第2のフィルタとしては、100メッシュ(1インチ当たり100孔)のステンレス製メッシュを用いた。そして、これら第1のフィルタと第2のフィルタとの間隔を5mmに設定し、第1のフィルタおよび第2のフィルタを反応チャンバーと電気的に接続し、さらに、この反応チャンバーにアースをとった。また、電圧印加装置(菊水電子工業(株)製、PMC500−0.1A)を用いて、第1のフィルタと第2のフィルタに100Vの電圧を印加した。
カーボンナノチューブを形成する基板としては、コーニングガラス社製のコーニングガラスを用いた。
金属触媒層を形成するための遷移金属としては鉄((株)ニラコ製)を用いた。
また、不活性ガスとしてはArガスを用い、炭化水素ガスとしては、エチレンガスを用い、炭化水素ガスの希釈剤としては、H2ガスを用いた(いずれも純度99.99%、日本酸素(株)製)。
【0090】
〔2.カーボンナノチューブ作製〕
(1)金属触媒層の形成
コーニングガラスへの金属触媒層の形成は、≪第1実施例≫と同様、高周波プラズマCVD装置ECN−500によって高周波スパッタリング法を用いて行った。高周波スパッタリング法の条件としては、気圧条件:0.7Pa、温度条件:20℃、反応時間:30分、コーニングガラスの加熱温度:20℃であった。その結果、コーニングガラス上に厚さ10nm以下の鉄触媒膜を形成することができた。
【0091】
(2)カーボンナノチューブの形成
次に、厚さ10nmの鉄触媒膜を形成したコーニングガラスの上部(図3では下側)5mmのところに第2のフィルタ62を配置し、真空排気後(気圧条件:5×10-3Pa)、かかるコーニングガラスを550℃に加熱した。その後、エチレンガス1sccmとH2ガス9sccmを反応チャンバー2内に供給した。そして、印加した高周波電力:5W、温度条件:550℃、気圧条件:5Pa、反応時間1時間の条件でエチレンガスを励起しつつカーボンナノチューブの作製を行った。
【0092】
〔3.結果〕
前記(2)に示す条件、すなわち、2枚のフィルタを用いてカーボンナノチューブの形成を行った結果を図7に示す。図7は、≪第2実施例≫の実施例Bに係るカーボンナノチューブの走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
図7のSEM像から、金属触媒層を形成したコーニングガラス上には、6〜7μm程度の長さで垂直方向へ、高い配向性を有するカーボンナノチューブが形成されていることが分かる。また、作製したカーボンナノチューブの上に煤の付着や混在はほとんど認められなかった。さらに、このカーボンナノチューブの核発生密度は1200本/μm2であった。この核発生密度は基板にSi(シリコン)を用いた場合と同じ値である。
【0093】
一方、鉄触媒膜を形成したコーニングガラスの上部に1枚のフィルタ(100メッシュ)のみを配置した≪第2実施例≫の実施例CのカーボンナノチューブのSEM像を図8に示す。なお、実施例Cは、フィルタを1枚しか用いていない以外は2枚のフィルタを用いた≪第2実施例≫の実施例Bと同じ条件でカーボンナノチューブの作製を行ったものである。
図8のSEM像で示す実施例Cのカーボンナノチューブは、図7に示す実施例Bと比較しても煤の付着は認められなかったものの、その配向性がやや劣っていた。しかし、≪第1実施例≫の参考例と比較すると煤の付着は、はるかに少なく、配向性も優れたものであった。
【0094】
なお、実施例Bおよび実施例Cのカーボンナノチューブの透過電子顕微鏡(TEM)観察の結果(不図示)から、実施例Bおよび実施例Cのカーボンナノチューブは、≪第1実施例≫の実施例Aと同様、外径6nm、内径3nm程度であることが分かった。また、電子線解析の結果(不図示)から、≪第2実施例≫の実施例Bおよび実施例Cのカーボンナノチューブは、いずれも≪第1実施例≫の実施例Aと同様に、多層カーボンナノチューブであることが分かった。
【0095】
以上、本発明のカーボンナノチューブの作製装置とカーボンナノチューブの作製方法についてこれを実施するための最良の形態と、その実施例を示して詳細に説明してきたが、本発明の内容はこれに限定して解釈してはならず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更・改変して用いることが可能である。
【0096】
例えば、本発明のカーボンナノチューブの作製装置として、1つの反応チャンバー内で金属触媒層形成手段(工程)と、カーボンナノチューブ形成手段(工程)と、を行う態様を最も好適な構成であると説明したが、これに限られることはなく、これらを別々の装置で行ってもよい。例えば、金属触媒層形成手段(工程)をスパッタリング装置で行い、カーボンナノチューブ形成手段(工程)を高周波プラズマCVD装置で行う、とすることもできる。
【0097】
例えば、前記の説明の中では、フィルタは金属製のメッシュ体とすることが好ましい旨を説明したが、フィルタであればこれに限定されず、前記所定の孔径をもって穿孔された金属製の板材や、所定の間隔をもってストライプ状に設けたフィルタ(通気性構造体)などを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に係るカーボンナノチューブの作製装置の実施の形態を示す概略説明図である。
【図2】(a)は、シャドウマスクを用いて特定の形状の金属触媒層を形成することを説明する説明図であり、(b)は、特定の形状に形成した金属触媒層にカーボンナノチューブを形成した様子を説明する説明図である。
【図3】本発明に係るカーボンナノチューブの作製装置の他の実施の形態を示す概略説明図である。
【図4】本発明に係るカーボンナノチューブの作製方法の工程を示すフローチャートである。
【図5】実施例Aによって作製されたカーボンナノチューブのSEM像である。
【図6】参考例によって作製されたカーボンナノチューブのSEM像である。
【図7】実施例Bに係るカーボンナノチューブの走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図8】実施例Cに係るカーボンナノチューブの走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【符号の説明】
【0099】
1 カーボンナノチューブの作製装置
2 反応チャンバー
21 導入管
22 排気管
3 高周波電極
4 金属触媒層形成手段
5 カーボンナノチューブ形成手段
51 炭化水素ガス供給手段
51a 供給管
52 励起手段
53 保持手段
54 加熱手段
6 フィルタ
7 金属触媒層
71 マスク
81 リボルバー式第一回動装置
82 リボルバー式第二回動装置
91 遷移金属元素体
92 気相合成法用電極
CNT カーボンナノチューブ
CG 炭化水素ガス
F 励起フィールド
IG 不活性ガス
L 間隔
S 基板
Sc カーボンナノチューブ形成基板
Sm 金属触媒層形成基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブを反応チャンバー内で基板上に形成させるカーボンナノチューブの作製装置において、
前記基板を保持する保持手段と、この保持手段に保持された前記基板に対面して設けたフィルタと、このフィルタを介して前記基板に対向して設けた励起手段と、この励起手段により高周波電力を印加して励起させる炭化水素ガスを前記反応チャンバー内に供給する炭化水素ガス供給手段と、を備え、
前記フィルタは、炭化水素ガスを透過させることを特徴とするカーボンナノチューブの作製装置。
【請求項2】
前記フィルタが、通気性構造体であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの作製装置。
【請求項3】
前記フィルタが、メッシュ体であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの作製装置。
【請求項4】
前記フィルタを2枚以上設け、かつ、これらを前記基板と平行に配置したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの作製装置。
【請求項5】
孔径の異なる2枚以上の前記フィルタを前記基板と平行に配置し、かつ、前記基板側から順に孔径の小さい前記フィルタを配置したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの作製装置。
【請求項6】
前記フィルタが、前記反応チャンバーと電気的に接続されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの作製装置。
【請求項7】
前記フィルタに電圧を印加する電圧印加装置を備えたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの作製装置。
【請求項8】
前記基板と、前記基板に直近の前記フィルタとの間隔を、0mmを超え30mm以下としたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの作製装置。
【請求項9】
前記保持手段が、前記基板を保持し、かつ、温度500〜800℃に加熱する加熱手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの作製装置。
【請求項10】
前記基板上にさらに金属触媒層を形成する金属触媒層形成手段を設けるとともに、前記フィルタを可動とするためのフィルタ保持装置を介して設けたことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの作製装置。
【請求項11】
前記炭化水素ガスが、低級のアルカンのガス、低級のアルケンのガス、および低級のアルキンのガスのうち少なくとも一種を含んでいることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの作製装置。
【請求項12】
前記基板が、ガラス製の基板、セラミックス製の基板、シリコン製の基板、または、金属製の基板であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの作製装置。
【請求項13】
カーボンナノチューブを基板上に形成させるカーボンナノチューブの作製方法において、
高周波電力を印加して炭化水素ガスを励起し、励起された炭化水素ガスを前記基板に対面して設けたフィルタに透過させ、フィルタを透過させた炭化水素ガスを、カーボンナノチューブを形成するために500〜800℃に加熱された基板と接触させることを特徴とするカーボンナノチューブの作製方法。
【請求項14】
カーボンナノチューブを形成する基板上に遷移金属元素を含んでなる金属触媒層を形成して金属触媒層形成基板を得る金属触媒層形成工程と、
前記金属触媒層形成基板を温度500〜800℃に加熱する加熱工程と、
炭化水素ガスを反応チャンバー内に供給する炭化水素ガス供給工程と、
前記炭化水素ガスに高周波電力を印加し、前記炭化水素ガスを励起する励起工程と、
前記励起された炭化水素ガスを、前記金属触媒層形成基板に近接して配置したフィルタを透過させ、かつ、前記金属触媒層と接触させ、前記金属触媒層形成基板上にカーボンナノチューブを形成するカーボンナノチューブ形成工程と、
を含んでなることを特徴とするカーボンナノチューブの作製方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−111517(P2006−111517A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8259(P2005−8259)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年9月1日に社団法人応用物理学会により発行された第65回応用物理学会学術講演会講演予稿集にて発表 平成16年9月2日に社団法人応用物理学会が主催した第65回応用物理学会学術講演会において、「RFプラズマCVD法によるガラス基板上への高配向カーボンナノチューブの作製」の表題により発表
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【出願人】(390027683)株式会社エイコー・エンジニアリング (14)
【Fターム(参考)】