説明

カーボンナノチューブの製造装置および製造方法

【課題】CVD法を適用してCNTを効率よく製造する装置および方法を提供する。
【解決手段】本発明により提供されるCNT製造装置1は、下流側10bが低くなるように傾斜させて回転可能に配置された筒体10と、筒体10の内側に形成されたチャンバ11に触媒粉末Pを供給する触媒供給部30および炭素源蒸気Vを供給する炭素源供給部40と、チャンバ11の少なくとも一部範囲に設定された反応ゾーン12をCNT生成温度に加熱可能なヒータ7とを備える。筒体10の内周壁には凸部が設けられており、筒体10を回転させることにより触媒粉末Pが上記凸部に引っ掛かって持ち上げられては落下することを繰り返しながら上流側から下流側へと移動するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる化学気相成長法(CVD法)によってカーボンナノチューブを製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と表記することもある。)は、導電性、熱伝導性、機械的強度等の優れた特性を持つことから、多くの分野から注目を集めている新素材である。一般にCNTは、炭素または炭素を含む原料を、必要に応じて触媒の存在下で、高温条件に置くことによって合成される。主な製造方法として、アーク放電法、レーザ蒸発法および化学気相成長法が知られている。これらのうち化学気相成長法(すなわちCVD法)は、炭素を含む原料(炭素源)を熱分解させてCNTを合成するものである。CVD法によるCNTの製造に関する従来技術文献として特許文献1〜3が挙げられる。特許文献1は、触媒兼流動剤を用いて流動床によりCNTを製造する技術に関する。また、特許文献2は、流動剤の存在下で固体触媒を炭素含有ガスと接触させることにより該固体触媒を流動化させてCNTを合成する技術に関する。特許文献3は、ショウノウを炭素源に用いてCNTを製造する技術に関する。
【0003】
【特許文献1】特開2003−342840号公報
【特許文献2】特開2008−056523号公報
【特許文献3】特開2007−331989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、CVD法を用いてより効果的にCNTを製造する技術が提供されれば有用である。本発明は、かかる課題を解決し得るCNT製造装置の提供を一つの目的とする。本発明の他の一つの目的は、上記課題を解決し得るCNT製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、触媒粉末に炭素源を接触させることにより該炭素源を熱分解させてCNTを生成させるCNT製造装置が提供される。その装置は、軸を横向きにして且つ該軸の一端側(上流側)よりも他端側(下流側)のほうが低くなるように傾斜して配置され、該軸回りに回転可能な筒体を備える。上記装置は、また、前記筒体の内側に形成されたチャンバに開口する触媒供給口から該チャンバに触媒粉末を供給する触媒供給部を備える。また、前記チャンバに開口する炭素源供給口から該チャンバに炭素源の蒸気を供給する炭素源供給部を備える。また、前記チャンバの軸方向の少なくとも一部範囲に設定された反応ゾーンをカーボンナノチューブが生成する温度に加熱可能なヒータを備える。ここで、前記反応ゾーンに面する前記筒体の内周壁には、前記触媒粉末が前記内周壁沿いに周方向へ移動することを制限する凸部が設けられている。そして、前記筒体を軸回りに回転させることにより、前記内周壁上の前記触媒粉末が前記凸部に引っ掛かって該凸部とともに持ち上がり、次いでその持ち上がった前記触媒粉末が前記引っ掛かりから解放されて前記チャンバの内部空間を落下し、かかる持ち上がりおよび落下を繰り返しながら前記触媒粉末が上流側から下流側へと移動するように構成されている。
【0006】
ここで、「カーボンナノチューブ(CNT)」とは、チューブ状の炭素同素体(典型的には、グラファイト構造の円筒型構造物)をいい、特別の形態(長さや直径)に限定されない。いわゆる単層CNT、多層CNT、あるいはチューブ先端が角状のカーボンナノホーンは、ここでいうCNTの概念に包含される典型例である。
【0007】
かかる構成の装置によると、上記凸部を利用して触媒粉末を持ち上げては落下させる動作を繰り返すことにより、該触媒粉末に炭素源蒸気を効果的に接触させることができる。したがって上記炭素源蒸気からCNT(典型的には、主として多層CNT)を効率よく生成させることができる。また、触媒粉末は上記持ち上がりおよび落下を繰り返しながら次第に下流側へと移動し、典型的にはこれに伴って上記触媒粉末の構成粒子が生成物(CNT)によって次第に厚く覆われる。したがって、上流側から供給した触媒粉末を上記生成したCNTとともに下流側において回収することにより、CNTを連続して製造することができる。すなわち、上記構成の装置はCNTの連続生産に適している。
【0008】
前記凸部は、前記筒体の軸方向に延びる畝状に形成されていることが好ましい。かかる構成の装置によると、上記触媒粉末の筒体周方向への移動を適切に阻止して、該触媒粉末の持ち上げおよび落下を効果的に行うことができる。したがって、触媒粉末と炭素源蒸気との接触効率(ひいてはCNTの生成効率、例えば収率)をより高めることができる。このような畝状凸部が前記筒体の周方向に間隔を開けて(典型的には略等間隔で)複数設けられていることが好ましい。
【0009】
前記炭素源供給口は、前記反応ゾーン(CNTの製造時すなわち該供給口から炭素源蒸気が供給される際にCNTが生成する温度に加熱される領域)またはその近傍に配置されていることが好ましく、通常は前記炭素源供給口が前記反応ゾーン内に配置されていることがより好ましい。このように炭素源蒸気が高温領域に直接供給される構成とすることにより、該炭素源蒸気からCNTをより効率よく生成させることができる。また、前記炭素源として常温で液体または固体の材料を用いる場合にも炭素源蒸気の凝縮や昇華(固体の析出)が起こりにくいので、かかる材料を炭素源に用いたCNTの製造にも好ましく利用され得る。特に、前記炭素源として常温で固体の材料(例えばショウノウ)を用いてCNTを製造する装置として有用である。
【0010】
ここに開示される装置の好ましい一態様では、前記炭素源供給部は、前記反応ゾーン内を延びて前記炭素源供給口(反応ゾーンまたはその近傍に配置されていることが好ましい。)に連なる炭素源導入管を備える。かかる構成によると、炭素源供給口から上記炭素源導入管の壁面を通じて上記反応ゾーンの熱を該導入管内の炭素源蒸気に伝え、これにより炭素源蒸気を気体の状態に安定して維持する(例えば、炭素源導入管内で炭素源蒸気が液化または固化することによる該導入管の詰まりやガス流通抵抗の上昇を防ぐ)ことができる。このことは、該装置を連続運転(すなわちCNTを連続生産)する上で有利である。例えば、より長時間にわたってCNTを適切に製造し得る。前記炭素源として常温で液体または固体の材料(殊に常温で固体の材料、例えばショウノウ)を用いる場合には、上記構成を採用することによる効果が特によく発揮され得る。
【0011】
ここに開示される装置は、好ましくは、前記反応ゾーンよりも上流に配置された第一ガス供給口および前記反応ゾーンよりも下流に配置された第二ガス供給口から前記チャンバに非酸化性ガスを供給可能に構成されたガス供給部をさらに備える。また、好ましくは、前記反応ゾーンまたはその近傍に配置されたガス抜き口から前記チャンバ内のガスを排出可能に構成されたガス排出部をさらに備える。かかる構成によると、上記第一、第二ガス供給口からチャンバにガス流を送り込むとともに上記ガス抜き口から余剰ガスを排出することにより、炭素源供給口から送り込まれた炭素源蒸気の広がり(位置)を制御することができる。例えば、上記炭素源蒸気を反応ゾーン内によりよく留める(すなわち、反応ゾーンの上流側または下流側への拡散を抑える)ことにより、該炭素源蒸気からCNTをより効率よく生成させることができる。また、上記構成の装置によると、上記炭素源蒸気が反応ゾーン外において凝縮したり昇華したりする事象を防止し得る。このことは、前記炭素源として常温で液体または固体の材料(殊に常温で固体の材料、例えばショウノウ)を用いる場合に特に有利である。
【0012】
ここに開示される装置の好ましい一態様では、前記炭素源供給口および前記触媒供給口はそれぞれ前記反応ゾーンのうちの上流域またはその上流側近傍に配置され、前記ガス抜き口は前記反応ゾーンのうちの下流域またはその下流側近傍に配置されている。かかる構成によると、上流の炭素源供給口から供給された炭素源蒸気が反応ゾーン内を下流のガス抜き口へと移動する間に、同様に反応ゾーンの上流から下流へと移動しつつチャンバの内壁沿いに持ち上げられては空中を通って落下する触媒粉末が、上記炭素源蒸気に繰り返し接触させられる。このことによって上記炭素源蒸気から効率よく(例えば高収率で)CNTを製造することができる。
なお、他の構成例として、例えば、前記触媒供給口および前記ガス抜き口はそれぞれ前記反応ゾーンのうちの上流域またはその上流側近傍に配置され、前記炭素源供給口は前記反応ゾーンのうちの下流域またはその下流側近傍に配置された構成が挙げられる。
【0013】
本発明によると、また、炭素源の蒸気を触媒粉末に接触させることにより該炭素源蒸気を熱分解させてCNTを生成するCNT製造方法が提供される。その方法において、前記触媒粉末と前記炭素源蒸気との接触は、軸の一端側たる上流側よりも他端側たる下流側が低くなるように傾斜させて配置された筒体の内側に形成されたチャンバのうち軸方向の少なくとも一部範囲に設定された反応ゾーンにおいて行われる。また、前記反応ゾーンに面する前記筒体の内周壁には凸部が設けられている。そして、前記筒体を軸回りに回転させることにより、前記内周壁上にある前記触媒粉末を前記凸部に引っ掛けて持ち上げること及びその持ち上げられた触媒粉末を前記チャンバの内部空間において前記炭素源蒸気を含む雰囲気に接触させつつ落下させることを繰り返しながら前記触媒粉末を上流側から下流側に移動させる。
【0014】
かかる方法によると、上記凸部を利用して触媒粉末を持ち上げては落下させることを繰り返すことにより、該触媒粉末に炭素源蒸気を効果的に接触させることができる。したがって上記炭素源蒸気からCNT(典型的には、主として多層CNT)を効率よく生成させることができる。また、触媒粉末は上記持ち上がりおよび落下を繰り返しながら次第に下流側へと移動し、典型的にはこれに伴って上記触媒粉末の構成粒子が生成物(CNT)によって次第に厚く覆われる。したがって、上流側から供給した触媒粉末を上記生成したCNTとともに下流側において回収することにより、CNTを連続して製造することができる。すなわち、上記製造方法はCNTの連続生産に適している。
【0015】
ここに開示される方法の好ましい一態様では、前記炭素源蒸気を前記反応ゾーン内に直接供給する。そして、前記反応ゾーンよりも上流の位置および下流の位置から前記チャンバに非酸化性ガスを供給するとともに前記反応ゾーンまたはその近傍からガスを排出させることにより、前記炭素源蒸気が前記反応ゾーンよりも上流側または下流側に流出(拡散)することを防止する。かかる方法によると、反応ゾーン内において炭素源蒸気と触媒粉末とをより効果的に接触させることができるので、より効率よく(例えば高収率で)CNTを生成させ得る。また、上記方法によると、上記炭素源蒸気が反応ゾーン外において凝縮したり昇華したりする事象を防止し得る。このことは、炭素源として常温で液体または固体の材料(殊に常温で固体の材料、例えばショウノウ)を用いてCNTを製造する場合に特に有利である。
ここに開示されるいずれかのCNT製造装置または製造方法(上記装置を用いた製造方法であり得る。)では、前記触媒粉末として、粉末状の支持体(例えばゼオライト粉末)に触媒金属源を付与した後、150℃以上で加熱処理を施してなる触媒粉末を好ましく使用することができる。かかる触媒粉末は、取扱性(例えば、該粉末をチャンバに供給する際における取扱性)に優れるので好ましい。また、ここに開示されるいずれかのCNT製造装置または製造方法(上記装置を用いた製造方法であり得る。)では、前記炭素源として、常温で固体の材料(例えばショウノウ)を好ましく使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、反応ゾーンの温度や圧力等の反応条件を調節するための具体的な操作方法等のCVD法に関する一般的事項、所定形状の筒体を作製する方法等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0017】
ここに開示されるCNT製造装置の好ましい一形態につき、図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、本実施形態に係るCNT製造装置1は、内周壁に複数の凸部20(図2,3参照)が設けられた円筒状の筒体10と、その筒体10の内側に形成されたチャンバ11に触媒粉末Pを供給可能に構成された触媒供給部30と、チャンバ11に炭素源蒸気Vを供給可能に構成された炭素源供給部40と、チャンバ11の略中央部に設定された反応ゾーン12をCNTが生成する温度に加熱可能なヒータ7とを備える。筒体10の上流側10aおよび下流側10bの開口は、上流蓋3および下流蓋4によって塞がれている。これら筒体10、上流蓋3および下流蓋4を含んで構成されたリアクター2によってチャンバ11が区画形成されている。
【0018】
筒体10は、典型的には直管状に(すなわち、軸が直線状に延びるように)形成されており、その断面形状は、円形、楕円形、卵型、長円形等の丸みを帯びた形状であることが好ましい。あるいは、上記断面形状が多角(好ましくは六角以上、例えば六角〜二十角)形状であってもよい。軸回りに一定速度で回転させやすいことから、円形または正多角形の断面形状を有する筒体10が好ましく、円形断面を有する(すなわち円筒型の)筒体10が特に好ましい。特に限定するものではないが、筒体10の壁面の厚みは例えば凡そ2〜10mm程度とすることができる。本実施形態に係る筒体10の厚みは4mmである。
【0019】
この筒体10は、軸を横倒しにして、軸方向の一端側10aよりも他端側10bのほうが低くなるように、水平から所定の角度だけ傾斜して配置されている。この傾斜角(筒体10の軸と水平とのなす角)の大きさは、装置1の構成(筒体10の内径、反応ゾーン12の長さ等)や運転条件、CNTの生成効率等を考慮して適宜設定することができ、特に限定されない。通常は、上記傾斜角が0°を超えて凡そ30°以下となるように配置することが適当であり、該傾斜角を凡そ1°〜15°(例えば凡そ3°〜7°)とすることが好ましい。装置1の好ましい構成例では、上記台座が筒体10の傾斜角を調節する機能を備える(すなわち傾斜角可変である)。なお、触媒粉末Pが持ち上がりおよび落下を繰り返しつつ移動する方向を基準として、筒体10の一端側10aが上流側に相当し、他端側10bが下流側に相当する。以下の説明では、筒体10の一端側10aを上流側、他端側10bを下流側ということがある。
【0020】
本実施形態に係るCNT製造装置1は、かかる傾斜姿勢に配置された筒体10を軸回りに回転可能に支持する台座(図示せず)を備え、筒体10の外周(図1に示す例では筒体10の上流側10aと下流側10bの二ヶ所)に固定された伝達部材13を通じて(例えば歯車の噛合いにより)回転駆動機構6からの動力を伝えることで筒体10を所定の速度(回転数)で回転させ得るように構成されている。筒体10を回転させる速度は、装置1の構成(筒体10の内径、反応ゾーン12の長さ等)や運転条件、CNTの生成効率等を考慮して適宜設定することができ、特に限定されない。通常は、筒体10の回転数が0rpmを超えて凡そ10rpm以下とすることが適当であり、凡そ0.1〜5rpm(例えば凡そ0.2〜2rpm)とすることが好ましい。
【0021】
筒体10の内周壁には、図2および図3に示すように、筒体10の軸方向に(図2に示す例では軸と平行に)畝状に延びる複数の凸部20が設けられている。それらの凸部20は、筒体10の一端側10a、他端側10bおよびそれらの中央部の三群に分けられ、各群を構成する凸部20は筒体10の周方向に所定の間隔をあけて(典型的には等間隔で)配置されている。CNTの生産効率等の観点から、通常は、周方向に対して凸部20の数を2以上(典型的には2〜36程度)とすることが適当であり、4以上(典型的には4〜24程度)とすることが好ましい。図2,3に示す例(本実施形態)では、周方向に12の凸部20を等間隔で(すなわち30°間隔で)設けている。
【0022】
なお、図2に示す例では、反応ゾーン12(ヒータ7で囲まれた部分)の軸方向外側(上流側および下流側)にも凸部20を設けているが、凸部20を設ける範囲を反応ゾーン12のみとするか、あるいは反応ゾーン12から軸方向に若干(例えば5〜10cm程度)はみ出す程度の範囲としてもよい。また、図2に示す例では凸部20を軸方向に分割(ここでは三つに分割)しているが、軸方向に一繋がりの形状で凸部20を設けてもよい。凸部20を軸方向に分割して設けることにより、筒体10の熱ひずみを軽減することができる。このことは筒体10の耐久性向上等の観点から有利である。各凸部20の軸方向長さは特に限定されず、反応ゾーン12の長さや上記熱ひずみの影響等を考慮して適宜設定することができる。通常は、上記軸方向長さを凡そ10cm以上(例えば凡そ10cm〜100cm程度とすることが適当であり、凡そ20cm以上(例えば凡そ20cm〜80cm程度)とすることが好ましい。本実施形態では、軸方向の長さが約60cmの凸部20を、各群の間に(すなわち軸方向に)約10cmの間隔をあけて配置している。
【0023】
凸部20の断面形状は、筒体10の内周壁上にある触媒粉末Pの周方向への移動(横滑り)を制限し、筒体10の回転に伴って触媒粉末Pを凸部20に引っ掛けて持ち上げ次いでチャンバ11の内部空間に落下させる(図5参照)ことを可能とする形状であればよい。例えば、図2,5に示すような長方形状のほか、台形状、三角形状等の断面形状とすることができる。通常は、凸部20の前面(回転方向に向いた面)22と筒体10の内周面とのなす角を例えば凡そ60°〜120°とすることが適当であり、凡そ75°〜95°(例えば略90°)とすることが好ましい。このことによって触媒粉末Pの持ち上げおよび落下を効果的に行うことができる。一方、凸部20の後面23と筒体10の内周面とのなす角は、例えば凡そ45°〜150°とすることができ、通常は凡そ60°〜120°(例えば凡そ90°〜120°)とすることが好ましい。
【0024】
特に限定するものではないが、凸部20の高さは、例えば凡そ1mm〜100mm程度とすることができ、通常は凡そ2mm〜30mm程度(例えば2mm〜10mm程度)とすることが適当である。凸部20の高さが小さすぎると、触媒粉末Pを持ち上げては落下させるという機能の効率が低下しがちとなることがある。凸部20の高さが大きすぎると、熱ひずみ等により筒体10の耐久性が低下しやすくなることがある。また、凸部20の幅は、例えば凡そ1mm〜20mm程度とすることができ、通常は凡そ2mm〜10mm程度とすることが適当である。凸部20の幅が小さすぎると該凸部が損傷しやすくなることがあり、凸部20の幅が大きすぎると熱ひずみ等により筒体10の耐久性が低下しやすくなることがある。本実施形態では、凸部20の断面形状が幅4mm、高さ4mmの長方形状であり、前面22および後面23と筒体10の内周壁とのなす角はいずれも略90°である。
【0025】
筒体10の構成材質としては、上記CNT生成温度(典型的には500〜1000℃程度)に見合った耐熱性を有し且つ化学的安定性の高いものを適宜採用することができる。特に好ましい材質として石英ガラス(本実施形態)が例示される。石英ガラス製の筒体(石英管)10の使用は、該筒体の壁面越しに内部の様子を確認しやすいという観点からも好ましい。筒体10の構成に好ましく使用し得る他の材質として、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素等の耐熱性セラミック材料が挙げられる。筒体10の壁面と凸部20とは同一材料により(典型的には一体に)構成されていることが好ましい。
【0026】
筒体10の内径(凸部20が形成されていない部分における内径をいう。)および長さは、所望するCNT生産能力や設備コスト等を考慮して適宜設定することができる。触媒粉末Pの持ち上げおよび落下を利用して該触媒粉末Pと炭素源蒸気とを効率よく接触させるのに適するという観点から、ここに開示されるCNT製造装置は、例えば、内径が凡そ5cm以上の筒体10を用いる態様で好ましく実施することができる。筒体10の内径が小さすぎると、触媒粉末Pの落下距離を十分に確保することが困難となり、該落下を利用して触媒粉末Pと炭素源蒸気とを接触させる効果が十分に発揮され難くなる傾向にある。通常は、筒体10の内径を凡そ10cm以上とすることが好ましく、凡そ15cm以上とすることがより好ましく、例えば凡そ20cm以上とすることができる。また、設備コストや強度等の観点から、通常は、筒体10の内径を凡そ150cm以下とすることが好ましく、凡そ100cm以下(例えば凡そ50cm以下)とすることがより好ましい。本実施形態の装置1における筒体10の内径は25cmであり、外径は25.8cmである。筒体10の長さは、内径の凡そ1倍以上(典型的には1〜10倍程度)の長さの反応ゾーン12を確保し得る長さとすることができる。本実施形態の装置1における筒体10の長さは約200cmであり、そのうち反応ゾーン12の長さは約90cmである。
【0027】
筒体10の軸方向の略中央部はヒータ7によって囲まれており、この囲まれた領域の内側に位置する部分が反応ゾーン12となっている。ヒータ7は、反応ゾーン12をCNTの生成に適した温度(典型的には凡そ500〜1000℃、好ましくは凡そ550〜900℃、例えば凡そ600〜700℃)に加熱可能であればよく、その形状や加熱方式は特に限定されない。好ましく使用し得るヒータ7の一例として電気炉(典型的にはニクロム線ヒータを備える。)が挙げられる。本実施形態では、ヒータ7として断面形状が略半円形の二つの電気炉を使用し、それらの電気炉を向かい合わせて筒体10の略中央部を囲むとともに、両電気炉の対抗部間に若干(例えば5cm〜15cm程度)の隙間を設けて該隙間を筒体10の内部を見通す覗き窓として利用し得るように構成されている。
【0028】
触媒供給部30は、触媒粉末Pを貯めておく触媒貯留槽31と、この触媒貯留槽31からリアクター2の上流蓋3を貫通して設けられたスクリューフィーダ34とを備える。このスクリューフィーダ34は、筒体10の上流側10aから下流に向かって該筒体の軸と略平行に延び、その先端は反応ゾーン12の上流側近傍に至っている。触媒粉末Pは、触媒貯留槽31からスクリューフィーダ34を介して所定の速度で送り出され、上記先端に設けられた触媒供給口38からチャンバ11内に供給される。このように反応ゾーン12またはその近傍に触媒粉末Pを直接供給(投入)することにより、十分に加熱されていない触媒粉末Pが炭素源蒸気Vに接触することで炭素源が液化または固化する事象を防止することができる。かかる観点から、触媒粉末Pの投入位置(触媒供給口38の位置)は、CNTの製造時においてチャンバ11内の温度が使用する炭素源の沸点よりも高い温度(例えば、炭素源としてショウノウを用いる場合には250℃以上、好ましくは300℃以上)となる位置に設定することが好ましい。
【0029】
炭素源供給部40は、炭素源を貯めておく炭素源貯留槽41と、リアクター2の下流蓋4を貫通して設けられた炭素源導入管44とを備える。この炭素源導入管44は、筒体10の下流側10bから上流に向かって該筒体の軸と略平行に延び、反応ゾーン12内の空間を通ってその上流域12aに至っている。常温(典型的には25℃)で固体状または液状の炭素源を用いる場合には、図1に示す例のように、炭素源貯留槽41と炭素源導入管44との間に炭素源気化室42を設け、この気化室42において炭素源貯留槽41からの炭素源を例えば加熱により気化させて炭素源蒸気Vとし、その蒸気Vが導入管44に送り込まれるように構成することが好ましい。
【0030】
炭素源導入管44の先端および該先端付近の側壁には、図4に示すように、反応ゾーン12内に炭素源蒸気Vを直接供給(放出)する炭素源供給口46として機能する貫通孔が、先端の1個および側壁に対向配置された8個(4組)の合計9個形成されている。炭素源導入管44の側壁に形成された炭素源供給口46は、チャンバ11の真上に向けては開口しない位置に(好ましくは略横向きまたは下向きに開口するように)設けられていることが好ましい。このことによって、凸部20から落下する触媒粉末Pが炭素源供給口46を詰まらせる事象を防止することができる。また、炭素源導入管44は反応ゾーン12内を通ってその上流域12aまで延びているので、導入管44内の炭素源蒸気Vの温度低下を防ぐ(すなわち蒸気Vを保温する)ことができる。さらに、炭素源導入管44がヒータ(図示せず)を備え、該ヒータにより導入管44内の炭素源蒸気Vの温度を調整(保温)し得る構成としてもよい。かかる構成によると、導入管44内の炭素源蒸気Vが炭素源供給口46からチャンバ11に供給(放出)されるまでの間、該蒸気Vの温度をより精確に制御する(例えば、より確実に気体の状態に維持する)ことができる。
【0031】
本実施形態に係る装置1は、リアクター2の上流蓋3を貫通する第一ガス供給管51と、下流蓋4を貫通する第二ガス供給管53と、を包含するキャリアガス供給部50を備える。第一ガス供給管51の先端に設けられた第一ガス供給口52は、筒体10の上流側10a(触媒供給口38よりもさらに上流の位置)に開口している。第二ガス供給管53の先端に設けられた第二ガス供給口54は、筒体10の下流側10b(反応ゾーン12よりも下流の位置)に開口している。反応ゾーン12の下流側近傍(反応ゾーン12の下流端と略同位置)には、チャンバ11内のガスを排出可能に構成されたガス排出部(ガス排出管)のガス抜き口14が開口している。第一ガス供給口52および第二ガス供給口54の各々からチャンバ11に供給される非酸化性ガス(キャリアガス)の量と、ガス抜き口14から排出されるガス(上記キャリアガスのほか、炭素源蒸気Vの熱分解により生じた反応ガスや未反応の炭素源蒸気等を含み得る。)の量とのバランスを適切に設定することにより、炭素源蒸気Vが反応ゾーン12よりも上流側および下流側に拡散しないように(換言すれば、炭素源蒸気Vを反応ゾーン12内に留めるように)炭素源蒸気Vの移動をコントロールすることができる。
なお、炭素源導入管44の先端に設けられた炭素源供給口46から供給(放出)される炭素源蒸気Vがその放出の勢いにより反応ゾーン12の上流端を超えて上流側に到達することをよりよく防止するために、炭素源導入管44の先端位置は反応ゾーン12の上流端よりも少し(例えば5cm〜30cm程度)下流側に配置することが好ましい。
【0032】
筒体10の下流側10bを塞ぐ下流蓋4には、反応ゾーン12を通ってチャンバ11内を上流側から下流側へと送られてきた触媒粉末P(典型的には、生成したCNTが上記触媒粉末Pに付着している。以下、これを「CNT付き触媒粉末」ということもある。)を回収する回収部60が連結されている。この回収部60は、CNT付き触媒粉末に塊(凝集)がある場合に該塊をほぐす解砕装置42を備える。筒体10の下流端に到達したCNT付き触媒粉末は、該下流端から落下して解砕装置42に導入される。解砕装置42としては、粉体の塊をほぐす目的で使用される一般的な解砕機(例えば、表面に多数の解砕ピンが植え込まれた二つの円筒体を近接配置して逆方向に回転させ、これら円筒体の間に被処理物を導入して解砕する方式のもの等)を適宜選択して用いることができる。解砕装置42を経たCNT付き触媒粉末は、移送管64内を通って冷却されつつ取出口66へと送られる。移送管64としては、例えば、中空の管内に同軸のスクリューが収容された構成のものを用いることができる。取出口66は、間隔をあけて配置された二つのバルブ66a,66bを備える。これらのバルブを開閉することにより、装置1の運転を止めることなく(すなわち、装置1を連続運転しつつ)CNT付き触媒粉末を外部に取り出すことができる。なお、移送管64は空冷により内容物(CNT付き触媒粉末)が冷却されるように構成されてもよく、あるいは該内容物を強制的に冷却する手段(例えば、一般的なロータリークーラ)を備えてもよい。CNT付き触媒粉末を冷却する前に解砕装置42を通すことにより、上記塊を適切に(例えば、CNTの損傷を抑えて)ほぐすことができる。
【0033】
ここに開示される技術における炭素源としては、CVD法によりCNTを生成可能な種々の炭素(C)含有材料を用いることができる。常温(25℃)において気体、液体、固体のいずれの形態をとる炭素源も使用可能である。例えば、一酸化炭素等の炭素含有ガス;メタン、エタン、プロパン、ブタン等の飽和炭化水素;エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン等の一分子内に一以上の二重結合を含む不飽和炭化水素;アセチレン等の一分子内に一以上の三重結合を含む不飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール等のアルコール;ショウノウ;これらの混合物;等を炭素源として用いることができる。炭素含有率の高い炭素源の使用が好ましい。ここに開示される技術は、常温で液体または固体の炭素源を用いたCNTの製造にも好ましく適用され得る。常温で固体(例えば、昇華性を有する固体)の炭素源を用いる場合には、本発明の適用効果が特によく発揮され得る。例えば、ショウノウ、ナフタレン等を炭素源として好ましく用いることができる。
【0034】
本発明にとり特に好ましい炭素源としてショウノウ(camphor、C1016O)が挙げられる。ショウノウは、植物から簡単に得ることができる(すなわち、化石燃料に依存することなく入手可能である)。したがって、炭素源としてショウノウを用いることにより、炭素源として石油製品(アセチレン、ベンゼン等)を用いる場合に比べて環境負荷が低減するものと期待される。もっとも、ここに開示される技術を適用したCNTの製造に使用されるショウノウは、天然物に由来(天然ショウノウ)するか合成物(合成ショウノウ)であるかを問わず、これらを併用してもよい。d-体(d-camphor)、dl-体およびl-体のいずれのショウノウも使用可能である。これらの異性体の一種のみを用いてもよく二種以上の異性体の混合物を用いてもよい。入手容易性等の観点から、通常は主としてdl-ショウノウを使用することが好ましい。本発明の装置または方法によるCNTの製造における炭素源としては、少なくともショウノウを主成分とするものを好ましく使用することができ、該炭素源がショウノウ以外の成分を含んでいてもよい。純度90質量%以上のショウノウを炭素源に使用する(すなわち、ショウノウ成分の割合が90質量%以上の炭素源を使用する)ことが好ましい。純度95質量%のショウノウの使用がより好ましい。
【0035】
ここに開示される技術における触媒粉末Pとしては、凸部20による持ち上げおよび落下に適することから、粉末状の支持体(support)に触媒金属が担持された形態の触媒粉末Pを好ましく使用することができる。上記触媒金属としては、CVD法において炭素源(例えばショウノウ)の熱分解を触媒し得る一種または二種以上の金属を使用することができる。例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)等から選択される一種または二種以上を触媒金属として用いることができる。FeおよびCoの少なくとも一方を使用することが好ましく、FeおよびCoを組み合わせて使用することが特に好ましい。このことによって、触媒金属としてFeを単独で使用した場合に比べて、より品質のよい(例えば、チューブの形状がより整っている、より結晶性が高い、CNTの構成に関与しないカーボンの堆積量がより少ない、のうち一または二以上を満たす)生成物が得られる。また、触媒金属としてCoを単独で使用した場合に比べて、CNTの生成速度をより高めることができる。好ましい一態様では、触媒金属が実質的にFeおよびCoから構成される。
【0036】
かかる触媒金属を保持する支持体としては、CVD温度(該触媒体の存在下で炭素源を熱分解させる際の雰囲気温度、すなわち反応ゾーン12の温度)において安定な材料であれば特に限定なく使用することができる。支持体を構成する材質の好適例として、アルミナ、シリカ、ゼオライト、マグネシア、チタニア、ジルコニア、活性炭等を挙げることができる。触媒金属の担持に適することおよびCNTを効率よく成長させ得ることから、ゼオライト、シリカゲル等の無機多孔体の使用が特に好ましい。例えば、BET比表面積が400〜800m2/g程度のゼオライトを好ましく使用することができる。なかでも高シリカタイプのゼオライトが好ましい。例えば、SiO2/Al23の比率が10以上(Si/Alの比率が5以上)であるゼオライトが好ましく、SiO2/Al23の比率が100以上(Si/Alの比率が50以上)のものがより好ましい。SiO2/Al23の比率が200以上(Si/Alの比率が100以上、例えば概ね200程度)のものが更に好ましい。例えば、平均粒子径が凡そ0.1μm〜100μm(より好ましくは凡そ0.5μm〜10μm、例えば凡そ1μm〜2μm)の粉末状の支持体を好ましく使用することができる。
【0037】
以下、上記構成の装置を用いてCNTを製造する好適な形態につき、炭素源としてショウノウを用いる場合を例として具体的に説明するが、本発明における炭素源をショウノウに限定する意図ではない。
【0038】
触媒粉末Pとしては、上述のような支持体(好ましくは、高シリカタイプのY型ゼオライト)に上記触媒金属が担持された触媒体を使用することができる。かかる触媒体は、例えば、使用する触媒金属を構成元素として含む化合物であって加熱により該金属の単体を生じ得るもの(該金属の塩等、以下「触媒金属源」ということもある。)を支持体に付与することによって得られる。二種以上の触媒金属を有する触媒体の場合には、各触媒金属に対応した触媒金属源を使用してもよく、二種以上の触媒金属を含む触媒金属源を使用してもよい。このような触媒金属源を支持体に付与した後、必要に応じて該触媒体を加熱することによって(非酸化性雰囲気で加熱することが好ましい。)、触媒金属が単体または合金の形態で担持された触媒体を得ることができる。このときの加熱温度は、例えば凡そ150℃以上(典型的には凡そ150〜300℃)とすることができ、通常は凡そ200℃以上(例えば凡そ200〜250℃)とすることが好ましい。このことによって、触媒粉末(触媒体)の取扱性を向上させることができる。例えば、触媒粉末の吸湿性を低下させて、該粉末を例えばスクリューフィーダ等の触媒粉末導入路を通じてチャンバに送り込む際に該導入路が詰まる等の不具合をよりよく防止することができる。また、触媒粉末の凝集をより高度に防止して、該触媒粉末をより効果的に炭素源蒸気と接触させる(ひいては、より効率よくCNTを生成させる)ことができる。
好ましく使用される触媒金属源としては、対応する触媒金属の酢酸塩(acetate)、硝酸塩(nitrate)、塩化物(chloride)、硫酸塩(sulphate)、アセチルアセトナート(acetyl acetonat)、メタロセン(ferrocene, cobaltcene, nickelocene等)、金属フタロシアニン(Fe-phthalocyanine, Co-phthalocyanine, Ni-phthalocyanine等)、Iron penta carbonyl(Fe(CO5))等を例示することができる。
【0039】
なお、ここでいう「触媒体」の概念には、一種類の触媒金属を単体として有するもの、複数種類の触媒金属をそれぞれ単体として有するもの、複数種類の触媒金属をそれらの合金として有するもの等のほか、一種または二種以上の触媒金属の少なくとも一部が、触媒金属源(例えば、該触媒金属の塩)またはその触媒金属源が部分的に分解して成る化合物の形態で担持されているものも含まれ得る。
【0040】
触媒金属源を支持体に付与する方法としては、従来公知の方法を適宜採用し得る。好ましい一つの付与方法は、適当な溶媒に一種または二種以上の触媒金属源を溶解させて触媒金属源溶液を調製することを含む。該溶液の調製に用いる触媒金属源の種類および量は、目的とする触媒体が有する触媒金属の組成比に応じて定めることができる。例えば、FeおよびCoを触媒金属として有する触媒体を製造する場合であって、Fe源として鉄(II)アセテート((CH3COO)2Fe,以下「IA」と表記することもある。)を使用し、Co源としてコバルトアセテートテトラハイドレート((CH3COO)2Co・4HO,以下「CA」と表記することもある。)を使用する場合には、これらの触媒金属源をIA:CA=1:1の質量比で適当な溶媒(例えば水)に溶解させることにより、FeとCoとを凡そ1:0.7のモル比で有する触媒源溶液を調製することができる。
【0041】
次いで、このようにして調製した触媒金属源溶液を支持体に含浸させる。例えば、該溶液に粉末状の支持体を加えて分散させる。かかる分散を適切に行うために超音波振動を付与してもよい。このとき加える支持体の量は、目的とする触媒体における触媒金属濃度(すなわち、支持体と触媒金属との合計質量に占める触媒金属の質量割合)に応じて決定すればよい。その後、溶媒を除去することによって、支持体に触媒金属源が担持された触媒体を得ることができる。溶媒の除去方法としては、例えば、常圧において必要に応じて加熱条件下で乾燥させる方法、該溶媒(例えば水)を凍らせた状態で減圧により気化させる方法(凍結乾燥法)、等を好ましく採用することができる。なお、触媒金属源溶液を支持体に付与する方法はこれに限定されない。例えば、該溶液を支持体にスプレーする方法等の、従来公知の方法を特に限定なく採用することができる。また、触媒金属源溶液の調製に使用する溶媒は、使用する触媒金属源をよく溶かすものであればよく、特に限定されない。溶媒の除去が容易であるという観点からは、常圧で40〜100℃程度の温度域において容易に気化し得る溶媒が好ましい。例えば、水、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール等)、アセトン、テトラヒドロフラン等から選択される一種類の溶媒または二種以上の混合溶媒を好ましく使用することができる。
【0042】
触媒体における、触媒金属の質量(金属原子換算)と支持体の質量との合計質量に占める該触媒金属の質量の割合(触媒濃度(質量%))は特に限定されない。例えば、触媒濃度が凡そ1〜70質量%の範囲にある触媒体を使用することができる。該触媒濃度が凡そ20%〜60%(好ましくは凡そ25%〜55%、より好ましくは凡そ30%〜50%、特に好ましくは凡そ35%〜45%)の範囲にある触媒体の使用が好ましい。触媒金属濃度が上記範囲よりも低すぎると、CNTの製造効率(例えば、単位時間当たりの収量、触媒金属の質量当たりの収量、使用したショウノウの質量に対する収率等)が低下しがちとなることがある。一方、触媒金属濃度が上記範囲よりも高すぎると、触媒金属の利用効率が低下しやすくなり、その結果、触媒金属の質量当たりのCNT収量が低下傾向となることがあり得る。
触媒金属としてFeおよびCoを使用する場合、触媒体に含まれるFeとCoとの比率は、例えばそれぞれ鉄(II)アセテート(IA)およびコバルトアセテートテトラハイドレート(CA)換算として、IA:CAの質量比が凡そ75:25〜20:80の範囲となる比率とすることができる。該質量比を凡そ60:40〜40:60の範囲とすることが好ましく、凡そ55:45〜45:55(例えば、略50:50)の範囲とすることがさらに好ましい。Fe源として鉄(II)アセテート以外の化合物(例えば硝酸鉄)を用いる場合にも、当該Fe源に含まれるFeの量をIAに換算とした場合のIA:CAの質量比を上記範囲とすることが好ましい。
【0043】
炭素源としてのショウノウは、炭素源気化室42内において加熱により気化され、これにより生じたショウノウ蒸気(炭素源蒸気)Vが炭素源導入管44を通じて炭素源供給口46から反応ゾーン12の上流域に直接供給される。炭素源気化室42においてショウノウを気化させる際の加熱温度は、例えば凡そ150℃以上(典型的には凡そ150〜300℃)とすることができ、通常は凡そ200℃以上(典型的には凡そ200〜250℃、例えば230℃程度)とすることが好ましい。このことによって、該ショウノウ蒸気を気化室42から導入管44へとより適切に送り込むことができる。
炭素源供給部40は、炭素源貯留槽41内から炭素源気化室42に固体ショウノウを供給(補充)可能に構成されている。使用する固体ショウノウは、粒状(例えば、平均直径が1μm〜100μm程度の粒状)の形態に調製されていることが好ましい。かかる粒状形態の固体ショウノウは、炭素源貯留槽41から炭素源気化室42へ移送する操作が容易であり、また安定して効率的に気化させるのに適しているので好ましい。
【0044】
特に限定するものではないが、ショウノウ蒸気および触媒粉末(触媒体)の供給レートは、例えば、1gのショウノウ蒸気(すなわち、1gのショウノウを気化させてなるショウノウ蒸気)に対して、支持体と該支持体に付与された触媒金属源(例えば、硝酸鉄およびCA)との合計質量が例えば凡そ0.02g〜1gの範囲(好ましくは凡そ0.01g〜0.5gの範囲、例えば略1/8g)となる分量の触媒粉末がチャンバ11に供給されるように設定することができる。炭素源供給口46から供給されるショウノウ蒸気の質量(複数の供給口46からの合計供給量)と触媒供給口38から供給される触媒粉末Pの質量とが上記関係を満たすように両者の供給レートを調整することが好ましい。本実施形態に係る装置1(内径250mm、長さ200cmの筒体10を備え、反応ゾーン12の長さが約90cmに設定されている。)では、ショウノウ蒸気の供給レートを例えば凡そ0.5〜10kg/hrとすることができ、通常は上記供給レートを凡そ1〜5kg/hrとすることが適当である。
【0045】
第一ガス供給口52および第二ガス供給口54を通じてチャンバ11に供給されるキャリアガスとしては、非酸化性ガスを用いることが適当である。換言すれば、不活性ガスおよび還元性ガスから選択される一種または二種以上をキャリアガスとして使用することが好ましい。不活性ガスとしては、アルゴン(Ar)ガス、窒素(N2)ガス、ヘリウム(He)ガス等を例示することができる。還元性ガスとしては、水素(H2)ガス、アンモニア(NH3)ガス等を例示することができる。ここに開示される製造方法の好ましい一態様では、上記キャリアガスとして不活性ガス(例えばN2ガス)を使用する。他の好ましい一態様では、上記キャリアガスとして不活性ガス(例えばN2ガス)と還元性ガス(例えばH2ガス)との混合ガスを使用する。かかる混合ガスにおける不活性ガスと還元性ガスとの混合比は、例えば不活性ガス:還元性ガスの体積比が凡そ99:1〜50:50となる比率とすることができ、凡そ95:5〜80:20とすることが好ましい。
【0046】
第一ガス供給口52および第二ガス供給口54の各々から供給されるキャリアガスの量は、ショウノウ蒸気Vが反応ゾーン12よりも上流側および下流側に拡散しないようにバランスさせることが好ましい。両供給口52,54から供給されるキャリアガスの合計量は、ガス抜き口14から排出されるガス量とのバランスを考慮して、例えばショウノウ蒸気Vが反応ゾーン12に滞留する時間が凡そ1分〜60分(好ましくは凡そ3分〜30分)となる程度の流量とすることができる。
なお、本実施形態に係る装置1は、炭素源気化室42において気化されたショウノウの蒸気がキャリアガス(上記のような非酸化性ガスを好ましく使用し得る。)とともに導入管44を通じてチャンバ11に供給されるように構成することができる。例えば凡そ30〜50体積%の濃度でショウノウを含むガス(Nガス等)が炭素源供給口46から放出されるようにするとよい。あるいは、かかるキャリアガスを使用することなく、高濃度のショウノウ蒸気Vが炭素源供給口46から放出されるようにしてもよい。
【0047】
反応ゾーン12の雰囲気温度(すなわちCVD温度)は、例えば凡そ500〜1000℃とすることができる。CNTの製造効率等の観点からは、上記CVD温度を凡そ550〜800℃とすることが好ましく、凡そ600〜700℃(例えば650℃程度)とすることがより好ましい。CVD温度が上記範囲よりも高すぎる場合または低すぎると、CNTの製造効率(例えば、単位時間当たりの収量、触媒金属の質量当たりの収量、ショウノウの質量に対する収率等)が低下傾向となることがある。
【0048】
反応ゾーン12の雰囲気圧力は特に限定されないが、通常は1×103Pa(約7.5Torr)〜200×103Pa(約1500Torr)程度とすることが適当である。上記範囲よりも雰囲気圧力が低すぎるとCNTの製造効率が低下しがちとなり、上記範囲よりも圧力が高すぎると設備コストが嵩む。これらの観点から、例えば10×103Pa〜大気圧(約75〜760Torr)程度の雰囲気圧力を好ましく採用することができる。ここに開示される発明は、例えば、リアクター2の内圧(チャンバ11の雰囲気圧力)が概ね大気圧である態様で好ましく実施することができる。
【0049】
かかる温度および圧力に調整された反応ゾーン12に、上記位置に配置された触媒供給口38および炭素源供給口46から触媒粉末Pおよびショウノウ蒸気Vを供給しつつ、軸を水平から5°〜7°程度傾けて横向きに配置された筒体10を軸回りに例えば凡そ0.2〜2rpmの速度で回転させる。このことによって、図1および図5に示すように、触媒供給口38から押し出されて筒体10の内周壁上に落下した触媒粉末Pが凸部20の前面22に引っ掛かって(係止されて)持ち上げられ、さらに回転すると該持ち上げられた触媒粉末Pが凸部20の頂部(筒体10の内径側の端部)からこぼれて、反応ゾーン12内の空間を通って落下する。かかる持ち上がりおよび落下を繰り返すことにより、反応ゾーン12内のショウノウ蒸気Vと触媒粉末Pとを効果的に接触させて、該ショウノウ蒸気からCNT(典型的には、主として多層CNT)を効率よく生成させることができる。
【0050】
筒体10は上流側よりも下流側が低くなるように傾けて配置されているので、触媒粉末Pは上記持ち上がりと落下を繰り返しつつ反応ゾーン12内を次第に下流側へと移動し、さらに筒体10の下流端からこぼれ落ちて回収部60に導入される。触媒供給口38からチャンバ11に供給された触媒粉末Pが反応ゾーン12の下流端に至るまでの時間(すなわち、触媒粉末Pが反応ゾーン12に滞留する時間)は特に限定されないが、通常は凡そ1分〜30分とすることが適当であり、凡そ2分〜10分(例えば5分程度)とすることが好ましい。上記滞留時間が短すぎると触媒粉末Pの利用効率が低下しがちとなり、該滞留時間が長すぎると時間当たりに回収されるCNT付き触媒粉末の量が少なくなるためCNTの生産効率が低下傾向となる場合がある。
【0051】
ここに開示されるCNT製造方法の好ましい態様によると、使用する炭素源(ショウノウ)に含まれる炭素原子の質量を基準として、凡そ50%以上(さらには凡そ70%以上)の収率が実現され得る。より好ましい態様によると、凡そ85%以上(例えば凡そ90%以上、典型的には90〜99.9%)の収率が実現され得る。換言すれば、炭素源に含まれる炭素原子の質量のうち上記割合がCNT(典型的には多層CNT)に変換され得る。また、チャンバ11に供給した触媒粉末Pの質量に対して、凡そ3倍以上(より好ましい態様では凡そ5倍以上、さらには凡そ7倍以上、典型的には凡そ50倍以下(例えば凡そ30倍以下))の質量のCNT付き触媒粉末を得ることができる。例えば、CNTと触媒粉末とを凡そ3:1〜50:1(典型的には凡そ5:1〜30:1、例えば凡そ7:1〜15:1)の質量比で含むCNT付き触媒粉末が製造され得る。
【0052】
上記CNT付き触媒粉末は、典型的には、触媒粉末を構成する粒子(好ましくはゼオライト粒子)がCNTを含む炭素質生成物で覆われた構成を有する。本発明によると、上記炭素質生成物に含まれる炭素の大部分がCNTを形成している(すなわち、アモルファスカーボンの含有量が少ない)CNT付き触媒粉末を得ることができる。好ましい一態様によると、上記炭素質生成物が実質的にアモルファスカーボンを含まない(例えば、該炭素質生成物のうちCNTが凡そ90質量%以上、好ましくは95質量%以上の)CNT付き触媒粉末が製造され得る。なお、上記炭素質生成物の大部分がCNTを形成していることは、例えば熱重量分析(TGA)により確認することができる。
【0053】
以下、本発明に関する一実施例を説明するが、本発明をかかる具体的製造例に示すものに限定する意図ではない。
【0054】
[炭素源(ショウノウ)の用意]
炭素源としては、島田化学工業株式会社(Shimada Chemicals)製のショウノウ(純度96%)を、粒径1〜100μmの粉末状に調製して使用した。本実施例では1568gのショウノウを使用した。
【0055】
[触媒粉末の用意]
硝酸鉄(IN)13.5gおよびコバルトアセテートテトラハイドレート(CA)6gを300cmの水に溶解させた。この水溶液に、支持体としてのゼオライト粉末(東ソー株式会社製品,Y型ゼオライト,商品名「HSZ−390HUA」,カチオンタイプ=H,Si/Al比=200、平均粒径1〜2μm)5gを添加して超音波で10分間処理した後、凍結乾燥させて微粉化することにより、ゼオライト粉末にINおよびCAが上記質量比で担持された触媒粉末を得た。上記操作を8回(8バッチ)行って196gの触媒粉末を用意した。次いで、この触媒粉末を230℃で加熱処理した。
【0056】
上記で用意したショウノウおよび加熱処理済みの触媒粉末を上記実施形態に係る装置1に供給してCNTを製造した。筒体10の傾斜角は5°にセットした。気化室42におけるショウノウの加熱温度は230℃とした。第一、第二ガス供給口52,54から合計8600cm/分の流量でNガス(キャリアガス)を供給しつつ、反応ゾーン12内の温度を650℃に調整した。このとき、ガス抜き口14を開放しておくことによりチャンバ11内の圧力が概ね大気圧に維持されるようにした。また、炭素源導入管44の外周に設けられたヒータ(図示せず)を稼働することにより、該導入管44がその全長にわたって300℃以上の温度に保持されるようにした。
【0057】
そして、筒体10を0.5rpmの回転数で回転させながら、上記分量の触媒粉末Pを触媒供給口38から1時間かけて連続的に供給するとともに、上記分量のショウノウを気化させてなるショウノウ蒸気Vをキャリアガス(Nガス)とともに炭素源供給口46から1時間かけて連続的に供給した。これにより、チャンバ11に供給された触媒粉末Pは、凸部20により持ち上げられ次いで落下することを繰り返しつつ、約5分かけて反応ゾーン12の下端に到達し、さらに下流側に移動して回収部60へと導入された。この回収部60の解砕装置42、移送管64を経て取出口66から得られたCNT付き触媒粉末の質量(触媒粉末および炭素質生成物の合計質量)は約1.2kgであった。この結果は、使用したショウノウに含まれる炭素原子の概ね50質量%がCNT付き触媒粉末として回収されたことを意味している。上記結果は、ガス抜き口14から排出されるガスに未反応のショウノウ蒸気がほとんど含まれていなかったことと整合するものである。
【0058】
上記CNT触媒粉末は、炭素質生成物と触媒粉末とを凡そ9:1の質量比(体積比では凡そ99:1)で含んでいた。また、TGA分析により、上記炭素質生成物は大部分(約90質量%)が高導電性の多層CNTであり、アモルファスカーボンをほとんど含まないことが確認された。すなわち、本実施例によると、1時間の連続運転によって約1.2kgのCNT付き触媒粉末(約1kgのCNTを含む。)が約50%の収率(炭素原子の質量基準)で製造された。なお、かかる連続運転を終えた後に装置1の各部を点検したところ、リアクター2の内壁面や炭素源導入管44等にショウノウの析出は認められなかった。この結果は、より長時間(典型的には3時間またはそれ以上、例えば8時間またはそれ以上)に亘って装置1を適切に連続運転し得ることを示唆している。以上のように、本実施形態の装置1によると、炭素源としてのショウノウからCNTを極めて効率よく(高純度、高収率、高生産性で)製造し得ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によると、高導電性の多層CNTが高純度で製造され得る。かかるCNTは、例えば、電池やキャパシタ等の電極材料(活物質、導電材等)として有用なものとなり得る。本発明を適用して得られるCNTは、このような電極材料のほか、例えば、各種導電性付与剤、ゴム用添加剤等として好適に利用され得る。本発明の典型的な態様によると、一次的にはCNT付き触媒粉末の形態でCNTが製造される。かかるCNT付き触媒粉末からCNTを分離する方法としては、例えば、化学的処理による方法(例えば、ゼオライトを支持体とする触媒粉末を用いて得られたCNT付き触媒粉末をNaOH水溶液で処理することによりゼオライトを溶解除去する)、超音波振動等の物理的処理による方法等を適宜採用し得る。また、CNT付き触媒粉末の形態のまま(すなわち、触媒粉末を含む形態で)CNT材料として利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】CNT製造装置の概略構成を例示する模式図である。
【図2】筒体の構造を例示する模式的断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】炭素源導入管の先端付近を拡大して示す模式図である。
【図5】筒体の回転にともなう触媒粉末の動きを説明する模式図である。
【符号の説明】
【0061】
1 CNT製造装置
7 ヒータ
10 筒体
10a 一端側(上流側)
10b 他端側(下流側)
11 チャンバ
12 反応ゾーン
12a 上流域
12b 下流域
14 ガス抜き口(ガス排出部)
20 凸部
30 触媒供給部
31 触媒貯留槽
34 スクリューフィーダ
38 触媒供給口
40 炭素源供給部
44 炭素源導入管
46 炭素源供給口
50 キャリアガス供給部(ガス供給部)
52 第一ガス供給口
54 第二ガス供給口
60 回収部
62 解砕装置
P 触媒粉末
V 炭素源蒸気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒粉末に炭素源を接触させることにより該炭素源を熱分解させてカーボンナノチューブを生成させるカーボンナノチューブ製造装置であって:
軸を横向きにして配置され該軸回りに回転可能な筒体、ここで該筒体は前記軸の一端側たる上流側よりも他端側たる下流側のほうが低くなるように傾斜して配置されている;
前記筒体の内側に形成されたチャンバに開口する触媒供給口から該チャンバに触媒粉末を供給する触媒供給部;
前記チャンバに開口する炭素源供給口から該チャンバに炭素源の蒸気を供給する炭素源供給部;および、
前記チャンバの軸方向の少なくとも一部範囲に設定された反応ゾーンをカーボンナノチューブが生成する温度に加熱可能なヒータ;
を備え、
ここで、前記反応ゾーンに面する前記筒体の内周壁には、前記触媒粉末が前記内周壁沿いに周方向へ移動することを制限する凸部が設けられており、
前記筒体を軸回りに回転させることにより、前記内周壁上の前記触媒粉末が前記凸部に引っ掛かって該凸部とともに持ち上がり、次いでその持ち上がった前記触媒粉末が前記引っ掛かりから解放されて前記チャンバの内部空間を落下し、かかる持ち上がりおよび落下を繰り返しながら前記触媒粉末が上流側から下流側へと移動するように構成されている、カーボンナノチューブ製造装置。
【請求項2】
前記凸部は、前記筒体の軸方向に延びる畝状に形成されており、前記筒体の周方向に間隔を開けて複数設けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記炭素源供給口は、前記反応ゾーンまたはその近傍に配置されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記炭素源供給部は、前記反応ゾーン内を延びて前記炭素源供給口に連なる炭素源導入管を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記反応ゾーンよりも上流に配置された第一ガス供給口および前記反応ゾーンよりも下流に配置された第二ガス供給口から前記チャンバに非酸化性ガスを供給可能に構成されたガス供給部と、
前記反応ゾーンまたはその近傍に配置されたガス抜き口から前記チャンバ内のガスを排出可能に構成されたガス排出部と、
をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記炭素源供給口および前記触媒供給口はそれぞれ前記反応ゾーンのうちの上流域またはその上流側近傍に配置され、
前記ガス抜き口は前記反応ゾーンのうちの下流域またはその下流側近傍に配置されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記炭素源として常温で固体の材料を用いる、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記炭素源としてショウノウを用いる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記触媒粉末として、粉末状の支持体に触媒金属源を付与した後、150℃以上で加熱処理を施したものを使用する、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
炭素源の蒸気を触媒粉末に接触させることにより該炭素源蒸気を熱分解させてカーボンナノチューブを生成するカーボンナノチューブ製造方法であって、
前記触媒粉末と前記炭素源蒸気との接触は、軸の一端側たる上流側よりも他端側たる下流側が低くなるように傾斜させて配置された筒体の内側に形成されたチャンバのうち軸方向の少なくとも一部範囲に設定された反応ゾーンにおいて行われ、
前記反応ゾーンに面する前記筒体の内周壁には凸部が設けられており、
前記筒体を軸回りに回転させることにより、前記内周壁上にある前記触媒粉末を前記凸部に引っ掛けて持ち上げること及びその持ち上げられた触媒粉末を前記チャンバの内部空間において前記炭素源蒸気を含む雰囲気に接触させつつ落下させることを繰り返しながら前記触媒粉末を上流側から下流側に移動させる、カーボンナノチューブ製造方法。
【請求項11】
前記炭素源蒸気を前記反応ゾーン内に直接供給し、
前記反応ゾーンよりも上流の位置および下流の位置から前記チャンバに非酸化性ガスを供給するとともに前記反応ゾーンまたはその近傍からガスを排出させることにより、前記炭素源蒸気が前記反応ゾーンよりも上流側または下流側に流出することを防止する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記炭素源として常温で固体の材料を用いる、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記炭素源としてショウノウを用いる、請求項12に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−37113(P2010−37113A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198222(P2008−198222)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(599002043)学校法人 名城大学 (142)
【出願人】(390008431)高砂工業株式会社 (53)
【出願人】(593065785)増岡窯業原料株式会社 (2)
【出願人】(507046521)株式会社名城ナノカーボン (9)
【Fターム(参考)】