説明

カーボンナノチューブの製造

本発明は、凝集形態でのカーボンナノチューブの製造のための触媒の新規な製造方法に関し、該触媒は、低い見かけ密度を特徴とする。本発明はまた、上記触媒、カーボンナノチューブを高い触媒比収率で製造するための使用および該方法を用いて製造されたカーボンナノチューブに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低嵩密度を特徴とする凝集形態でのカーボンナノチューブの製造のための触媒の新規な製造方法に関する。本発明はまた、上記触媒、高い触媒特定収率におけるカーボンナノチューブの製造におけるその使用およびこの方法により製造された低嵩密度のカーボンナノチューブを提供する。
【背景技術】
【0002】
先行技術によれば、カーボンナノチューブは主に、3〜100nmの直径および該直径の数倍の長さを有する円筒状カーボンチューブであると理解される。該チューブは、配向炭素原子の1以上の層からなり、異なった形態のコアを有する。また、カーボンナノチューブは、例えば「カーボンフィブリル」または「中空カーボンファイバー」とも称される。
【0003】
カーボンナノチューブは、専門文献において長い間知られている。Iijima(出版物:S.Iijima、Nature第354巻、第56〜58頁、1991年)は、カーボンナノチューブを発見したと一般に考えられるが、これらの物質、特に、複数のグラファイト層を有する繊維状グラファイト物質は、1970年代または1980年代初期から知られている。TatesおよびBaker(GB 1469930A1、1977年およびEP56004A2)は、炭化水素の触媒分解からの極めて微細な繊維状炭素の堆積物を最初に記載した。しかしながら、短鎖状炭化水素に基づいて製造された炭素フィラメントは、その直径についてさらに詳細に特徴付けられていない。
【0004】
上記カーボンチューブの従来知られている構造は、円筒型である。円筒構造の場合、単壁モノカーボンナノチューブ(SWCNT)と多壁円筒状カーボンナノチューブ(MWCNT)との間で区別される。その製造のための従来法は、例えばアーク放電法、レーザーアブレーション法、化学蒸着法(CVD法)および触媒化学蒸着法(CCVD法)である。
【0005】
アーク放電法によるカーボンチューブの形成は、Iijima、Nature 354、1991年、第56〜58頁により既知であり、このカーボンチューブは、2以上のグラフェン層からなり、および巻き上がることにより途切れのない閉じた円筒を形成し、および互いに入れ子になっている。巻き上がるベクトルに応じて、炭素原子のキラル配置およびアキラル配置が、カーボンファイバーの縦軸に関して可能である。
【0006】
いわゆるヘリンボーン形態を有するカーボンナノチューブが更に記載され(J.W.Geus、欧州特許出願第198558号)、また、竹状構造を有するカーボンナノチューブも記載される(Z.Ren、米国特許第6911260B2号)。
【0007】
単一凝集性グラフェン(いわゆるスクロール型)または破壊グラフェン層(いわゆるオニオン型)がナノチューブの構造についての基礎を形成するカーボンチューブの構造は、Bacon等、J.Appl.Phys.第34巻、1960年、第283〜290頁により最初に記載された。該構造はスクロール型と称される。後に、相当する構造もまた、Zhou等、Science、第263巻、1994年、第1744〜1747頁により、およびLavin等、Carbon 40、2002年、第1123〜1130頁により見出された。
【0008】
近年、スクロール構造の更なる型が、特許出願WO2009/036877A2に記載された。このCNT構造は、組み合わさって積み重なりを形成し、および巻き上がった幾つかのグラフェン層から構成される(マルチスクロール型)。これらのカーボンナノチューブにおける個々のグラフェンまたは黒鉛層は、断面からみた場合、CNTの中心から外縁へ途切れることなく連続的に続く。
【0009】
本発明では、上記の全てのカーボンナノチューブ構造は、以下、簡単に、カーボンナノチューブまたはCNTまたはMWCNT(多壁CNT)とする。
【0010】
カーボンナノチューブの製造について今日知られている方法としては、アーク放電法、レーザーアブレーション法および触媒法が挙げられる。これらの方法の多くでは、カーボンブラック、非晶質カーボンおよび大径を有する繊維が副生成物として形成される。
【0011】
触媒法の場合には、例えば担持触媒粒子上の堆積と、ナノメーター範囲の直径を有するインサイチュにより形成された金属中心上の堆積との間で区別することができる(いわゆる流れ法)。
【0012】
反応条件下でガス状である炭化水素からの炭素の触媒堆積による製造では(以下、CCVD、触媒炭素蒸着)、アセチレン、メタン、エタン、エチレン、ブタン、ブテン、ブタジエン、ベンゼンおよび更なるカーボン含有出発物質が、可能な炭素供与体として挙げられる。従って、触媒法により得られるCNTは、好ましく用いられる。
【0013】
カーボンナノチューブの触媒法についての先行技術は、以下に集約する。
【0014】
通常、触媒は、金属、金属酸化物または分解性もしくは還元性金属成分を含む。例えばFe、Mo、Ni、V、Mn、Sn、Co、Cuおよび他の亜族元素が、触媒のための金属として先行技術に記載される。通常、それぞれの金属のほとんどは、ナノチューブの形成に役に立つ傾向を有するが、高収率および非晶質炭素の低含有量が、先行技術に従って上記金属の組合せに基づく金属触媒により有利に達成される。
【0015】
不均一金属触媒は、種々の方法により製造することができる。本発明では、例えば担体物質上での沈殿、担体物質の含浸、担体の存在下での触媒活性物質の共沈、触媒活性金属化合物と単体物質との共沈、または触媒活性金属化合物と不活性成分との共沈が挙げられる。
【0016】
WO−A2006/050903から明らかな通り、カーボンナノチューブの形成および形成されるチューブの特性は、触媒として用いる金属成分または複数の金属成分の組み合わせについて、必要に応じて用いる触媒担体物質および触媒および担体の間の相互作用について、出発物質ガスおよび分圧について、水素または更なる気体の混合物について、反応温度についておおよび用いる反応器について複雑に依存する。
【0017】
CNTの製造のための特に有利な触媒系は、Fe、Co、Mn、MoおよびNiからの2以上の元素を含む金属または金属化合物の組み合わせに基づく。これに関して、WO−A2006/050903およびそこに記載の文献を参照し得る。
【0018】
この出願から、カーボンナノチューブ、特に3〜150nmの直径および100を越える直径に対する長さのアスペクト比を有するカーボンナノチューブの、Mn、Co、好ましくはモリブデン、並びに不活性物質を含む不均一触媒による炭化水素の分解による製造方法が既知である。担持およびバルク触媒はいずれも記載され、上記方法により製造することができ、および予備処理の有無に拘わらず用いることができる。実施例では、触媒は、空気中で(すなわち、酸化的に)400℃〜450℃の温度にて焼成される。
【0019】
100nm未満の直径を有するカーボンナノチューブの製造は、最初に、EP205556B1に記載された。この製造について、軽い(すなわち、短鎖および中鎖脂肪族または単核または二核芳香族)炭化水素および鉄系触媒が用いられ、これにより、炭素担体化合物が800〜900℃を越える温度において分解する。
【0020】
WO86/03455A1は、3.5〜70nmの一定直径、100を越えるアスペクト比(長さ対直径比)およびコア領域を有する円筒構造を有するカーボンフィラメントの製造を記載する。このフィブリルは、フィブリルの円筒軸の周りに同心円上に配置される、多くの規則正しく並んだ炭素原子の連続層からなる。可能性のある触媒として、極めて一般的に「適当な金属含有粒子」が記載されるが、実施例は、例えば水溶液中での鉄イオンによる種々の酸化アルミニウムの含浸により得られることを記載する。予備処理の種々の方法が記載されている。CNT成長をベンゼンから活性化するための酸化アルミニウムにより担持される鉄触媒の1100℃までの温度での還元焼成が記載される。しかしながら、担体触媒の場合には、触媒金属成分を含有する触媒活性スピネル構造は、焼成中に形成されない。非触媒活性担体は、層状構造(LDH=層状複水酸化物構造)またはスピネル構造であってよいが、これは触媒活性成分(Fe、Co、Ni)へ結合しない。これは、M(II)/M(III)金属イオンが、触媒活性Fe、CoまたはNiイオンに担体中で交換されないことを意味する。担体触媒の場合には、触媒活性中心は、非活性LDHまたはスピネル構造の他にクラスター中に存在する。多くとも少量のCo(Fe、Ni)(<5%)は、Al(界面)で結合する。従って、高い還元温度は、特に水素中において、担持Coクラスター(Fe、Niクラスター)の焼結のみを加速し、これは、より厚いCNTをもたらし、および活性を更に低下させるが、但し、Coクラスター寸法(Fe、Ni)は、CNT合成に適当な最大寸法を超える。
【0021】
従って、WO86/003455A1は、そこに記載の担持触媒は、900℃での水素予備処理に拘わらず活性ではないか、またはほんの僅かにのみ活性であることを開示する。担持触媒では、エピタキシャル成長による触媒粒子の分解は、バルク触媒によるエピタキシャル成長とは著しく異なって進行し、その開示は、バルク触媒の更なる最適化について教示しない。
【0022】
最初に、Moy等(US7198772B2およびUS5726116B2)は、異なったフィブリル凝集体形態について報告する。Moy等は、3つの異なった形態、鳥の巣構造(BN)、コーマ糸構造(CY)およびオープンネット構造(ON)を区別する。鳥の巣構造(BN)では、フィブリルは、鳥の巣の構造と同様に絡み合ったフィブリルの球が形成されるような形態で不規則に絡まって配置される。ヤーン構造(CY=コーマ糸)は、同じ相対配向を主に有するカーボンナノチューブの束から構成される。オープンネット構造(ON)は、フィブリルが互いに緩く織り合わされたフィブリル凝集体により形成される。CY構造およびON構造から形成された凝集体は、BN構造の凝集体より容易に分散可能であると言われ、すなわち、個々のCNTは、凝集体からより良好に分離し、および分散することができる。これは、例えば複合材料の製造に有利であると言われる。CY構造は、この観点から特に好ましいと言われる。
【0023】
Moy等は同様に、凝集体の巨視的形態は、触媒担体物質の選択によってのみ決定されることを記載する。一般に、特別な担体物質から製造される触媒は、鳥の巣構造を有するフィブリル凝集体を引き続いて製造するが、CYまたはON構造を有する凝集体は、担体物質が、1以上の簡単な開裂可能な平面を有する場合に形成されるだけである。好ましいのは、例えばガンマ−酸化アルミニウムまたは酸化マグネシウムのような担体物質であり、これらは、板状、プリズム状またはリーフ状触媒から構成される。その例として、活性金属として鉄を有する触媒が挙げられ、これは、フィブリル合成による担体物質としてMartin Marietta Magnesia Specialties,LLCからの酸化アルミニウム(ALCOAからのH705(登録商標))または酸化マグネシウムによりCYまたはON凝集体構造を形成する。一方、Degussaからの酸化アルミニウムOxideCの担体物質としての使用は、BN構造を有するフィブリル凝集体をもたらす。
【0024】
これらの記載の触媒は、活性金属の固体担体上への含浸または沈殿により製造され、すなわち、活性金属は、所定の担体物質の表面上にある。担体粒子は、反応後に少なくとも部分的に未だ未変換である。
【0025】
しかしながら、その高い活性により、バルク触媒は、大規模に触媒合成を行うために重要である。担持触媒系において、活性金属は(不活性)担体物質の表面上のみにあるが、共沈球形混合酸化物の場合には、触媒活性金属は、他の金属酸化物と共に触媒粒子内で均質に分配される。ここでは、非触媒活性金属は、バインダーおよびスペーサーとして働く。理想的には、この触媒は、反応の間に完全にこじ開けられ、全ての活性金属中心が反応について利用可能となる。元の触媒粒子は、完全に破壊される。これらの混合酸化物触媒の幾つかは、同様に、カーボンナノチューブの合成に用いられる。
【0026】
既に上に記載の開示において、Moy等は、鉄、モリブデンおよび酸化アルミニウムに基づく共沈触媒を、カーボンナノチューブの合成について研究する。このような混合酸化物触媒は一般に、活性金属での装填をより多くすることができるので、担体触媒と比べて増加した効率性により区別される。全ての場合において、これらの混合酸化物触媒から合成されたCNT凝集体は、鳥の巣構造(BN)を有した。
【0027】
WO2009/036877A2では、Meyer等は、ロール状構造を有するカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ粉末を開示する。従って、好ましい実施態様では、用いる触媒は、触媒活性金属化合物CoおよびMnと少なくとも1つの更なる成分の共沈により製造される。触媒を状態調節するために、酸化雰囲気中における状態調節が、本文および実施例のいずれにも提案される。
【0028】
先行技術から未解決の問題としては、共沈触媒を用いる場合に、凝集体形態を簡単に調節することができることである。
【0029】
さらに、高い活性含有量に起因して、高い嵩密度を有するCNT凝集体を生じさせることは、触媒をもたらす共沈触媒の製造および処理について、記載の先行技術からの記載の方法の共通の特徴である。
【0030】
この出願時に未公開であるDE102009038464では、カーボンナノチューブの絡み合って丸まったヤーンの形態でのカーボンナノチューブの凝集体の束およびこれから得られるカーボンナノチューブの凝集体の製造方法が記載される。カーボンナノチューブ凝集体は、特に好ましくは50〜150kg/mのENISO60に従うバルク密度を好ましく有することが開示される。合成は、酸化的焼成触媒により行われるが(実施例)、得られる収率は未だ不十分である。
【0031】
CNTの収率A[g(CNT)g/g(cat)]および嵩密度S(g/lまたはkg/m)はいずれも触媒の特性であるので、収率と嵩密度との比は、触媒量(Q):
Q=A/S×1000(g・l/g
を記載するためのパラメーターとして適当である:
【0032】
カーボンナノチューブの製造のための触媒の量は、高収率および可能な限り低い嵩密度により記載することができるので、可能な限り高いQの値は、重要である。
【0033】
先行技術からの触媒は、2〜3g・l/gの範囲のQについての値を有するCNTを生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】英国特許出願公開第1469930号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第56004号明細書
【特許文献3】欧州特許出願第198558号明細書
【特許文献4】米国特許第6911260号明細書
【特許文献5】国際公開第2009036877号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2006050903号パンフレット
【特許文献7】欧州特許第205556号明細書
【特許文献8】国際公開第86/03455号パンフレット
【特許文献9】米国特許第5726116号明細書
【特許文献10】米国特許第7198772号明細書
【特許文献11】独国特許第102009038464号明細書
【非特許文献】
【0035】
【非特許文献1】S.Iijima、「Nature」、第354巻、第56〜58頁、1991年
【非特許文献2】Bacon等、「J.Appl.Phys.」、1960年、第34巻、第283〜90頁
【非特許文献3】Zhou等、「Science」、第263巻、1994年、第1744〜1747頁
【非特許文献4】Lavin等、「Carbon」、第40巻、2002年、第1123〜1130頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
本発明の目的は、先行技術の上記欠点、特に高活性、すなわち高収率としばしば結びつく生成物の高い嵩密度を解消する共沈触媒を用いるカーボンナノチューブの製造方法を提供することであった。
【0037】
活性または触媒の(触媒)比収率Aは、本発明の範囲では、A=質量CNT生成物(g)/乾燥質量触媒(g)として定義される。
【0038】
更なる解決すべき本発明の課題、例えば可能な限り経済的である製造方法の提供等は、更なる記載から当業者に明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0039】
意外にも、共触媒金属触媒、還元工程を含むその製造方法、およびカーボンナノチューブの製造におけるその使用は、先行技術の記載の欠点を改善することができることを見出した。
【0040】
従って、本発明は、低嵩密度で凝集体として高収率および高純度で得られることを特徴とするカーボンナノチューブの製造に用いることができる共沈触媒の製造のための、還元工程を含む方法を提供する。
【0041】
本発明はまた、還元工程を含むこの方法により製造された共沈触媒、本発明による触媒を用いるカーボンナノチューブの製造方法、ならびにこのCNT製造方法により低嵩密度で高収率および高純度で製造されるカーボンナノチューブを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明による触媒を用いて製造されるカーボンナノチューブは、130g/L以下、好ましくは120g/L未満および/または110g/L未満、特に好ましくは100g/L未満、さらに特に好ましくは90g/L未満の嵩密度を有する。確立すべき最小嵩密度は、技術要素により決定され、約20g/Lまたは30g/Lである。嵩密度は、EN ISO 60に従って決定する。
【0043】
カーボンナノチューブは、>90重量%の純度、好ましくは95重量%の純度、更に特に好ましくは>97重量%の純度を有する。
【0044】
好ましい実施態様では、処理触媒を用いてカーボンナノチューブを、3g・L/g、特に好ましくは3.5g・L/gおよび>4.5g・L/g、さらに特に好ましくは>5g・L/gまたは>6g・L/g、極めて特に好ましくは>7g・L/gの比で製造することが可能である。特定の実施態様では、CNTを、>8、9、10、11または12g・L/gの比Qにおいて製造することも可能である。
【0045】
更なる好ましい実施態様では、製造されるカーボンナノチューブは、大部分は、多壁CNT(MWCNT)および/または多重スクロールCNTである。
【0046】
カーボンナノチューブは、3〜100nmの直径および少なくとも5の長さと直径比を好ましく有する。
【0047】
用いる触媒は、共沈により製造する。適当な出発生成物および方法は、例えばWO2007/093337A2(第3〜7頁)およびEP181259(第7/8頁)に記載される。
【0048】
触媒の製造の特に好ましい実施態様は、以下の記載において説明する:
【0049】
共沈に用いる金属前駆体は、層状構造(以下、「層状複水酸化物」についての略称として「LDH」と称する)に加えて、特にスピネルが沈殿による製造において焼成により形成することができるように選択する。LDHは、一般構造:
[M(II)2+(l−x)M(III)3+(OH)x+[Am−x/mx−・n(HO)
〔式中、M=金属、およびA=アニオン、例えば炭酸塩または硝酸塩、純粋相について0.2≦x≦0.33、混合相もまた0.1≦x≦0.5で可能であり、nは、0.5および4の間であり、mは、アニオン、例えば純粋相ハイドロタルサイト=MgAl(CO)(OH)16・4HOの電荷により与えられる〕
を有する。ここで、M(II)=Mg、M(III)=Al、x=0.25およびn=0.5、8個の式単位は、記載の構造を与える。スピネルは、組成物M(II)M(III)(M(II)は、二価金属を表し、M(III)は、三価金属を表す)により記載することができる。
【0050】
前駆体は、触媒が沈殿する金属塩溶液中に存在する。この溶液は、カーボンナノチューブの形成を触媒する少なくとも1つの金属を溶解形態で含有する。適当な触媒活性金属は、例えば全ての遷移金属である。特に適当な触媒活性金属の例は、Fe、Ni、Cu、W、V、Cr、Sn、Co、MnおよびMoである。極めて特に適当な触媒活性金属は、Co、MnおよびMoである。金属塩溶液は、少なくとも1つの更なる金属成分を更に含有し、これは、触媒処理の更なる工程において担体物質を形成するか、または遷移金属と共に触媒活性混合化合物を形成する。
【0051】
特に適当な二価金属は、Mg(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)、Fe(II)、Zn(II)およびCu(II)である。特に適当な三価金属の例は、Al(III)、Mn(III)、Co(III)、Ni(III)、Fe(III)、V(III)、Cr(III)、Mo(III)および希土類金属である。
【0052】
種々の出発化合物を用いることができるが、これらは、用いる溶媒に可溶性であり、すなわち、共沈の場合には組み合わさって沈殿してもよい。このような出発化合物の例は、酢酸塩、硝酸塩、塩化物および更なる可溶性化合物である。
【0053】
好ましい溶媒は、短鎖(C1〜C6)アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールもしくはブタノール、および水ならびにこれらの混合物である。水性合成経路は、特に好ましい。
【0054】
沈殿は、例えば、温度、濃度における変化により(溶媒の蒸発によっても)、pH値における変化により、および/または沈殿剤またはその組み合わせの添加により行うことができる。
【0055】
適当な沈殿剤の例は、炭酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、ウレア、アルカリ金属炭酸塩もしくはアルカリ土類金属炭酸塩およびアルカリ金属水酸化物もしくはアルカリ土類金属水酸化物の上記溶媒中での溶液である。
【0056】
沈殿は、不連続または連続的に行うことができる。連続的沈殿のために、金属塩溶液および必要に応じて沈殿剤および更なる成分を、輸送装置により、高い混合強度を有する混合装置中において混合する。スタティックミキサー、Y−ミキサー、多積層ミキサー、バルブ補助ミキサー、マイクロミキサー、(2成分)ノズルミキサーおよび当業者に既知の更なる類似のミキサーが好ましい。
【0057】
沈殿挙動を改良するために、および製造した固体の表面改質のために、表面活性物質(例えばイオン界面活性剤もしくは非イオン界面活性剤またはカルボン酸)を添加することができる。
【0058】
特に水溶液から、例えば炭酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、ウレア、アルカリカーボネートおよび沈殿剤としてのヒドロキシドの添加により触媒を形成する成分を共沈させることは有利であり、すなわち好ましい。
【0059】
ある実施態様では、触媒活性金属化合物の連続共沈は、触媒処理の更なる工程において、担体物質または触媒活性混合化合物のいずれかを形成する少なくとも1つの更なる成分と共に行う。このような更なる成分の例としては、Al、Mg、Si、Zr、Ti等または当分野において当業者に既知の従来使用される混合金属酸化物形成性元素等が挙げられる。更なる成分の含有量は、触媒の全質量を基準に1〜99重量%であってよい。好ましくは、本発明による触媒は、5〜95重量%の更なる成分の含有量を有する。
【0060】
固体の形態で得られる触媒は、先行技術に既知の方法、例えばろ過、遠心分離、蒸発による濃縮および濃縮により、出発物質溶液から分離することができる。遠心分離およびろ過が好ましい。得られる固体は、更に洗浄することができ、または得られたまま更に直接使用することができる。得られる触媒の取り扱い性を向上させるために、乾燥させることができる。
【0061】
好ましい遷移金属組み合わせは、成分マンガンおよびコバルトを、必要に応じてモリブデンの添加によりベースとする。これらの成分に加えて、1以上の金属成分を添加することができる。その例は、全ての遷移金属、好ましくはFe、Ni、Cu、W、V、Cr、Snに基づく金属成分である。
【0062】
こうして得られた触媒は、未だ未処理であり、好ましくは、金属形態での活性成分の含有量を基準に2〜98モル%Mnおよび2〜98モル%Coを含有する。10〜90モル%Mnおよび10〜90モル%Coの含有量は、特に好ましく、25〜75モル%Mnおよび25〜75モル%Coの含有量は、極めて特に好ましい。MnおよびCo、またはCoおよびMoの含有量の合計は、上記の更なる元素を添加する場合には、必ずしも100モル%ではない。0.2〜50.0モル%の1以上の更なる金属成分を添加することが好ましい。例えばMoは、0〜10モル%モリブデンの範囲で添加することができる。
【0063】
特に好ましいのは、MnおよびCoの質量により同様の量を含有する触媒である。2:1〜1:2、特に好ましくは1.5:1〜1:1.5のMn/Co比は好ましい。
【0064】
触媒の他の好ましい形態は、好ましくは、金属形態での活性成分の含有量を基準に2〜98モル%Feおよび2〜98モル%Moを含有する。5〜90モル%Feおよび2〜90モル%Moの含有量は、特に好ましく、7〜80モル%Feおよび2〜75モル%Moの含有量は、極めて特に好ましい。FeおよびMoの含有量の合計は、上記の更なる元素を添加する場合には、必ずしも100モル%ではない。0.2〜50モル%の1以上の更なる金属成分を添加することが好ましい。
【0065】
共沈により製造される混合触媒は、本発明により還元される(還元工程、還元焼成)。
【0066】
還元(還元焼成)は、好ましくは200〜1000℃の範囲、特に好ましくは400〜900℃の範囲、極めて特に好ましくは700〜850の範囲の温度範囲で行う。還元工程の更に好ましい温度範囲は、400〜950℃、極めて特に好ましくは、680〜900℃、特に700〜880℃の範囲である。
【0067】
還元時間は、選択温度範囲に依存する。t=0.10〜6.00時間、特に0.15〜4.00時間、さらに特に0.20〜2.00時間の範囲の還元時間は好ましい。
【0068】
水素(H)は、還元ガスとして用いる。純粋形態(100vol%H)で、または例えば5vol%〜50vol%H、または>50vol%H、特に好ましくは>80vol%Hの濃度範囲で不活性ガスとの混合物で用いることができる。
【0069】
還元性であるが炭素を含まず、反応条件下で気体状である全ての化合物を還元性ガスとして用いることも更に可能である。その例は、アンモニア、ヒドラジンまたはボランである。
【0070】
還元性ガスは、ほとんど炭化水素成分を含有しない(<10vol%、特に<5vol%)。
【0071】
還元は、圧力20ミリバール〜40バール、好ましくは1〜20バール、特に好ましくは1〜4バールにて行うことができる。100ミリバールから標準圧(約1atmまたは1013バール)の範囲も同様に好ましい。
【0072】
還元工程の更なる実施態様では、触媒は、CNT合成からの排ガスにより、必要に応じて所望の温度に加熱して還元する。これは、例えばCNT合成とは別の更なる反応器中で空間的に分離して、またはCNT合成の反応器中で行うことができる。
【0073】
可能性のある実施態様では、共沈混合触媒は、還元工程前に酸化的に焼成する。焼成工程は、硝酸塩の除去および酸化物および圧力依存および温度依存である相構造の形成を行う。好ましくは、酸化焼成は、200℃〜1000℃、特に好ましくは300℃〜1000℃の温度にて、20ミリバール〜40バールの圧力にて、低圧にて、過剰の圧力にてまたは特に常圧において行う。酸化焼成は、空気中(N中に約20vol%Oに対応)で、純粋酸素中で、不活性ガスで希釈した空気中でまたは希釈酸素中で行うことができる。対応する条件下で還元性である酸素含有化合物は、例えば酸化窒素、過酸化物、ハロゲン酸化物、水等も可能である。
【0074】
他の可能性のある実施態様では、触媒は、不活性ガス(窒素、希ガス、CO、特に好ましくはNおよびアルゴン、極めて特に好ましくはN)中で還元工程前に焼成する。好ましくは、この焼成は、200℃〜1000℃、特に好ましくは400℃〜900℃、さらに特に好ましくは700〜850℃の温度にて、20ミリバール〜40バールの圧力において、低圧において、過圧にて、または特に常圧において行う。
【0075】
更なる可能性のある実施態様では、酸化的不活性および還元性焼成の組み合わせは、還元工程前に、コバルトの焼結を還元するために、およびより高温にて相を調節するために行う。従って、個々の工程について上記の条件を確立することができる。
【0076】
例示的な実施態様では、触媒は、約700℃にてH中で還元する。この温度は、コバルト酸化物の還元にとって十分である。還元触媒は、引き続いて不活性化され、次いでより高い温度(焼き戻し)にて、例えば約850℃にて、窒素中で維持する。不活性化(薄い酸化物層での元素Coの被覆)は、酸化物層は、Co粒子の運動を低下させるので、引き続きの焼き戻し中に焼結からCoを保護する。焼き戻しは、不活性成分の構造化を向上させるか、または結晶子相を調節する働きをする(例えば、γ−アルミニウムのθ−アルミニウムへの変換)。
【0077】
本発明による方法の更なる可能性のある実施態様では、触媒は、薄酸化物層、例えば酸素ガスまたは酸素含有ガスまたはガス混合物で、還元工程後に再び不活性化する。これは、空気中で、安定した取り扱い(輸送、充填作用等)を可能とし、長期間の試験において実施することが可能である。この不活性化は、好ましくは、ガスまたは5vol%までの酸素、好ましくは0.001〜5.000vol%の酸素を含有するガス混合物を、室温にて少なくとも10分間、おおよそまたは少なくとも15分間通過させることにより行い、次いで酸素含有量をガス混合物中で段階的に20vol%酸素へ増加させる。酸素含有量を20vol%へ増加させるまでの時間を選択してより長くすることもできるが、これにより触媒に損傷を与えないようにする。好ましくは、触媒の温度を監視し、水素化の得られる熱による加熱を、ガス流を調節することにより防止する。不活性化は、対応する条件下で還元性である酸素含有化合物、例えば酸化窒素、過酸化物、ハロゲン酸化物、水等により行うこともできる。不活性化は、<100℃、好ましくは<50℃、特に好ましくは<30℃の温度にて行う。特に好ましくは、不活性化は、窒素中で希釈空気により行う。
【0078】
還元工程、焼成および不活性化工程は、それに適した加熱炉、例えば管またはマッフル炉中で、またはそれに適した反応器中で有利に行う。この工程は、流動床および移動床反応器並びに回転炉中で、およびCNTの製造に用いる合成反応器中で行うこともできる。
【0079】
本発明の触媒は、カーボンナノチューブの製造に有利に用いることができる。
【0080】
本発明は、さらに、本発明の触媒を用いるカーボンナノチューブの製造を提供する。
【0081】
カーボンナノチューブの製造は、反応器の種々の型において行うことができる。その例としては、本発明では、固定床反応器、管状反応器、回転式管状反応器、移動床反応器、気泡形成性乱流または照射流動床、名称内部または外部循環流動床が挙げられる。例えば上記クラスに含まれる粒子で充填された反応器中へ触媒を導入することも可能である。これらの粒子は、不活性粒子であってよく、および/または完全にまたは部分的に更なる触媒活性物質から構成されてよい。これらの粒子は、カーボンナノチューブの凝集体であってもよい。この方法は、連続的または不連続的に、例えば触媒の供給および消費触媒で形成されるカーボンナノチューブの排出のいずれにも連続的または不連続的に参照しながら行うことができる。
【0082】
出発物質として軽炭化水素、例えば脂肪族化合物およびオレフィン等が考慮される。しかしながら、アルコール、一酸化炭素、特にCO、ヘテロ原子の有無に拘わらず芳香族化合物、および官能基化炭化水素、例えばアルデヒドまたはケトン等を、それらが触媒により分解されない限り用いることもできる。上記炭化水素の混合物を用いることもできる。特に、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタンまたは高級脂肪族化合物、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエンまたは高級オレフィンまたは芳香族炭化水素または一酸化炭素またはアルコールまたはヘテロ原子を有する炭化水素が適当である。好ましいのは、短鎖−および中鎖脂肪族または単核または二核芳香族炭化水素ならびに置換されていてもよい環式脂肪族化合物である。x=1〜4の炭素数xを有する脂肪族化合物(C2x+2)およびオレフィン(C)は、特に好ましく用いる。
【0083】
炭素を与える出発物質は、ガス形態で供給することができ、または反応炉または上流に配置された適当な装置中で気化することができる。水素または不活性ガス、例えば希ガスまたは窒素は、出発物質ガスへ添加することができる。カーボンナノチューブの製造のための本発明による方法を、不活性ガスの点火または任意の所望の水素を有する、および有さない幾つかの不活性ガスの混合物の添加により行うことが可能である。好ましくは、反応ガスは、炭素担体、水素および必要に応じて優位性を反応物分圧に確立するための不活性成分から構成される。出発物質または生成物ガスの分析のための不活性標準としてまたは監視する方法において検出補助剤として反応中に不活性中である成分の添加も考えられる。
【0084】
製造は、雰囲気圧を越える、および雰囲気圧未満の圧力にて行うことができる。本発明の方法は、0.05バール〜200バールの圧力にて行ってよく、0.1〜100バールが好ましく、0.2〜10バールが特に好ましい。温度は、300℃〜1600℃の温度範囲内で変化させることができる。しかしながら、温度は、分解によるカーボンの堆積は、十分に素早く行われるように十分に高くなければならないが、気相中で炭化水素の顕著な自己熱分解を生じさせてはならない。これは、得られる物質中に非晶質炭素の高い含有量を生じさせ、好ましくない。有利な温度範囲は、500℃〜800℃である。550℃〜750℃の分解温度が好ましい。
【0085】
触媒は、反応炉中へ回分式または連続的に導入することができる。
【0086】
カーボンナノチューブ製造方法の特定の実施態様では、触媒は、カーボンナノチューブへの炭化水素(HC)の反応のための希釈手順(低HC含有量)に用い、他の等しい反応条件での低嵩密度をも可能とする。
【0087】
好ましい実施態様では、30〜90vol%、好ましくは50〜90vol%の炭化水素含有量を用いる。
【0088】
窒素のような不活性ガス、並びに一酸化炭素または水素のようなガスを、更なるガスとして添加することができる。
【0089】
意外にも、本発明による触媒は、カーボンナノチューブの製造において、高い焼成温度でさえ高い表面積を保有し、従って、CNT反応器中で素早く作用し始め、すなわち、活性層を通過する必要がないことを見出した。
【0090】
焼成し、それにより酸化雰囲気中で高温により不活性化した触媒を再活性化することも、還元工程により更に可能であり、すなわち、「過焼成」された触媒を、還元により再び再活性化することができる。
【0091】
所望の方法により、還元工程および酸化または不活性焼成工程を適当に確立することにより、調節可能な厚みを有するCNTのための触媒を製造することが可能である。これは、重量%軸に沿ってシフトするCNTを含有する複合材料のいわゆるパーコレーション曲線、従って、複合材料の伝導性を、特にパーコレーション閾値の領域において、実質的により正確に確立することを、専らCNTの質量含有量によって可能となる以上に可能とする。パーコレーション曲線は、複合材料の比抵抗を、CNTを有するマトリックス(例えばポリマー)の充填度の関数としてプロットした場合に得られる曲線に対応する。通常、抵抗は、比導電性マトリックスの場合、最初は極めて高い。充填度が増加すれば、CNTの導電性パスは、複合材料中に次第に形成される。連続的な導電性パスが形成されるとすぐに、抵抗は、急速に降下する(パーコレーション閾値)。パーコレーション閾値に達すると、抵抗は、充填度が著しく増加した場合でも極めて遅くしか降下しない。例となる実施態様では、目的となる酸化的な予備処理により、特に、高い酸化的な予備処理温度により、引き続きの還元焼成による(再)活性化により、CNT直径を意図的に増加させることが可能である。より大きい直径を有するCNTは、複合材料における質量によって、より高いCNT量へのパーコレーション閾値のシフトをもたらす。従って、該効果を利用して上記閾値を正確に確立することができる。
【0092】
更なる例となる実施態様では、CNT製造から得られるCNTの厚みは、本発明によるCo含有触媒により、還元焼成温度が増加するので増加することが見出された(おそらく、生じるコバルトの焼成による)。従って、CNTの厚みは、約10〜50nm、特に10〜40nm、特に10〜30nm、および11〜20nm、他の実施態様では16〜50nmの範囲で調節することができるので、CNT/ポリマー複合材料のパーコレーション曲線は同様に、例えばより高いCNT含有量へ意図してシフトさせることができる。
【0093】
CNTの直径分布の幅は同様に、意図的に調節することができる。
【0094】
より高い処理温度またはより長い処理時間(温度調節)が、結晶質相の意図した調節のために、例えばγ−アルミナ相のθ−アルミナ相への変換のために必要である場合、より高い温度でのこの処理は、CNTの厚みについての同時の影響が望ましくない場合、好ましくは不活性条件下で行うべきである。
【0095】
ある実施態様では、約700℃での還元焼成は、短時間において活性成分を還元するために既に十分に素早いことが見出された。
【0096】
本発明の方法は、触媒製造の最後の副工程において行うことが更に有利である。その結果、同じ触媒前駆体を用いながら、還元工程の異なった実施態様による他の同一のCNT製造方法条件で異なった生成物品質を意図的に得ることが可能である。例えば、還元温度>=800℃では、本明細書に記載された触媒で、個々のCNTが、例えば巨視的なドメイン内で同一の選択的配向を草のように有するか、または互いに好ましい配向を有さずに数百までの個々のCNTを含む組み紐内で生じるヤーン状構造が形成される。<800℃の還元工程における温度では、いわゆるBN構造を有する凝集体が好ましく形成される。カーボンナノチューブは、混合構造を有することもできる。これは、非還元触媒により得られる構造とは異なった構造を有する。
【0097】
本発明により、低嵩密度を有するCNT凝集体を、高収率(触媒に基づく)で、同時に高い触媒比活性にて、最初に製造することが可能である。
【0098】
低嵩密度を有するCNT凝集体の優位性は、例えばポリマー溶融物の簡略化された侵入によりそれ自体現れるCNT凝集体の向上した分散性、およびこれと関連してCNTの良好な湿潤性である。向上した分散性は、非分散凝集体が、機械荷重下で予備決定した破断点を示し、傷の付いた艶消し複合材料を生じさせるので、CNT複合材料(ポリマー、被覆物および金属)の機械的触覚および光学特性を向上させる。とりわけ、こうして製造された低嵩密度を有するCNT凝集体は、熱可塑性ポリマー、ドュロプラスチック(duroplastic)ポリマー、ゴム、被覆物、低−中粘度媒体、例えば水、溶媒、オイル、樹脂ならびに金属中へより容易に組み込むことができる。薄層用途において、微細に分散したCNTは、薄層を製造するためにおよび必要な場合には透明性のために絶対的に必要である。さらに、緩いCNT凝集体のより良好な分散特性は、減少した組み込み時間および分散エネルギーおよび力、例えばせん断力の減少をもたらす。これは、そのような物質を、標準処理条件について不安定なマトリック中へ加工することを可能とする。
【0099】
CNTまたはその凝集体の良好な分散は、高いCNT収率と同時に、CNT生成物中において低い触媒残存含有量(<10重量%、特に<5重量%、さらに特に<3重量%)を可能とする。これは、使用の多くの領域について、例えば触媒残渣による種々の用途における望ましくない化学反応の抑制、例えばポリマー劣化または分解、エポキシド中のラジカル反応およびポリマー、酸/塩基反応等について有利である。また、生成物中の触媒金属の含有量における減少は、用いる触媒金属のよくある有毒な性質のために望ましい。本発明により製造された触媒の高活性は、CNT生成物系の空間−時間収率、従って方法の経済性を更に改善する。
【0100】
本発明の方法は、低嵩密度(<90g/L)および良好な流し込み性(流動指数>20mL/秒、Karg−Industrietechnik(コード番号1012.000)からの流し込み性試験機モデルPMおよび標準ISO6186による15mmノズル)を有するCNT凝集体の、高収率(>20g/g、好ましくは30g/g、さらに特に好ましくは>40g/g)および高純度での製造に特に適した触媒を製造する。
【0101】
多くの場合、このようにして製造されたカーボンナノチューブは、低い触媒含有量のため、予め仕上げ処理を行うことなく最終生成物に用いることができる。該物質は、必要に応じて、例えば触媒および担体残渣の化学分解により、極めて少量で形成される非晶質炭素成分の酸化により、または不活性または反応性ガスにおける熱後処理により生成することができる。例えばマトリックス中でより良好な結合を得るために、または表面特性を所望の用途へ意図的に適合させるために製造されたカーボンナノチューブを化学官能基化することが可能である。
【0102】
本発明により製造されたカーボンナノチューブは、ポリマー中の添加剤として用いるために、特に機械的強化のために、電気伝導性を向上させるために適している。製造されたカーボンナノチューブは、ガスおよびエネルギー貯蔵のための物質として、着色のためにおよび難燃剤として更に用いることができる。その良好な電気伝導性のために、本発明により製造されたカーボンナノチューブは、電気材料として、またはストリップ導体および導電性構造を製造するために使用することができる。本発明により製造されたカーボンナノチューブをディスプレイにおけるエミッターとして用いることも可能である。好ましくは、カーボンナノチューブは、電気伝導性または熱伝導性および機械特性を向上させるためのポリマー複合材料、セラミックまたは金属複合材料中で、導電性被覆物および複合材料の製造のために、着色剤として、バッテリー、センサー、コンデンサー、ディスプレイ(例えばフラットスクリーンディスプレイ)または発光体において、電界効果トランジスタとして、例えば水素またはリチウムのための貯蔵媒体として、例えば気体の精製のための膜において、例えば化学反応における触媒活性成分のための触媒または単体物質として、燃料電池において、医療分野において、例えば細胞組織の成長を制御するための構造として、診断分野において、例えばマーカーとして、および化学および物理分析において(例えば走査型力顕微鏡において)用いる。
【0103】
本発明による方法、本発明による触媒および使用は、以下に、幾つかの実施例を参照して説明するが、実施例は、本発明の考えを限定するものと理解されない。
【実施例】
【0104】
実施例1:触媒の製造(比較)
a)沈殿、乾燥および粉砕
水(0.35リットル)中に0.306kgのMg(NO・6HOの溶液を、0.35リットルの水中での0.36kgのAl(NO・9HOの溶液と混合した。次いで0.5リットルの水にそれぞれ溶解させた0.17kgのMn(NO・4HOおよび0.194kgのCo(NO・6HOを添加し、全混合物を、30分間撹拌しながら、硝酸の添加により約2のpH値へ調節した。この溶液の流れを、ミキサー中で20.6重量%水酸化ナトリウム溶液と1.9:1の比で混合し、得られる懸濁液を、5リットルの水の初期装填へ添加した。初期装填のpH値を、水酸化ナトリウム添加を制御することにより約10にて維持した。
【0105】
得られる固体を、懸濁液から分離し、数回洗浄した。次いで洗浄固体を、16時間内にパドル乾燥機中で乾燥し、乾燥機の温度を、8時間内に室温から160℃へ増加させた。次いで固体を、実験室ミル中で50μmの平均粒度へ粉砕し、30μm〜100μm粒度の範囲の中間画分を、引き続きの焼成を容易にするために、特に流体化を流動層中で向上させるためにおよび生成物の高収率を得るために取り除いた。
【0106】
b)酸化焼成
次いで固体を、12時間500℃にて焼成炉中で、空気の吸気により焼成し、次いで24時間冷却した。次いで触媒物質を、7日間、室温にて後酸化のために放置した。合計121.3gの触媒物質を分離した。
【0107】
実施例2:カーボンナノチューブの製造(比較)
実施例1において製造した触媒は、実験規模での流動床装置中で試験した。この目的のために、触媒の所定量を、100mmの内径を有する鋼製反応器中に入れ、熱交換媒体により外側から加熱した。流動床の温度を、電気加熱熱交換器媒体のPID制御により調節した。流動床の温度を熱要素により決定した。出発物質ガスおよび不活性希釈ガスを、反応器中へ、電気制御質量流調節器より導入した。
【0108】
約30cmの未拡張高さを有する初期CNT床装填は、まず、完全な混合を確保するために反応器中へ導入した。次いで反応器を、窒素で不活性にし、650℃の温度へ加熱した。次いで実施例1による24gの量の触媒1を計量投入した。
【0109】
その直後、エテンおよび窒素の混合物としての出発物質ガスを入れた。出発物質ガス混合物の体積比は、エテン:N=90:10であった。合計体積流は、40NL・分−1へ調節した。出発物質ガスへの触媒の暴露は、33分間行った。その後、継続反応を、出発物質の供給を中断することにより停止し、反応器の内容物を取り出した。
【0110】
堆積炭素の量は、計量により決定し、堆積炭素の構造および形態は、REMおよびTEM分析により決定した。用いた触媒に基づく堆積炭素の量は、以下、収率と称し、焼成後の触媒の量(mcat,0)および反応後の重量増加(mtotal−mcat,0)に基づいて定義した:収率=(mtotal−mcat,0)/mcat,0。
【0111】
評価は、用いる触媒1g当たり35.3gのカーボンナノチューブ粉末の、5回の試験ランにわたり平均した触媒収率を示した。TEM写真は、8〜12グラフェン層からそれぞれ構成される約2〜3回巻き上がった黒鉛層の構造を示した。炭素繊維は、16nmの平均径を有した。長さ対直径比は、少なくとも100であった。
【0112】
純度の試験は、強熱減量を決定することにより96.9重量%の含有量を与えた。
【0113】
熱分解により堆積した炭素は、TEM写真におけるカーボンナノチューブ粉末中に検出されなかった。
【0114】
カーボンナノチューブ粉末は、260m/gのBETに従って測定した表面積を有した。
【0115】
5回の試験ランにわたり平均した凝集体の嵩密度は、152g/Lであった。
【0116】
実施例3:未焼成触媒の製造(比較)
比較例1、工程a)に記載の通り、触媒を、沈殿させ、分離し、洗浄し、乾燥させ、粉砕した。実施例1からの工程b)、酸化焼成は行わなかった。
【0117】
実施例4:触媒の酸化焼成(比較)
実施例3からの未焼成乾燥触媒を、マッフル炉において空気中で、以下の条件下、酸化焼成した。
実施例4a)空気中で6時間400℃での1atmの圧力における焼成
実施例4b)空気中で2時間900℃での1atmの圧力における焼成
【0118】
実施例5:還元焼成による本発明の触媒の製造
実施例3からの未焼成乾燥触媒を、管型炉において、水素/窒素混合物中で、以下に示す条件下、還元的に焼成し、室温へ冷却した後、CNT合成に直接用いた。
実施例5a)N中に還元性ガス5vol%H、還元温度=700℃、圧力=1atm、t=0.5時間、
実施例5b)N中に還元性ガス5vol%H、還元温度=800℃、圧力=1atm、t=0.5時間、
実施例5c)N中に還元性ガス5vol%H、還元温度=825℃、圧力=1atm、t=0.5時間、
実施例5d)N中に還元性ガス5vol%H、還元温度=825℃、圧力=1atm、t=2.0時間、
実施例5e)還元性ガス100vol%H、還元温度=700℃、t=1.0時間、圧力=40ミリバール。
【0119】
実施例6:酸化焼成後の還元焼成による本発明の触媒の製造
空気中で焼成した実施例4からの触媒を、管型炉において、水素/窒素混合物中で、以下に示す条件下、還元的に焼成し、室温へ冷却した後、CNT合成に直接用いた。
実施例6a)N中に還元性ガス5vol%H、還元温度=850℃、圧力=1atm、t=30分、
実施例6b)N中に還元性ガス50vol%H、還元温度=850℃、圧力=1atm、t=30分、
実施例6c)還元性ガス100vol%H、還元温度=850℃、圧力=1atm、t=30分、
実施例6d)還元性ガス100vol%H、還元温度=900℃、圧力=1atm、t=30分、
実施例6e)還元性ガス100vol%H、還元温度=950℃、圧力=1atm、t=30分。
【0120】
実施例7:還元焼成後の不活性焼成による本発明の触媒の製造
実施例3からの未焼成乾燥触媒を、管型炉中で以下の焼成系列:i)700℃1時間でのH中での還元焼成、ii)850℃2時間でのN中の不活性焼成に付し、および室温に冷却後、CNT合成に直接用いた。
【0121】
実施例8:酸化焼成後の不活性焼成による本発明の触媒の製造
実施例4からの触媒を、いずれの場合にも管型炉中で以下の焼成系列に付し、室温に冷却後、CNT合成に直接用いた。
実施例8a)i)空気による400℃6時間での酸化焼成、ii)N中での850℃2時間での不活性焼成
実施例8b)i)空気による400℃6時間での酸化焼成、ii)H中での700℃1時間での不活性焼成、iii)N中での850℃2時間での不活性焼成
【0122】
実施例9:本発明の還元焼成触媒の不活性化
実施例6a)からの還元触媒を、空気での処理により表面上で不活性化した。この目的のために、還元触媒を、約40℃、t=15分間の温度にてO含有量を不活性ガス(N)中の1vol%Oから不活性ガス中の20vol%Oへ徐々に増加させたガス混合物へ暴露した。
【0123】
不活性層は、CNT合成反応器中での700℃の温度(時間:15分)における引き続きのCNT合成において再除去した。
【0124】
実施例10:「過焼成」触媒の再活性化
空気中で900℃にて焼成した実施例4bからの触媒を、5vol%Hを有するH/N混合物中で825℃にて2時間、還元的に焼成し、室温への冷却後、CNT合成に直接用いた。
【0125】
実施例11:本発明の触媒を用いたカーボンナノチューブの製造
上記触媒を、実施例2と同様にカーボンナノチューブの製造のための流動床中で用いた。この目的のために、触媒の所定量(乾燥質量=0.5g、乾燥質量は、触媒が、空気中で650℃にて6時間の焼成後に、前駆体残渣および水の損失後になお有する質量である)を、50mmの内径を有する石英ガラス製反応器中に入れ、熱交換媒体により外側から加熱した。流動床の温度を、電気加熱熱交換器媒体のPID制御により調節した。流動床の温度を熱要素により決定した。出発物質ガスおよび不活性希釈ガスを、反応器中へ、電気制御質量流調節器より通過させた。
【0126】
次いで反応器を窒素で不活性にし、700℃の温度へ15分間内に加熱した。
【0127】
その直後、エテンおよび窒素の混合物としての出発物質ガスを入れた。出発物質ガス混合物の体積比は、エテン:N=90:10であった。合計体積流は、10NL・分−1へ調節した。出発物質ガスへの触媒の暴露は、34分間標準として行った。その後、継続反応を、出発物質の供給を中断することにより停止し、反応器の内容物を、N中で30分以内に冷却し、取り出した。
【0128】
堆積炭素の量は、計量により決定し、用いた触媒に基づく堆積炭素の量は、以下、収率と称し、触媒の乾燥質量(mcat,乾燥)および反応後の重量増加(mtotal−mcat,乾燥)に基づいて定義した:収率=(mtotal−mcat,乾燥)/mcat,乾燥
【0129】
得られる収率(A)および嵩密度(S)を、これらから計算したQ値と共に表1に示す。上記反応条件からの偏差は、最後の3つの欄に見出される。
【0130】
試料の一部を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて調査し、>200直径個別チューブを計測した。見出される平均値および標準偏差を同様に、表1に記載する。標準偏差は、分布幅を与えるが、決定の測定誤差(<0.5nm)ではない。
【0131】
TEM写真は、任意の場合に非晶質炭素の堆積を示さなかったので、試料の純度は、収率により純度=収率/(収率+1)で与えられる。90重量%の純度は、収率8.9g/gにて得られ、95重量%の純度は、収率18.8g/g、および純度>97重量%は、収率>31.4g/gにて得られる。
【0132】
【表1】

【0133】
実施例11b〜11eは、乾燥触媒の還元焼成により、次第に良好なQ値が処理温度および処理時間が増加すると得られることを示し、これらの値は、先行技術(実施例2、11a)に対して更に顕著に優れている。
【0134】
減圧下で行った還元工程も正の結果をもたらす(実施例11f)。
【0135】
実施例11g〜11i(酸化予備処理触媒と、増加するH分圧下で焼成による還元焼成との組み合わせ(1バールでの5、50および100vol%H)は、空気中で穏やかに焼成(400℃)した試料中でさえ、顕著な向上が還元焼成により起こることを示す。
【0136】
上記方法により予備処理した触媒の収率は、H分圧によりかなり増加する。嵩密度も同様に増加するが、それにも拘わらず、Q値は、100vol%のH分圧でさえ4を越える。
【0137】
短期試験11j(10分)は、6.9の高いQ値を示す。比較例2および11a)の収率と匹敵するかまたはより良好である収率により(より短い反応時間であるにも拘わらず)、実施例11j)からの得られるカーボンナノチューブ粉末の嵩密度は、実施例2および11a)のCNTの嵩密度の約60%のみである。
【0138】
さらに、試験11g〜11i)において製造したカーボンナノチューブの平均径は、透過型電子顕微鏡(TEM)により>200個別CNTを測定することにより決定した。表1から明らかな通り、直径は、分圧が増加すると小さくなる。当業者に知られている通り、従って、より大きいアスペクト比(=長さ対直径)は、一定長さで得られ、その結果、より低いCNT添加は、パーコレーション閾を得るために複合材料中に必要である。直径分布の幅は、H分圧が増加すると減少し、生成物品質について有利である。
【0139】
実施例11k)〜11m)は、触媒が不活性により効率的に保護されることを示す。実施例11kは、不活性化直後に用いる不活性化触媒についての結果を示し、実施例11l)は、空気中での1週間の貯蔵後の同一の触媒についての結果を示し、実施例11mは、空気中での8週間の貯蔵後の同一の触媒についての結果を示す。顕著な差異は存在しない。300〜400℃の温度は、不活性層を除去するために十分である。
【0140】
実施例11n−1)は、900℃にて空気中で焼成した触媒を用いるカーボンナノチューブ製造の結果を示す。これは、反応時間内に不活性であり、収率および嵩密度は決定することができなかった。触媒を、触媒(実施例11n−2)の還元焼成により再び活性化することが可能であった。
【0141】
実施例11n−2)に製造したカーボンナノチューブの直径が、顕著に増加することが見出された(19±9nm)。
【0142】
意図的な酸化予備処理により、例えばここで設定された高い酸化予備処理温度および引き続きの還元焼成による(再)活性化により、CNT直径の意図的な調節を得ることができた。収率は、先行技術からの触媒と比較して顕著に低下しなかった(実施例2)。より大きい直径を有するCNTは、パーコレーション閾の複合材料中におけるより高いCNT質量含有量へのシフトをもたらす。従って、該効果を用いてこの閾を正確に調節することができる。
【0143】
実施例11o)〜11r)は、不活性雰囲気中の意図的な後処理の結果を示す。
【0144】
実施例11o)は、収率およびQ値は、先行する還元焼成を行わない不活性焼成の場合における比較例の値よりかなり下であることを示す。
【0145】
還元工程を、不活性焼成前に導入する場合〔実施例11p)から11r)〕、CNT合成における収率は、嵩密度が余りに高くならずにかなり増加する。これらの試験は、高いQ値>10を有するCNTを生じさせた。これらの試験は、高いQ値>10を有するCNTを生じさせた。未時間手順(26分)および低下したエテン分圧でさえ、Q値について正の影響を有する(実施例11r)。比較例2と比べて、嵩密度の1/3は、同じ収率で得られるが、Q値は、10倍より多く改善する。
【0146】
カーボンナノチューブの試験
実施例12〜14に示す全てのパーセンテージは、複合材料の全重量に基づく重量パーセントである。
【0147】
実施例12および13(POMへの組み込み)
実施例12(比較):実施例4からの触媒を用いて標準条件下(実施例11)で製造したCNTを、供給ホッパーによりCoperion/Werner & Pfleidererからの2軸押出機(ZSK MC 26、L/D 36)中へ導入し、3重量%の量でポリオキシメチレン(POM、TiconaからのHostaform(登録商標) C13031)中へ組み込んだ。次いで複合材料を、標準試験試料へ、Arburg 370 S 800−150射出成形機により射出成形した。スループットは、15kg/時であり、溶融温度は、300rpmにて200℃であった。
【0148】
実施例13):実施例6からの触媒を用いて標準条件下(実施例11)でおよびt=20分の試験時間により製造したCNT(Q=7g・L/g)を、供給ホッパーによりCoperion/Werner & Pfleidererからの2軸押出機(ZSK MC 26、L/D 36)中へ導入し、3重量%の量でポリオキシメチレン(POM、TiconaからのHostaform(登録商標) C13031)中へ組み込んだ。次いで複合材料を、標準試験試料へ、Arburg 370 S 800−150射出成形機により射出成形した。スループットは、15kg/時であり、溶融温度は、300rpmにて200℃であった。
【0149】
以下のCNT/POM複合材料を得た:
【0150】
【表2】

【0151】
実施例14(ポリカーボネート中への組み込み):
実施例6cからの触媒を用いて標準条件(実施例11)下でおよびt=20分の試験時間により製造したCNT(Q=7g・L/g)を、供給ホッパーによりCoperion/Werner & Pfleidererからの2軸押出機(ZSK MC 26、L/D 36)中へ導入し、3重量%および5重量%の量でポリカーボネート(PC、Bayer MaterialScienceからのMakrolon(登録商標) 2800)中へ組み込んだ。スループットは、20kg/時であり、溶融温度は、600rpmにて280℃であった。次いで複合材料を、円板へ射出成形した(80mm×2mm)。条件は、340℃の溶融温度、90℃のツール温度および10mm/秒の供給であった。次いで複合材料を、80mmの直径および2mmの厚みを有する円形板へ、Arburg 370 S 800−150射出成形機により射出成形した。湯口は側面に位置した。射出成形条件は、ツール温度90℃、溶融温度340℃および供給10mm/秒であった。次いで表面抵抗は、環状電極を用いて測定した(Monroe model 272、100 V)。3重量%CNTを有する試料は、約1010オーム/平方の表面抵抗を有し、5重量%を有する試料は、<10オーム/平方の表面抵抗を有する。
【0152】
触媒6d)を用いて標準条件(実施例11)下でおよびt=20分の試験時間により製造したCNT(Q=9g・L/g)を、処理し、同様に測定した。これらの複合材料について、約1012オーム/平方の表面抵抗が、3重量%CNTの濃度にて見出され、10〜10オーム/平方の表面抵抗が、5重量%について見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブの製造のための共沈金属触媒の製造方法であって、還元工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
還元工程は、200〜1000℃、好ましくは400〜950℃、さらに好ましくは680〜900℃、特に好ましくは700〜880℃の温度範囲で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
還元性ガスは、10vol%未満炭素含有化合物を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
還元工程に加えて、プロセス工程酸化焼成および不活性焼成を含む群から選択される1以上のプロセス工程を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
金属触媒は、カーボンナノチューブを、130g/L以下の嵩密度を有する凝集体において、少なくとも20g/gの収率および少なくとも90重量%の純度において生じさせることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法により製造された金属触媒。
【請求項7】
>3gL/g、好ましくは>3.5gL/gおよび>4.5gL/g、さらに好ましくは>5gL/gおよび>6gL/g、特に好ましくは7gL/gのQ=収率/嵩密度×1000の比を有するカーボンナノチューブの製造のための金属触媒。
【請求項8】
カーボンナノチューブの製造における、請求項1〜5の方法により製造された金属触媒の使用。
【請求項9】
請求項6または7に記載の金属触媒を用いるカーボンナノチューブの製造方法であって、>3gL/g、好ましくは>3.5gL/gおよび>4.5gL/g、さらに好ましくは>5gL/gおよび>6gL/g、特に好ましくは7gL/gの比Q=収率/嵩密度×1000を特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法により得られる、130g/Lの嵩密度および少なくとも90重量%の純度を有するカーボンナノチューブ。
【請求項11】
複合材料または分散体の製造における、請求項10または11に記載のカーボンナノチューブの使用。
【請求項12】
請求項10または11に記載のカーボンナノチューブを含有する複合材料。

【公表番号】特表2013−519515(P2013−519515A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553273(P2012−553273)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052086
【国際公開番号】WO2011/101300
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512137348)バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (91)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
【Fターム(参考)】